月夜裏 野々香 小説の部屋

     

After Midway

 

 

    

第92話 1982年 『風雲星霜』

 アメリカの産業は国際競争力を失って貿易赤字が続く、

 貿易赤字からの脱却と再建は可能だった。

 地道で痛みを伴い、人気のない政策が多い。

 アメリカ国民の価値転換。企業体質改善・・・etc・・・

 人気職の大統領制は国民が望む安楽な道を模索したがる。

 アメリカ政府は支持率低下を拒み。

 アメリカ議会の追及をかわすため、有力な勢力である軍産複合体と癒着していく、

 安易なのか、計算ずくなのか、14パーセントという高利回りの国債を発行。

 さらに軍産複合体の圧力を誤魔化すため減税。

 世界中から資本が集まってくるとドル高で安い外国製品を購入する。

 しかし、アメリカの輸出産業は大打撃。貿易赤字は慢性的に続く。

 そして、諸外国に対して売れる輸出品である軍需関連株がイラン・イラクの講和調印によって暴落。

 株価が雪崩式に落ちて大恐慌。

 その皺寄せと被害は、同盟国のみならず弱小国家群にまで及んでいく、

  

 

 日本は、アメリカ国債の購入を用心深く付き合い程度に済ませて比較的余裕があり、

 アメリカへの輸出減は、中国輸出で補うことができた。

 有色人種諸国は、工業化が進み、貿易の輸出入も成長著しいものの、

 アメリカ大恐慌に巻き込まれつつあった。

 欧州諸国は、経済的な統合で障壁を減らしたものの

 アメリカ大恐慌の影響を受け連鎖倒産が相次いでいた。

 日本と欧州諸国の通商関係者は、対アメリカ貿易の損失を埋めようと躍起になり、

 市場を求めて、国交回復した中国へと比重をシフトし、セールスマンを送り込む、

 「中国が日本製品の輸入規制するとか言ってるぞ」

 「第三国も同調するように働きかけている」

 「あいつら足元見やがって」

 「インドに回せるんじゃないか、ダリットの革命が収まって、購買力が上がるはずだ」

 「全然、足りないよ・・・あれれ、アメリカの薬剤価格が上がっていないか」

 「あ・・・くっそぉ〜 適正価格を考えろ、ぼったくりが!!」

 「日本国内も便乗値上げしているのは何でだ?」

 「商品がだぶついたからデフレだろう」

 「石油関連じゃないか。先行き不安だから。どこもかしこも、保身に走っている」

 「いやだねぇ 日本人は、乱世に弱くて捨て値で売って市場を取れよ」

 「価格が破壊されてしまうのがいやなんだよ。それとも隠れカルテルかな・・・・」

 「自分本位にしたたかな時もあるから・・・」

 「護送船団方式は楽で良いよ。リーダーが良ければね」

 「平和慣れしていたから上手く乗り切れるかどうか・・・・・」

 「・・・アメリカ国債。もう少し、買えば波風おきなかったんだよ」

 「もう手遅れ」

 「だいたい、利息生活をしたがる奴が多過ぎ」

 「ふっ 聡い連中でさえ、自分の利息生活を確保するため」

 「日本政府の国債でアメリカ国債を買わせるとか言うから始末に終えない」

 「金に目が眩むと滅茶苦茶いうからな」

 「日本の国債の金利を14パーセントにする方がマシだよ」

 「日本じゃ そんな無茶は通らないよ」

 「ていうかどうやって、年間14パーセント以上の利益上げるんだよ」

 「皺寄せは、消費者か、同業者か、社員か、第三者か・・・」

 「飛鳥のガス油田を除けば、日本は労働が唯一の資源なんだから働かざるもの食うべからず」

 「アメリカもそ思って欲しいね」

 「それに日本が円高になったら輸出できなくなって食えなくなるよ」

 「だよな」

 日本の制度は、官僚が強い、

 政治的圧力が、よほど強くなければ変動が少ない。

 時勢に合わせて、トップダウン式に政策が変更されていく国もあれば、そうでない国もある。

 官僚・企業・庶民は、制度に変更がない方が予定を立てやすく、

 一度決めたことを惰性で続けられて楽だったりする。

 しかし、改悪されにくい代わり、不便な制度も変更されにくい点は厳しい、

 どちらにも良し悪しあるが、

 日本の官僚機構は、それなりに健全でソコソコ優秀であれば何とかなりやすかった。

  

 01/

 韓国、55年08/15独立以来27年ぶりに夜間外出禁止令が解除される。

 

 ワシントン ポトマック川の橋にボーイング737型機が墜落、巻き添え4人を含む死者78人。

 

 全米2位のフォード・モーター社、創立以来初めて株主配当の無配を決定。

 

 イギリスとバチカンが、1535年以来450年ぶりに外交関係を樹立。

 

 02/

 西アフリカのセネガルとガンビアが合邦し、セネガンビア連邦が発足。

 

 日航機がパイロットの逆噴射操作のため着陸直前の東京湾に墜落。死者24人。

 その後、パイロットが心身症と判明。

 

 三協精機が米IBM社への産業用ロボットの生産・供給契約を締結したことを発表する。

 

 03/

 瑞穂に45mの電波望遠鏡が完成。宇宙電波観測所の開所式が行われる。

 

 韓国政府が第5共和国1周年で恩赦を行う。金大中が無期懲役から懲役20年となる。

 

 

 米下院本会議で日米貿易摩擦の問題で、日本の国防問題が特別審議されていた。

 ロビー活動というのがある。

 グラント大統領時代 (1869年〜1877年) ホテルのロビーで行われた政策誘導が語源らしい。

 国益的な誘導だったり。

 思想的な誘導だったり。

 組織の利益誘導だったり。

 私的な誘導だったり。

 相応の場所があれば、どこでやってもロビー活動となる。

 そして、外交交渉する場合、相手国の墓地を折衝場所にすると効果があったりする、

 ワシントン アーリントン国立墓地

 日本人と白人

 「・・・それで・・・やっぱり買えと?」

 「ダンピングに対する経済制裁。関税をかけるか、というところまで来ている」

 「そりゃ困るよ。財界の突き上げ、厳しいんだから」

 「日本の国防。穴があるだろう」

 「あのなぁ〜 国防に穴があるのは、全世界共通なの」

 「そこを何とか」

 「F100エンジンは?」

 「・・・・・」

 「イージスシステムは?」

 「・・・・・」

 「おまえ、少しは、取引しろよ」

 「横暴すぎる」

 「格安にするから。それに少し妥協できる」

 「はぁ〜」

 「なっ!」

 「改修は、そっちで、やってもらうからな」

 「わかってるって」

 

 

 インド

 ヒンズー(バラモン)教の歴史は古い、

 ヒンズー教最大の危機は、約2500年前(紀元前5世紀頃)興った仏教がバラモン教を抑えて拡大。

 マウリヤ朝アショーカ王が仏教をインド国教とし、インド全体に広げたとき、

 増長した仏教は、教理解釈から分裂、派閥抗争を起こし、権力者と癒着し腐敗していく。

 インド民衆から信望を失った仏教は、5〜11世紀までに消えてしまう。

 その後、バラモン教は、融和と寛容さで諸宗教をカースト制に取り込みつつ確立し、

 現在のヒンズー教へと変遷していく、

 中ソ両国の共産主義思想と武器弾薬がインド社会に流れると状況は一変する。

 階級差別に対して武器を持って立ち上がるものが現れ、

 ダリットの反乱によってインドカースト社会は崩壊する。

 インドで下層階級が反乱を起こして勝ったとき。

 一番楽な方法は決まっていた。

 自ら輪廻転生の最上位バラモンとなり、安定した世襲制の位置に付くことだった。

 覇王なら素晴らしい魅力と誘惑に駆られるはず。

 しかし、魔王ルル首相は、狂気に満ちた表情でカーストを破壊してしまう。

 神のごとく君臨していたバラモン、クシャトリアを次々に血祭り、

 悲惨だが死傷者の数は数十万分の1で、ダリットの屈辱や辛苦と比べると100の1くらい、

 運が良くても国外に放逐。

 とはいえ、上層階級の資産を分配できても、貧乏人は資産を生かせない、

 また、いくらインド人口が減っても有限な資源を上手く活用できる人材は限られていた。

 ルルは、バラモンとクシャトリアの財産をビアイシャとスードラに分配していく、

 そして、ダリットは、資産の一部がダリットに還元され、

 差別が減って居住区が広がっただけ、

 

 それでもルル首相は、ダリットにとって神の化身らしい、

 もっとも、彼は、宗教家ではない。

 観念的な感謝を要求する気持ちはサラサラなく、

 実利的な秩序を望んだ。

 「・・・ヤマト。なんで、こんなに偽札が出回っているんだ?」

 「偽札の3分の1は、ルルが作らせたんじゃないか」

 「・・・・」 ぶすぅ〜

 インドで新札の発行が決まる。

 

 インド

 客観的に見渡しても元平民階級(ビアイシャ)、元奴隷階級(スードラ)の表情が明るい。

 ダリット反乱と内戦でインド総人口の10分の1が減少し、

 インドの8割を握っていたバラモンとクシャトリアの資財が分配されつつある。

 カーストが破壊され、

 席こそ、違っても同じ酒場で飲んでいる。

 酒場で数人の外国人が歓談していた。

 「やれやれ、インドも変わったな」

 「輪廻転生の最上位であるバラモンとクシャトリアを抹殺、放逐してしまうんだからな〜」

 「海外に避難させたバラモンとクシャトリアの資本は?」

 「やはり、スイス銀行、秋津銀行、アメリカ銀行が多い」

 「チベットの金庫にも眠っているらしい。どうなるやら・・・」

 「相続人がいるか。今頃、目を細めてないか」

 「インド政府が所有権を主張するだろうよ」

 「相続人不在だと、将来的な関係を考えて受け入れるのかな」

 「そういえば、中国人の隠し口座も増えてないか」

 「中国の特権階級は、私腹を肥やせば国外の隠し口座に入れる」

 「たぶん、秋津銀行か、スイス銀行だな」

 「じゃ 中国との貿易は・・・・」

 「まぁ 銀行は嬉しいかもね」

 「そういえば、アメリカの銀行の金額も相当なものらしい」

 「ふ それじゃ、中国の発展は進まないな」

 「誰でも私有財産は欲しいよ。共産主義であってもね」

 「共産党幹部は、日本とアメリカに避難所を作りたがってるよ」

 「インドは、どうするつもりかな」

 「日本の真似をするだろう」

 「自由資本主義?」

 「段階的だろうけど」

 「んん・・・今のところ、階級保障による支配でなく」

 「資産分配による支配で、ルル首相の地位は安定している」

 「最大多数のビアイシャ、スードラ、ダリッドは、ルル首相の味方だよ」

 「ダリットも、まあ、差別だけは、されなくなっているからな」

 「ダリットを虐待した者を、あれだけ殺せばね。恐怖もしつけの内か」

 「ふっ 確かに覇王ではなく。魔王と言われるだけはある」

 「覇王ならカーストをそのままで、自分がバラモンになるよ」

 「喜んでいるのはパキスタンのイスラム教かな」

 「いや、ビルマ仏教とチベット密教も入ってきているよ」

 「宗教的な空白を許さないつもりだろうな」

 「ヒンズー教は?」

 「ルル首相は、ヒンズー教を滅ぼすつもりはない、と言ってるから教条は存続する」

 「カースト抜きのヒンズー教で立て直しているがトップのバラモンが国外に放逐だからな」

 「ラサのバラモンは、顔色を失っている」

 「ヒンズー教の巻き返しは?」

 「カースト制を切り離して再構築中」

 「元々、多神教、寛容、融和は、日本人の精神に通じるものがあるからヒンズー教自体は嫌いじゃないよ」

 「日本の仏教は、インドに入っていかないのかな」

 「さあ、日本人町では、広がっているらしいけど、ワビ・サビの世界はインドにないからね」

 「じゃ 布教に真剣なのはキリスト教か」

 「献金の比率が変わってしまいそうだな」

 「推測だと、今後、インドの経済成長は、大きくなっていく」

 「食い込むには、いい頃合だね」

 「アメリカが恐慌で落ち込んでいるからね」

 「欧州諸国まで足引っ張って、何を考えているんだか」

 「・・・・・・・・」 むっすぅうう

 「溺れる者、ワラをも掴む。自然だよ」

 「自然でも掴まれて引き摺り落とされる方は、たまったものじゃないけどね」

 「しかし、このアメリカのバイオ綿花・・・問題ありだろう」

 「・・・・・・・・」

 「でも、アメリカの穀物輸出とか、牛肉輸出が多過ぎないか?」

 「・・・・・・・・」

 「アメリカは、兵器産業以外、めぼしい物がなくなってきている」

 「そのくせ、ジェットエンジンをライセンスしたくないのだろう」

 「牛肉は、ヤキトリの缶詰にでもするか。ソビエト軍と中国軍に売れるかも」

 「いいねぇ 大消費地が近いと」

 「そういえば、アメリカの潜水艦が日本漁船の網を切ったのも牛肉を買わせる作戦か?」

 「・・・・」

 「ふ・・まさか・・・」

 「日本は、日韓国交回復するの?」

 「んん・・・どうだろう。そろそろ、国交回復しないと、国際常識を疑われそうだし・・・」

 「どこも邪魔しなければ、国交回復かな・・・・」

 「「「「・・・・・・・」」」」

  

  

 太陽から見て9つの惑星が直列に並ぶ。

 

 グアテマラでクーデターが起こり、軍事評議会議長にモント将軍が就任。

 

 バングラデシュでエルシャドがクーデターを起こす(戒厳令布告)。

 

 04/

 500円硬貨発行。

 

 

 アルゼンチン軍がフォークランド諸島(イギリス領)を占領。

 フォークランド紛争が始る。

 赤レンガの住人たち

 「やっちゃったよ。アルゼンチン」

 「イギリスは、どうするんだろう」

 「お金、ないんじゃないの」

 「戦争するお金なんてないに決まっているよ。日本だって戦争するお金なんてないし」

 「当然。国債発行で乗り切るよな」

 「日本に買え、ってか」

 「当然、そうなると思うけど」

 「・・・面子で戦争するなよな」

 「普通は、面子で戦争するんだよ」

 「秋津州は、なんか言ってた?」

 「あそこの銀行は、スイス銀行と同じ。介入不能だよ」

 「まさか、アルゼンチンにお金貸してないだろうな」

 「貸しているのは、アメリカの銀行だったりして」

 「あはは・・・・」

 「種火はあるから、油を注いで扇ぐだけで火事になるんだよ」

 「だけど、あっさりと占領されちゃったな。フォークランド諸島」

 「フォークランドって、必要なの?」

 「鯨が獲れれば、重要だけどね」

 「捕鯨は、うるさくなっているし、海底に石油が眠っているらしいよ」

 「だけどイギリスが負けると困るな。秋津州の立場が悪くなる」

 「あそこは大丈夫だろう。十分な国防予算が組まれている」

 「お金持ちの州だからね」

 「人口500万人の秋津州産業で南米諸国3億6000万人の消費市場を取り合っている」

 「銀行もだけど。ほとんどの工場が24時間フル操業だよ」

 「南米全体から資源を購入しているし。そんなにまでして儲けたいかね」

 「儲けてくれた方が助かるよ。予算が増える」

 「物価も上がるよ」

 「なんで、こんなちっせい部品価格が上がるんだ。ボッタクリか」

 「LSIの歩留まりが、どうとか、言ってたっけ」

 「それで、設備投資?」

 「うん」

 「そんなもんより、10万トン級原子力空母 “やまと” “むさし” が欲しいよ〜」

 「どこか、侵略するの?」

 「世界平和のためとか言って、飾って、自慢するの」

 「「「「・・・・」」」」 にや〜

 

 

 イギリス 

 フォークランド危機に関する論戦が行われ、

 国連安全保障理事会502号決議が通過。

  

 西ドイツで反核大行進が行われる。

  

 新世代コンピュータ技術開発機構(ICOT)が設立される。

  

 エジプトで、サダト大統領暗殺のイスラム教徒過激派5人が処刑される。

  

 韓国軍と北朝鮮軍が非武装地帯で銃激戦となる。

 韓国慶尚南道で、酒に酔った警官が銃などで55人の住民を殺害する。

  

 国連海洋法会議で海洋法条約が採択され、領海12カイリ以内が確立する。

  

 05/

 イギリス軍艦のコンカラーにより、アルゼンチン軍艦のベルグラノが撃沈される。

 アルゼンチンのエグゾセ・ミサイルの攻撃を受け、

 イギリス軍艦の42型駆逐艦 シェフィールド、

 イギリス海軍21型フリゲート アンテロープ、

 イギリス海軍徴用コンテナ船 アトランティック・コンベイヤーが撃沈。

 

 赤レンガの住人たち

 お茶の間テレビで現在進行形の戦争を見れるのは悪くない。

 子供の教育に悪いといわれたりもする。

 好ましくないと思うのであれば、戦争映画と言い張ればいいのであって、

 ホラー映画の方が怖くて教育上問題があったり・・・

 赤レンガの住人たち

 「4300トン級42型が撃沈。2800トン級21型も撃沈か・・・」

 「やまぶき型は大丈夫だろうか?」

 「やまぶき型は、6000トン級だからね。一回り格が違うよ」

 「だと良いけど、シュペルエタンダール攻撃機と、空対艦ミサイル・エグゾセは侮りがたいと思うよ」

 「外洋に出れば危ないけど、制空権下ならなんとかなりそうだな」

 「月影VTOLがなければ、もっと沈んでいたんじゃないか」

 「んん・・・」

 「ところで、やっぱり、アメリカの軍産複合体が黒幕?」

 「さぁ〜 目立たないようにしているけど、情報や兵站の大元は、アメリカからじゃないかな」

 「アルゼンチンも、なんで引っかかるかな・・・・」

 「種火は、あるから可燃性のものを置いとけば自然に燃え出す。あとは、知らず存ぜぬ」

 「いやだねぇ 軍産複合体のやることが、これだから」

 「でも、日本の国防費は押さえ込まれてショボいというのに」

 「んん・・けど・・・現実に軍拡で、こけたアメリカを基準にしていいものか、どうか」

 「少なくともイギリスとアルゼンチンは、アメリカから兵器を買うことになるのかな」

 「あのイージスシステム?」

 「無理、高過ぎ。最新の噂だと。同時に16個以上の目標を攻撃できるらしいよ」

 「ひぇえええ!! やまぶき型は6個だよ」

 「同じフェーズドアレイレーダーでも偉く違うな」

 「建造しているタイコンデロガ型ミサイル巡洋艦は、7600トン級だから・・・」

 「それにフェーズドアレイレーダーより電算処理能力とミサイルの差だろうな」

 「・・・次期海軍大綱が遅れているのは、それか?」

 「うんにゃ 強襲揚陸艦2隻とF4ファントムの購入のせい」

 「んぐぅ 確かに予算が付かんわ」

 「6000トン級やまぶき型3隻で7600トン級タイコンデロガ型ミサイル巡洋艦1隻と同じか〜」

 「やまぶき型の迎撃システム、すごい予算かけたんだぞ」  (T・T)

 「むかしで言うと、ドレッドノート型戦艦が出現したようなものだ」

 「それでも日本はマシだよ」

 「同時迎撃が1個から2個の海軍艦艇がほとんどだからね」

 「いやだねぇ。金、金の世界だよ」

 「ドルが不信感をもたれているから円がドルと並んで基軸通貨になる可能性もあるよ」

 「そうなったら、もう少し、予算増額かも・・・・」

 「物価が上がらなければね」

 

 

 フォークランド紛争、イギリス軍がサンカルロスに上陸する。

  

 ローマ教皇ヨヘネ・パウロ2世がイギリスを訪問。バチカンとイギリス教会が400年ぶりに和解。

  

 スペインがNATOに正式に加盟する。

  

 中国の趙紫陽首相が初来日

 趙紫陽首相が嬉しげなのはアメリカ不況の打撃で、

 日中貿易が有利に拡大する可能性が高いからだった。

 日本は、用心深く、多角的貿易へ移行し、対アメリカ依存を減らしていく。

 しかし、設備投資を重ねた状態で対米輸出が減ると痛い。

 ドル高のアメリカに買ってもらうつもりが当てが外れる。

 アメリカに行くはずの優良工作機械が中国へ流れ、

 少しばかり上積みされた資源が入ってくる。

 中国のタングステンなど希少金属は、工作機械を製造するのに必要で、

 直接的に仕入れる方が安価だった。

 とはいえ、中国の工業化に弾みを付けてしまう結果に繋がり、

 日本にとっては、前門のトラ、後門の狼といったところだった。

 もっとも、優良工作機械が生産力に直結するわけでもない、

 無理、ムラ、無駄を究極まで省いた生産管理(計画、組織)体制と統制が必要だった。

 必要とされる品質の製品を必要な数量だけ必要とされる時期に効率よく生産しなければならない、

 時系列に沿った生産計画と工程管理。

 歩留まりと無駄を抑えた品質管理。

 労働者は、一定以上のモラル、勤労意欲、技能が求められ、

 経営全般、財務管理など、効率の良い有機的な組織も必要になった。

 効率性、機能性、合理性の比重も経営者の気質や現場との兼ね合いによって変化していく。

 そういった生産体制を構築するには、ノウハウが必要だった。

 そして、資本主義世界では生産体制同士の競争が常に行われる。

 共産党の幹部だからといって、

 学生を引っ張ってきたからといって、

 共産主義教本を見たからといって上手くいくわけでもない。

 “今後の日中両国が手を取り合って”

 “アジア太平洋における主導的な役割を・・・云々・・・” 趙紫陽首相

 記者たち、

 「・・・・なんだかな・・・・」

 「中国は、アメリカ資本が引いて困っているくせに」

 「貧しい国が資本を借り損なうのと。豊かな国の予定収入が目減りするのとの違いだな」

 「失うものがない国は強いね」

 「国民の大半を踏み躙れる国もだ」

 「日本は、もう無理だろうな」

 「人権は、ますます強くなってきているし、労働条件の待遇も上がってる」

 「それに以前より、利己主義が強くなってきている」

 「排他的な利己主義か。窮屈な世の中になったよ」

 「目が円マークで歩いている人間も少なくないな」

 「頭の中も損得勘定で金ばかり、かな」

 「だけどマネーゲームに水を注してくれたから、アメリカの大恐慌に救われたかも」

 「その割には、株価が落ちてないじゃないか」

 「利益が目減りしただけ。損しているわけじゃないよ」

 「それに大恐慌の余波は、もう少し先かな」

 「やっぱり後進国に皺寄せ?」

 「当然。ドル高で羽振りの良かったアメリカの失墜だからね」

 「何で買えもしないのにドル高が続いているんだ」

 「貿易赤字が増えてアメリカ産業が潰されてしまうだろう」

 「アメリカ企業を買われたくないからだろう」

 「それと、兵器を高く買わせたい」

 「何より、アメリカ人の1時間当たりの労働価値は、世界一と信じたい」

 「我が儘だな・・・」

 「アメリカの自動車会社も軍産複合体に負けたのかな」

 「自分の労働を高く外国に買わせたたくて、薄利多売を嫌っている」

 「ていうか、アメ車、売れないだろう。ドイツ車なら買うが・・・」

 「はぁ〜 しばらくは、日本の株価も様子見だろうな」

 「日本が工業的に独立していなければ、アメリカと一緒に不況だったな」

 「いや、日本の競争力が原因だから」

 「アメリカの製品が高すぎるんだ」

 「だけど、先端技術全般で追いついているわけじゃない」

 「聞いた話しだと、技術の問題でなくて、予算しだいだと」

 「その予算がないんだろう。採算が合うか、わからないのに新規の工場なんて作れないよ」

 「電算に注ぎ込み過ぎ。何で、そんなに設備投資なんだ」

 「32ビットCPUがシリコンバレーで作られて。JIS規格も退けないらしい」

 「LSIは天才にしか作れないよ」

 「IBM規格に合わせていれば開発力をRAMに集中できて楽だったのに・・・」

 「手遅れだよ」

 「アメリカが大恐慌で足踏みしているうちに性能差を縮めようとしたらしい」

 「コンピューターで差が開きすぎると。一気に市場をとられかねないそうだ」

 「中国は?」

 「中国は、漢字文化だからね。字数で言うと、二バイトで、日本と同じ」

 「GBコードでやりたがっている」

 「海南国は?」

 「JIS規格に関しては、GBコードに合わせてくれるそうだ」

 「それが今回の取引?」

 「結局、言語ROMを作れるのは、先進国だよ」

 「IBM規格は、プログラムソフトですむけど。JIS規格は “物” だからね」

 「当然、中国も、自国の言語ROMを国産したがる。当然だけどね」

 「作らせるの?」

 「そりゃあ。IBM規格との戦争に勝つためには、中国を味方につけた方がいいに決まっている」

 「そりゃ 泣けてくるね」

 「欲しいのは資源だけだろう」

 「アメリカみたいにハイブリット米を中国に売りつけろよ」

 「あれは、元々、日本の技術だよ」

 「たとえ、遺伝子レベルでも米の技術だけは、外国に遅れをとったりはしない」

 「日本も作るんだろう」

 「ハイブリット米は、管理が余計に必要で土地が枯れやすいから農薬も増える」

 「種子無しだからアメリカに生殺与奪権を握られるから、企業農業も個人農家も嫌がる」

 「良いものを作るのは時間がかかるんだ」

 「中国は使っているだろう」

 「人口が多いのに作付面積が小さいから、食糧問題が厳しいんだ」

 「種無しで生殺与奪を握られるだろう」

 「後進国は、アメリカのバイオ製品に軒並みやられるな」

 「あこぎだね」

 「日本は、良心が痛んでできなかったよ」

 「共産国・後進国に対しては、それくらいやれって、ことだろう」

 「日本は、バイオ技術全般でアメリカに対抗する予算はなさそうだな」

 「アメリカは、研究開発に予算使いすぎ。物を作れよ物を・・・」

 「富める者は、ますます富み。貧しき者は、ますます貧しく。弱肉強食」

 「これがアメリカ資本主義の鉄則」

 「はぁ〜」

 「IBMも中国に工場を作るそうだ。市場の取り合いも戦争と同じだよ」

 「他の有色人種諸国に投資する方がよくないか」

 「それだと負けるらしい」

 「日本も、そういう素振りを見せて適正価格まで値段を上げているよ」

 「中国は、相手次第で値段が変わるから、適正価格なんてないよ」

 「弱みを見せたが最後、タダどころか。死ぬまでボラれるよ」

 「古い国だな。日本は、江戸時代で定価販売したのに・・・」

 「というか、中国人が中国から逃げ出そうとしているのに」

 「わざわざ行くなんて、なに考えているかな」

 「資源と輸出だろう」

 「民間は行かないよ。懲りているからね。国家間ならゴリ押しが利く」

 「見返りは?」

 「交渉中だけど。それなりに資源が入るよ」

 「それなりかよ。犯罪の被害を差し引けよ」

 「・・あ・・・・終わったら満漢全席を、ご馳走してくれるんだと」

 「むふ♪ 贈賄?」

 「人には言えんなぁ」

 「包んで家族に持っていくか」

 「んん・・・その分は、少しだけ足しとくか」

 “・・・云々・・・というわけで”

 “21世紀は、日中関係を基軸としたアジア太平洋時代の幕開けある” 趙紫陽首相

 パチ パチ パチ パチ パチ パチ

  

  

 06/

 ベルサイユで、第8回先進国首脳会議が開かれる。

 アメリカの大恐慌に対する支援会議

 

 

 イギリスがフォークランド諸島を回復し、フォークランド紛争終結。

 赤レンガの住人たち

 「・・・やれやれ、ようやく終わったよ」

 「戦訓は?」

 「戦争するな」

 「あははは・・・・」

 「南アフリカ公国連合がイギリスを支援しそうになったときは驚いたけどな」

 「ったく、近すぎるよ。普通、日和見だろう」

 「アンゴラ併合でイギリスの支援が欲しかったらしい」

 「勝手にやればいいのに軍事力じゃ 即占領じゃないか」

 「アンゴラの内紛処理でベトナム方式を取り入れるかで迷っているそうだ」

 「はぁああ〜 なるほど・・・アメリカの反発が怖いのか」

 「自由主義と共産主義の連合だからな」

 「水と油のはずがベトナム連邦で上手く行ってるだろう」

 「アンゴラで上手くいくか、わからないが上手くいったら」

 「米ソ対立を利用しているアメリカは、追い詰められる」

 「上手くいかないのかな」

 「さあ、内戦状態から連合は前例がない」

 「半島も高麗連邦を模索しているが現実味は薄い」

 「一度、殺し合うと、信用できないからな」

 

 

 イギリスのチャールズ皇太子とダイアナ妃に、長男ウィリアム王子が誕生する。

  

 FBIがIBMの機密情報を不法入手した容疑で、

 日立製作所・三菱電機の社員らを逮捕(IBM事件)。

  

 シアヌーク、ポル・ポト、ソン・サン、ヘン・サムリン4派。

 列強の圧力によって非抗争。選挙による議会制を押し付けられる。

  

 

 米ソ戦略兵器削減交渉(START)がジネーブで開始される。

 

 

 07/

 トヨタ自工とトヨタ自販が合併してトヨタ自動車が発足する。

 

 富士通が、科学技術計算用スーパーコンピュータを開発する。

 

 民主カンボジア

 シアヌーク首相を核に緩やかな連合政府が成立。

 

 イタリア最大の銀行、アンブロジアーノ銀行が倒産する。

 

 政府が1983〜1987年度の国防整備計画を決定する。

 赤レンガの住人たち

 「くっそぉ〜 イージスシステムか、F100エンジンをライセンスさせればいいものを・・・・」

 「コピーしちゃうか。その気になれば作れるぞ」

 「特許戦争なんてしたくないよ」

 「ったく、あのレベルの構造は自主開発できんぞ。良く開発できたな」

 「アメリカは、日本より天才の比率が多い」

 「なにより、試行錯誤する予算はあっても暗中模索する予算なんかないね」

 「開発とかじゃなくても、チタンの比率を増やすなら量の問題で、どうにかなるけど・・・」

 「予算を増額しようにも思いやり予算が足を引っ張りやがる」

 「だけど、他の同盟国と違って、駐留維持費じゃないよ」

 「駐留させた国を守っているんだよ」

 「普通の国は、アメリカ軍が駐留しているのに戦争しかけるもんか」

 「だけど、欲しくもない機体を買わされたら困るよ」

 「そういえば、イギリスもF4ファントムを買わされてたっけ」

 「対地、対艦ならF18ホーネットでも良いんだけどな」

 「だからジェットファンエンジンだって」

 「ったく。アメリカもF15、F16、F18に切り替えるからって、やり口が横暴だよ」

 「F4ファントムは戦闘機というよりミサイル運搬機だからね」

 「使えるのは使える。難癖つけて、買い叩けたし」

   

 

 行政事務簡素合理化法が公布される。

 

 

 朱雀島の捕鯨船団が固唾を呑んでTVを見守る

 第34回国際捕鯨委員会(IWC)が商業捕鯨制限案可決。

 「あああ・・・駄目じゃん」

 「日本政府のヘタレが押し切られやがって」

 「ていうか、日本に牛肉を売りたいアメリカの言い分が通ったんだよ」

 「鯨がかわいそうなら。牛だってかわいそうじゃないかよ。きたねぇな」

 「そうそう、鯨一頭だと、牛何頭分だ」

 「命の数なら牛の方が多いだろう冗談じゃないぞ」

 「・・・とはいえ、捕鯨も自粛しないといけないレベルではあるよな」

 「んん・・・こっちの自粛案より半分も、すくねぇ」

 「捕鯨船団も縮小だな。朱雀の人口も増えているから他の魚でもいいけど」

 「朱雀で宝石の研磨か・・・漁師はね。そういうのができる手じゃないよ」

 「コンピューターは? 外に出て、することがないと仕事も決まってくるからな」

 「もっと、わかんねぇ。だけど日本は遠すぎるだろう」

 「インターネットで送るんだと」

 「そういうのは、日本の裏側の秋津州だろう」

 「寒過ぎて、室内にいることが多い朱雀は効率いいらしい」

 「ふ〜ん」

 

 

 国鉄・電電・専売公社などの分割・民営化などを提起される。

  

  

 08/

 ディジタル・オーディオ・ディスク・プレーヤーを9社が発表する。

 

 大学・研究機関での遺伝子組み替え実験の規制が大幅に緩和される。

 

 

 09/

 メキシコが全銀行の国有化を発表する。

 

 国鉄が、宮崎の実験でリニアモーターカーの有人浮上走行に初めて成功。

  

 イギリスのサッチャー首相が来日する。

  

 ボリビア政府が、5000万ドルの対外債務が返済不能になったと発表する。

  

 

 F4ファントムが新たに購入される。

 関係者たちが並べられた機体をため息混じりに見つめていた。

 「・・・何に使うの?」

 「代替部品?」

 「新型だよ〜」

 「もっと有用な物があるだろうF111アードバークとか」

 「アメリカが、いやだって」

 「そんなにジェットエンジンのライセンスさせたくないのかよ」

 「機動部隊を守りたいんだろうな」

 「72年に開発されたエンジンだぞ。10年前じゃないか。同レベルのエンジンくらい造れ」

 「日本に国産開発予算がないのが見抜かれたかな」

 「んん・・・開発は当たり、日本は減点主義で失敗すると怖いし」

 「F15イーグルを買わないから嫌がらせされたんだ」

 「「「・・・・・・・」」」 ぶっすう〜

 「もっと、嫌がらせ、されなければ良いけど」

 「秋津?」

 「ブラジルがアメリカ製の兵器を購入している」

 「アメリカがブラジルに秋津へ戦争を仕掛けてみろって?」

 「紳士は、そんなこと言わないよ。ただ、売って経済的に追い詰めるだけ」

 「あははは・・・・」

 『『『『あんのやろう・・・』』』』

  

  

 10/

 ソニー、日立など音響機器メーカー9社、CDプレーヤーを同時発売。

  

  

 西ドイツ、キリスト教民主同盟のコール首相の内閣が発足。

 ベルリンの酒場

 「・・・コール首相か少しは、西ドイツのモラルも良くなるかな」

 「無政府主義ポゴ党なんてのが、出てくるんじゃ 世も末だよ」

 「ふっ スローガンが “全ての労働は糞である” “飲んで、飲んで、ただ飲んだくれる毎日” じゃな」

 「まぁ 快楽主義に惹かれるのは惹かれるがね。酒は働かないと造れないだろう」

 「国と法人を否定したら植民地にされてしまうよ」

 「植民地で、そんな運動をやったら間違いなく、宗主国の軍隊に処刑されるね」

 「刹那的な人間には何を言っても無駄だよ」

 「穀潰しの怠け者。寄生虫はいらないな。面白いけど」

 「原始生活でも送りたいのかな?」

 「まじめなドイツ人に対する反動だろう」

 「まじめなドイツ人は怖いから周辺国の工作かもね。無政府も反国家も利用されている」

 「ドイツの自由・共産連合の動きは?」

 「影響は、大きいようだけど現実は難しい」

 「それは、ほっとするね」

 「東ドイツの体制は駄目だな。東西格差がありすぎる。たぶん、さらに広がる」

 「アメリカは一安心か」

 「国家間レベルでは、そうだけどね」

 「民族全体のエネルギーが連合体制に向かえば止めようがない?」

 「だが東西ドイツ連合で中立化されたら、周りはどう扱っていいのかわからなくなる」

 「たしかに・・・・」

 「冷戦構造を壊されると困る人間も多いからね」

 「しかし、西側が有利すぎないか」

 「アメリカが恐慌でこけて、バランスだけは取れている気がする」

 「インドが、どう出るかで変わらないか」

 「インドは、一度、独裁を固めてから段階的に自由資本主義に移行するらしい」

 「キリスト教とイスラム教に布教自由で妥協している」

 「たしか、スケジュールを公表したよ。これじゃ アメリカも手を出しにくいな」

 「日本と同じ手か」

 「悪くないさ、全体主義で制度を固めながら都合よく、段階的に自由民主主義」

 「スケジュール通りなら、国民も我慢しやすかろう」

 「そういえば中国の西域・ウィグル域もインドの影響を受けて蜂起が増えているようだ」

 「共産主義国家で革命? 武器がないだろう」

 「いや、チベット戦の頃の武器が残ってるし、中国の地方政府と軍も横流ししているよ」

 「マジ?」

 「武器弾薬が大量にあっても食い物が少ない」

 「その上、西側諸国との取引が増えて、欲しい物が増えているようだ」

 「水増し分を埋めたり、私腹を肥やしている」

 「酷いな」

 「日本のヤクザにミグ17を横流ししようとした中国軍官僚もいたらしい」

 「あはは・・」

 「食料と武器の交換なら、どっちが有利とはいえないよ」

 「食料が減らされた方は、その分、人口が目減りする」

 「なるほど」

 「だいたい、中国人民が飢えて死んでいるのに日本に食糧を輸出している」

 「それだけ金が欲しいからだろう、同じだな」

 「中国の農民から食料を奪い、日本に輸出し」

 「その金で中国共産党幹部がリムジンに乗るわけだ」

 「酷い話しだ」

 

 

 

 北炭夕張炭鉱が閉山する。

 

 新1万円札(福澤諭吉1万円札)。

 

 11/

 アメリカで初の日本車を生産するホンダ・オブ・アメリカが操業を開始。

 

 

 

 秋津州は、毎年のように工業生産量が増えていた。

 南米大陸にへばりついた二つの小さな半島に南米大陸の資本の半分が集中し、

 南米大陸の工業製品の3分の1を作り出していた。

 特に工業製品のコア部品の部分、最先端技術の全ても秋津州で生産し、

 アメリカと欧州諸国の外資系企業も秋津州に南米大陸の本拠地を置き、集中管理している。

 そして、秋津州の生産量が増えるほど、資源、水源、電力、食料、ごみ・・・etcetc・・・

 南米大陸の依存も大きくなっていく、

 風力発電、火力発電、波力発電、廃棄物発電では足りず、

 大陸で作る電力にも頼らなければならなかった。

 ブラジルとパラグアイは両国の間に流れるパラナ川に

 世界最大規模の水力ダム発電所イタイプを完成させる。

 日本(秋津州)は、この事業にもかかわっていた。

 総出力1260万kwは大きく、

 余剰電力は、いろんな形で秋津州へと送電され、

 電力増大は、さらなる生産量拡大に繋がっていく、

 そして、フォークランド紛争は、いいように見えた秋津州に暗い影を落とした。

 南米諸国は、軒並み軍国主義化しており、

 秋津州のような、高度・高密度な自由・資本主義体制を構築している国はない、

 南米大陸にある日本系・外資系の組立工場、販売店、支店、資源も軍靴の重圧に晒される、

 とはいえ、秋津は、南米の銀行、南米の工場のほか、

 南米軍国軍官僚の避難所と避暑地の顔もあった。

 連鎖する可能性が高くなった軍事クーデターを恐れているのか、

 私腹を肥やした私財を安全な秋津銀行の隠し口座に入れ、

 子弟の留学先でもある。

 まさに有形無形の宝の山。

 支配力の大きさは、南米大陸のワシントンか、ニューヨークか、と言えなくもない。

 秋津州が攻められる可能性はあるとしても低かった。

 秋津州は、日本の国家外交戦略として選択され追求され構築された一つの姿ともいえる。

 

 銀行

 日本から通信文が送られてくる。

 「・・・本国からだ」

 「なんだろう?」

 「“大丈夫か?” だと」

 「大丈夫ともいえるし。大丈夫ではない、ともいえるし」

 「この秋津を支配した国は南米諸国を支配し、世界有数の国家にしてしまうだろうな」

 「ブラジルは、隠し口座を潰しても攻めたくなるって?」

 「占領してしまえば自分のものにできる」

 「使う能力があるのかは別だけど」

 「そうしないのは、純軍事的な理由だよ。フォークランドとは、わけが違う」

 「占領不能で、隠し口座がばれて致命的か、日本の市民権も失えば泣くに泣けないね」

 「しかし・・・最近のブラジルはアメリカからF4ファントムを購入している、不安になるよ」

 「戦車と潜水艦もだ。実にわかりやすい」

 「・・・どうする?」

 「軍事バランスで言うと大陸のほかの国へ武器を輸出するのが手っ取り早い」

 「ブラジルが想定以上の消耗をすれば、逆に他の国から攻撃される」

 「結果的に秋津州への軍事行動は、抑えられてしまう」

 「買うかな」

 「さぁ ブラジルの軍拡を他の国が、どう受け止めるかにもよるよ」

 「どちらにしろ。アメリカの思う壺だな」

 「軍事的緊張でアメリカ製品の売れ行きが良くなる」

 「アメリカが本気か、だね」

 「アメリカは、どっちでも良いんだよ」

 「戦争は、南米諸国が決めるんだから。特にブラジル」

 「きたねぇな〜」

 「アメリカは、どっちについてもブラジルと秋津州の権益保護を言い出して」

 「介入して、さらに権益を手にするだろうよ」

 「ちっ! 偽善者が」

 「大陸の軍事力増大は、日本も合わせないとな」

 「日本車も売れてるぞ。ジムニー、ランドクルーザー、パジェロも準軍事仕様だよ」

 「秋津州が輸出した、その車に秋津州が占領される可能性もあるわけか」

 「あはは・・・」

 「笑えねぇ」

 「売らなければ秋津州は廃村ばかりだったよ」

 「そこまでは、いかないだろう・・・わかっちゃいるけどね・・・」

 ため息が漏れる。

 殺し合いなどしなくても金儲けができる国は、殺し合いなどしたくもない。

 一般社会で殺人鬼が現れる出現率と、

 その犯罪者が富裕層の確率を計算するとさらに低くなる。

 普通、そういった状況を避けるものだ。

 「・・・とりあえず、こっちのアメリカ資本と協調体制で、レーガン政権に圧力をかけて・・・・」

 「汚職の証拠は全部揃っている」

 「いざというときはブラジルの現政権を失墜させてブラジルをバラバラにしてやろう」

 「アメリカも同じ情報を握っている可能性もあるから自暴自棄になるかもしれないな」

 「南米諸国は、アメリカが大っ嫌いだから、どっちに転ぶかな」

 「大陸が安定している方が儲かるから、できれば現状維持が良いのだが・・・・」

 「秋津州は大陸に依存しているからできれば事を荒立てたくない、か」

 「だよな〜」

 

 

 新南極観測船「しらせ」が完成し、国防省に引き渡される。

 

 レーガン大統領が対ソ制裁禁輸の解除を発表する。

 

 ホテル・ニュージャパン火災、

 横井英樹社長が業務上過失致死の疑いで逮捕される。

 

 医薬品メーカーの日本ケミファが新薬のデータを捏造し、

 厚生省に報告してたことが判明する。

 

 12/

 アメリカ映画「E・T」封切り。

 

 ニューヨーク カフェレストラン。

 日本人観光客

 「・・・いいねぇ。アメリカは、不況でもE・Tが作れるんだよな」

 「投資というより。投機だね」

 「日本じゃ アニメか・・・」

 「顔の出来が違う。白人はメリハリがあって映像に耐えやすいんだよ」

 「そんなに日本人は、ノッペラか?」

 「自分で言ってるじゃん」

 「・・・ゴジラのおかげで特撮は、良い勝負なんだけどな・・・」

 「顔の出来と投機する意欲で負けているんだよ」

 「日本人は堅実すぎて、映画興行は向かないね」

 「その堅実の結果が、あれか・・・」

 アメリカ人の集団が路上を行進する。

 日本製品の不買運動で古いラジカセが壊され、

 ハンマーで古そうな日本車が壊される。

 解体屋から持ってきた日本の廃車を壊して、どうするのだろうか。

 また、解体屋に持っていくのだろうか。

 I don't buy a Japanese product。

 Give work。

 NO Japan のプラカードやシャツが映える。

 「・・・あれ、大変だったそうだぞ。急にシャツを揃えて欲しいとか言うから」

 「ん?」

 「日本製のシャツ」

 「あ・・・そう・・・」

 「あ・・・タダで配っている・・・生地と縫製が良いから、お土産に持って帰るか」

 「・・・・・」

 「ドル高で品質の良いのが、こっちにくるんだ」

 「・・・行こう」

 アメリカ病と日本病は、自浄能力を失っているらしい。

 

 

 中国、第5期全国人民代表大会第5回会議

 文化大革命の影響を一掃し、国家主席制を復活する新憲法が採択される。

 

 東京地裁が、コンピュータのIBMプログラムは、著作物であるとの我が国初の判断を示す。

 

 日本車排除を狙うローカル・コンテスト法案が、アメリカ下院で可決。

 

 ソ連の宇宙飛行士2人が、

 「サリュート7」で宇宙滞在211日の新記録を達成して地球に帰還する。

 

 カード式公衆電話が設置される。

 

 韓国の金大中が釈放され、アメリカに向かう。

 

 山本譲二の「みちのくひとり旅」が第24回レコード大賞に選ばれる。

 

 

 

 日本空軍基地

 日本と朝鮮半島の地図が壁に掛けられ

 精鋭のパイロットが並ぶ。

 「いいか。この瑞風は、格闘戦でF15イーグルと戦える」

 「しかし、まともに戦えば負ける」

 「理由は推力で負けているため振り分けられるレーダー重量の差で負けているためだ」

 「まず、F15イーグルの索敵レーダーで先に発見される」

 「こちらが逆探で気付いても、そのときは有利な位置を取られている」

 「瑞風とF15イーグルの航空戦は、ECM・ECCM、チャフとミサイルの攻防は更新と装備で変わる」

 「そして、これらを上手く切り抜けたとしてもだ」

 「不利な状態のまま、F15イーグルの銃撃を受けることになる・・・」

 「つまり、F15イーグルに対し、瑞風は常に不利な状況下に追い込まれ戦いを強いられる」

 「もちろん、戦闘になればバカ正直に戦う必要はない」

 「卑怯であろうと勝てば良い・・・何をすればいいかな」

 「レーダーサイトと早期警戒機による誘導で地対空ミサイル、空対空ミサイル、艦対空ミサイルで先制攻撃」

 「味方のECM・ECCMでF15イーグルを圧倒」

 「瑞風は航空管制に誘導され、優位な位置から攻撃していきます」

 「ほかには?」

 「数で勝てば・・・」

 「実戦になると総合戦になる、当てにしている支援や戦力が全て使えるわけではない」

 「配布したシミュレーションで推測されているように相殺戦、殺戮戦になる」

 「戦略戦術的な要素も絡むがキルレートで有利な方が勝ちやすい」

 「つまり、最善のパターンでも最悪のパターンでも」

 「自分が生き残る側に入るのか、戦死する側に入るのか。個々の運と能力による」

 「「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」」」

 「能力は及第点だが・・・幸運は浪費しないで残しておけよ」

 ・・・苦笑・・・・

 「そして、韓国・海南国のアメリカ軍駐留軍は、アメリカのアジア太平洋域の要であるが」

 「それほど大きい戦力といえない」

 「しかし、満州・半島・西日本の限定された地域では、最強の戦闘集団といえる」

 「とはいえ、アメリカは、韓国・海南国を同盟国として信頼していない」

 「特にアメリカ軍と韓国軍は、毛嫌いし合っている中でもある」

 「そのため、自らを弱体化するため戦う可能性は低い」

 「防衛的ということですか?」

 「アメリカ軍は戦うために駐留してるのではなく、権益を守るために駐留している」

 「西日本エリアは、ほかに適当な交戦相手もいないので、F15イーグルということになっている」

 「韓国のアメリカ航空部隊の仮想敵も我々なんですか?」

 「私がアメリカ軍の指揮官なら、そうするだろう」

 「ソビエト空軍は面白みに欠けるからな」

 ・・・苦笑・・・・

 対ソ航空戦は、電子戦で面白みに欠けていた。

 ソビエトも電子戦は可能なのだがレベルが低かった。

 順当に戦えば、有利な状態で先制攻撃でき、

 あとは、有視界で数と数の乱戦状態になると思われた。

 日本とソビエトの機体はどちらも積載量を減らし、

 代わりに機体性能を上げている点で特徴が似ている。

 日本の機体は電子装備で勝り、冶金技術で軽量化され、稼働率も高かった。

 ソビエト空軍は、機体質量を戦闘力と燃料に転化させなければならず。

 不利を補うため強力なエンジンを装備していた。

 エンジンの寿命は戦術で問題にならなくとも、

 年間飛行訓練時間は、練度、戦力として跳ね返り、

 エンジン換装のサイクルが短ければ維持費が増し、戦略的な負担となった。

 同等以上の戦力を保持しようとするなら、負担は大きくなり正面戦力を削ることになった。

 ソビエト空軍が悪循環にもめげず、

 数で押してくるなら、日本空軍を圧倒できる可能性は、あった。

 しかし、損失が得るモノより大きいなら、戦端を避ける要因となる、

 ソビエト空軍は、最良の対日戦シミュレーションでも怖気づく損失になっていた。

 

   

  

 

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 月夜裏 野々香です。

 アメリカ合衆国、腐ってもタイでしょうか。

 29年の世界恐慌のときでさえ、

 イギリスと並んで世界第一位の海軍力を持っていたことを思えば、タフ過ぎ。

 後進国を踏み躙って、やりくりしているようですがアメリカの貧困層は大変そうです。

 双子の赤字は、傷が浅そうですが史実よりもあくどく儲けていきそうです。

 開発力のあるアメリカがライセンスを渋り。

 生産力のある日本が市場を席巻しているようです。

 交換する材料の多いアメリカが、まだ、有利という感じです。

 アメリカ大恐慌が欧州諸国と後進国を直撃。

 日本に波及してくるまで、タイムラグがありそうです。

 日本で投資熱が冷めて、少しばかりバブルがしぼみそうです。

 

 掲示板で、教えてもらったMiG1.44です。

 翼面積の比率が少し怪しいですが瑞風のイメージに一番近いようです。

 瑞風は、これの弱小版といったところでしょうか。

 1980年と2000年。開発予算額と20年の差です。

 

 

 史実では、5隻。

 イギリス軍艦の42型駆逐艦「シェフィールド」「コヴェントリー」

 イギリス海軍21型フリゲート「アーデント」「アンテロープ」

 イギリス海軍徴用コンテナ船「アトランティック・コンベイヤー」

 仮想では、3隻。

 イギリス軍艦の42型駆逐艦「シェフィールド」

 イギリス海軍21型フリゲート「アンテロープ」

 イギリス海軍徴用コンテナ船「アトランティック・コンベイヤー」

 月影VTOL(早期警戒機型)のおかげでしょうか。

 

 

 アメリカ軍産複合体は、国際緊張を高めて、割の良い商売をするようです。

 もちろん、世界の警察ですから “紛争しろ” “戦争しろ” などと、

 口が裂けても言いません (笑)

 兵器を売って経済的に、そうなるように追い込むだけです。

 乗るか、乗らぬかは、その国の “自由” です。

 そして、都合の良い方に介入して、また利権が転がり込むという・・・・・

 自由万歳です。

  

 南米諸国

 日本(秋津州)の工業製品。

 南米諸国は解放神学が強いのか、

 キリスト教が共産主義と結びついて生産性が低下。

 日本本国から輸送したりですが、秋津州での生産比率も、かなり高いです。

 日本製は、漏電しないとわかると人気がでるのか、

 少しくらい高くても買いたくなるようです。

 風雲高まる秋津州ですが、どうなるやらです。

 軍人は、自軍が有利に戦うかを考えて軍拡に走りやすく、

 視野の狭い言動をとるのですが、

 シビリアンコントロール下であると少しばかり違います。

 自分の手を汚さずに目的を達成する。

 他勢力を利用したり。

 目標を逸らせたり。

 内部から切り崩したり。

 モラルを低下させたり。

 生殺与奪権を握ったり。

 漁夫の利を狙って、卑怯な方法を考えたり。

 まず、死んだら地獄行きでしょうか。

 陰謀、策略などなど、お気を付けて、というところでしょうか。

 戦争というか、戦争自体を都合良く変えてしまいます。

 戦争開始前に大勢の決着が付いてしまうほどです。

 目的達成のための戦争ではなく。確認のため、結果としての戦争でしょうか。

 史実の日本人は、こういったことが苦手なようです。

 こちらの戦記では、海外組など、現地に詳しい人間が政策に関わりやすいのか、

 手の内が読めて切り替えしが上手いようです。

 史実より、弱い戦闘機が配備されるとは・・・・・・・

 国家としての自立も、ほどほどにでしょうか

 

 

 1982年

 豊作というわけではありませんがE・Tも含め楽しめた年だと思います。

     

 

戦闘メカ ザブングル 個人的にはヒット。

 

   

  

  

 

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よろしくです。 

1982年 昭和57年 誕生酒 (楽天)

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第91話 1981年 『覇王と魔王』
第92話 1982年 『風雲星霜』
第93話 1983年 『史上空前の詐欺?』