月夜裏 野々香 小説の部屋

   

仮想戦記 『青白き炎のままに』

   

1949年、武昌(ウーチャン)、漢水(ハンショイ) 漢口(ハンコウ)、漢陽(ハンヤン)が統合。

武漢になりました。

  

第07話 1942/12 『気持だけ、入れたある』

 中国

 日本政府は、南京の汪兆銘政権を中国大陸の正統政府と宣言し、

 汪兆銘の南京政府を助けることで侵略国家ではないと自己正当化していく。

 陸軍も対米戦に備えなければならず。少なからず妥協させられていく、

 結局、軍人としてのプライドが保たれながら退けるのであれば退きたかったのだろう。

 もっとも国家としては損益収支を考えながらになる。

 そうでなければ、日本人は中国大陸で何で死んだの?

 無駄死に?

 ということになる。

 日本政府は汪兆銘と妥協し合いながら損益収支線を確定していく、

 そして、日本軍と中国民衆が納得するかといえば、あまり納得しない・・・・・

 犠牲が多過ぎて、丸く収まるは、ありえない。

 上層部が自己満足を得られそうなところで落ち着いていく。

 上海

 「日本人であれ、中国人であれ、金を出して養う者が上に立つということかな」

 「偽札だよ。これ」

 「汪兆銘政府も黙っているよ。いまのところね」

 「中国経済なんか考えないで増刷しているけど、大丈夫なの?」

 「大丈夫じゃないだろうけど。総人口の割りに紙幣が足りないのも事実でね」

 「鉄道を建設できて買い物ができればいいけど」

 「偽札でもお金を払えば中国人は、お金持ちになるよ。鉄道もできて資源も入る」

 「偽札は気が退けるけどね。普通は死刑だ」

 「強制的にタダ働きさせるよりいいよ」

 「しかし、いい加減。悪辣なことは止めたいもんだ」

 「しかし、偽札。日本に流れてくると困るよ」

 「あはは・・・・」

 「適当な時期を見て、汪兆銘政府に新札を発行してもらって」

 「それで、手打ちだろう」

  

 

 スターリングラード戦

 ジューコフ将軍率いるソ連軍は、スターリングラードの包囲を完成しつつあった。

 フリードリヒ・パウルス元帥率いるドイツ軍23万人は吹雪の中、廃墟に取り残されていた。

 ヒットラー総統は、ドイツ第6軍・枢軸国軍に脱出の機会を与えず。

 マンシュタイン元帥の冬の嵐作戦も救援軍がソビエト軍に阻止されて失敗し、

 ドイツ軍は補給が途絶え、風前の灯火となっていた。

 ドイツ将校たちは雪の中で廃材を燃やして暖を取り、

 僅かな配給を口にしていた。

 「退却を恐れるとはチビひげの小心者が・・・」

 「スターリンの事ですか、それ・・・」

 「ふ どっちも、そうだったな」

 「コンプレックスで戦争されてはかなわんよ」

 「ドイツ軍は、スターリンの支配体制を固めさせるために戦わされたようなものですからね」

 「放って置けばスターリンは、クーデターで殺されて独裁者だ」

 「それが救国の英雄ですからね」

 「ジューコフは勝っても、いずれ粛清される身だというのに、なにを一生懸命にやっているんだ」

 「例の手紙はスターリンの元へ届くかな」

 「ジューコフが裏切ってドイツ側に内通してる手紙ですか?」

 「ああ」

 「それらしい手紙が敵の政治将校に渡るようにしていますが、どうなるか・・・・」

 「引っ掛かれば、お笑いだがね」

 「独裁者は人を信じられない傾向があるよ」

 「ったく、弾が無くなると頭ぐらいしか使えないよ」

 「無駄弾は珍しくないよ」

 

  

 呉

 アメリカ潜水艦5隻が停泊していた。

 捕獲したガトー型2隻、一つ前のガー型3隻が並ぶ、

 日本の技術関係者が出入りしていた。

 「まぁ 性能はともかく、品質的な優位性は認められる」

 「リベットもしっかりしているし、溶接は均一で漏れがない」

 「品質保証は耐久性と稼働率で重要ですよ」

 「権威主義的な産業より、拝金主義な産業の方が品質がよくなりやすいだろう」

 「結果として潜水深度は、ガトー型90m。ガー型75m。巡潜乙型100m」

 「ドイツの新型IXC/40型は230mだそうだ」

 「ドイツ製と科学技術を競うのは無謀ですよ」

 「アメリカと数を競うのもな」

 「とりあえずドイツ側の言う通り、数で勝負というのでやってみますか?」

 「日本の潜水艦技術は試行錯誤で過渡期なんだよ」

 「静粛性を向上させるのは悪くありませんよ」

 「機関を12400馬力からガトー型5400馬力並みに落とせば、追い付けないが静かになるな」

 「トン数は伊号が最大ですよ。落とし過ぎると危険では?」

 「半分なら6200馬力だろう」

 「一軸は生存性から危険では? 普通の国は機関二つで二軸」

 「一番、手っ取り早いよ。艦の中心なら静粛性も高まる」

 「4700馬力2基の方が安全では?」

 「伊12号型か」

 「水中速度と安全深度を向上させて生存性を上げる方が良いのでは?」

 「水上機の格納庫を省くなら、水中速度を上げられます」

 「あと建造期間も短縮できます」

 「索敵能力が低下するが生産性は増すし、数を揃えようと思うなら悪くない」

 「パイロットの振り分けが厳しくなっていますから」

 「代わりに魚雷の本数を増やすか」

 「船殻を増やせば、もっと深く潜れて生存性が向上します」

 「重くなると浮上できなくなる恐れもあるからな」

 「軽量の高張力鋼が欲しいですね」

 「陸軍も、そんなことを言ってたな」

 「戦車にお金を注ぎ込んでも費用対効果が悪いですよ」

 「商船ごと、師団を沈めてしまう方がスマートです」

 「あいつら戦車予算を減らされると怒るからな」

 「それに戦車を配備すれば、上陸側は3倍の戦車を必要とする」

 「敵に戦車を余計に投入させれば、侵攻速度も遅らせられる」

 「中国戦線が片付いたのでしたら陸軍を減らしてもいいのでは?」

 「現状でも点と線の支配だからな」

 「兵を減らすと線と点も維持できなくなると、ごねてるらしい」

 「ごねた分だけ、日本が不利になっていくのがわからないんですかね」

 「利権が絡むと、わからなく、なるんだろうな・・・・」

 「結核患者が急増しているというのに?」

 「わかっていても目を瞑る」

 「軍部も利権を手放せず。どうして良いのか、わからないのだろう」

 「利権に執着し過ぎですよ。見苦しい」

 「権力者を利権から解放するのは難しいよ」

 

 

 中国大陸 重慶

 中国人の総人口は約5億人以上。

 日本の支配は、点と線だけだった。

 一歩郊外に出ると中国軍閥が支配しており、その外側を匪賊が支配する。

 支配階級が5パーセントなら2500万人以上が必要になった。

 この中に何人の日本人が食い込めるかだった。

 日本の中国支配は永久に不可能ともいえる。

 というわけで、日本と汪兆銘政権は利権を分けながら妥協していくことになった。

 中華料理店 牡丹楼

 中国人店主が厨房にやってくる。

 「・・・東夷に出す料理は、どれある?」

 「そこに並べられた皿です。大人」 料理人。

 店主は、凍りついた微笑を浮かべながら薬のビンを出す。

 即効性の毒もあれば遅効性の毒もある。

 無味無臭、遅効性の秘薬。

 数年先、体を崩して病弱死する。犯人は誰かわからない。

 そして、解毒薬もある。

 これを使って、日本の内部から切り崩すこともできる、かもしれない。

 店主は、零れ落ちそうな笑いを浮かべ。ビンを傾けていく。

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「「「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「「「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

 「もう、いいある・・・もっていく、あるね」

 「入れないのですか? 大人」

 「日本人は、お金を運んで来るある」

 「死ぬと、お金を運んで来れないある。気持ちだけ入れたある」

 

 日本軍将校数人が昼食中、

 「日本は南京の汪兆銘政権と協力し合いながら中国民衆をまとめていく事になりそうだよ」

 「中国人は不平不満の捌け口として日本を利用するだろうな」

 「わからなくもないね」

 「内政の舵取りを誤るとクーデターか、革命」

 「行政は、それほど難しい」

 「まして中国の人口は5億」

 「封建主義が強く、知的水準が低く、貧しいときている」

 「民衆を強圧で押さえ込むしかない」

 「中国人が内政固めで反日を利用できるのなら利用したくなるけどね」

 「だけど、知的水準を低くしないと封建社会を維持できないのでは?」

 「知的水準を上げると国民全体の知性を利用できるようになる」

 「しかし、同時に権力の座を追われやすくなる」

 「善政なら、そのまま、民主化も可能かもしれないがね」

 「善政もいいけど、お人好しだと支配欲に目の眩んだ有力者が出て国を潰しそうだな」

 「確かに中国は、そういうところがあるね」

 「強圧的な恐怖による支配か。何千年も続いてきたんだろうな」

 「中国民衆はしたたかになるよ・・・・・」

 店主が挨拶に来る。

 「・・・これは、これは、中佐様。良く、お越しくださいましたある」

 「店主。蒋介石と連絡を取りたい」

 「それは、まあ、人伝に伝わる事は、あるかもしれませんが・・・」

 「蒋介石は、まだ中国民衆に人望がある。だが、大勢は決している」

 「内々に日本に協力してもらえるのであれば、これ以上の戦闘は望まない」

 「どのような、協力で?」

 「それは会見の確認が取れてからになる」

 「骨を折ってもかまわないある。ですが・・・・」

 「店主。日本と蒋介石の連絡は店主を通して行うことになるだろう」

 「それで利益が上がるのでは?」

 「中国人は、えげつなく儲けるのが伝統ある、それだけでは・・・」

 「大人。蒋介石、日本、民衆から3重取りか?」

 「えへへへ」

 「何が欲しい?」

 「重慶は、内陸ですので海の物が好まれるある」

 「日本が内陸で海の物を商売する折は・・・・」

 「わかった。店主を通すように尽力しよう」

 こういった裏取引事情がわからないと中国の商売は失敗しやすい。

 善良な日本人が需要があると思い、

 重慶で海産物を商売しようとしても上手くいかなかったりする。

 しかし、利権の振り分けも車の両輪で、日本を支持する中国人は増えていく。

 これは、今も、昔も、同じだった。

 互いに左手に隠し持ったナイフを気にしなければ右手で握手できた。

 にこやかに微笑む日中友好が育っていく、

  

  

 日本の某工場

 歩留まり (製品−不良率=歩留まり) が低いと不良品が増え、

 資金を回収するため単価が跳ね上がる、

 逆に歩留まりが大きいと不良品が少なくなり、

 利潤は大きければ単価を押さえることができた。

 日本の不良品は多く、使える製品は少なかった。

 性能を向上させようとすると精度が厳しくなり不良品が増えていく、

 工場

 少しくらい怪しくても納品している。

 しかし、どうしようもない部品も少なくなく、

 不良品が箱に投げ込まれる。

 「所長・・・」

 「潤滑油も、部品も、消耗しているんですよ」

 「そのうち、まともな削り出しなんてできなくなりますよ」

 「海軍の工作機械も同じ規格で作れるようになった。前よりも良いはずだがね」

 「製造番号の奇数番号と偶数番号で陸海軍を振り分けても、こう不良品が多いと・・・・」

 設計図を見ながら頭を抱える工員。

 「・・・・陸軍は、中国戦線で一息ついた」

 「海軍は、ミッドウェー海戦で一息なんだろうな」

 「最近は生産量より、精度で煩くなってきている」

 「では誉を止めた方が良いですよ」

 「陸軍仕様で海軍の工作機械を使ったところで稼働率は満足できるものにはなりません」

 「せいぜい、1500馬力か。大型の1800馬力でしょう」

 「それでは軍が納得しないだろうな」

 「エンジン不良でパイロットが墜落死するだけですよ」

 「んん・・・・」

 「現場、無視じゃ困りますよ」

 「無視は、しとらんよ」

 「日本はボトムアップ方式で発言力のある熟練兵と熟練工を基準に戦略を構築する」

 「アメリカはトップダウン方式で平均的な兵士や工員を基準に戦略を構築するんだ」

 「日本は、歪なマンパワーに頼りきる制度なんだよ」

 「自慢げに言わないでください」

 「・・・何とかならんか」

 「はぁ せめて潤滑油、燃料だけは、まともなものを使ってくださいよ」

 「そんな、世知辛いことを言うなよ」

 「ほんとうに飛行機が落ちますよ」

 

 

 欧州戦線 地中海

 米英軍は中立化したヴィシー・フランス領アルジェリアの上陸作戦を強行し占領する。

 アメリカ軍とイギリス軍は、西地中海アルジェと東地中海カイロを拠点に置き、

 中央地中海のイタリア半島と北アフリカ戦線のドイツ軍とイタリア軍を挟撃し、

 消耗しきったロンメル・アフリカ軍団の補給を断ち切ろうとしていた。

 ドイツは報復のヴィシー・フランスに侵攻とツーロン軍港占領作戦(11月27日)計画し、

 辛うじて思いとどまる。

 これは、太平洋戦線で日本海軍が優勢だった事に起因する。

 米英海軍艦艇はアルジェ上陸作戦が終われば太平洋に回航する。

 戦わずして米英主力艦隊がいなくなるのなら様子を見る戦略であり、

 作戦開始は遅れに遅れ、

 作戦は12月24日クリスマス・イブの開始となった。

 クリスマスを祝うのはキリスト教の伝統行事であり、

 まっとうなキリスト教徒は、クリスマスに人殺しをしようと思わないらしい、

 1914年のクリスマスは、前線の将兵が独断で停戦し敵兵と歓談したこともあった。

 しかし、以降、そういった現象もなくなる。

 とはいえ、クリスマスに殺し合いを仕掛ける後ろめたさが入り混ざり、

 クリスマスに息子が死んだと遺族に伝えなければならない心境は重たく、

 この日ばかりは部下の反発を恐れ、

 攻撃命令を出せる将校は少数派といえた。

 しかし、敢えてクリスマスにかこつけた策略と策謀が何重も仕掛けられる。

 お互いに用心しても情報が漏れ、ミスが重なり隙が生まれる、

 フランス海軍史上、最悪のクリスマス・イブ、

 士気の低下したフランス兵が下艦して街に溢れていた。

 潜入工作中の部隊と、

 前々日の深夜のうちに潜水艦で潜入した部隊が通信設備を破壊していく、

 ブランデンブルク降下猟兵は、Do24飛行艇、DFS230グライダー、

 Fi156シュトルヒ連絡観測機に分乗して空挺作戦を強行した。

 ドイツ軍侵攻の通報は遅れ、各艦の無線も妨害されていた。

 ドイツ軍は空海陸からツーロン港を強襲し、

 自沈命令を出すはずの戦艦ストラスブールが真っ先に奪取される。

 ツーロン港は、ドイツとの取り決めで港口に索が張ってあった。

 フランス艦隊の脱出は困難だった。

 フランス艦隊は司令官不明のまま、各艦が独断で戦い、

 ドイツ軍は、艦隊の半数に取り付いていく、

 

ツーロン港 フランス艦隊 77隻

総数

戦艦2隻、旧戦艦1隻、重巡4隻、軽巡3隻、水上機母艦1、駆逐艦32隻、潜水艦16隻、小艦艇18

自沈

戦艦1隻、旧戦艦1隻、重巡2隻、軽巡1隻、水上機母艦0、駆逐艦16隻、潜水艦10隻、小艦艇08

拿捕

戦艦1隻、旧戦艦0隻、重巡2隻、軽巡2隻、水上機母艦1、駆逐艦16隻、潜水艦06隻、小艦艇10

   
戦艦 ストラスブール ダンケルク
旧戦艦 ブルターニュ
重巡洋艦 コルベール フォッシュ デュプレ アルジェリー
軽巡洋艦 ラ・ガリソニエール ジャン・ド・ヴィエンヌ マルセイエーズ
水上機母艦 コマンダン・テスト
駆逐艦 パンテール ランクス ゲパール リオン ティーグル
駆逐艦 ヴォーバン ヴェルデュン  ヴァルミ エーグル ヴォートゥール
駆逐艦 ジェルフォー ヴォークラン ケルサン カサール タルテュ
駆逐艦 ランドンターブル モガドル ヴォルタ トロンブ ル・マルス

駆逐艦

ラ・パルム

ボルドレー

ル・アルディ

フルーレー

(フードロワイヤン)

ラドロア

駆逐艦

マムリュク

カスク

ランクスネー

(ル・シクローヌ)

ル・コルセール

(シロコ)

ル・フリビュスティエ

(ビゾン)

水雷艇 ラ・バヨネーズ ラ・プールシュイヴァーント バリスト
潜水艦 ルドゥタブル ヴァンジュール アンリ・ポアンカレ レスポアール ル・トナン
潜水艦 ルドゥタブル級 ルドゥタブル級 テティス シレーヌ ナイヤード
潜水艦 ガラテ ウーリディス ディヤマン
駆潜艇 CH-1
掃海通報艦 エラン級 エラン級
設網艦 ル・グラディヤトゥール
補給艦 ゴロ

 夜半から翌日の昼まで続いた艦艇争奪の攻防戦は終息していく、

 「大佐。作戦は成功しましたが特殊部隊の4分の1を失いました」

 「後続部隊が間に合わなかったら危なかったな」

 「大変な、クリスマスでしたね」

 「そうだな・・・・・メリー・クリスマスか・・・」

 自嘲気味に呟く、

 自沈した艦艇の硝煙が空を焦がして港に身を沈め、

 夕陽が拿捕された艦艇を照らしていた。

 

 

 

 

 ミッドウェー島(6.2ku)

 北緯28.12分。日本で言うと奄美大島辺り。

 日本軍は、夜間になると観測気球を飛ばした。

 12月で深夜の洋上は暗く、燃料を燃やして熱気球を上げているものの、

 高度150m上空のゴンドラは少しばかり冷える。

 この高度であれば46km先まで臨むことができ、大和の弾着観測なら適当といえた。

 「さむぅ〜」

 「来ないねぇ」

 観測兵は、布団に包まって深夜の水平線を双眼鏡で覗き込む。

 アメリカの高速戦艦が水平線の向こう側から撃つのであれば、

 こちらも水平線の向こう側に砲撃できるようにすればいいと単純な発想だった。

 相対的な座標を計測して砲撃するアメリカ戦艦。

 高高度からの観測による砲撃の大和。

 どちらの精度が勝るか、微妙といえるものの、

 命数が尽きても砲身の換装ができない大和は不利だった。

 それでも、今度、来たらと水上機と100式司偵が離陸の準備をしている。

 しかし、アメリカ軍は、日本軍に負担を強いて満足しているのか、待ち状態。

 この高度から見下ろせば、ミッドウェーの置かれた立場が良く分かる。

 戦艦大和がサンド島に向かって北西方向から突っ込み、座礁していた。

 サンド島とイースタン島は、1.5kmも離れていない。

 ミッドウェー環礁に入る水路は、サンド島とイースタン島の間の南側にあり、

 浅瀬で大型艦艇は、入港できず、

 船が通過できそうな水路といえるものは200mもなかった。

 それでも伊号は環礁で補給を受け、北大西洋全域で作戦可能だった。

 ミッドウェー島は高い丘が海抜20mほどしかない

 地下水はなく、年間降雨量は1000mm弱、

 日本軍は、島の外周に石垣を作って堤防を作り、

 水路を低地に引き込み、雨水を可能な限り貯水湖に引き入れていた。

 そして、釣り船を出して釣竿をたらし、多少なりとも食卓を潤させる。

 僅かな敷地にニワトリを飼い、

 キャベツ、トマト、ニンジン、キュウリ、レタス、ブロッコリー、

 ピーマン、ナス、パパイヤ、メロン、スイカなど、生存に適した作物を植えようとしていた。

 衣食住を確保できなければ、軍事拠点となりえず、

 余剰人員は、本土に後退させなければならなかった。

 観測気球

 「・・・来年になると、アメリカ機動部隊の反撃が始まるんだろうな」

 「それ、やばくない?」

 「やばいと思うよ」

 「この状態で、撃ち落とされるのは困るよ」

 「戦闘機が守ってくれるよ」

 「だといいけどね・・・・年越だ・・・」

 

 

 


 月夜裏 野々香です。

 悪徳というか、背徳というか、

 まっとうな日本人は、生きにくい世界です。

 ろくな死に方をしないので回り右。

 潔く、正しく、美しく、がむしゃらに鉄砲と大砲を撃つ。

 日本人のあるべき姿でしょう。

  

 そうです。男たちの大和です。

 日本民族の魂を甦らせるべきです。

 

 

 『青白き炎のままに』も史実と違ってきました。

 ゼロ戦神話の一つで、10000機以上の生産があります、

 10000機が正常に飛んだか、怪しいような気がします。

 史実と違ってきたのは、“落ちる” ということでしょうか。

 落ちるのは、飛ばないと起きない現象ですので、

 陸軍主導の規格統合で品質が向上したような・・・です。

 

 

 

  

 

 

 

 

   

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第06話 1942/11 『真空管ぐらい、まともに作れ』
第07話 1942/12 『気持ちだけ、入れたある』
第08話 1943/01 『削る方が削られて』