月夜裏 野々香 小説の部屋

   

仮想戦記 『青白き炎のままに』

   

第19話 1943/12 『狂犬じゃあるまいし』

 西安

 南京政府軍 VS 中国共産軍

 漢民族同士の交戦は、小銃同士の銃撃戦が主流だった。

 低次元の戦いで日本から供給される軽機関銃と迫撃砲が使われると光る。

 「・・・捕虜は、これだけか?」 日本兵

 「そうある」 南京軍兵士

 「もらって行く」

 「どうするある?」

 「武器を持たせて連合国の領土に降ろす」

 「敵に降伏するある」

 「奪わないと生きていけない場所なら人間として当たり前の行動を取る」

 「中国人は、人間ある」 にやり

 南京政府軍の路線が、すぐ後方にまで来ていた。

 断崖を刳り貫けば鉄道で戦車を運び込むことができた。

 そうなれば、共産軍も後退だった。

  

 労働の対価は、偽札、

 中国人も知っていたが紙幣が足りな過ぎて、あえて流通させている。

 そして、人目のない場所で厚みのある封筒が受け渡される。

 日本の情報が漢民族から連合国側に流れ、

 連合国の情報も漢民族から日本へと流れていた。

 「・・・・・・・・」

 「・・・生きる為ある」

 国民軍と共産軍は、民衆を搾取する南京政府と日帝の打倒を叫ぶ、

 しかし、その動機は権力機構の主流になれなかったこと、

 そして、貧しい者は死ぬまで浮かばれないことだった。

 不満分子、反体制分子になりやすく、

 愛国心を口実に、日本と連合国に情報を流し、対価を得てしまう。

 普通の国で偽札がはびこれば国家経済の破綻、貨幣経済は機能不全に陥る。

 麻薬で死刑になるより、偽札で死刑になるのが国だった。

 しかし、人口に対して紙幣が足りなすぎると状況が変わる。

 偽札が中国経済を支え、近代化の活力を与えていた。

 農地が広がり、商店が増えていく。

 中国社会は村や町が発展する前段階で、

 中国官吏の不正腐敗が横行し繁栄の芽を潰してしまう。

 しかし、日本軍が腐敗官吏を牽制して自由市場を保障すると、

 鉄道沿線に商店街が軒を連ねていく、

 「・・・日本人は杓子定規ある。賄賂を取らないある。融通が利かないある」

 「しかし、賄賂がなくても仕事するある。それは良いある」

 「そうある。だけどライバルを蹴落とせないのは困るある」

 「代わりに町は大きくなっているある」

 「他の店に客を取られると困るある」

 「人口が増えれば客も増えるある」

 「人口が増えても、客は増えないある」

 「強い商人が増えているある」

 「困るある。客を取る店を潰したいある」

 「でも日本人は賄賂を受け取らないある。酷いある」

 「賄賂の渡し方が中国と違うのかも知れないある。他の店を減らしたいある」

 「そうすれば自分の店が大きくなるある」

 「日本人は中国の常識を知らないある。権威の何たるかを知らないある」

   

     

 赤レンガの住人たち

 一人のパイロットを養成する為に必要な経費を足していく、

 それを必要なパイロット数でかける。

 それで、目標とするパイロットが増えるか、というと、さにあらず。

 教官クラスの人数で制限される。

 アメリカで養成されるパイロットを累計すると、

 アメリカのベテランパイロットは雪達磨式に増えていく、

 比較しながら、キルレートで差し引いていくと、

 日本のパイロットは、ゼロになってしまう。

 「・・・まずい」

 「勝てん」

 「やばい」

 「航空戦以外でキルレートを加算しないと駄目なんじゃないか」

 「対空砲火?」

 「当たんないよ。味方に当たったりするし」

 「味方識別装置とか、あったんじゃないか」

 「理屈は、わかってもね。実体化する段階でコケるし」

 「んん・・・ドイツ頼り・・・・」

 「元々、開戦もそれだし」

 「いやだね。他力本願で戦争なんて」

 「日本は虚勢張って身の丈を考えずに噛み付く国なんだよ」

 「アメリカの中国権益を脅かすからだ」

 「だいたい。大陸にのめり込み過ぎだね」

 「陸軍にお金取られ過ぎだよ」

 「艦隊も動かせないなんて太平洋戦争じゃない」

 「揚子江に朝鮮人を移民させる計画って、どこまで本気なんだ」

 「さぁ 国を守る為、そこまでやるかな」

 「やるんじゃないの、もう善悪の問題じゃないよ」

 「それは、悪ね」

 「こうなったら、悪でも国を守る」

 だんだん開き直り始める。

 「でも海軍の戦果は悪くないよ」

 「だけど、アメリカ潜水艦はダミーの護送船団に引っ掛からなくなったよ」

 「んん・・・止まっていたら、もう近付いてこないね」

 「アメリカの潜水艦を何隻ぐらい沈めたの?」

 「たぶん、わかっているのが60隻以上かな」

 「へぇ 意外と沈めているな」

 「正確な数字は出ないらしいけど、浅瀬の罠に近付いてきた潜水艦でそれだから」

 「実態は、もっと多いかも」

 「そういえば舵やスクリューが絡みついて浮上できなくなった潜水艦はかわいそうだったね」

 「防潜網と捕獲網を縦だけじゃなくて横にもするから・・・」

 「問題は技術だね。航続力があればドイツまで武蔵を派遣したいよ」

 「たどり着けないだろう。いくらなんでも。帰りの燃料はくれそうにないし」

 「燃料は、ドイツも苦しそうだからな」

 「だけど、ドイツは人工石油で年間100万トンくらい造るから」

 「日本は、年間100万トンも石油が造れたら戦争しなくて済んだのに・・・」

 「日本は、石油を作る石炭もなかったんだよ」

 「でも、さすがに木炭戦車と蒸気戦車は恥ずかしい」

 「なんか、希望的な話しはないの?」

 「新型エンジンは?」

 「今あるエンジンのオイル漏れと油漏れを防ぐのが精一杯なのに」

 「新型エンジンを量産できるわけないだろう」

 「陸軍のバカが熟練工の取りすぎだよ」

 「松根油は、どうなの?」

 「オクタン価89くらいだそうだ。詰まりやすいのが欠点かな」

 「落ちたらどうするんだよ。アメリカみたいにオクタン価100を使いたいよ」

 「日本は、せいぜい。オクタン価91かな」

 「ドイツは、もう少し良いけど、それだって、オクタン価で96くらい」

 「それでも良いよ」

 「最近、潜水艦がドイツの部品を持ってきたから、少しは、調子よくなりそうだよ」

 「少しだけね」

  

 

 

空母・戦艦戦力の交換比

アメリカ海軍の損失

VS

日本海軍の尊卒

真珠湾攻撃 オクラホマ、アリゾナ
珊瑚海海戦 レキシントン 祥鳳
ミッドウェー海戦 ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネット
大和
東太平洋 コロラド、ニューメキシコ、ミシシッピ。アイダホ  
キスカ沖海戦 サラトガ、ワスプ、エセックス、インディペンデンス
西オーストラリア沖海戦 レキシントンU、ヨークタウンU。カウペンス、モンテレー、ベロー・ウッド
ノースカロライナ、マサチューセッツ、アラバマ 比叡、霧島

大型空母5隻、中型空母4隻、軽空母4隻

軽空母1隻

13隻 (262700トン)

1隻 (11000トン)

19800×3 33000×2 14700×1 27200×3 11000×4

11200×1

 

新型戦艦3隻、旧型戦艦6隻、

新型戦艦1隻、旧型戦艦2隻

 

9隻 (300000トン)

3隻 (140200トン)

 

33100×1 29000×1 33400×3 32500×1 35000×3

36600×2 67000×1

     

 ハワイ

 白レンガの住人たち

 アメリカ太平洋艦隊は、西オーストラリア沖海戦の敗北で打ちひしがれていた。

 巡洋艦以下の艦艇の損失比でも似たようなものでキルレートが悪すぎた。

 日本海軍に引っ張り出されて分散、各個撃破。最悪のケースといえる。

 「・・・日本海軍の動きは?」

 「ないな」

 「日本海軍は、絶好のチャンスなのに燃料もないか」

 「中国側の情報だと乗員も怪しいそうだ」

 「新兵の割り振り利かないから損傷艦の乗員は別の建造したばかりの軍艦に乗るらしい」

 「無茶苦茶だな」

 「日本は、人材を擦り減らしながら戦っているんだな」

 「権威主義な国は、上に立つ人間よりバカにならないといけないんだ」

 「上にいる人間より出来がいいと殺されるか潰される」

 「つまり、日本の人材は、上層部の器以上に大きくなれない。上の器で底が見えているということだ」

 「しかし、いまの日本軍上層部は悪くない」

 「大和の参謀を戦死させて龍が出てきたのかもしれないな」

 「確かに重慶攻略。キスカ沖海戦。防潜網を使った作戦」

 「旧式輸送船を対潜用に配置するといった戦術は悪くない」

 「中国軍の西オーストラリア上陸作戦もだ」

 「民間人を標的にするなど、非人道的で理解の範疇を超えている」

 「中国側の情報だと、ミッドウェー海戦の混乱で陸軍主導になったのが原因だとか」

 「アメリカ海軍は、日本が陸軍主導になった方が有利になるはずだけど」

 「南方で自給作戦を取られたら、こっちが困るよ」

 「遮二無二、進攻して欲しかったよ。フィジーでも、ニューカレドニアでも」

 「ハワイは困るけどね」

 「戦艦が大破して、できなかったんだろう」

 「しかし、太平洋の権益。上手くいかないな」

 「この戦争は、アジア・太平洋で覇権を握ろうとする国家同士。夢の潰し合い。バトルロイヤルだよ」

 「中国が思ったより、もろ過ぎたな。使えねぇ国だ」

 「自業自得なのに弱者とか言って甘えているんだよ」

 「漢民族も、朝鮮民族も、ねたみ、ひがみで、日本の足を引っ張っている、バカな連中だ」

 「原始人が!」

 「日本民族がいなければ、全部まとめていまごろ植民地だったんだ」

 「そうそう。中国軍が西オーストラリア上陸でしたこと。必ず償わせる」

 「白人世界に対する反逆は死を持って償わせないとな」

 「だけど、いまのところ、攻める手がないよ」

 「日本も民間に物資を回して引っ込んでいる」

 「だけど、いまは出てこない方が助かる」

 「確かに空母戦力ならある」

 「エセックス型が、イントレピッド、ホーネットU、バンカー・ヒル、ワスプUの4隻」

 「インディペンデンス型がプリンストン、ラングレーU、カボット、サン・ジャシントの4隻か」

 「確かに悪くはないね」

 「しかし、慣熟訓練が終わっていない空母ばかりだ」

 「出来立てほやほやでは駄目だよ。せいぜい輸送任務だ」

 「中国経由で入っている日本の情報が正確であれば悪くないが」

 「柔軟だな」

 「いや、日本海軍の戦果で、そう思わされているだけだ」

 「新兵の教育すら間に合わないんだから割り振り利かないよ」

  

  

 

 崇明島

 少しずつ日本人が増えていく。

 日本は、崇明島という揚子江の出入り口を押さえ、

 揚子江の中州は、朝鮮民族、

 非道な立ち退きとか、買収とか、やったりする。

 「・・・ここから出て行くある」

 「そんな。むかしから住んでいたある」

 「これだけ渡すある」

 封筒が渡される。

 「明日まで出て行かなかったら、死ぬある」

 「「「・・・・」」」

 日本軍が中国軍閥や中国マフィアにお金を渡すと、

 それまで進まなかった土地買収があっさり進んでいく、

 日本が崇明島を押さえることができるなら、

 漢民族、朝鮮民族がアメリカなど別の勢力と手を組む可能性を牽制できた。

 さらに朝鮮民族だけでなく、台湾人、少数民族にも投資。

 崇明島は、将来的に揚子江経済圏と大陸鉄道の中核となっていく。

 しかし、日本が揚子江経済圏と大陸鉄道の権益を保持していけるかまだ不透明だった。

 中国の民5億人が近代化で弾みがつけば、少しぐらいの優勢はどうにでもなる問題だった。

 中国が圧倒的な資源と人口で日本権益を押さえ込んでくる可能性は常にあった。

 漢民族は異民族の被支配民族になっても、文化的には支配民族を逆支配し、

 中華圏にしてしまう恐ろしさがあった。

 欧米が正義とか、法とか、持ち出して強圧的な物量で押してくるのに対し、

 中国・朝鮮人は人情と贈収賄など搦め手を使う。

 知的に理解していても、ほだされたりする。

 よほど癖の強い民族でなければ中国圏に飲み込まれる。

 崇明島で土木建築が進んでいた。

 「日本の城郭を造るの?」

 「はぁ 気が進まないけどね」

 「金もないのに・・・」

 「んん・・・」

 「戦争しているのに?」

 「とりあえず区画だけ」

 「造るのは戦争が終わってからだよ。工夫は中国人だし偽札だし」

 「いいけどさ。資材は日本からだろう」

 「はぁ・・・」

 「そんなに揚子江経済圏と大陸鉄道の利権は大きいかな」

 「大きいだろうな」

 「揚子江は、朝鮮人と少数民族が中国に取り込まれたら終わりかも」

 「うん」

 「大陸鉄道も沿線の中国経済が強くなったら中国マフィアに攻撃される」

 「日本資本は持たないかも」

 「うん」

 「先行き不安だな」

 「中長期的にだろう。海上輸送は、いま現状でやばいんだ」

 「中長期戦略を考えられなくなったら。日本も末期だね」

 「・・・最近は日本を盾に中国が越え太っていく悪夢ばかりだ」

 「中長期戦略の展望なんて考えられなくなってきているよ」

 「中国人は拝金主義が強過ぎて信頼できない」

 「金になびかない人間を育てるには、もう少し国全体のモラルと豊かさが必要だよ」

 「それは、鶏が先か、卵が先かに近いね」

 「一定以上のモラルがなければ国は豊かにならないよ」

 「結局は人間性かな・・・」

  

  

 某大臣宅

 「どうして、軍艦、航空機、戦車を作らん?」

 「石炭と鉄がいるからに決まっている」

 「西オーストラリア沖で勝っているのに攻めんとは軍人とはいえん」

 「そういうても・・・・燃料が、なか」

 「中国に、関わっとうからやろうが」

 「石炭と鉄がないと戦争できん」

 「こうなったら使えんようになった。38式、99式小銃も溶かすか」

 「あ、あれは菊の御紋が刻まれとる」

 「それに鉄の量だとたいしたことないわ」

 「飾りもんで勝てるか。華寇に武器を渡さんとならんし」

 「それに軍が動かんと庶民は勝ってると思って排出せんぞ」

 「いや、民間が必要とする分は日本の経済基盤を支える上で、どうしても必要な物もある」

 「無理に排出させても・・・巡り巡って軍も苦しむことに・・・・」

 「ぅぅぅ・・・・どいつも、こいつも・・・工具やら、土方物やら、建設物やら」

 「民間もわけのわからんもので、工作機械を欲しがりやがる」

 「わけがわからなくても、生活用品が滞れば、結核が増えるし」

 「巡り巡って生産力が落ちる」

 「こうなったら、揚子江で現地生産を・・・・」

 「そりゃ まずい」

 「まずいのは、わかっとるわい。したくてするか!!」

 「戦いに勝っても戦争で負けるぞ」

 「日本はアジアで唯一の工業国でなくてはならんのだ!」

 「どうせ戦争が終わったら列強の資本投下が始まる」

 「中国が共産化でもしない限りな」

 「日本が同盟国の中国を邪魔をすれば、どうなるか」

 「そ、そういえば、ど、同盟国だったっけ中国って・・・」

 「「・・・・・・・・・」」

 八方塞の日本だった。

 「インドは?」

 「インドに攻め込んでもイギリスが降伏するわけがなかろう」

 「それに中国の権益を確保してからじゃないと補給もできん」

 「ソ連は?」

 「アメリカ、イギリスに加えてソ連ともか。無理じゃろう。勝てんわ」

 「だいたい、狂犬じゃあるまいし、あっちこっち、噛み付いていられるか」

 「・・・・・・・・」

 優勢な側は、多種多様な戦略が選択できた。

 劣勢な側は、打つ手が著しく狭められ、

 詰め将棋のように追い詰められていく。

 「・・・し、仕方がない。こうなったら・・・」

 「こうなったら?」

 「こうなったら」

 「こうなったら?」

 「こうなったら」

 「こうなったら?」

 「・・・大吟醸を飲んで考えよう」

 「あのな〜・・・・・・賛成・・・」

 酒という逃げ道が残されていた。

  

  

 夜で曇り、波も、風も、それなりの海上を灯火管制した輸送船と伊号が併走している。

 2隻の間にロープが張られていた。

 輸送船から、兵士が高低差を利用して滑走しながら伊号へと降りる。

 ちょっとした大人の遊びの様に見えて、実は、真剣だったりする。

 輸送船の船橋。

 「・・・・よ〜し。これで、5巡したな」

 「本番は、波風しだいですかね」

 「伊号も、しばらく通商破壊に戻れないな」

 「安全性では、こっちの方が良いのでは?」

 「輸送船団に突っ込むよりは安全かもしれないな」

 「上陸部隊の・・・・」

 「華寇軍の戦意は、当てにできませんが、かわいそうな気もしますね」

 「いうな。俺も、そう思っている」

 「すみません」

 「伊号に帰還命令を出してくれ。今日の訓練は、終わる」

 「はっ!」

  

  

 西オーストラリア海岸の民家

 中国南京軍

 何をしているかというと軍隊による民家の不法占拠、

 通常、これを目的とした軍事行動はない、

 ルート上、前線など、一時的に使用することはあっても “居つく” ことはない。

 しかし、中国南京軍は、これをやる。

 通常は、警察が対処する。

 しかし、相手は、小銃を持った軍隊、

 警察では対応不能で住民が避難していなかった場合、悲惨な結果になる。

 もっとも、避難しようにも海岸線から上陸してきたので内陸部に逃げるしかない。

 中国軍は何をしているかというと村を不法占拠。

 食い潰しながら居ついてしまう。

 この時点で軍隊ではなく海賊や山賊の類で、

 ならず者なのだがオーストラリアとアメリカ軍は対応で苦慮してしまう。

 海岸

 「釣れたある」

 「こっちも釣れたある」

 「今日は大漁ある」

 「楽しいある。オーストラリアは気に入ったある」

 「・・あ・・・・軍艦ある」

 「どこ? あるか」

 「アメリカの旗ある」

 「逃げるある」

 日本潜水艦がウヨウヨしている海域、

 アメリカ軍が上陸すると、

 山賊化した中国軍は、村の家々を焼いて内陸のアジトに逃げてしまう。

 海岸沖のアメリカ海軍艦艇は、中国軍を掃討するまで散々梃子摺らされる。

 西オーストラリア沖

 フレッチャー型駆逐艦フランクス 艦橋

 「・・・・・陸戦隊の上陸を確認しました」

 「よし、次のポイントだ」

 「少尉。陸戦隊の準備をしておいてくれ」

 「艦長。ようやく、陸上に下りることができますな」

 「すまんね。狭い駆逐艦で」

 「・・・できれば、客船で着たかったですな」

 「あはは・・・」

 「この辺は危険だ。客船では撃沈されるよ」

 「・・・忌々しいな」

 「まったく」

 「迎えは、よろしく、お願いします」

 「降ろしたら外洋に出て、護衛空母と一緒に日本潜水艦の相当する」

 「3日後に迎えに来る」

 「それまでには掃討できますよ」

 「華寇は、オーストラリア・ニュージーランドの全周で上陸が確認されている」

 「全部の掃討は、時間がかかりそうだな」

 「あいつら見つかると内陸に逃げるからな」

 

 アメリカ海軍艦艇

 艦橋

 「日本潜水艦は?」

 「ソナーには、反応がありません」

 「反応があったら、すぐに知らせろ」

 「了解です」

 「長期戦になりそうですね」

 「護衛艦の上陸部隊でどうにかなる強盗集団だ」

 「しかし、日本潜水艦がウヨウヨしていると思うと落ち着かんな」

 「ええ・・・」

 !?

 「・・ソナーに反応です!」

 「最大戦速。面舵!」

 護衛艦は、探信を打ちながら日本潜水艦を追いかけていく。

 

   

 南オーストラリアの海岸

 伊号

 「・・・ここあるか」

 「ああ」

 中国兵が双眼鏡で村を確認する。

 「上陸するある」

 「そうか・・・」

 「良いある」

 「どうせ、囚人、賊ある」

 「外国で一旗上げて死にたいある」

 水上偵察機の代わりに載せた大型ボートが降ろされ。

 中国兵が乗っていく。

 最後に食料・武器弾薬の箱の鍵が渡される。

 そして、オーストラリアの海岸に向かっていく。

 魚雷の代わりに中国兵50人を乗せていた。

 彼らが良い思いをするのは、少しの間だろう。

 しかし、人生の中で、もっとも光り輝いた一時かもしれない。

 彼らの中には、降伏する者もいる。

 賊らしく死んでいく者もいる・・・・

  

  

 ニュージーランドの湖

 潜水艦から燃料を補給した二式大艇がニュージーランドの内陸部に侵入し、

 凍っていない湖水に着水する。

 手錠をかけられた中国兵を降ろして湖岸に武器弾薬が置かれる。

 グズグズしていられなかった。

 低空で侵入してもレーダー防空網は侮れない、

 戦略拠点から離れていて、迎撃機が近くに来ていないだけともいえる。

 手錠の鍵を中国兵の代表に渡すと、

 二式大艇は、滑走し飛び去っていく。

 凍死するか。

 戦って死ぬか。

 戦わず降伏するか。

 彼ら自身が決める。

  

 日本は、どちらでも良かった。

 戦争しているのだ。

 敵が音を上げるまで戦う。

 それが戦争だった。

 遠慮しながら戦うなど、敗北主義者に過ぎない。負け犬。

 アメリカが華寇狩りに人材を割き、

 オーストラリア、ニュージーランドが戦線から離脱すれば、それだけ有利になる。

 

 伊号潜水艦

 「連中。上手くやってくれるだろうか」

 「どうでしょう。中国人を信用するのは、危険では?」

 「しかし、朝鮮人でもいいんだが、すぐ降伏するからな」

 「あまり上手くいきませんね」

 「だが白人至上主義のアメリカに上陸したのだ」

 「戦っても、降伏しても、殺される。戦うだろうな」

 「せいぜい、アメリカ軍の人員を割いてくれればいい」

 「オーストラリアは、いつまで持ちますかね」

 「さぁ しかし、この任務だと潜水艦は、シュノーケルが欲しいな」

 「シュノーケルですか」

 「敵艦の発見は難しいかもしれませんね」

 「潜水艦は浮上して航行。敵艦船を見つけて潜航し雷撃が普通だからな」

 「電源を使わず。距離を稼ぐという点では良いかもしれませんね」

 「インドでも同じ作戦を、やるそうだ」

 「インド人は独立する動機がありますから、期待できるかもしれませんね」

 「しかし、こういう作戦は気が進まんな」

 「ええ、魚雷でドカンと言うのが潜水艦ですからね」

 「機雷でも良い」

 「こういうのは、死刑執行人みたいで、いやだな」

 「華寇は中国や韓国にいても死刑ですよ」

 「オーストラリア自体が囚人の子孫だろう」

 「そ、そういえば・・・」

 西オーストラリア沖海戦でアメリカ機動部隊は大打撃を受け、

 余裕のできた日本軍は、大型飛行艇と伊号で、

 中国南京軍のオーストラリア・ニュージーランド上陸作戦を開始する、

 この華寇作戦でアメリカは、オーストラリアの海岸線に駆逐艦を周回させなければならなくなり、

 アメリカ・イギリス海軍は、空母機動部隊と護送船団に割り振るはずの護衛艦が割かれ、

 さらに苦戦を強いられていく。

  

  

 オーストラリア首相官邸

 「大変です」

 「中国軍が南オーストラリア海岸。北オーストラリア海岸の河川や湖から上陸」

 「海賊行為を働いています」

 「なんだと・・・・」

 「少なくとも、20ヵ所で確認。ニュージーランドも5ヵ所に上陸した模様」

 「どうやったというのだ」

 「大型飛行艇と潜水艦による上陸作戦のようです」

 「バカな。補給はどうするのだ」

 「わかりません。たぶん、西オーストラリア上陸作戦と同じかと・・・」

 「キチガイが!」

 伊号がオーストラリア、ニュージーランドの海岸線に出没し、

 二式大艇は、内陸部の湖水や河川に着水し、中国兵を降ろして行く。

 上陸した中国南京軍、朝鮮軍は、50人〜60人ほどであり、

 多くが国民軍や共産軍の捕虜。匪賊や囚人、アヘン関係者ばかりの囚人部隊で海賊行為。  

 奪略、陵辱を行っては村を占領していく。

  

  

 日本が行った連合国領への中国兵上陸は、華寇作戦と呼ばれ、

 独伊連合艦隊によるジブラルタル占領と合わせて、

 連合国軍は、戦力の分散を余儀なくされ、

 連合軍の中東防衛も穴が空き。

 潜水艦どころか、それなりの武装があれば、巡洋艦でさえ、アラビア沖に到達できた。

 アラビア沖

 二式大艇の航続距離7200kmは長い。

 アラビア沖で燃料補給を受けた後、

 直線距離3500kmのクレタ島に到達できた。

 無論、燃料を減らせれば、それだけ余計に物資を搭載できる。

 当然、ドイツ側からも日本へと飛行艇が飛んでいく。

 

ドイツ軍 大型飛行艇 BV222

 

 

 北アメリカ 湖畔の村

 村の男たちは撃ち殺されていた。

 白人女性が悲鳴を上げ、

 数人の黄色人種が、にやり、と笑いながら近付く。

 白人女性たちが怯え・・・

 中国兵は捕虜になるより、短く楽しく生きる道を選択したらしい。

 「おまえたち白人が中国にアヘンを売ったある。おまえたちが悪いある」

 「補償するニダ」 朝鮮人も混じっていたりする。

 言葉は通じないが、やることは決まっている。

  

 


 月夜裏 野々香です。

 悪 VS 悪の世界でしょうか。

 もう、魂を悪魔に売ってます。

 史実と違って奇麗事が通用しません。

 五族協和、王道楽土、大東亜共栄圏は、捨てました。

 開き直れば、すっきりしてしまうのですが日本も悪と認めるのは辛いかも。

  

 史実

 「中国大姉さま。朝鮮中姉さま。悪うございました」

 「お許しください。ぶって〜 ぶって〜」

 「こいつ、悪いやつある!」

 ばしっ!

 「痛い〜」

 「補償しろニダ。許せないニダ」

 「お許しを〜」

 ばしっ!

 「痛い〜」

 「もう、いっぱい補償しました」

 ばしっ! ばしっ!

 「痛い〜」

 「してないある」

 「してないニダ」

 「そんなぁ〜」

 ばしっ! ばしっ!

 「痛い〜」

 「口答えするなある」

 「慰安婦の補償も、強制労働の補償もニダ」

 「そんなぁ〜」

 ばしっ! ばしっ!

 「痛い〜」

 自虐史観のマゾ化が、好みで良いのだろうか。

   

  

 戦記では、ちょっと自分本位のサドで・・・・・。

 「・・・中国大姉さま。掃除が、なっていないことよ。気が利かないですわね」

 と、言いながら、ゴミを投げ捨てる。

 「・・・申し訳ございません」

 「まぁ 朝鮮中姉さま。洗濯が溜まっていますことよ。だらしない、ったら、ありゃしない」

 と、言いながら洗ったばかりの服を水溜りにポトッ。

 「・・・申し訳ございません」

 「でも、ひどいある。弱っているときに財産を盗るなんて」

 「そうニダ」

 「何ですって〜!」

 「なんでも、ないある」

 「何でも、ないニダ」

 「人聞きの悪いことを言わないで」

 「わたしは、白人からアジアの財産を取り戻すために命がけで戦ったのよ」

 「・・・ある」

 「・・・ニダ」

 「・・・ったく、中国大姉様も。朝鮮中姉様も黄色人種の恥っ晒しよ」

 「わたしが苦労して、近代化させてあげているのに」

 「ひがみ、ヤッカミで、足を引っ張ってばかり」

 「性悪過ぎて、どうしようもないわ」

 「・・・ある」

 「・・・ニダ」

 

 作者は、マゾ・サド、どっちでもないので悩む。

 他者を虐げ、自尊心を踏み躙り。

 人権を蹂躙するようなことは避けたいが弱肉強食の世界。

   

  

 史実と違ってくるのは、陸軍主導とジブラルタル占領。

 飛行艇と潜水艦による日独伊連絡が増えたことでしょうか。

 あと、中国の大陸鉄道と揚子江経済圏の構築で主戦力への予算が取られます。

 陸軍主導の規格と海軍の工作機械の流用で油漏れ、オイル漏れがなくなって。

 工作機械の振り分けが進み。品質が少しばかり向上。

 代わりに新型エンジンの開発が遅れます。

  

  

 北アメリカ・オーストラリア大陸・ニュージーランド上陸作戦

 倭寇でしょうか。

 華寇でしょうか。

 朝寇でしょうか。

 戦略拠点とは、まったく関係ない場所。

 それでも、アメリカ海軍は、軍艦を振り分けなければならず。

 大変かもです。

 

 二式大艇

 史実より有名になりそうです。

 黄色い悪魔(トロール)を運ぶ、災厄の翼として・・・・・

 もう奇麗事無しです。

 勝つ為には手段を選ばずです。

 因みに性描写は避けてるので、

 それらしいHサイトを検索して妄想してください。

  

   

 

   

 

ランキングです ↓ よろしくです。

NEWVEL     HONなび

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第18話 1943/11 『もう、開き直り』

第19話 1943/12 『狂犬じゃあるまいし』

第20話 1944/01 『もう、心で、泣いているよ』