月夜裏 野々香 小説の部屋

   

仮想戦記 『青白き炎のままに』

   

 

1949年、武昌(ウーチャン)、漢水(ハンショイ) 漢口(ハンコウ)、漢陽(ハンヤン)が統合。

武漢になりました。

  

第05話 1942/10 『中国大返し』

 中国軍は恐る恐る失地を回復、

 日本軍を中国東部沿岸部へ追いやったと大喜びしていた。

 そして、行われる親日狩りという名の略奪。

  1) 殺光(殺し尽す)

  2) 焼光(焼き尽す)

  3) 槍光(そうこう=奪い尽す) 

 三光作戦は教本通り広げられた。

 親日だった者は財産、自由、権利を守るため、

 手の平を返して反日で親日墓を掘り返し、

 証拠を隠滅して生き残ろうと、親日中国人を捏造していく、

 権勢と利権を拡大するため冤罪でも構わず貶めて私財を増やし、

 生命と財産を侵害し、同胞に不利益をもたらしていく、

 これが大陸の慣わしであり、処世術だった。

 己の信念に殉ずる者はいない、

 一人でいるときが最も力を発揮し、

 二人いると互いに監視し合い、

 三人いるとケンカになって、仕事もできない国、

 「・・・この娘が日本に中国軍の情報を漏らしていたんです」

 「ち、違う」

 「・・・・・・」

 「違う。日本軍は上海に行ったの。私は中国を裏切ったりしない」

 「連れて行け!」

 少女は無常に連れ去られる。

 密告することで体制側の覚えもめでたく、権勢側に上手く取り入った者が生き残る。

 そして、奪う側に立っていく。

 日本でも珍しくなかった。

 しかし、この国では大規模に行われる。

 敵国人に殺されるより、同国人に殺される事の多い国だった。

  

  

 ガダルカナル。大和(ミッドウェー)島。ニコバル諸島は、日本の三大潜水艦基地となっていた。

 日本海軍は、アメリカの戦艦と空母を撃沈後、標的を高速巡洋艦・駆逐艦から商船に落としていた。

 そして、戦果は、着実に上がっていた。

 アメリカ海軍は、インド・太平洋海域で護送船団方式を採用しつつあった。

 連合軍の護衛艦不足は、大西洋・インド洋・太平洋全域で深刻になっていく。

 

 泊地の伊号潜水艦

 青く広がる空、

 水平線まで続くコバルトブルーの海、

 強い日差し、

 波打ち寄せる白い砂浜が潮風を内陸へ送り込む、

 水兵たちは、ヤシの木陰で潮風を受け、波音を聞きながら寝転がる。

 醜いのは人間だけ、

 どこのトンマが戦争しようなどと言い出したのか。

 人間も自然の一部、

 いつ、出来損なったのだろうか。

 「次の輸送船は、いつ着くんだ」

 「1週間先だよ。途中で撃沈されなければね」

 「機関部品が足りないくらいで出撃もできないとはね」

 「休養だな」

 「戦争できねぇじゃん」

 「日本はね、戦争する以前に生きるのが大変な国なんだよ」

 「勝ち目無いじゃん」

 「平和過ぎるとね。父親の権威が低下するからね」

 「世の親父どもは頼りにされたくて、国のためとかいいながら父権回復で戦争始めたんだよ」

 「バカじゃん」

 「でも尊敬はされたいよ」

 「家に帰ると近所に尊敬されたりするし」

 「凄いじゃん」

 「平和だったら、ああいうのないよな・・・・」

 「なんとか君。万歳〜! とか」 苦笑い。

 「あはは・・・・」

 空襲警報がなって、水兵たちが慌てて、塹壕へと逃げ込む。

 

 

 日本航空基地の上空。

 鍾馗の編隊がライトニング戦闘機の編隊に切り込んでいく、

 単発と双発の違いがあっても互いに似た軌道を描いた。

 優位な位置を取ろうと懸命にドックファイトを繰り広げる。

 どちらも、一撃離脱が得意な機体で上昇も、急降下もできた。

 ライトニングは高高度性能と火力で優位。

 しかし、単発機の鍾馗は機動が速かった。

 航続力が短い鍾馗が南の島に配備されたのは、つい最近、

 大き目の格納庫ができたので船で運んで組み立てられた。

 

 乱戦模様の航空戦に隼の編隊が割り込む。

 陸軍機も、海軍機も同じ周波数で通話ができた。

 しかし、作戦は、それぞれの隊長しだいで、

 時折、協力することもあるが綿密な連携は取れてなかった。

 鍾馗と隼の機銃は、12.7mmと7.7mmでパンチ力に欠ける。

 そこにB17爆撃機が現れると、はっきりする。

 緒戦、ゼロ戦の20mm機銃が対重爆撃機の戦いで有効だった証明にもなった。

 しかし、陸軍主導になっただけで海軍の機銃が使えないわけではない。

 エリコン20mm機銃を2丁装備した飛燕が切り込んだ。

 冶金技術、工作能力、治具で劣る日本の水冷エンジンは稼働率が低かった。

 しかし、海軍用熱田型水冷エンジン製造の工作機械を

 陸軍の川崎二式ハ40エンジンの製造ラインに運び込んで流用すると状況は僅かに好転する。

 陸軍の戦略資源のニッケル制限が解かれ、

 稼働率だけでなく耐久性と性能も向上していた。

 戦局が悪ければ陸海軍の悪い所取りで、最悪の結果を招いていた。

 しかし、ミッドウェー海戦の勝利のためか戦局は安定し、

 前線からの要望で陸海軍の良い所取りが可能になっていた。

 飛燕は、乱戦模様の航空戦の隙を突いて切り込み、

 B17爆撃機にエリコン20mm弾を命中させていく、

 B17爆撃機は被弾しながらも対空砲弾の炸裂の中を掻い潜り、

 25mm機関砲の対空砲弾幕を突っ切って基地上空に突入し、爆弾を投下していく、

 南の島の基地は、適度に爆撃され、

 アメリカ爆撃部隊も被弾して引き返していく、

  

 残されたのは爆撃された南の島と双方で撃墜された機体。

 そして、無機質に横たわる死体。

 血肉が転がっている事も珍しくない。

 南の島が楽園というイメージが消し飛んでいく、

 「・・・陸海軍を含めての損失比は?」

 陸軍が海軍損失を無視し、

 海軍が陸軍損失を無視して戦果報告をすると大勝利につながる。

 しかし、戦局が安定し部品類の共有が進めば、情報の交換がされやすく、

 互いに補い合ったり総合的な判断をしやすくなる。

 何より、歪な部品を共有するだけで分母が増え、

 偶然、合う備品が見つかり稼働率も向上してしまう、

 「味方の撃墜機は、隼3機、鍾馗3機、飛燕3機で計9機」

 「米軍撃墜機は、ライトニング33機、B17爆撃機12機で、計45機」

 「損失比は、戦爆含めて、1対5です」

 味方の損失は確かでも、敵に関しては都合の良い報告がなされる。

 あまり真に受けない方がいいのだが

 露骨に疑ってもパイロットの士気に関わる。

 「・・・悪くないな」

 「はい」

 「基地が損害を受けても守っている方が有利か・・・」

 「上空待機が間に合えばですが」

 「哨戒機を飛ばしておくしかなかろう」

 「ただでさえ燃料がないのだ」

 「長距離攻撃で燃料を浪費するより良いだろう」

 「いつまで守勢が続きそうですか?」

 「大陸側に戦力が動員されている。たぶん、ずっと、だろうな」

 陸海軍別々で集計して戦果を過大に報告すると、

 無茶な攻撃をしても大丈夫だと誤解してしまう。

 小心者と野心家は、戦果を上げられない強迫観念に弱く、

 無理無駄な敵基地を攻撃しやすくなる。

 それは、パイロットだけでなく、作戦司令官も同じだった。

 過大な戦果を真に受けると功名心が立ち正常な思考を失う、

 出世しようと無茶な攻撃を繰り返し、

 戦力と人材を磨り潰して自分の功績を上げる、

 勇ましく野心的な司令官は威勢良く味方を殺し、

 戦果を自分の手柄にし、残りカスを後任に引き渡して栄転する、

 日和見な司令官は損得勘定で数字上、勝っていればと味方戦力を保ちやすかった。

 これは戦時下ばかりでなく平時下でも行われ、古今東西、普通に行われる。

 理不尽なのだが威勢の良くない将校は昼行灯とか、無能に見えたり、

 本当に無能だったりで見分けが付きにくい。

 とかく人の世というのは、そういう業があるのだろう。

 そして、そういう、人材を見抜けない国家主導者層も間抜けで

 日本だけに限らなかったりする。

 これは相乗効果なので将兵のどっちが悪いともいえない。

 少なくとも将校なら戦果を疑ってかかることも必要で、

 将兵は正確な戦果報告をする義務を負う。

 とはいえ、現状、大規模な航空攻撃を強要する将官はいなかった。

 通商破壊作戦で互いの戦力は相殺され、

 パンチ力に欠けた航空戦が繰り返される。

 日本は攻勢の限界で戦線を拡大できず。

 アメリカも戦力と準備不足で日本の戦線に打撃を与えられないでいる。

 

 

 中国大陸で日本軍の後退が続く、

 中国国民軍は、じわりじわりと略奪しながら中国沿岸側に押し寄せる。

 上海で転進の為、日本軍を乗せた日本輸送船団は、一旦、上海港を出航。

 外洋に出たと見せかけて反転、

 先行する摂津、富士、敷島、浅間、吾妻、春日、日進、八雲、磐手の9隻が中国軍の砲撃を吸収していく。

 そして、要衝に向けて突入座礁する。

 中国軍に砲弾や銃弾を消費させるのが目的だった。

 航続力の長いゼロ戦、一式陸攻が露払いで投入され、

 揚子江を遡る日本の輸送船団は、中国戦線をあっさりと抜け、

 中国軍の後方へと突入していく、

 中国空軍とアメリカ空軍は、航空基地の移転と移動で迎撃もままならない。

 日本に1000トン〜3000トン級商船は600隻程度あった。

 そして、この作戦に多くの船舶が動員されていた。

 上海から重慶まで2400km。7日間の行程が見積もられていた。

 河口から2400kmの上流に1000トン級の艦船が遡れる揚子江は大きかった。

 中国軍は、漢口を通り過ぎていく日本の輸送船団に向け、小銃や野砲を撃ちかけていた。

 ゼロ戦が両岸に配備された中国軍の大砲に機銃掃射を加え、

 一式陸攻が爆撃していく、

 そして、日本の河川砲艦が反撃すると両岸の中国軍は沈黙し、

 組織的な機能は崩壊していく、

 進軍状態の中国軍に無線などまともになく、組織的な対応ができず、

 各地で寸断され孤立し、銃を捨てて民間人へと成り済ましていく、

 重慶に海軍陸戦隊と陸軍部隊が上陸し、都市を制圧していく。

 揚子江沿岸に陸揚げされた95式軽戦車が揚子江で中国軍を南北に分断し。

 そして、中国東岸側に後退していた日本軍が補給と整備を終えると反撃を開始。

 日本軍機は制空権を握って空襲を繰り返し、

 中国軍は浮き足立って戦意を喪失していく、

 九八式直協偵察機は、適当な広さの場所があると運用され。

 海軍の水上機は、揚子江で河川砲艦の補給を受け運用される。

 インド・太平洋方面で手抜きした戦力が中国戦線で費やされていく、

 山岳部の防衛線と違い、

 平野部の中国軍は脆弱であり、

 97式中戦車や95式軽戦車が前進すると、総崩となった。

 日本軍の攻勢で中国大陸の形勢が、ひっくり返っていく、

 国民軍の崩壊は、連合国の戦争目的の一つを喪失させた。

 

 日本軍が取った作戦は、いくつかの工作で偽装されていたものの単純な兵法だった。

 中国国民軍、首脳部は兵法を諳んじ、最初から日本軍の戦略的後退と疑い、喝破していた。

 しかし、中国東部の平野部は穀倉地帯だった。

 日本軍の後退で得られる地位、名誉、財産、戦利品に目の眩んだ中国人は統制が利かず。

 国民軍も、これを押さえねばと焦ったのが災いする。

 そして、日本軍の大規模攻勢は中国側の予想をはるかに超えていた。

 結果として、中国国民党と中国国民軍は、重慶が占領された時点で退路を断たれ崩壊した。

 重慶

 日本軍将兵たち、

 「蒋介石は?」

 「成都に逃げたよ」

 「ふ〜ん 成都か・・・劉備元徳とか、諸葛孔明とかの世界だな」

 「いい加減、大陸から退きたいよ。日本人は国民的な良識を守るべきだ」

 「・・・だな」

 都市や幹線道路は急速に治安が安定していく。

 そして、重慶が陥落したことを知ると中国民衆が国民党狩りを始める。

 日本軍の命令ではなく。

 そうやって奪われた資産を奪い返す者たち。

 いや、もはや、誰が元の持ち主だったのかすらわからない。

 それほど “奪う” “奪われる” の連鎖が続いている。

 結局、権力側に擦り寄った者が中国の権力を再構築していく、

 そして、掌を返した中国民衆によって国民党狩りと三光作戦が行われ、

 同胞同士の殺戮といった状況に向かっていく。

 日本軍将校が回復した戦線をぼんやりとみていた。

 「・・・・なぁ 日本軍は、何しに中国大陸に来たんだろうな」

 「さぁな・・・」

 

 

 漢口

 「・・・97式中戦車を見事に使い潰してしまったな」

 97式中戦車がキャタピラを離帯させた状態で放置されていた。

 命数切れの砲身も、うちひしがれているように見えた。

 機動力で劣る97式中戦車は、この作戦で消耗し、

 それまで親日狩りをしていた中国人は、

 掌を返して親日派を気取り日本軍に取り入っていく、

 悠久に続く中国の歴史では、よくあることなので誰も気にやまない、

 さも当然で中華の常識。

 人口比でいうと生真面目な日本人が少数派で処世術知らず。

 “バカ! 早死にしたいのか” 的な非常識といえた。

 日本軍は、建前、社会道徳、善悪の気質が強く、処女も同然だった。

 とはいえ、日本軍の軍政いよって漢口の治安は回復していく、

 何しろ重慶を陥落させた日本軍がばら撒く偽札元は、偽札というより本物の貨幣だった。

 日本兵が飢えて死んでいく中国人の横で、中国人からスイカを買う。

 倫理観も良識も消し飛びそうになる。

 日本兵が浮浪者の子供たちに一個わけると、

 子供の集団がスイカを砕き、あっという間に果肉が消えていく、

 「兵隊さん」

 「ん?」

 「どうでもいいけど、同じ数字は、いけないあるよ。偽札かと思われるあるね」

 中国人の商人が紙幣を見せた。

 「日本政府に言って、ちゃんとした元を作らせるあるよ」

 「「「・・・・・」」」 兵隊さん

 中国大陸は偉大だった。

  

  

 大和(ミッドウェー)島

 大和艦橋でブツブツとふて腐れたように呟く声が聞こえる。

 あの日以来、アメリカ戦艦による夜襲攻撃は受けていない。

 単に金剛型戦艦と水雷戦隊を配備しただけ、

 そして、遠方に戦艦を含んだ艦隊を配備できるほど日本海軍は豊かではなく、

 維持費と整備で苦心し、燃料が浪費されていく、

 艦隊をミッドウェー海域に配備させられた時点で日本海軍は負けていた。

 一定の期間が過ぎれば、錆び止めの塗装をするため、

 内地と前線を行ったり来たりしなければならない。

 日本海軍を破綻させる作戦なら大成功であり、

 十分な兵站のある真珠湾は、有利だった。

 日本海軍は苦肉の策として、周囲に漁船を配備させ、監視させ、

 同時に海産物で食料を得ていた。

 しかし、一時しのぎに過ぎなかった。

 

 アメリカ海軍ガトー型潜水艦グラニオンは、ミッドウェー沖の哨戒についていた。

 潜望鏡を覗き込んでいた艦長マンネルト・アベルは、ニヤリとする。

 「・・・・日本の戦艦4隻が並んで泊まっている」

 舌なめずりしそうなほどだ。

 同僚の潜水艦部隊が日本戦艦6隻を大破させ、引っ込ませたことは知られている。

 その時の潜水艦部隊は、ほとんど撃沈されたらしいが

 自分は、日本戦艦を撃沈して生きて帰還する。

 当然、昇級が早まれば部下に良い思いをさせることもできて千載一遇のチャンス、

 艦を理想とするコースに向けて移動させていく、

 潜望鏡で用心深く周囲を警戒し、ソナーで周りの機関音を調べる。

 上空に航空機さえいなければ撃沈されることはない、

 よしんば、いま見つかっても戦艦を撃沈できるのなら

 人生を賭けたくもなった。

 「副長。全魚雷を発射する」

 「はい」

 伝令が伝わっていく。

 バラ色の未来に向けて艦を接近させて行く、

 不意に抵抗を受けて射線が狂わされ、艦が流され、止まってしまう。

 「どうした!!」

 「・・・・わ、わかりません」

 「・・・艦長・・・これは・・・・」

 

 金剛型4隻は、ミッドウェー沖の洋上、

 何重もの防潜網に囲まれて浮いていた。

 動かすと燃料を食うからといえる。

 戦艦4隻を囮にした対潜作戦。

 怪我の功名なのかアメリカ潜水艦6隻を撃沈し、潜水艦4隻を捕獲していた。

 日本の対潜能力が向上したからではない、

 アメリカの魚雷Mk14は、射程4000m、

 当然、その外側に防潜網や捕獲網を張っておけば引っ掛かる。

 足りないときは魚網も使う。

 単純な足し算と引き算で計算された戦術だった。

 とにかく、反応さえあれば、そこに潜水艦がいることになり、捕り物が始まる。

 とは、いえ、中心の戦艦は暇だった。

 昼間は、停止させ、

 夜になると、機関を動かし、いつでも出撃できる状態で待機、

 敷設艦は、いつでも防潜網を開けられるように待機している。

 日本人に向かない戦術なのだが真珠湾を攻撃できる状況でないため待ちの状態であり、

 深夜のミッドウェー周辺海域は、日本の水上機が波に揺られて待機していた。

 金剛 艦橋

 「・・・アメリカの戦艦は、来ないのか?」

 「日本が戦艦をミッドウェーに貼り付けさせていた方が苦しいと知っているんでしょう」

 「その通りだから腹立つなぁ」

 「アメリカ機動部隊の艦載機パイロットも、かなりやられているようですし」

 「アメリカ戦艦も航空支援を受けられない状態で大和に近付かないでしょう」

 「こんなのは男の戦略ではない」

 「機動部隊が再建できればいいのですが」

 「ミッドウェー海戦でパイロットを消耗しすぎたんだろう」

 「元々、パイロットが少ない国でしたから、欧米諸国と覇を競うなんて人的枯渇を招きますよ」

 「しかし、中国は何とかなりそうだな。旧式艦と東南アジア諸国の利権を交換か」

 「少なくとも燃料は、もう少し優遇されそうです」

 「大陸鉄道が成功すれば、陸軍の利益の方が大きくなるだろう」

 「善悪にこだわるつもりはないが日本の大陸搾取鉄道か・・・厚顔無恥だな」

 「善悪は行動を決める上でより。モラルを保つ上で重要だよ」

 「帝国主義も、末期的なのに・・・」

 「近代化は、帝国主義の資源、資金の集約と搾取によって成されたのですから過程的なものでは?」

 「アメリカとイギリスは、帝国主義で散々搾取し」

 「日本とドイツに帝国主義のレッテルを貼り付け、帝国主義卒業か・・・偽善者が」

 「日本も既得権を確保して、さっさと帝国主義を卒業したいものだ」

 「搾取を既得権というのが厚顔無恥だよ。陸軍の対応が見ものだな」

 「戦争が終われば軍部の利権も減るな」

 一抹の不安と寂しさが漂う。

 大陸で戦いが終わってしまうと、主導権は軍人から政治家へ移行する。

 国際外交の場に軍人が出るわけにいかない。

 そんなことをすれば日本が軍事国家であると証明してしまうようなものだ。

 利巧と馬鹿は職業で分けられるものではなく、

 軍人が聡く、政治家がバカだ、などという世迷言は国際社会で通用しない、

 国際外交上、互いの国を代表する者は、背広か、民族服、礼服と相場が決まっている。

 制服を着ていくバカはいない。

 そして、日本軍が重慶を落としても中国大陸の混迷は深まっていく、

 

 


 月夜裏 野々香です。

 陸軍主導の機体で、空母艦載機は先行き不安です。

 代わりに規格の共有化に成功。連携作戦も、それなりのようです。

 

 欲深な日本軍は、重慶占領で中国支配を確立するか。

 それとも、有利な条件で条約を結んで軍を退いていくのか、微妙。

 日本政府は、腕力バカな軍人から主導権を取り戻し、

 正常な二国間交渉ができるでしょうか。

 

 

   

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第04話 1942/09 『逃げるが・・・』
第05話 1942/10 『中国大返し』
第06話 1942/11 『真空管ぐらい、まともに作れ』