第98話 1988年 『秋津オリンピック』
01/
世界的な好景気が訪れていた。
85年のプラザショックで溜め込まれたアメリカ資本が散財させられた結果だとすれば皮肉、
アメリカ産業も国外に流出したドルを求めて動き出した。
もっとも、能動的なアメリカ経済は、画一的な日本産業と性質が違う。
アメリカは、個人の権利が強く弱者振り落としで年少でも学力があれば大学にいける。
天才を生かすこともできた。
日本だと型にはめて飼い殺し、
“十歳で神童、十五歳で天才、二十歳過ぎればただの人”
“神童も大人になればただの人”
やっかみ、ひがみ、等々、心根が狭く、理より情の交流を重んじたためともいえる。
無理解、杓子定規、出る杭は打たれるで天才を殺しやすく、
馬鹿を底上げしてしまう。
事の是非と良し悪しはともかく、日本は秀才の比重が大きく。
アメリカは天才とバカの比重が大きかった。
アメリカ財界が積極的に生産に寄与し、
天才がマネーゲームから勤勉勤労へシフトし、汗水たらして働き始める。
あとは、足を引っ張るバカを貧困で見殺しにすれば、日米の国力差は雪崩の如く広がっていく、
世の中、何が災いするかわからない、
日米首脳会談
「総理。M1エイブラムス。ライセンス生産しないか」
『・・・このアホがエイブラムスをライセンスするならレオパルド造るわい』
「・・・・」
日本の戦車開発にアメリカの横槍が入る。
74式戦車から10年以上も経つのに電子装備に予算を取られ、後回しにされてきた戦車開発。
秋田経由でレオパルド戦車のライセンス生産という話しもあった。
しかし、90年を目処に50トン級。開発予算300億、製造単価8億の国産戦車を計画する。
アメリカは、どこかで、それを聞いたのだろう。
侵攻を考えず、迎撃防御に徹するなら50トン級戦車でも十分。
55トン級レオパルド、61トン級エイブラムスと互角の仕様で製造できた。
レオパルドの55トン級は我慢できるとして、
エイブラムスの61トンは運用・移動・展開で面白くない、
走り回るたびに道路が痛み、田畑は荒れる、
一旦、戦場になったら、敵の攻撃より、
味方戦車のわだちが戦災を大きくする。
「ですがね・・・」
「ほら、日本はF15を蹴っただろう。戦車ぐらい、いいじゃないか」
間男が食事を奢って女性を誑し込んでいるようにも見える。
『強襲揚陸艦2隻とF4ファントムも、買ったやんけ!』
「んん・・・」
「ほら、軍需産業もあやしいし」
「例のプラザショックで弱ってるし、301条とか、騒いでいる議員もいるし」
『空前の好景気やんけ!』
「んん・・・」
「ここは穏便に済ませたいし。戦車は大きくて説得力があるだろう」
「んん・・・」
「日本は、陸海空でアメリカ製兵器を揃えたよって、言えるし」
日本の国防は、それほど戦車に頼っていない。
侵攻するつもりがなく迎撃防御限定だと61トン級戦車と同レベルの戦車を50トン級で実現できた。
なにより狭く山がちな日本で一回り大きな61トン級戦車は嫌だろう。
何より劣化ウランは集票を失いかねないと、民間出身の総理大臣でも見当が付く、
「採用してくれたら、ライセンス料いらないから」
「その代わり日本は戦車を国外に売らない」
「!?」
日本にエイブラムスを採用させ、国際信用も上げ、第3世界に売り込み攻勢を掛けるらしい。
ライセンス料ナシなら開発費300億の幾分か割り引けた。
「外見が同じなら素材は適当でもいいから」
蓄積してきた複合装甲の研究も生かせる、ということだった。
「日本は、プラザショックとJIS・TRON規格で良い思いしたじゃないか」
「ここは、大人になって退いてくれよ」
「まぁ そういうことなら・・・」
というわけで、外見はM1エイブラムスそっくり。
名称は、M1エイブラムスが言い難いのか、90式戦車 “黒姫” が開発されてしまう。
スペック上は61.3トン。航続力も465km。
しかし、複合装甲採用で実質58トンと軽く、
航続力400kmと短く重量配分は電子装備など別の項目に転化されている。
迎撃防御限定なら重量が増した分だけ、本家M1エイブラムスより強靭な仕様に仕上がっていく。
戦後の日本戦車開発 |
|||||
形式 | 54式 | 61式 | 74式 | 仮想型90式 | 史実型90式 × |
愛称 | 蔵王 | 蔵王改 | 鞍馬 | 黒姫 | |
全長(m) |
8.44 | 9.41 | 9.41 | 9.83 | 9.76 |
車体長×全幅×車高(m) |
6.50×3.40×2.40 | 6.50×3.40×2.40 | 6.70×3.40×2.30 | 7.80×3.65×2.84 | 7.55×3.33×2.34 |
重量(t) | 40 | 40 | 40 / 42 | 58 (61.3) | 50.2 |
馬力(hp) | 650 | 700 | 800 | 1500 | 1500 |
速度(km) | 45 | 54 | 63 / 60 | 67 | 70 |
航続力(km) | 270 | 300 | 300 | 400 (465) | 350 |
装甲(mm) | 25〜120mm | 25〜120mm | 25〜120mm | ||
乗員 | 4 | 4 | 4 | 4 | 3 |
武装 | 52口径90mm砲 | 51口径105mm | 51口径105mm | 44口径120mm | 44口径120mm |
12.7mm×1 | 12.7mm×1 | 12.7mm×1 | 12.7mm×1 | 12.7mm×1 | |
6.5mm×1 | 6.5mm×1 | 6.5mm×1 | 6.5mm×1 | 6.5mm×1 | |
車体の前後が油圧 | 車体の前後が油圧 | ||||
赤レンガの住人たち
「まぁ 決まっちまったものは、しょうがないけどね」
「泥を被るのが総理で、世界情勢の妥協なら良いかもしれないけど」
「世界情勢じゃなくて、アメリカの我が侭に妥協だよね」
「いいのかよ」
「内定していた企業が困るけど、ライセンス料ナシで製造できるというし」
「54式蔵王と同じで中身は別物でも良いよな」
「ディーゼルとか、複合装甲とか」
「でも兵士に即分かりじゃ駄目だから、自動装填装置はナシだな」
「どうする?」
「装甲の劣化ウランは、セラミック・樹脂で代用するとして・・・車内は一回り広いよ」
「ちょっとな」
「まぁ 電子装備入れることはできるよ」
「航空機、戦車、歩兵、砲兵と連携プレーもしやすいくなるし」
「鉄道は大丈夫だっけ?」
「広軌1676mmは伊達じゃないよ」
「2.5倍幅は楽にいけるから4m。黒姫は全幅3.65だろう」
「速度制限とか、不具合があるけど何とかなるか」
「平時はともかく、交通破壊は戦略の基本だから鉄道より、一般道とか、架橋の方が重要だよね」
「高速道路は航空機の離着陸ができる個所もあるけど、全部じゃないし」
「海上輸送も難がありそうだな」
「戦車LSTは、狭くなるけど載せられるよ」
「んん・・・運用の幅が制限されるのは辛い」
「アメリカのM1エイブラムスの技術は、どう?」
「悪くないよ。アビオニクス技術とか、整備性を融合できればおいしい」
「またアメリカにリターンしろとか、言うんじゃないか」
「あはは・・・」
「見掛けが同じなら米国製で通用するし」
「車体が大きいから、いろいろ詰め込めそうだな。エアコンとか」
「贅沢とか言われないか?」
「車内が暑くて外に出てやられるパターンは多いからね」
「日本の電子機器は耐熱で優れているけど?」
「車両が大きくなると要望の繰り上がりだよ」
「エアコン用の小型ディーゼル発電を別に作った方が良くないか?」
「んん・・・だな」
「見かけが似てると韓国が模倣戦車と喜ぶかも」
「簡易小型版M1エイブラムスと、見掛けだけM1エイブラムスじゃ 違い過ぎるだろう」
「GPSとか、味方識別装置とか良いとして、問題は射撃管制システムと車体の関係だな」
「重くて大きいと有利でも、重量バランスが悪いと命中率が落ちる」
「その辺は分からないように調整できるんじゃないか」
「でも日本は山がちだからね・・・」
「撃った衝撃で引っくり返ると困るから、姿勢制御で油圧は付けたいよ」
「油圧は良いよ。高低差を利用して無理な姿勢で敵戦車の上部装甲を撃ち抜ける」
「しかし、黒姫が58トンで二回りも大きいと足場が悪くなる通過できない山道が増え、射撃ポイントが減る」
「山道の標高差と油圧を利用した姿勢制御なら鞍馬74式でも現役だよ」
「山道と峠を補強してもらうか」
「んん・・・予算がな」
「黒姫90式が本来計画していたものより一回り大きくなると、運用はともかく計画より強くなりそうだな」
「バカ正直に正面から撃ち合いたくなる」
「武器弾薬が少ないから嫌だよ」
「それに車両が強靭になると単価が大きくなるから数量を減らすことになるよ」
年々、高騰する武器弾薬で正面装備も怪しくなっていた。
「数量はともかく。陸戦の可能性が高いのは秋津州だから。それは、それで、良いんじゃない」
「秋津は、地峡の要塞で守っている。侵攻しやすい戦車は反発されやすいんだ」
「ブラジルは、攻めてこれないだろう」
「どうだか、そういうのは想像力がないと・・・」
「だけど、タングステンが入り難いからな」
「対中国ODAで入手できるんだろう」
「鉱山ルート上の整備費だけだし。中国は、ODAが少ないって、目くじら立てているし」
「インドのODAが多いから、中国はひがんでるよ」
「怒るといえば怒るわな」
「まぁ 中国は、核とか先端技術に金を流用するし」
「希少金属を外交カードで使いたいらしいけどね」
「その割りに金払いが悪いけど・・・」
「ったく、中国に円借款するくらいなら・・・」
「あれは日本の先端工業を維持するためだろう」
「タングステンとか、希少金属は工作機械で大事なの」
「まぁ 良いというか、悪いというか・・・」
「アメリカが劣化ウランを使うわけだ。安いし」
「劣化ウランを使わないで・・・んん・・・チタン?」
「だから、工作機械がしょぼいとチタン加工も響くよ・・・」
「他にも電子産業とか、自動車、船舶。日本の産業全般、月影VTOLだって作れなくなる」
「だけどねぇ 飛鳥油田も不安だし」
「ガス油田収入があれば少しくらい工業力の不足を補うのもありだよな」
「だよな・・・産業のために国防をないがしろにするなよ」
「ていうか、産業に国防が支えられているから・・・」
「まぁ 運用は、ともかく、開発費を割り引いて車両数は増やせるんじゃないか」
「貿易収支だと、相対的に強くなる比率は、2対1で日本が有利だけど・・・微妙だな・・・」
「んん・・・・」
世の中堂々巡りは多い、
ソ連が秋津オリンピック参加を表明。
ソニーがVHS方式ビデオテープレコーダーの販売を発表。
金賢姫。大韓航空機爆破は、韓国航空の発達妨害。金日成が指令したと応える。
韓国が北朝鮮外交官との接触撤回など、北朝鮮制裁措置を発表。
アメリカが北朝鮮をテロ支援国家と認定、対抗措置を決定する。
日本政府が北朝鮮に対し人的交流の制限など4項目の措置を決定する。
オーストラリアで建国200年祭。
シアヌークがカンボジア公国連合の大統領に就任。
アフガニスタンは、ソビエト軍の侵攻で政治的な混乱が続き、国際戦略の焦点になっていた。
カシミールの西側連合 & 宗教国家連合は、反目しつつも反共で一致、
アフガニスタンゲリラを支援していた。
ソビエト軍は、アフガニスタン傀儡政府と組みつつ、
圧倒的な軍事力でアフガニスタンを制圧していく、
戦力の差は歴然で、アフガニスタンの山岳民族が強靭な抵抗力を持っていても劣勢だった。
しかし、高度な科学技術に裏打ちされた工業製品は、それまで考えられなかった兵器を開発させてしまう。
岩陰に潜むアフガニスタンゲリラが黒い筒を攻撃ヘリMi24ハインドに向ける。
発射された小型ミサイルは白煙を曳きながらハインドMi24を追尾し、命中し爆発。
ハインドMi24は燃え崩れながら大地に叩きつけられ、誘爆を繰り返す。
アメリカ製スティンガー(毒針)携帯対空ミサイルは、ハインドMi24の天敵になった。
どこかの山頂で数人の人影が、その様子を見守る
「どうです? アメリカのスティンガーは?」
「んん・・・呆れるほど凄い・・・」
「アメリカ人に想像力があるのは確かですな」
「携帯対空ミサイルなんて、普通、考え付かないですからね」
「ていうか、緊縮財政で軍事費を削られているのに」
「そんな海のモノとも、山のモノとも知れない兵器を開発できないでしょう」
「日本に売ってあげてもいいですよ」
「いや、戦果が確認できたら自前でも作れそう」
「そう言わずに、ここは大人になって・・・」
「んん・・・どうかな・・・ハインドより、月影VTOLの方が強そうだし・・・」
「あんな高価な機体を前線に出すんですか? それも地上戦に?」
「んん・・・」
「月影VTOLと交換に揃えますよ。費用対効果で勝っているはず」
日本は、攻撃を核ミサイルと巡航ミサイルで、迎撃防御を通常兵器で考えていた。
スティンガーミサイルは、敵の侵攻を思いとどませる有効な兵器と考えられ、
そして、アメリカは、月影VTOLで空挺部隊を編成しようとしており、かなり攻撃的といえる。
02/
ニューヨーク
各国の事務レベル協議
農産物の話しなのだが、何故か、違う分野も話されていたりする。
「・・・IBM・Windows系とJIS・TRON系の不毛な競争は、緩和させるべきだろう」
「IBMは、ブラックボックスが多すぎるよ」
「民間企業が二の足踏んでいるのに、国レベルで押し付けは自由競争に反するよ」
「IBMは、ハードとソフトの二層構造になっている」
「JISのようにハード・ソフト、一体の細切れ構造とは違う」
「全貌が見せられないのに、そっちの都合だけで押し付けじゃないか。ごり押しはやめてくれよ」
「スペックは、IBM系が1.4倍も上だよ。LSIの速度も速い」
「しかし、JIS系は、LSIの速度をRAM・ROMの容量で補っている。速度的な差異は微妙だな」
「IBMのブラックボックスの公開は脆弱性につながる」
「機密を全て悪と決め付けられるのは困る」
「JISは、公開されているというか。基礎プログラム言語と伝達規格だけか」
「それは、OSとハードが一体だからだ」
「IBMで、ブラックボックスを明かせば、コンピュータごと支配されてしまう」
「それは、大問題じゃないか」
「だからブラックボックスは万全だ」
「んん・・・そういった構造上の脆弱性は困るよ」
「そうそう」
「だいたい、パスワード一発だろう。偽称しやすいとネットワーク上、困るよ」
「せ、製造番号も、OS番号も、一緒に送受信させればいいだろう」
「JISは、固体識別で、とっくにやっているよ」
「製造番号も、OS番号も、同じだけどね」
「メールのやり取りも製造番号でできるよ」
「と、とにかく、日本でも性能で勝る、IBM・Windows系の製造販売もすべきだ」
「ブラックボックスの中身を公開してくれなきゃ、いやだ」
「んん・・・」
「・・・」
「」
「」
GATT理事会が日本の農産物輸入制限をガット違反として輸入自由化を勧告。
アメリカのマイアミ連邦大陪審が
パナマの最高実力者ノリエガ将軍(50)を麻薬取引容疑で起訴。
カナダのカルガリーで第15回冬季オリンピック大会が開幕する。
国連の緊急安全保障理事会が大韓航空機事件を討議。
通信衛星さくら3号aが打ち上げられる。
パナマのデルバイエ大統領がノリエガを解任する。
韓国で盧泰愚(ノ・テウ)政権がスタート。
就任式は、支配者階層に食い込んでいる白人、黒人、外国人も多かった。
そして、日本も日韓国交正常化で代表を送っていたりする。
「・・・韓国の成長ぶりは、どんな風かな」
「外国人が持ち家で、自国民が借家暮らしは辛いと思うよ。特に黒人が持ち家だとね」
「差別があるんだ」
「自尊心だけは世界最強だからね」
「自由欲しさで共産化。身売りしたがる勢力もあるくらいだ」
「小国は西についても、東についても傀儡にしかなれないよ」
「日本でさえ、アメリカの番頭みたいなものだし」
「己の自由と他者の支配は、人の欲だよ」
「そして、欲に支配される限り葛藤がある。真の自由はアメリカでさえない」
「だけど、韓国人は感情的過ぎて、ちょっとな・・・」
「儒教文化特有なんだろうな。賄賂攻勢で地位を得て販路を広げようとする」
「袖の下か・・・」
「韓国じゃ 賄賂しだいで売れ筋も倉庫の中に入れてしまうよ」
「日本だと袖の下使っても棚の真ん中か隅かの違いで売れ筋を外させるのは限度があるよ」
「企業が儲けられず痩せ細るだろう」
「担当者が私腹を肥やせれば会社がどうなろうと・・・」
「ひ、酷いね」
「賄賂の回収で搾取される労働者、下請け企業、庶民は犠牲になる。酷い生活だよ」
「当然、韓国の財閥企業は、中小企業を犠牲にするからNO.1に一極集中しやすい」
「機会を与えさせないか」
「独占は体質が淀んで腐るから考えものだけどね」
「さすが儒教の国。まともに働くのがいやになるな」
「賄賂を取れる地位に就きたがるよ。犯罪も多い」
「せめて反日をやめればね。もう少し、日本で売れるのに・・・」
「自尊心と自己顕示欲が強過ぎる」
「小中華は、いまだ衰えずか」
「自分本位を追求する国と民族が、どうなるか、見物だね」
韓国大統領が国交正常化した日本について話し始める。
「・・・また、日本の強襲揚陸艦にケチをつけるよ」
「そんなに強襲揚陸艦が怖いのかな」
「韓国軍は、アメリカの払い下げ兵器だからね」
「脅威を煽って軍事費増大を狙うのは定石」
「でもね、日本は損益収支でプラスにならない限り海外派遣をやらないよ。バカらしい」
「右翼系は、国際平和とか、美辞麗句、自己満足でやりたがってるけどね」
「戦訓は欲しいけど損益収支がマイナスじゃな」
「無意味どころか、百害あって一利無しだよ」
「国際平和じゃ食えないし」
「派兵の成否は平和じゃなく、利権を得るための派兵なんだけどね」
「結局、紛争に直接加担するより、加担している友好国を支援する方が負担がなくて利益になるよ」
「日本はそれで済むけど。韓国は、アメリカに派兵を求められたら出すよ」
「戦場は火病が怖いだろう」
「しかし、アメリカは戦争したがっているのか?」
「兵器と武器弾薬の減価償却があるから。売るか、使わないと・・・」
「買ってくれないと戦争しちゃうぞ、とか」
「そういえば新中古のF4ファントムを買わされたっけ」
「瑞風の配備数が制約されるから巡航ミサイルに改造してしまえよ」
「早期警戒管制機と飛べばファントムは対空対艦ミサイルのプラットフォームで現役だよ」
「瑞風は積載量が小さいからプラットフォームで微妙なんだよな」
「エンジン推力の不足を積載量を減らして埋めるのって、どうかと思うよ」
「推力不足でF15に負けないように造るとそうなるんだよ」
「ファントムの巡航ミサイル改造はステルス戦闘機が開発されてからだろうな」
「韓国のアメリカ空軍にステルス機を配備されたら、日本の防空網に穴が開くよ」
「アメリカは韓国を信用してないよ。F15の半島配備もゴタゴタあったし」
「韓国は自尊心が強過ぎて信頼されないか。自業自得と言えるね・・・」
盧泰愚(ノ・テウ)の演説が終わり、
ぱち ぱち ぱち ぱち ぱち ぱち ぱち ぱち
イラク
日本とアラブ諸国は、石油資源の取引関係で友好以上、親密以下。
ODAの一部は、中長期的な実利を維持しようと教育関連に使われ、
学校を建設、教師を派遣していた。
教育対象は貧しくて学校に行けない少年・少女たちだった。
保科クララは、日系ドイツ人で日本政府からイラクに派遣された教師、
荒涼とした砂漠の大地に根付いてしまったのか。いい歳でも、いまだに独身教師。
無知は死の影という、
知性を持った者と、そうでない者の差は大きい、
無知な人間は、己の欲望のまま、我を通し孤立して墓穴を掘っていく、
知性は視野を高め世界を広げる。
公私と他者を明確にし、情けをかけることの価値を知る。
この学校で良識と知識を伝え教育した者が巣立ち、
芽を息吹かせ、花を咲かせ、国を支えている実感を持てる世界、
自分が教えた者と、
そうでない者の倫理観、知的レベルの差がわかりやすい世界。
先進国は、システム化、マニュアル化が進み、
独創的なマンパワーも小手先の差異に過ぎず成果が薄れ、埋もれさせられる。
日本で、こういった実感と感動を得ようと思うなら、
明治維新以前にまで遡らなければ難しい、
ドイツでも同様で自分と同レベル以上の教師が腐るほどいる。
「先生!」
どの世界でも人気のある先生の下に尊敬の眼差しを向ける生徒が集まってくる。
基本的に学校に行けない貧しい子供が来るシステムだった。
しかし、裕福な家の子弟まで通学している。
日本の教育プログラムは優れている、と思われているらしい。
巣立った教え子は多く、イラクの中枢にいる者も少なくない。
貿易立国の日本は利潤が大きくても兵器売買を避ける傾向にあった。
対アラブ諸国のODA予算の一部は実入りが少ないように見えた。
その実、国の根幹を再構築させてしまう教育に使われる。
民間営利企業も大きくなると社会的に非営利なサービスが要求され
公益法人をやらされる。
国家も同じで 切った! 張った! ばかりでは、やっていけない。
奇麗事や建前が必要になったりで、ODAが潤滑油になったりする。
不利益をもたらす国家は敵国で交易に値せず。
相手に利益をもたらす国家は友好国で交易に値する。
というわけで日本政府も後進国に対し国際貢献してしまう。
もちろん、援助して当たり前の厚顔無恥な “くれくれ” 後進国もある。
教育の価値がわからない者は、感謝する感性すら持ち合わせていない。
日本は、欧米諸国の近代科学技術を対価を払って発達させ、牙を剥いたように。
韓国が日本の施しに対し、やっかみで牙を剥いているように。
アラブ諸国が日本に牙を剥いて来ないのであれば良しとすべきであろう。
必要なのは、あくまでもアラブ世界の石油だった。
国産の石油は枯渇に備え、なるべく温存したい。
03/
東京ドーム完成。
アメリカ政府がエイズ差別禁止を通達。
04/
出雲島・因幡島の出雲海峡(ボニファシオ海峡・12.4km)海底トンネルが連結。
韓国、全斗煥前大統領がセマウル疑惑で公職を辞任する。
アフガニスタン和平合意文書が調印される。
宗教国家連合軍・西側諸国連合軍の拠点カシミール。
「アフガニスタンも一息か・・・」
「平和になると、予算が減るな・・・」
「どこかで戦争しないかな、国際緊張がないと軍人は、食いっぱぐれる」
「ソ連が、やる気なくしているしね」
「ほら、物不足で行列ばっかりだから、やめようと思っているんじゃないか」
「アメリカも、マクダネル・ダクラス社とゼネラル・ダイナミックス社が潰れそうだし」
「軍需産業は黄昏時かな」
「あれ、プラザショックで景気回復じゃなかったか?」
「民需だよ。軍需は冷戦終結で低迷中」
「それは困るよ」
「俺達の存在意義がなくなって、ヒンズーとイスラムの仲違いが始まるじゃないか」
「んん・・・それは困るな・・・」
05/
アフガニスタンからソ連軍が撤退を開始する。
三洋電機、三菱電機、シャープの3社
IBM・Windows系パソコン「PC1AT」と互換性仕様の「AX」パソコンが開発。
レーガン大統領がソビエトを訪問し、
戦略核兵器、地域紛争問題など話し合う。
キャビア、フォアグラ、トリュフの食材と、
アメリカ産ビールとソビエト産ウォッカが並ぶ。
「大統領。顔色悪いね」
「軍部がな・・・」
「肥大化した軍需産業を縮小すると失業者が増えるね」
「ったく、冷戦のおかげで大変なことになった」
「ドル箱産業だったのに? ソビエトでも民需転換は厳しいですよ」
「後塵が国際競争に晒されると不利だからね」
「アメリカ経済は調子が良いのでは?」
「んん・・・民需だけだ」
「プラザショックで散財して景気を刺激してしまうとは皮肉だな」
「問題は後進国、特にアラブ資本が力を付けていることですな」
「んん・・・クウェートの石油会社が自動車産業に参入しようとしている」
「技術レベルは?」
「プラザショックで儲けているから資本増加でソビエトより高いかもしれんな」
ため息・・・
06/
ソ連のロシア正教会が国教化1000年を祝い、式典を行う。
ブラジルで移民80年祭が行われる。
ソビエト軍がアフガニスタンから撤退し、
共産主義の脅威が少しばかり薄れると西側は離散しやすくなったりする。
国力順でアメリカ、日本・・・ほか、離合集散・・・
そして、国家と別に国連と覇を競えるほど財源が集まって注目される。
ラサの宗教国家連合、
各国とも国力比とか、同盟戦略とか、総合力を気にしながら話しを進めていく、
当然、経済力だけでなく、軍事力も気になる。
特に気になるのは領土の延長として意識されやすい軍艦だった。
カナダ。トロント・サミット開催、
「日本がイージスシステムに準じた防空システムを新規開発したのは本当なので?」
「いえ、新型の九頭竜型はステルス機構と省力化の員数削減が目玉ですよ」
「ですが、九頭竜型巡洋艦の就航に合わせて、在来艦の電子装備の改装」
「やはり、防空システムも含んでのことでは?」
アメリカ大統領も気になるのか、注目している。
「定期的な電子装備の更新と聞いてます」
イージスシステム装備の7700トン級タイコンデロガ型と
8400トン級アーレイ・バーク型は、最強の巡洋艦と思われていた。
最大探知距離450km以上。最大探知目標200個以上。10目標以上を同時攻撃。
6000トン級やまぶき型・九頭竜型巡洋艦はアメリカのイージス巡洋艦に準ずると評価され、
最大探知距離450km以上。最大探知目標160個以上。6目標以上を同時攻撃できた。
どちらも公にしている数字は疑われ、
もっと高性能と思われていたり、粗があると思われていたり・・・
やまぶき型巡洋艦と新型の九頭竜型巡洋艦の電子機器が更新されると各国は注目する。
日本は、もっと大型艦にしようとしたところ、
新規の電子装備と在来艦への更新で予算枠が足りず。
そのままの新型巡洋艦のトン数据え置きにされただけの話し、
さらに安い買い物と言われながら強襲揚陸艦 “さがみ” “かしま” の購入でとどめ。
ご都合主義な大国のゴリ押しのシワ寄せが腹に据えかねたりする。
それでも、軍艦の個艦性能×隻数と連携で海上の支配権が確立する。
各国とも日本海軍の6000トン級準イージス巡洋艦64隻、
高性能通常型潜水艦64隻が気になる。
日本艦艇は、稼働率84パーセント。
空母を保有していない事を差し引いてもアメリカ海軍に準ずる戦闘力を有し、
領海内ならSOSUS網と航空支援でアメリカ機動部隊と互角に戦えた。
世界の海で制海権を奪えるアメリカ機動部隊が唯一、
日本の領海だけをグレーゾーンにしていた。
牛肉・オレンジの輸入自由化をめぐる日米交渉が妥結。
3年後の輸入制限撤廃などを決定。
農林水産省の住人たち
「・・・安全基準は?」
「国の定期検査・不定期検査は認めさせたよ」
「それ以上は押し切られた」
「あいつら力技だな」
「まぁ 輸入業者も消費者も安い肉を欲しがっているのは確かだからね」
「最悪、病気の有無と、出荷までの時間と保存は確認しないとな」
「まだ中国よりマシだったけど」
「うん、あいつら悪魔に魂を売ってるよ」
「そんなに酷かった?」
「日本の農産物と中国の農産物を1対5で交換したいだと」
「飢えている中国人もいるだろう、国内の農産物を食べろよ」
「いや、共産党員用だから」
「それに正気な中国人は農薬塗れの中国産農産物なんて食べたくないし」
「だったら、共産党員用の農地で作ればいいだろう」
「それは低層の共産党員用」
「上層階級は日本の農産物を信用するんだと」
「中国共産党員7000万人分の需要なら日本農業再建で悪くないかも・・」
「いや、代償で農薬まみれの農産物を日本に輸入する気だから」
「日本側の安全基準を落としてくれたら袖の下だって」
「あはは・・・絶対に下げてやらん」
「しかし、あちらさんは食料と交換したがってるぞ」
「日本の爺と婆を早死にさせれば年金を踏み倒せるだろうってよ」
「信じらんねぇ」
「鉱物となら交換してもいいけど農薬塗れの農産物なんか入れてやらんわい」
「だいたい、そこまでするかな」
「日本に食料を1対5で持ってくるなら7000万人分だと、3億5000万人分だろう?」
「いや、党の上層部なんじゃないか」
「それでも1000万はいそうだな」
「共産党員の食糧安全のために中国人民は餓死者多数だな」
「本音は、中国人3億5000万を餓死させて、日本人を農薬で毒殺かも」
「じゃ 東アジアは中国共産党員7000万の天下」
「んん・・・正気だとしたら、まさに悪魔の所業。一石4鳥くらいか」
「いや、漢方薬も売るつもりらしい」
「そいつは農薬使っていないだろうな?」
「腹黒過ぎだよ」
07/
アメリカ海軍巡洋艦ヴィンセンスが、イラン旅客機を撃墜、290人が死亡。
リクルート事件でリクルートの江副浩正会長が引責辞任。
イギリスの北海油田基地で大爆発事故。死亡166人。
ソ連が火星探査機フォボス1号を打ち上げ。
チベットは主権を失いかねないほどの財政赤字を抱え、
さらに後進国の宗教指導者たちは、ここに隠し資産を貯め込み始める。
スイス銀行、秋津銀行に準ずる宗教系銀行が乱立し、
複数の国家と複数の宗教団体が絡むことで
ニュートラルな反共産主義中立エリアにされていた。
そのチベットで宗教国家連合が宇宙開発を行うと宣言、
カトリック、イスラム、ヒンズー、ユダヤ、
それぞれの宗教衣装を着飾った宇宙ロケットを見上げる。
ほか各国の観覧者が多数。
“なぜこんなことに・・・”
献金が増える誘惑に勝てる宗教団体は少ない、
西側諸国も標高4000mから宇宙ロケットを打ち上げる経済性の高さで投資が進む。
「ぅぅ・・・空気が薄い・・・」
「何で宇宙開発なんか・・・」
「標高4000メートル以上だろう」
「宇宙ロケットを4000m打ち上げる燃料がケチられる」
「ご苦労なこった」
「瑞穂州の宇宙ロケットも赤道が近いのと山岳標高の高さを利用して打ち上げているからね。合理的だよ」
「打ち上げに失敗しても落ちるのは中国か・・・」
「まぁ 技術を盗まれて、さらに核兵器で応酬されるかもな」
「しかし、教義上問題になるのでは?」
「自らの手で宇宙開発して、真実から教義を防衛したいんだよ」
「科学的な見解にケチをつけるためか」
「有人ロケットが打ち上げられたら神がいたと言うだろうな」
「問題は、どこの神か、だろう」
「どこだって良いんだよ」
「宇宙飛行士が神がいたと言えば、後は、拡大解釈できるし」
「まぁ 教義の解釈なんて、どうにでもなりそうだからね」
「確かに天体観測には、最高の場所だね」
「問題は技術的な事になる」
「やはり金に任せて、西側と東側から集めるつもりだろうな」
「かなり早い時期に?」
「そりゃ アメリカの一極集中が嫌な国は宗教国家連合を隠れ蓑にするよ」
「カトリック、プロテスタント、ヒンズー、イスラム、ユダヤ、仏教の寄り合いか」
「どこまでやれるかね」
「ラサを経由して科学技術、工業力を得ることも考えるから宗教組織も真剣だろうな」
08/
ソ連が中央アジアの砂漠で、INFミサイルの爆発・廃棄を始める。
日本の対インドODAは、対中国ODAより大きかった。
資源と市場を得るなら恩知らずな対中国ODAの方が好都合。
しかし、いくら日本産業を強靭にするためでも、
中国を強くすれば核兵器など脅威が増し、飛鳥油田が危うくなる。
日本国内でタングステン・希土類元素を含めた希少金属で
先端工業力を守るか、一悶着があったり。
利潤が低くても親日インドに援助する方が総合的にプラスに思われた。
インド
日印首脳会談、8100億円の円借款の供与を約束。
「インドと中国のODA比は、7対3ですか?」
「対中ODAは日本の産業を維持するためですし」
「インドで希少金属が産出すれば、もう少し、対インドODAを増やせると思いますよ」
「少しは還元されていると思いますが日本の先端技術維持のためと、理解はしますよ」
「インドの発展に期待しています」
「日本も国の権限で先端技術を統制すればタングステンを有用に使えると思いますが」
「いや、統制経済は産業界の反発が強くて、なかなか・・・」
西ドイツの航空ショーで大事故。
09/
北朝鮮が秋津五輪に参加を表明する。
日本で、IBM系コンピュータウィルスが確認される。
全米精米業者が日本コメ市場の4年以内開放を求め
米通商代表部に再び提訴(10/28却下)。
通信衛星 さくら3号b が打ち上げられる。
対ブラジルODAで鉄道が敷かれていた。
そして鉄道に沿って、通信システムケーブルも延びていく。
サンパウロで日本人が携帯電話を持って会話する光景が見られるようになると、
携帯電話の売れ行きも良くなる、
日本の鉄道システムと通信システムは、南米全体へと広がっていく。
秋津オリンピック開催。
南半球のオリンピックは、南米諸国から群衆が集まりやすくなった。
北米・欧州からも人々は来るが少数派。
「天皇が病気だと、いまひとつ盛り上がりに欠けるな」
「ラテン系が十分に盛り上がっているよ。気分の問題だろう」
「ラテン系は、オリンピックより、ワールドカップだからね」
「新参者がワールドカップの開催地を取ると恨まれそうだな」
天皇が大量の吐血、以後重体が続く。
衆議院本会議で、コメ自由化反対が決議される。
天皇の国事行為が皇太子に全面委任される。
天皇の病状がさらに悪化。
スペースシャトル、ディスカバリーの打ち上げに成功
(チャレンジャー爆発事故後2年8ヵ月)
国連平和維持軍にノーベル平和賞が授与されることが決まる。
10/
ゴルバチョフ・ソ連共産党書記長が
大統領に相当するソ連最高会議幹部会議長に就く、
チリの国民投票でピノチェト大統領の不信任票が54%を超える。
東京地検がリクルート疑惑でリクルート本社をいっせいに捜索する。
アメリカが新築の在モスクワ大使館に盗聴器が仕掛けられているとし、全面的に建てかえる。
11/
アメリカの核兵器研究所のコンピュータにウィルスが侵入していることが判明。
韓国、国会の全斗煥政権不正問題特別委員会で聴聞会を開く、
中国雲南省で、マグニチュード7.6の地震が起こる。
アメリカ大統領選挙
第41代アメリカ大統領ブッシュ選出。
既存の航空機であまり見られない形状の機体が滑走路が進入して着陸する。
フランクリンミント F117ナイトホーク
この形状の航空機は、コンピュータ制御のフライバイワイヤがなければ怪しい、
「・・・どうです。ステルス戦闘機は?」
なぜか手もみの、アメリカ軍将校、
「・・・なんとも、素晴らしい。技術ですよ」
褒められるのは飛行性能でなくステルス機能。
この機体に空襲されたらステルス系の艦型でも発見率の高さで負ける、
準イージス艦と世界中で評価されるやまぶき型も、新型九頭竜型も危ない。
「日本の国家安全保障上。大いに役に立つかと思いますが」
「随分と開発予算を投じたようで・・・」
「それは、もう、アメリカ以外にステルス機を開発できる国はありませんよ」
「そりゃあ、まあ・・・」
こんな酔狂な、開発予算を組めるのは、世界でもアメリカくらいだろう。
ここで擦り寄るのも良し、
毅然と、こういったことに予算を投じる気はないと、はっきり言うも良し・・・・
「どういった取引でしょうか?」
「JIS・TRON系ですが・・・・」
「JIS・TRON系?」
「アメリカ国防省で、JIS・TRON系を採用することになりましたので・・・・」
「それは、かまいませんよ」
「できれば、内密に・・・・」
「そ、それは・・・・」
「紳士協定ということで」
「アメリカ側から洩れる事もあるでしょう」
「日本が否定すれば、消えてしまいますから・・・・」
『紳士協定か・・・』
IBM・Windows系の損失を考えると、
市場が大きく後退するのが目に見えていた。
因みに日本側がIBM・Windows系の損失を庇う義理はない、
しかし、日本国内でIBM・Windows系ラインが作られ、
潰れると日本の産業も巻き込まれてしまう。
そういった含みを入れての、取引なのだろう。
JIS・TRON系のウィルスに強い構造が幸いし、
性能低下は、数と量1.3倍増しで補う。
「・・・それでステルスを?」
「ええ、まぁ・・・」
「大変ですな」
この時代、国家安全保障の範囲は軍事にとどまらず、政治・経済全般で広がる。
グローバル化しつつある世界情勢を軍事マニアな視野だけで判断できなくなる。
いきなり、IBM・Windows系がこけると大騒ぎ、
巡り巡って日本経済も大打撃となりかねなかった。
ソ連、スペースシャトル型ブランが打ち上げられ、地球を2周して帰還する。
韓国の全斗煥前大統領
光州事件と一族不正を国民に謝罪して江原道の山寺で隠遁生活に入る。
IBMと富士通で、ブラックボックスの協定が結ばれる。
12/
パキスタンでブット女史(35)を首相とする政権が発足、
イスラム教国で初めての女性政権。
東京中野のJR中央線東中野駅。
停止中の電車に後続の電車が追突。死亡2人、重軽傷者100人以上。
死亡した後続車の運転手の耳にラジオのイヤホンが付けてあった。
ゴルバチョフ書記長が訪米し、米ソ首脳会談が行われる。
アルメニアでマグニチュード7の地震が起る。死者は推定で5万人。
国連総会でゴルバチョフ書記長が2年間でソ連兵50万人を一方的に減らすと発表。
少年ジャンプが500万部を突破する。
インド沖
エセックス型改空母2隻を含むインド機動部隊が遊弋していた。
ヴィラート (イントレピッド)
ヴィクラマディチャ (ホーネットU)
F18ホーネットが離着艦を繰り返していた。
「どうだ。ホーネットは?」
「電子装備がスペックダウンさせられているけど、悪くないようだ」
「日本に改造させたいね」
「協約だと10年は、アメリカから供給された機体をそのまま使うしかないよ」
「汚ねぇな」
「自力開発できず、工業力も不足している。言われるがまま」
「ちっ! 日本のF4Jを搭載した方が条件が良くないか?」
「性能だとF18ホーネットが良いよ。整備も容易」
「それに南アフリカ機動部隊もF18ホーネットを使っている」
「だけど、プラザショックのドル回収のためとはいえ、良く売ったよな」
「もう、なりふり構っていられないんじゃないか」
「アメリカ人のセールス攻勢も意欲的だし」
「どちらにしろ、F18ホーネットならインド海軍も列強の仲間入りだな」
「うんうん」
インド機動部隊は、先進国以外の国にとって脅威であり、
国家が海上戦力に求める目的の多くは満たしていた。
同じレベルで対峙する中国に対し十分な示威であり、
会談場所を沖合の見える迎賓館にするのも道理だったりする。
中国艦隊は、ソ連海軍の代わりに共産主義世界の太平洋艦隊を代行しようとし、
キエフ型航空巡洋艦4隻の発注を決めていた。
中国・李鵬首相とインドのルル首相の会談、
有史以前から続く歴史、広大な国土、膨大な資源、有数の人口・・・
本来なら世界第一位と世界第二位の超大国となっておかしくない、
しかし、無形で歪な精神が文化を捻じ曲げ、有形に現存する物理的な可能性を殺していた。
欧米日列強の干渉と武力介入で、中国とインドが大国としての地位から転落し、
衰退したのは両国に内在する負の資質を誘発させた切っ掛けに過ぎず、自壊といえた。
戦後、中国とインドは、自主独立を勝ち取った後も内在する悪癖が慣性として取り残され、
国家としての成長を妨げていた。
両国が真に飛躍的な成功を望むなら太古から続く悠久の遺産を否定し、
蓄積された負の伝統を捨てるのが早道といえた。
それがたやすいことであれば苦労はしない、
中国とインドは、なまくらのような国情を付け焼刃で誤魔化し国力を増強させる。
そして、互いに相手の脆弱な部分を責めつつ出し抜こうと画策する。
人も国も似ている、
自浄努力より他を貶める方が費用対効果で効率が良く、
チベット独立戦争以降も目立たないように反体制組織を支援し、自国の優位を図る。
それでいて、両国とも我田引水で有利な取引を画策するため利己主義も極まれり、
「中国は、最近、ミグ29フルクラムを配備されたようですな」
「インドがF18ホーネットを配備したからある」
「プラザショックと冷戦終結の余波とはいえ、何かと景気が良いある」
「ところで、中国は新型戦闘機を維持する力がありますか?」
「インドのホーネットは故障するとアメリカからユニットごと取り寄せて交換ある」
「修理もアメリカに送るある。実に安直ある」
「飛べない戦闘機を抱えるよりマシでしょう」
「いつまでも借り物じゃないある。いずれ、自力で高性能戦闘機を開発ある」
「おや、インドの方が先端技術でも大衆向け工業品でも品質が上ですよ」
「数百の言語を抱えた国で無理やりある。少数派の悲鳴が聞こえてくるある」
「いえいえ、中国の民主勢力の抑圧。まことに遺憾ですな」
「はて、インドの少数部族の抹殺政策はカースト制度時代を超えているある」
「抹殺は、中国でしょう」
「インドは、言語上のカテゴリーを減らしているにすぎませんよ」
「インドは言語統合と近代化のため国民に非道なことをしてるある」
「いえいえ、思想統制と権力維持のため、貧民層を踏み躙っている中国には及びませんね」
犬猿の仲。
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月夜裏 野々香です。
昭和天皇の御乱心戦記の世界も崩御で・・・
どういう風に終わらせたものかと、長い間、逡巡しつつ・・・
そろそろ、終局です。
哀れ90式戦車は、外見だけM1A1エイブラムスになってしまいました。
90式戦車は、複合装甲の形成上あの形になったそうですが、
上手く乗り切ったことにしてください。
結構、好きな、外見でしたが残念、残念。
重量が増した分だけ単価が上がって、最強戦車です。
『ミッドウェー海戦のあと』
世界の日本戦車はナンバープレートさえ張れば車高・車幅・重量制限内で
一般道も通行可能です。
中国に対し行われた8100億円の円借款がインドに流れてしまいました。
インドの国力を増強して、中ソを牽制する感じです。
インドの軍事的圧力が強まれば、ソ連も、中国も、対日姿勢で強く出られなくなりそうです。
インドカードというヤツです。
対中円借款は、ニッケル、クロム、タングステン、モリブデン、
コバルト、マンガン、バナジウム、資源欲しさです。
日本の強靭な工業力を維持するためですが、
飛鳥ガス油田があると事情が変わります。
何しろ飛鳥ガス油田は600兆円以上の価値があるそうで・・・
資源収入があると、それに頼って働かなくなったりしそうです。
高度な工業社会維持は、働かなければ食っていけない社会でないと駄目なのですが微妙です。
6000トン級 やまぶき型 巡洋艦 64隻 |
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日本海・東シナ海 |
北太平洋・北極海 |
南太平洋・南シナ海 |
地中海・インド洋・大西洋 |
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解体 | やまぶき | あかしや | あじさい | あすなろ | さざんか | しもつけ | ねむのき | ろうばい | 56年度艦 |
第02次 | しゃくなげ | さるすべり | ゆきやなぎ | はなみずき | はなずおう | うめもどき | こむらさき | かくれみの | 60年度艦 |
第03次 | ゆきざさ | ゆずりは | えにしだ | くちなし | くましで | みずなら | もくせい | もくれん | 64年度艦 |
第04次 | えのきぐさ | からすむぎ | からすうり | くまやなぎ | ひめうつぎ | もみじがさ | つくしはぎ | すずめうり | 68年度艦 |
第05次 | あかまつ | つめくさ | つゆくさ | かまつか | あかしで | しらかし | しらすげ | とだしば | 72年度艦 |
第06次 | やぶつばき | やまざくら | さねかづら | しろよめな | つるまさき | とねあざみ | とぼしがら | かすまぐさ | 74年度艦 |
第07次 | さわしば | せんぶり | やまうり | あわぶき | かさすげ | おにすげ | あおみず | あおすげ | 76年度艦 |
第08次 | むくげ | やつで | のぶき | みずき | みつば | よもぎ | さつき | すすき | 78年度艦 |
6000トン級 九頭竜型 巡洋艦 64隻予定 |
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第09次 | 九頭竜 | 阿賀野 | 阿武隈 | 五十嵐 | 五ヶ瀬 | 渡嘉敷 | 伊尾木 | 四万十 | 86年度艦 |
第10次 | 球磨 | 多摩 | 木曽 | 鬼怒 | 由良 | 那珂 | 矢部 | 千代 | |
2500トン級 やまひめ型 潜水艦 |
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海底敷設 | やまひめ | おおひめ | たかさご | おにひげ | こしなが | このしろ | むぎつく | ひらまさ | |
海底敷設 | しいら | ひめじ | あしろ | やつめ | めじな | やまめ | あまご | いさき | |
海底敷設 | くさやむろ | おあかむろ | あかひめじ | よめひめじ | くろさぎ | わかさぎ | ひいらぎ | かわはぎ | |
第04次 | あかむつ | くろむつ | ばらむつ | やせむつ | かわむつ | ぬまむつ | たかはや | しらはや | |
第05次 | あかえそ | おきえそ | しまそい | くろそい | おいかわ | まつかわ | あかいさき | しまいさき | |
第06次 | あおはた | あかはた | あざはた | きじはた | るりはた | にじはた | あかはぜ | さびはぜ | |
第07次 | やりぬめり | ほろぬめり | せとぬめり | そこぬめり | やいとはた | おおめはた | いやごはた | ほうきはた | |
第08次 | ゆめかさご | みのかさご | ふさかさご | しろかさご | ぎんあなご | くろあなご | しろあなご | おきあなご | |
2700トン級 春潮型 潜水艦 |
|||||||||
第09次 | 春潮 | 夏潮 | 秋潮 | 冬潮 | 朝潮 | 満潮 | 引潮 | 夕潮 | |
第10次 | 黒潮 | 赤潮 | 蒼潮 | 澄潮 | 風潮 | 瑞潮 | 影潮 | 雪潮 | |
第11次 | 親潮 | 大潮 | 若潮 | 早潮 | 荒潮 | 鳴潮 | 磯潮 | 灘潮 | |
渦潮 | 巻潮 | 高潮 | 沖潮 | 猛潮 | 幸潮 | 浜潮 | 闇潮 | まだ | |
よろしくです。
第97話 1987年 『国際貢献に流されて』 |
第98話 1988年 『秋津オリンピック』 |
第99話 1989年 『崩 御』 完結 |