月夜裏 野々香 小説の部屋

   

仮想戦記 『青白き炎のままに』

   

  

第20話 1944/01 『もう、心で、泣いているよ』

 蘭州

 毛沢東と部下

 「日本が大陸鉄道を完成させたある」

 「まずいある」

 「日米をぶつけて、どちらも消耗させれば良いある」

 「汪兆銘政権は、日本の傀儡ある」

 「いずれ、漢民族に見限られるある」

 「蒋介石は?」

 「日本が南京軍を豪州に上陸させているある」

 「白人世界からも見限られるある」

 「上陸させられているのは共産軍の捕虜ある」

 「それに囚人、匪賊、アヘンの売人を使うとは日本軍も考えたある」

 「白人世界を敵に回すのは危険ある」

 「上陸部隊は自分たちの所業が漢民族に大きな損失をもたらすか考えてないある」

 「華寇軍と名付けられてるある・・・」

 「ソ連は、ウィグルまでの線路建設を妨害するだけで補給してくれるある」

 「しかし、このままだと日本が負けないかもしれないある?」

 「それでも中国に妥協を強いられるある。反撃できるある」

  

  

 1944年01月08日

  P80シューティングスター戦闘機 初飛行

    最大速度966km/h 航続力1328km

    12.7mm機銃×6 ロケット弾×(10〜16) 450kg×2。

 「・・・これなら勝てそうだな」

 「・・・実戦投入は?」

 「戦局にもよるが性能が安定していないな。まだ無理だろう」

 「ドイツは、Me262ジェット戦闘機を出しているぞ」

 「普通は、ある程度、兵站を揃えてから出すんだ」

 「ドイツは、本土防空だからな、それにあまり、他の国に知られたくないし」

 「戦友を失うと、そうも言ってられなくなるよ」

 「そうだな・・・・」

  

  

  

 

 ジブラルタル要塞

 砲弾の雨がジブラルタル半島の南5分の1の形を違う風景に変えていた。

 物量作戦の戦果といえる。

 ヘルダイバー爆撃機の急降下爆撃のせいだろうか、

 426mあった標高も360mに減らされている。

 砲撃と空襲だけで山の形を変えるのもアメリカの物量のなせるわざと言える。

 アメリカ軍の偵察機がジブラルタル上空を旋回しても対空砲火はない。

 海峡の掃海が始まり、

 抵抗があれば戦艦による砲撃が始まる。

 大西洋側、ネルソン、ロドニー、リヴェンジ、レゾリューション、ロイヤル・ソヴァレン

 地中海側、ラミリーズ

  

  

 ラミリーズ 艦橋

 「・・・アレだけ要塞が崩されていたら。もう終わりだろうな」

 「掃海作業が邪魔されていないところをみるとドイツ側の抵抗も、ここまでかと・・・」

 「随分と手間取らされましたね」

 「メッサーシュミットMe262ジェット戦闘機か。大変な技術だな」

 「少しくらい練度に差があっても、やられてしまう」

 「数で押し切れる間は良いのですが・・・・」

 「・・・あとは、上陸部隊が上陸して終わりだ」

 「もう、要塞としては、使えないかもしれませんね」

 「アメリカ軍め、ジブラルタルに愛着がないからって無茶苦茶しやがって」

 「スペイン側の情報だと、ドイツ軍は弱っているらしいと」

 「海峡を自由に通過できれば、イタリアを落とし」

 「南からドイツに攻め入ることができるだろう」

 「Uボートには、散々妨害されましたからね」

 「日本にもだ」

 「あんな海賊のような、やりかたをされたら手に負えませんよ」

 「護衛艦を海岸線に貼り付けさせられる米英海軍も弱ってる」

 「海上輸送、海岸線の巡回、艦隊の護衛艦が必要だと、さすがに・・・・」

 「日本は、目的の為に手段を選ばない国ですからね」

 「日本人は、もう少し、偽善的だったと思っていたがな」

 「窮鼠ネコを噛むでは?」

 「日本人を追い詰め過ぎたんですよ」

 「日本を追い詰めたのはアメリカだろう。イギリスはいい迷惑だ・・・」

 「ブロック経済をやりましたからね」

 「・・・」

 43隻の掃海艇が海峡の中ほどに達したとき、

 ジブラルタルから砲撃が始まる。

 機関砲が掃海艇に穴を開け、

 中口径砲弾が、たちまちのうちに掃海艇を沈めていく。

 掃海艇

 「まだ、生きている。全艦、退避!!」

 「支援砲撃を要請しろ!!」

 命令が届くものの掃海艇は近過ぎた。

 次から次へと撃沈されていく。

 そして、上空を旋回していた偵察機も弾幕の中で蜂の巣にされ撃墜されていく。

 ジブラルタルは、砲弾の雨が撃ち込まれ、さらに形が変わっていく。

  

  

 スペイン

 ジブラルタル要塞の反撃で米英掃海艇が次々と沈んでいた。

 「「「「おぉぉぉおおおお〜♪」」」」

 米西戦争でアメリカに恨みがあり、

 ジブラルタルでイギリスに恨みがあるスペイン人は顔をほころばせる。

 闘牛より面白いのだろうか。

 元々、血の気の多い民族は喝采して喜び、

 かなり残酷だったりする。

 当然、撮影もしている。

 爆撃と砲撃でボロボロのジブラルタル要塞とドイツ軍に同情するスペイン人も多い。

 その中に、ほくそえむ日本人と撫すくれる白人がカフェテラスにいる。

 「いまの日本が行っている、海賊戦術は国際法上許されんよ」

 「弱い民間人を襲撃するなど軍隊として、あってはならないことだ」

 「あなた方も爆弾を落として民間人を殺しているじゃありませんか」

 「同じ白人のドイツ人にすることだ」

 「日本人に対しては、もっと、酷いことができるでしょうな」

 「ここは、白人の世界ですよ」

 「確かに、そうですな。しかし、中立国だ」

 「白人世界への海賊行為は、やめるべきだと思うね」

 「君の身の安全にも繋がる」

 「脅迫ですか」

 「残念ながら本国は私の要請など聞き入れませんよ」

 「アメリカ西海岸へも華寇軍を送ることになるでしょう」

 「・・・・日本が、どうなっても、いいので?」

 「ええ、戦争は殺し合いですから」

 「それに運んでいるのは日本人ですがね」

 「上陸しているのは中国軍か、朝鮮人、インド人です」

 「白人と中国人、朝鮮人、インド人を戦わせて日本人は漁夫の利ですか」

 「汚い、と言わざるを得ませんな」

 「あなた方の真似ですよ」

 「これまで列強は、中国人と朝鮮人の反日を増長させてきた」

 「世界情勢の修正を要求したいですな」

 「・・・日本人も謀略好きになったものだ」

 「それもあなた方の真似ですよ」

 「反撃が、はじめれば日本軍を蹴散らせる」

 「でしょうな・・・」

 「ところで、アメリカ本土に日本の爆弾が落ちていませんかな」

 「・・・・・・」

 「もっと、もっと、落とせますよ」

 「・・・・・・」

 ジブラルタル要塞

 イギリス戦艦の集中砲撃で要塞の景色が変わっていく、

 しかし、掃海艇の多くが撃沈されて作戦中止。

 イギリス海軍は撤退。

 北アフリカ対岸からの砲撃と空襲は断続的に起こった。

 しかし、米英海軍の掃海艇が撤退すると、

 ドイツ軍砲台は沈黙する。

  

  

 呉

 捕獲されたガトー型アメリカ潜水艦ワフー

 誤射を防ぐ為か、日の丸が描かれている。

 「・・・こいつが防潜網に引っ掛かっていたアメリカ潜水艦ですか」

 「浮上できず、乗員は全員窒息死でした」

 「使えそうかね」

 「ええ、電探は良いですよ」

 「複製ができるか、怪しいですがね。参考になります」

 SD 捜索 20海里 140kW 114MHz 潜水艦用

 「対空・対艦に使えても防潜網に引っ掛かったか」

 「艦橋がすっぽり、引っ掛かったようなものですから」

 「アメリカ潜水艦隊を編成できそうだな」

 「もっとアメリカの潜水艦が興味を引きそうなモノを考えるべきでしょうね」

 「こいつは、なんに引っ掛かったんだったかな」

 「確か、さんご礁にやぐら付きの鉄塔を建てた環礁です」

 「ふっ 潜水艦ホイホイだな」

 「もっと防潜網が欲しいところです」

 「風船爆弾にも人間がとられてな」

 「戦闘機を作るより、防潜網や風船爆弾に力を入れるべきですよ」

 「どうせ、まともな工作機械なんて減っているでしょう」

 「もうすぐ、まともに飛べる航空機はなくなりますよ」

 「最近は、そうでもなかろう」

 「工作機械の集約も進んでいるし」

 「ドイツ製の工作部品が手に入って意気が上がっている」

 「2000馬力開発を抑えているのは、それですか?」

 「工作機械の割り振りが利かないらしい」

 「それでも飛べない2000馬力より飛べる1500馬力というところだな」

 「それで勝てるんでしょうか?」

 「さぁな、囚人部隊を捨て駒で敵地に上陸させるんだから末期だよ」

   

  

  

 日本の某工場

 アメリカ製旧式工作機械が十数年も現役で動いている。

 その横で出来立てホヤホヤの日本製工作機械が精度を乱し破損し壊れていく、

 日本製工作機械は、1ヶ月〜2ヶ月で精度が急速に低下し、寿命が短い。

 消耗品のドリルにいたっては直ぐに折れてしまう。

 切削油・潤滑油は、ストックが切れてしまうと出来が悪くなり。

 不出来な代替油は工作機械の寿命を縮めてしまう。

 南方系の油田は、この手のオイルに適していないのか、精製が下手なのか、

 オイル漏れと焼付けも起こしやすく。

 代用品のひまし油は植物系ですぐにカビるため扱いは慎重になった。

 軍幹部は、大陸鉄道と揚子江経済圏の利権にそそのかされ、

 精神論系の軍人を前線へと送ってしまう。

 「やっと、自動旋盤が作れます」

 「・・・急いで、頼むよ」

 「はい」

 「しかし、悲惨だな」

 「もうすぐ、部品が作れなくなりますよ」

 「・・・・・」

 「飛行機も、戦車も作れなくなるでしょう」

 「使えなくなった工作機械は、直ぐに程度の低いラインの生産工場に持っていこう」

 「3式対戦車自走砲は、装甲が硬過ぎですよ」

 「もう少し、素材をやわらかくしないと」

 「わかっている。ドイツ製の部品は?」

 「潜水艦で、もって来た工作機械とドリルは最高です」

 「機械油と削り油も、もっと欲しいくらいですよ」

 「そうか・・・・」

  

  

  

 ニュージーランド

 二式大艇が湖水に着水する、

 上陸した中国兵によって村一つが占領されている。

 補給はない。

 しかし、山間の村で武装して立て篭もった。

 ニュージーランド警察では手が出せず。

 軍隊が、お出ましになるまで好きにさせるしかなく、

 略奪と陵辱の限りが尽くされる。

 オーストラリアとニュージーランドは華寇の来襲に怯えるしかなく、

 ニュージーランド首相官邸

 「・・・現在、上陸が判明しているのは、16ヵ所です。約800人程度でしょうか」

 「くっそぉ〜 華寇軍め」

 「飛行艇と潜水艦の使い方は斬新ですね」

 「護送船団攻撃がリスクが大きくなってきたからだろう」

 「護衛艦を海岸線の巡回に回すと、護衛艦が減った護送船団を襲うつもりなんだろうな」

 「しかし、自殺的な攻撃ですよ」

 「1ヵ所は朝鮮人で、すぐに降伏しました」

 「きたねぇ真似しやがって。サルどもが!!」

 「皆殺しにしても飽き足りませんよ。民間人を襲撃するなんて」

 「アメリカは、どうした!」

 「護衛艦を派遣するとか」

 「小銃を民間に配布して自衛させるか」

 「民間人を武装させるのは、治安上、問題ありでは?」

 「わかっている。だが、そうでもしなければ地方の村を守れんぞ」

 「朝鮮人部隊は戦意が低い」

 「こちらが恐れず、食料を渡せば大人しくしている場合もある」

 「武装させて上陸させているから戦いに来ていると、思い込んで攻撃しているのか」

 「現に現に華寇軍は、略奪している」

 「武器が、あっても食料がないからだろう」

 「そして、村人が騒いで発砲すれば・・・」

 「確かに捕虜にした中国軍も仕方なし、と言ってたがね」

 「じゃ、どうしろと?」

 「武器を持っているんだぞ。言葉も通じない。それに犯罪者だろう」

 「まぁ 連中を養う義務はないな・・・」

 「捕虜で養うより殺す方が良いかと」

 「忌々しいことに、向こうもそう思ってる」

 「だから降伏は当てにできないな」

  

  

 イタリア海軍の期待の改造空母アキーラ

 28000トン級改造空母は同じトン数の空母と比べ、遜色がないように思えた。

 日本将校にすれば眩い空母でも、地中海では使い道に限りがある。

 そして、日本から伝わる情報が本当なら、さらに色褪せる。

 欲しいのは、空母より艦載機パイロットと燃料だった。

 「イタリア空母は、どうですかな」

 返答に困るが社交辞令くらいは言える。

 「素晴らしいですな」

 艦載機は、Bf109T、Ju87が予定されていた。

 イタリア海軍は、ジブラルタル要塞占領と交換で主力艦隊を磨り潰されていた。

 もっとも戦果に伴って士気は向上し、戦艦インペロの建造も再開されていた。

 戦況から国力を東部戦線に投入すべきだろうが海軍も欲しいらしい、

 「ジブラルタル海峡が通過できるなら、これで、外洋に出たいものです」

 「そうですな」

 イタリアは日本と似て山がちで資源が少なく、

 イタリア人はラテン系、

 ローマ帝国は、どうやって作られたのだろうと思いはせる、

 イタリアが外洋貿易国家になる為には、ジブラルタル要塞を維持したいところ。

 しかし、全てが手遅れで後手に回っている。

 開戦時、ジブラルタルに突入し占領していたなら北アフリカのみならず、

 地中海世界を支配していた。

 海軍戦力を惜しみ国を負けさせた。

 日本に向かったイタリア潜水艦も、イタリア本国に帰還できる可能性は低い。

 帰還はドイツ領となったフランスに行く方が安全だった。

 この空母も地中海という狭い世界で朽ちていく運命にあった。

  

  

 

 祝 大陸鉄道完成 祝  の垂れ幕

 釜山からシンガポール・ラングーンまで鉄道が開通していた。

 日本への資源輸送が楽になっていく、

 「・・・・海路による資源輸送だけでなく、陸路でも日本へ資源を輸送できる」

 「これで、船舶の割り振りも良くなるだろう」

 「陸路より海路が割安なんですがね」

 「撃沈されなければ良い」

 「東南アジアと中国のルートを押さえたことで、付加価値もあるし」

 「これで中国・華僑も協力的になれば、良いのですが」

 「華寇作戦で白人と中国・朝鮮・インドで憎しみが増大している」

 「日本が有利になるよ」

 「漁夫の利ですか。華寇は鬼畜ですな」

 「他の国がやっていることを真似しただけだ」

 「結局、人間は恩恵を受けても忘れる」

 「しかし、憎しみは忘れない」

 「中国人、朝鮮人、インド人は、白人世界の復讐から逃れるため、日本と連携を強めるだろう」

 「それが戦略というものだ」

 「兵器のスペック表とカタログ表を見てニタついている収集家や」

 「ドンパチやるしか能のない軍人には、わからんよ」

 「日本をここまで追い詰めたのは、そういう、くだらない連中だ」

 「日本の軍国主義も、いい加減に終わらせたいものです」

 「そうだな。このままだと、日本が軍人に踏み潰されてしまう」

 「日本の為、バカ軍人は名誉の戦死をしてもらいたいものです」

 「国を守る為に戦っている人間の死を願うなど逆説的だな」

 「人間は完全ではないよ。そういう軍人もいるだろう」

 「救国の英雄として靖国で眠ってもらいたい」

 

  

 ハワイ

 白レンガの住人たち

 日本の大陸鉄道建設の情報が届くと、あれこれ数値が変わってくる。

 計算式が変われば、当然、対日戦略も影響が出てくる。

 「・・・まずいな」

 「日本商船は、近場の港を行き来するだけで資源が日本へと送られていく」

 「鉄道で消費する石炭の分をぬいて計算しているのだろうな」

 「ああ、だが、車両の軽量化が進んでいるようだ」

 「中国は石炭が多いから、日本は大変な資源国になるぞ」

 「潜水艦による通商破壊は効果が大きく低下する。どうする」

 「力技で押していくしかないのでは?」

 「だが飛行艇と潜水艦で華寇を北アメリカ大陸と西オーストラリアに上陸させている」

 「日本の海賊戦術で戦力が分散させられている」

 「いくらアメリカ合衆国でも、海岸線から内陸の河川や湖水まで守りきれない」

 「きたねぇ真似しやがって護衛艦も、哨戒機も足りない」

 「日中同盟の脅威だな」

 「日中を離反させられないのか」

 「大陸鉄道と揚子江で日中の利害が一致してるし」

 「華寇部隊はアヘンの密売人、犯罪者、囚人、匪賊だ」

 「中華民国は助かってるし」

 「連合国国民の反中、反朝は拭えない」

 「小さい村に一個小隊置けば済むことなんだろうが」

 「戦略的な拠点でもない場所に戦力を振り分けるのは、戦力の分散で危険だ」

 「日本のどこかに攻勢をかけるか」

 「現状戦力では苦しいし、ガダルカナルに上陸しても効果が薄い」

 「上陸して効果があるとすれば策源地のスマトラ島か、ジャワ島だな」

 「この二つを押さえてしまえば、たとえ大陸鉄道があっても日本に石油を送れない」

 「しかし、策源地に上陸すると日本の輸送ルートを本土と策源地」

 「本土と防衛線の二つに分けさせていた事が無駄になる」

 「策源地を防衛線にして得をするのは輸送を一元化できる日本軍だよ」

 「それに場所的にアメリカ本土から遠すぎて不利になる」

 「ハワイ防衛も困難になるし」

 「ジャワ島とスマトラ島が戦場になると、修理施設もない」

 「だが、このまま、西進しても被害が増すだけだぞ」

 「策源地を押さえて日本を日干しにしない限り損害が増えるばかりだ」

 「「「・・・・・・・・・」」」

 「どちらにせよ。損害が大きくなりそうだな」

 「それにスマトラ島とジャワ島が戦場になると、現地民は、こぞって日本の味方だ」

 「大東亜共栄圏の正当化が成り立つだろう」

 「東南アジアの現地民は、日本離反は少しずつ増えているらしいが」

 「だが白人に支配されたらもう一度、数百年単位で植民地だ」

 「問題は、日本陸軍だな」

 「戦車は、たいしたことないから、電撃戦で、いけるだろう」

 「日本は、新型戦車を配備していると聞いてるぞ」

 「あれは対戦車自走砲だよ」

 「車両を目標に向けないと役に立たない」

 「日本のおんぼろディーゼルエンジンは、微調整が利かない」

 「何で普通の戦車を造らないんだ」

 「日本は、まともな舗装道路もないし道も狭いからな」

 「日本の道を壊したり橋を壊したり」

 「重たい戦車を造れないのだろう」

 「それにクレーンもショボイし、船に乗せられない」

 「ふっ・・・」

 「それでも日本戦車生産は、ソ連、アメリカ、ドイツ、イギリスに次いで世界第5位だよ」

 「イタリアよりも上だな」

 「その6カ国が世界だろう」

  

  

 シンガポール

 東南アジアの戦略資源がシンガポール港に集められ、

 釜山行きの機関車が発車し、釜山から来た機関車が到着する。

 1両あたりの輸送量は、それほど多くない。

 しかし、戦略資源を満載した車両が連なり、断続的に行き来する。

 そして、支線が増え、車両が増えると効率が良くなっていく、

 「・・・良い光景だな」

 「ああ、釜山まで繋がっていると思うだけで壮観だよ」

 「今後は、どうするんだ」

 「そうだな資本の振り分けでいうと大陸鉄道の複線を増やし」

 「長・中・短距離路線で大動脈にしていくか」

 「揚子江側に延ばしていくか。ウィグル側に延ばしていくか」

 「戦車を生産する暇もないか」

 「シンガポールから釜山まで10000kmだよ」

 「10kmごとに1本走らせるとしたら1000本」

 「1本が15両編成だとすれば、鉄道車両が15000両」

 「装甲車両を前後に2両つけると装甲車両も2000両」

 「そして、複線で往復だから倍になる」

 「あと揚子江線が6500km。ウィグル線が6500km」

 「他の支線を入れると、さらに倍。戦車を作るなんてバカだよ」

 「日本本土でさえ、37000kmしかない鉄道路線なのに・・・」

 「苦労して大陸に鉄道を作るなんて・・・・ふっ 泣きたいね」

 「日本って資源がないから・・・・・」

 「日本への見返りは、いつになるんだよ」

 「全部アジア投資じゃないか・・・・」 泣き

 「そのうち、かな」

 「日本って戦争できる国じゃないよ」

 「軍人が、そう思ってくれるのなら嬉しいね」

  

  

 南京政府

 造幣局 新札紙幣が印刷されていた。

 「・・・ようやく、南京政府の元ある。まともな元札ある」 感動

 「良かったある」

 「でも、どうやって流通するあるか」

 「公共投資の財源と官僚の給料をこれで払って、あとは銀行で交換していくある」

 「中国の銀行は、信用されてないある」

 「みんな、タンス預金ある」

 「それか、蔵を建てて物に変えるか」

 「みんな、日本の銀行で信用のある、円に換えるある・・・」

 「・・・・・・・・・・・・」

 「新元も、日本の銀行に置くと中国人も安心するある」

 「・・・・・・・・・・・・」

 中国近代化の最大の敵は人間不信、

 騙し騙し、近代的な貨幣経済へと移行していく、

  

  

 

 ガダルカナル

 水田が広がっていた。

 食料自給率が上がると兵隊の数が増える、

 そして、潜水艦作戦基地としての機能も充実しつつあった。

 西オーストラリア沖海戦と華寇作戦後、

 オーストラリア、ニュージーランドの哨戒任務に航空機が割かれたのか、

 連合軍のガダルカナル空襲が減っている。

 水力と風力で発電し、

 また、ディーゼルを燃やして、発電機を回し、電気を起こしていた。

 兵舎が増築され、山が刳り貫かれ、

 工作機械が運び込まれて、町の様相にもなっていた。

 エスピリットサントから出撃したライトニング150機がガダルカナル島に来襲する。

 アメリカ航空部隊の目標は、ガダルカナルの最高峰、

 マカラコンブル山(2447m)の山頂の鉄塔だった。

 そして、来襲の通報を受けた海燕120機、隼V型100機が迎撃する。

 海燕、隼V型は多勢に無勢で、ライトニングに対し優位に戦うことができた。

 結果、ライトニング88機が撃墜され、

 海燕14機、隼V型10機が撃墜される。

 山頂の鉄塔が破壊され、アメリカは作戦成功だと確認する。

 ガダルカナルの飛行場に海燕が着陸する。

 「撃墜されたのは24機か」

 「鉄塔を作り直さないと」

 「ただの鉄塔なのにレーダーと思うのだろうな」

 「イギリスのチェーンホーム(CH)ステーションズを真似して作るから」

 「過剰反応しているんですよ」

 「ガダルカナルでバトルオブブリテンをやられたら困るでしょうから」

 「本当は、近くの島に監視所を置いたり、漁船を使っているんだけどな」

 「それでも、不安になるのでは?」

 「しかし、本物のレーダーを配備したいな」

 「100kmくらいなら何とか、わかるようですが・・・・」

 「100kmか。2700mの山頂にまで、もって行くんだ」

 「探知距離は300kmくらい欲しいな」

 「とりあえず、飛行場を爆撃されるより良いですから鉄塔を作り直しましょう」

 「そうだな」

  

  

 ジブラルタル要塞

 要塞はイギリス戦艦の艦砲射撃で大打撃を受けていた。

 振動は地下施設にも伝わり、

 落ちる埃で気管支炎を起こしそうになった。

 ドイツ軍将校たちが不安そうに天井を見上げる。

 「激しいな」

 「戦艦の艦砲射撃だからな」

 「次に来たときは、最後かもしれないな」

 「同じ手は、通用しないから他の方法を考えないと」

 「スペイン領のあれは?」

 「スペインもジブラルタル海峡に大砲を配備したから、イギリス海軍も用心するんじゃないか」

 「大砲を置くには良い口実だよ。たぶん、警戒するだろうな」

 「だけど、北アフリカ対岸のアメリカ航空戦力が多過ぎる」

 「航空戦でMe262が押し切られるなんて」

 「航空戦は数だからな」

 「ドイツ本土爆撃を後回しで」

 「北アフリカへの護送船団も損害を省みずやられたら持たないだろう」

 「Uボートが根性見せていたらジブラルタルは、もっと持ったと思うね」

 「もった方なんじゃないか」

 「Uボート隊は戦果を上げたとか言ってたぞ」

  

  

 総理官邸

 総理に泣きながら軍の予算を要求する将校がいた。

 「・・・陛下の御為と機甲師団の整備を要求したく、ここに参上いたしました」

 予算編成は、既に終わっていた。

 軍官僚も、財界も、大陸鉄道と揚子江経済圏に目を奪われ、

 なんとなく、軍拡に気乗りせず。

 大陸鉄道と揚子江経済圏も、元を取るには一定以上の投資が求められる。

 この二つを維持できるなら、日本経済は再建できる可能性を秘めていた。

 軍に投資しても掛け捨てで回収できない、

 民への投資は再生産も含め回収の見込みがあった。

 負けてしまうと元の木阿弥でも、

 負けなければ日本経済の再建は可能になった。

 「んん・・・あれだ・・・機甲師団のことは知っておるよ」

 「電撃戦は優れた戦術だ」

 「では総理。機甲師団を・・・・」

 「んん・・・そうでは、あるが・・・」

 「現状は治安維持用の戦車と航空戦力が拡充が求められておるのでな」

 「総理、民間割り当てのトン数があるではありませんか」

 「・・・・・・・・」

 東條は窮する。

 「そ、そうではあるが・・・」

 「中国への投資など百害あって一利なし、無駄です」

 「あああ・・・」

 「しかし・・・・」

 「中国とは同盟国でもあるし、相互依存しあっているのでな」

 「中国など完全支配して資源を手に入れればいいのです」

 「い、いやぁ そ、それは君ぃ 侵略行為だよ」

 「現在、日本は危急存亡の危機」

 「そのような悠長なことを言っていられません」

 「し、しかしだよ、5億以上の民がいる中国を支配するなど、土台無理だろう」

 「それに戦いながら大陸鉄道を維持することなどできんよ」

 「揚子江経済圏もだ」

 「どうしても漢民族の協力がいる」

 「ですが総理。アメリカ軍が上陸してくれば必ず機甲師団は必要になります」

 「んん・・・」

 「そうでは、あるが・・・・」

 「防潜網なども仕掛けているし、簡単には上陸できないと思うが・・・」

 「スマトラ島、ジャワ島に上陸してくる可能性があります」

 「あそこには海峡を除いて仕掛けられていません」

 「んんん・・・・」

 「しかし・・・・」

 「総理! ご決断を・・」

 「」

 「」

 

 

 

 赤レンガの住人たち

 出るのは、ため息。

 「新規の華寇軍の準備は?」

 「一網打尽にするのは、あれやこれや、根回しが要るからね」

 「だけどさぁ 華寇なんて近代戦といえないよ」

 「アメリカと、まともにやりあっても押し潰されちゃうよ」

 「まじめに戦争するヤツが馬鹿なんだよ」

 「漢民族と朝鮮民族も怒っているんじゃないか」

 「でも、本音は人減らしで喜んでいたりして」

 「基本的に捕虜と犯罪者だしね」

 「それに大国アメリカを侵略できて誇りに思っているんじゃないか」

 「俺たちも、やったぞ、って」

 「一石四鳥くらいありそうだな」

 「護送船団を襲撃するより楽だと思うけど」

 「上陸させられる方は、そう思っていないかも」

 「いや、白人女性とやれるんなら命懸けとか」

 「良心が痛むね。もちろん、白人女性に・・・」

 「日本人が、やっていなくても日本の品性が問われるよ」

 「まともに太平洋戦争できないのか?」

 「無理」

 「もう、なに言っても悪党の言い逃れだね」

 「まともに艦隊も動かせないなんて大陸に深入りし過ぎなんだよ」

 「中途半端にやっても回収できないだろう」

 「あそこまでやったら確信犯」

 「でも華寇作戦で前線の圧力は低下しているよ。空襲も減ってるし」

 「華寇狩りで、それどころじゃないとか」

 「そりゃ 海岸線100km単位で飛行場と中隊を配備させられたら連合国だって苦しいよ」

 「華寇作戦は費用対効果で良いかもしれないけど」

 「ドイツにニッケルを送っても効果あるの?」

 「特殊鋼の希少金属率は5パーセントくらいだろう」

 「仮に500トン送ったら10000トンの特殊鋼が造れる」

 「70トンのタイガー戦車で使うとしたら140両分かな」

 「日本の場合、兵器より工作機械で使いたいね」

 「日本産業は、現場が酷すぎる」

 「ドイツの技術者と職人任せでラインを立て直すしかないよ」

 「ドイツ人自体は不器用なんだがな」

 「不器用だから誰でも使えるように根っ子に金をかけて規格を揃えてしまうんだよ」

 「日本人は、器用だから根っ子で手を抜いて枝葉で苦労する」

 「日本って、やることなすこと、無理、ムラ、無駄の小手先ばかりのオンパレードだね」

 「工作機械より軍艦に金をかけているってか」

 「わかっちゃいるけど軍部に金かけないと、お飯の食い上げだよ」

 「一度、軍縮して産業を底上げしないと・・・・」

 「うん、総論で賛成だよ。各論で反対続出だろうけど・・・・」

 「だいたい貧しいから凶暴になっていくんだよ」

 「だけど、お金持ちのボンボンじゃ 腑抜けになりそうだ」

 「死ぬのを恐れて、銃を持って撃ち合いとか、できなくなるよね」

 「それは、ありそうだけど、もっと社会基盤にお金をかけないと」

 「ボロボロ壊れる工作機械で風船爆弾とか、華寇作戦とか、防潜網とか、泣けてくるよ」

 「・・・そういえば、ラインを含めた、精鋭部隊の編成だけど・・・」

 「却下。皺寄せで、ほかが、飛べなくなる」

 「自分の部隊とか、自分の手柄しか、考えられない戦闘軍人が多いから・・・・」

 「ほかの部隊が皺寄せで事故で墜落しても鼻高々」

 「自画自賛で手柄自慢」

 「皺寄せされた航空部隊が墜落しても知らん振りするからな」

 「あはは・・・・」

 「戦略眼とはいかなくても、戦術眼くらいは、欲しいね」

 「でもさ。そういうのに限って数学者肌の軍人を嫌うんだよな」

 「一生懸命にやっているのは、わかるんだけどね」

 「前線主義が強いからね。一番槍とか」

 「そりゃ 血を流している人間は敬意を評するけど、戦略まで狂わされるのは困るよ」

 「そう、そう、戦力比、考えないでノコノコ行かれても、こっちが困るというか」

 「やっぱり、軍縮しかないんだよな」

 「本当に装備を員数で割ったら、泣くよ」

 「実は、農民兵に毛が生えているだけ、とか」

 「もう、心で、泣いているよ」

  

  


 月夜裏 野々香です。

 東条英機、当時の日本軍では標準な戦略的思考の持ち主な気がします。

 もっと酷い軍人が大半を占めていたので彼以上の戦略眼の持ち主は殺されそう。

     

 鬼畜非道な華寇戦術がオーストラリア・ニュージーランドを苦境に追い込みます。

 日本が悪党になりきれるかで、太平洋戦争の情勢も変化していきそうです。

   

 ジブラルタルの無力化が進むと、地中海からのイタリア攻撃が始まり。

 ソ連の冬季明けの侵攻と重なると。ドイツ・イタリアは苦戦するかもです。

  

 この頃、アメリカから捕獲したレーダーと、

 ドイツから入手したドイツ軍射撃用レーダーウルツブルグを陸軍主導で開発。

 タキ1号、タキ2号、タチ号など、

 基地配備、艦船配備、機上配備が進んでいるようです。

 仮に複製に成功しても、レーダー技術では、負けそうです。

  

  

 工作機械の国産自給率は、普通工作機械96% 特殊工作機械は44%

 陸軍主導で規格統合のプラス分を足して。

 ストック分を引いていくと工作機械はボチボチ危険な状態です。

 戦記は、史実よりは、ちょっとマシかもです。

 しかし、大陸鉄道の権益で工業製品の増産。

 工作機械の消耗率も増加でしょうか。

  

 

   

 

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第19話 1943/12 『狂犬じゃあるまいし』
第20話 1944/01 『もう、心で、泣いているよ』
第21話 1944/02 『面従腹背ある』