月夜裏 野々香 小説の部屋

    

After Midway

 

 

第85話 1975年 『カレーの肉は?』

 赤レンガの住人たち

 「総理、南アフリカ公国連合は、機動部隊を用いて国家の統合と国民の高揚を達成し」

 「アメリカと共同戦線で戦ったことで国威を世界に示しました!」

 「我が日本も、今こそ、今こそ、日本海軍を象徴する空母を建造し」

 「日本機動部隊を編成し」

 「世界に日本海軍、ここにあり〜!! という威容を見せましょうぞ!!!」

 おぉおおおおおお〜!!!

 拍手。ぱち、ぱち、ぱち、ぱち。

 「公共福祉など、何するものぞ!!」

 おお!!!

 拍手。ぱち、ぱち、ぱち、ぱち。

 「設備投資なんかには負けないぞ!!」

 おぉおおおおおお!!

 拍手。ぱち、ぱち、ぱち、ぱち。

 「社会福祉なんか、踏み倒せ!!」

 お〜!!

 拍手。ぱち、ぱち、ぱち、ぱち。

 「日本万歳〜!!」

 お〜!!

 拍手。ぱち、ぱち、ぱち、ぱち。

 「日本海軍万歳〜!!」

 お〜!!

 拍手。ぱち、ぱち、ぱち、ぱち。

 「日本機動部隊万歳〜!!!!」

 お〜!!!!

 拍手。ぱち、ぱち、ぱち、ぱち。

 ・・新・・年・・会・・・・

 

 

 アメリカ、南アフリカ公国連合、日本の3カ国でエチオピア皇国のIMF(国際通貨基金)を強行。

 エチオピアの餓死者の数は多く、天災とばかり言い切れない。

 利潤の多い綿花を植えたら干ばつ。

 さらに化学繊維の流通で綿花の売れ行きも落ち、

 さらに泣きっ面にオイルショック。

 食料を輸入しても一時的に過ぎない。

 その国の行政で再建できないのであれば外圧で、やってしまう手法だった。

 強制的に国の富を効率良く再分配し、効率良く投資。

 結局、誰を犠牲にするか、である。

 アメリカと南アフリカ公国連合は、ここぞとばかり、利権に食い込もうとする。

 そして、アメリカと南アフリカも二カ国だけでは国際世論が怖い、

 仕方なく、エチオピア皇帝の望む、日本も入り込む。

 エチオピア皇帝は内政には弱く、外交に強いらしい。

 それでも国内が、しっかりしての皇帝であり、

 足場が悪ければアメリカと南アフリカ公国と日本が皇帝の権力基盤を作って埋めていく、

 その足場が利権だった。

 

 

 干ばつで餓死者が出る。

 これは、人類史的な視野で見るなら珍しくない。

 日本でも起きている。

 1642年 寛永の大飢饉 〜1643年

 1732年 享保の大飢饉 

 1782年 天明の大飢饉 〜1787年

 1833年 天保の大飢饉 〜1839年

 数万人から数百万人が餓死。

 自然に任せて放って置く方法もあれば政治的な思惑があって助けてしまう場合もある。

 今回は、たまたま、助けることになったらしい、

 とはいえ、我田引水で都合がいいから助けるのであって、それ以上ではない。

 南アフリカ公国軍人の服装は目立った。

 「だけどさぁ・・・エチオピアって資源、あまりないよね」

 「うん」

 うまみが少ないと、やる気も失せてしまいやすい。

 「でも、歴史にはなるね」

 「随分、詳しく書いているじゃないか」

 「南アフリカ公国連合の歴史だよ。公国連合は誇れる歴史が少ない」

 「今回の作戦行動は、公国連合が世界に誇れる歴史だよ」

 「予算があるのなら揚陸艦や月影VTOLもたくさん配備したいね」

 「あるの?」

 「ないけど」

 南アフリカ公国連合の国家予算の多くは、国家統合を目的とする地域格差是正、

 教育。文化。社会基盤に使われる。

 いくら地下資源があっても国際市場の需要に対する供給であり、

 買えなくなるほど高く売れない。

 国史と民族史の教育は直接、国益に結びつくことはなく、

 国家国民に与える影響も計りにくく意識されにくい。

 それが国の発展にどの程度寄与するのか、計算されたこともない。

 この歴史は、捏造でもしない限り、いくらと売っていない、

 しかし、国民の歴史観が意識、意欲、モラルに与える影響は大きく、

 今回の南アフリカ公国のエチオピア出兵と、

 エチオピア皇帝の救出は、公国の教科書に掲載された。

  

  
 01/

 中国、第4期全国人民代表大会第1回会議。

 周恩来首相が国防、工業、農業、科学技術の「四つの近代化」を提唱。

  

 ポルトガルがアンゴラ解放勢力3派と独立の協定に調印。

  

 ワシントンでIMF暫定委員会開催。

 金の公定価格廃止の共同声明を発表。

 日本人たち

 「アメリカめ・・・我田引水しやがって」

 「日本は、貿易黒字でも、それは借り物の技術を利用してだよ」

 「単純なライセンス技術貿易収支だけなら」

 「日本はマイナス500万ドル。アメリカはプラス3000万ドルで負けてる」

 「基礎になる技術力に差があるから。どうしてもアメリカの言い分が強くなるね」

 「くっそぉお〜 頭数と予算を利用して研究開発しやがって」

 「日本は、もっと貧富の格差を広げて、基礎研究に力を入れるべきだろうな」

 「回収の見込みがあるか、わからない投機が簡単にできるか。そんな予算ないわい」

 「やっぱり、実入りのいい、設備投資に回しやすいか・・・」

 「アメリカの国家予算の方が多い。もっと、天才を育てるような教育が必要だよ」

 「1人の天才より、100人の秀才と言うこともあるよ」

 「その逆もあるよ」

 「どっちにしても、まだまだ、勝てんわ。癪に障る」

 「基礎開発で負けているからな。だいぶ、追いついたんだが・・・・・」

 「また、引き離されるな」

 「アメリカは、分が悪くなると、都合の良いルールを利用して引き放すんだ」

 「・・・・また、国防費を抑えるか」

 「あはは・・・・・」

  ※ 参考資料は、ココ 『ミッドウェー海戦のあと』は、史実より力関係が変わり、

     数値も少し変わっています。 

  

 

 02/

 キプロスの広場、

 子供たちが色とりどりのマントを羽織って、日本の特撮物ヒーローゴッコ遊びをしていた。

 トルコ系とギリシャ系も混じって大人たちも、それとなく見ている。

 国際会議場があって人の目も気にしているのか、

 親密ではないが社交辞令くらい言える関係にまでなっている。

 「おら〜、ミド! カレーに牛肉なんか入れるな!!」

 「なんだと、キィ! 豚肉をどうするつもりだ?」

 「まさかそれをカレーに入れるつもりじゃないだろうな」

 「バカか、貴様、太古の昔からカレーは豚肉と決まっている」

 「バカは、おまえだ。そんな、不浄な物を食い物に入れるな!」

 「チキンを入れたら良いんじゃないか」

 「駄目よ。アオ! 聖なる鳥をカレーに入れるなんて」

 「くっだらねぇ 全部入れちまえよ」

 「なんだと、シロ。聖なる牛と豚を一緒にするなど、万死に値するぞ」

 「そうだ。ばかないうな、不浄な豚と牛を一緒にするなど、万死に値するぞ」

 「ふざけんな、ミドッ、キィ。カレーはな。肉が入っていればいいんだよ」

 「この無節操な守銭奴シロが! 今度こそ、決着をつけてやる」

 「なんだと、ミドッ! おまえこそ、ヘタレのくせに文句ばっかり言いやがって」

 ピンクがオロオロ。

 「まあ、どうしましょう。まあ、どうしましょう」

 青いマントを着たアオが、仲裁。

 「まぁ まぁ 抑えて、抑えて」

 黄色のマントを着た者が、我関せず。材料を分別(差別)。

 「・・あ〜!!」

 「あのスーパーは駄目だよ。生まれが低いんだから」

  

 そこに現れる赤マントの一団。

 「わっははははっは、バカめ。今のうちにピンクの持っている宝石を奪うんだ」

 きぃっ! 団結。

 「きゃ!! いやぁ〜ん」

 逃げる。ピンク。

 カレーで争い続ける正義のヒーローたち。

 「・・・・こら!! 助けろ!」

 ごつっ! ばきっ!

 「「ごっ!」」

 ピンクの蹴りで黄色マントと緑マントが戦い始め。

 「おい! 戦闘員。あれを投げろ!!」

 「「「「キィッ〜!」」」」

 敵が投げた小銭を白マントが拾い。

 敵のおかげで仲間内の争いが終わった青マントが休み。

 「ふぅ やっと、仲間割れが終わったよ」

 そして、白マントが小銭を拾い集めたあと、不承不承に参戦。

 「ちっ! お前らなんかと戦っても、金にならないんだよな」

 「か、金。拾っただろう!!」 赤マントが突っ込む

 きぃっ〜!

 きぃっ〜!

 「きゃ!! いやぁ〜」

 「こら! ミドッ! サボるな!!」

 「・・・礼拝の時間なんだよ」

 緑マントが絨毯を敷いて祈り始める。

 「このぅ こうなったら原爆拳を・・・・」

 「こ、こらぁ!! シロ、おまえが原爆拳を使ったら、俺も原爆拳を使うぞ!!」

 「「うぬぬぬぬうっ」」 白マントと赤マントが睨み合う 。

 「「・・・しょうがない。機 “動・甲” 拳だぁ〜!!!」」 シロ & アカ

 白マントの機動拳と赤マントの機甲拳が炸裂。

 そして、赤マントが怯む。

 「よし、いまだ!! モモレンジャー!!」

 「行くわよ。キレンジャー」

 モモレンジャーから秘宝のパワーを受けたボールが蹴られる。

 「おう、カレーは、豚肉だ!!」 キレンジャー

 「ちがう!! 牛肉だー!!」 ミドレンジャー

 「だから、野菜も食べなきゃ駄目だ!!」 アオレンジャー

 と、次々にボールが蹴られてパワーアップしていく。

 「肉なら、何でも、いいんだよ!!」 シロレンジャーが最後のボールを蹴る。

 爆発。

 そして、赤マントとその一団が負け、去っていく。

 「くっそぉ〜 オレンジャーめ。覚えていろ!!」

 そして、正義のカレー戦争が再開。

 戦え正義のヒーロー、オレンジャー!!!

 守れ正義のヒーロー、オレンジャー!!!

 ギリシャ系とトルコ系は、自分の宗教を茶化されている割に笑えるらしく、反発は小さい。

 少なくとも、一方が、一方を、一方的にというのではない。

 総当りで茶化されれば、笑うしかないのか。

 他の宗教が茶化されている光景を見て、

 自分の宗教が茶化されているのを我慢しているのだろうか。

  

  

 キッシンジャー国務長官が石油最低価格制を提唱

  

 02/

 ペルーで軍と警官が交戦。

 

 アメリカ労働省、1月の失業者750万人、自動車業界の失業率24%と発表。

 某自動社会

 「くっそぉ〜 日本人め」

 「インド人の難民が来れば、やすい価格で車を生産できるようになるよ」

 「アメリカ人の失業者が増えるな」

 「だが日本人は、安い賃金で機械化にも成功して大量生産している」

 「失業者が増えてても、会社を残すしかない」

 「このままでは、アメリカ自動車産業が潰されるぞ」

 「・・・しかし、困った。社員の賃金を下げるか。クビを切るしかないが・・・」

 「ドイツは、賃金を下げるらしいね」

 「欧州の方が自動車の打撃は低いよ」

 「このままだと、日本から部品を買って組立工場にされるぞ」

 「水は低きとこへ流れ、か・・・・忌々しい国だ」

 「現にそういう動きを見せている新興企業もある」

 「再起を計ろうと思うなら、日本車の販売店か」

 「日本から部品を買ってメンテナンス工場をするか、自動車を生産するよ」

 「日本め、軍民とも侵食しやがって」

 「戦争で完全に負かしていたら、民需だけの下請け工場にできたんだ」

 「あそこ、資源がないから、働くしかないんだろう」

 「東シナ海のガス油田があるだろう」

 「日本人も少しは、楽をしようと思えばいいんだ。エコノミックアニマルめ」

 「小心者で人の目が気になってサボれないのだろう。そういう民族性だ」

 「くだらん横並びだよ。仕事がなくても働いている素振りをするか、足を引っ張っているんだ」

 「それでも、今は仕事がある」

 「勢い付きやがって」

 「そういえば、原子力発電所の建設もしていたな」

 「原子力は悪くないよ。非核団体の妨害がなければね」

 「原子力空母や原子力潜水艦の建造とも関連しているぞ」

 「日本も、南アフリカ機動部隊に影響を受けたかな。最近、動きだけはあるようだ」

 「予算に繋がるか微妙らしいがね」

 「欲しいなら売ってやるよ。空母なら売るほどある」

 「南アフリカは買うかもしれないな。エチオピア作戦で主役を演じた」

 「主役を演じさせたんだよ。アメリカが海兵隊を出さなければ道化だったんだ」

 「それで、空母を買ってくれるのなら悪くないね」

 「買ってくれたらね」

  

  

 人民日報が、社説で「プロレタリア独裁理論学習運動」を呼びかける。

  

 マーガレット・サッチャー女史がイギリス保守党党首に選ばれる。

  

 韓国で、維新体制を問う国民投票が実施され、支持される。

  

 ウィルソン英首相とブレジネフ書記長、コスイギン首相が英ソ共同声明。

 英ソが少しばかり雪解け。

  

 インドネシア、日本(昭南州)、マレーシアの3ヵ国外相会談、

 マラッカ海峡の航行分離方式確立で合意。

  

 アメリカ大統領フォード、アラブのユダヤ系企業差別に警告、アラブとの対決の姿勢を示す。

  

 シリア大統領アサド、パレスチナ人・東洋系ユダヤ人の権利とエジプト・シリア団結を強調。

  

 アフリカなど46ヵ国が、ECとの通商援助協定(ロメ協定)に調印。

  

 

 03/

 大相撲春場所千秋楽、大関貴ノ花が優勝決定戦で北の湖を寄り切り初優勝を決める。

  

  

 04/

 インドのキッシム議会で王制を廃止。インドの「一州化」を決議。

 「・・・我がインドの治安は、悪化している。K大佐。敵対するダリットを殺せ。」

 「了解ニダ。藩王」

 王制廃止後も惰性的に続いている呼び名だった。

 カースト制度の枠外であるダリッドに人権などない、

 しかし、国際的な圧力は内政干渉なのだが年を追うごとに強くなり、

 インド兵によるダリット殲滅は、国際世論の関係から困難になりつつあった。

 しかし、外国人傭兵には好都合だった。

 どれほど残虐であっても正規のインド軍でなければ国際的な非難も緩和される。

 「K大佐。人は差別されるためある」

 「平等こそ悪なのだ。ダリットを奪え、犯せ、殺せ、焼くのだ!!!」

 「はっ!」

 藩王城から出撃する傭兵旅団。機械化旅団ともいえる規模が出撃する。

 彼らは、孤立していない、

 全インドのカースト勢力が支援していた。

  

 

 インドの日本人町

 出入り口で身元確認と武器の所持を調べられる。

 ヤマトは、パスポート。

 ルルは、日本の市民権を見せる。

 「・・・カーストの有力者が日本人町で豪遊か・・・優雅なものだ」

 「ルル。この町のダリットとカーストは町を守るためにしか戦わない。気持ちは?」

 「この町は、俺が理想とする世界があるわけか」

 「衣食住と安定した収入さえあれば、カーストとダリットは共存できる」

 「日本資本が作った仮の理想だ」

 「差別がなければ、もっと、共存できるさ」

 「随分と人口が減ったから民主化しても、やっていけそうなのに・・・」

 「利権を貪り、階級という淀みで腐った豚どもめ・・・ヤマト。やれるか」

 「ああ、町の中にも毒蛇はいる・・・・見つけられればね」

 「町を出て、すぐに咬ませるようにするんだ」

 「日本人町で問題を起こすのは、まずい」

 「分かっているよ、ルル」

 「・・・・」

  

  

 05/

 イギリスのエリザベス女王が国賓として来日

  

 中国がECと関係樹立へ。

  

 

 南アフリカ公国連合で立憲君主制が羽振りを利かせるようになると、

 日本と欧州諸国の権威社会が相乗効果で目立ち始める。

 アメリカとソ連は面白くない。

 南アフリカ公国連合など、問題が大き過ぎて手が出せそうにないところもある。

 しかし、カンボジアのシアヌーク王のインドネシア訪問中、

 親米ロン・ノルのクーデター(70/03/17)が成功し、混乱していた。

 カンボジアは、独立条約の破棄の動きを見せ、日本を牽制する、

 カンボジアが成功すれば日本と独立条約を結んでいる東南アジア諸国全体に抗日が波及する、

 しかし、日本は独立条約破棄も見込んで準備しているのか、反応なしで、

 カンボジアも日本の市民権を有する有力者が多く、

 反発が大きく、独立条約破棄までもっていけない。

 日本との利権を維持したいのは、市民権を持ち甘い汁を吸っていた現地有力者だった。

 日本が艦隊を出し、条約破棄の動きを武力で抑え込もうとすればカンボジアの反発を食らい、

 東南アジア全域に波及するはずだった。

 アメリカは、肩透かしされたのだから腹も立ち。

 代わりにシアヌーク殿下の亡命先のインドネシア海軍がしゃしゃり出てきたのだった。

 アメリカミサイル巡洋艦は、有視界の外で、やまぶき型を圧倒できた。

 しかし、有視界で、6000トン級やまぶき型巡洋艦と睨み合うと60口径155mm砲は脅威だった。

 アメリカ巡洋艦は、54口径127mm砲で分が悪く・・・

 ジョセファス・ダニエルズ (ミサイル巡洋艦)

   7930トン (全長166.7m×全幅16.7m×吃水8.7m)。

 艦橋 艦長と副艦長

 「・・・・やっぱり、大きな大砲が欲しいな」

 「この距離で撃たれたら、お終いですよ」

 「だから155mm砲を載せろと言ったんだ」

 「水平線の敵艦は、ほぼ確実に命中するそうです」

 「制圧範囲は、約25km。ヘリを飛ばせば、35kmから38km先の標的も命中させられるとか」

 「むかつくな・・・」

 「こっちは、ソビエトのミサイル飽和攻撃を考えていますからね」

 「迎撃を考えると、どうしても・・・・」

 現代戦で射程40km程度の大砲は、費用対効果でしか評価されない。

 そして、定められたプラットホームの広さと

 積載量が決まっている艦艇の取捨選択で大砲が外される事が多かった。

 しかし、砲艦外交は有視界でなければならず。

 対峙すると大砲の大きさに圧倒される、

 そういう性質のものだった。

 「わかっとるよ。それぐらい」

 「インドネシアは、どうするつもりですかね」

 「シアヌークは口実だよ。たんに海軍力を見せ付けたいだけだろう」

 「軍艦を持っていると、使いたくなるんですよね」

 「それは、世界共通だな」

 「これで、また日本のやまぶき型が売れるんですかね」

 「くっそぉ〜 日本海軍め、155mm砲なんて載せやがって、時代錯誤の懐古主義者が・・・」

 『矛盾してる』

 「・・・日本は、陸海空を含めて国防戦略を構築しているようです」

 「個艦でアンバランスに見えて、全体で見れば、バランスが取れているのでは ?」

 「それも、わかっているよ。侵攻には向かない」

 「あの艦もアメリカ潜水艦の射線に入っていることすら気付いていない」

 「どうせ戦う気なんてないのでしょう」

 「外交で少しばかり、カンボジアに妥協させて手を退くのでは」

 「そんなところだろうな」

 「しかし、日本が出てこないのは納得できませんね。独立条約は破棄しないんですか」

 「日本の市民権と絡んでる」

 「他にも利権があって、カンボジア側で反発があるらしい」

 「真っ当な国家ならアメリカのみに頼るような外交政策は執らんよ」

 「日本との関係がそれだけ、重要と言うことですか」

 「権益のある人間にとってはな」

 「それに日本とインドネシアに連合されると、厄介だ」

  

 問題は、クーデターが成功した後、上手く行かないことだろう。

 まともな封建社会すら構築できなかった社会で植民地化。

 自尊心を奪われ、

 植民地から独立しても、民族国家としての独自性も、基盤も、発達していない。

 官僚基盤も脆弱。

 識字率も低い。

 資本主義と共産主義の綱引きは混乱を起こしこそすれ、

 求められる自由も民主社会も得られにくい。

 結局、アメリカは、利権欲しさでカンボジアの体制をひっくり返し、

 民主主義というエゴを押し付け、その混乱が収拾付けられず続いている。

 クメール・ルージュの共産勢力の台頭も、

 クーデター後、満足なインフラが進められない不平と不満。混乱の結果といえる。

   

 カンボジア

 プノンペンの酒場

 白人が二人、黄色人が一人、ビールとウオッカと酒を飲んでいた。

 「・・・あぁぁあ〜! やってられねぇよ」

 「クーデターなんか起こすからだ」

 「よく、言うよ。漁夫の利を決め込んで、背後で面白がっていたくせに」

 「やったのは、おまえだろう」

 「一石四鳥くらいあったんだがな」

 「手に終えなくなったんなら手を退いて俺に任せろよ」

 「誰が共産主義なんか。冗談じゃない」

 「日本は、どうするんだよ」

 「・・・何も」

 「いやだねぇ。世界戦略に欠けた国は、もっと覇気を見せろよ」

 「でも、他国を変える方法もあるけど。自国を変える方法もあるし、場合によりけりだし・・・」

 「「わけわからん」」

 「強国が自国の利益を守るために他国の制度を捻じ曲げるのは自然なの」

 「国内の受益者を凹ませてどうするんだよ」

 「い、いやあ、少しくらい国内を変革しないと停滞しそうで・・・」

 「自己修練、自己改革かな・・・あは、ははは・・・」

 「日本は、印パ工作以来。全然だな。気合入れてカンボジアの利権を守れよ」

 「代替取引先が変わるだけだから喜んでいる国もあるので・・・」

 「くぁああ、利己主義。自由を守ろうとか思わないのか」

 「守るのは、平等な社会だよ」

 「日本は、自由資本主義だ」

 「賃金格差だけ見ると、日本は、共産主義の理想だよ」

 「けっ! どうりで日本が共産主義の浸透を恐れないわけだ」

 「あはは・・・・」

 「笑い事か、カンボジアが共産化したらどうするんだよ」

 「共産化で平等な社会を作るんだよ」

 「だから人間の本性を抑圧して、まともな社会が作れるか」

 「自由を標榜しながら権利を主張して、他者の人権を抑圧する社会を素晴らしいとは思わないね」

 「人間の欲望を無視するな」

 「弱肉強食が欲望か。日本民族は自分で抑制しているじゃないか」

 「き、共産圏で例えを出せよ。自由資本主義圏から例えを出すな」

 「じ、じゃ 自由資本主義世界で素晴らしい国を出してみろよ」

 「・・・ア、アメリカ合衆国」

 「アフォ〜」

  

 カンボジア、共産勢力クメール・ルージュのカンボジア砲艦が、

 アメリカ貨物船マヤゲス号を捕獲。

 フォード大統領が、捕獲されたアメリカの貨物船の救出を命令し、

 アパッチと月影VTOLの強襲でマヤゲス号の奪還に成功する。

  

 

 06/

 アンゴラの3解放組織が統一準備・国軍建設の協定に調印。

 壁際で受益者、陰謀家、謀略家、黒幕たちが見守っていた。

 「・・・・なあ、公国連合は、アンゴラ併合を考えないのか?」

 「財政難で考えたくないね。せめて、識字率を上げてもらわないと・・・」

 「アンゴラは、識字率を上げるかな」

 「後進国は、国民が馬鹿な方が統治しやすい」

 「資源を叩き売って、安楽な生活ができる」

 「植民地なら、それでも構わないがね。アフリカ大陸黒人解放政策がある」

 「日本みたいにやったらどうだ。政治、政策だけ関心を持たせない」

 「絶対に無理」

 武力で、もっとも優位な公国連合が様子見なら、他の受益者も安心だったりする。

  

  

 07/

 アメリカ建国200年

 

 神話の世界にまで遡れる歴史がある国もあれば、先住民を抹殺。

 先史を消して、新しく歴史を綴る国もある。

 アメリカ合衆国は後者。

 北アメリカ大陸の影と闇を栄光と繁栄が照らして輝く、

 マンハッタンにも日本企業が進出している。

 目先の利益を上げるため?

 アメリカ大陸に日本民族の歴史を刻むため?

 動機は、企業理念それぞれ、人それぞれ。

 グリーンカードを持つ日本人も多く、

 日本の市民権を持って、アメリカで働く日本人も少なくない。

 日本連邦は、縦割り、杓子定規、保証人、担保、土地、ローリスク・ローリターンなどに縛られ、

 人間個人の個性や尊厳が制限されやすかった。

 日本でしか暮らした事のない人間は、この違いが分かり難く、

 海外と後者と付き合いが無いと、また、理解されにくい。

 むろん、その利益・不利益、違いが分かって、やっているのなら、それは構わないのだが、

 日本では、違いを実感できずに生活する者が大半だったりする。

 「・・・・いくつかの国を回ったけど、北アメリカの自然は、美しいよ」

 「だけど、随分、白人が増えたじゃないか」

 「黒人は、金を溜めると南アフリカ公国連合に行ってしまうからな」

 「あっちの方が不自由なのに」

 「それでも構わないのだろう」

 「黒人国家として世界を代表している国だ」

 「俺の親戚が華族で、そっちに嫁いでいる娘がいる」

 「へぇ〜 幸せなのかい」

 「どうかな。気概の問題だよ」

 「自分が幸せになろうと思って嫁ぐ者。嫁ぎ先の利益を考えて嫁ぐ者」

 「どんな欲望を持ち。何をもって幸せと考えるかだろうね 」

 「目先の利益しか考えられない利己的な人間は、どんな世界に行っても不平不満ばかりだよ」

 「華族の娘は、その辺の教育がしっかりされているのだろう」

 「相当ね。もっとも人間は利己的だから、できるかは娘にもよるよ」

 「国もだな」

 「つまり、日本人もアメリカの利益になるのなら、アメリカから好まれるということかな」

 「アメリカでも金になるなら国を売るやつもいるからね」

 「問題は、買うかどうかだな。予算も少ないから取捨選択は厳しい」

 「CCVは、何とか、なりそうらしい」

 「しかし、ステルスか、基礎研究がどこまで行っているか・・・・」

 「いい加減に空母を建造したがっているぞ」

 「ステルスがいいか、空母がいいか」

 「決めるのは空母を建造したがっている赤レンガの連中で俺たちじゃないよ」

 「ステルスミサイルか、しびれるね。どうやって、迎撃するんだろう」

 「さあね。高いから、航空機本体に使うんじゃないか・・・」

 「ったく、スティンガーといい。アパッチといい。アメリカは、なんて開発力だよ・・・」

 「しかし、日本も設備投資したがるのは病癖だな」

 「むかしの反動だよ」

 「軍艦作って国家財政を傾け。国家政策を誤らせ。国体すら失いかねなかった」

 「そして、戦時中は戦艦を解体しても足りなくて」

 「まともな兵器どころか、弾薬も少なく。軍手、つるはし、工具の量産でも苦しんだそうだ」

 「どっちも・・・は、無理か」

 「国力次第だろうな。予算が動かせなければ、大綱を減らして、研究開発費にまわすか」

 「いや・・・それも厳しいだろう。製造ラインが困るし、人員削減は、反発も大きい」

 「防衛線で戦力縮小なんて、泣きが入るぜ」

 「官僚組織は、肥大化傾向を望むからな」

 「例えそれで、国が滅びたとしても・・・・・・あ・・・・来たぞ・・」

 「ああ」

 国益を売る者が近づいてくる。

   

  

 西アフリカのガボベルデ独立(ポルトガル)

  

 アンゴラ内戦。

 数人の男たちがアンゴラの首都ルアンダを眺めていた。

 「・・・あ〜あ! 始めたよ」

 「だから、早いって、言ったんだ」

 「いい傾向だね。黒人国家がどこまでやるか、良くわかるよ」

 「内乱や内戦は白人だってやっている。黒人国家の専売特許じゃないよ」

 「むふふ。知性的に終わらせられるかなぁ〜」

 「北アイルランド人が無知だとは知らなかったよ」

 「知性的だからといって、内戦を終わらせられるとは限らないだろう」

 「っで、公国連合は、どうするの?」

 「国境封鎖に決まってる」

 「チャンスなのに・・・・」

 「チャンスなものか。これ以上国内の世情を混乱させたくない」

 「黒人同士、隣人同士でも識字率が違いすぎると一緒に生活したくないか」

 「半分が生活能力がなくて、半分が泥棒だからな」

 「エチオピアと温度差があるな」

 「エチオピアは、世界最古の黒人皇帝がいる」

 「そして、国境が離れている。アンゴラとは、条件が違うよ」

 「しかし・・・どうしたものかな・・・・」

 「地下資源が多いからソビエトとアメリカは退かないし」

 「武器を売って、儲ける」

 「酷いな」

 「人が減った方が争いも小さくなって好都合なんだ」

 「人道って、言葉知っているかい?」

 「・・・国境封鎖を解けよ」

 「そうそう。混乱が大きくなった方が武器も売れるし」

 「うん、最新の暴動鎮圧機材一式あるんだ。国が大きくなるのは、いいぞぉ〜」

 「やっぱり資源は安定供給が一番だよ」

 「そうそう、借金して戦車を買ってだな」

 「アンゴラを占領。鉱山利権を叩き売ってだな、借金を返すんだよ」

 「うんうん、楽勝、楽勝」

 『おまえら、地獄に落ちろ!!』

 「・・・・・・・」

 「」

 「」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  

  

 アメリカの宇宙船アポロとソビエトの宇宙船ソユーズがドッキングに成功する。

 瑞穂宇宙ロケット基地

 「・・・米ソ競演か」

 「米ソとも、世界平和を演じているんだよ。デモンストレーションとしては最高だね」

 「例え、ICBMを向け合っていてもか?」

 「日本も、有人宇宙船を上げたいですね」

 「予算が出たらね」

 「・・・最近、社会福祉が増えていませんか。社会主義じゃあるまいし」

 「老人が増えるとな。どうしても社会福祉が増えるんだよ」

 「むかしの軍事予算と同じになりますよ。予算が予算を呼んで過保護に膨れ上がっていく」

 「人口比率には勝てないだろうな」

 「国民の声。自分は、贅沢しているつもりはなくても、貰えるものは貰う」

 「議員も最大多数の国民の味方ですか?」

 「そして、集票と設備投資は、そっちに流れる。民主主義だから」

 「わかっては、いますけどね」

  

   

 ブレジネフ書記長がフォード大統領と会談

 

 08/

 パプアニューギニア独立(オーストラリア・オランダ・アメリカ)

 太平洋戦線で、連合軍側に取り残されていたニューギニアが独立。

 

 

 エチオピアの皇帝ハイレ・セラシエ没。83歳

 

 ペルーで軍の無血クーデター。

 ベラスコス大統領は、月影VTOLで逃亡。

  

  

 09/

 フォード大統領の暗殺未遂事件が再び起こる。

  

 イギリス隊がエヴェレスト南西壁を初登頂する。

  

 天皇・皇后が初の訪米に旅立つ、

 ミッドウェー海戦の敗北後、日本を指導し、

 アメリカ建国以来、最大の損失を与えた戦争指導者だった。

 戦後、日米は同盟関係となり、

 天皇訪米で名実共に同盟関係になったといえる。

 双方ともアドリブ無しの会話で日米関係が修復されていく。

  

 10/

 パプアニューギニア。国連加盟。

 インドと中国の国境で衝突。

  

 11/

 アンゴラ独立(ポルトガル)

  

 WHOが、アジアでの天然痘の消滅を宣言。

   

 第1回主要先進国首脳会議(サミット)。

 フランス、パリ郊外ランブイエ

 「・・・いやぁ〜 五月蠅いソビエト、中国、後進国がいないと国際会議も楽だねぇ」

 「話しも早い」

 「煩わしくなくていいね」

 「ソ連と中国は、後進国をけしかけて、せびるからな」

 「あの、偽善者どもが他人の金をいいように使いやがって」

 「養成型の投資は、貧しい者にとって面白くないのだろう」

 「中長期的には、そっちの方が後進国のためになるんだよ」

 「短期的でもいいよ。国力差が広がっていた方が自由にできるし、優越感にも浸れる」

 「それはそうと中東は、雲行き怪しくないか」

 「ユダヤ人同士の仲違いか・・・」

 「白人系ユダヤ資本と東洋系ユダヤ人・アラブ資本連合がぶつかっている」

 「怨恨は、イヤだね」

 「だいたい、本筋は仲良くしていたのに後から来た分家がケンカを売って、どうするんだよ」

 「パキスタンの軍警察はユダヤ人同士のギャング抗争に呆れている」

 「東洋系ユダヤ人も資金繰りが付いて凶暴になったかな」

 「パレスチナ人と東洋系ユダヤ人が組むなよ。ややこしい」

 「あれは? 混血優遇政策」

 「パレスチナ人と東洋系ユダヤ人は、それなりだが白人系ユダヤ人は進んでない」

 「公職に付けられるからといって、宗教的な垣根を越えるのは勇気がいるよ。切っ掛けもね」

 「今のところ、紛争は、歴史的な要素でパレスチナ」

 「公国連合の拡大と絡んでいるアンゴラ」

 「犠牲者の大きなインドか」

 「クルド人の反乱もだ」

 「どうでもいいけど、我々の利権が脅かされるのは困る」

 「「「「うんうん」」」」

  

 12/

 アメリカ大統領フォードが中国を訪問。

  

  

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 月夜裏 野々香です。

 史実と違って社会福祉の増加は遅れ気味です、

 それでも、人口比に応じて増えつつあるようです。

 史実より、体力が、ありますが産業も軍民で分散されて、

 基礎体力に勝るアメリカ有利という感じです。

 また、政治・政策に関心を持つ者は史実より多いです、

 村社会のしがらみが強いのか。

 日々の生活と労働に追われやすいのか。

 柔軟性が低く、融通が利かなくても、変化が少なく、

 熟練化しやすい縦割り行政が好きなのかもです。

  

  

 日韓・日中とも国交回復は、チベット独立戦争のおかげで遅れていました。

 しかし、利益の大きな中国。

 徐々に国交回復の気運が生まれつつあるような気がします。

 

 

 1975年

 特色としては、仲間で戦うゴレンジャーが斬新だったような気がします。

 文化を配信できる国と。

 まだ、配信することすらできない国とは、国民意識に隔たりがあるような気がします。

 妬ましいやら、羨ましいやらでしょうか。

 フランダースの犬は泣きました。

 

        

  

 

 

 『ミッドウェー海戦のあと』のオレンジャー (ゴレンジャー)

 聖白    キリスト教   

      緑と犬猿の仲、すぐケンカする。金に目が眩みやすい。得意技 原爆拳&機動拳

 聖黄    ヒンズー教

      弱点 牛が駄目 カレーが好き。困っている人がいても階級が違うと助けない。

 聖青    仏教

      仲間の仲裁で、ほとんどの精力を使い果たしてしまう器用貧乏

 聖緑    イスラム

      白が嫌い。弱点 豚が駄目 テロが好き。得意技 自爆拳

 聖桃    ラマ密教

      秘宝を持っていて、それが狙われやすい。当然、女の子。

 敵が現れるまで、自分本位の自由を分かちあって、仲間割れ、

 

 赤龍    ソ連      とても強い。得意技 原爆拳&機甲拳

 黄龍    中国      たくさんの兵隊を率いている。得意技 人海戦術

 黒龍    東ドイツ    洗脳が得意。 得意技 仲間割れ工作

 灰龍    キューバ   先鋒、元気がいい割りに強くない。

 青龍    一般

                潜入部隊。洗脳部隊。

               合言葉、“羨ましいよ” “もっと分けてよ” “謝罪しろ” “賠償しろ”

               得意技 拉致。

 

 レッド軍は、ピンクの持つ宝石で平等な世界を作るんだと燃え、

 ヒーロー戦隊が仲間割れでヘトヘトになった頃に現れる。

 仲間割れの原因は、カレーだけでなく、

 中華丼、餃子の具、ラーメン、スパゲッティなど、ドンブリ物が多い。

 最後に、子供たちに、好き嫌いは、いけないよと、フレーズがつく、

 

 

 

  

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よろしくです。 

1975年 昭和50年 誕生酒 (楽天)

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第84話 1974年 『チベット独立、そのあと・・・』
第85話 1975年 『カレーの肉は?』
第86話 1976年 『出るクイは、打たれるよ』