第42話 1945/11 『気持ちが小さいと、世界はバラバラ』
戦後、日独伊3国同盟と米英ソ3国連合は、二分したまま、世界情勢を構築していく、
疲弊している両陣営は、開戦に至らないレベルで遠慮がちに外交戦略を駆使、
己は、国力を回復・再建させ、相手の国力を疲労させる。
互いにパワーバランスで優位を保とうと狡猾な戦略を画策し、
水面下で鍔迫り合いを繰り広げる。
ユーラシア大陸鉄道は独伊同盟・東欧諸国と日中・東南アジア諸国を結ぶ。
その成否は、国際力学上、最大の焦点になろうとしていた。
瓦礫の都市ベルリン
国民は浮浪者のような生活を送っている。
しかし、仰々しい部屋の国家上層部の会話は、国民の救済でなく国家再建、
「優先すべきはアジアに至る大陸鉄道より」
「ノルウェーに至るまでの北欧鉄道だと思うのですが」
「んん・・予算上は、そうなるが・・・人種的偏見が理由なら聞かないぞ」
「費用対効果ですよ」
「戦時中、アジアの資源が、どれほど必要だったか・・・」
「ユーラシア大陸鉄道の利益は莫大でも成否が怪しいですから」
「戦略物資抜きの戦争は、したくありませんな」
「どちらにせよ。原子爆弾を使う戦争は避けたい」
「「「同感だ」」」
「幸運にも原爆は独裁を終わらせた。評価はできるがね」
「どちらにせよ。限られた予算での国防は、機能的に進めるべきだ」
「北欧鉄道はナルビク港までか」
「最北端にまで鉄道を通せれば鉄鉱石が得やすい」
「そして、米英とソ連を分断できる」
「スバールバル諸島がソ連領なのが気に入らないが」
「実質、占領しているのが連合国側だった」
「停戦は、そういうものだろう」
「旧フランスの共同市場は?」
「足りなくても物資は、ここで得られるよ」
「しかし、アメリカとイギリスが欲しいモノがあれば、高騰する」
「それより、国内の問題はパルチザンだな。経費も大きい」
「強制的な移民を繰り返せばパルチザンは弱体化する」
「しかし、不良民族を連合国側に走らせている原因だな」
「華寇の真似をして露寇とか、ユーゴ寇とか、仏寇とか、やれば、よかったんだ」
「桁が違うよ。人口の桁が・・・」
「しかし、国は大きくなっても、これだけ不良民族を抱え込むと・・・・」
「開発で旧フランス領へ流すか・・・」
「んん・・・実に非人道的だな」 と、酔いしれる
ドイツ首脳部は、愛する家族写真を胸に秘め、
愛犬を愛で、ビールを嗜み、
伝統あるドイツ・クラシック音楽に耳を傾け、
最高の選民、最高の文化人と自画自賛する。
そのドイツで人道主義者は、日陰者で軽蔑される。
有害指定された人種・民族は人道上の問題から、
ユダヤ人の害虫駆除レベルの問題にすり替えられていた。
こういう国がアジア黄色人種の日中同盟を結び、
蔑視する日本人や中国人と、連携強化を進めて行くのだから矛盾する。
国益主義の独り善がり、
生存圏拡大のため、手近で邪魔な民族を消したいだけであり、
ご都合主義以上のものではない、
もっとも、米英ソ連合の黄色人種、黒人に対する迫害、弾圧、殺傷など負けてない、
結局、どの世界であろうと、強い側が大量虐殺をしてしまう。
他国の大量虐殺を一方的に非難するのも偽善以上のものではない。
悪党が正義感ぶって、悪党に向かって悪党と責めるのだから、
どちらの陣営も厚顔無恥なのだろう。
イタリアも大西洋の港を手に入れ、
航洋型艦船の建造に乗り気になっていた。
日独伊統合の企画統合が進むと、
日独伊建艦技術の良い所取りの同盟型艦の建造が検討される。
40000トン級空母。12000トン級巡洋艦。
8000トン級巡洋艦。2500トン級潜水艦。
その他、商船隊などなど・・・・
「部品と兵装が同じなら交換するだけで戦力を回復できるのが利点だな」
「言語体系が違っても動かすだけなら、すぐできる利点もある」
「予算付かずで建造できないのが痛いだけか」
「用兵で不満があっても数を揃える方が良いだろう」
「ドイツ製の精度や冶金技術など格が違うし」
揚子江
河川沿いの港、
「・・・日本商船の荷揚げなんか、するなニダ。日本は敵ニダ」
「世の中、金ニダ」
「朝鮮民族は世界一優秀な民族ニダ!」
「日本に従うのはいけないニダ」
「朝鮮民族が世界一優秀でも」
「揚子江で朝鮮民族の自治権を守るには日本との関係が第一ニダ!」
「すぐやめるニダ!」
「日本人に半島を奪われ、その上、働かされているのを見るのは我慢できないニダ」
「うるさいニダ。朝鮮人が働かなければ、ほかの少数民族に仕事を取られるニダ」
「自尊心が傷つくニダ」
「自尊心は、食べられないニダ」
「」
「」
戦略資源と商品を山積みした日本商船が大河を行き交う。
日本海軍がどれほど強大であっても、
日本本土に余裕がなければ軍艦は動かせない。
そして、日本は大戦で日本商船隊は150万トン以下にまで減少し、余裕がなかった。
数少ない船舶で日本経済と産業を維持し、
国民生活を守るため、効率の良い運営・運行が求められる。
船の荷揚げ、荷受けは重要で、余剰人員の多くが振り分けられた。
日本商船 船橋
「日本で不足している商品を中国へか・・・」
「資源があれば、もっと商品を作れるだろう」
「結局、強圧的な労働より、欲望に従って積極的に働いてくれる方が効率が良いか」
「崇明島の製鉄所が大きくなれば、もう少し効率よくなるだろうな」
「瑞穂半島もな」
「大陸鉄道沿いに市場が拡大しているから、いくら造っても追いつかない」
「日本人の大陸移民も加速がつくかもしれないな」
「日本が中華に取り込まれるか」
「中華を日本化できるか、だな」
「騎馬民族すら取り組んだ中華思想だ」
「租界で守られていたとしても厳しいぞ」
「計画している租界は、日本民族を核に朝鮮民族と少数民族で周りを囲うらしい」
「包囲されていることに変わりないよ」
「朝鮮人は、どっちの防波堤になるか怪しい」
「どちらにせよ、日本再建を果たそうと思えば中国市場と資源は必要だよ」
「そりゃ 日本人8000万人だけの工業力より」
「中国人を含めた6億の工業力の方が大きいからな」
「日本商船隊は、華寇作戦に引き続き、戦後も大忙しだ」
「船腹が足りない分を回数で補おうとするなら人と船も、無理をさせなければならないよ」
「だからといって動かしながら船の整備というのもね・・・」
「軍艦から水兵を降ろして稼動可能な限り運行だから」
「商船隊は減った割りに効率が良くなっているよ」
「内地が焼け野原だと、いくら資材が、あっても足りないそうだ」
「大都市の焼け野原だけで、これだけの労力」
「もっと爆撃が続いていたらと思うと泣きたくなるよ」
「よかったな、ソビエト軍がウラジオストックのアメリカ航空基地を接収して・・・」
「危なく中小都市も、やられるところだった」
「華寇作戦がなければ日本は負けていたと思うよ」
「漢民族には感謝すべきだろうな」
「感謝してもいいけど付け入ってくるぜ。あいつら遠慮ないから」
「まったく・・・・ん・・・」
「だよな」
「!?」
「なんだ?」
「な、なんか危ないぞ、あのリバティ船・・・」
「中国船籍か・・・危ないな・・・」
漢民族と朝鮮民族コンビが華寇帰還船を操船する
揚子江
1隻のリバティ船が、よろけながら揚子江を進んでいく、
「この船で揚子江の河川運送を支配し、太平洋航路にも出るニダ」
「そうある。中国の夜明けは揚子江からある」
「そうニダ。この船で力を付けたら反日・反政府レジスタンスを始めるニダ」
「きっと、儲かるニダ」
「そうある。貿易で武器弾薬を買って、反日・反政府ゲリラを育てて、金儲けある」
「むふ♪ ニダ」
「楽しいある♪」
「明るい未来に万歳ニダ〜!」
「世界を揚子江から変えていくある〜!」
「世界を、この手に〜!!」
「あいや〜!!!」
「アイゴ〜!!!」
「世界を、この手に〜!!」
「あいや〜!!!」
「アイゴ〜!!!」
「世界を、この手に〜!!」
「あいや〜!!!」
「アイゴ〜!!!」
「・・ん・・・中洲ある」
「み、右ニダ」
「ひ、左ある」
「な、何を言うニダ。み、右ニダ」
「ち、違うある〜! ひ、左ある」
「だ、駄目ニダ〜」
「ぶ、ぶつかるある」
「朝鮮人は、日本人から操船を教わったんじゃないあるか」
「船と飛行機は、触らせてもらってないニダ〜!」
「騙したある! 酷いある〜!!!」
うぅわあああああ (ニダ & ある) 〜!!!!!!
アメリカの白い家
テーブルに置かれた黒い塊。
「こ、これが、満州油田の原油か?」
「蒋介石のゲリラ軍が手に入れたようです」
「普通の液体の油田は採掘されていないのか?」
「いまは、それだけのようです」
「使えそうなのか」
「大規模な製油所を建設しないと」
「少なくとも日本の技術では航空燃料にならないかと」
「だ、だろうな・・・まるで、粘土だ」
「ですがガスが吹き出ている情報も・・・」
「早計に判断すべきではないかと・・・」
「総量は、かなりあるようで製鉄所、火力発電所で使えるはずです」
「んん・・・日本は、計算より早く再建するかもしれない。日本のモラルは?」
「混乱しているようですが議会政治が回復しつつあります」
「本土爆撃後も日本の軍部は尊敬を保っていますが」
「軍縮中で民主化が進んでいるようです」
「対日作戦の足場は遠い」
「日本が軍事費で手抜きすると再建が早まるかもしれないな」
「日本はドイツの工作機械を手に入れれば品質が向上しそうです」
「ドイツは職人気質だ」
「採算とマーケティングの概念で劣る」
「たくさん作って市場を支配するのはアメリカ資本だ」
「とりあえず、ノルマンディー区と北アフリカ」
「中東とインドで同盟側に圧力をかける必要があります」
「それには予算が必要だよ」
「華寇作戦と風船爆弾のお陰で少数民族の蜂起が大きい」
「ドサクサにまぎれ、白人の犯罪が増えて治安が悪化しているのもね」
「悪化した治安を押さえ込むには大量の警察が必要になるよ」
「生産に回す、人員が減ってしまうのでは?」
「いや、機械化に成功すれば経済は保てるよ」
「んん・・・」
日本商船 船橋
リバティ船が中洲にぶつかって止まり、
日本商船が避けて、すり抜けて行く、
「あぁ〜あ〜 ・・・座礁させたよ」
「惜しいなぁ リバティ船は優良船だぞ」
「中国人と朝鮮人だな」
「なに考えているんだか日本に船を売れば良かったのに・・・」
「航行妨害だけじゃなく、喉から手が出そうな船を無駄に座礁させやがる」
「新種の嫌がらせか」
「大陸の人間だからって10000トン級商船を簡単に沈めるな。勿体無い」 泣き
座礁したリバティ船、
某民族と某民族が世界史上空前の計略を練っていた。
「華寇作戦の呪いが世界の海を覆っているニダ〜」
「あいや〜」
「そして、朝鮮民族と漢民族以外の客や船員を海に引き摺り込むニダ〜」
「うんうん」
「だから、朝鮮民族と漢民族以外の人間は、海に出ない方が安全ニダ〜」
「あいや〜」
「これを全世界に広めてしまえば、世界の海は、朝鮮民族と漢民族が支配できるニダ〜」
「おおお〜!! 相変わらず朝鮮民族は、せこいある!」
「何を言うニダ、朝鮮民族は両班によって精神構造を歪に捻じ曲げられたニダ」
「情念に対するセンスは天才ニダ」
「そ、そういえば、そうある」
「日本民族に大陸鉄道を奪われた代わりに、朝鮮民族と漢民族が世界の海を奪うニダ〜」
「あいや〜 上手く行くあるか?」
「子供は怯えて通用するニダ〜」
「100年後、世界の海は朝鮮民族と漢民族のものニダ〜」
「おお〜! その通りある。さっそく、広めるある」
「華寇作戦で死んだ朝鮮民族、漢民族1億の呪いが海を覆っていることにするニダ〜」
「お、多いある〜」
「多い方が効果あるニダ〜 数字だけでも死んでもらうニダ」
「そういえば、そうある〜」
「だいたい、日本人は許せないニダ。我々から土地を奪い」
「さらに死ぬまで働かせた人でなしニダ」
「さらに生まれてもいない、死んでもいない者まで苦しめているニダ」
「確かに許せないある」
「全世界の海を、この手に〜!!」
「あいや〜!!!」
「アイゴ〜!!!」
「全世界の海を、この手に〜!!」
「あいや〜!!!」
「アイゴ〜!!!」
「全世界の海を、この手に〜!!」
「あいや〜!!!」
「アイゴ〜!!!」
その日、座礁したリバティ船から異様な気勢が上がったという。
その後、朝鮮民族と漢民族の服を来た海魔が出没する噂と目撃談が広がる。
華寇作戦で海で死んだ朝鮮民族と漢民族の魂を沈めるという。
かくも、ありがたい新興宗教、朝漢海洋鎮祭教会が誕生する。
「全世界の海を、この手に〜!!」
「あいや〜!!!」
「アイゴ〜!!!」
インド
インド大陸の資源と消費市場は、イギリスを大英帝国にまで伸し上げさせた。
インド独立後も膨大な資源と市場は、魅力があり、
列強各国は注目する。
インドは、同盟が計画する大陸鉄道の通過点になり、
同盟と連合の間で揺れていた。
チャンドラ・ボース率いる自由インド国民軍は、インド大陸で勢力圏を拡大しつつあった。
しかし、武器弾薬の総量は少なく、
各藩王諸国は統一のあり方を模索していた。
そして、日本とドイツの代表がインドに来ても情報量でイギリスに劣る。
巡洋艦 羽黒
日本とドイツ人の外交関係者。
「・・・どうして良いのか、わかりませんね」
「インド情勢がわからないのだから味方を攻撃し、敵に背を向けてしまうこともある」
「騒乱を起こしたいわけじゃないですからね」
「んん・・・大陸鉄道はチベット経由の方が良いのかもしれないな」
「仮にそれを越えてもイランですからね」
「鉄道さえあれば、戦力比で同盟は有利になる」
「連合を刺激してしまうと不味いのでは?」
「ああ、確かに・・・」
「ところでアメリカとイギリスがソ連を支援していると?」
「ドイツは戦前よりモスクワに近付いているからな。資源と交換だろう」
「次は、間違いなく落とせるよ」
「なるほど・・・・」
「しかし、日独伊間を行き来する為、大型船の定期就航が必要になってくるな」
「ドイツの工作機械とディーゼル機関。当てにしています」
「まあ、選択の余地は少ないでしょう」
「しかし、日本の造艦技術は、なかなかのもの、参考になります」
「そう言っていただけると救われますね」
「正当な評価ですよ」
「アメリカの誇大広告とイギリスの欺瞞広告には辟易します」
「そういえば、戦争中もアメリカとイギリスの情報操作にしてやられましたからね」
「平和になると宣伝の上手いところが市場を支配する可能性はある」
「インド市場に食い込めれば敵味方も判別つきやすいのですがカーストが・・・」
「邪魔ですな」
「ええ」
同じ部品で同じ物をたくさん作る。
日独伊同盟が第二次世界大戦で敵から学んだことの一つで
人間は失敗から学ぶ、
失敗から学べない人間はバカといえる。
そして、日本民族は根底で変わりにくい、
想像力も程度が知れている。
しかし、こういった表層上の失敗を戦訓とし、取り繕う程度の知恵があった。
停戦後の国際情勢で日独伊の協力関係は強くなっていく、
第一外国語は、ドイツ語、イタリア語。
第二外国語は、中国語、朝鮮語、英語。
第三外国語は、東南アジア諸国言語、スペイン語
というので、力の入れ具合もわかる。
そして、もう一度、開戦となっても
「華寇作戦だけは使いたくない」 が、日本人の共通意識だった。
勝てば良い戦争でも、非道・鬼畜では戦後教育と社会のモラルが保てない、
勝つためとは言え、踏ん反り返って子供に誇れない戦略は辛い、
子供が親を軽蔑し、軍人を卑下するようだと日本帝国も末期、
子供が親と国を誇れなくなれば守ったはずの国体も立ち枯れ、
国威高揚も失速する。
そして、意欲低下が各地・各所で見られた。
さらに同盟諸国は、諸事の事情で軍事的な増強が不可能であり、
華寇作戦抜きで、絶望的な戦略が練られると、かなり苦しくなり、
日独伊同盟で規格・品質を合わせる必要があった。
当然、ドイツ製。
部品が同じなら運用の違いで性能が分かれていく、
多少の不都合は数を揃え、
同盟諸国で部品を共有できるのなら目を瞑ることができた。
日本で爆撃されていない中小都市の生活は余裕がある。
広場で子供達がボールを蹴って遊び、
退役軍人たちが、ぼんやりと見詰めていた。
「・・・子供は良いな」
「軍縮の煽りで居場所をなくした将兵は悲惨だな」
「大陸のお陰で仕事があるのだけは救いだがね」
「ちっ 大陸かぶれが、国防を成した軍属を扱き下ろしやがって」
「軍上層部でさえ、この日本を誇り高い侍の国から」
「拝金主義の卑しいだけの国にしようとしている」
「あいつら金と利益追求のため、平気で人間を切るからな」
「戦場では部隊を守るため負傷兵を切った事があるがね」
「経済でも、戦場でも、犠牲は、ありがちですか?」
「一所懸命という言葉もある、人間の命と土地は等価だよ」
「戦場だと戦死だが経済だと生き地獄だな・・・」
「生き地獄でも生きていれば、サッカーを楽しむことはできるさ・・・」
「五体満足ならね」
「平和でも戦時でも健康は基本だよ」
ドイツ、イタリアとの交流・交易が重視されると野球よりサッカーが流行る。
グローブ、バットを揃える野球より、
ボール一つで済むサッカーは安上がりだった。
日本政府もスポーツの発散が、不満が戦争に向かう意識を抑制すると考え、
サッカーを振興させる。
フランス本国は、ノルマンディー区、北フランス、南フランスに3分割され見る影もなかった。
植民地を押さえているフランス植民地軍もフランス本国喪失では、やっていけない。
というわけでフランス総督府で同盟・連合の合議制が行われ、
最大の所領のアフリカ大陸も、同盟・連合の共同統治だった。
もっとも、現場に行くとフランス植民地軍が実質的に支配していた。
カサブランカ港
自由フランスの戦艦リシュリュー、ジャン・バールが並び、
フランス人移民者が船から降りて港に集まる。
フランス本土から移民してくるフランス人も少なくない、
他国の属州に甘んじるくらいなら、新天地を求める気概を持つ者も少なくない。
フランス植民地総督府が提示する資源に日独伊同盟・米英ソ連合の代表達が価格を設定し、
それまでフランス本国が搾取していた資源が同盟と連合に抜かれていく、
この頃、植民地運営のため、安く潰しの利く、漢民族の労働者が増えていた。
植民地が経済成長し、近代化で、利便性が増すにつれ、
東欧に住むよりは・・・・
連合に依存するよりは・・・・
列強に並んでいた自尊心を植民地で保てるのかも知れない、と
フランス人の移民も増え、フランス植民地はヌーヴェル・フランスと呼ばれ始める。
オーストラリアの大地を数台のジープが疾走し、華寇狩りを続ける。
損失比は、豪1 VS 華100。
武器がもっと多ければ損失比をもっと有利にできる。
しかし、東海岸からダーウィン、パースは遠かった。
無理をすれば損失比が悪くなる。
アメリカからの支援物資は途切れ途切れ。
華寇は蛇やネズミも食べているらしい。
噂だけなら共食いも可能で、
生存能力だけなら人類でも有数、
聞けば日本民族は、すぐに自決する。
漢民族と朝鮮民族は、死ぬまで生き抜こうとするのだから、
ゴキブリ以上の生命力で地上最強と呼ばれ・・・
「日本は停戦してから大型輸送船を大量発注しているらしいぞ」
「今度、華寇作戦をやられたらB24爆撃機やムスタングで守ってもオーストラリアは終わるな」
「くっそぉおお〜!!!」
「あのゴキブリどもが〜!」
「ゴキブリにやられた女は不憫だな」
「・・・もう、絶対に殺す!」
停戦後、表向き、華寇は、連合国の負担で帰還させることになっていた。
しかし、気が治まらない白人は華寇を殺していく、
そして、ますます、華寇を不信させ凶暴化させる。
考える限り最悪の悪循環になっていた。
大陸で、もっとも治安が保たれ、
不正腐敗が少ない区域は日本領土か、日本租界地だった。
もちろん、租界地にも不正腐敗はある。
しかし、中国の搾取率の質と量で天と地の差があった。
悲しくても、これが現実、
租界は、中国人の権益者・有力者にとって搾取率が低く、
便宜も図れず不便だった。
しかし、大多数の民衆にとって公平に思える社会といえた。
もっともモラル、規範が保たれていなければ、
資源のない島国の小国日本がアジアの盟主になれるはずもなく、
日本民族と比較することで漢民族は、自ら自身の不正腐敗と直面する、
そして、公平な庇護を求め、
日本社会に入り込む漢民族がいたりで痛し痒し、
漢民族の病巣は、漢民族自身の内にあった。
個人の能力が、いくら高く、実力があっても、
人間同士の相互信頼を構築できない社会は近代化できない。
信頼のない社会は実力主義、能力主義をいくら強調しても、
植民地にされる個人の集まりに過ぎなかった。
漢民族と朝鮮民族がいくらNO.1を目指そうとしても、
個人の所業であれば恐れるに足らず。
抜け駆けし群れから飛び出す朝鮮人と中国人は摘み出されるか利用されるかだけ、
日本民族の個人的な資質はともかく、
信頼関係で、相互補完する社会を構築しており、
近代化しやすい下地があった。
しかし、閉塞的な村社会の窮屈さは残り、
租界の日本人社会も内地に近い村社会が作られていた。
要塞化されつつある租界地同士は砲台や河川砲艦に守られ、
水路と空路で結ばれていた。
そして、租界地を守るように少数民族が配置されていく、
少数民族は、自主独立と自衛のため、
日本から武器弾薬を購入する為に働く、
日本、漢民族、少数民族の間で釣り合いが保たれた租界は安定しており、
そうでない租界はパックスジャポニカ状態を維持しなければならず、
防衛費で無理するため負担が大きくなる。
租界の市長が楽をしようと思えば日・朝・漢・独・伊など、
いくつもの勢力を干渉させ、
特定勢力の暴走を防ぐ行政に持ち込む。
停戦後の日本民族は、半島を占領し、大陸へも進出していた。
外地の日本人は、一定のモラルを保ちながら独特な気質を持ち始めていく、
租界を結ぶ装甲列車は日本人と朝鮮民族、少数民族に安心感を与える。
そして、大多数の漢民族に不安を与える。
新型の装甲列車は装甲も強靭で、その分、軽量化されていた。
重慶より、さらに西、
この先、蒋介石国民ゲリラが出没しやすい世界が広がっている。
蒋介石は、自由資本主義とアメリカを代表し、
毛沢東は、共産主義とソビエトを代表する。
どちらも中国人主導者である点だけが漢民族の希望だった。
中国社会では、本命の現南京政府。
対抗の蒋介石国民党。穴馬の毛沢東共産党だった。
そういう価値だけで存在が容認されている。
本命が倒れても混乱することなく、次の中国へ移行できる安全弁に過ぎない、
日本も利権さえ守られれば同盟国中国との関係を悪化させたくなく、
国民党と共産党は、南京政府にまかせっきり、
大陸鉄道のコンパートメント車
「・・・成都にB29が飛来しているそうだが?」
「ああ、アメリカは、蒋介石の国民ゲリラと接触を保っているようだ」
「油断できないな」
「だが停戦後だ。南京中国軍がやるのならともかく」
「いま国民軍や共産軍と事を構えるのは得策ではない」
「んん・・・南京政府も日本が知らない手駒を隠しているようだし油断できないからな」
「アメリカは、中国に対し、独自の支援をしている節もある」
「まさか、華寇作戦で反中意識は高いはず」
「民間レベルだろう」
「国の上層部は上層部らしい計算をするよ」
「んん・・・」
「中国の国力が強くなれば日本は相対的に国際政治力を低下させてしまうな」
「とりあえず、利権を延ばす必要があるよ。味方が増える」
「それは、この先に資源があるかどうかだな」
「標高4000mのチベットか、厳しいな」
「上れないのか?」
「標高が高くなると内燃機関より、電気機関車が有利だ」
「まぁ 日本でも電気機関車への移行が検討されているから資源次第でなんとかなる」
「問題は、機械が登れても人間が生理学的に厳しいな」
「ん?」
「酸素が少ない。気圧を何とかしないと高山病になるぞ」
「あ・・・・」
「漢民族に路線を建設させているがね。作業は遅れつつある」
「そんなに酷いのか・・・」
「走っただけで酸欠で、虫の息だな」
「走れるかは別の話しになるが・・・・」
「んん・・・やっぱり、インド回りが良いんじゃないか」
「あっちはイギリスの楔が外れ、戦国時代並みに混乱中で、わけが、わからないそうだ」
「んん・・・・」
「漢民族を擦り潰してもチベットを横断して鉄道建設していくか」
「路線建設用の電気機関車を開発、量産すべきだろうな」
「んん・・・・」
日本の点と線の大陸支配は、少しずつ伸びていく、
漢民族は、富農が増え、私財を失う怖さで臆病になりやすく、
日本と組むと近代化が早いと思われていること、
そして、日本の利権体制は少数民族だけでなく、漢民族も組み込んでいた。
華寇作戦で白人世界とのパイプが閉ざされ、
漢民族は油断できなくても日本に協力的だった。
日本本土
どこかの量販店
「ドイツ製の洗濯機、掃除機、自動車、高級品・・・・」
「旧フランス領に流れているアメリカ製品も悪くなさそうだが?」
「マーケティングだけのアメリカ製品は不良品が多い」
「市場で不信を招いて消費を冷やし、市場を荒らされて閉塞させてしまう」
「悪貨良貨を駆逐する?」
「良い製品は信頼を生み、市場を活性化するからドイツ製で正解なんだよ」
「なぁ もっと庶民生活に必要なモノを作るべきなんじゃないのか」
「大佐。世の中、金だよ。高級品は利益になる。金を払えないやつに用はないね」
と、元少尉の社長が元大佐の課長に言い放つ、
希少金属を欲するドイツから製品が日本に流れてくる、
そして、旧フランス領と中立国を経由し、
連合と同盟の全地球的な取引が行われている。
「・・・・」
停戦後の日本は、民間主導の経済に切り替わり、
膠着した年功序列と、権威主義が崩されていく、
商業ヤクザで抜け駆け主義が横行し人間不信が広がる。
もちろん、権威主義で一定の礼節と節度が求められ、
理不尽で無情、無慈悲な側面も混在する、
しかし、拝金主義が台頭すると実力主義、能力主義が蔓延し、
力ある者が伸し上がりやすくなり、
年功序列や権威主義と違う資本主義のルールが蔓延していく、
屋台で、元軍人たちがふて腐れる。
「あぁ〜 やってられんな。上下関係も金次第か・・・」
「下克上で混乱中だな」
「こりゃ 時間がかかるよ」
「時間? 年月だろう」
「あははは」
「俺も中華そば屋に転職するか。儲かっているか? 親父」
「まさか、自分に合っているから、やっているだけで・・・」
「適性も大切だな」
「自分を適性に合わせるのもあるな」
「大変だろう」
「日本人は、むかしからいろんなものを取り入れてきましたからね」
「無分別で柔軟なんだよ」
「無分別は “これ” という。伝統に欠けるからね」
「中華そばは、中国から流れてきたんだろう」
「中華そばを美味く作ろうとする日本型精神構造と。
中華そばを上手く作る機械を作ろうとするドイツ型精神構造と。
中華そばを採算ベースに乗せて、利益拡大を図ろうとするアメリカ型精神構造と。
新しい中華そばを作ろうとするイギリス型精神構造と。
美意識で中華そばを作ろうとするフランス型精神構造と。
楽しい中華そばを作ろうとするイタリア型精神構造と。
無分別に取り入れると、できたモノで違ってくるよ」
「上手く融合すれば美味しい中華そばができるのかね」
「会社と同じだよ。人それぞれ、志向が違う、費やす労力に差がある」
「余裕がないとき、他者は異端で排他的だからね」
「前途多難だな・・・」
「合わない連中と上手くやるより、ケンカしていた方が気持ちで楽だからな」
「現に戦争して停戦中だろう」
「余裕ができると人間は怠惰だから堕落が始まるよ」
「軍人でさえ、軍組織の保身で振り回されて戦争だ」
「ああ・・軍が地位と名誉と保身と権益を守って拡大しようとして戦争だったな・・・」
イタリア
日独伊同盟の一つ、イタリア。
北アフリカ戦線と東部戦線で国力と兵力を磨り潰され、
南フランスでも戦線を維持するため、多くの人的被害を出していた。
半島はロンメル軍が駐留し、
北アフリカに駐留する米英軍と対峙していた。
アメリカ軍とドイツ軍は、核兵器を保有していると容易に推測され、
イタリア国民は、不安を抱えていた。
もっとも心配の種もあれば、西ウクライナと南フランスの権益は大きく、
将来の展望が開け、経済再建の兆しを見せ、
ムッソリーニ政権を無難な形で交代させてしまう。
日独伊同盟が揃って穏健派政権で担われると、
世界情勢は落ち着きを見せ始める。
停戦後の世界を安定させようと思うなら、
戦前・戦中の統治者を挿げ替える手法が使え、
イギリス首相チャーチルの落選も予定になっていた。
イタリア戦艦インペロ
戦争が終わると戦艦は象徴としての価値が上がる。
居並ぶ空母アキラも僅かに自尊心を保たせてもらえる。
インペロ 艦橋
「自由フランスめ、負けたくせに戦艦を二隻も保有するとは生意気な」
「イタリアは北アフリカを失いましたが本土は守られ」
「権益領域は南フランスと西ウクライナに広がっています」
「大西洋の道が開けた相乗効果もあるな」
「国力は、さらに大きくなると思いますよ」
「しかし、産業は、大衆向けもあるが最大顧客のアメリカが、あれだと弾みがつかないな」
「市場は財布の緩い、お金持ちになびきやすいですからね」
「スイス銀行に隠した金が市場に戻るまで待つべきだろうな」
「スイスも身元不明の預金が増えて儲かったのでは?」
「スイスが銀行業に特化しなければならないとしてもだ」
「あいつらの誘導で戦争が起きた可能性も捨てきれないな」
「敵と味方の有力者の預金口座を抱え込んで戦争を抑止しなかったのは重罪ですね」
「銀行は、信用が第一だからね」
「たとえ、一方と敵にしたとしても、もう、一方が離れてしまう」
「それは、わからないこともないですが・・・」
「しかし、スイス人は、アルプスの頂上で戦場を高みの見物で金勘定か。優雅だな」
「金は人の命より大切だと言わんばかりですかね」
「戦場では人の命より弾薬が大切だったよ」
「ふ その、なけなしの弾薬を敵にプレゼントしたのですからイタリアは貧乏のままですかね」
「俺達は善良なのさ」
「山の頂きに住む連中は金を吸い上げるばかりだがな」
月夜裏 野々香です。
『青白き炎のままに』 停戦後の世界。
同盟と連合は戦後再建を絡め、冷戦状態のまま歴史が綴られていきます。
司会者 「戦後の日本社会は、混迷を深めていくのでは?」
コメンテーター 「そうですね。古い体質と新しい波がぶつかって、いろんな可能性を楽しめる」
「良い時代かもしれませんね」
司会者 「こ、これから同盟と連合は、どうなるのでしょうか?」
コメンテーター 「そうですね。ドイツがザクを・・・・」
ぼこっ!!
コメンテーター 「・・・・」 沈黙
司会者 「し、失礼しました」
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第41話 1945/10 『でも、諸行無常』 |
第42話 1945/11 『気持ちが小さいと、世界はバラバラ』 |
第43話 1945/12 『映し鏡』 |