第16話 1943/09 『大海のストラスブール』
ミッドウェー海戦は、アメリカ機動部隊壊滅とミッドウェー島攻略で終息していた。
代償は、海軍上層部壊滅、大和座礁、戦艦6隻の大破が引き換えだった。
日本海軍は、上層部の壊滅で失墜、
日本の軍部は陸軍主導で統合されていく、
日本陸軍と日本海軍の連合重慶攻略に成功し、
汪兆銘・南京政府は中国統一、
その後の日中同盟強化。
その影響は欧州戦線に飛び火していた。
米英軍はアルジェ上陸で北アフリカ戦線に取り付いたのも束の間、
インド・太平洋戦線で窮した米英海軍は
地中海・大西洋から海軍戦力を引き抜かれ縮小。
その隙にロンメル軍とイタリア軍一部が欧州へと帰還してしまう。
さらにいくばくかの余裕が生まれた結果、ドイツ軍はクルスク作戦を中止し、
東部戦線では陣地構築か、機動防御かで戦略が別れていた。
そして、ツーロンのヴィシー・フランス艦隊の奪取、
ドイツ軍は、半数を自沈させながらも半数を接収することに成功し、
燃料不足のドイツ地中海海軍も、それなりの練度に達する。
地中海戦線は、イタリアの政治的情勢から膠着状態へと陥ると思われていたとき、
独伊連合艦隊によるジブラルタル攻略が行われる。
そして、これが、成功してしまう。
イギリス軍総司令部
イギリス将校が慌てふためく、
「ジブラルタルが占領されるとは、なんと言うことだ」
「イタリア海軍の捨て身の攻撃でジブラルタルが落とされるとは意外だったよ」
アメリカ将校が打開策を検討する
「ストラスブールの追撃は?」
「出来立てほやほやの空母イントレピッド、軽空母カボットしかないな」
「慣熟訓練は?」
「機関不具合で外洋で止まったらどうするんだ?」
「慣熟訓練しながら捜索するしかないな。離着艦訓練もしながらだ」
「大丈夫なのか、それ?」
「・・・・・・」
「インド・太平洋のイギリス海軍を回航させる」
「いいけど、西オーストラリア海岸に中国兵の大群が上陸するよ」
「ぅぅ・・・」
「いいのかい?」
「ぅぅ・・・」
「それで、いいんだね」
「ぅぅ・・・頼むよ。インド洋にアメリカ機動部隊を派遣してくれ」
「・・・・・・・・」 ため息。
「・・・頼むから」
「こういうのは、高くつくよ」
「しょうがない」
いくつかの政治取引が行われ、
北太平洋のアメリカ機動部隊は、分散、南太平洋、インド洋にまで派遣されていく、
アメリカも、イギリスも戦う為に戦っているわけではない。
戦う口実があり。戦う理由があり。戦う目的があり。利権の拡大がある。
枢軸国が独立を賭けた戦いであり。生存権を確立させる戦い。
しかし、連合国は、経済再建。敵性国家一掃。権益拡大の戦い。
または、権益維持の戦い。
戦場で同盟国同士で柔軟にやりくりしても、
外交戦略上の駆け引きは行われる、
とはいえ、アメリカ太平洋艦隊にも余裕がない、
連合国は、日本の政治力、財力、資源、物流、人材の情報を得ており、
日本海軍の燃料も、艦船の移動力も、およそ知られ計算されていた。
攻勢をかけられないと見切り、間合いも見当がつく。
もっとも、希望的観測でしかない。
赤レンガの住人たち。
あれこれと、書類を確認しながら計算する。
何の計算かというと燃料。艦載機とパイロット。その他もろもろ。
「・・・・陸軍が嫌がらせしやがって」
「いや、それは、半分くらいでは?」
「大局的に中国の利権を確立する為と・・・」
「思えるか!」
「近代国家足る技能者が少なく、育っていなかったのも事実」
「元々、技能者の世界を支える市場が小さいのだからしょうがないよ」
「そんなの戦線を縮小すれば割り振りも輸送行程も減らせるだろう」
「一度手に入れた土地は、死んでも手放さないから一所懸命というのだろう」
「封建主義か! 土地に縛られやがって」
「いや、資源の為だし」
「んん・・・」
「ドイツから、艦隊による支援を要請されているが、どうしたものか」
「イギリス機動部隊が大西洋に帰還している」
「チャンスといえば、チャンスなんだが燃料がないな」
「機動部隊で作戦といっても油送船の割り振り分だけの艦隊しか動かせないし」
「油送船の都合は直ぐにつかないよ」
「陸軍もケチだな〜」
「ミッドウェーなんか占領するから割り振り利かなくなるんだよ」
「ビスマルク諸島から退くとか」
「それを言うなら、重慶も・・・・大陸鉄道も・・・・」
「中国大陸は、資源というリターンがあるよ」
「だよな・・・・」
「もう・・・攻勢の限界なんだから。たいしたことできないよ」
「本当は、戦ってもいられないか」
「中国は、日本を盾にしながら大陸鉄道で肥え太ることになるな」
「例え日本が負けても・・・」
「だが、このままだと、そうなってしまう可能性もある」
「中国人は東南アジアも奪うぞ」
朝鮮半島
朝鮮人の家を朝鮮人の集団が囲む。
「借用書があるニダ。金を返さなければ家を出て行くニダ」
「待ってくれニダ。お願いニダ」
「駄目ニダ」
「ひどいニダ、騙したニダ」
「賭けたのは、そっちニダ」
「最初から騙すつもりだったニダ」
「出て行かないと、もう一人の娘も、かわいそうになるニダ」
「ひどいニダ!!」
「待てないニダ。出て行かないと、おまえの娘を売るニダ」
「わかったニダ。出て行くニダ」
「日本人が揚子江の警備員を探しているニダ」
「行くと良いニダ」 ヾ<・д・。> バイバイ ニダ
「アイゴ〜 そうするニダ」 <´Д`。> グスン ニダ
朝鮮人の家族が土地を手放し、家から出て行く。
「よ〜し、日本人に売るニダ♪」 \<^ ・ ^>/ バンザーイ ニダ
「「「日本人は、高く買ってくれるニダ♪」」」
♪わぁいニダ ヽ<∇⌒ヽ> <ノ⌒∇>ノ わぁいニダ♪
需要があるとわかると、
そういう人間たちが暴力や詐欺など、金欲しさで動いてしまう。
因みに “ニダ” を “ある” に置き換えて、揚子江周辺でも起きていた。
中国 大陸鉄道
荒々しい音を蹴立てて進む蒸気機関は力強さの証。
しかし、経済効率で問題ありといえる。
資源の潤沢なアメリカであれば使い放題でも貧乏国の日本は、そうも行かない。
客車
広告は、日本語と中国語が併記されていた。
乗客の半分以上が中国人で東南アジアに向かう。
「・・・少し速くなったんじゃないか」
「壁が薄くなったんだろう」
「危ないな襲撃されたらどうするんだ」
「どうかな・・・乗れない中国人もいるが乗ってる中国人もいる」
「戦いになれば利権を持った中国人が、どっちに付くかだよ」
「結局、貧しい5億の民衆を押さえ込むには強圧的な手法が必要になるのかな」
「どいつも、こいつも利己主義に走りやがって・・・」
「人のこと言えないけどね」
「人に善人を強要しながら、そいつから、むしり取るんだよ」
「ひでぇな」
「それが国」
「って、国がないと、もっと惨めだよ」
「朝鮮人を見たら良くわかるよ」
「好きなように奪われ、公正さは、まず得られない」
「一応、皇民だよ。それに併合前より豊かだ」
「でも己を皇民と思っていない間は虐げられるよ」
「ていうか皇民自体が虐げられている」
「戦時だし。仕方がないよ」
「戦前から、だろう」
「そうだけどね」
「日本はね。元々、近代化に足る、地質資源のない国なんだ」
「それを皇民を酷使して、背伸び、無理やり近代化している」
「国益に反すれば、皇民に限らず、いや、皇民も淘汰される」
「いやなら江戸時代に戻って植民地にされれば良い」
「戦況が厳しいと特にそうだな」
「インド・太平洋の戦線は落ち着いているんだろう」
「落ち着いて膠着状態だから、中国に投資しているんだ」
「気が進まないのに?」
「掘れば資源がある。いやになるほど労働力もある」
「日本が大陸に引き摺り込まれるのはね。資源のない日本の宿命なんだよ」
「東南アジアの資源があれば・・・」
「平時ならともかく、戦時だからね」
「東南アジアの資源だけじゃ 足りないよ」
「それに通商破壊は大陸輸送が安全なんだ」
「大陸鉄道は対米戦で有効でも対中戦で不安だよ」
「わかっているよ。それくらい」
「だから東南アジアの華僑と中国とつなげて利権を拡大してやっている」
「これで中国に大陸鉄道を取られたら不安だな」
「ウィグル方面にも路線を伸ばしているだろう」
「中ソを衝突させて、中国の日本依存を深めさせる戦略だよ」
「ソビエトもドイツと戦争しているだろう。無理じゃないかな」
「だがソビエト全体から数個師団が中央アジア防衛に取られる」
「じゃ 日米関係と同じような関係を中ソに望んでいるのかな」
「侵略しか頭にないキチガイ軍人じゃ国民に無駄な犠牲を強いるだけだ」
「国際情勢で漁夫の利を得て、国民に楽をさせること考えるのが政治だよ」
「海軍が、ごねている」
「海軍が、ごねているのは予算が取られて艦隊が動かしにくいからだ」
「やれやれ、わかってて、ごねているとしたら確信犯か」
「気持ちは、わからないこともないが退いて欲しいよ」
「海軍は退かないだろうな」
派閥抗争には、倫理も遠慮もなかった。
時には、外国勢力すら利用し、国益すら損なわせる。
客車の通路を物売りが歩き、売買が始まる。
その中に白人がいることも・・・ある。
「・・・・お、ロシア人がいるのか」
「一応、日ソ不可侵条約があって中立国だからな」
「いいのかな」
「監視付だろうな」
「日本人もシベリア鉄道で中立国のトルコまで行ってるからね」
「良いとか、悪いとかの問題じゃないよ」
「どっちが、相手にマイナスを与えられるかの問題か・・・」
使われるのは元札。
結局、偽札も日本が流した後は一般で流通している。
一旦、手を離れてしまうと出来が良ければ偽札だろうと、本物だろうと、
どうでも良い状態だった。
「・・・最初の利益は、日本が資源を得るときだけだな」
「汪兆銘政府は新札を発行するそうだ」
「日本政府は、偽札をやめるか、新札も造るか、苦心することになるよ」
「偽札を新札で作れば日中関係は冷え込み悪化する。まずいよ」
「そういえばドルも作っているらしい、こちらはルートがなくて流しにくい」
「アメリカの貨幣経済は崩せそうにないな」
「アメリカとイギリスが円の偽札を造っているか不明だけどね」
「造ったとしてもおかしくないよ。同じだろう流すルートがない」
「どうかな、中国人で円を使う人間が増えている」
「蒋介石経由で回って来てるのかもしれない」
「偽札は、国の貨幣経済を根底から破壊してしまう。普通は重罪で死刑だがな」
「中国は違うらしいな」
「しかし、いくら人口分の紙幣が足りない中国が異常なのだろう」
おつりで受け渡される元の紙幣を見ても偽物か本物かわかりにくい、
「偽札が、精巧にできているということかな」
「いや、違う、本物の元紙幣の作りが怪しいだけ」
「怪しい作りに合わせるのも苦労かも・・・」
「そういえば、汪兆銘政府が高価なドイツ製印刷機を中立国経由で手に入れたらしい」
「新札を作るんだろうな」
「戦時中に大変な苦労だが、こうなると真似がしにくくなる」
「貨幣経済がしっかりしてくると政府の権威も増す」
「経済取引も信用され、より活発になるだろう」
「今でも、十分に活発なんだがな」
「本物も、偽者も怪しいんだから。怪しくても使うしかないんだよ」
「大陸鉄道と同じだな」
「ああ・・・」
北大西洋
戦艦ストラスブールには、巡洋戦艦グナイゼナウの乗員が乗り込んでいた。
将兵は、手狭になった艦体と、使い勝手の違いに戸惑いつつも、
数ヶ月の慣らし運転でフランス戦艦に慣れていた。
ストラスブール 艦橋
北大西洋の海図がテーブルに置いてあり駒が時折、動かされていく、
「・・・久しぶりの海だな」
「イギリス海軍は来ませんね」
「まだ発見されてないのだろう」
「見つかったら万事窮す、ですよ」
「燃料を考えると、艦載機に追いかけられるのは辛い」
「ティルピッツとシャルンホルストも出撃できればいいのですが」
「北海でネルソン、ロドニー、アメリカ旧戦艦部隊と睨み合っているよ」
「航空機の哨戒圏に入ると相手が低速でも正面に回られる。出し抜くのは難しいだろうな」
「冬になれば荒れるのでは?」
「その頃にはアメリカ機動部隊に追い掛け回される」
「戦艦による通商破壊は時代遅れなんでしょうね」
「戦艦を通商破壊に繰り出すのは費用対効果で小さい」
「しかし、護衛艦だけで輸送作戦ができないと思わせれば負担を強いることができる」
「プラスの方が大きいと?」
「いや、どっちのマイナスが大きいかだろう」
「船団にR級戦艦の護衛を強いるだけでも連合軍のマイナスは大きいよ」
「なるほど、日本もそういう作戦ができればいいのでしょうが」
「無理して大きな大砲を載せるからだ」
「金剛クラスも280mm連装砲4基で作戦能力を大きくしていたら」
「それだけで連合軍の海上輸送を寸断していたはずだ」
「確かに・・・」
ストラスブールの上空を1機のドーントレス機が旋回する。
大カマを持った死神のようにも見える。
「見つかったか・・・」
「ドーントレスだと護衛空母ですね」
「安心できんよ」
「イギリス空母もドーントレスの方が使いやすいだろう。直ぐに来るとは思えんが」
護衛空母なら20機以下。
イギリス空母だと40機以上だった。
「・・・厳しいな。だが護衛空母と信じて面舵で前進」
「向かっていくんですか?」
「対潜哨戒なら船団上空に3機飛ばして、進行方向に1機出して哨戒させる」
「多分、あれが、そうだ」
「・・・・」
「距離も、そう、離れてないだろう」
「潜水艦が潜水できる程度の距離ですかね」
「・・・哨戒中の偵察機に船団に戦艦がいるか確認させろ」
南方を哨戒中のAr196水上偵察機を無線で北西に向かわせる。
ドーントレス機は対潜用の小型爆弾しかもっていなかった。
護衛空母は徹甲弾や恐るべき魚雷を搭載していない、
対潜用の小型爆弾しか積んでいないと推測できた。
「爆撃してきませんね・・・」
「味方が来るのを待っているのだろう」
「空襲はな、回頭が間に合わないくらい矢継ぎ早な連続攻撃が基本だよ」
そして、水平線の向こう側に敵船団を発見。
ドーントレス10機が、向かってくるのと、ほぼ同時だった。
「・・・逃げているようですね」
「・・・こっちも、逃げながら、追いかけないとな」
水平線上に小さなマストが見える。
「偵察機の報告だと、護衛空母1隻、護衛艦8隻、輸送船32隻だそうです」
「戦艦がいないのなら、やれるな」
舌なめずりしたくなるような状況だった。
対潜用の爆弾が命中しても致命傷とはならない、
上手くいけば船団を壊滅させることができた。
護衛艦が護送船団の守ろうと迫ってくる、
対潜用の爆雷と対空砲があっても対艦兵装はなかった。
上空を旋回するドーントレス11機は、順番に降下して爆弾を投下していく、
「・・・面舵!」
ストラスブールが回頭していく、
戦艦は、Uボートより巨大で命中させやすい、
もっともUボートより速度が速く、対空砲火は数十倍・・・
爆撃機といえど、一方的に狩る側ではなく有利なだけ、
機体が炸裂弾の爆発で煽られ、被弾で震動する、
ストラスブールの回頭に合わせて機体の軌道を修正していく、
運が悪いと死ぬと思うと操縦桿を握る手が震える。
曳航弾が機体に向かって収束してくる、
恐怖に身が縮み、機銃弾が機体を掠めていく、
「・・・こぉのぉお、ジタバタするな!」
12.7mm機銃掃射がストラスブールに吸い込まれていく、
甲板をバチバチと12.7mm機銃弾が爆発し、炸裂した跳弾が跳ねる。
爆撃するパイロットも、
対空機関砲を撃ち上げてる将兵も生きた心地がせず命懸け、
ちっ!
炸裂弾に煽られる機体を無理やり押さえ込んで、爆弾を投下、
爆弾が放物線を描いて落ちていく、
艦橋の将兵たちは、心臓を鷲掴みされているような心境で落ちてくる爆弾を見つめる。
戦艦の回頭は駆け足したくなるほど遅く、
爆弾は、艦の舷側を掠め水柱を吹き上げて爆発し、
海水を吹き上げ降り注がせる、
駆逐艦なら亀裂が入りそうな至近弾でも、戦艦の装甲は堪えることができた。
「・・・手っ取り早いのは、護衛空母をやることだろうな」
護衛空母から、ドーントレス機が発艦していた。
十数個の水柱がストラスブールを包むように立ち昇り、
一発が艦の右舷中央で爆発し、
ドーントレス2機が黒煙を吐きながら海上に激突する。
「右舷の甲板に命中! 小破!」
対潜用の小型爆弾では戦艦を撃沈できない。
去っていくドーントレス機と、
向かってくるドーントレス機が入れ替わる。
「・・・・主砲の発射準備だ。偵察機に観測させろ!」
「は!」
命令が復唱されながら伝達されていく、
「イギリスとアメリカに船団狩りの仕方を教えてやろう。最大戦速!」
向かってくるストラスブールから逃げ出そうと輸送船団は扇状にバラけながら逃走、
ストラスブールの主砲が最初の標的、護衛空母に向けて発射され、
第3斉射の砲弾が命中し、爆発しながら沈んでいく、
ストラスブールは輸送船10隻を拿捕し、
ドイツ軍将兵が乗り込み、
輸送船の積み荷の一部をストラスブールへ載せ替え、
輸送船は、ジブラルタルへと凱旋していく、
ストラスブールの護送船団襲撃と壊滅は、イギリス海軍に衝撃を与え震撼させる。
そして、通商破壊は、ストラスブール1隻だけの戦果にとどまらない、
ジブラルタルに進出したドルニエDo26飛行艇が洋上のストラスブールと合流する。
ストラスブール 艦橋
「急いで飛行艇に給油しろ」
「はっ!」
ドルニエDo26飛行艇の航続力9000kmだった。
北大西洋上で給油できるなら、飛行艇の哨戒圏はさらに広がり、
Uボートの通商破壊も助けてしまう。
ストラスブールは通商破壊艦というよりUボート支援艦に近い。
とはいえ、獲物を見つけると手を出してしまうのが人情で、
手ごろな商船を発見すると拿捕し、
必要な物資をストラスブールに移し、
拿捕船ごと、戦利品をジブラルタルへと送った。
北大西洋上、
アメリカとイギリスは、北大西洋上、ストラスブールに居座られ、
輸送船団は大きく迂回させるか。
戦艦を護衛につけなければ、海上輸送ができなくなった。
ジブラルタル要塞は強力な砲口兵器が配備されつつあった。
防空は71口径88mm対空砲(PaK 43/41)と
57口径37mm砲(FlaK 36/37)によって守られ、
山の高台と中腹以上には、射程24500mを誇る55口径149.1mm砲(K39)が配置され、
海峡と22000m先の米英軍陣地の対岸を睨んでいた。
海峡は、機雷源と防潜網が敷かれ、
小型潜水艦と旧潜水艦50隻以上が配備されていた。
ジブラルタルの大岩(標高426m)の中腹以上にK39砲を配置すると
標高の分だけ射程が延び、
戦艦相手に通用しなくても巡洋艦以下の艦艇だと致命的な破壊力になった。
一方、アメリカ軍も、射程23500mを誇る155mmM2砲(M59)を対岸に配置しつつあった。
その気になれば、北アフリカの対岸からジブラルタルに向けて撃ち込む事もできたことから、
アメリカ軍もドイツ軍も、それぞれの大砲を設置し、
ジブラルタル海峡越しで互いの陣営に向けて砲弾を撃ち込んだ。
長距離砲は、射程が長くても砲身命数は短い、
互いに命数を撃ち尽くすか。
砲撃を受けて破壊されるか。
命尽きるまで撃ち合うことになった。
ジブラルタル海峡を挟んで壮大な消耗戦が繰り広げられ、
一番得をするのは、誰一人死ぬことなく、お金が転がり込むスペインだった。
地中海 アルジェ湾
イギリスのR級戦艦ラミリーズと
軽巡2隻、駆逐艦5隻、輸送船40隻、魚雷艇20隻が地中海に取り残される。
枢軸国の潜水艦がジブラルタル海峡を閉鎖し、
地中海の米英軍は輸送が減少していた。
ラミリーズ 艦橋
「・・・地中海も、随分と、静かな戦場になったな」
「もう、主戦場から切り離されたという感じですからね」
「スエズ経由の輸送は、大丈夫だろうか?」
「モロッコ経由の輸送が期待できそうですが」
「燃料、武器弾薬の無駄弾は極力減らすべきでしょうね」
「押せ押せムードが逆襲で一転して停滞か」
「北アフリカを制圧して油断したんだろうな」
「ムッソリーニの権威喪失でイタリア海軍に攻勢能力がないと判断した結果ですかね」
「ジブラルタルを無力化しないと、地中海は、どうにもならないか」
「反攻作戦は、ジブラルタルの背後をつける戦艦ラミリーズが主役になりそうですが」
「ラミリーズの突入?」
「ジブラルタルのドイツ兵は万単位ですし」
「この戦艦が1隻乗り上げてもドイツ兵は手を上げないと思われます」
「ジブラルタル要塞の兵員が少な過ぎたのが敗因かな」
「ソビエト軍が東部戦線で攻勢をかけていたら今頃・・・・」
「ソビエトの大攻勢は、戦力差から来年になるだろう」
「残念です」
「しかし、地中海・北アフリカの戦略爆撃部隊はイギリス本土へ移動だから寂しいものだ」
「代わりに艦載機が回ってくるそうです」
「燃料を使わずに済むからな」
「ですが、なるべく、早くジブラルタルを無力化しないと・・・・」
「イギリス機動部隊が大西洋に回航している」
「ストラスブールを撃沈してジブラルタルを奪い返すだろう」
「スペインがどう出るか。怖いですがね」
「そういえばドイツは、スペインと10年のジブラルタル租借契約を結ぶとか言ってたな」
「スペインが敵になると問題ですよ」
「スペインもアメリカに恨みがある。可能性はあるかもしれないな」
「現にスペインを経由してドイツの兵器、武器弾薬がジブラルタルへ流れているそうです」
「イギリスも輸入しているよ。スペインは儲けてるだろうな」
「夢の “漁夫の利”生活ですか。最高に羨ましいですね」
「そうだな」
勤労挺身隊(25歳未満女子)の動員
イタリア ローマ
数人の男たち暗がりの中にいる。
「まさか、ジブラルタルを落とすとは・・・」
「イタリア海軍とジブラルタル要塞の交換は、どういうことなのか!」
「それがドゥーチェのやることか!!」
「しかもジブラルタルをスペインに租借だとイタリア海軍をなんだと思っている」
「しかし、ムッソリーニ首相の立場も微妙だな」
「微妙でもイタリア半島にはロンメル軍がいる」
「それと米英軍の攻勢は大きく後退して、北アフリカの支援は得られそうにないな」
「そうだ。降伏すればドイツ軍に全て持っていかれる」
「降伏もできない・・・」
「いまのところ、イタリアの安全保障は得られている」
「このままだとイタリアの国力をドイツに吸い盗られてしまうぞ」
「アメリカとイギリスに国力を吸い取られるのと、どっちが良いかな」
「勝つ方だ。少なくともイタリアは戦勝国になれる」
・・・・・・・・・・・・・・・
朝鮮半島
焼肉屋
朝鮮人は軍隊に引き抜かれないため、家族を守る夫がいる。
日本の困窮な生活も朝鮮半島まで届いていなかった。
「・・・我が朝鮮族を支配するとは、日本人が許せないニダ」
「日本はアメリカに滅ぼされれば良いニダ」
「日本が滅ぼされたら日本を半分貰うニダ。賠償ニダ」
「そうニダ。日本民族を家畜にしてやるニダ」
「日本を負けさせるニダ」
「そうニダ。アメリカ軍に日本人の男は、みんな殺されたら良いニダ」
「女、家、土地、財産は、全部、いただくニダ」
「それ良いニダ。夢の殻潰し生活ニダ。日本の女を酷使してハーレムニダ」
「永遠にたかるニダ」
「朝鮮人の根(ハン) ニダ」
「日本、早く負けると良いニダ」
「・・・日本が負けなかったら、どうするニダ?」
「その時は、しょうがないニダ。皇民ニダ」
「でも戦争で日本人の男がたくさん死んでいるニダ」
「日本の女を貰って、扱き使って自己満足するニダ」
「しょうがないニダ。それで自尊心を満足するニダ」
月夜裏 野々香です。
アメリカ海軍は、凄過ぎです。
慣熟訓練と離着艦訓練をしながら、通商破壊艦の捜索です。
この時期、アメリカの巨大な生産力が立ち上がりを見せた頃です。
普通は、性能が戦力として発揮されるまで訓練が必要ですがヤンキー魂の見せ所です。
熱情、利己主義。イタリアも、朝鮮も、半島は似ています。
信義の少ない国は近代化の資質が劣り、他力本願の棚ぼた狙いです。
日本男子は、戦争で、たくさん死ぬので、ひょっとしたら、いけるかも、です。
ヤクザやマフィアが土地を売らせるため犯罪紛いや、嫌がらせ安く売らせてしまう。
そして、仲介手数料をポケットに入れてしまう。
バブル全盛で、これをやられた土地持ち、借主は腹も立つ。
あと、おじいさん、おばあさんに、銀行がお金をたくさん貸してビルを建てさせ。
バブル崩壊を利用して全部いただく、
こういったことは古今東西、昔から行われている。
因みにマンハッタン島はインディアンから1ドルで購入だそうで、
あまり責めても仕方がないのか。
もう、良いとか、悪いとか、いうよりも、呆れるというか・・・・
利己主義的な欲望に支配されると人間性喪失、
人権蹂躙しても、わからないほど腐ってくるのでしょう。
程々にしないと、しっぺ返しです。
人間。もう少し、思いやりと、やさしさ、でしょうか。
史実では、朝鮮ヤクザと日本業者の取引だったのですが。
この戦記では、大陸の権益で日本陸軍の目の色が変わって、
さらに極悪に行われたりします。
イタリアから出航したR級潜水艦2隻ロモロ、レモは、600トンの積載量を持つそうです。
ほかに大型潜水艦バルバリゴ。
現在、日本に向かってるのが潜水艦はアミラリオ・カーニ、コマンダンテ・カッペリーニ。
ドイツ人技術者。ドイツ製部品と設計図を満載です。
ランキングです ↓ よろしくです。
第15話 1943/08 『ジブラルタルの嵐』 |
第16話 1943/09 『大海のストラスブール』 |
第17話 1943/10 『正義の正体』 |