第09話 1943年02月 『一緒に東南アジアを守るある』
朝鮮人は1905年の併合時700万人だった人口が1943年に2400万人に増加し、
台湾人も1912年に343万人だった人口が1943年に652万人は膨れ上がる。
人口が増えていた事から朝鮮社会と台湾社会は豊かになっていた。
それでも、やはり、ドロップアウト組が現れる、
そして、日中友好? が進むと
大陸利権で、日本と中国の間を取り持ちやすい台湾人が幅を利かせ始めた。
台湾人は大陸で “化外の地” “化外の民” として扱われていたのが出世し、
そこに食い詰めた朝鮮人と満州人も加わる、
大陸利権の中間管理層に外国人勢が入り込むと摩擦も増える。
ただでさえ、権力闘争と足の引っ張り合いの激しい特権階級に “化外の民” が入り込み、
見下ろしていた朝鮮人が中間管理層で踏ん反り返ると、殺伐とした空気になっていく、
とはいえ、漢民族の反日を反韓に摩り替えると、皇民化政策と自己矛盾を起こしてしまう。
日本人関係者
「だから、朝鮮併合なんて、やめろと言ったんだ」
「し、資源がないと国を豊かにできなかったんだよ」
「朝鮮の石炭が日本の近代化に、どれほど貴重だったか」
「交易で生きろよ」
「人種差別が大き過ぎて、まともに交易してもらえないだろう」
「白人相手に、どれだけ、いやな思いをしたか」
「だからといって国家存亡を賭けて戦争するな、臥薪嘗胆しろよ」
「日英同盟を破棄されたら差が開くばかりで臥薪嘗胆もならんだろう」
「なんか、論点を摩り替えてないか」
「と、とにかく、大陸依存、大陸経営で行くしかないじゃないか」
「・・・・・・・」
ご都合主義を追求していくと自己矛盾も大きくなっていく、
北太平洋
戦艦ニュー・メキシコ、ミシシッピ。アイダホ、コロラド、
日本潜水艦による損失が増え、アメリカ海軍も戦艦を使った囮部隊を編成する。
周囲に防潜網を張り巡らし、伊号が網にかかれば撃沈か、自沈か、降伏するしかない。
周辺海域は駆逐艦が周回し、空母ワスプが哨戒機を飛ばして警戒していた。
それらしく、輸送船団のように見せかけていたが “罠”
近付いてくる日本潜水艦を撃沈しようと待ち構える。
ニュー・メキシコ 艦橋
「・・・いまだに反攻作戦はできず、か」
「空母がないと辛いですからね」
「しかし、こうなると潜水艦より空母が怖いな」
「時折、電波を発信しているので潜水艦だけでなく、日本機動部隊も来るかもしれませんね」
「そのときは、西海岸に逃げるよ」
「日本機動部隊は、燃料を使い果たして引き揚げる」
「これを繰り返しただけで日本は消耗する」
「ここはハワイと西海岸の航路上ですから。日本機動部隊がここまで来るのは困難かと」
「ミッドウェーで補給を受ければ来れるだろう」
「そういえば、日本は空母を通商破壊に投入しないようですが助かりますね」
「ふ したくても燃料が無くてできないのだろう」
「それに広がりすぎた戦線にパイロットを振り分けると足りなくなる」
「では、日本海軍にたくさん燃料を使わせれば勝ちということでしょうね」
「そういうことになるな」
スターリングラードのドイツ軍が降伏すると東部戦線でソ連軍の反撃が始まる。
この状況になると、米英両国の対日反攻計画も修正されていく、
ハワイ
白レンガの住人たち
山積みの書類。
損失が増えると比例して報告書が増える不文律があった。
「わかった事は潜水艦部隊が罠に引っ掛かっていることだな」
「今わかっているだけでも十ヵ所の環礁地帯で無線が発信されている」
「昼間は煙突から煙。夜になると、ご丁寧に灯火だ」
「旧式の船舶を置いているところもあれば、漁船でやっているときもある・・・」
「ノコノコ引っ掛かる事もあるまい」
「電波の飽和管制とはね・・・・」
「逆手に取られたからって、こっちだって、同じ手が使えるだろう」
「そりゃ使えるがね・・・」
「北太平洋上だとやりにくいか」
「いや」
「あっ 防潜網と戦艦を囮に使うんだったな」
電話が鳴る
「・・・撃沈された?」
「・・・2ヵ所で、ほぼ同時に・・・・4隻とも・・・・まさか・・・」
アメリカ海軍は、日本の対潜戦術を模倣し、
洋上で停止させていた。
しかし、日本の酸素魚雷群は、半径9000mの防潜網の外側から発射され、
防潜網を擦り抜け、アメリカ戦艦の艦腹を食い破った。
ニュー・メキシコに魚雷4本、ミシシッピに魚雷4本、
アイダホに魚雷5本、コロラドに魚雷5本が命中し、
対潜作戦で囮にしていた戦艦4隻が撃沈されたことが伝えられる。
潜水艦用魚雷 | 全長×直径(cm) | 重量(kg) | 弾頭重量(kg) | 射程(kt/m) | |
九五式酸素魚雷1型 | 715×53.3 | 1665 | 400 |
45 / 12000 |
49 / 9000 |
Mk15魚雷 | 731.52×53.34 | 1289 | 375 | 33.5 / 9100 | 45 / 4500 |
アメリカ海軍は、日本海軍の魚雷がアメリカ海軍の魚雷の射程より長いと知る。
真珠湾攻撃で失われたアメリカ戦艦は、実質、オクラホマ、アリゾナの2隻。死傷者2402名。
今回は、戦艦4隻。失われた乗員は6500名に達し、
真珠湾以上の悲劇となった。
F6Fヘルキャット
空冷2000馬力装備のF6Fヘルキャットは、攻守のバランスが取れた凡庸な機体だった。
なにより被弾しても簡単に落ちない重戦闘機は、パイロットに安心感を与える。
国家が大枚叩き、燃料と資材を投資し、
数年かけて育てたルーキーがあっさり戦死されては困る、
通常、数十回の実戦を生き延び、場慣れして技能が向上していく、
数回の油断で手痛い代償を払いベテランへと成長していく、
戦訓を得る前、能力を発揮する前では、経験も、力量も、蓄積できない、
日本機はルーキーが生き残るのは運次第、
一度の油断で、あの世行きが、ほぼ決定する。
隼は、軽戦闘機で防弾すらなかった。
鐘馗、飛燕は、中戦闘機といえる機体で12.7mm機銃の掃射で戦闘能力を一気に喪失し、
運が悪ければ即死する、
運が良くても被弾すれば性能が低下どころか、戦闘不能どころか、
まともに飛べず、逃げることも叶わず、
次の掃射で撃墜される。
パイロットたちは、開発されたF6Fヘルキャットを駆る。
「・・・こいつなら勝てそうだぞ」
『そうだな。怖いのは20mm装備の飛燕か』
「隼と鐘馗は、12.7mmだからエンジンか、パイロットに命中しない限りは、大丈夫だろう」
『隼は、振り切れそうだ』
『しかし、鐘馗は、厳しいな』
『だが、鐘馗は翼面積が小さく揚力を保てない。射線を外すのは楽だろう』
「日本の新型戦闘機は、聞いているか?」
『海燕が開発されたらしい、1500馬力クラスだそうだ。たぶん、競り勝てるだろう』
「日本は2000馬力を開発できそうに無いか」
『それどころか、工作機械が磨耗してエンジンの品質が劣化しているらしい』
『性能が低下しないようにするだけで精一杯だろう』
『日本は中国の資源を押さえたらしいが技術がない。そのうち飛行機も飛べなくなるよ』
「やはり本命は、ドイツ軍だな」
『ドイツは技術があるが資源がない。ジリ貧だよ』
「時間の問題かな」
『日本とドイツのおかげで無職から一気に故郷の誉だ』
『12.7mm弾で、お礼をしないとな』
「それはいえる」
シンガポール
中華街の華僑は勢力を増しつつあった。
「日中友好ある。一緒に東南アジアの秩序を守るある」
「・・・・・・・・・」
この世は生死を賭けて戦っている敵より恐ろしい “友好” という名の災禍も存在する。
浸透型とか、侵食型の敵で内部から腐らせる。
まさに日本は内腐外患状態といえた。
それでも資源を得ようとするなら日中関係の絆は必然的に強まっていく、
日本人は、台湾人と朝鮮人を中国大陸の権益保護で活用する。
その代償に中国人・華僑の東南アジア権益を保護していた。
毒を食らわば皿まで、
いずれ、朱に交われば赤くなる、
漢民族も悪癖を日本に輸出し、日本民族が漢民族のようになる可能性も含んでいた。
当然、日本も南京政府に対し軍事的な証明を求め、
南京政府はあっさりと応じる。
中国は、虐げられ、踏み躙られ、磨り潰される民の側にいると限りなく悲惨だった。
中国人にとって重要なのは、国益より権力の側にいるか、であり、
民衆も、中国への愛国心ではなく、汪兆銘政権の支持ではなく、
権力の階段が目の前にあれば躊躇なく上る。
中国軍はビルマ戦線に投入される。
装備は、すべて日本製だった。
そして、士気は高くない。
中国人が集団を作ると戦友を踏み台にして手柄を立て生き残ろうとする。
中国大陸で少数の日本軍が中国軍と戦えたのは日本軍が強いからではなかった。
民族的な気質の差、中国人の過ぎた利己主義が原因だった。
というわけで、ビルマ戦線でヘタレな中国軍と補給不足のイギリス・インド軍がぶつかる。
「あいつら、何てビビリなんだ」 ビルマ軍
「やる気ないんだよ」 インド独立解放軍
「人垣で戦線が維持できれば良いか・・・・」 日本軍
日本軍は、主力軍を前線から後退し、
武器弾薬をインド独立解放軍、ビルマ軍、中国軍に供給するようになっていく、
後方の補給部隊
日本軍将兵が久しぶりにくつろいでいた。
「・・・良いのかな。こんなにのんびりしたのは久しぶりだ」
「大丈夫かな。戦線」
「これだけ下がっていたら、大丈夫じゃないか」
「バカ将校の出世の踏み台にされると諦めていたけど、良かった。良かった」
「俺たちの出世も遠のくだろう。結婚できないぜ」
「そ、そうだった」
「まぁ 命あっての事だけどね・・・」
日本製の武器弾薬が前線へと流れていく。
日本人的な感覚で見れば
“あいつら、大切に使ってくれるだろうか”
“あいつら、信用できるだろうか”
“あいつら、裏切るんじゃないだろうか”
などなど不安が募るがインド・ビルマ戦線は維持されていた。
インド洋でも日本潜水艦の通商破壊は相応の戦果を挙げており。
インド・イギリス軍は補給不足で、攻勢も消極的だった。
南京
日本と中国は水と油だった。
水と油の日本と中国を結束させ、
中国民衆の支持を得るためには、強大な敵が必要だった。
日中連合軍は、米英の傀儡の蒋介石の国民軍を打倒し、
ソ連の傀儡の毛沢東の共産軍を打倒し、
さらには、反米反英反ソ政策を利用する。
名目上であるが日本軍と南京政府軍は、いつの間にか、東アジア同盟軍となり、
アジアの独立を守り、
植民地を解放する有色人種希望の同盟国となっていた。
襲い掛かるおぞましい3人の巨大白人。
イギリスの傀儡のインド軍。
アメリカの傀儡の蒋介石軍。
ソビエトの傀儡の毛沢東軍。
日中同盟軍と東南アジア独立解放軍は、アジアを守り、植民地を解放する。
プロパガンダとは、こうするのだといわんばかりに宣伝が進む、
識字率が低いので単純な絵で、わかりやすいチラシが張られていく、
一度、プロパガンダに成功すると
人海戦術的な勢いで太平洋戦争を人種戦争していく、
赤レンガの住人たち
書類が山済み。
占領地が増えると、どうしても書類が増える。
「日中同盟で人種戦争かよ・・・泣きたくなる国際情勢だな」
「ドイツが、むくれるんじゃないか」
「アルゴルモアとか。黄禍論とか、流行りそうだな」
「やめてくれよ〜」
「白人世界全てを敵に回すなんてキチガイ沙汰だよ」
「汪兆銘政権は、なんで、そっちに持っていくんだ」
「その方が5億の中国人を御しやすいんだと」
「いや、それを言われたら、どうにもならん様な気もするが」
「んん・・・こうなったら、一蓮托生」
「いや、守るものがない中国人は革命を起こして勝ち組に回る」
「損をするのは天皇制を守らないといけない日本だけ」
「うぬぬぬ・・・」
「あいつら、うじゃうじゃいるだけで、どう転がっても国が守れるからな」
「漢民族は体制なんて、どうでも良いんだ」
「この状態が続けば華僑は、東南アジア全域で力を持ち始めるよ」
「利権分けしている日本も、だろう」
「そうなんだけど、数で負けるからね」
「それに対米戦で負けなければだけどね」
「大陸鉄道に、もっと資材を送らないと・・・」
「前線も資材を欲しがっているからな」
「どこも、かしこも。だいたい、本土にもない物を、どうやって輸送するんだ」
「ビルマ戦線は?」
「ん・・んん・・・死体の山で戦線を守れる中国軍は偉大だよ」
「し、消耗品か?」
「反撃できるまでスターリングラードで兵士を磨り潰したソ連みたいだな」
「やめてくれよ」
「ビルマって熱帯地域だろう、伝染病が広まったら洒落にならないよ」
「あはは・・・薬もないよね」
「ていうか薬は元々アメリカ頼みだっただろう。作れない」
「ひぇえええ〜 だからアメリカと戦争したくなかったんだよ」
「こうなったら、中国の真似をして太極拳と漢方薬で・・・」
「文明国じゃないよ」
「いや、立派な予防的、健康法だよ」
「このまま、白人世界から取り残されて近代化から遅れていきそうだ」
「こうなったら中国大陸と東南アジアから資源という資源を日本に運び込もう」
「あり余る鉱物資源で、日本全体を工業化していくのが最善」
「市場も中国にあるし」
「そういうことになるのかな・・・・」
月夜裏 野々香です。
日中友好? で、資源と市場で余裕ができる。
希少資源を使うことで現状のレベルで品質・精度が向上していきます。
とりあえず、開戦時の品質と精度は、維持されそうです。
ランキングです ↓ よろしくです。
第08話 1943/01 『削る方が削られて』 |
第09話 1943/02 『一緒に東南アジアを守るある』 |
第10話 1943/03 『戦地で戦うのが男ぞ!』 |