第11話 1943年04月 『ベーリング海の罠』
この年、エセックス空母とインディペンデンス軽空母が太平洋へと回航する、
以降、日米の海軍航空戦力の天秤は、アメリカ優勢に傾く、
日本が太平洋で攻勢をかけるとしたら、この時期をおいてほかになく、
アメリカ太平洋艦隊は、危険な状況になっていた。
そして、大和(ミッドウェー)島と本土の間で通信が増えていた。
日本側の攻勢が近い兆候でもあった。
ハワイ 白レンガの住人たち
情報収集したデーターから日本の攻勢を割り出そうと躍起になっていた。
「無線は増えている」
「しかし、日本の攻勢が感じられん」
「日本は、どうするつもりだ?」
「日本海軍は、陸軍主導になってからおとなしくなっている」
「中国戦線の終息で、今度は陸軍も勢いが殺がれるだろう」
「情報では中国の治安維持と利権拡大の代わりに太平洋で自重すると聞いているが」
「結局、日中同盟が終われば軍人の役割は低下する」
「どうしても政府筋が強くなっていくよ」
「当然といえば当然か。軍人は抵抗するだろうがね」
「民間の戦略物資と設備投資が増えているようだ」
「南京政府に中国が統合されて、日中貿易も拡大中だし・・・・」
「日本人の性格だと、ハワイか、豪州封鎖、インド洋への攻勢で機動部隊を動かすと思ったがな」
「たぶん、陸軍の権益を守る為、海軍を動かしたくないのだろう」
「せっかく、B17とB24爆撃機とライトニング戦闘機の配備を増やしたというのに・・・・」
「欧州戦線から文句が来ているぞ」
「正確には、スターリングラードで勝った。ソ連からな」
「そりゃ 文句も出るだろうが・・・」
「日本が中国の労働力と資源を入手して持久戦に切り替えたと考えてもいいのだろうか」
「民間への設備投資を進めて工業力を強化しているのなら、そういうことだろうな」
「日中同盟か。白人世界が恐れていた事が現実になったわけか」
「蒋介石め、負けやがって」
「日本が国力をつける前に落とさないと、太平洋を挟んで100年戦争になるぞ」
「物量と技術差で圧倒できるのでは?」
「距離が遠すぎる」
「日本に引き込まれたら、ソビエト軍の手を借りないと厳しいかもしれないな」
「だいたい、日本の暗号は解読しているのに、どうして、はぐらかされるんだ」
「日本人は時間に正確だと思ったがね」
「日本商船隊の動きと時間がずれている、どうも、おかしい」
「日本は、スケジュール通り動けなくなっている、ということかな」
「いや、こっちの潜水艦が罠にかかって狩られている節がある」
「荷揚げと荷降ろしに時間がかかったとしてもだ」
「無電を発するのは、出航準備が終わってからのはず」
「そういえば、日本側は新しい暗号を発信していないか」
「そういえば、そうだな」
「ひょっとして、暗号が解読されていることが日本にばれているのでは?」
「解読されているのに使い続けているのは、そういう可能性もある」
「中国と朝鮮にエージェントがいたよな」
ベーリング海
4月でも寒く、荒海、濃霧、コブシ大の雹が降ることも珍しくもない、
海戦に向かない世界、
アメリカ海軍は、日本海軍のアリューシャン・アラスカ作戦の暗号を解読する。
可能性がないわけではない、
しかし、日本艦隊はレーダー能力で劣り、
ベーリング海域の作戦で不利だった。
霧と時化の中
戦艦サウスダコタ、ワシントン、
重巡ソルト・レーク・シティ、
軽巡ローリー。デトロイト。リッチモンド。コンコード。トレントン。メンフィス、
駆逐艦ポーター。カッシング。プレストン。ブルー。ヘンリー、
駆逐艦シムス。ウォーク。グウィン。メレディス。ド・ヘイヴン、
駆逐艦10隻が航行していた。
戦艦サウスダコタ 艦橋
アメリカ海軍将校たち、
「・・・日本海軍の次の作戦は、本当に、このアリューシャンなんだろうな」
「日本の暗号だと、この海域に対する作戦コードが多いようですが」
「仮にアメリカがアッツ・キスカに対して反攻作戦を行うとしたら5月だ」
「4月は、まだ上陸作戦はできない」
「確かに寒すぎますね」
「霧が多いのに基地への艦砲射撃でしょうか」
「いったい、何をするつもりだ」
「考えられるのはアダック島。ウナラスカ島。コジャック島への艦砲射撃だろうか」
「この季節では艦砲射撃か。爆撃するだけで精一杯では?」
「アンカレッジはないと思うが無線輻射は、この海域だったな」
「潜水艦による事前の偵察行動では?」
「んん・・・機動部隊が優勢ならハワイか、ニューカレドニア、インド洋を狙うはず」
「まさか、陽動に引っ掛かっているのでは?」
「情報部の推測だと、日本機動部隊は艦載機とパイロットの定数が揃わないようです」
「ふん、貧乏な小国が猿真似の背伸びで大艦隊を揃えるからだ」
「猿真似で戦艦4隻を失ったのはアメリカですが?」
「サルに騙されるとは何たる失態」
「たんに日本の魚雷の射程が長かっただけでは?」
「罠にかかって潜水艦を撃沈されたんだ」
「今度は騙されていないだろうな」
「サルと知恵比べで負けたら、恥ずかしくて故郷に帰れなくなる」
「疑わしいとすれば、この季節にアリューシャンで作戦という情報の方です」
「同感だよ」
「それでも戦艦2隻をやりくりして持ってきたのだ。情報部は自信があるのだろうな」
「ほかの戦線が気がかりです」
「ハワイは、空母サラトガ。ニューカレドニアは空母ワスプ」
「インド洋はイギリス機動部隊」
「そして、主要な作戦地域はB17・B24爆撃機と、ライトニングを配備しています」
「なんとか、対応できるだろう」
「日本機動部隊が艦載機とパイロットの不足で動けないのならベーリング海の作戦はありえる」
「金剛型4隻と海戦があるかもしれないな」
「2対4は不利では?」
「ふん! 日本海軍にレーダー射撃を教育してやる・・・」
「時化が、おさまってきたな」
「このくらいの霧だと有利ですね」
「・・・提督。アダック基地から、索敵機を出すそうです」
「そうか」
「攻勢と見せかけて、本当はアッツ・キスカに対する補給作戦ではないのか?」
「可能性は、あります」
「アッツ・キスカへの反攻作戦は空母戦力が揃ってからと・・・」
「アガッツ基地からキスカまで390km。アッツまで710km」
「艦隊をアガッツ海域に貼り付けさせて、キスカへの補給作戦なら十分ありえる」
通信兵が、電報をリー提督に手渡す。
「・・・ビンゴ!」
「潜水艦が日本船団を見つけたぞ。キスカに向かっている」
「日本の機動部隊がいるのでは?」
「いや。この時間なら夜戦になるよ」
薄霧の中、
アメリカ戦艦部隊は、荒波を走破する。
視界は、狭まっていたが先に走っている艦の艦尾灯が、わずかに見える。
頼りはレーダーで、艦隊が縦列に並んでいる事がわかる。
潜水艦から通報とB24爆撃機に装備したレーダーの報告で、
日本船団の予想航路は、見当が付いていた。
「・・・提督、無線輻射です」
「他にも、キスカ周辺に漁船が数隻出ているようです」
「日本の監視漁船だな」
「キスカ付近も霧があるので無線連絡を取りたかったのでしょう」
「満足なレーダーを持たない国の悲しさだな・・・・」
「発見されないように漁船の間をすり抜けられるか?」
「はい、この視界でしたら、十分可能です」
薄曇の夜間で薄霧、
アメリカ艦隊はレーダーを使って航行する。
艦尾灯だけが頼りの日本艦隊とは艦隊速度が違う。
「観測結果だと、無線輻射の発信源と爆撃機からの通報してきた海域が重なっています」
「会敵時間は?」
地図上の距離で相対速度を計算機で割り出していく、
「日本船団がおよそ8ノットですから・・・あと・・・1時間後です」
「戦艦がいるかな」
「・・・新型戦艦だと、厄介かもしれませんね」
「なあに、日本海軍にレーダーがなければ、袋叩きだ」
「・・・提督。メンフィスが右舷300m。無人のボートの通過を確認したそうです」
「無人?」
「木造の小ボートで反応がなかったと思われます」
「距離が遠く、識別は不明だそうです」
「危ないな」
「戦艦は、どうということはないが駆逐艦は損傷するかもしれない」
「この海域と海流からだと、日本海軍の嫌がらせかもしれませんね」
「まさか、日本海軍は、アメリカ艦隊が、どの時間、どの航路を取るか。わからんよ」
「縦列で移動すれば幅は50mもない」
「確かに、針の穴を通すより難し・・・」
「提督!」
「B24から、日本船団が引き上げつつあります」
「どういうことだ! キスカに向かわないのか?」
「いえ、キスカを前にUターン・・・・・進路は・・・・南西・・・・」
定規を使って海図に線が描かれていく。
「日本本国に帰還するのか、気付かれたのか?」
「まさか」
「だが作戦をやめて引き返すなど燃料不足の日本海軍らしからぬ」
「護衛の艦隊は付いていないのか?」
「B24からの報告は、船団は15隻と。護衛艦は、いると思われますが・・・」
不意に艦の速度が落ち始める。
「ど、どうした!」
「わかりません」
「スクリューに異常があるようです」
「・・・艦長。機関室からです」
「艦底に異常音。スクリューに何か、引っ掛けたそうです」
「バカな!」
後方の戦艦ワシントン 艦橋
「・・・な、何をやっているんだ! 面舵!!」
ワシントンが速度を落としたサウスダコタを避けようと慌てて舵を切った。
しかし、戦艦の回頭は遅い。
サウスダコタの艦尾が急速に迫ってくる。
ワシントンの艦首は、あわや衝突というところを避ける。
しかし、後方の巡洋艦と駆逐艦は反応が良いはずなのに艦橋の高さが違う。
遠近感と旧式レーダーで、さらに反応が遅れる。
混乱に拍車をかけ、後続艦がサウスダコタやワシントンに接触し、
鋼材同士が金切り声を響かせた。
先頭艦の事前通達無しの減速と回避運動は、指揮系統を乱した。
緊急避難は、軍民に関わらず艦長の機転と裁量が問われた。
後方の艦艇になるほど、前方が塞がれ、逃げ道が消えていく、
艦と艦が接触し、
あるいは衝突する。
戦艦ワシントン 艦橋
「・・艦長!」
「機関室から艦底に接触音!」
「スクリューに異常ありです」
「どういうことだ?」
「漁船の網に引っ掛かったのでは?」
「13万馬力で回している4つのスクリューを魚網で止められるものか」
「まして、破損するなど、ありえん」
「では、魚網ではない、ということに・・・・」
「ちっ!」
艦船同士の接触と衝突のほとんどは人災だった。
そして、最強の戦艦もスクリューを回して動いている事に変わりなかった。
アメリカ戦艦部隊は、接触と衝突で軽巡デトロイト、コンコード、メンフィスの3隻が大破し、
駆逐艦4隻が沈没していく、
霧のキスカ沖でアメリカ戦艦部隊は惨憺たる状態となってバラバラに漂っていた。
サウスダコタ 艦橋
副長が切った太い綱を持って駆け上がってくる。
「リー提督!」
「わかりました。辺り一面に防潜網と捕獲網が浮かんでいます」
「錘と浮き輪を使って深度1mほどを保っているようです」
「・・・・なるほど漁船を、この進入路をとるように配置して、艦隊を誘導したわけか」
既に状況を推測しており、証拠さえあれば、答えを導き出すことができた。
さらにスクリューの半分が破損し、泣きたくなる状態といえる。
僚艦ワシントンも防潜網と捕獲網がスクリューに絡んで身動きが取れない、
「提督、後進をかけて後退すれば・・・」
「脱出できる可能性もある・・・」
「しかし、防潜網と捕獲網がさらにスクリューに絡み」
「さらに破損するか、舵も使えなくなるかもしれない」
「僚艦と接触する可能性もある・・・」
「提督!」
「B24からです。日本の船団が戻ってくるようです」
「アメリカ海軍が、こんな間抜けな手に引っ掛かったのか」
「この私が・・・」
戦艦 比叡 霧島 ほか10隻
「近藤提督」
「アメリカ戦艦部隊が網に引っ掛かって接触事故を起こしたと、漁船からの通信です」
「何度目だったかな?」
「それぞれ、同じ漁船から6度目です」
「接触か、衝突が6回で、12隻が破損していると考えていいのか・・・・」
「そのようです」
「くだらん作戦かと思ったが新任の作戦部長は、なかなかやるものだ」
「どうします?」
「計画通り、輸送船団を送り届けた後、迂回してアダック島を砲撃する」
「敵艦隊は?」
「どうにもならんよ」
「この霧では近付かなければ当たらん」
「防潜網と捕獲網を片付けないと魚雷も当たるか怪しい」
「それに、こっちも、スクリューがやられてしまう」
「確かに、それは、間抜けですね」
「敵の基地航空戦力を潰した後、拿捕するか、撃沈するか」
「現場指揮に任せることになっている」
「つまり、私の判断だな」
「サラトガが救援に来ると厄介では?」
「どうだろうな」
「この季節でベーリング海だと航空戦力は使いにくい」
「それに、ミッドウェーが陽動作戦をやっているはずだ」
「ハワイからは動けんよ」
機雷は、点での障害。運悪く当たると沈む。
防潜網、捕獲網は、致命傷こそ与えられないものの、
線や面で広範囲を障害域にできた。
海を荒らすは禁忌的な犯罪行為であり、
海の男なら後ろめたい作戦といえる。
しかし、ミッドウェー海戦後、繰り上がり人事の将校は漁師の息子で外道だったらしい、
日本戦艦部隊は、アメリカ艦隊を迂回し、
闇をついてアダック島を艦砲射撃、航空基地を壊滅させてしまう。
キスカ沖のアメリカ戦艦部隊は、放置プレーで置き去りにされた。
キスカ沖
零式水上偵察機がアメリカ戦艦部隊上空を旋回していた。
アメリカ戦艦部隊は、艦隊を乱して停船していた。
「やっと、少し晴れたと思ったら、なかなか楽しい光景だな」
「上手いこと誘い込んだものだ」
「作戦部長は、さすが漁師の倅か」
「攻撃しないのか?」
「駄目だろう。防潜網と捕獲網で伊号も近づけない」
「もちろん、片付けるのも敵の砲撃を受けて難しい」
「戦艦の火力は、アメリカ戦艦が上」
「しかも、この天候・・・」
「防潜網と捕獲網だけじゃなく、魚網も使っているから魚雷が擦り抜けられるかどうか」
「霧の中で撃ち合えば、止まっていてもレーダーのあるアメリカ艦隊が上だな」
「爆撃も無理だな」
「霧が深くなる前に帰還しよう」
「やれやれ」
ハワイ
白レンガの住人たち
慌しく、動き回る将校たち、
アダック島の航空基地が壊滅し、まともな情報が入ってこない。
そして、リー艦隊の無線連絡は、場所が特定されてしまうため、
わずかな時間の通信に限定される。
「リー提督は?」
「どうやら、あの海域は、防潜網と捕獲網を垂直でなく、水平に広げられているらしい」
「気付かなかったとは何たる失態だ」
「薄曇の夜間で霧と時化気味だったから、わからなかったのだろう」
「それに深度1メートルで広げられていたようだ。あの海域では難しいな」
「救出は?」
「防潜網と捕獲網が辺り一帯に、まだ、あるそうだ」
「日本艦隊に攻撃されたら、終わりだぞ」
「日本艦隊も近づけないらしい」
「ふざけやがって!」
「防潜網に引っ掛かって戦艦が立ち往生させられた海軍など聞いたこともない」
「世界の笑いもの」
「笑えるか!」
「レキシントンの部隊を出せるかだな」
「ミッドウェーの機動部隊は?」
「・・・第一機動部隊が、いるらしいが動いてないようだ」
「ハワイを攻撃してくるつもりだろうか」
「さあ、B17・B24爆撃機250機。ライトニング250機が準備している」
「ハワイの航空戦力なら、機動部隊がなくても戦えないことはないが・・・」
機動部隊は夜の間に接近し、夜明けと共に強襲できた。
航続距離の長いライトニング戦闘機を配備しても不安は尽きない、
事前に機動部隊を発見できなければ、
先制攻撃を受けるのは基地航空部隊だった。
「問題は掃海だよ。あの海域は掃海が難しい」
「このまま何もしないわけにはいかないだろう」
「自力で脱出する為、防潜網と捕獲網を処理しているそうだ」
「もっとも、あの海域だ。簡単ではないがね」
中国 成都
中国を統合した南京政府が正式に満州国を承認する。
蒋介石の拠点、成都も忍び寄る圧迫に苦戦を強いられる。
成都に白人がいるのは蒋介石が再起する可能性を判断する為だけだった。
そして、なぜか、成都に南京政府の要人がいる。
3者とも仲が良い訳ではない、
それぞれ、含むところの利益があり、
互いに対日戦略上、交渉の余地が残されていた。
「南京政府は、アメリカとイギリスの租界地を奪っている。信用できない」
「あれは日本が奪った後、日本が南京政府に返還したある」
「南京政府は奪ってないある」
「我々の租界地を崇明島と交換したのだろう」
「アメリカ、イギリス租界と、崇明島は、まったく関係ないある」
「崇明島は、南京政府の中国統一に朝貢した日本への恩賜ある」
「仮にアメリカが南京政府に協力した場合」
「日本の情報は、どの程度の信憑性になるのかな」
「我が中国、我が漢民族は、世界で、もっとも誇るべき歴史と文化を有するある」
「決して日本の風下に立つような国家ではないある」
「アジア。そして、黄色人種の盟主は日本ではないある。我が中国ある」
「現状は、南京中国政府が日本を利用しているに過ぎないある」
「日本が偽札を作っていることも?」
「我が中国人民は5億の民を抱えているある」
「一人50枚の紙幣が必要なら250億枚必要ある」
「中国の近代化には、もっと紙幣が必要ある」
「中国の近代化は対日戦略上、アメリカにとっても望みうることある」
「わかっているのかね」
「日本は偽札で漢民族人民の資源と労働力を騙し取っていることを」
「南京政府の造幣局が軌道に乗れば新札発行で入れ替えるある」
「それまでのつなぎある」
「強制労働やらされるより良いある」
「・・・・・・・」
「アメリカに留学生を送りたいある」
「それと技術者を送って欲しいある」
「つまり対日戦略上、南京政府は隠し弾を欲していると」
「そういうことある」
「ビルマ戦線で連合軍は、中国軍と戦闘状態にある」
「だから。なにあるか?」
「ち、中国が日本の情報を教えた場合」
「ビルマ戦線の中国軍は苦境に立たされるのではないかな?」
「我が中国の国益はビルマ戦線の中国軍が全滅しても損なわれるモノ。一つもないある」
「・・・・」
国家的な利己主義も極まれり、
民主主義世界では考えられない戦略もあった。
アメリカとイギリスが植民地の産業・インフラ・教育で貢献する事はまずない。
黄色人種などサルと同じ、
ひたすら酷使で搾取し、
製鉄所、ダム、教育機関など作ったりしない。
そして、アメリカは対日戦線で膠着していた。
日本の情報を欲し、中国を利用するため妥協する。
その場所として成都が使われる。
成都の蒋介石が隠然たる勢力を維持しながら放置されている理由だった。
釜山
中国大陸から鉄鉱石、石炭、希少金属が運ばれ港に集積されていく、
鉄道は、船で運ぶより費用がかさむ、
しかし、安全確実という利益は計り知れない、
大陸搾取鉄道の行き着く先は、ここ釜山港だった。
そして、シンガポールへの路線は、もう、しばらく年月が必要だった。
完成すれば、重油と南方資源は鉄道で運ばれてくる。
そして、大陸鉄道が日本の利権となった。
日中同盟は、中国側にも利益がなければならず、
潤滑油で利幅が減り、さらに信用できたものではない。
しかし、薄利でも確実に利益が上がった。
日本商船隊がフリーなら輸送船を攻勢に動員できることから、
戦略上の利益も大きかった。
中国政府と華僑も、東南アジアの浸透を画策していた。
人海戦術による大陸鉄道建設も早まっている。
そして、華僑資本は東南アジアで膨れ上がっていく、
とはいえ、大陸で、日本が統制しうるのは点と線に過ぎない、
中国が制するのは面であり、
それを可能にするだけの人口とハングリー精神、
ネットワークを持ち合わせていた。
和を尊ぶ日本人が到底もち得ない、利への飽くなき欲望、
朝鮮半島でも鉄道沿線で中華街が作られる。
そして、漢民族が幅を利かせ、朝鮮人と衝突していた。
朝鮮人は中国・漢民族に対する恐れと反発から皇民化が加速していく、
朝鮮半島にいると大陸の漢民族5億の圧力は大きく、
自我を保てず、気を許せば飲み込まれてしまう。
大陸から海を隔てた日本は、都合の良い部分を中国から導入できて幸運といえた。
日中友好は、その垣根を崩してしまう恐れもあった。
危険も増すが同時に国益も増していく。
装甲列車に荷が積み込まれる。
「新型装甲列車か」
「ええ、76.2mm砲1門。25mm機銃4丁。7.7mm機銃10丁」
「新型の大砲が必要なのか」
「南京軍に戦車を売却しましたからね。用心の為ですよ」
「仮に相手が南京軍でも海軍砲弾は被帽付徹甲弾なので長距離から一発です」
「撃ち抜くのが、わが国の戦車では面白いはずもないよ」
「南京軍は、東南アジアの利権とディーゼル油欲しさで日本の為に働きますよ」
「だといいけどな」
「陸軍の利権を守る為に日本は消耗か」
「これだけの資源が積み上げられるんですよ」
「日本の赤字国債と軍票も何とかなりますよ」
「中国の資源と漢民族の労働力でか・・・反発が怖いな」
「中国の賊と略奪集団は、むかしからです」
「反体制なんて、略奪と強奪を正当化するための口実ですよ」
「中国の富裕層は、匪賊と略奪集団と組み、弱者から吸い上げていた節があります」
「日本がまじめにやると反発されそうですがね」
「生憎、そこまでは腐っていない」
「富裕層と組んで農民層を搾取することがあっても匪賊や略奪集団と組むのは避けたいね」
「それでは、匪賊や略奪集団の恨みを買うことになりそうです」
「南京軍も連中と組んでいる事がありますから、そっちが怖いですよ」
「やれやれ、損をするのは中国の貧民層か」
「日本の貧民層でも、ここまで酷くない」
「日本が搾取すれば、中国の貧民層は、もっと増えますよ」
「治安維持と公平な行政の経済波及効果で日本の権益区画は好景気だよ」
「この国と漢民族が最も必要とするのは、治安維持と機会の公平だな」
「ですが、日本租界の不正腐敗は日本より酷いようです」
「まだ、中国の地方よりマシだよ」
「ですが日本の貧民層は列強の中で最低ですよ」
「下には下がいるということだな」
「もっとも中国は列強ではないので比較する気になれませんがね」
陸軍は、陸軍主導で海軍の技術を導入しており、
97式中戦車、95式軽戦車に失望し、執着を捨てようとしていた。
そして、中国富裕層は、日本という後ろ盾を利用し、
日本との相互依存を深めていく、
結果的に中国人が日本権益の大陸搾取鉄道を守るようになり、
日本も、次郎長方式で地方の賊や略奪集団と接触しつつあった。
単純に富裕層を仲介にいれず、
彼らに直接、金を渡した方が採掘量が多くなため、
直接、犯罪集団と徒党を組みはじめ、
担当の日本人は、二律背反で苦しみはじめる。
サラトガ 艦橋
「提督。ハワイに帰還せよとのことです」
「リー艦隊の救出は?」
「第一機動部隊がサラトガに合わせて、北上していると・・・」
「・・・なるほど、日本海軍の目的はサラトガ撃沈」
「新型戦艦2隻は眼中にないか」
「そのようです」
「そうだろうな」
「戦艦部隊が目的なら、第一機動部隊で雷撃している」
「雷撃は網のせいで効果が低いかと」
「真珠湾で使った800kg爆弾を使用すると思われます」
「アッツ・キスカの日本航空部隊は、なぜ、爆撃しないのか」
「アッツ・キスカともに水上機配備で、航空基地は途上のようです」
「日本艦隊も航空基地の建設が遅れている海域で戦いたくないと見えるな」
「元々、航空戦力が使いにくい場所柄ですから」
「どちらにしろ、エセックス、インディペンデンスとの合流前だ」
「サラトガを失うわけにはいかない」
キスカ沖
時化の中、
300トン級の漁船が2隻、水平線付近をチョロチョロしながら
アメリカ戦艦部隊の後方へ回り込む、
アメリカ艦隊も気付いていたが戦艦の主砲弾しか届かない距離だった。
大砲が勿体無いのか、
漁船が無電を打つとか、攻撃の意図がないとわかると無視する、
しかし、これら漁船が防潜網を引っ張っていた。
漁船2隻の間は離れ、
それが防潜網の長さであり、
碇を落とせば防潜網による封鎖線の出来上がる。
仕掛けは防潜網に碇と浮が付いて、一定の海域にとどまるというもの、
「少尉殿。この辺ですかね」
船頭が漁民の格好をした若手の少尉に尋ねる。
「そうだな・・・海流からするとこっちに向かってきそうだし・・・」
漁師も、ため息交じり。
こんな危ない、迷惑な代物を仕掛けるのは商売上がったりで気が進まない。
戦争中なので仕方なく、だろうか。
海図にそれらしい印をつけ、ブイやボートを一緒に放してしまう。
キスカ沖
サウスダコタ艦橋
濃霧、荒海、雹、時化の中、
アメリカ艦隊は防潜網と捕獲網に囲まれ、
スクリューを破損し、衝突で艦を破損して洋上を漂うばかりだった。
サウスダコタとワシントンは、艦首から何十人と水兵を吊り下げ、
交替で防潜網と捕獲網を切っていく、
しかし、悪天候で作業が進まない、
海面に出ている分を切っても海面下になると冷たく凍える。
凍傷を避けるため作業時間は限られる、
潜水艦の侵入を防ぐ網は、携帯できる刃物で簡単に切れない、
おかげで、何十人もの水兵が凍傷で倒れていく、
一人の水兵が歯をガチガチと震わせながら甲板に上がるとストーブで暖を取り、
熱いコーヒーを流し込む、
「くそぉ〜 寒いぃ〜 寒いぃ〜」
「日本人め、男なら軍艦で戦え、卑怯者が!」
「まともに戦うと負けるから、卑怯な作戦しか思い浮かばないんだよ」
「救援艦隊は来ないのか?」
「アンカレッジから掃海艇が来る予定だったらしい」
「だけど日本の巡洋艦艦隊に奇襲され、2隻が撃沈されて、1隻は逃げ帰ったらしい」
「空母があるだろう。サラトガは?」
「ハワイの防衛から動かせないそうだ」
「なんて汚くて、こすっからい連中だ」
「アメリカにいる日本人は人の良さそうな連中だったがなぁ」
「腹切り日本人の作戦とは思えん」
「そういう、卑怯な日本人もいる。ということだろうな」
黒部ダム
大陸からの戦略資源で、人海戦術という方法が取られていた。
この時代、数に物を言わせては、非人道的に近く、殉職者続出。
とはいえ、日本での苦役仕事を募集すると半島から職を求めてやってくる。
朝鮮の親日会派の一進会も皇民化を促進する為、
積極的に日本に貢献させようとしていた。
実は一人当たりいくらで一進会にリベートが入るのだから、吸血鬼と言えなくもない、
日本政府の高官たちが作業状況を見つめる。
高官が見に来ると、労働者に国家が注目していると錯覚させられ、
それで仕事が、はかどったりする。
つまり、見に来る事が最大の目的であり、
話している内容は別だったりする。
「大陸の露天掘りは仕事として割が良いのにな」
「知らないんだろう」
「日本というだけで楽な仕事ができる思い込みだよ」
「日本は出がらしみたいに資源がないからな」
「黒部ダムが完成すれば電力が確保できて産業も大きくできる」
「工場の生産も良くなるだろう」
「火力発電が楽な気がするな。殉職者も少なくていい」
「石炭は製鉄所で使いたいそうだ」
「揚子江にダムを作ったら発電量も多いだろうな」
「一気に中国に追い抜かれてしまうよ」
「だけど造ったら、日本も利権があるだろう」
「そりゃあるだろうさ。取り分が問題になるがね」
「搾取だね」
「偽札で資源採掘と中国人の労働に肩代わりさせ」
「さらに搾取しないと国債と軍票で日本経済が潰れる」
「正直だな」
「おかげで民間向けの物資が増えてダム建設か」
「中国からの資源が増えたおかげだな」
「助かるねぇ」
「中国もだよ」
「搾取されることが?」
「日本は、近代化するために金を惜しまなかった」
「遣唐使船、遣隋使船は、行きで半分沈み。帰りに半分が沈んだ」
「それでも必要とする知識と技術を欲した」
「欧米諸国が優れた技術の一端を日本に高く売りつけたが、敢えて買った」
「日本の独立を守る為だ」
「中国は違った。尊大な中華思想に凝り固まり搾取されることを嫌い」
「金を惜しみ新しい思想と技術を恐れた」
「その結果、朝鮮と中国は近代化できずだ」
「搾取されても自己修練で価値を高めれば良い」
「自業自得か」
「小ざかしく傲慢な、ずるい、おりこうさんの末路だよ」
「搾取と考えるか、己を信じて投機と考えるかの違いだ」
「中国の尊大な中華思想のおかげで日本の隆盛が得られたようなものだ」
「感謝すべきだよ」
「本当は、放って置きたいが、いまは戦時下の非常時」
「中国の体質を変えて近代化させてでも日本の独立を守るべきだろうな」
「気が進まないね」
「気が進む日本人などいるものか。選択の余地がないだけだ。忌々しいことにね」
「では、せいぜい中国を利用させてもらいますか」
「お互い様だよ」
「向こうも日本を疲弊させつつ利用して列強の干渉を排し、自主独立を目指している」
ビルマ戦線
死んでも死んでも後詰めの中国兵が現れる。
インド兵も似たようなものだった。
しかし、インド軍は言語とカースト上の障害があり、
部隊編成が困難だったりする。
中国軍は士気こそ高くないが、そういった障害は少ない、
兵士は、持っている弾数で最大の効果を上げようとする。
狙うのは敵の士官以上、
突撃命令を出す士官を撃ち殺せば突撃命令は出されない、
兵士をいくら撃ち殺しても状況は、それほど変わらない。
というわけでウジャウジャと現れる中国軍兵士に弾丸を使い切るのは馬鹿げていた。
英印軍は、中国兵に弾薬を消費するのは惜しい気がするのか。
中国軍も攻撃精神が低いのか、
ビルマ戦線は膠着していく、
上空では、米英空軍と日本航空部隊が空中戦を繰り広げていた。
スピットファイアだけでなく、
アメリカのサンダーボルト、コルセア、ワイルドキャットが配備され、
隼V、鐘馗U、飛燕Uと航空戦を繰り広げていた。
日本航空部隊は防空が多く、敵基地攻撃は少ない。
前線部隊が中国軍、インド解放軍、ビルマ軍で攻勢能力が弱く侵攻不能。
そして、後詰めの中国軍は戦線を隙間なく埋めて戦線突破を防いでしまう。
前線部隊が少しくらい爆撃されても気にしなくなっていた。
これが前線に日本兵だと、かなり無理をして防空したり。
敵の基地を無理して攻撃したりする、
中国軍将兵では、そういう気分になれないのか、のらりくらりと迎撃する。
ビルマ側の後方、戦線と上空の航空戦が見渡せる高台があった。
日本の将校たちが双眼鏡で空中戦を見守る。
敵機、または、味方機が時折、撃墜されて落ちていく、
英語のわかる将校が双方の無線を聞いて戦況を把握する。
「戦況は、悪くないな」
「だがスピットファイアは最強だな」
「高高度と低高度の両方、格闘性能と一撃離脱も自由自在だ」
「航続力が短いのは弱点だろう。交戦時間が少ないのも救いだ」
「海燕は配備しないのか?」
「んん・・・あっちも、こっちも、欲しがってな」
「飛燕も、あれは、あれで悪くないんだが、スピットファイアと比べると見劣りするよ」
「水冷エンジンがな、海軍の工作機械を足しても稼働率は7割。いまいちだな・・・・」
「やっぱり、稼働率だと空冷だよ」
「一番いいのは、隼V、次が鐘馗Uと海燕だな」
「総合力では、海燕か・・・」
「日本機動部隊がインド洋に入れば、インドのイギリス軍も弱体化するのに・・・」
「インド洋に入りたくても油送船の手配が付かないらしい」
「何で?」
「我が陸軍がいやだと」
「自業自得かよ」
「燃料は、全部、内地に送られているのか?」
「らしいね」
「大陸鉄道が作られるのに。なんで、本土に物資を運ぶんだ?」
「だから、鉄道建設の資材が必要だからだろう」
「やれやれ、インド洋はカモのイギリス空母部隊だけなのに・・・」
「艦載機パイロットが、まだ育っていないらしい」
「ミッドウェー海戦から随分たっているだろう」
「あっち、こっちで引き抜かれて、使われているよ」
「いくら、訓練しても、とられたら厳しいな」
「だが数で押せるのがいいよ」
「現にビルマの航空戦と、ガダルカナル・ラバウル防空戦で勝っている」
!?
「「「「あ・・・」」」」
コルセアが燃えながら監視所のそばに墜落して爆発する。
月夜裏 野々香です。
日本と中国は、歴史観、大陸的な要素などで違ってくるようです。
日本では、近い縁者同士の利害関係で犯罪が起こりやすく、
中国だと、縁者同士で徒党を組んで、
赤の他人を通り魔的な強奪、略奪、収奪が主流。
どちらにしろ、他者に嫌われ、呪われても、我田引水で、
自分本位な欲望を果たすのは、同じでしょうか。
ミッドウェー海戦で、アメリカ機動部隊が壊滅し、
アメリカ海軍は、苦境に立たされているようです。
どのくらいの苦境かといえば、重巡洋艦で言うと・・・・
重巡ソルト・レーク・シティ。
重巡チェスター。ルイスヴィル。オーガスタ(大西洋)
重巡インディアナポリス45/07。
重巡タスカルーサ(大西洋)。サン・フランシスコ。
重巡ウィチタ(大西洋)の8隻。
軽巡洋艦・・・・
軽巡ローリー。デトロイト。リッチモンド。コンコード。トレントン。メンフィス。
軽巡ブルックリン。フィラデルフィア。サヴァンナ(大西洋)。
軽巡ナッシュビル。フェニックス。ボイシ。ホノルル。
軽巡セント・ルイス。ヘレナ43/07
軽巡サン・ディエゴ。サン・ジュアン。
軽巡クリーブランド。コロンビア。モントピーリア。デンヴァー。
軽巡サンタ・フェ。バーミングハムの23隻
これでは、太平洋でも、大西洋でも、まともな作戦は、困難で、
防衛線を守るので、精一杯でしょうか。
1936年
日中友好が日本にどの程度の利益をもたらすか、雰囲気だけ・・・・
因みにインド植民地を肥やしにしたイギリスが、どの程度、利益を受けられたかも・・・・
1936年 |
日本 | 中国 | イギリス | インド | アメリカ | ドイツ | ソ連 | フランス | イタリア |
総GDP (億ドル) | 1515 | 4200 | 2712 | 1975 | 7992 | 1929 | 3613 | 1761 | 1308 |
一人当たりのGDP (ドル) | 2159 | 827 | 5762 | 655 | 6211 | 4571 | 1991 | 4204 | 3061 |
日本が中国を助けて、そこから受ける上がりの大きさは、相当なものだといえます。
なぜ日本が中国大陸にのめり込んでいったのかも、わかりやすいでしょう。
実質、投資&搾取なので助けるといっても、
管区内で不正腐敗を少なめにして、治安維持の山賊退治でしょうか。
満州国で、これをやっただけで、毎年、数百万の漢民族が流れ込んで、さあ大変。
中国大陸でも、生活の安全保障と日本権益のお零れに預かろうと、
沿線に漢民族が押し寄せ、相互保障で補完してしまいます。
因みに山賊と組んで民衆から搾取が、中国古代王朝から伝わる一般行政で常套手段。
日本軍・日本人は、まじめ過ぎです。
ランキングです ↓ よろしくです。
第10話 1943/03 『戦地で戦うのが男ぞ!』 |
第11話 1943/04 『ベーリング海の罠』 |
第12話 1943/05 『キスカ沖海戦』 |