月夜裏 野々香 小説の部屋

   

仮想戦記 『青白き炎のままに』

   

 

第22話 1944年03月 『ツルハシとクワ』

 呉

 空母大鳳が完成し、

 第二機動部隊(大鳳、赤城、加賀)が編成される。

 出来立てほやほやの艦橋は、潮風と混ざって新鮮なペンキの匂いがする。

 「実に素晴らしい空母だね」

 「艦載機が少ないのが問題かな」

 「装甲板を飛行甲板に張ったからでしょう」

 「攻撃力を減らして、というのは、空母としての質が問われそうだな」

 「継戦能力の高さは、あるでしょう」

 「しかし、最後の空母だ」

 「結局、瑞鶴型も、雲龍型も建造無しだと寂しいな」

 「予算。陸軍に取られてしまいましたからね」

 「鉄道予算が膨れ上がってますよ」

 「あの欲ボケのバカどもが」

 「なんだかんだと御託を言いやがって見境なく利権にしがみ付いているだけじゃないか」

 「鉄道敷いてもアメリカに勝てないんですがね」

 「風船爆弾でもだ」

 「まじめに戦争する気がないんでしょうね」

 「ドイツを当てにしているんだろうな。他力本願どもが」

 「連合軍は、ジブラルタル占領で巻き返しているんじゃないんですか」

 「ドイツは、輸送船もたくさん沈めたそうですよ」

 「一時的にだろう」

 「それでも一息かもしれないがな」

 「冬季明けの攻勢で欧州戦線がどう動くか」

 「ドイツが負ければソ連の満州侵攻もありえますよ」

 「厳しいな、いまの陸軍は利権まみれで腑抜けだよ」

 「海軍を犠牲にして陸軍は越え太ってますね」

 「腹立つな・・・・」

 「新規開発も進んでいないですし」

  

  

 ドイツ領フランス ボルド港

 生ゴム、錫、モリブデン、ボーキサイト等の物資が降ろされ、

 伊35に機械部品などの物資が積み込まれていく、

 日本まで、およそ3ヶ月の旅になるか。

 喜望峰沖で愛国丸と合流できれば、そのまま、戦略物資と燃料を積み込み、

 トンボ帰りもあった。

 工業原材料を満載した愛国丸を喜望峰沖に配置し、

 日独伊潜水艦によるピストン輸送が行われる。

 大型飛行艇による連絡空路もあるが潜水艦も行われている。

 「・・・戦略資源の代わりは、設計図や機材ばかりか」

 「ドイツ人技術者もです」

 「ハインケル系か」

 「日本の工場をドイツ人に任せるそうですよ」

 「ドイツも技術者と熟練工を・・・気前がいいな」

 「戦略資源が欲しいからでしょう」

 「それと日本にソビエトの背後を突いて欲しいと考えているのでは?」

 「日本は、まともな工作機械が欲しいよ」

 「ソビエトとの戦争は、いやだけどね」

 「確かに」

 「しかし、意外にすんなり来れた。帰還もすんなり行けばいいが」

 「愛国丸に合流さえできれば燃料を補給して早く進めますからね」

 「それと、ジブラルタルでドイツ軍が抵抗していたからでしょう」

 「たぶん、今頃は、浅間丸と交替している頃だろう」

 「米英海軍の掃討作戦が始まると帰りは、危なくなりそうです」

 「豪州に軍艦を貼り付けているから、そんなに余裕があるかどうか」

 イタリア大型潜水艦が出航していく、

 浅間丸と合流できるか。

 それとも、そのまま、日本に向かうか、わからなかった。

 ドイツも、イタリアも戦略資源を満載した輸送船が喜望峰沖を遊弋しているなら、

 出かけやすいのだろう。

 日独伊連絡は、細いながらも行われていた。

 

   

 

 ビルマ戦線

 ダッカ イギリス側拠点

 インドへの輸送はジブラルタルが占領されてから喜望峰経由となり、

 輸送費も被害も増加していた。

 それでもアメリカ軍の支援物資によってビルマ戦線は支えられている。

 滑走路にライトニング戦闘機がヨタヨタと着陸する、

 管制塔

 イギリス軍 ウィリアム・スリム中将は、撫すくれる。

 「・・・穴だらけだな」

 「7.7mmですね」

 「迎撃は、隼V型と海燕が多かったようです」

 「鍾馗と飛燕は、随分と減ったようだ」

 「日本は、生産を集中しないと数を揃えられなくなっているのでしょう」

 「柔軟性を捨てて数を取ったか。自分でもそうするだろうな」

 「大陸投資を優先して仕方なく取捨選択でしょう」

 「日本は、大陸の支配圏を強化しているのか」

 「調べた限りだと日中同盟は油断できない味方だそうです」

 「ふっ 怖いな」

 「日本は、朝鮮人を強制的に揚子江へ移民」

 「漢民族と朝鮮民族・少数民族の軋轢を利用して日本の国益を守らせるつもりです」

 「どこかの国がやっている、えげつない手法だ」

 「問題は、成功するかですね」

 「日本人は、朝鮮人を同化している」

 「そこまで、合理的になれないと思ったがな」

 「日本人も利権拡大で見境なくなるのでは?」

 「まともな、マザーマシンもないのによくやるものだ」

 「ドイツから技術者と部品の供給を受けているそうですが」

 「日本産業の底上げか、戦争という浪費を前にすれば小さな蓄積だ。間に合わんよ」

 「ですが数で優勢を保てないのが厳しいですね」

 「だが、攻勢をかけねばならない」

 「日本の戦力を消耗させて産業を疲弊させなければならない」

 「年月をかけると大陸資源、ドイツからの技術的な供与で、こっちが不利になっていく」

 「日本軍も、それを計算して大陸鉄道に投資しているようです」

 「だろうな」

 「しかし、いまの戦力比では満足な攻勢をかけられない」

 「こちらの戦車は日本戦車に比べて強力です」

 「しかし、日本軍は河川や堀を防衛線にしています」

 「戦車の上面装甲や底を狙われると、さすがに厳しいな」

 「それに中国軍の豪州上陸は、インド兵にも影響を与えています」

 「独立運動か?」

 「はい」

 「独立運動は日本をねじ伏せないと収まらないだろうな」

 「シンガポールとインドネシア、フィリピンが日本軍に占領された時点で」

 「白人世界は威信を失っています」

 「だが利権は残っている」

 「それまで奪われるわけにいかん」

 「日本人が、いなければ白人は神の代理人だったのですが・・・・残念です」

 「忌々しい」

 「神に逆らった報いで日本人を殲滅してやる」

 「それは戦力が揃ってからに」

 「わかっておる」

 「しかし、こうも消耗戦を強いられるとは・・・」

  

  

 ビルマ戦線 日本側の拠点 ラングーン

 小銃の充足率さえ足りない日本軍。

 インド独立解放軍やビルマ軍に売っても底が知れている。

 それでも大陸鉄道が開通すると徐々に小銃が振り分けられていく。

 前線では戦車より小銃と言えなくもない。

 しかし、アメリカやイギリス製の戦車は、強力すぎた。

 身を守る有効な障壁は川であり。急ごしらえの堀だった。

 小銃を持っていない者は大戦車用の堀を造成していく。

 日本軍にとってはシャベルも貴重な戦略兵器といえる。

 「本部にツルハシと、シャベル。クワ、一輪車」

 「そして、トラックの追加と補充だ」

 「はい、ですが、すぐに壊れますね」

 「中国人や現地人も総動員でやっている」

 「本当は、もっと資材が欲しいが大陸鉄道の建設で、こっちまで届かないようだ」

 「しかも質が悪いから直ぐ壊れる」

 「これでは、数より質のような気がしますね」

 「もっと、ニッケルとか、タングステンを使って軽く強く作ってもらわないと持って来るだけ無駄ですよ」

 「とりあえず、この、くず鉄を後方に送ってやれ。もう役に立たない」

 山のように積み上げられる壊れたツルハシとシャベル。一輪車。

 これらは、貴重な鉄資源として、後方の集積所へと送られていく。

 「・・・・・・・・」 ため息

 「・・・数をきちんと、確認しろよ」

 「こいつらドンパチのドサクサにシャベルを自分のものにする連中だからな」

 「はい」

 「これじゃ、インパール作戦は不可能だな」

 「インド独立解放軍は、もう少し待ってもらえるように伝えます」

 「仕方がない。参謀本部は大陸の利権に目が眩んでいる」

 「こっちには動くなと勅命を出してきた」

 「前線の南京中国軍は?」

 「報告の通り戦友を盾にしても生き残ろうという雰囲気が強く」

 「防衛線の構築は、ともかく攻勢は無理ですね」

 「ちっ!」

 中国大陸鉄道の利権を守る為に投入された中国人は多く。

 人海戦術で堀を作っていくとそれだけ、

 戦車が侵入しにくく守りやすい。

 そして、日本陸軍は大陸利権に目が眩み、

 ビルマ戦線での攻勢を禁止させてしまう。

  

 

 戦線の木陰

 ディーゼルを動かすとエンジンの騒音で位置が知られる。

 騒音で位置がばれると逃げられるか先制攻撃を受ける。

 これでは、車体を標的に向けることもできない。

 待ち伏せ用戦車として致命的で、欠陥戦車といえた。

 というか、馬力が小さ過ぎて、これが限界なのだ。

 砲身の先に、たまたま標的が来るのを待つのみ、

 もっとも、元々の使い方が砲兵で、火力支援としての自走砲であり、

 狙って撃つといった、使い方が間違っていると言える。

 そして、たまたま、川向こうにそれらしい影・・・

 車高の低さが幸いして、3式対戦車自走砲は、発見されていない。

 「・・・ちょい。右だぞ。どうする」

 「エンジンをかけると見つかる」

 「この3式自走砲なら、敵の弾を弾くんじゃないか。川向こうだし」

 「砲弾を弾けても俺たちはやばい」

 「・・・ぬかるんでいるから。木を梃子にして、みんなで押せば、少し動かないか」

 「17トンもあるんだから。重いよ」

 「接合部が捩れて折れたりして」

 「砲弾は、1発だけ残して降ろしてしまえば、少しは軽くなる」

 「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 密林の中、砲声が轟き、

 60口径76.2mm砲弾は、見事にバレンタイン戦車を破壊してしまう。

 おぉおおおおお〜!!!  感涙

 「・・・これが3式対戦車自走砲か」

 「すげぇ〜 海軍砲は違うな〜」

 「感動だよ〜」

 「やっぱり、本物の戦車は、違うな」

 「偽の張りぼて戦車じゃ 目くらまし・・・」

 「もっと送ってこないかな」

 「大陸鉄道ができたから、これから送ってくるんじゃないか」

 「おーし、勝てるぞぉ〜」

 「「「「おお〜!!!」」」」

 現実は、そう甘くない。

 後方に要衝に配置する火力支援の対戦車自走砲の使い方を知らない将兵もいたりする。

  

  

 ジブラルタル要塞が爆炎と噴煙に包まれ、更地にさせられていた。

 海岸に乗り上げられたイタリア海軍の艦船は流れ弾で屑鉄の山と化していた。

 ネルソンが砲身を換装したのは、何度目だろうか。

 イギリス海軍が、これほど無駄な消耗を強いられた事はない、

 ネルソン 艦橋

 「・・・提督。ラミリーズが潜水艦の攻撃により被雷。アルジェ港に帰還するそうです」

 「ふ あと少しで落ちるものを・・・」

 「・・・提督。ジブラルタル海峡の掃海を完了しました」

 「ラミリーズに帰還は、ポーツマス港に向かうように伝えろ」

 「はっ!」

 「これで、ようやく地中海への補給ができる」

 「ジブラルタルは?」

 「もう要塞にはならんよ。スペインに帰属させることで話しがついている」

 「残念です」

 「イギリスの地中海支配も、これで終わりだな」

 「斜陽の大英帝国ですかね」

 「日本人のせいだ。もう、植民地の押さえも利かない」

 「北アフリカ側で拠点が欲しいですね」

 「アメリカは、モロッコから高い買い物をするかもしれないな」

 「イギリスも便乗できれば良いが」

 「地中海をイタリアとドイツの好きにさせてしまうのは、危険ですからね」

 「ここが終わったら大陸反攻。日本に向かうのは、その後になりそうだな」

 「日本は、無法者の中国人と朝鮮人を潜水艦で豪州全域に送り込んでいます」

 「いまは、ほぼ鎮圧できたようです」

 「反日勢力などと、うそぶいている不満分子か」

 「日本と中国は、不逞の輩を厄介払いできて好都合でしょう」

 「好都合どころか、反日勢力を対米戦に使うのだから、一石二鳥以上だな」

 「日本は、上陸させた不満分子を英雄に仕立て、中国人と朝鮮人を反欧米で固める」

 「事実上、日本はアジアの盟主ですね」

 「ふん! 何が王道だ。覇道そのままだ」

 「むしろ、魔道」

 「あはははは」

 「大陸の資源に目が眩んだのでしょう。本性を現したということです」

 「日本の工業力は、大陸資源を利用して強靭になるのでは?」

 「ふ 間に合うものか、中身を固める前にボロボロの張子の虎を踏み潰してやる」

 「近代科学技術の99パーセントは、欧米諸国ですからね」

 「神の寵愛を受けた国の怒りを恩知らずな日本人に教えてやる」

 ドイツ帝国はジブラルタルが陥落する前に、

 ジブラルタルをスペインに帰属させることを宣言。

 イギリスも同様にジブラルタルをスペインに返還すると宣言する。

 そして、ジブラルタルは、スペイン軍によって接収される。

  

  

 日本の某工場

 四式空冷V型12気筒ディーゼル(400馬力 / 1800rpm)の始動テスト

 響き渡る騒音。

 数人の技術者

 「いいねぇ・・・さすがドイツの設計を流用したディーゼルエンジン」

 「騒音が欠点だね」

 「ていうか、シリンダーくらい、まともにつくろうよ。ピストンのガス漏れだけは、防ぎたいね」

 「んん・・・オイルといい。ベアリングといい。あれも、これも腹が立つ・・・・」

 「400馬力なんだから、エンジンを防音材で覆うとか」

 「防音ってゴム? 熱で溶けるとか、エンジンが壊れそう」

 「ゴムは駄目でも陶器とかは、保温で良いんじゃないか」

 「寒冷地では、エンジンのかかりが悪いし」

 「陶器は、振動で割れそうだな」

 「開発中のB29爆撃機は、陶器って、聞いたぞ」

 「セラミック? 材質が違うんじゃないか」

 「んん・・・じゃ 硬貨を陶器にするとかは?」

 「あれも、なさそうだな」

 「なんか、見通し暗いな」

 「ツルハシやクワを作ってくれ、と言ってこないだけでも救いかな」

 「あはは・・・冗談だろう。せめてブルドーザーにしてくれよ」

 「4式戦車は、どうしよう」

 「400馬力でも17トンは変わらないんじゃないか」

 「橋渡れなくなると困るし、輸送できなくなる」

 「大陸鉄道なら30トンくらい大丈夫だろう」

 「造りてぇ 30トン戦車。25トンでも我慢するぞ」

 「そりゃ、海軍の技術を流用すれば並みの戦車くらいできるけど国内移動が駄目だよ。船も」

 「それに装甲が強くなると工作機械の寿命が・・・・」

 「・・・・キャタピラの幅を大きくするしかない」

 「足回りに重量を取られるよ」

 「重さを分散しないと舗装道路が割れる」

 「・・・・こうなったら、ゼロ戦仕様のプーマ改で・・・・」

 「ていうか、工作機械をもっと良い物にしろよ」

 「それに前線で一番欲しがっているのは、シャベル、ツルハシ。トラック、ブルドーザー」

 「土木事務所か!!」

 「軍手も」

 「・・・戦争以前だよ」

 「近代化したいのなら、石炭と鉄鉱石を掘らないと」

 「泣きが入るな」

 「近代戦争ができるような国じゃないよ」

 「せめて、まともな、工作機械がないと」

 「ニッケルとタングステンが中国から入ってきているからドイツ人技術者と試行錯誤中だよ」

 「成果が出るのは、いつだ」

 「工作機械の材質で表面化するのは、数年先かな」

 「製品の材質で確認できるのは、さらにあと」

 「それまで日本がもたねぇ・・・マザーマシンで兵器を作りそうだな」

 「いや、今度は、利権が絡んで変わってきたらしい」

 「量が多いから1パーセントでも効率が良くなれば、一財産になる」

 「欲に目が眩んでるのかよ」

 「あ、ありそうだな」

 「無理、ムラ、無駄の塊だったのが、今になって経済効率か。調子の良い連中だ」

 「利権の拡大で聡い者が用いられ始めたのなら、やれやれだな」

 「権威主義と派閥で押さえ込まれても、市場が広がれば拝金主義の巻き返しで状況も変わるだろう」

 「能力のあるやつは、元札もって大陸で巻き返しか・・・・」

 「権威と拝金は、使う力が違っても己の欲望を突っ張らせて弱者を踏み躙るからね」

 「少なくとも才能を生かす道が、もう一つ増えるのは素晴らしいことだよ」

 「しかしな、どっちでも良いけど、いい加減、正直になろうぜ。歩留まりが酷すぎるよ」

 「というか、ハンドメイドがますます強くなる」

 「総試作品だな」

 「パズルやってんじゃないよ」

 「マザーマシンの磨耗でエンジンのような精密部品はヤスリで手を加えないと、まともに機能しない」

 「規格統合で一時的には良かったんだがな」

 「新型エンジンは駄目かもな」

 「稼働率を維持しようと思えばね・・・・・」

 ドイツが爆撃から工場を守るために分散していった。

 日本は、歩留まりを維持する為、工場を集中させる。

 数が多ければ、相性の良い部品同士を組み合わせられる利点があった。

 

  

 地中海上空

 B17爆撃機が海面すれすれを北上していた。

 目的は、爆撃ではない。

 不意に空襲警報が響く、

 照明が撃ち上げられ、機体に向かって砲弾と曳航弾が収束してくる。

 海岸線が迫るにつれて機関砲が増えていく、

 激しい対空砲火は要衝の証拠だった。

 オーバースロットルで機体を上昇させる。

 人工的な突起物を縫うように照明弾を投下し、最悪の空域を離脱する。

 要衝を抜けると対空砲火は届かない。

 「・・・・・ふぅ〜 写したか?」

 ドイツの至宝ライカカメラは敵も味方も公平に写した。

 「ええ、ばっちりです。口頭でも十分な報告ができますよ」

 「ああ、ダンケルクが解体されている。間違えようがない」

 「どういうことですかね」

 「ドイツが地中海艦隊を諦めたか」

 「ノルウェーのストラスブールを修復する為だろう」

 「自沈した艦艇を浮上させていたようですが」

 「他の艦艇は、解体か、修復か、わかりにくいですね」

 「ドイツも、いよいよ、鋼材不足になったかな」

 「んん・・・鉄と石炭だけは、ある国だからな・・・」

 「やはり、希少金属が少ないということでしょうか」

 「だろうな」

 「結局、戦争は前線に何トンの鋼を注ぎ込めるか、でもある」

  

  

 揚子江 街道。

 きゃ〜!!

 悲鳴が聞こえる。

 ここで、もっとも重要なことは綺麗な声の女性であること、

 これをクリアしなければ見過ごされてしまう。

 そして、それをクリアした後、一目で、かわいい女性であると確認できること。

 逃げる女性が転ぶと数人の男たちがいやらしく笑う。

 一人の男が割って入る。

 「「「どけ、ある!」」」

 「断る」

 助けるに値するだけの条件が全てクリアされていた。

 「ぅぅ・・・・に、日本人ある・・・」

 外見上の特徴は、あまりない。

 しかし、雰囲気で日本人とわかる。

 揚子江の少数派、しかも、一人。

 しかし、相手が日本人だと、警戒する。

 「大丈夫か?」

 「・・・はい、大丈夫ある」

 「じゃ 邪魔するなある」

 「理由を聞こうか」

 柔道の経験があった。

 こっちで拳法ができる者もいるが見たところ大丈夫のように思える。

 「と、土地のことで、は、話しをしたかったある」

 「うそよ! うちの家の土地を狙っているのよ」

 「・・・お嬢さんは、土地の話しをしたくないそうだ」

 「「「「・・・・・・・」」」」

 4対1で勝てると思ったのか、

 中国人は、半歩、出たとき。

 美人は味方を作りやすい。

 いつの間にか、男が、もう一人。

 女性をかばう。

 「・・・・・・・・・・・・・」

 「い・・・行くある」

 4人の中国人が逃げて行く、

 「あ、ありがとう、ある」

 「良かったね」

 「・・・胸くそが悪いニダ」

 「朝鮮人か?」

 「俺も、土地を取られて朝鮮から追い出されたニダ」

 「・・・・・・・」

 「あ、あのう、二人に、お礼をしたいある。家に来て欲しいある」

 日本人は、秋津ヨシキ。

 朝鮮人は、孫ヘギョ。

 中国女性は、鈴ミンメイ

 中国女性の家は、小高い丘の上にあった。

 年寄りの父とソンジョと兄のアンチンが農作業から戻ってくる。

 「・・・ありがとうある。妹の恩人ある」

 「朝鮮人として当然ニダ」

 「大事にならなくて良かった」

 貧しくもなく、豊かでもない。簡単な飲茶でもてなされる。

 「先祖の土地ある。墓もずっと守ってきたある」

 「この土地を狙っているんだ」

 「そうある。承家の者たちが、ここに道を通したがってるある」

 「どうして?」

 「むかしからある」

 「それに、この土地を通れば新しくできた駅に近くなって便利ある」

 「ちっ! 日本人ニダ」

 「・・・・・・・・・・」

 「違うある。買いたがっているのは、朝鮮人の金家ある」

 「・・・・・・・・・」

 「ん・・・なんで、朝鮮人が、この道を通したがるんだ」

 「白菜畑ある。この道を通して白菜を鉄道に載せたがっているある」

 承家の白菜畑が丘の向こうに広がっている。

 「キムチか・・・」

 「半島から追われてきた朝鮮人が何で、そんな恥ずかしいことをするニダ!」

 「許せないニダ!」

 「だから、白菜の・・・」

 「そんなのどうでもいいニダ!」

 「長年住んでいる先祖の土地から追い立てる。許せないニダ!」

 「高く売ったら良いんじゃないか?」

 「何を言うニダ!」

 「墓を道にして踏み荒らすなんて、日本人は先祖崇拝の気持ちがないニダ!」

 「でも条件次第じゃ・・・」

 「許せないニダ!!」

 「駅をあんなところに造るのが悪いニダ。日本人が悪いニダ」

 「・・・・・」

 「承家の者たちが白菜を捌きたくて」

 「日本人に賄賂を渡して駅をあそこに作ってもらったある」

 「し、しょうがないな」  (`-`;) 苦笑…

 「中国人も悪いニダ!」  ヽ<`Д´>ノ ウガニダー!!

 「でも買おうとしているのは朝鮮人じゃ・・・」

 「違うニダ! そんなことはないニダ!」 ヾ<`□´>ノ〃 ウガニダー

 駅の方から、数人の男たちがやってくる。

 そして ・・・・・・

 「いい加減に、土地を売るニダ」

 「何を言うニダ」

 「半島から追い出されていたおまえたちが、やっては、いけないニダ!!」

 「こっちには日本人が付いているニダ。本物の日本人ニダ!」

 「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」

 「こ、こっちにも、日本人がいるニダ! 本物ニダ!」

 「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」

 「う、うるさいニダ! 関係ない人間は、消えるニダ!」

 「いやニダ! おまえたちは間違っているニダ!」

 日本人、中国人、朝鮮人が入り乱れて、口論になっていく。

 激情、支離滅裂、朝鮮人同士。 <ノ゚ο゚>ノ オオオオォォォォニダーーーッ!! L<゚ο゚L>

 策謀巡らせる中国人同士。   (×`д´)у―~~   ムムムムある〜   (`ε´メ)

 白ける日本人同士        ┐(-_- )┌      やれやれ      ヽ(´―`)ノ

 「・・・なんで、おまえ、朝鮮人に雇われているんだよ」 秋津ヨシキ

 「日本人がいると伯が付いて良いんだと・・・」 陣内コウジ

 「なるほど・・・」

 「日本人が一人でもいると、中国人が手を出し難くなるらしい」

 「ふ〜ん 朝鮮人だけでやろうとすると揚子江に浮かびそうだな。用心棒?」

 「そんなとこかな。で、おまえは何で邪魔しているんだよ」

 「んん・・・・・」  (´〜`ゞ ポリポリ

 「女かよ!」

 「えへへへ」

 「しまらねぇな・・・」

 論争は、夕暮れまで続く。

  

 

 

 上空を旋回するヘルキャット群が勝ち誇ったように白い星を見せつけていた。

 アメリカの掃海艇が日本の仕掛けた防潜網、捕獲網、機雷源を片付けていく、

 時折、日本の潜水艦が出没するのか、

 アメリカ駆逐艦が爆雷を投下し、水柱を上げていた。

 ミッドウェー島に土木機械、建設機械が降ろされ、

 ブルドーザーが廃材を片付けて整地していく、

 白レンガの住人たち in ミッドウェー

 「ようやく、ミッドウェーを回復したか」

 「エセックス型2隻と交換だよ」

 「戦艦大和は?」

 「・・・内部から500kg爆弾10発を爆発させている」

 「橋梁が破壊されてるから補強しない限り。どうにもならんよ」

 「基地再建は時間がかかりそうだな」

 「だが、ここを押さえておけば、ハワイは、やられることはないだろう」

 「どうかな。まだ、アッツとキスカが、日本に押さえられている」

 「それにインドネシアをやるには、まだ遠過ぎるな」

 「日本の策源地の直接侵攻は本決まりじゃないだろう」

 「決まってはいないがね。ミットウェー回復は、理由になる」

 「だが白人が、もう一度、東南アジアに上陸すると反白で、黄色人種が結束する」

 「反日離反工作が利かなくなるぞ」

 「日本さえ潰してしまえば、他の黄色人種など、どうにでもなるのだが・・・」

 「しかし、日本は、こんな、大戦艦を建造できるのだからな・・・」

 将校たちが見上げる。

 「・・・日本が遠く感じるな」

 「ふん!」

 「まともなエンジンも製造できない二流の国だよ」

 「二流でも強国だよ。簡単に、ねじ伏せられんよ」

 「とりあえず。ミッドウェーを再建してハワイの防波堤にしよう」

 「まずは、それからだろうな」

 「北太平洋、中部太平洋、南太平洋、インド洋の侵攻ルート」

 「どれが効率的か検討するしかないな」

 「やはり、艦船の修復を考えれば、ハワイの海軍工廠を使うしかなさそうだがな」

 「コロンボは不便か?」

 「イギリスが手放せば考えても良いがね」

 「世界の裏側に拠点があるのも便利だよ」

 「そりゃ そうだがね」

 

 


 月夜裏 野々香です。

 師団の比較だと、こりゃ駄目だ。というヤツでしょうか。

兵員 小銃 機銃 火砲(75mm)↓ 火砲(75mm)↑ 戦車 ジープ
日本師団 (最良) 0.757 0.313 0.357 027.3 0.143 0.174 0
アメリカ師団 (平均) 1 1 1 1 1 1 1

 お話しになりません。

 なぜ、最良の師団で比較するんでしょうか、

 比較するなら平均的な師団とでしょう。

 悲し過ぎます。

 平均だと惨め過ぎてお話しにならないのか。

 せめて小銃くらい持たせるべきだと思ったりします。

 手ぶらで前線をウロウロしていたのでしょうか。

 まず、突撃させては屠殺場です。

 アメリカ師団がまともに日本の師団にぶつかれば、鎧袖一触。

 あっという間に崩壊。

 敗走させてしまえるほどの戦力比です。

 一瞬、工兵師団かと思ったら、

 なんと日本で最良の充足率を誇る師団だそうです。

 そうだ。これは工兵師団と割り切ろう。それしかない。

 それほどまでして、年功序列式で師団長を振り分けなければならなかったのか、

 醜く肥大化した軍組織の姿な気がします。

 せめて、小銃の配分にあわせて師団編成すべき、

 因みに小銃の生産数だけだと充足率が足りなくなるというのが不思議。

 38式・224万丁。輸出100万丁。

 99式・250万丁以上

 輸送船と一緒に海に沈んだのか。

 1905年採用で、命数切れか。

 国内輸送さえ困難とか。

 部品が一個なくなり、半分以上、使い物にならなくなったとか。

 横流し・・・・

 ハンドメイド小銃しか作れないのに戦争してはいけません。

 この戦記では、輸送船の損失が少なく。充足率はもう少し良いかも。

  

  

 日本の工作機械は旋盤、フライス盤、ボール盤、

 平削盤上削盤、歯切盤、研磨盤とも、

 欧米の工作機械に対して劣勢。

 外国製マザーマシンは、磨耗・劣化しつつ朽ちていきそうです。

 

 

 因みに 『青白き炎のままに』 では、ツルハシ、クワ、シャベル、軍手の民生品も、

 重要な戦略物資と位置づけています。

  

  

 土地

 これは、他国の介入があっても、なくても、欲望に従って、よくある話しです。

 得で、生きる日本人。

 利で、生きる中国人。

 我で、生きる朝鮮人でしょうか。

 同じ利己的でも、微妙に違います。

 本当は、相互協力し合えれば、良いのですが難しく。

 利害関係が一致しても信用できず一時的なもの、

 ありえなさそうです。

 揚子江でも、元気で、ずるくて、したたかな朝鮮人かもです。

  

 

 

   

ランキングです ↓ よろしくです。

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第23話 1944/04 『熱情の行方』