第91話 1981年 『覇王と魔王』
01/
ギリシアがECに加盟する(第2次拡大)。
ジュネーブ大学で、クローンマウスが誕生。
テヘランのアメリカ大使館人質事件でアメリカとイランが解決協定に調印する。
アメリカは内政不干渉を誓約する。
アメリカで、レーガンが第40代大統領に就任し、共和党政権が成立する。
テヘランのアメリカ大使館で人質になっていた米国人52人が444日ぶりに全員解放される。
中国、四人組裁判、江青(67)、張春橋(63)に死刑判決が下る。
02/
EC外相理事会が、対日貿易摩擦緊急対策を協議する。
アメリカのレーガン大統領が経済再建計画を発表(レーガノミックス)。
規制緩和による投資促進と、減税所得による貯蓄増加
歳出配分の軍事支出を増やして強いアメリカの再建。
金融政策により物価上昇率を低下させる。
成功すれば貯蓄増加と規制緩和により投資が促され供給力が向上し、
経済成長の回復で歳入が増加、
税率低下による歳入低下を補い歳入を増加、
物価の上昇は、金融政策により抑制されるので歳出への制約は低下する。
結果として、強いアメリカ再建。
実に素晴らしい理想的な展開なのだが種明かし・・・
アメリカ国債金利が14パーセントに跳ね上がり、
みんながアメリカ国債を購入し、減税した歳入分を上回っただけともいえる。
アメリカが日本に “国債を買わないか” と言ったのがこれ、
その場しのぎで、高利貸しから金を借りたようなものなの。
普通の個人と企業なら年利率14パーセントという馬鹿げた借金は避ける。
しかし、貸す側にすれば美味しい、
貸す金額にもよるが何にもしなくても左団扇で生きていける、夢の利息生活。
資本主義万歳〜!!!
世界から資金がアメリカに集まってドル高。
ドル高は、アメリカ企業の輸出製品が高くなり、売れなくさせ、競争力を低下させてしまう。
輸出入の収支は反転し、貿易赤字も急速に拡大。
収入もないのに借金を抱えてしまった状態で、軍事拡大。
軍事支出増大と減税は、財政赤字(国債・累積債務)と貿易赤字(ドル高)と、
泥沼サイクルに入り込んでしまう。
双子の赤字がアメリカ経済の足を引っ張る。
しかし、世界中から借りまくったお金で軍事拡大できるアメリカ人も豪胆で、
アメリカ白人の45パーセントは、O型で性格といえる。
とはいえ、40パーセントは、A型で、
血液型は、あまり関係がないような気もする。
スペインで治安警察隊の一部、過激派が改革を要求。
350人を人質に国会議事堂を占拠。
科学人工衛星「ひのとり」が、太陽のフレア現象の観測に成功する。
ベトナム連邦
自由資本主義体制の南ベトナム州と、
共産主義体制の北ベトナム州を抱えて良好な成長を見せていた。
一人の大統領・副大統領が国民から選出され、
双方とも同数の議員を選出。
連邦政府の州政に対する権限は、経済格差を保つ程度の裁量だけに制限されている。
この国の制度が珍しいのか、観光立国としての資質が元々あったのか、観光客が増えていた。
ダナンの酒場
ルアモイ ネップカム ネップカム リカフェ
数人の観光客がくつろいでいた。
「・・・・この国の制度が成功するかは、経済格差を如何にしてバランスを取るかだよ」
「今のところ格差は、それほど目立たないよ。国民の7割が農民で農業国だからね」
「ホーおじさんのおかげで北側のモラルが高いんだよ」
「共産主義にありがちな粛清もなかったし、不正腐敗も少ない」
「ちっ! 善意の指導者か、余計な事を・・・・・」
「日本とソビエトが北ベトナムを支援するからだ」
「日本にとって北ベトナムは、南ベトナムのアメリカ軍基地に対する対抗処置だし」
「ソビエトとって北ベトナムは、中国を挟撃するソ連共産主義の東南アジアの拠点だよ」
「支援するなは無理だ」
「しかし、自由主義が、ここでは違うよモノに見えるね」
「本当に自由なのは、国民が自由と平等の選択ができるベトナム連邦なんだと」
「本当に南で共産ゲリラは育っていないのか?」
「共産主義が、お望みなら北に行けばいい」
「自由資本主義が、お望みなら南に行けば良い」
「国境は、開放されて好きな体制に行ける」
「なんで、命がけでゲリラをしなければならないんだ?」
「どこにでも反体制分子がいるだろう」
「反体制分子であることで食べているヤクザな人間にとっては不便だな」
「“好きな方に行けよ” となるだろう」
「普通の人間は、衣食住が叶えば、体制なんて二の次・・・」
「・・・腹立つな〜」
「たぶん、西ドイツ・東ドイツがベトナム方式を取り入れて統合される可能性が出てきたよ」
「現に動きもある」
「朝鮮半島は?」
「あっちは同族で殺し合っている」
「さらに経済格差が広がりすぎて難しい」
「ソビエトが世界赤化を捨てないとな」
「・・・共産主義の脅威が低下すれば兵器が売れなくなるのでは?」
「輸出入は、増加するんじゃないか」
「いま一番、発言力が強い連中が黙っていないだろう」
「アメリカ軍産複合体は補填されない限り、収まらないよ」
「兵器を、その辺の駄菓子屋の菓子と一緒にするな」
「額が大き過ぎて補填なんかできるものか」
「日本に国債を買ってもらわないと大恐慌だぞ」
「日本は買わないのか?」
「どうぞ、大恐慌してください、だと」
「まじっ!」
「合衆国の貿易収支は?」
「在米日本資産は、どうするんだよ」
「後進国の経済成長が早いだろう」
「日本は、名義上、在米日本資産の公債を公国連合、印パ、東南アジア諸国に振り分けている」
「そっちで収支を合わせるんじゃないか」
「そうそう、資産を差し押さえると有色人種諸国全体がアメリカ合衆国の敵になるな」
「ECも黙っていないよ」
「アメリカとの貿易収支より、有色人種と中国との貿易収支も伸びているし」
「そっちで補填する気かも・・・」
「うげっ!」
「だからジェットエンジンのライセンスを認めれば良かったんだ。日本が剝れてるじゃないか」
「ジェットエンジンだけじゃな〜 F15イーグル本体を買ってもらわないと・・・」
「くっそぉ〜 どうするんだよ」
「F14でもいい、グラマン社を守れる、このままだと統廃合で産みの苦しみだ」
「ICBMで世界中を脅迫して金を巻き上げる」
「あはは・・・・」
「だいたい、日本が悪いんだぞ」
「あんなに工業製品を世界中に売るから、なに作っても売れない」
「日本のせい、ばかりとはいえまいよ」
「ECの工業力も上昇中だよ。29年の大恐慌前夜とそっくり」
「今度は、スパンが長かったけどね」
「割とね。後進国の購買力が伸びたのが良かった」
「日本のおかげ?」
「後進国が経済成長したのはね」
「プラス、借金を背負わせて踏み躙っただけ」
「とにかく、同盟国にアメリカ国債を買ってもらう。アメリカ兵器を買ってもらう」
「駐留アメリカ軍の財政負担をしてもらう、しかないだろうな」
「根本的な解決になっていないよ」
「韓国と海南国は、買い支えられそうにないし」
「だいたい、軍事力で押さえつけて、他国から金を巻き上げるなど、マフィアだよ」
「わかっちゃいるけど、やめられないよ」
「世界の警察を気取るにはソビエトが強大でなければならない」
「それには、どうしてもベトナム連邦が邪魔になる」
「・・・ベトナム連邦が、こっちの思惑に乗るとは思えないが」
「アメリカ人の生活に問題ありだよ」
「楽して儲けようとするから足をすくわれるんだ。薄利多売でいけよ」
「アメリカドリームに反する」
「あほ・・・」
「日本だって、アメリカの消費経済の恩恵を受けただろう」
「とりあえず。ベトナム連邦がカンボジアとラオスに戦争を仕掛ければ、アメリカの兵器が売れて」
「ベトナムの体制も自滅する」
「乗りそうにないな・・・・・」
「んんん・・・・ぜんぜん足りないぞ。イラン・イラク戦争もアフリカの内紛も・・・・」
「もう一度、チベットは?」
「無理」
「南米・・・」
「・・・そういえば、軍国主義だっけ」
「あそこは、アメリカが経済支配しているから、そっとして欲しいんだと」
「・・・どっか戦争しないかな〜」
「宗教国家連合は?」
「そういえば、チベットに宗教国家連合軍を組織するんだっけ。緊急展開部隊」
「宗教国家連合軍が強くなると、国軍の士気が低下するから。痛し痒し」
「買ってくれるんなら良いんじゃないか」
「最新兵器をメンテナンスできる国は少ないよ」
「買いたいところには、売ったら良いんだ」
「日本製が好まれるのがわかる気がする」
「あそこは、コンピュータも、そうだからな」
「ハード・ソフト一体の細切れ構造が本当に良いのかね」
「少しかさばりやすいだけで自律神経が強いと考えて良いんじゃないか」
「どこが壊れているのかも、すぐにわかる」
「後進国では、それが良いんだろうな」
「英語のわからない素人でも言語ユニットを取り替えれば済む」
「腹立つな〜 ドイツ人やフランス人まで味方に付けやがって」
03/
レーガン大統領が学生に狙撃され、重傷を負う。
04/
スペースシャトル「コロンビア」が地球36周の処女飛行を終えて帰還する。
アメリカが、対アフガニスタン制裁だった対ソ穀物禁輸を解除する。
マザー・テレサが来日する。28日の離日まで各地で講演を行う。
05/
日米が乗用車輸出入調整で合意。調印。
日本人記者たちがラウンジでくさっていた。
「なんなんだ。あの自主規制って」
「日本車は人気があるからアメリカ側で規制すると、アメリカ国内で反発があるだろう」
「だから日本側で自主的に規制して欲しいってこと」
「っで。日本側が、嫌がって “そっちで、規制すればいいだろう” って」
「それが、いやだから、自動車輸出入調整・・・・・・・なんのこっちゃ」
「まぁ お互いにファジーに調整するってことかな」
「ぜんぜん、決まってないやんけ」
「とりあえず。外交の体裁だけでもとらないと駄目なんだろう」
「そんなに危ないのか、アメリカ経済」
「んん・・・どうかな・・・・日本にジェットエンジンのライセンスを売るとか、売らないとか・・・・」
「なんだよ。散々ごねていたくせに」
「F111は?」
「あれは駄目だろう」
「F4ファントムなら何とかなってもF111だと、アメリカ機動部隊は大打撃だよ」
「・・・他の技術は売るんじゃないかな」
「買うの?」
「さぁ〜 ドル高にしたからな。日本政府も国防費に冷たいし」
「確かに国防省はぶすくれてるな」
「ほら、IBM-PCに対抗し、JIS規格でPC9801を出しただろう。あれの設備投資に回ったんだよ」
「そういえば国防省もアメリカの兵器を買って、装備の更新が後回しにされたって、ぼやいていたな」
「だけど、せめて、航空エンジンと電子装備だけは、何とかしないと」
「電子装備を優先させたらしいよ」
「中国景気で弾みがついているから余計なことで、お金を使われたくないらしい」
「まぁ アメリカが弱ったところを見計らって、安く買い叩ける物は、安く買い叩く方が良いよね」
「だけど、アメリカ経済がこけると、日本も打撃が大きいだろう」
「アメリカ国債を買えって?」
「いくら14パーセントで、金利が良いからって・・・」
「んん・・・アメリカ経済に依存している企業は、そうだろうな」
「やめてくれよ。牛肉なら買えるけど。企業のために日本全体に借金を背負わせるなよ」
「路頭に迷う人間が・・・・」
「資産や組織の再構築は、社会の健全性を保つ上でも必要だよ」
「血を流すのを嫌がってたら駄目だよ」
「アメリカ経済を買い支えるより、日本の国債で日本企業を支える方が良いような気がする」
「日本人って、そういうの嫌いだから、国内で足引っ張るの好きだし・・・」
「同類相食む? だからって、アメリカ国債を買うのは、間接的過ぎるだろう」
「そういえば自主規制で上手くいかなかったアメリカが日本の特許関連を漁っていったな」
「何で? アメリカで漁れば良いだろう。向こうの方が、多いのに・・・」
「日本人って、権威主義的なところがあるだろう」
「個人や下町工場なんて相手にしないとか」
「大企業とか、大学教授とか、偉い人の言うことしか信憑性がないとか」
「担保がないと投資しないとか」
「アメリカ人は、そういうのが、あまりないから・・」
「利益に対して無節操なのね」
「じゃ 言語の問題さえ乗り越えれば掘り出し物の比率で楽なのかな・・・・」
「・・・それって、やばくねぇ」
「やばくても、やられてしまうのさ」
「日本経済は、担保経済、ローリターン・ローリスク」
「むかしの八木アンテナも、もっていかれたし」
「・・・またやられるのかよ」
「何とかなんないの? いくら眠っているからって」
「特許関連の件数を知らないのか。ピンからキリまで腐るほどある・・・・無理だね」
「眠っているのが一番の犯罪だね。アメリカに持っていかれても見返りがあるよ」
「アメリカは、投機開発浪費型。日本は、担保改良貯蓄型」
「持てる者と持たざる者の違いとはいえ。世の中、良くできているよ」
「んん・・・いやになるほど、ぴったしだ」
「お互いに相手の真似をしようとしても邪魔をしようとしても上手くいかないだろうな」
「そういう国民性だね」
「じゃ 日本で発明された物もアメリカで開発されて」
「日本で改良されて生産、アメリカで浪費されて、日本で貯蓄?」
「アメリカは、パテントで生きていけるんだ。さすが世界の中心」
「上流階級が生まれるわけだ」
「日本にも上流階級はあるだろう」
「賃金格差が20倍から30倍じゃ 目くそ鼻くそだよ」
「賃金格差1000倍以上、違わないと上流階級の仲間入りなんてできないね」
「良いのやら、悪いのやら・・・」
「20倍から30倍じゃ 日本人って卑屈になるレベルが小さすぎるな」
ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世が狙撃される。
中国新華社。
ベトナムとの国境で1979年2月以来最大の軍事衝突。ベトナム兵150人が戦死したことを報じる。
インド
ルル・ヤマトの反乱部隊は、藩王やバラモンを殺し、
他の藩王やバラモンの仕業に見せかけ、不信感を植え付け、
欲望、軋轢、権力闘争を利用し、インド上層部を対立させていた。
インド社会は、バラモン、クシャトリアが合い争うことで、さらに混迷を深めていく、
状況は、ダリットも同じだった。
階級差別と偏見が人間不信を強め、
誤解は敵意を生み、
憎しみは殺戮で味付けされ、
報復の応酬が殺意の連鎖を繰り返させ、
インド社会を真っ暗な死の淵に滑り込ませていた。
捕らえられ者達が墓穴の前に並べさせられ、
銃弾が後頭部を撃ち抜いていく、
無造作なのだが人の心が残っているとできないことでもある。
中国西域では、もっと、効率のいい方法があるらしいがインドに伝わっていない。
第二次世界大戦より多く死んでいる、
にもかかわらずインドの総人口は、6億を少し切った程度。
インドにしろ、中国にしろ、内戦一発で数千万の命が失われる、
彼らが第二次世界大戦を程度の低い内戦レベルと思ったとしても否定し難く、
インド社会は、上下に関係なく、職種に関係なく、信頼関係をズタズタにされ、
反乱と内戦が拡大していく、
しかし、適度に資産が再構築され経済成長しているのも事実だった。
この状況で規律が保たれた権力組織、武力組織は少ない。
コーネリア部隊は、そのカリスマで、
K大佐の×ね×ね機械化旅団は、外人部隊であることで、
そして、ルル・ヤマトの反乱部隊は、敵を利用した裏切り狩りが効を奏し結束していた。
ダリットに酷い扱いをする中級階層(ビアイシャ、スードラ)に黒い蛇が描かれたカードが送られる。
このカードは、死の宣告。
ダリットに酷い仕打ちをした者に送られ、殺されていく、
上層階層は、守るべき衛兵や私兵がいるものの、
中層階層は、自分を守る防壁がない事に気付き震え上がる。
毒蛇によって咬まれる事が多く、
報復の恐怖がダリットに対する差別を弱めていく、
ルルとヤマトの反乱軍を “黒蛇” と総称したのは、
ダリット反乱が末期的な状況になってからだった。
インドで、一つの宗教が起こっていた。
チベット帰りの男が教祖。
キリスト教、仏教、ヒンズー教を合わせ、矛盾点を省いて作られたような教理。
新興宗教は、排斥されやすい。
しかし、少しばかりの排斥のあとヒンズー教と妥協が行われ定着してしまう。
多神教のヒンズー教世界で新興宗教は珍しくない。
融和と寛容さで、ヒンズー教は優れている。
いまさら一つくらい神様が現れたところで気にならないのだろう。
有力な藩王と貴族が支援しているのか、あっという間に広がっていく。
「・・・戦いからは、何も生まれません。心の平穏が重要なのです」
「心に平穏があれば、上下もなく派閥もなく」
「融和しながら理想的な社会を築いていけるのです・・・・・」
多くの民衆が、その男の声を聞くために集まり、施しを受けていく、
「これ、貰ったの・・・」
小さな花のアクセントが付いたサリーを着た5歳ほどのダリットの娘が嬉しそうに
ルルにお菓子を見せた。
「・・良かったね」 ルル
少女は、お菓子を頬張りながら駆けていく、
陽炎の様な、はかない喜び。
彼女の将来は、売春宿、排泄物、動物死体の処理、皮革業、清掃業・・・・etc・・・
よほどの幸運に恵まれなければ強姦されず、一生を送れるダリットの娘はいない、
不運なら殺される。
いくつかの区画の向こうでは、ダリットの女子供でも殺されていた。
その新興宗教は、ダリットにも分け隔てなく “施し” をし、
飢えているダリットに好まれていく、
「・・・ルル。すごく、流行っている宗教だね」
「・・・・・・・」
「ルル」
「・・・・・・・」
「ルル」
「あっ いや・・・この宗教団体には、近づかないようにしろ」
「なに? 罠?」
「たぶん・・・」
人は物に釣られ、理想と現実を踏み外すほど愚かでも、
悪意を見抜けないほど鈍くない、
宗教の多くがそうであるように、詐欺がそうであるように、
教理全てが嘘ではない、
9割の事実に1割の裏が刷り込まれている。
事実が多く、裏が少ないほど宗教的に巧妙で高度といえる、
そして、多くの信者を集めることができた。
教祖自体は、善意に見える。
しかし、利用されている可能性はあった。
ヤマトは机の前で
・・・カキカキ・・・・・カキカキ・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ラフィー・コーネリア様へ
君と踊った短い時間。
君の記憶と、君への思いは、消えず。
いまも、心を占めています。
会いたい。コーネリア。
愛する君に会いたい。
ヤマト
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『・・・・むふっ♪ コーネリア〜』
ルル・ヤマトのアジト
バラバラの経路で入手した古い三つの陶器が組み合わさると、
一つの模様が作られる。
おぉおおおお!!
喜びの気配が周りから伝わる。
「・・・・こいつを○×藩王の手に届くようにしてみるか」
「三つの陶器を合わせれば良いだけだ」
「えっ! ルル。宝探ししないの?」 ヤマト
「偽物に引っかかって部隊を全滅させたくないよ」
失望の雰囲気が広がる。
部隊が大きくなれば食い扶持も増える。
当然、あこぎな事もするが宝探しで資金が入れば、それに越したことはない。
ルルが訝しげに合わされた陶器を見つめる。
「・・・アショーカ王の秘宝・・・か・・・K大佐も懲りないな・・・」
見破ったルルもクシャナ王朝の財宝を使って、藩王とバラモンを仲違いさせていた。
やり口は違っても誘き寄せられ、殲滅されてはかなわない。
「K大佐なんだ・・・・」
「それとも、一つを××藩王に渡してK大佐と仲違いさせるか・・・・」
「良くできているのに・・・・・」 ヤマトが陶器の図柄を見つめる。
「できすぎだよ」
「こんなに簡単に三つのアイテムが揃うものか」
「K大佐も、ひねりが足りないな」
「あのやろう・・・・」
「売りつけた方が良いな。どうせ、あの男も騙された口だろう」
「インドって、こういうのばっかりだ。たまには本物でないの?」
「偽物の方が小金が溜まりやすいんだ」
「本物を探すより、偽物をたくさん作って売った方が金持ちになれるよ」
「ひどいな・・・」
「インドは希望を売っているんだ」
「失望もね」
「信じている間は紙幣と同じ価値があるよ」
「見せ掛けの価値?」
「人の欲が作った価値だ」
インドで、4段式宇宙ロケットが打ち上がる。
轟音を響かせ、白煙の柱が宇宙に向かって伸びていく。
「・・・コーネリア様。打ち上げ成功のようです」
「我がインドも余裕があるものだ」
無理をしているのは確かなのだがインドが成長している象徴であり、
これによって、インド国民の結束を固める手法といえる。
「資財と社会資本を減った人口資源に振り分けられたせいでしょう」
「購買力も増えているようです」
「内戦は困るが。少しくらい人口が減ったところで痛くも痒くもないわ」
「調整と和解が残っていますが内戦は収拾が付きそうです」
「上流階級同士を戦わせる手法も、ほとんど試されたかと・・・」
「バカな上層階層でも、あれだけ殺し合わされればいい加減に気付く」
「むしろ、馬鹿は、いない方がいいのだ」
「確かに・・・・・」
「もっと減らしてもらっても良いくらいだ・・・・・・例の作戦は?」
「はい、ダリットを新興宗教に吸収させて、敵の内情を探らせています」
「一部の地域を除いて、効果があるようです」
「ルルとヤマトの部隊か?」
「はい」
「もっと、信者に “恵み” と “施し” を与えてやろう」
「可能な限り情報を集めよ。3ヵ月後には、一網打尽で殲滅してやる」
伝令がやってきて、コーネリアに手紙を渡す。
差出人を見ると。
呆れ顔で封を切って中身を読むと、少しばかり、頬が紅くなる。
「・・・遺書代わりに貰っておこう」
手紙を捨てず内ポケットに入れるのは、脈があり、なのだろうか。
06/
パキスタンがイラン・イラク戦争の調整に乗り出す。
「イスラム教世界にキリスト教世界の介入を許さず」
この文句は、キリスト教世界に対する牽制と同時にイスラム世界に対する一体感を強調させる。
また、宗教国家連合の支持も取り付けていた。
“ラサの宗教国家連合は、ニューヨークの国際連合に並ぶ国際機関である”
という印象を世界に与える絶好の機会にもなっていた。
これに成功すれば宗教連合は威厳だけでイランとイラクを和解させたことになり、
献金が増える目算が立っていた。
宗教組織は、何も生産せず資本を集める。
投資に対する集金回収率は、他の勢力を圧倒する。
商業簿記、工業簿記、銀行簿記を知っている者は、宗教簿記を見ると絶句する。
さらに無償の労働。
F15イーグルは、100億。
生産し、売って、原価を引いた利益とプラス、消耗品とメンテナンス分で、それまで。
一方、100億で、数十ヵ所に教会を建てた場合、
信者への還元率を引くと献金回収率は、どの程度だろうか。
宗教国家連合は、ラサの権威が強いほど、宗教団体への献金が増えた。
莫大な金が撒き餌として使われ、
ホメイニー師とサッダーム・フセインはラサで手を取り合い、
涙ながらに抱き合うは世界に感動を与え、世界平和の訪れを予感させ、
イラン・イラク戦争は、盛大で歴史的な講和調印により終結してしまう。
某所のTV画面の前で
「演出だよな。演出だよな」
「そうだけどさ。無粋なこと言うなよ。感動的じゃないか」
無論、感涙する者もいれば失望の涙を流す者もいたりする。
ニューヨーク ウォール街
某系列企業の株を買い占めた者達は、顔色を失い、一斉に軍需関連株を売却。
軍需関連株は値下がりしていく、
・・・・・・・・・・・
底値を値踏みし、買い時の様子を見ていた者たちは、周りの様子が違うことに戸惑い始めた。
・・・・・・・・・・・
誰も株を買い支えず。
・・・・・・・・・・
不吉な予感に総毛立つ。
・・・・・・・・・・
動揺は、別系列の株価にも影響を与え・・・・
・・・・・・・・・
他の銘柄を巻き込んで大暴落。
・・・・・・・・
大恐慌の始まりだった。
・・・・・・・・・
イランのバニサドル大統領が解任。
中国共産党六中全大会で華国鋒主席辞任、胡耀邦が主席に昇格。
文革否定の「歴史決議」を採択する。
この月、アメリカの公衆衛生専門誌に
「ヘルペス感染」で入院した4人の男性患者の症例が報告される。
エイズ症例報告の始まり。
07/
ニューヨーク・タイムズ紙
原因不明の癌が41人の同性愛者から発見したことを報じる(エイズの発見となる)。
カナダのオタワで主要先進国首脳会議(オタワ・サミット)
会議の内容は、アメリカ大恐慌一色。
一度信頼を失った株は、底値に達し、
アメリカの株を買わされていた欧州諸国は、軒並み経済が破綻していく、
もちろん、巡り、巡って、日本経済も打撃を受けるがタイムラグがあった。
アメリカの失墜でチャンスのはずのソビエトも困惑。
輸入してもらうはずの食糧がお預けでは国民が飢餓になっていく、
これは革命前夜よりも悲惨で、
反体制派とイスラム過激派は暴動と武装蜂起に訴えるより、生きる術が無くなっていた。
そして、アメリカ、
軍産複合体の増大と圧力による軍国主義化への警告は発せられていた。
アイゼンハワー大統領の離任演説(1961/01/17)は、一般的にも知られていた。
しかし、食い止める力がなかった。
沈痛なアメリカ大統領とその他の国々
「・・・・・・」 落ち込むアメリカ大統領
ぼそぼそと話し合う、諸外国代表。
「・・・・なんで、イラン・イラク戦争終結がアメリカ大恐慌になるんだよ」
「切っ掛けじゃないの?」
「落ちたのは軍需産業だけだろう。株式市場じゃ一分野じゃないか」
「比重だろう。アメリカ企業の軍事部門は6割を超えているから、即、やられるんだ」
「日本は?」
「三菱重工が最大で3割弱」
「すくな・・・」
「だけど、地球の反対にまで影響が行くなんて、地球は狭いね」
「・・・・これがアメリカのシンクタンクが推測した理由?」
目の前に書類が並べられていた。
“一、宗教連合によって、イラン・イラク戦争が終結させられ、アメリカ合衆国の威信が低下した”
“二、アメリカ消費経済が日本・欧州諸国の工業力に依存しすぎた”
“三、アメリカの生産品が売れなくなった”
“四、アメリカ国債が予定より売れなかった”
“五、ベトナム連邦の資本・共産連合国の誕生で米ソ冷戦対立が色褪せた”
“六、有色人種諸国の治安が維持された経済成長と国債緊張関係の低下による軍事費削減”
“七、宗教国家連合による国際紛争解決”
“八、ドル高によるアメリカ製品の輸出不振”
“九、原子力発電所のキャンセル100基以上。1979年スリーマイル島原発事故以降、新規原発の発注ゼロ”
「どうせなら大恐慌になる前に出せばいいのに。不意打ちじゃないか」
「出していたけど、真実味がなかったみたいだな」
「よくある話しだ。わが国も似たような事を書いて出していたぞ」
「しかし、来る時は、あっという間だな・・・」
「おかげで政府は、アメリカの経済恐慌を見抜けなかった無策無能扱い」
「我が国は、予見していたぞ。恐慌を起こす日まで、起きると思わなかっただけだ」
「意味ねぇ・・・」
「あはは・・・」
「・・・やれやれ・・・・で、どうするの?」
「どうって?」
「いま、余裕があるのって、日本じゃん」
「アメリカのお金持ちは、どうよ」
「お金持ちは、ケチだから、お金持ちなんだよ」
「こういうときに放出するから、お金持ちなんだろう」
「アメリカ人は浅ましいから、そういう貴族然とした品格や品性は備わっていないの」
「とにかく、アメリカの経済再建の手腕を見ないとね」
「「「「「「「うんうん」」」」」」」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「アメリカと、その西側同盟諸国は、宗教国家連合と協調し、反共による政策一致を認め」
「対ソ・アフガン同盟軍による民主主義アフガニスタンの速やかな回復を行うものとする・・・・」
といったサミット共同宣言がなされた。
08/
日立製作所とゼネラル・エレクトリック社が、ロボットの製造・販売で提携を発表。
ボリビアで軍事クーデターが起こる。
香川県仁尾町で太陽熱発電プラントが稼働を開始する。
アメリカ政府が、中性子爆弾の製造再開を決定する。
気象静止衛星「ひまわり2号」が打ち上げられる。
アメリカ海軍機が、地中海のシドラ湾上空でリビア軍機2機を撃墜。
インド
全国的な虐殺が起こっていた。
ダリットの味方だった新興宗教が実は、カースト側の謀略。
引っかかったダリットの反逆者は、次から次へと吊るし上げられていく、
公開処刑場には、民衆が集まり、
インド軍が厳重な警戒に付いていた。
ルル・ヤマトの反乱部隊は捕らえられていないものの、
戦力差は大きく、いつ攻撃されてもおかしくない状態と言えた。
しかし、ノコノコ出て行けば捕まりに行くようなもので、まさにお手上げだった。
月影VTOL
コーネリアが地上の様子を見ていた。
「・・・コーネリア様。彼らは来ますかね」
「軍の配備は?」
「予定通りです。ルルとヤマトが動けば血祭りのはず」
「ルルは公開処刑をすれば天罰が下るとインド中に宣伝している」
「つまり、天罰が起こらなければルルの威信は低下し、求心力を失う」
「今回のダリット指導者層の処刑でダリット反乱は中枢を失います」
「残るのはルルとヤマトの反乱部隊だけ。もはや、彼らに勝機は、ありません」
「・・・・・・・・」
「どうか、されましたか? コーネリア様」
「不吉な予感がする・・・」
「圧倒的に優勢なはずなのだが・・・」
「何かを見落としているような気がする」
「ダリット軍に救援は来ませんよ。外国勢力も抑えています」
「いや、純軍事的な・・・」
「ダールトン。少し、周辺部を警戒した方が良いな」
「はっ! 確かに」
そして、処刑場を見渡せる遠くの山陰
数人の男たちが双眼鏡で処刑場の周りを見渡していた。
ルルの双眼鏡が数日前、微笑んでいた少女の死体をとらえる・・・・・
「・・・忠告したのに・・・バカが!!」 ルルが罵る。
ルルの新興宗教に近づくなという忠告は、他のグループに徹底されず。
ダリット反乱軍の指導層は、芋づる式に捕まえられていく、
ダリットは、貧しくあまりにも惨め過ぎた。
与える者に引き寄せられた者たちを責めるのは酷だった。
新興宗教が善意か、悪意か、わからない。
しかし、利用されたのは事実のようだ。
暴挙を止めようとした教祖らしき男が撃ち殺されていた。
鉄の結束を誇るルル・ヤマト部隊 “黒蛇” のみが最後のダリット反乱軍だった。
「・・・ルル」
「ヤマト・・・計画通り。混乱に乗じて、本陣をたたく」
振り上げられたルルの腕が下ろされ、
それを合図に公開処刑場全域で連鎖的な爆発が続く、
ダリット反逆者の大量逮捕と公開処刑場は予測できた。
観衆が見やすく、大量の処刑者を出せる場所は限られている。
ルルは、予測していた処刑場4ヵ所に爆薬を仕込み、
そのうち、1つの誘導に成功し、さらに2つを的中させる。
処刑場は、観客も巻き込んで大混乱となっていく、
処刑場
連鎖的に巻き起こる爆発の衝撃が辺りを震わせ、
大恐慌を起こした大観衆が津波となって逃げ惑う。
爆発のタイミングは、バラバラで予測が付かず。動きが取れない、
「・・・・おのれ! ルル、ヤマト。やりやがったニダ!!」 吼えるK大佐。
「大佐・・・あ、あれは・・・・」
もうもうと土煙が立ち上り、間断のない地響きが大地を振動させる。
ルルとヤマトのいう本陣は、処刑場ではなかった。
ニューデリーの人口30万。
周到に準備された20万頭の牛がニューデリーに押し寄せ都市を暴走する。
ルル・ヤマトの反乱軍の侵攻でニューデリーは占領されつつあった。
インド全土にいるといわれる牛は、5000万頭。
ほんの一部でしかない。
しかし、それでもニューデリーの幹線道路と機能が遮断されてしまう。
安穏とダリット殲滅を見守っていたインド上層階級の中枢が
ルル・ヤマトの反乱軍によって制圧されていく、
怯えきったバラモン、クシャトリアは、装甲車や車で牛をひき殺し、ニューデリーを脱走し、
救援に駆け付けたインド軍も、牛で埋められたニューデリーに戦場は作れず、
ニューデリー上空を旋回する月影VTOLとヘリ部隊は、着陸する場すらない、
ルルの命令で、ニューデリー周辺のダリットも一斉に蜂起していく、
蜂起といっても殺し合いではない、
突きつけられる黒蛇のカード、
農場主を脅迫するか、農場主を吊るし上げ、
ニューデリーに向けて牛の群れを追い立てていく、
食料がなくなれば散っていく牛だが十分な時間稼ぎになった。
地上からニューデリーに向かうK大佐の機械化旅団は牛に阻まれ、身動きが取れなくなる。
内外のマスコミによってバラモンを乗せた装甲車が
牛をひき殺しながら逃げていく映像が撮られ、
インド国内だけでなく、全世界に配信、放送されていた。
そして、インド国会議事堂の中がTVに映されていた。
男たちが立っている。
「5000年の長きに渡って、全インド人の精神と肉体を支配し」
「抑圧してきた悪しきカースト法を、この瞬間、今ここで消滅する」
「全インド人民は、一人一人が神の前に自由と平等であることを」
「そして、全インド人がカースト法から解放されたことを、ここに宣言する!」
ルルが、全世界のマスコミを前にインド・カースト制消滅を宣言。
ルルが権勢と保身で既存勢力と妥協する 『覇王』 でないことを証明する。
そう、既存勢力と妥協せず根底から破壊してしまう 『魔王』 だということを・・・・
「・・・・これより、バラモン・クシャトリア狩りを行う! 男は全て殺せ!!!」
全世界は5000年に1人の確率で現れた魔王ルルを恐れ、
あるいは、賞賛した。
アンゴラ内戦に南アフリカ公国連合の調停に入る。
首都ルアンダの公館
ふて腐れた南アフリカ公国連合の代表が行きつ戻りつ。
ソビエト及びキューバの支援するアンゴラ解放人民運動 (MPLA)、
アメリカ合衆国と南アフリカ共和国が支援するアンゴラ全面独立民族同盟(UNITA)
そして、南アフリカ公国連合派。
「公国連合に加盟されない限り、終わらない・・・」
「3者とも同じ事を言うとは珍しいですね」
「経済格差がありすぎて、モザンビークの混乱も終わっていないのに・・・・」
「アメリカとソビエトは?」
「アメリカは、経済恐慌で利権を確保できれば手を退きたいと」
「ソビエトも同じだろうな」
「もちろん」
「・・・アメリカの妨害がない・・・チャンスといえばチャンスだがね」
「教育費を集中的に上げるしかないでしょう」
「借款できる国は?」
「日本」
「だろうな・・・」
09/
中米のイギリス植民地ベリセが独立する。
1988年のオリンピック開催地が、秋津に決定。
10/
エジプト大統領サダトがイスラム原理主義運動集団に暗殺される。62歳。
後任に副大統領ムバラクが就任する。
西ドイツのボンで反核集会が行われ、30万人が参加。
アメリカ世界恐慌の前と後、
アメリカと同列に並んだ日本は、面倒事を背負い込む気がないのか、
主導権を執る気はなかった。
1929年と同様、アメリカは西側のリーダーであり続けた。
国外のアメリカ資本は、アメリカ国内へ引き上げられ、
一部のアメリカ多国籍資本は、海外の闇の部分へと逃亡する。
資金の貸し渋りで止めを刺された西側諸国の企業が連鎖倒産し、
失業者が巷に溢れだした。
日本の輸出商品も行き先を求め、右往左往するよりなかった。
前回の大恐慌と違い、
日本は、有色人種諸国の経済成長と、
国交回復したばかりの中国輸出によって助けられる。
そして、韓国は、アメリカの直撃を食らって連鎖倒産を繰り返し、
韓国軍が民族暴動を銃撃して鎮圧していく、
韓国官僚は、天を仰ぎ “なんと天運に見離された国なんだこの国は・・・・・” とコメント
赤レンガの住人たち
「・・・アメリカの双子の赤字が小さいうちで良かったんじゃないか」
「軌道修正するのには、ちょうどいい頃合だろう」
「そういう点は、イラン・イラク戦争の講和に感謝すべきだろうね」
「それはそうと、買い物は?」
「ドル高だぜ・・・高すぎだよ」
「宗教国家連合だって、日本製兵器を買いたがるよ」
「ドル高のアメリカが買う分には良いんだけどな。買えないし」
「かといって、日本がアメリカ製を買うと、高すぎるし」
「ドルを下げないのか」
「アメリカ国債の売却をあきらめてないんじゃ・・・・」
「ひぇえええ〜 あきらめ悪い連中だよ。ドル安にしろよ。ライセンス買ってやるからさ」
「ライセンス交換でも良いんだけどな」
「日本は、アメリカに無いような物で、なにか、交換するような軍事開発していたっけ?」
「んんん・・・すくなぁ〜」
「もっと、F4ファントムを買えとか言ってこないだろうな」
「ひぇええええ〜 やめてくれ〜 装備を更新できなくなるよ」
「ジェットエンジンとか。F111だったら喜んで追加購入に応じるんだけどな」
「もっと粘ってたら、そうなってたかも」
「こんなことなら、アメリカ国債を買えば良かったんじゃないか?」
「日本で国債発行して、空母建造する方がマシ」
「金利14パーセントで良かったんだけどな」
「買い続けさせられる空手形なんか、買・え・る・か」
「だからって、何でアフガニスタンの民主主義を取り戻すのに国連分担金を使うわけ」
「追加徴収までしやがって」
「いや、どう考えても分担金だけで、十分足りそうだぞ」
「くっそぉ 私腹を肥やしやがって、肉だって、こんなに食うか!」
「IMFからも借りろよ。アメリカ企業の再建だよ」
「そういえば宗教国家連合。あそこがアメリカ公債を引き受けるとか、言ってなかったか」
「あいつら、集金率が良いからな。アメリカの株が底値になるまで待ってたんじゃないのか」
「いいよな。会計報告義務のない資本」
「アメリカ国債を買うくらいなら、アメリカ企業の株を買うね」
「宗教国家連合がアメリカ企業の株を買い始めたら。日本資本も便乗するの?」
「さぁ〜」
「ところで、インド革命で、アメリカ大恐慌を補填できそうなの?」
「どうだろう。インド自体は、経済成長しているけど、まだ足りなそう」
「もっとインドを経済成長させないかな。あの魔王」
「ふっ 5000年間、老若男女のダリットを殺してきたバラモンが魔王じゃなくて」
「最上位・少数派のバラモン・クシャトリアの男だけを殲滅する男が魔王なのも変な話しだね」
「人の価値が同等なら魔王が良心的だよ」
「そりゃ 権威主義ってやつだろう。大なり小なり、どの世界にもある」
「天に向けて唾を吐けば、自分に落ちてくる」
「魔王が5000年分の1人でしか顕現できないとしても不思議じゃないよ」
「まっとうな精神構造じゃないね」
「・・・じゃ 日本経済は、いつものごとく、企業努力で国内処理か」
「他者を犠牲にするか。自分を犠牲にするか」
「自らを鍛え、再構築するする方が真っ当だよ」
11/
ジュネーブで、米ソ間の欧州中距離核戦力制限交渉が始まる。
12/
ポーランド全土に戒厳令。労働組合の活動が禁止される。
薬師丸ひろ子主演の「セーラー服と機関銃」が封切りとなる。
日本の国連分担金がアメリカと並んで同等の権限を行使。
松下、日立など国内4社が家庭用VTRの統一規格をVHSとしたことが判明する。
寺尾聡の「ルビーの指輪」が第23回レコード大賞に選ばれる。
この年、
権力を求め権勢と妥協した覇王の徒レーガンがアメリカ合衆国を失墜させ、
抑圧された世界を鉄の意志で破壊した魔王の徒ルルがインドの輪廻転生・カーストを断ち切る。
覇王の失墜は、世界経済を恐慌に落としいれ。
魔王の顕現は、世界の権力者を震撼させた。
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月夜裏 野々香です。
世界情勢は、やれやれ状態のようです。
大量生産、大量消費で衣食住が揃ってしまうと、
消費は、嗜好品、文化などに向かっていきます。
それで、需要が、供給を支えられなければ、どうなっていくのでしょう・・・・・
大恐慌です。
宗教簿記は、造語です。ありません。
アイゼンハワー大統領の離任演説(1961/01/17)
我々が平和を維持する上で重大な要素は、軍事施設にある。
軍事力は、我々を危険にさらされぬよう。
潜在的な侵略者が誘発されないほど強く、準備されていなければならない。
・・・・・・・・・・・
先の戦争まで、合衆国に軍需産業はなかった。
スキの農具製造業者は、必要なとき、必要とする武器を製造するため存在していた。
しかし、いま我々は、緊急避難において、即興的な手法で国を危険にさらすべきではない。
我々は、大規模で、持続的な軍需産業の維持を強いられている。
軍事関連に従事する350万人の男女が存在し。
軍事安全保障の維持のため合衆国の株式会社の純所得より多くの予算を使う。
巨大な軍事施設および軍需産業界の影響は大きく、
政治、都市、団体、連邦政府のあらゆる部署で圧力を感じる。
こういった新しい経験は、アメリカになかった。
軍産複合体の発展と必要性は確認している。
しかし、我々は、重要な事柄を理解しなければならない。
我々の苦労、資源および暮しが軍産複合体の社会構造に含まれる。
政府、議会は、軍産複合体の権利のない影響に強要されないように守られなければならない。
誤った軍事力の行使は悲惨な結果をもたらすのです。
我々は、状況に流され、楽観視してはならず。
自由と民主主義的な秩序を危険にさらしてはならないのです。
注意深い市民の自由と安全保障が軍産複合体の目的と方法と一致し、
繁栄するように強いていなければならない。
連邦政府は、抜本的な方針と改革責任があり。
ここ数十年、科学技術上の成果は、投資によって高価なものとなって、
軍産複合体の分け前も着実に増加していく。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
軍事バランスは、時間的な経過を加味しなければならない。
短絡的な衝動を避けるべきで、貴重な資源を安易で便利な運用のために政府に奪われてはならない。
精神的な損失によって、子孫が支払不能になるような財政に加担せず。
民主主義を存続させて欲しい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
自動翻訳じゃ ようわからん、適当に変えたけど・・・・
脳内で、わかりやすいように書き換えてください。
というわけで、アメリカ合衆国の軍国主義化の懸念は、アイゼンハワー時代からあったようです。
もっとも、大戦前に軍事産業がなかったというのも大嘘。
軍事費増大は、第一次世界大戦が、始まってからでしょうか。
日本は、大戦前・大戦中の軍部の暴走。軍国主義に懲りて、
軍事費をセーブしていたようですが、アメリカは、やっちゃったようです。
『ミッドウェー海戦のあと』
1981年で、アメリカ経済を失速させてしまいました。
日本が国債購入を渋ったせいでしょうか。
宗教国家連合に献金がまわったせいでしょうか。
1987/10/19 (月曜日) ブラックマンデーまで、持ちませんでした。
ちょっとした切っ掛けでしたが、被害は少なめです。
吉と出るか、凶と出るか。
アメリカ経済は、どうなるんでしょう。フラフラです。
史実でアメリカがクシャミすると日本は風邪。とか、
日本が、くしゃみをするとアメリカが肺炎、とか
この仮想戦記の日米関係は、国債を買っていないのか、
貿易相手が多角化しているのか、割と淡白。
共倒れはないようです。
その代わり、薬代と、お見舞金を・・・・という感じでしょうか。
インド。
史実(戦記)
1947年(1944年) インド独立時カースト廃止。
1949年(1948年) 不可触賎民撤廃が制定。
カーストは、法的に廃止。
しかし、どちらも、ヒンドゥー教の“輪廻転生”、“浄・不浄”の概念は、根強く、現存。
(1981年) ルル・ヤマトのダリット反乱軍 (半個師団) が、首都を制圧。
・
インド経済そのものは、人口が減って、資源が再構築されて、良いようです。
とりあえず、カースト上層階層は、牛ひき殺して逃げ惑ったことで権威が地に落ちて収拾付かず。
名目上だけでもカースト廃止でしょうか。
習慣は、なかなか抜けないので、どうかなとも、思いますが、一応、民主化です。
カーストのトップであるバラモン・クシャトリアが消されてしまうのですから
時間の問題でしょうか・・・・・・・・・
ルルとヤマトは、象徴的なので、
ダリットの反乱による圧力に効しきれなくなって、民主化という感じでしょうか。
国内の内戦で、第二次世界大戦の死者を越えてしまうインドと中国。
まじめに書くと残虐物語になってしまいます (笑)
インド民主化の最大の貢献は、ソ連と中国。トカレフとAK47。あと、牛さん? ということで・・・・・
ルルは、その後、数回の暗殺事件を生き延びて、インド首相。
名目上のカースト廃止を実質的なカースト廃止にするため、余生と精力を捧げたそうです。
どうやったかというと、信頼関係を崩された社会は脆く。各個撃破で略奪。
上層階級(バラモン、クシャトリア)の資産のほとんどを差し押さえて、殺されるか、国外に放逐。
輪廻転生・浄・不浄のトップ。バラモン、クシャトリア不在のカースト制は、ありえません。
資産は、中間層(ビアイシャ、スードラ)に分配してしまったようです。
教育の行き届いていないダリットへの分配は、少なめでした。
さすが、ルル。5000年に1人の魔王系
因みにヤマトとコーネリアは、結婚しましたとさ。
インド通商大臣ヤマト・タケシとして、妻コーネリアと日本に凱旋。
日本から散々、煙たがられ、
親族から排斥されていたヤマト・タケシは、日本のドメ派官僚と親族からペコペコされたそうです。
1981年
注目すべきは、太陽の牙ダグラム。でしょうか、
郷土の執着と新世界の狭間で、主人公が葛藤します。
過去よりも、未来がある少年は、新世界に共鳴しやすいのでしょうか。
じゃりん子チエは、『紫 織』を書くとき、まあ、小学生でも、いけるかなと思った切っ掛けですし。
キャプテン翼は、燃えました。
1000年女王も、なかなかでした。
太陽の牙ダグラム |
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よろしくです。
第90話 1980年 『偽善とエゴ』 |
第91話 1981年 『覇王と魔王』 |
第92話 1982年 『風雲星霜』 |