月夜裏 野々香 小説の部屋

   

仮想戦記 『青白き炎のままに』

   

 

第31話 1944/12 『小さなことからコツコツと・・・』

 冬の東部戦線は、灰色に吹き荒び、全てのモノを凍らせていく。

 僅かな晴れ間でも白銀に包まれ寒さに凍えるように睨み合う。

 空襲も行われる。

 雪に埋もれた世界は侵攻作戦が不可能なため、

 練度維持を目的とした等閑な空襲に過ぎない。

 時折、それらしい、銃声が鳴り響き、鮮血が白銀を僅かに染める。

 砲声が試し撃ちとばかり轟いて積雪を吹き飛ばす。

 

 この時期、ローマからオデッサに向けて路線が増設されていく、

 線路が充実していれば前線への補給が増え、

 戦線の戦力を増強させることができた。

 イタリアは、北アフリカから追い出され、西ウクライナに権益を求める。

 列強最弱と言われても列強に違いなく、

 まともな武器があれば意気地を見せた。

 山がちなイタリア人にとって西ウクライナの平野は魅力的に見えた。

 ユーゴスラビアとルーマニアを通過するイタリア権益線は反発もあった。

 しかし、ソビエト軍に国土が凌辱されるよりマシであり、

 ルーマニアも西ウクライナの権益に目の色が変わる。

 ドイツ帝国は、最悪の事態(敗戦)を避けるため、

 同盟国に権益を委譲し、切り売りしていく、

 

 

 ベルリンの蒼空をMe262の編隊が駆け抜け、逃げるムスタングを追い詰め撃墜していく、

 フォッケウルフとメッサーシュミットが、

 バラバラに崩されたコンバットボックスに切り込んでいく。

 ベテランのパイロットがコンバットボックスの弾幕に突入し、

 B17爆撃機が撃墜されていく、

 2機のMe262が散り散りにされたムスタングの背後から機銃掃射し、撃墜していく、

 2機のMe262は、危険なコンバットボックスに突入することはない、

 金髪の女神アイリスと黒髪の魔女マイは、

 日本とドイツの新聞を賑わす、プロパガンダ用女性パイロットだった。

 2機のMe262戦闘機は、相互支援しつつ、

 ヨロヨロと逃げるムスタングやライトニングを撃墜していく、

 

 金髪の女神アイリスと黒髪マイの魔女の休息、

 「ドイツ本土は都市が瓦礫になっているというのに、フランスは爆撃が少ないのね」

 「アイリス。上陸したアメリカ軍は迫っているの?」

 「そうねぇ〜 ノルマンディーに上陸してから、しばらく止まっているみたいだけど」

 「フランス人が蜂起したりしないのかな」

 「フランス人はドイツ人も嫌いだけど。イギリス人とアメリカ人も嫌いなのよね」

 「好きな国民はいるの?」

 「さぁ〜 みんな歴史的に怨恨あるから」

 「アイリス。あれは?」

 お付きのゲシュタポがアイリスとマイに近付く、将兵を追い散らしていく、

 「イタリア将兵よ。この辺も最近増えたわね」

 「そう」

 「治安維持は、イタリア軍に手伝わせるから無節操になるわね」

 「そう」

 「見境無く声をかけてくるけど、マイ。気をつけないとポイ捨てよ」

 

    

 「やっぱり、ドイツ料理は、フランス料理に負けるわね」

 「ぅ・・・かたつむり・・・・」

 「いけるのよ」

 「こんなに肉があるなんて・・・」 泣き

 「マイ。日本じゃ なに食べているのよ」

 「すいとん・・・」

 「なにそれ?」

 「小麦粉の団子と野菜を煮込んだ料理」

 「それ、美味しいの?」

 「・・・・泣きたくなったわ」

 「ドイツも、似たようなものね」

 「食事が美味しい国って戦争に弱いのよ」

 

 西部戦線

 東部戦線に比べ、少し暖かい西部戦線も雪が降っていた。

 天候が悪いと空襲が減る。

 とはいえ、両軍とも安心できず、防寒も兼ね森の中に布陣する。

 アメリカ軍は送られてくる莫大な戦略物資で戦線を支え、

 攻勢の準備を着々と進めていた。

 イタリア軍が陣地を構築し、

 ドイツ軍が機動防御の分担で防衛線が構築されていく、

 そして、東部戦線から転用した部隊を増強していく、

 捕獲したT34戦車は修理改装しながら西部戦線へと送られ、

 4号戦車と並んで戦線を支えていた。

 ドイツ軍将兵たち

 「随分とT34戦車を捕獲したんだな」

 「普通は、手榴弾を投げ込んで車内を爆破する」

 「しかし、ソ連軍も包囲網から逃げるのに手榴弾を持って行ったらしい」

 「なるほど、使える戦車が残っていたわけか」

 「手榴弾を投げ入れても砲弾が無くて誘爆しないと意外と使える」

 「全部で500両くらいだそうだ」

 「2個機械化師団分か、そりゃ凄い」

 「放棄された部品も西部戦線に持ってきたらしい」

 「いまのところ修理も大丈夫だそうだ」

 「守勢に回るのも悪くないな」

 「というわけで、T34戦車は、もっと増えるかもしれないな」

 「それは助かるね」

 「フランス側の陣地も同じように従深陣地を構築している」

 「東部戦線と同じ手が使えれば良いな」

 「アメリカの航空戦力は航続力がある」

 「そして、強力だ。二番煎じが使えるかどうか」

 「期待はしないが、希望は持ちたいね」

 「どうせ攻勢に出るだけの戦力は無いのだろう」

 「ない。ジリ貧だ」

 「じゃ アメリカ軍の失敗待ち?」

 「イタリアやフランスに西ウクライナの利権を渡して、うまみが減っている」

 「もう少し東部戦線を縮小できればいいんだがな」

 「日本に工作機械を渡すからだ」

 「もっと送るかもしれないな」

 「はぁ〜」

 

 

 イギリス艦載機アベンジャー雷撃機が海面スレスレの低空をフィヨルドに向かって飛ぶ、

 天候の僅かな回復を利用して艦載機が出撃していく、

 通信管制で無線が使えず、僚機と手で合図し合う。

 

 イギリス機動部隊

   空母イラストリアス、ヴィクトリアス、インドミタブル、フォーミタブル。

 空母イラストリアス艦橋

 「・・・やっと波が収まったか」

 「あと数時間は快晴のはずです」

 「その後は、もう一度、ブリザードが来るはずです」

 「この時期は、そういうものだろう」

 「今度こそ、ティルピッツとシャルンホルストにとどめを刺さないと・・・」

 「ソビエト領から出撃させたランカスターは迎撃機に邪魔されて失敗したからな」

 「陸上側は、レーダーによって発見されやすいのでしょう」

 「ソビエト側にレーダーを設置しているとは意外でした」

 「戦艦を2隻も配備しているのだから戦闘機とレーダーくらい配備して置くだろう」

 「これが成功すれば良いのですが・・・・」

 「二隻とも沈めてイギリス機動部隊も豪州奪還に向かわないと」

 「オーストラリアが降伏したら目も当てられんよ」

 「奪還の為の戦力がないのが問題では?」

 「日中同盟で、インドも独立騒ぎで浮き足立っている」

 「インド独立運動に向かったら目も当てられんよ」

 「南アフリカも不穏な動きがあるそうだ」

 「白人対有色人種の構図は不味いですよ」

 「日中の離反工作をしないと・・・」

 「確か、中国の工業力を高めて、日中離反を計画しているそうだ」

 「どこまで進んでいるのか期待できんがな」

 「攻撃隊より入電! ティルピッツ、シャルンホルスト不在!」

 「なんだと〜!」

 「キングジョージ5世より入電」

 「後方8時方向に敵艦を発見」

 「ブリザードのから現れたそうです!!」

 「しまった!!」

 イギリス機動部隊がブリザードから出ると、

 全速で向かってくるティルピッツとシャルンホルストが見えた。

 イギリス機動部隊は、慌てて逃亡しなければならず。

 ティルピッツ、シャルンホルスト VS キングジョージ5世、ハウの戦艦同士の砲撃戦が始まる。

 キングジョージ5世、ハウは、空母を守るため不利な戦闘を強いられ。

 巡洋艦ノーフォーク、オリオン、エイジャックス、アリシューザと駆逐艦12隻は、

 戦艦攻撃と空母護衛に分かれる。

  

 キングジョージ5世 艦橋

 「空母を守れ!」

 「盾になるぞ。主砲を全てティルピッツに向けろ!」

 「なんということだ。吹雪の間に出撃していたのか」

 「デューク・オブ・ヨークとアンソンは?」

 「補給が終われば、こっちに来ると思いますが間に合わないかと」

 「レナウンは先行して、南アフリカに向かっている、不味いぞ」

 

 

 ティルピッツ 艦橋

 ニヤついた男たちが立っていた。

 「吹雪を抜けるとイギリス機動部隊だった・・・か・・・」

 「計算通りでしたね」

 「できれば、もう少し吹雪いてくれた方が良かった」

 「それでも、ついてたな。Uボートの報告通りだ」

 「やって、良いので?」

 「もう通商破壊戦は無理だ」

 「イギリス海軍に打撃を与えれば豪州回復が困難になる」

 「そちらの方がイギリスの戦争遂行を困難にするでしょうが・・・」

 「総統も、そう計算されたのだろう。水雷戦隊が邪魔だな」

 「副長、副砲以下は、そっちで、やってくれ」

 「はっ!」

 「水上機を可能な限りイギリス戦艦に近づけさせて、弾着観測をさせろ!」

 「はっ!」

 キングジョージ5世、ハウの砲撃は、ティルピッツに集中していく、

 シャルンホルストは、妨害する水雷戦隊を砲撃しながら空母を追撃を始めた。

  

 空母イラストリアス 艦橋

 艦橋は、通信、指示、確認、再確認の喧騒に包まれていた。

 「アベンジャーは、メッサーシュミットに追撃されています」

 「こっちに向かってきますが雷装のままだと航続力が足りなくなる恐れが」

 「かまわん、緊急事態だ。予備のアベンジャーも出撃させろ!」

 「戦闘機も出撃だ!」

 「敵艦の艦橋を機銃掃射させろ!」

 シャルンホルストの54.5口径283mm砲は、

 格下の艦艇を撃沈するのに実に手頃な大砲らしく、

 巡洋艦ノーフォークとオリオンに直撃させる、

 一度、爆発が起こると二度、三度と誘爆を繰り返す。

 「ちっ! やられたか」

 「空母が足かせになって、自由な戦闘行動が取れないようです」

 「全速で逃げるぞ」

 

 

 その頃、ティルピッツの主砲がキングジョージ5世に集中し、

 3発が命中する。

 「キングジョージ5世を沈めるぞ。砲撃を集中させろ!」

 ティルピッツに砲弾が命中し、艦体に振動が伝わる。

 「提督、艦尾に2発が直撃! 小破」

 「ばかめ。ティルピッツは、36cm砲弾が命中したくらいで沈むものか」

 「航行に支障なし」

 「同じ場所にもう一発食らわない限り、問題にはならんよ」

 「技術差で技能差を埋められそうです」

 「確かにイギリス戦艦の乗員は技能で上のようだ」

 「しかし、キングジョージ5世とハウを撃沈する程度は浮いていられる」

 ティルピッツの380mm砲弾がキングジョージ5世の周囲に降り注ぐ、

 キングジョージ5世を峡叉する水柱が立ち昇り、

 爆音が轟き、赤黒い煙を噴き上げ、艦体を震わせ傾斜させていく、

 ティルピッツは、その強靭さで浮かび続け、

 沈みつつあるキングジョージ5世からハウに主砲を向ける頃、

 アベンジャー雷撃機の編隊が現れる。

 

 

 シャルンホルスト 艦橋

 シャルンホルストの砲撃は、雷撃しようと回頭するイギリス巡洋艦と駆逐艦を撃破していく、

 シャルンホルストは空母を射程に収めていたものの、

 空襲を受け苦戦していた。

 ワイルドキャットがティルピッツとシャルンホルストの艦橋に向けて機銃掃射を繰り返し、

 艦橋の中を跳弾が跳び交い死傷者を出した。

 「おのれ〜 イギリス海軍め。状況が悪くなるばかりだ」

 「右舷前方、雷撃機です」

 「対空火器を集めろ!」

 「主砲は、そのまま空母を砲撃!」

 「最大戦速だ」

 シャルンホルストは空母に向かって、まっすぐ走るためか、雷撃しやすかった。

 アベンジャーが回り込むように進入して魚雷を投下していく、

 「ちっ! 取り舵一杯!」

 魚雷の接近に対し、

 シャルンホルストは波を蹴立て、ゆっくりと回頭していく、

 「艦尾主砲塔を同調させろ」

 「イラストリアスに正対次第、全砲門で砲撃する」

 30ノット以上、56km近い速度で、一旦舵が利き始めると

 遠心力で体がもっていかれる。

 「外れろ!!」

 「当たれ!!」

 相反する二つの感情を空回りさせ、

 シャルンホルストと魚雷の軌跡は、相対距離とベクトルをジリジリと変えていく。

 シャルンホルストの艦首に水柱が立ち上がり。

 「面舵! 撃て!!」

 シャルンホルストの主砲から283mm砲弾が撃ち出された。

 9発の赤黒い塊がイラストリアスに向かって降り注ぎ、

 3発の砲弾が飛行甲板を貫通し、艦内で爆発する。

 そして、イラストリアスは誘爆を起こしながら炎上していく、

 シャルンホルストは、もう一度、回頭しながら艦首を空母部隊に向け、

 「艦長、前方からアベンジャー3機」

 「対空砲火で撃ち落せ」

 「主砲は、イラストリアスに集中!」

 シャルンホルストは、さらに航空魚雷3本を受けて海上をのた打ち回る。

 

 

 

 「総員退艦!!」

 キングジョージ5世は、浮力を失い右舷側に大きく傾斜し、

 艦首からズブズブを沈みつつあった。

 乗員たちは我先に退艦し、鉛色の海面へと逃れていく、

 キングジョージ5世は多くの乗員を海中に引き摺りこみながら

 海水を噴き上げ爆発した。

 雲と洋上の間で大音響が響き渡り、

 海水吹き上げ、大瀑布を降らした。

 洋上から立ち昇る黒煙が雪交じりの雲に届いていく、

 テイルピッツとハウの砲撃戦は、互いの砲弾をぶつけ合う打撃戦を思わせた。

 損傷で速度が落ちていくと砲弾が収束しやすくなり、命中率を引き上げる。

 互いの砲弾がティルピッツとハウをズタズタにしていく。

 幸か不幸か、水柱と黒煙が測量を狂わせ、時折、砲撃に間断が起こる。

 そして、命中した砲弾が艦を震わせ、砲身を振動させて命中率を低下させる。

 致命傷に至らない損傷が互いの傷口を破壊し、乗員を殺傷していく。

 アベンジャー雷撃機の航空魚雷3本がティルピッツに命中し、速度を低下させる。

 そして、ティルピッツの砲弾がついにハウの装甲を貫いて弾薬庫を破壊してしまう。

 誘爆が艦内をズタズタに破壊し、乗員も引き裂いていく、

 爆風が火炎と一緒に艦内を駆け巡り、

 引き千切られた血と肉片が壁と床にこびり付いていく、

 

 ノルウェー沖海戦を分けたのは、ブリザードだった。

 ティルピッツとシャルンホルストは、浮かんでいたものの、

 ズタズタ、ガタガタ、ボロボロ。

 見た目で、廃艦確定と言える惨状になっていた。

 イギリス機動部隊は、戦艦キングジョージ5世、ハウ。空母イラストリアスが撃沈され、

 イギリスの水雷戦隊も壊滅していた。

 吹雪の中、

 アベンジャーは、ギリギリまで発艦を繰り返しドイツ戦艦を雷撃し、

 大半が着艦できず海上に着水していく、

 生き残った空母ヴィクトリアス、インドミタブル、フォーミタブルは危地を脱したものの、

 艦載機を失い攻撃力を喪失していた。

 

 

 ティルピッツ 艦橋

 「提督、このままでは・・・」

 「浅瀬に乗り上げろ」

 「・・・・・」

 「選択の余地はない。この艦は沈む。シャルンホルストもな・・・」

 「はっ!」

 ティルピッツとシャルンホルストは、ヨタヨタとノルウェー・トロムセの浅瀬に乗り上げ、

 軍艦としての生涯を終え、

 北大西洋ノルウェー沖海戦は終結する。

 

 

 

 

 

 12/07

 静岡・愛知・三重の3県は13時過ぎ、最大M8.0の大地震に襲われる。

 数分の激震で家々は倒壊し、

 十数分後には、6m以上の大波が町並みごと洗い去っていく、

 東南海地震。

 大地震は、三重県志摩半島南南東約20キロ沖の海底を震源地とし、

 名古屋の三菱工場など日本の航空機産業・軍需産業は大打撃を受けてしまう。

 家屋の倒壊と津波の被害は大きく、死者行方不明1223人。

 逃げ出す暇もなく津波で多くの命が失われる。

 工作機械の底上げで来日中のドイツ人職人と技師も驚天動地の光景にショック状態。

 「・・・こりゃ駄目だ。絶望的だな」

 戦争どころではなかった。

 「天災は天罰かな」

 「あれだけ非道なことをやっていれば天罰も下るさ」

 「朝鮮人は天罰だと大喜びだけど・・・・・・」

 「やれやれ、半島への移民が増えそうだな。弾みがつく」

 「列島で被災があれば半島から朝鮮人が押し出されていく」

 「それで喜んでいるのだから、お幸せなヤツだな」

 「揚子江は悪くないよ」

 「資源もあるし、次男の朝鮮人は、長子の漢民族に守られて暮らせるし」

 「きっと幸せだろうな」

 「羨ましくないけどね」

 「でも、さっさと、やった方が良いね」

 「日本人って喉元過ぎれば忘れるから」

 「そうだね」

 「でも、どうする。これ話しにならないぞ」

 「とりあえず、死んだ人間の所領分を国で確保して再分配かな」

 「農民は、それで良いけどさ」

 「工場やら近代施設やら技能者やら、なんやら困るよ」

 「・・・頭いてぇ〜」

 

 

 朝鮮半島

 地図を覗き込んでいる集団がいた。

 中国系ヤクザが朝鮮系ヤクザを追い立てていく、

 「半島の朝鮮人の追い出しは、ほとんど成功したある」

 「資産価値が上がっている」

 「残っている朝鮮人は出たがらないある」

 「当然ある。交通網が広がり、産業とサービスが大きくなっていくある」

 「土地を売ったから出来た。売らなければ低い価値のままある」

 「先に手放した朝鮮人が損ある。あるいは奪われた朝鮮人・・・」

 「土地を売れば、それだけ、産業とサービスが大きいある」

 「流動的な資本の価値も大きくなっていくある」

 「売らなければ取り残されるある」

 「なるほどある」

 「朝鮮も交通網が広がって産業が軌道に乗って物資が増えて、利便性上がるある」

 「水のみ百姓と借家住まいは刹那主義が強いある」

 「それに郷土に対する責任感も移ろいやすいある」

 「そんなことを言ってたら貧しいままの村として取り残されるある」

 「刹那的な人間と、がめつい村が損をするある」

 「日本人に土地を与えて土地持ちが増えると生活に満足して戦争したい者が減るある」

 「土地に根を張り、縛られ、土着した者が持つ呪わしい執着が愛国心を支えるある」

 「確かに愛国心は、己の保有する土地を守ろうとする感情と比例しやすいある」

 「問題は、富裕層が傲慢に貧富の格差を望み」

 「借家持ちを増やせば、それだけ国民の愛国心が土地から離れていくある」

 「でもハングリーな借家人がいないと産業が維持できないある」

 「中国人もあるか?」

 「中国人は、中華で尊大なあまり学ばなかったある。反省ある」

 「5億以上の漢民族が反省したときはアメリカ人より怖いある」

 「中華は世界一ある」

 「でも半島に居座る土地持ち日本人が増えれば土地から産する収穫を増やそうと工夫するある」

 「日本人の性格ある」

 「水のみ百姓より、土地持ち百姓の方が活力があり収穫が大きくなっていくある」

 「日本は順風満帆ある」

 「国内だけでも乏しい日本の政官財構造とソースが戦争で奪われるある」

 「人材、資材、資金が薄められ広がっていくある」

 「苦しいあるか?」

 「市役所仕事は、本土より効率性と機能性が低いある」

 「能力と労働が集約されていくまで時間が必要ある」

 「でも中国より不正腐敗が少なくて良いある」

 「日本の不正腐敗は小さいある」

 「そうある。かわいい不正腐敗ある。子供のお遊びある」

 「そういえば、朝鮮人を追い出したあと中国人が出て行くか、日本人が不安がっているある」

 「朝鮮人追い出したら、一度、満州に引き揚げるある」

 「でもどうせ、また日本人が呼ぶある」

 朝鮮半島で中国系マフィアは、悪夢、貧乏神、死神になっていく。

 朝鮮人マフィアも土地に居残ると必ず不幸になると思わせるほどに・・・・

 

 

 漢口郊外

 南京政府軍駐屯地は、秘密の地下工場を持つ、

 廃棄された日本軍の兵器や資材が山のように集められ修理改良されていた。

 「・・・・成都から治具と部品が届いたある。あと、円の偽札」

 「揚子江域の漢民族が減ったある」

 「朝鮮人と少数民族、東南アジア人に土地を奪われたある。悔しいある」

 「だけど、大陸鉄道と東南アジアと豪州の権益も惜しいある」

 「日本だけ、ずるいある」

 「北アメリカ大陸に上陸すれば、揚子江から漢民族が消えるある」

 「中国が異民族に南北に分断されるある」

 「華寇軍の北アメリカ上陸は疑わしいある。たぶん、嘘ある」

 「だけど豊かある。白人の女も良いある♪」

 「無節操ある。愛国心は大切ある」

 「国は、せびって要求するばかりで何もしてくれないある」

 「アメリカ大陸と白人女は、欲望を満たしてくれるある♪」

 「・・・日本人に利用されて嘆かわしいある」

 「嘆かわしくても人間を減らして、土地を増やして便利にしてくれる」

 「個人的に嬉しいある♪」

 理不尽も、不条理も、まかり通る世界だった。

 隼T型とゼロ戦21型が並んでいた。

 アメリカ系技術者と職人が改良して、オリジナルよりマシな機体へと改造していく、

 日本が南京中国政府に売却しているのは97式戦闘機で、それ以上ではなかった。

 そして、97式戦闘機でさえ、オリジナルより強化されていた。

 アメリカ製の工作機械で部品を作るだけで稼働率が上がり、

 数パーセント性能が跳ね上がる。

 白人の技術者が箱の中の部品を検分していた。

 「日本製部品の精度が増している」

 「中国に回す部品にしては思ったより劣化していない」

 「ドイツ製工作機械が入荷したのだろう」

 「日本の工業力が底上げされているのは本当のようだ」

 「だが、中国人の情報が本当なら日本の鉄製品が陶器製に取り替えられているそうだ」

 「石炭も、鉄鉱石も、希少金属も、釜山に山積みのはずだが・・・」

 「鉄鉱石から鋼を作るより、鉄屑から鋼を作るほうが楽なんだよ」

 「製鉄が遅れているということか」

 「崇明製鉄所が機能すると連合軍は不利になるな」

 「だが南京中国軍は強化される」

 「今となっては華寇のせいで、日中同盟の絆は強固だ」

 「潮時かもしれないな」

 「だが、中国が日本に従属している状態でアジアに残されるのは危険だよ」

 「少なくとも日本軍を警戒させるだけの国力が欲しい」

 

 

 北アメリカ デトロイト

 第二次世界大戦が始まると

 恐慌で錆び付いていた工業地帯が連合国の軍事工場となっていた。

 その日も朝から工場に向かう労働者の列があった。

 「・・・・怖いわ。ジャン」

 「ルーシ。日本の華寇作戦と風船爆弾は、物理的な攻撃力といえないよ」

 「牽制に惑わされているだけだ」

 白人と黒人の混血のジャンは、知的な教育を受けている。

 「でも西海岸に上陸した華寇は東海岸を目指しているって」

 「ふっ アメリカの国力を損なう攻撃じゃないよ」

 「騒ぎを大きくする方が損だよ」

 「おばあちゃんが空から夜中に黒いものが落ちてきたって」

 「やめてくれよ」

 「あのラジオのせいでシェリフに借り出されて寝不足なんだよ」

 「そういえば、バージニア州で小さな鉄球がバラバラと落ちてきて屋根を壊されたって」

 「枢軸国も話題の為に、いろいろやってくれるよ」

 「毒ガスも使うかもしれないって」

 「毒ガスを使ったら日本人は根絶やしだ」

 男が戦場に出かけているせいか女工の比率が多かった。

 「ん・・・・なんだ?」

 一角に人だかり、その中心にパラシュートを付けて、死んでいる妙な黒人がいる。

 パトカーが集まり、

 そして、州軍が集まってくる。

 「・・・なんだ。コイツは?」

 「これを見ろ。大佐」

 黒人の内ポケットから封筒を見つけ、

 読んでいた警官が州軍の将校に封筒を渡す。

 「んん・・・偽札か・・・ばかな。大変なことになるぞ」

 州軍の将校が総毛立つ。

 「!? いや、待て、それは違うぞ、大佐」

 警官が慌てる。

 「第一級戦闘配備!」

 「コイツは、華寇軍だ」

 「黒人やインディアンに化けて白人を殺し、有色人を決起させようとしている!」

 州軍と民衆が大騒ぎになり。

 警官が慌てる。

 「すぐにワシントンに連絡して救援を要請しろ!」

 市内各地に黒人に化けた華寇軍がパラシュートで発見されたと大騒ぎになっていく。

 「いいか! 華寇軍は、50人で、チームを組んでいる」

 「それが、全部で100の部隊だ。総員、黒人を調べろ!」

 デトロイトが騒然となって華寇軍狩りが始まる。

 そして、市内各地で白人による黒人の虐殺と黒人の反撃が始まる、

 「ちょっと待て、大佐!」

 警官が追いかけてくる、

 「うるさい。警官の出る幕じゃないぞ」

 「いや、だから・・・」

 「いいか!」

 「華寇軍は黒人に化けている。必ず探し出すんだ!!」

 州軍が動き出していく。

 「いや違うだろう。おかしいぞ」

 「何がおかしい。邪魔をするな!」

 「命令書の英語はおかしいだろう」

 「何もおかしくはないぞ」

 「既に数十ヶ所でパラシュートが発見されている」

 「5000人の華寇軍が合流する前に狩り出すんだ」

 「日本人なら日本語で書くだろう。華寇軍なら普通は中国語だ」

 「!?」

 「騙されているぞ。大佐!」

 「そうなのか? 英語じゃないのか」

 「当たり前だ!!」

 しかし、一度、銃撃戦にまで拡大した人種間の憎しみの連鎖は簡単に収まらない。

 「や、やめろ! 撃ち方止め!・・・・ぅ・」

 銃声が響くと銃撃戦を止めようとしていた大佐が黒人の撃った拳銃で射殺される。

 「な、なんて事を・・・・」 警官

 デトロイトの工場地帯で黒人の死体と白人の死体が転がり、

 ジャンと呼ばれていた混血の青年と黒人の女工ルーシも、

 白人の暴行を受け路上で死んでいた。

 中国の刀剣と衣服がアメリカ全土で発見され、人間不信を増長させ

 銃撃戦は激しさを増していく、

 この光景は、アメリカ全土で見られた。

 いくつかは騒動が大きくなり、

 いくつかは即バレで沈静化していく、

 それでもアメリカ合衆国の人種間相互不信は全国規模になっていた。

 そして、アメリカ西海岸付近、

 日本軍が華寇軍1億をアメリカ西海岸に上陸させると噂が流れ、

 恐慌状態となっていた。

 

 

 日本の某所

 “・・・○○中尉様、貴下の望まれる州独立に対し”

 “日本国政府は、全面的に支援を送るものとし・・・・・・”

 “・・・××大尉様、△△少佐の暗殺の件・・・・・・”

 “・・・◇◇少尉様、インディアン、黒人への支持。日本国民に成り代わり・・・・・・・”

 “・・・○×大佐。空母艦長の就任おめでとうございます”

 “空母引渡しの件、確かに承りました・・・・”

 「むふ ハート♪」

 調べた限り実在の士官の名前を書き、

 それらしく事実無根の罪を擦り付ける。

 それどころか企業主から民間の個人まで、

 知りうる限り実在人物で冤罪を誘発させていく、

 発見されるかは不明だった。

 そして、発見されれば、事実確認のため、人数と時間が殺がれていく。

 手紙と一緒に風船が昇って行く、

 時限装置と赤外線探知機が付いており、

 パラシュートに十数人もの華寇軍が、ぶら下げられていた。

 上手くいけば、自動的に投下される。

 「・・・かわいそうに・・・」

 「睡眠薬で眠らされて成層圏まで行く」

 「たぶん、死ぬ」

 「その後、北アメリカ大陸まで行って落下傘降下だ」

 「睡眠薬で眠ったまま、酸欠の安楽死か」

 「50時間の我慢じゃないか。仮死状態なら大丈夫かもしれないだろう」

 「あ、あり得ん」

 「まぁ こればっかりは女学生に見せられんな」

 「そうだな」

 「犯罪者や密売人も、少しは、お国の役に立つかな」

 「そうだな・・・」

 「アメリカで引っ掛からなくても白人を疑心暗鬼にさせることができる。それで十分だ」

 「特別攻撃隊に万歳だな」

 「そうだな・・・」

 

 

 白い家

 訪れた各州の陳情者たちに白い館は騒然とする。

 「華寇軍がパラシュートで降りてきているそうじゃないか」

 「本当に大丈夫なのか」

 「あんなので太平洋を越えられるわけ無いだろう」

 「途中で凍死するに決まっている」

 「本当だろうな」

 「日本軍の策謀だよ。引っ掛かるな」

 「華寇軍の上陸作戦は、どうなんだ」

 「だから、日本軍は、華寇軍を1億を西海岸に上陸させる力など “ない” と言ってるだろう」

 「嘘をつけ!」

 「俺たち西海岸の州を見殺しにするつもりだな」

 「うそ? うそだとぉ〜! 貴様!」

 「合衆国軍人を嘘つき呼ばわりするつもりか!」

 「アメリカ軍人の中に裏切り者や内通者がいるという噂も広がっている」

 手紙の束がテーブルに叩きつけられる。

 「日本軍の捏造だ!」

 「じゃ 日本を攻撃しろよ。なに遊んでいるんだ」

 「だから戦力が揃ってからだろう」

 「我が合衆国は、あんな、物真似サルにバカにされても良いのか!!」

 「いや、純粋に軍事上の問題で、そういう問題じゃ無いだろう」

 「そんなことより、日本海軍は大型船を改造して華寇軍を積め込んで上陸させているんだ」

 「だから、それは計算している」

 「現に上陸されているだろう」

 「華寇軍は、逃げ回りながら集団で一般市民を襲うんだ。武器も、食料も、必要ないんだよ」

 「言い訳ばっかりだ」

 「だ、だから、これ以上、大掛かりな上陸作戦は許さないと・・・」

 「華寇は、ハングリーであれば、ハングリーであるほど凶暴で危険になる」

 「いや、ちょっと聞けよ」

 「西オーストラリアが占領された」

 「今度はアメリカ西海岸だろう。欧州に軍を派遣している場合か」

 「だから、アメリカ機動部隊が太平洋を監視している」

 「華寇軍がアメリカ西海岸に上陸するようなことはない!」

 「現に上陸しているだろう」

 「飛行艇や潜水艦で何千人殺されたと思っているんだ」

 「なっ 何を言う80パーセントは勘違いで同士討ちだ!」

 「インディアンや黒人と思ったら撃ち殺しやがって何を考えている!」

 「そうだ、これ以上。国内の治安を悪化させないでくれ」

 「どうせ、黒人やインディアンなんて、いなくても良いだろう」

 「って、本音を言うなよ」

 「インディアンを根絶やしにして北アメリカ大陸を手に入れたのに漢民族に奪われてたまるか」

 「北アメリカは俺たち白人のものだ」

 「だから政府がコメントできないような本音を言うな」

 

 

 赤レンガの住人たち

 山積みされた書類から導き出される回答は、戦争遂行不能の文字、

 前線で消費する戦力を補充するのが精一杯で

 増強などできないのが辛いところ。

 前線の自給自足が進んでいなければ、戦線は崩壊していた。

 それもこれも民間需要に資源を取られているからといえる。

 大陸の利権に深入りし過ぎている観もある。

 日本軍将校が円の本物と偽札を陽にかざして見比べる。

 「まずまず、わかりにくいよな」

 「微妙に違うのがミソなんだろうな」

 「その辺の微妙な違いをわざと作って混乱させる腹だよ」

 「ところで、例の船は?」

 「船底のフジツボを採集して味噌汁の出汁にしているよ」

 「ふっ 燃料待ち、人材待ち、資金待ち」

 「部品待ち、資材待ち、荷受待ちで、フジツボ採りか・・・・」

 「まぁ 採った方が水の抵抗が減って速くなるだろうけど」

 「輸送船は、潜水艦に狙われやすいから、気持ちは、わからんこともないがね」

 「そういえば、例の物は? 前線が欲しがっている」

 「ていうか、本土に無いものを前線に遅れるわけ無いだろう」

 「そうそう、輸送力の問題だけじゃないよ」

 「どいつも、こいつも・・・・」

 「そりゃあ、発電機とクレーンは必要だよ。誰だってわかっている」

 「問題は、そいつを揃える皺寄せが、どこかに行くことを考えたくないんじゃ・・・・」

 「簡単な足し算と引き算ができなくなったら人間お終いだよ」

 「戦死しろガキって感じだな」

 「あと洗濯機と洗剤の追加で前線の戦闘力と戦意が、どの程度、向上するか出たっけ?」

 「そういえば、来てたな」

 「なんか・・・見たくない」

 「兵士衛生は、重要だけどね」

 「もちろん、洗濯当番を歩哨に立たせる方が軍事的に良いよ」

 「まぁ 病気でベテランが逝ってしまったら困るのはわかるけど」

 「しかし、ラインを空けるとなると・・・納得できる口実がな」

 「医療技術で駄目なんだから、せめて衛生は大事だろう」

 「口実として、弱いがな・・・」

 「結局、自分が戦場に行かないと、わからないんだよ」

 「バカ軍人もだけど国民もね」

 「そりゃ 一般の国民は洗濯機なんて使っていないからね」

 「想像力の欠如って怖いよな」

 「ラインに載せたときの反応が怖いぜ」

 「日本人って、ひがみ、やっかみ根性が強いから。すぐ人の足を引っ張りやがる」

 「ところで、アメリカ太平洋艦隊は増強されていないか?」

 「慣熟訓練中だろう」

 「アメリカ機動部隊の数が増えると陽動作戦も、華寇作戦のどちらにも対処できるからな」

 「不味いよ。それ・・・」

 「アメリカ機動部隊が不在でも成功率が怪しいのに出てきたら大損害だろう」

 「漢民族が嫌がると、次の華寇作戦が難しくなる」

 「犯罪者も随分、減ったからな」

 「もう、冤罪でも何でも良いよ」

 「欲が深いから適当に煽って引っ掛かったやつを船に乗せよう」

 

 

 

 インド

 潜入したインド国民軍のテロ、ゲリラは、ガンジーの “非暴力・不服従” を無視する。

 夜明けと共に修道女らしい全裸の白人女性の死体が発見され、

 辺りの壁に “イギリス人を殺せ” の文字。

 当然、大騒ぎとなっていく。

 イギリス軍は、冤罪でインド人を狩っていくがインド国民軍の思う壺だった。

 インド人のイギリス人に対する憎しみだけが膨れ上がっていく、

 インド国民軍上陸と武器弾薬供給も二式大艇や潜水艦によって行われている。

 そして、インド国民軍はインドに潜入するとイギリス人を無差別に殺戮していく、

 深夜、二式大艇は、低空で戦略拠点でもない海岸に進入する。

 イギリス空軍は、追撃するのも困難だった。

 二式大艇が川、湖水、海岸に着水し、

 インド国民軍と武器弾薬が降ろされていく、

 「日本人が “民間イギリス人殺傷は困る。軍人に限定して欲しい” そうだ」

 仲介者が、ゲリラに武器を渡しながら呟く、

 「相変わらずガンジーに遠慮しているのかよ」

 「ガンジーは非現実的なんだよ」

 「イギリス人をみんな、ぶっ殺せば終わるんだよ」

 「い、一応、伝えたからな」

 「もっと武器弾薬とポンドの偽札も頼む」

 「ああ」

 「豊かな人間が弱者を虐げ搾取して、貧しい人間を犯罪者に追い立てているんだ」

 「トップにいるイギリス人を皆殺しで体制をひっくり返す」

 「豊かな者が犯罪者を作って、貧しい者が犯罪者になるんだろう」

 「いや、加害者が豊かになるために被害者を作って貧しくさせるんだ」

 「反対するならカーストも破壊してやる」

 「バラモンになって取って代わる方が楽そうだ」

 「それは、いえる」

 

 

 

ハワイ沖 ワシントン

 白レンガの住人たち

 アメリカ太平洋艦隊と日本艦隊の艦船駒が図面上に並べられている。

 アメリカ西海岸の住民たちを悩ませている内容は深刻に思えた。

 アメリカは時間と共に戦力比だけが有利になっていく、

 しかし、その戦力は華寇対策のため分散されていた。

 アメリカ軍は国力差を利用して日本を圧倒できる状況が失われつつあった。

 時間に裏切られつつあり、

 悪いことに分散され過ぎた戦力で攻勢に出られない。

 豪州とアメリカ西海岸が望む防衛線構築は、

 いつ完成するか計算するのが億劫になるほど膨大だった。

 日本を打倒し屈服させない限り、

 いくら予算があっても足りず、焼け石に水。

 そんな予算を計上しても無意味といえる。

 しかし、民主主義は戦略上の効率性、合理性だけを追求させない。

 そして、泣き付くオーストラリア政府。

 「イギリスが機動部隊をインド洋側に回航させるそうだ」

 「やれやれ、ようやくか」

 「空母イラストリアス。戦艦キングジョージ5世、ハウが撃沈されているがね」

 「ティルピッツ、シャルンホルストと交換か。本当に2隻を撃沈したんだろうな」

 「2隻ともノルウェーに座礁している。写真判定だと廃艦だろうよ」

 「派遣するイギリス空母は5隻」

 「インプラカブル、インディファティガブル、ヴィクトリアス、フォーミタブル、インドミタブル」

 「機動部隊を2群は作れる」

 「地中海よりインド・太平洋とは、イギリス帝国も末期だね」

 「インドを失ったら、イギリスは、もう駄目だろう」

 「欧州に橋頭堡を築いた後ならインド洋に機動部隊派遣も納得だよ」

 「あまり攻撃的とはいえないが、インド洋を守ってくれるのであれば楽ができる」

 「アメリカ機動部隊を太平洋側に集めることができるなら助かるよ」

 「戦艦は、デューク・オブ・ヨークとアンソン。そして、レナウンだな」

 「低速戦艦は欧州戦線に残しておきたいらしい」

 「ドイツ海軍で残る脅威は、ポケット戦艦のリュッツォウ、アドミラル・シェーア」

 「重巡アドミラル・ヒッパー、プリンツ・オイゲンか」

 「たいしたことないよ」

 

 アメリカ太平洋艦隊

 エセックス型空母 5隻

  (ホーネットU、フランクリン、バンカー・ヒル、タイコンデロガ、ハンコック)

 インディペンデンス型軽空母 5隻

  (プリンストン、ラングレーU、カボット、バターン、サン・ジャシント)

 そして、アメリカ太平洋艦隊に組み込まれていた新型エセックス型空母は、4隻。

 エセックス型空母 4隻

  (ベニントン、ボンノム・リチャード、ランドルフ、エンタープライズU(シャングリラ))

 慣熟訓練しなければならなかった。

 それで質と量において日本海軍を追い詰めることができた。

 「日本機動部隊は、まだ隼V型だろう」

 「らしいね。12.7mm機銃なら問題ない」

 「ヘルキャットとコルセアでも押し切れそうだ」

 「翼面積で劣るコルセアは夜間攻撃の着艦で辛いがね」

 「しかし、ヘルキャットでは翻弄されるかもしれない」

 「いや、ヘルキャットなら一撃食らっても速度差で引き離せるよ」

 「コルセアならなおさらだ」

 「日本の艦爆は彗星だけか。雷撃機はやめたのか」

 「500kg徹甲爆弾なら十分と思ったんだろう」

 「というより、工業力が低すぎて機種が限定されている感じだ」

 「情報だと双発の飛龍とかに雷撃させるようだ」

 「基地に近付くと攻撃してくるだろう」

 「性能が低くても数を揃えられると厳しいな」

 「こっちは、それ以上、揃えないといけない」

 「侵攻する側は、2倍だと不覚を取る可能性がある」

 「しかし、3倍以上の戦力を集めれば普通、勝てるよ」

 「夜間爆撃なら3倍以上で確実だが失敗したときが怖い」

 「信頼性がな・・・・」

 「夜間攻撃の訓練はしているよ」

 「それはそうと、本国は風船爆弾と華寇作戦で焦らされているらしい」

 「大統領から攻撃命令が出ると困る」

 「不味いな」

 「アメリカ機動部隊が侵攻作戦をしている間に大規模な華寇作戦をやられたら防ぎようが無い」

 「たぶん、それが狙いなんだろうな」

 「機動部隊が不在なら、行くも、戻るも戦況次第で自由に決められる」

 「基地航空隊は部隊を過疎域に配置させられているから集中力に欠ける」

 「基地航空部隊だけでは支えきれないか」

 「アメリカ機動部隊が出し抜かれて、日本機動部隊が総力で華寇作戦だと・・・」

 「パースやダーウィンの二の舞だな」

 「それに、いま、攻勢に出ると戦力差から分の悪い相殺戦だ」

 「逐次投入で消耗戦に引き摺り込まれてしまう」

 無線室から士官が血相を変えてやってくる。

 「日本で大地震があったというのは本当らしい」

 「工業地帯が、かなりやられたそうだ」

 安堵の空気が広がっていく、

 「被害報告が知りたいな」

 「どの程度、日本の生産力が低下していくか」

  

   


 月夜裏 野々香です。

 やっぱり、戦記は、艦隊戦。艦隊戦と言えば戦記です。

 

 

 東南海地震

 日本の戦争遂行能力に暗雲をもたらしそうです。

 日本で怖いものといえば、地震・雷・火事・親父・・・・・

 人間、怖いもの知らずだと、

 傲慢になって手が付けられなくなりそうです。

 己を王、女王、王子、王女と我が世の春を謳歌していると駄目でしょう。

 人間は、殺されない程度、程々にという感じです。

 

 天災 

 人間は、怠惰で頑迷ですから。

 意外と、次の発展の意欲や再構築の切っ掛けになったり。

 

 人災 

 エゴ丸出しで、虚栄・ひがみ・ねたみ根性で

 不幸の連鎖をしていくので某国の方々もお気の毒です。

 

 

 日本人も、人災が増えているので、お気を付けてという感じです。

   

  

 日米双方とも焦燥感に囚われていきそうです。

 日本は、広がりつつある国力の差に

 アメリカは、華寇作戦と風船爆弾による心理戦に

  

 

   

ランキングです ↓ よろしくです。

NEWVEL     HONなび

長編小説検索Wandering Network

 

誤字脱字・感想があれば掲示板へ

 
第30話 1944/11 『世界は、行動する者を待っているのよ』
第31話 1944/12 『小さなことからコツコツと・・・』
第32話 1945/01 『もう、弾。ありません〜』