月夜裏 野々香 小説の部屋

   

仮想戦記 『青白き炎のままに』

   

   

 

第41話 1945/10 『でも、諸行無常』

 日独伊同盟は、閉塞されていく経済状況から抜け出そうと、生存権を賭けて奪う側に立った。

 アメリカは、低迷する巨大産業が市場を渇望し、

 イギリスは、統一された欧州大陸の圧力と国際的地位の低下と失うものの大きさに耐えられない、

 ソビエトは、貪欲に漁夫の利を狙っていたものの、パワーゲームで遊び過ぎたのか巻き込まれ、

 米英ソ連合は、それぞれの理由で、新興勢力の日独伊同盟の覇権を押さえ込もうとした結果、

 第二次世界大戦が始まる。

 米英ソ連合は、日独伊同盟に先制攻撃を許したものの、

 総合力、国力差、物量差、情報差で、日独伊同盟を圧倒できるはずだった。

 しかし、欧州では、戦車と航空戦による電撃戦が行われ、

 太平洋では航空戦力によって戦艦が撃沈され、想定外の戦局が作られていた。

 それでも年月さえかければ同盟国はやせ細り、

 最終的には、連合国が勝てるはずだった。

 しかし、華寇作戦が太平洋全域で展開されると、情勢が変わる。

 兵站を顧みない日中同盟の外道、非道、鬼畜な飽和作戦は、アメリカの物量作戦を分散させ、

 その後の風船爆弾はアメリカ国内を混乱に陥れた。

 白人と黒人、インディアンの不信と諍いは増え、

 連合国は、次第に戦局を押し切られていく、

 ソビエト参戦による反撃も、華寇軍のアメリカ西海岸上陸作戦で相殺され、

 日本本土爆撃とベルリン・東京への原子爆弾投下も、

 満州での油田発見とドイツ空軍のモスクワ原爆投下で相殺された。

 そして、停戦。

 米英ソ連合国と日独伊同盟の国民感情は、ともかく、

 経済は必要とする戦略物資があり、

 国家戦略として入手しなければならなかった。

 「なぜ、中国を助けるのだ」

 華寇の被害者たちがアメリカ上層部に詰め寄る、

 「タングステンとニッケルがなければ、お前たちが働く工場が成り立たないだろう」

 「「「「「・・・・」」」」」 ぶっすぅううう〜

 停戦後も連合国と同盟国は、疎遠ながらフランス植民地を経由し、必要な取引が行われた。

  

  

 日本の某造船所。

 10000トン級以上の商船が建造されていく、

 大陸の資源と市場を当て込んだ借金先送り需要、

 ドイツの工作機械のスパスパと鋼材を削って加工していく、

 工期短縮は、建造費の縮小だけでなく工員の賃金にも跳ね返る。

 一人当たりの国民総生産GDPが大きくなれば、庶民生活も豊かになっていく、

 少ない出資で大きな利益は、誰しも考える経済の基本だった。

 「やっぱりドイツ製だな。日本製とは格が違うね」

 「舶来製工作機械は強いよ」

 「リバティー船に負けているんだろう?」

 「アメリカが華寇撤収の代償で中国向けに贈っているからな」

 「戦争が終わっているんだから華寇なんて捻じ伏せればいいのに」

 「大陸を逃げ回っているらしいからね」

 「黒人やインディアンと組み始めているらしいけど・・・・」

 「ふ〜ん」

 「日本は今のうち発電所、製鉄所、鉄道に社会基盤も総合的に上げていかないとな」

 「底上げか・・・」

 「大陸需要に引っ張られて、ちょうど良いよ」

 「鉄道も狭軌から標準軌に切り替えられる」

  

   

 アメリカ西海岸

 華寇軍500万 VS アメリカ軍50万

 華寇軍500万は無手、棒などが多く、

 アメリカ軍50万は近代兵器を装備していた。

 原爆を筆頭に爆弾、銃弾、水攻め、火攻め、などなど、

 ありと、あらゆる殺戮が繰り返された。

 そして、華寇の白人に対する・・・・

 文書にすると ・・・・ピー (自粛)・・・ で、

 アメリカ西海岸は荒れ果てた光景が広がっていた。

 何しろ数百万単位で人が死んだ戦場は世界的に珍しい、

 ワシントン州が呪われた大地と表現されるようになっていた。

 ロッキー山脈に逃げ込んだ華寇軍は、生き残っただけあってしぶとかった。

 はぁ! はぁ! はぁ! はぁ!

 夜の山道を見慣れぬ数十人の男たちが駆け回る。

 「困ったある、道がないある」

 「この崖を上るあるか?」

 「無理ある・・・」

 「・・・アメリカ軍も、きっと、そう思うある」

 「では生き残る為に上るある。そして、上手く冬を越すある」

 「でも道具が必要ある。シアトルで奪った荷物は?」

 「んん・・・ロープある」

 「ん・・・来たある」

 アメリカ軍の小隊、40人程度が近付いてくる。

 「ま、間に合わないある」

 「まだ気付いていないある。上りきったように見せるある」

 「そ、そうある・・・」

 華寇は、崖下にロープをたらすと生活物資を少しだけぶちまける。

 反対側から来るアメリカ軍は、孤立した崖の一角の全容が見えない。

 しばらくするとアメリカ軍が崖下に垂らされたロープに気付き、

 崖下に散らばる荷物にも気付く、

 アメリカ軍の小隊は用心深く、周囲を警戒しながら集結する。

 そして、斥候がロープを伝っており始める。

 『むふっ 上手くいったある』

 『ああ』

 4人目が降りようとしたときロープが切れ、一人が崖下へ、転落。

 さらに崖下に引っ掛かってしまう。

 人道主義なアメリカ軍は、落ちた一人を必死になって助けようとし、

 周囲への警戒が散漫になったとき、華寇が暗闇を利用して襲い掛かった。

 武器さえ手に入れれば戦えるのか、

 華寇軍とアメリカ軍の銃撃戦が始まる。

 機先を制した華寇軍の決死の攻撃にアメリカ軍は浮き足立ち。

 元々、華寇作戦は背水の陣より、さらに悪く、背海の陣。

 泳いで大洋の対岸まで辿り着くわけもなく、

 国内戦と高を括っているアメリカ軍兵士と、前提になる戦意に差が生じていた。

 アメリカ軍は全滅し、

 華寇軍は死傷者多数、半分の20人しか残っていない。

 「・・・アメリカ軍兵士の服を着るある」

 「それ良いある。暖かそうある」

  

  

 戦場となったシアトルは悲惨の一言だった。

 いや、戦場というより、殺戮とか、屠殺場で地獄絵図に近い状態だった。

 食べられもしない肉塊・肉片など百害あって一利なし、

 アメリカ側にすれば、トロールの大群が来襲し、

 生き残ったアメリカ軍も華寇は人ではないのだからと、

 人油とか・・・置物とか・・・・かなり残酷な世界が作られていた。

 アメリカ政府官僚が被災地に集まっていた。

 全員がハンカチで足りず、タオルで口元を覆う。

 「・・・こりゃ 酷いな」

 「人間でないと思えば、いいさ」

 「この内臓。アメリカ人のものか、トロールのものか。おまえ、わかるのか?」

 「いや、人間でないと思い込めば正気でいられる。それだけだ」

 「そりゃそうだ」

 「しかし、これだけ酷いと神がホモサピエンスを見限って、トロールに恩寵を与えたと勘違いしそうだ」

 「まぁ そう思う白人も、いるがね・・・」

 「西海岸経済も立ち直りまで年月がかかりそうだな・・・」

 「そうか?」

 「ああ、経済は相乗効果が大きいんだ」

 「日本と中国とは、持ちつ、持たれつ」

 「ちょっとした採算不信が経済効率と投資を渋らせてしまう」

 「そうだな・・・これだけ、死んでいると、ちょっとな・・・」

 「心理的とか、気持ちの悪さもしばらく残りそうだな」

 「それにアメリカ西部の経済は、アジアとの交易が断たれると落ち込むな」

 「豪州は?」

 「豪州はもっと需要が低いだろう」

 「アジアの恐怖か・・・」

 「アンゴルモアの大王。恐怖が降って来たというか」

 「いや、流れてきた、だろう。500万人・・・」

 「無茶苦茶しやがる・・・」

 「日本人め〜!」

 「まぁ 野蛮人なりに上手く戦った方だろうな」

 「日本人は半島と大陸に進出して日本人町を建設しているぞ」

 「原爆を落として一網打尽にできなくなるな」

 「せっかく停戦したんだ」

 「アメリカも、しばらく国家再建に集中すべきだろう」

 「そうだが、この光景を見て湧き出す憤怒は、どうにもならんよ」

 「西海岸の処理が済めば、アメリカ太平洋艦隊が対日圧力をかけるだろう」

 「フィリピンも、グアムも、ウェークも、アッツ・キスカも日本に奪われている。足場がないよ」

 「・・・だったな・・・」

 「世界最大最強の機動部隊も足場がなければ日本まで届かない」

 「日本の外郭防衛線は広がっているから戦前より、圧力にならないと思うね」

 「アメリカが日本の開国前に押し戻された感じかな」

 「やれやれ、停戦でなく講和だったら占領地も回復できただろうに・・・・」

 「国民感情が許さないよ」

 「アメリカ人からフロンティアスピリットが消えても、ファイティングスピリットは残っているわけだ」

 「国民感情を落ち着かせるには年月が必要かな」

 「ふっ 各国とも、お互いに・・・だな」

 「とりあえず。後片付けを急がせよう。それからだ」

 「大西洋側は、イギリス、ノルマンディーと北アフリカを押さえているから何とかなりそうだがね」

 「イギリスの再建は大変だぞ」

 「それと北アフリカもアラブ・イスラムの反発が大きい」

 「アラブ・イスラムは武器工場すら持っていないよ」

 「当面は同盟も動けまい」

 「連合も、お互い様だな。この状況は酷すぎる」

 海の向こうはフィリピンが失われ、アメリカの影響力はハワイまで後退している・・・

 そして、最前線のミッドウェーから対日・アジア戦略を練り直さなければならなくなっていた。

 

 

 ミッドウェー諸島は、アメリカ太平洋艦隊の最前線の島になっていた。

 置き土産の爆弾トラップの災害は埋め立てられて跡形もなく消え、

 巨大な戦艦、大和が、その姿をアメリカ軍に晒していることを除くなら戦場だったことも忘れる。

 大和艦橋は、アメリカ軍の手によって改装され、要塞基地となっていた。

 YAMATO 艦橋

 双眼鏡で西を覗いても日本は見えない、気分的なものだ。

 「同盟め・・・」

 「アメリカ西海岸の華寇が片付いたら、今に見てろよ・・・」

 「同盟とフランス植民地を分け合っているようじゃ 随分と先の事になりそうだな」

 「むっかぁあああ〜 腹が立つ〜!!」

 「それに連合も一枚岩じゃないしな」

 「ソビエトが悪い」

 「もちろん、同盟も一枚岩じゃないがね」

 「まぁ〜 敵も、味方も、腹が減っては戦ができぬ、だな」

 「蒋介石は、成都でゲリラで、毛沢東は、蘭州でパルチザンで頑張ってるだろう」

 「蒋介石も、毛沢東も頼りにならんから、国の代表とはいえないな」

 「ヘタレが!」

 ゲリラとパルチザンは反体制で似ていた。

 便宜上、ゲリラを資本主義側、パルチザンを共産主義側に分けただけだった。

  

 

 二つの会議が行われていた。

 一つは、アジア大陸鉄道会議

 日本は中国利権の独占をやめ、

 利益を目減りさせる代わり、少数民族や東南アジア諸国を利用し、

 利権を配当することで利権を安定化させた。

 そして、東南アジアの利権を維持するため、中国・華僑を利用していく、

 中国は、アメリカからの華寇の撤収で、リバティ船を得て相対的に強くなっていた。

 揚子江の朝鮮民族と少数民族は、日中同盟のパワーバランスが民族存亡と直結していることから、

 大陸全域で暗躍を開始する。

 大東亜共栄圏最大の協力者で、油断できないドイツ資本が参入してくる。

 大陸鉄道と揚子江の要衝を押さえる日本も本土が爆撃されて脆弱になっており、

 国家再建で、技術をドイツに頼り、資源と市場は大陸頼りになっていた。

 日本は、大陸鉄道と揚子江で最大の権益を持つものの、

 各国との調整は外交手腕を問われた。

 停戦後、戦中・戦後のドサクサは通用しない。

 国家間の調整は煩雑で、資本投下を経常利益で埋めて回収していく、

 失敗すると設備投資どころか、株の相場が崩れ、下手をすると大陸から撤収となるか

 もう一度、居直り強盗をしなければならず。

 日中同盟の破綻に繋がるため神経をすり減らす。

 華寇作戦で資財資源の再分配・再構築という美味しい利益は、過去のもの、

 設備投資を回収するには、売り上げから諸費用を差し引き、経常利益を出すことになった。

 そして、平和になると、民衆は我慢しなくなり、シビアな数字が圧し掛かる。

 「・・・やっぱり、利益が目減りするか」

 「大陸鉄道を安定させるための機関車、貨車と客車とも不足だな」

 「軍事費を削減して、大規模な投資が必要になる」

 「利権縮小で薄利多売かな」

 「大和、ポートモレスビー、本土爆撃と原爆で強面の軍人は、ほとんど死んでいる」

 「軍事費の縮小はできるだろうが・・・」

 「正直、それでも予算が足りないな」

 「回収が遅れると本土の老人たちが煩いぞ」

 「本土爆撃がなければ五月蠅い老人たちは、もっと残っていたよ」

 「日本経済が原爆に救われたと思うのは外道か、鬼畜か・・・」

 「さぁ それは金を背負わせる子孫が、どう思うかだろう」

 「少なくとも負けるよりマシだし、子孫に背負わせる借金は減ったよ」

 「連中も国債と軍票を減らす為に死んだのなら死に甲斐があるだろうがね」

 「巻き込まれた者は浮かばれないな」

 「戦争は、貧富と階級の再分配と再構築を願う気持ちの現われだよ」

 「しかし、破壊衝動の是非は、ともかく」

 「意地を張って、やり過ぎると社会が荒むよ」

 「とりあえず、大陸の利権は、プロパガンダを駆使してなんとかやるしかなさそうだ」

 「日本人は、妙な情けをかけて下手だからな」

 「ははは・・・」

 「中途半端だよ」

 「まず、反日敵対勢力に対するレッテル張りだな」

 「美辞麗句で人を惹きつけて・・・権威を味方にして・・・証言を集めて・・・・」

 「同志を集めて勢力拡大・・・情報操作で自己正当化で正義の味方・・・」

 「隠蔽工作と・・・常識化・・・・」

 「っで、敵対勢力の害を針小棒大。益を棒大針小」

 「あとは、バレないように誹謗中傷しながら離反工作で、孤立化・・・っで、各個撃破と・・・・」

 「実に地獄に落ちやがれ的な計略だな・・・いいのか・・・・」

 「ん・・・ちょっと不憫で、かわいそうかも・・・」

 「連合国に散々やられてただろう・・・」

 「しかし、アジア側だと、ちょっと気が引けるな」

 「やっぱ、おまえも日本人か・・・」

 「漢民族は、呼吸と同じ自然にやっているけどね」

 「確かに才能で負けてる」

 「だいたい、宣伝なんて姑息なんだよ」

 「ていうか、人間が烏合の衆で騙され安心したがっているからね」

 「資本主義は身勝手な欲望の塊、自分本位の利己中だし」

 「共産主義は、ひがみ、ヤッカミの引き摺り落とし屋だろう」

 「日本だって権威主義と年功序列の体制を守るのに必死なだけの保身ばかりだし」

 「帝国主義は居直り強盗だからね」

 「あれもこれも宣伝しないと、やっていけないか・・・」

 「民衆もエゴで、利己中で、えげつないくせ」

 「国と他人には正道を要求するのだからいやらしい」

 「民衆は、偽善者でいたいんだよ。正義の味方」

 「はぁ 国民が民主主義のメリット・デメリットを知った上での賛成ならかまわないよ」

 「共産主義はイヤだけどね」

 「民主化は、もう少し知的水準を上げてからだろう」

 「愚かな民衆も少なくないよ」

 「彼らに下駄を預けるのも気が進まないな」

 「共産主義が怖い」

 「日本人を政治的無知にさせておくのも諸刃の剣だぞ・・・」

 「しかし、戦争が終わってデモクラシーを求める声は大きくなっている・・・」

 「民主化で多数決にすると、ますますプロパガンダが重要になってしまうからね・・・」

 「権力構造で押さえつけると無能な権威主義者と媚びた盲随者を作るだけだ」

 「親方日の丸の保身は、採算性を考えず危険だ」

 「軍国主義化で懲りたよ」

 「奇麗事なプロパガンダで臭いモノに蓋をするのも気が進まないだけで、やれないわけじゃないよ」

 「民衆が資本主義・共産主義の現実を知ると諸刃の剣というのもあるし」

 「宗教に行く可能性もあるし」

 「宗教も偽善者で権威主義で、うわべばかり、エゴイストの塊と言うこともあるよ」

 「尊敬できる人間は少数派だろうね」

 「前途多難だな・・・」

 日本民族は、曖昧な気質と偽善で社会を構築していく、

 それが通用する社会は信頼関係が結ばれやすく、制度の安定や成長が得られやすい、

 大陸社会は、信頼関係より利益を追求しやすく、不倶戴天の個人同士が切磋琢磨する。

 犯罪者が逃げ回れるだけの空間がある大陸と、

 逃げ回っても海岸で捕まる島国との違いは大きかった。

 日本の犯罪は質と量で大陸に負け、その気質が外交に現れ付け込まれやすかった。

   

 そして、もう一つが日中・独伊4カ国同盟戦略会議、

 この地で同盟会議が開催されるのは中国大陸の価値の大きさにあった。

 中国の利権と運用が同盟全体に大きな影響を与える。

 同盟国軍の企画・草案・創設が細々と行われ、

 遠交近攻という概念が正しければ、日独伊中の同盟は、それほど悪くない。

 もちろん、本格的なものではなく、

 協定の可否・是非を検討するものだった。

 兵器体系の共有化はドイツが優勢、

 しかし、運用の段階になると不協和音が大きくなった。

 日本の工作機械がドイツと並べば良いものの、

 日本製工作機械は、質と量で負けていた。

 「・・・こりゃ、前途多難だな」

 「将校がドイツ、下士官が日本、兵卒が中国軍かな」

 「中国は外交が上手いかも・・・」

 「いや、極悪過ぎる。尻の毛まで抜かれそうだ」

 「それはいえる」

 「どうも、日本は同盟戦略が苦手だな」

 「日本人は島国根性丸出しだからね」

 「戦う前に勝敗が決している発想がないんだよ」

 「引っくり返しただろう」

 「鬼畜・外道・非道、この上ない作戦でね」

 「もう居直り強盗なんて、やりたくないよ。目覚めが悪すぎる」

 「ともかく、部品の共有化は進めた方が良いね」

 「同盟軍が並んで戦わなくても、同じ部品と弾薬なら便利だ」

 「アメリカとイギリスも共有化が進んでいるだろう」

 「同盟対連合とソ連か・・・こっちの分断工作は?」

 「各個撃破は楽で良いぞ」

 「逆に分断攻勢を受けているよ」

 「まぁ お互い様だろうな。いまのところ焦点は・・・」

 「インド・中東にかけてだろう」

 「同盟のユーラシア大陸鉄道が建設できるかで同盟と連合の戦略が根底から変わる」

 「・・・だな」

  

  

  

  

 満州帝国は、事の是非はともかく、日本の傀儡国家だった。

 残念ながら傀儡国家にされる主要な原因は内紛、

 どんなにバカ殿でも上層部が結束している国は、他国の干渉も受けにくかった。

 停戦後、ソ連軍が後退すると満州帝国の治安は良くなっていく、

 落とし穴から引き出されたM4シャーマン戦車、T34戦車は、治安維持で絶大な効果を見せた。

 統治側が脆弱に見えると蜂起を恐れ過剰に反応する。

 しかし、統治側が圧倒的だと余裕さえ見せることができた。

 というより、華寇作戦で漢民族の人口が減り、富農が増えたのが原因だった。

 さらにソビエト軍が黒龍江の北に退いて内憂外患が減っていく、

 古今東西、どの世界も権力者は民衆の蜂起を恐れる。

 統治側は特権階級を作って支配体制を安定化させ、

 結果的に民衆を弱体化させてしまう。

 無論、統治者が正道を歩み、国を制御できればよし、

 そうなると扶養以上の人口が増えるとクライシスが始まる。

 それ以前に不正腐敗で国が滅ぶこともあり、

 行政側の資質、能力、実行力が問われた。

  

 満州帝国の行政は日本人が入り込んでいた。

 テーブルの上には黒い塊が置かれ、

 官僚が忌々しそうに指でつついている。

 一般的に認識されている液状の石油とはかなり違って見える。

 満州の油田は人造石油よりマシなモノという程度だった。

 「出てくるのは、こういうのばかりだよ」

 「酷いね」

 「ドイツの技術だと大丈夫なのかね」

 「ええ、石炭よりは・・・・」

 「いかほど?」

 「大規模な施設になりそうですね」

 「まぁ 採掘の状況から・・・その方が良いでしょうな」

 「利権次第です。半分くらいでは?」

 「お金で解決したいですね」

 「大陸鉄道は貨車と客車も少なく、路線も少ない」

 「・・・・」

 「人員も、設備も、不十分、採算が悪いのでは?」

 「大変な金額ですよ」

 「それだけの資源は払えますよ」

 「最大大手の顧客アメリカ・イギリスが消え、製品を製造しても高値で売れない」

 「需要が縮小気味でしてね・・・」

 戦争が終わるとシビアな経済活動、損益計算になっていた。

 ドイツ・イタリアの利権が満州にあると、

 日独伊は政治・経済・軍事・外交戦略で協調しやすい。

 逆にドイツ・イタリアの利権が満州・中国に少なければ

 ドイツ・イタリアは、フリーとなり、日本を犠牲にした外交政治も可能になった。

 日本は、満州帝国の基幹産業を握りたいものの、

 戦略的価値がある物を利権分けしなければならないジレンマに陥る。

 「時に・・・どうでしょう日本も欧州に拠点が、あればと思うのですが・・・」

 「欧州に拠点ですかな・・・」

 「ユーラシア大陸鉄道は日独伊同盟の連携を有利にするはず」

 「確かに将来的な展望は大きいです、お互いに戦後再建で力不足」

 「確かにそうですな」

 「ですが日独連携の強化は、お互いの国益に適っています」

 「揚子江は良い場所がありますし、力添え願いたいですな」

 「・・・まぁ デーニッツ総統には、お伝えしますよ」

 ドイツが喉から手が出るほど欲する希少金属が中国大陸にあった。

 少数民族による揚子江権益保持が画策され、

 それに日独伊列強の相互補完計画の大陸利権保護も加わる。

 日本とドイツも略奪した土地を我が物のように取引の材料にする。

 マフィアかヤクザで厚顔無恥な悪党たち、

 さらに一旦利権として手に入れると自己正当化し、命懸けで守るから始末に悪く、

 帝国主義は、国益と自己正当化のため、

 当たり前のように国民に犠牲を強いてえげつない、

 日本・中国・アジア諸国と、ドイツ・イタリア・東欧諸国の会議は進み、

 国際社会は、離合集散しつつ協調していく、

 

 

 インド

 戦後、力不足のイギリスは採算割れしたインドから部分的に撤収していた。

 インドは、イギリスが弱体化した事で混沌とした社会情勢へ移行していた。

 イギリスが幕府のような形でインドの藩主群を押さえ込んでいただけで、

 イギリスが縮小して楔が外れると下克上の戦国時代、

 カースト王党派はイギリスに協力することで、支配体制を安定させようとし、

 ガンジー派もインド独立の道を目指し、

 ヒンズー系・イスラム系の藩王。カースト系・非カースト系諸国が乱立。

 日独伊同盟から支援されたスバス・チャンドラ・ボースの自由インド国民軍も勢力を拡大していく。

 もっとも日独伊同盟とも戦後再建途上で力不足で、

 イギリスの資財を奪った藩王国が優勢になっていた。

 

 

 

 ドイツ海軍で残っている大型艦は少ない。

 戦艦ストラスブール、

 ポケット戦艦リュッツォウ、シェーアの3隻。

 この海上戦力で海外での覇権は、得られない。

 インドのムンダイ港にリュッツォウが停泊する、

 ドイツがインドに関心を見せている為で利権欲しさといえる。

 リュッツォウ 艦橋

 「リュッツォウをインドに停泊させて、どうするのです」

 「リュッツォウの威容を見てドイツ帝国に友好を示す藩王が現れれば良いだけだ」

 「それがチャンドラ・ボースへの支援にも繋がる」

 「やはりインドは重要ですか?」

 「どうだかな」

 「イギリスの艦隊も採算割れで大型艦を撤収させている」

 「このリュッツォウも予算が限られてるし、長くは持たんよ」

 少しはなれた場所にイギリスの軽巡が停泊していた。

 「ドイツ本土は瓦礫の山ですからね」

 「確かに海外の資源と市場は産業を大きくする為に大切だがね・・・・」

 「採算割れでは駄目ですか?」

 「イギリス・アメリカ・ソビエトにインドを取られたくないのもある」

 「ええ」

 「どこも苦しいからな」

 「確かに・・・」

 「日本が大陸鉄道をインドまで伸ばせれば良いのだろうがビルマで止まっている」

 「採算が合いませんか」

 「日本も中国大陸と東南アジアで予算を使い切っているよ」

 「そういえば、日本は工作機械欲しさなのか、戦艦を売りたがっていましたね」

 「開戦前ならともかくドイツとイタリアは買えんよ」

 「大陸鉄道をベルリンまで伸ばせれば日独伊同盟の結束と連携は確固なものになるのですが・・・」

 「釜山・シンガポール・ベルリンを大陸鉄道で連結なら日独伊同盟も戦略的に大きいだろうな」

 「インドを通るのが問題だがね」

 「チャンドラ・ボース次第ですか?」

 「中東も混乱している。ヘタレなイタリアでは、ドイツ製兵器を装備しても上手くいくまい」

 「インペロは良い戦艦だと・・・」

 「地中海仕様ではな」

 「ドイツもギリシャに艦隊を派遣しているが、もう戦艦の時代じゃないよ」

 「中東も白人の神通力が通用しなくなっている」

 「フランス領では鉄道を通すのにも米英ソ連合と妥協しなければなりませんからね」

 「旧フランス植民地は、合議制の共同統治だ。しょうがあるまいよ」

 「ユーラシア大陸鉄道も遠のきますね」

 「同盟の理想なのだろうが」

 

 

 セイロン島

 コロンボ港

 イギリス海軍インド洋派遣艦隊の基地があった。

 この港を維持することで日独伊ユーラシア大陸鉄道を妨害し、同盟を寸断できた。

 巨大なテーブルには、中東・南アジアから東南アジアに掛けての地図が広げられている。

 インドの藩王は大中小562藩国。

 細かく色分けされて、イギリスの勢力図が一目でわかる。

 イギリス寄りと思われている藩王が日独伊勢力に向かう警戒色にされている藩国もある。

 日独伊同盟は情報不足のため、これほど詳しくわからず。

 この地図を一目見れば、いろんな思惑すら湧いてくる。

 しかし、イギリスは戦後復興中であり、

 インド大陸の支配体制は崩れ、財政の回復は困難で現有するイギリス艦隊さえ、維持できなくなっていた。

 「この地図を知らないとは、ドイツと日本もかわいそうなものだ」

 「突っ込みどころ満載ですからね」

 「そうだ。インドネシア共和国軍は動けないか」

 「インドネシアが独立するには武器弾薬が足りませんから」

 「武器を供給すると、反撃が華寇作戦だから割に合わないだろうな」

 「日本に華寇作戦ができると?」

 「パースとダーウィンを完全に回復するまでは、インドネシアとマレーは手がでない」

 「しかし、日独伊はインドに手が出せる」

 「小さな手だな。さざなみ程度だが・・・」

 「インドの混乱は深まるばかりです」

 「日独伊ユーラシア大陸鉄道は完成させん」

 「ええ、ですがインド大陸の荒れようから、現状は厳しいですね」

 「それは、日独伊同盟側とて同じだ」

 「それに余裕がないだけで英語圏は有利だ」

 「アメリカも華寇作戦で、うつ状態ですからね」

 「アメリカは世界的な足場がないだけだろう」

 「ですがノルマンディ区は要塞化する予定ですし」

 「イギリスの利権は、アメリカに渡っています」

 「イギリスは、フランス領を共同統治にできなかったら、さらに酷い状態だった」

 「アメリカに上手くやられましたね」

 「ああ、だが日本のお陰でアメリカの一人勝ちは避けられた。良かったと言うべきか・・・」

 「微妙ですね」

 「イギリス本土は戦略物資の集積地だったが、それでも本土の再建は年月が必要だ」

 「アメリカ西海岸上陸後、アメリカ軍は散漫で、心、戦場に在らずでしたから」

 「日本軍の華寇作戦と風船爆弾にしてやられたな」

 「近代国家同士の戦争で無条件降伏は不自然ですから、痛み分けが丁度いいかと・・・」

 「そう、言えなくもないがね」

 「どちらにしろ、イギリスは、借金返済で首が回らんよ」

 「戦争が終わると、シビアですね・・・」

 「まったくだ」

 

 

 金髪の女神アイリスと黒髪の魔女マイが地中海を見渡す。

 「良いわね」

 「澄み渡った青い空、白い大理石の壁とエメラルドに煌めくエーゲ海か」 黒髪の魔女マイ

 「本当、かすんだ霧の海。森の国ドイツと違うわね」 金髪の女神アイリス

 「ギリシャの治安は良いの?」

 「ユーゴのディナラ山脈って、パルチザンで大変なんでしょ」

 「独伊同盟軍で山狩りしているから。反抗的な人間は東欧行きよ」

 「ふ〜ん。中東からインドを通って日本とつなげるの?」

 「日独伊同盟が結束するには、それしかないけど」

 「途中、中国、東南アジア、インド、中東だから、ため息が出るわね」

 「あら優雅に鉄道で旅行も良いわよ。楽しそうじゃない」

 「そうねぇ でも戦争も終わったし、マイは、どうするの?」

 「ドイツ軍は給料が良いから、このまま欧州で一生を送るもの悪くないわね」

 「日本は?」

 「原爆で一族ごと全滅。相続で、一度、帰国しても良いけど」

 「もう、いいやって感じかな・・・」

 「そう・・・残念だったわね」

 「北アフリカは、どうなの?」

 「モロッコからリビアにかけて米英軍」

 「エジプトからパレスチナにかけてイギリス軍が展開中」

 「ふ〜ん。停戦中だものね」

 「でもシリアでは、米英ソと並んで日独伊の代表が合議中よ」

 「仲が良いのやら悪いのやら」

 「悪いわよ」

 「でもフランス植民地軍を味方にした方が行政がやりやすい」

 「制圧戦争なんて割に合わないことするより、既成の地場勢力と妥協し合う方が上手く行く」

 「それで旧フランス領は敵味方で合議制?」

 「足を引っ張られると採算割れでしょう」

 「戦後再建で、そんなことできないわけ」

 「ふ〜ん」

 「フランス領のフランス軍も利権分けなら、里帰りしやすいでしょう」

 「じゃ 収まるところに収まったわけ」

 「占領して既成事実を作っているところを除いて合議制だけど」

 「独立運動は盛んだから、どうかな〜」

 「そういえば日本の占領地でも独立運動が起きているって」

 「でしょうね」

 「しばらくは大手を振って観光もできないか」

 「・・・しばらくは戦争ないわね?」

 「代理戦争くらいね。一番、きな臭いのがインドらしいけど」

 「えぇ〜」

 「米英ソ連合が日独伊同盟のユーラシア大陸鉄道を遮断する為でしょうね」

 「相変わらず邪魔ばかりね」

 「完成したらイギリスは完全に窮地に立たされ、ソビエトもシベリアに追い込まれ」

 「アメリカは、孤立でしょう」

 「なるほど・・・」

 「邪魔するのは、当然よ」

 「完成したら日独伊同盟の未来は、明るいわけね」

 「米英ソ連合の離反工作を防ぐことができればね」

 「んん・・・・」

 ドイツ領ギリシャは、地中海におけるドイツ帝国の拠点だった。

 戦後、ドイツ帝国は、瓦礫の山からの再建に追われ、

 余力がないとされながらもギリシャ・地中海にポケット戦艦シェーアを配備し、

 権益を守る意志を見せていた。

 

 

 

 インドネシア

 「我々は、自主独立を要求する!」

 「なぁ もう、少し待ってくれないか」 インドネシア人官僚

 「ベトナム、カンボジア、ビルマは独立しているではないか」

 「我々が、独立できないのは、おかしい!」

 「そ、それは、そうなんだが、いろいろ、あってな」

 「いろいろって、なんだよ」

 「いろいろは、いろいろだよ」

 「そんな、理由があるか俺達は立ち上がるぞ」

 「いや、だから、もう少し待ってくれって」

 「もう待てるか!」

 

        


 月夜裏 野々香です。

 戦争が終わると暴力による圧政から、

 プロパガンダによる民衆の誘導が効果的になって行きそうです。

 プロパガンダは、政治・経済・軍事・諜報だけでなく、

 商業、庶民レベルの小さい寄り合いでも、よくやっています。

 一番小さなレベルだと友達が3人揃えば自分が2人の側にという衝動でしょうか。

 自分さえよければ他人を貶し、

 優越感に浸れるのなら安いものでしょうか。

 レッテルが貼られている相手なら、さらに気分が楽です。

 ディペートの得意な人間がレッテル張りで一刀両断、

 上手くなると、ぼかしたり、すかしたり、茶化したり。

 ヒガミ、ヤッカミ、ねたみ、嫉妬、

 同業者の誹謗中傷で潰された良サイト、企業、店舗、個人もあるようです。

 悪貨良貨を駆逐するでしょうか。

 真に受けて引っ掛かる人間も、どうかと思うが、

 これを当たり前というと、ちょっと悲しくなる。

 相手が害ばかりの集団や個人だと、

 基本的人権を棚に上げて “もっと、ヤレ〜!” と思うのが人情だったり。

 しかし、面と向かって言えない忠告が無記名の誹謗中傷に隠されてたり。

 お陰で推敲・加筆で書き直しで肥やしになったりです。

 というわけで、敢えて書きませんが、

 あまり、悪意が強すぎると、墓穴を掘ることになるかもです。

 

 

 

 これは、まだ、途中です

 租界地・朝鮮人・少数民族など揚子江辺りをぼかさないと・・・・

 因みに北アフリカ、ノルマンディー、マダガスカル、

 グリーンランド、南太平洋のデンマーク・フランス領は、米英共同統治です。

 『ミッドウェー海戦のあと』 と明らかに違います。

 もう、史実の年表を利用できない、逸脱、異世界でしょうか。

 

  

 

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第40話 1945/09 『情けは人の為ならず』

第41話 1945/10 『でも、諸行無常』

第42話 1945/11 『気持ちが小さいと、世界はバラバラ』