月夜裏 野々香 小説の部屋

   

仮想戦記 『青白き炎のままに』

   

 

第47話 1946/04 『戦後の枠組み』

 インドの社会構造は、世界全てを合わせたより複雑な階層と、

 カテゴリーに細分化されている。

 善意の意見を代弁すれば階層を簡素化すべき。

 もちろん、本音は大国に対する脅威が大きく ざまあぁみろ だったりする。

 第二次世界大戦でイギリス本国と切り離された結果、

 インドは独立、

 膠代わりに機能していたイギリス支配体制が崩れ、

 インド社会は混沌としていた。

 ハッサンは小銃を惚れ惚れと見つめる。

 38式小銃は、世界最高峰の命中率を誇る。

 武器弾薬は血筋の浄・不浄や世襲のカーストで差別しない。

 実力、能力、運など個人の総合力が問われる。

 銃が上手いことで雇われた男は、照準を標的に合わせる。

 バァア〜ン!!!!

 銃声がインドの町に響き渡り、一人の男が倒れた。

 敵?

 誰でも良かった。

 生活のため、生きていくため、

 雇い主が命じた標的を撃ち殺せば、お金が渡される。

 『カースト制・・・己の人生を謳歌するため階層を固定し』

 『弱者から奪い、虐げ、命も奪っていく』

 『上位階層から踏み躙られるか。下位階層を踏み躙って生きていく』

 『最下層は、ダリッド。不可触賎民アチュートと呼ばれ、カーストからも外れる』

 『カースト制全ての不浄としわ寄せはダリッドに集まり。人生が奪われていく』

 『この忌み嫌われるダリッドによって、カーストは保たれ』

 『歪な精神構造が支えられている』

 『輪廻転生で生まれながらにして最下層』

 『人間以下の人生に何の価値があろう』

 『たとえ、同じ人口比率で階層が構成されても』

 『人の人生を固定させるべきではなかろう』

 『・・・こんな人生なら、早く終わらせたい』

 『そう思うことがある』

 復讐の銃弾を撃ちながら自らの死も望む。

 雇い主は、不思議なことにドイツ系の白人。

 日本製の銃で狙撃する相手は同盟側の人間。

 どう考えても、反日感情、反独感情を植えつけるための作戦。

 弾が外れてもタイプ38だとすぐにわかる。

 こういった狙撃戦は、インドで珍しくなくなっていた。

 同盟と連合は、敵の装備を意図的に使って狙撃戦を繰り広げる。

 抑圧され踏み躙られてきた人生、

 権力、権威によって一方的に抑え付けられ奪われてきた憎しみ、

 鬱積した感情のおかげで人を殺す罪意識は薄れていた。

 いままで奪われてきた人生の復讐の矛先は、雇い主が命じる標的に向けられる。

 人の人生を奪うことで、奪われてきた人生が慰められる。

 上位階層が下位階層を殺すことは許され、法的にも処罰されない。

 仮に処罰されるようになっても警察は上位階層の味方、

 下位階層ダリッドが上位階層を殺せば、

 それこそ、一族皆殺し、村ごとボアされる。

 イギリス支配のままの方が良かった、という声も少なくない、

 独立してもバラモンのカースト支配はインド人の精神を歪に捻じ曲げる。

 仮に標的がカーストを無くそうとしていたバラモンであっても、

 そんな事はわからないのであり、

 カーストより、バラモン憎しであり。

 結果に責任を持つつもりはなかった。

 

 

 

 ワシントン

 白い大理石の壁に掛けられた巨大な世界地図、

 2人の白人が眉間にしわを寄せ、見つめるが見通しは明るくない。

 「シナリオ通りであれば、この白い家は人類最高位の首長の館になるはずだった」

 「ええ、世界の善悪を定める首府になるはずでした」

 「アメリカ合衆国を頂点にした政治・外交・経済・軍事支配体制は棚上げです」

 「総合力では圧倒的だったはず。どこで狂ったのだ?」

 「航空戦力が戦場を支配し、空母が海戦の主役となったことでしょうか」

 「あと華寇作戦は戦前のシナリオにありませんでした」

 「空挺部隊によるポートモレスビー強襲で化学・細菌兵器が使用されたこともだ」

 「対日戦で弱みを握られ、戦後支配のうまみが消えたな」

 「あの規模で空挺作戦が行われるとは思いませんでした」

 「おかげで機動部隊を珊瑚海に配備させられ、東太平洋が手薄になってしまいました」

 「日本は、背伸びしているだけの小賢しい弱小国だったはずだ」

 「アメリカ西海岸上陸作戦で、なりふり構わず、持ち船を捨てたのが大きかったようです」

 「あの規模で上陸作戦が行われると予測できませんでした」

 「困ったものだな」

 「残念ですが世界市場は、戦前より狭められました」

 「だが、一時的に経済を拡大させることができた」

 「しかし、アジア・欧州市場を失うとはな、中立世界の動きも安定しない」

 「恐怖心、猜疑心は労働の糧になります」

 「連合諸国は懸命に働いてアメリカを頼って武器弾薬を購入するはず」

 「豪州とイギリスと北アフリカで地場を築くことができた」

 「最大の市場であるアジアを失ったのは痛いな」

 「アジアの希少金属がドイツへ流れることもです」

 「それも厳しい」

 「巻き返しの工作は行われています」

 「頼むよ」

 軍隊は動かしておらず。武器弾薬も使っていない。

 しかし、緊迫した空気は戦時中のものと、それほど変わらない、

 国家運営、そのものが国家間の競合、闘争も含んで行われる。

 国力比が、9対1。7対3。5対5。3対7。1対9

 主従関係(9対1、1対9)。

 抗争関係(7対3、3対7)。

 対峙関係(5対5)で外交戦略は、まったく、変わってくる。

 連合と同盟の国力比は、7対3から6対4へと向かっていく可能性がある。

 国力比が近付けば選択枝が狭まり、

 逆転されれば主導権を奪われる。

 力関係が逆転される恐怖は、人間関係でも国際関係でも同じ、

 足を引っ張れるものなら引っ張る。

 国の指導者は、愛国心と成功を望み、

 他国の愛国心と成功を恐れる。

 自国の生殺与奪権を握らせず、

 他国の生殺与奪権を握ろうとする。

 これは、戦時でも平時でも変わらず。

 武器を使用していないだけで戦争状態にあるといえなくもない。

 

 会議

 「これ以上の軍事的圧力は同盟全体の負担より」

 「連合全体の国力を削ぐ結果になるのでは?」

 「いえ、国力で勝っているので軍事的圧力を掛け続けても負担比率で圧倒できます」

 「問題は、国民感情です」

 「もう国民は戦争を望んでいないか」

 「華寇に対する報復は強いようですが日中同盟が強化されます」

 「日本さえ潰せば、中国は、たいしたことは無かろう」

 「日本の大陸利権は、揚子江沿いと大陸鉄道で広がっています」

 「中国の国力の総量は日本の2割を越えるでしょう」

 「いずれは大陸の方が大きくなるか」

 「踏み躙れる人口、消費能力など総量が日本と桁が違いますからね」

 「ミッドウェーの埋め立ては?」

 「進んでいます」

 「北アメリカ大陸西岸を削り取ってでも対日作戦用の前線基地を建設」

 「あまり役に立たない大陸の中域まで運河を建設できますよ」

 「本当は日本、中国と、和解した方が西海岸の経済にとっていいのだが・・・」

 「産業界は、そうでもアメリカ国民の憎しみは消えません」

 「日本の米中離反謀略に乗せられたというべきでしょう」

 「それは過去形ではなく、現在進行形だよ」

 「この戦争で得られたものは失業対策と経済再建以外に何もない」

 「華寇を犯人に偽造した犯罪は、黒人とインディアンだけでなく、白人の間でも増えています」

 「華寇軍は、もう、ほとんど残っていないというのに・・・」

 「揚子江の工作員の報告も敵意の視線に晒されているとか」

 「ああいう国だ。売国者はいるはずだろう。日本にもいた」

 「モラルが高いと売国者は少ないですがね」

 「囮捜査で国内の売国者を片付けておこう」

 「合衆国国内の締め付けも必要だ」

 「まず、黒人とインディアンをどうにか、すべきでは?」

 「大規模には、やれないだろう」

 「国内の先住民を殺して他国の先住民殺しをやめさせるのは格好が付かない」

 「しかし、他国より先にアメリカ国内の治安維持を回復しなければ・・・」

 「・・・まず、国内のモラル回復を優先させよう」

 「他国に侵攻されて結束が強まっているはず」

 「モラルさえ、回復できれば国力比で引き離せる」

 「わかりました」

 「問題は、ドイツ帝国だな」

 「北アフリカ戦線は、アラブ・イスラムの反発が強くて手間取りそうです」

 「アメリカ、イギリスにとってのインドネシアと東欧に当たるのかな」

 「はい、状況としては、イタリア、ドイツに近い分だけ不利かと」

 「戦争は厳しいか」

 「はい」

 「このまま、ズルズルといきそうだな」

 「国防省と産業は悪くなさそうです」

 「当分、増強はできないよ。再編成して備えるのみだ」

 

 

 

 満州

 真夏は、30℃以上。真冬は、氷点下3〜40℃。

 4月は、比較的、涼しく過ごしやすい、

 満州鉄道は、安全性が高まり、人々の生活水準も押し上げていた。

 ドイツ人技術者は、食堂車でビールを楽しむ、

 満州が祖国の気候に近いせいか気持ちも馴染んで見える。

 過ぎ行くホップ畑の生育にも、

 ご満悦で国が変わっても自家製ビールへの執念は本物といえた。

 「・・・ビール。ヴルスト(ソーセージ)。ジャガイモ」

 「ドイツ人が望む衣食住は何とかなりそうだ」

 「ユダヤ人と白ロシアの人たちと揉め事を起こさないようにしてください」

 「わかっている」

 「ドイツでもユダヤ人に対する国外退去は認めている」

 「しかし、これだけ豊かな土地があると日本も随分と楽になるだろう」

 「ドイツも北フランスまで勢力を伸ばせて良かったのでは?」

 「もちろんだ」

 「南米でジャガイモが発見されていなければ、ドイツは、まだ間引きが行われていた」

 「今の国力もないだろうな」

 「日本でも間引きは減ると思います」

 「しかし、農業国になれないドイツが貧しさを反動に工業化した事を思えば」

 「農業に適さない土地も、あながち悪いと、いえないがね」

 「牧畜業は、食料自給率を落とします」

 「規模は慎重にお願いしたいのですが・・・」

 「製造、販売の過程で需要は増え」

 「産業も大きくなって就業率も高くなる。肉は、利率もいいよ」

 「まぁ 悪くはないですが・・・」

 「結局、他で餓死者を出しても肉を食べたい人間の本能は変わらない」

 「華寇作戦で随分と漢民族も豊かになったようです」

 「しかし、問題は、信用できる牧童が満州にいるかです」

 「牛泥棒は死刑が最大の抑止でしょうな」

 「日本人はどうです?」

 「比較的、信用できるかもしれません」

 「ですが牧畜業経験者は少数派でしてね」

 「まず、牛殺しは嫌がるでしょう」

 「牛殺しが得意な民族がいるとか・・・朝鮮人が得意でしたな」

 「それは良かった」

 「牧畜は、モンゴル人が慣れているかもしれませんが」

 「その辺は、検討すべきだね」

 「あとは、鉄道と幹線道路を敷けば満州も大きくなっていくでしょう」

 「そういえば、イタリアのフィアットも満州に進出したがっているとか?」

 「彼らはデザインと表面上の速度にこだわりすぎです」

 「安全性、走破性ではドイツ車ですよ」

 「どちらにしろ、いまのところ、日本車は、太刀打ちできそうにありませんね」

 「日本人もドイツ車に乗る方が幸せですよ」

 「お金持ちは、そうでも大衆は予算で決めますから・・・」

 「それに先に道路を作らないと行けませんから」

 「それ以前に鉄道になりそうです・・・」

 「まぁ このアジア号は、いいですな」

 「時速120kmは、少々、遅いようですが豪華だ」

 「イギリスのA4クラスは、202kmですが、キャッスル型が131km」

 「ドイツのBR05が時速160km。平均125km」

 「随分、追いついたのでは?」

 「日本は、電気機関車に移行して仕切り直しですかな」

 「燃料で苦しめられるのは御免ですからね」

 「日本は、基礎工業力を身につけた後で運が良い」

 「いえ、いえ、このアジア号も、いくつかの部品製造でドイツ工作機械に頼るしかありません」

 「しかし、ドイツ製は、もう少しオーソドックスな構造がいいのでは?」

 「連合に物量で負けていると自然に質に拘るでしょう」

 「わかりますが消費市場も大きくなっているので、そろそろ採算重視した方がいいのでは?」

 「ドイツ人は不器用なくせに凝り性な人間多くて、簡単に性根が変わると思えませんが・・・」

 「不器用なのに近代化とは恐れ入ります」

 「不器用なので基礎の規格品質をしっかりとやる必要があるのです」

 「ドイツ人にヤスリがけは無理ですからね」

 「なるほど日本人は、手先が器用なことで不利益を招いたわけですか?」

 「業種によるでしょう」

 「手先の器用さをいかせる職業は、たくさんありますからね」

 「ではドイツ人と日本人。互いに不足を補えるということでしょうか?」

 「ほとんどの国は、それぞれ、長短があって、それが衝突の原因になります」

 「しかし、日本とは補い合いたいものです」

 「ドイツ人からみると日本人は神経質に見えるのでは?」

 「神経質も、繊細も同じですからね」

 「良いように取れば繊細。悪いように取れば神経質」

 「結果論で分かれるので?」

 「夫婦が、くっ付く理由も繊細だからで、別れる理由も神経質だからでは?」

 「ありえますね」

 「そういえば、ドイツは法に厳格だとか」

 「厳格な気質は、メリットも、デメリットも内包している」

 「都合よく。どっちもとは行かない・・・・あれは?」

 「・・・ああ、ソ連の侵攻時に捕獲した戦車です」

 「アメリカのM4シャーマンが多いですな」

 「日ソ中立条約のせいで北太平洋輸送で回ってきたのでしょう」

 「なるほど・・・」

 日本は、日ソ不可侵条約を守ろうとし、

 ドイツは、独ソ不可侵条約を破って、ソ連に侵攻。

 日独伊同盟の強化が成せれば、

 満州国の国力が高まって兵站が増せば、

 次は・・・

 

 

 掘り起こしたソ連軍戦車を修理、改装して配備していく、

 もっとも極東ソ連軍は、欧州ソ連軍と少しばかり毛並みが違う。

 戦車の多くがM4シャーマン戦車でT34戦車、スターリン戦車は少数派。

 日本の軍事予算は維持費 + 雀の涙。

 この状況下ではソ連軍戦車。

 いや、M4シャーマン戦車は貴重な戦力だった。

 木馬

 「阿室中尉。T34戦車も悪くないですがM4シャーマンは、いいですね」

 「スターリン戦車は涙モノだな。3式自走砲が玩具に見える」

 「これで、まともな戦車戦ができそうですね」

 「しかし、上層部は、停戦後、やる気なしだな」

 「こいつをどこかに持っていこうとしている」

 「ええ、油田が出たとかで、いまだに穴掘りをやっているようですし」

 「せっかく、戦車師団を編成できるというのに」

 「送られてくるのは、ツルハシにシャベル。軍手・・・何、考えているんだか」

 無線が入る。

 「・・・阿室中尉。分隊を移動させるそうです」

 「お、国境か?」

 「いえ、南です」

 「はあ?」

 日本の大陸支配は、点(租界)と線(大陸鉄道)に限定されている。

 他国の主権は、面。

 アメリカのM4シャーマン戦車。ソ連のT34戦車は、満州で集中配備するより。

 点と線の防備で大陸全域で分散配備する方が効率が良く、

 大陸の支配体制を確保しやすかった。

 要衝に大きな戦車が一両あるだけで日本利権は安上がりに守りやすい、

 一方、対ソ防衛線は付け焼刃な捕獲戦車より、落とし穴が良いのではないか。

 というのが上層部の発想になっていた。

 戦車が、どれほど、強力でも車体全長以上の堀は渡れず。

 登坂能力以上の斜面は登れない。

 無論、いったん戦端が開かれると爆撃されたり、砲撃されたり。

 戦車を渡す工兵が出てくる。

 しかし、ソビエトは、モスクワに原子爆弾を落とされ、

 スターリン亡きあとは混迷中、

 また、ソビエト国民も疲れ切って対外戦争で権力集中させるどころか、

 空中分解という可能性もあった。

 主要国は、国家的自閉気味で、戦端が開かれそうにないが

 各国の共通認識だった。

 

 

 

 

 

 南京

 戦乱が収まり、権力構造の骨子が決まる。

 あとは、支配体制に沿って少数の特権階級、

 大多数の非特権階級の地位が振り分けられてしまう。

 取捨選択で貧富の格差が作られていくため、世の中、不公平にできている。

 通常、生存権を確保している特権階級の比率は、5パーセント程度。

 大陸が6億だと支配階級は約3000万人。

 日本民族が7000万で特権階級が5パーセントだと350万。

 もっとも、一人当たりのGDPなど、生産効率の差、労働価値に差があった。

 一概には言えないものの、

 日中のGDP(一人当たりの生産量)の差は、次元が違う。

 そのうち半分を日本人が占めることができれば御の字。

 しかし、言葉とか文化の違いで、そうもいかない。

 不足分を台湾人(400万)、朝鮮人(2000万)、少数民族が占めるが足りない。

 結局、大半を漢民族が占めてしまう。

 特権階級が存在するのは仕方がないといえる。

 個人でも、外面良く八方美人になろうとすると、

 不信感、猜疑心、利害関係が歪に広がる。

 そして、徒労ばかりで親友の一人も得られず人生が破綻してしまう。

 破綻してしまう人生は、その場、その場の外面良く、

 優先順位がでたらめな人間が多かった。

 自分にとって価値のある人間から価値のない人間と優先順位が作られていく、

 知り合いが多くても親友が1人か、2人になってしまうのは必然で、

 独り善がりが過ぎると、生涯、親友が作れず終わってしまう事もある。

 というわけで誰しも不公平な関係を作ってしまう。

 当然、誰かに対して不公平と非難するのも、

 おかしな事で不公平は当然の権利といえなくもない。

 個人の人間関係でも、そうなのだから

 企業間、国家間でも優先順位が決まる。

 戦略なしの全方位外交などありえない、

 第二次世界大戦を辛くも引き分けた日本は、アジアの盟主。有色人種の希望。

 そして、中国は日中同盟を利用してアジアの盟友にならんと画策する。

 しかし、この中国大陸、潜在的な可能性が高いものの、

 問題点が、いくつかあった。

 汚職、腐敗、横領、犯罪・・・・

 どこの国でも犯罪は起こるが不正腐敗の桁が違う。

 中国大陸で日本人が増えていくと、

 中国人が日本人に道を尋ねることも珍しくなくなる。

 日本人が中国の道を知っているのか?

 というより日本人は知らないと “知らない” と答える。

 中国人に道を聞いて迷わされるより、

 道を知っている日本人に出くわすまで聞きまわる方が効率が良いらしい。

 中国人個人の才覚が優れ、商才があり、

 如何に有能でも自然とバラバラになりやすかった。

 とはいえ、揚子江で現実に朝鮮民族と直面すると、

 嫌悪感と敵意から漢民族同士が組み始める、

 青果問屋

 ここに来れば品物が全部揃う。

 便利だが現地調達と違って中間マージンが取られる。

 大規模商店であれば、現地から大量仕入れ、直接運んでくるので得、

 小売店は現地を巡回する時間も予算も気力もなく。

 ここに買いに来る。

 問屋の一角で日本人、漢民族、朝鮮民族がテーブルを囲み、

 スタッド・ポーカーに興じていた。

 最初に隠し札1枚。

 残り4枚が一枚ずつ表向きで、賭けながら配られていく、

 「・・・キュウリが遅れているよ」 ノー・ペア

 「あいや〜 道を通す許可書の手配が遅れているある」 3ワン・ペア

 「早く道を通すニダ。遠回りは困るニダ」 ノー・ペア

 6枚のトランプがテーブルに載る、

 隠し札1枚。公開札1枚ずつ、

 見ることが、できるのは自分の隠し札1枚と公開札3枚のみ、

 公開札で、ダブりがなければ計算は単純。

 最善でワン・ペア。

 テーブルにコインが載せられていく、

 自分の順番が来れば、コールが同額の賭け、

 レイズが賭けの吊り上げ。フォルドで降りる、

 1枚を除いてオープンに開かれているので降りるか、賭けるか、

 心理的な駆け引きが重要になったりする。

 「やれやれ、賄賂が通用する社会は融通が利いて楽しいといえば、楽しいが・・・」

 「コール」 ノー・ペア

 日本人は賄賂が苦手で堅実に勝とうとする。

 「本当は、農地の役所仕事も日本人にして欲しいある。コール」 3ワン・ペア

 漢民族は、ポーカーフェイスで計算する。

 「朝鮮民族の方が仕事は早いニダ。レイズ」 ノー・ペア

 朝鮮人は、喜怒哀楽を誤魔化して接待・賄賂攻勢とハッタリ、

 隠し札1枚。表を向いているカードが2枚。

 

 日本人が隠し札と公開されている手札を見て、

 2人の表情を覗き見てコインを載せる。

 「・・・・コール」 ノー・ペア

 「朝鮮人は、まず、事務処理業務を覚えるある。コール」 3ワンペア

 「それくらい、できるニダ! レイズ」 ノー・ペア

 隠し札1枚、表向きの手札3枚。

 

 後一枚で、決着が付いた。表の手札は全てブタ。

 しかし、隠し札次第でワン・ペア以上の可能性もあった。

 公開されている手札の数字の大きさも圧力になりやすい。

 最後の一枚で逆転という可能性もある。

 ブタの可能性。

 他者との最大数値のワン・ペアと最低数値のワン・ペアが計算される。

 ストレートの可能性はゼロ。フラッシュの可能性は日本人にあった。

 「・・・・・」

 「・・・・・」

 「・・・・・」

 会話とは、裏腹に心理戦は鍔迫り合い、

 隠し札でワンペアが作られているか、

 言動、表情、目配せ、身動ぎなどで探る。

 

 「日本の利権は租界と地下資源、沿線沿いだから。農地までは及んでないよ。コール」

 「漢民族は袖の下をやるまで仕事をしないある。レイズ」

 「その漢民族は、お前の同族ニダ。コール」

 隠し札1枚。公開の札4枚がテーブルの上に開かれていた。

 朝鮮人が5ワン・ペアでリードしている。

 ここで、最後のコールをするかで決着が付いた。

 

 

 「困るな、農作物の収穫が不安定になると市場価格が安定しない・・・コール」

 「元々、定額制じゃないある・・・コール」

 「一人一人、値段を見定めて吹っかけるのって大変だろう」

 「身なり、人なりで高く売りつけるニダ。コツを覚えると面白いニダ・・・コール」

 にやりと微笑む朝鮮人が、5ワン・ペア。

 日本人が、最後の1枚で、10ワンペア。

 漢民族が、3スリー・カード

ノー・ペア ワン・ペア ツー・ペア スリー・カード ストレート フラッシュ フルハウス フォー・カード ストレート・フラッシュ ロイヤル・ストレート・フラッシュ
分子 1302540 1098240 123552 54912 10200 5108 3744 624 36 4
分母 2598960 2598960 2598960 2598960 2598960 2598960 2598960 2598960 2598960 2598960

 

 単純な確率で、公開札が重複するたびに計算が変わり、

 隠し札を推測しつつ、心理戦が絡む。

 2回に1回はブタ。3人のうち、2人か、1人は、ブタになりやすい・・・

 掛け金が漢民族に集まる。

 「勝ちある〜♪」

 「買い物が下手な中国人は、みんな日本租界か沿線で買うある」

 「ちっ! そりゃ 困るだろう」

 「・・・・・」 ぶすぅ〜

 「中国の小売店はカモがいなくなって困るある」

 トランプがシャッフルされ、

 次の手札が、配られる。

 「・・・ところで、中国は、戦闘機、海燕の生産が可能になったって? コール」 ノー・ペア

 「生産しているのは朝鮮人ニダ。でもまだ、作れない部品もあるニダ。コール」 ノー・ペア

 「造船に力を入れたらいいのに」

 「飛行機も作りたいニダ」

 「日本は、高性能より、安全性と採算性の取れる飛行機に切り替えているというのに・・」

 「飛行船もいいある。いま飛行船用巨大格納庫を建設しているある コール」 ノー・ペア

 隠し札1枚。公開札1枚

 

 「安い労働者がいる国はいいな。日本の再建は進んでいないというのに後回し・・・レイズ」 4ワン・ペア

 「日本は、本土爆撃で衣食住からニダ。コール」 7ワン・ペア

 「日本は、国体を守る代わりに国益を失ったある。フォルド」

 隠し札1枚。公開札2枚。

 表札で日本人と朝鮮人がワン・ペアを作ると中国人が降りて、

 日本人と朝鮮人の一騎打ち。

 

 「不発弾が多いので再建が遅れていますね。コール」 4ワン・ペア

 「大丈夫ニダ。同胞の華寇軍がアメリカ西海岸から中部域を越えつつあるニダ。コール」 7ワン・ペア

 「アメリカ東海岸まで辿り着ければ華寇軍の評価は、もっと上がるある」

 隠し札1枚。公開札3枚

 後一枚で、決着が付いた。

 互いの公開された手札で確率を計算する。

 「」

 「」

 

 

 

 中華飯店

 「最近、中国人の結束が強まっていないか」

 「まだ、華僑のような結束力はないが、外国人が増えて危機感が増しただけだろう」

 「漢民族が結束するか、分裂するか。敵次第か」

 「停戦で、この辺も賑やかになってきたな」

 「対岸の祟明島の建設に誘われて労働者が集まってきているんだな」

 「もう、偽札効果も終わりなのにな」

 「偽札が切り替わるまで、もうしばらく必要だろう」

 「まぁ 偽札の方が出来がいい紙幣を作っていた中国が悪い」

 「丁度、良かったんじゃない。人口分の紙幣を作れなかったんだから」

 「問題は、祟明島をアジアのマッハンタン島にできるか、だね」

 「少なくとも、日本の大陸利権が、そこで管理されているのなら可能だよ」

 「祟明島は、全長72km。全幅15kmで砂質の中州」

 「マッハンタン島は、全長20km。全幅4kmで一枚岩の岩盤質」

 「土台で負けていると、不利だろう」

 「どちらかというと大きさからロングアイランド島に近いね」

   ※ロングアイランド島。(全長190km。全幅19km〜32km)

 「そこは人海戦術で・・・」

 「そりゃ うじゃうじゃいるから、できないわけじゃないけど、造成工事は、かなりの規模だね」

 「祟明島なんて取るからだよ」

 「揚子江の出口で大陸鉄道の中継地点で適当だからだよ」

 「橋かトンネルを作らないといけないがね」

 「水平線は約5km。祟明島の川幅で一番近いのは1.37kmだけど」

 「ほとんどは大陸から見えないほど離れた島だし、反発も小さい」

 「そりゃ 不沈戦艦とか、不沈空母とか。要塞にできれば地理的に大きいけどね」

 「しかし、仮に完成しても日本人は残虐性が低いからね」

 「大陸で舐められやすい気質だよ」

 「ヤクザみたく尖ってばかり、いられないだろう」

 「ヤクザみたいに尖ってないから舐められる」

 「舐められるから逆襲されてしまう。逆襲されるから余計に血を流す」

 「ヤクザみたいに尖ってたら舐められない」

 「舐められなければ無駄な血を流さずに済む」

 「相手がヤクザだと普通は紳士的に接するからね」

 「そういうのはあるが日本人の小市民な気質に無理がある」

 「やはり、歴代中国王朝のように圧政しないと民衆に潰されるんだよ」

 「そういえば、南京政府も、かなり、やり始めているな」

 「適当な名目がないから困っているようだが」

 「中国南京政府は、アメリカ、イギリスを悪者にして民衆をまとめている」

 「日本と朝鮮人を悪者にして、治世をする場合もあるよ。楽だからね」

 「生かさず殺さずじゃ 駄目かな」

 「生殺しが一番、中途半端だと思うけど」

 「日本人は、大陸経営に向かないよ。台湾人の方が上手い」

 「だけど、漢民族は不正腐敗にまみれた中国型官僚経済より」

 「日本型担保経済にチャンスを見出せるよ」

 「日本がアメリカ型投機経済ができるのは、いつになるやら」

 「夢と希望で資本を動かすのはリスク嫌いで小心者の日本人には無理だね」

 「良く戦争できたもんだ」

 「見境なく大陸に手を出して退けなくなったんだろう」

 「儲かるし。地平線にも憧れるけどね」

 「鉄と石炭を抑えないと生殺与奪権を握られた貧乏下請け業者で永遠の奴隷だよ」

 「漢民族と朝鮮民族にとって屈辱だろうけど・・・」

 「アメリカとイギリスもだろう。近代化させた相手にやられたんだから」

 「伸るか反るかの賭けだったわけか」

 「伸る方で良かったな」

 「運が良かっただけだろう。無駄な戦場が多すぎたし」

 「確かに戦線を拡大しすぎたね」

 「華寇作戦がなかったら戦線は崩壊していたな」

 「うん。漢民族と朝鮮民族にデカイ面させるのが癪だけどね」

 「あいつら、そればっかりだからな。帰還兵は英雄だし」

 「漢民族と朝鮮民族は、状況的に悪くないはずだけどね」

 「やっぱり、権威賛歌の儒教が足を引っ張っているのだろうな」

 「体制を守るのには適しているが・・・」

 「もう少し、思想的に自由になればいいけどね」

 「思想は誰にでもあるよ。クズな思想から優れた思想まで」

 「しかし、権力者と権威者が恐れるのはクズ思想でなく、優れた思想だよ」

 「そりゃ 執政者にすれば優れた思想だと、お前じゃなくてもいい、だからね」

 「クズな思想しか持たない大衆の方が嬉しいだろうよ」

 「中国のような圧政な社会だと、儒教のような権威主義な思想が生まれやすいか」

 「まぁ 孔子も言いようによっては、権力者に媚びた思想と言えるね」

 「まぁね」

 「連中が自暴自棄で近代化を遅らせてくれるのなら、それは、それでいいけどね」

 「日中朝友好映画とか、作るらしいけど仲良くなると、せびってくるよ」

 「買わせるよ。資源でね」

 「問題は、中国と朝鮮人がドイツから直接、工作機械を買う場合だよ」

 「ドイツも揚子江で利権と地場を広げられるのなら売りそうだし」

 「やばいな」

 「やばい、やばい」

 「いくら気質がそのままでも工作機械が良ければ、まずいことになる」

 「発電所は建設するんだよな」

 「建設するよ。資源と利権が得られて、地場も広がる」

 「だよな〜」

 「ソ連側のウィグルに鉄道を伸ばそうぜ」

 「そうすれば、反ソで、日中同盟が強化されるよ」

 「ウルムチとカシュガルか。採算がな」

 「本土も、再建途上で投資を嫌がっているし、少数民族が、どう出るか・・・」

 「そりゃ 揚子江と同じでいいだろう」

 「少数民族は、日本民族と組みたがる」

 「まず、言語を覚えないとな・・・」

 「いや、少数民族ごと日本租界に取り込むべきだろう」

 「でもなぁ 欲しいのは、対立じゃなくて、資源だよ」

 「採算が取れないと鉄道を引っ張れない」

 「それに漢民族は、少数民族を弾圧して西域も統制したいはず」

 「日中同盟だと、その方が中国軍の士気が保てて、好都合のような気もするがね」

 「ドイツは、中国西域にコマを進めたいんじゃないか」

 「そりゃあ、中国西域からソ連の内腹を食い破れるのならドイツも嬉しかろうよ」

 「ドイツも予算が厳しいから余程、租界が大きくないとな・・・」

 「中国西域で日独中同盟で戦線を張れるのなら悪くないよ」

 「だから資源だって・・・」

 この頃から日本語と中国語の堪能な台湾人の大陸移民が急増していく、

 そして、日本人の台湾移民が急速に増えていく、

 

 

 

 

 赤レンガの住人たち

 フリッツX。

   全長3.262m×全幅1.35m。胴体直径56.2cm。

   最大速度1035km/h。重量1565kg。炸薬320kg。射程距離15km

 日本海軍が注目しているのがこれだった。

 しかし、残念なことに重量の関係から

 Hs293。

   全長3.58m×全幅3.14m。胴体直径48cm。翼面積1.98u。

   推力588kg。最大速度900km/h。重量1045kg。射程距離3km。

 「ホルテンにフリッツXを搭載するのは難しいか」

 「いや、ジュラルミンを大量に使えば大丈夫だろう」

 「いまのところ、フリッツXは、重量が1570kg。ホルテンは、約1045kgだから足りないな」

 「無理をすれば載せられるが他にしわ寄せが行くだろう」

 「惜しいな」

 「だいたい。単座戦闘爆撃機だし」

 「無線誘導は、もう一人必要だから複座になるよ」

 「だけどアメリカ機動部隊が、どんなに強力でも、こいつに狙われたら終わりだよ」

 「ホルテンは見晴らしが悪そうだな」

 「ドイツは、ホルテン型で、4発と、6発の爆撃機を検討しているらしい」

 「それだとフリッツXも大丈夫だと思うが」

 「そんなの予算が付かないよ」

 「複座で艦隊攻撃用とかは?」

 「ドイツは開発しているんだろうか」

 「そりゃ 地中海では戦果を挙げてるから」

 「でもさ。開発をドイツ任せでいいのか。日本の兵器産業の独創性は?」

 「ていうか、予算付かずだろう」

 「そ、そうだった」

 「まぁ 戦争で負けたわけじゃないし」

 「建て直しが進めば独自開発もいけそうだけどね」

 「そういうセリフは他の国の真空管とか、ベアリングを見比べてから言うべきだろうな」

 「そうそう、まともな工作機械ぐらい。国産で製造できないと・・・」

 「その前に赤字国債と軍票をどうする、って、感じだな」

 「んん・・・いっそ、負けて全部チャラにするというのもあったよな」

 「いや、それは圧倒的に、まずいだろう」

 「そう思いたくなるほど赤字が膨らんでいるからだろう」

 「貧乏なくせに英霊に引っ張られて地獄のふたを開けて戦争するから」

 「もう英霊じゃなくて、亡者とか、亡霊に近いな」

 「いや、英霊じゃなくて、生霊の欲に引っ張られたのさ」

 「貧乏過ぎて捨て鉢になって居直り強盗なのでは」

 「ぅぅ・・・モラルが保てん」

 「モラルより、権益を保とうとして戦争じゃね・・・」

 「白人みたく、有色人種を人間扱いしないで自己正当化とか」

 「どんなに色白に育てても太陽に手をかざせば、白人と有色人種の違いは一目瞭然だろう」

 「しかし・・・予算がないと暇だね」

 「くれない族が煩くてな。逃げ出したいよ」

 「あれして、くれない。これして、くれない、って?」

 「そうそう。日本人を半島に移して領土が増えたから、しがらみが少ないけど」

 「そうじゃなかったら経済破綻でアメリカに身売りだったよ」

 「アメリカがミッドウェーを埋め立てているのが怖いんだよ」

 「その場しのぎ的に占領地から巻き上げないと、やばくない?」

 「どのくらい撒き上げる?」

 「一個機動部隊分くらい」

 「その一個機動部隊で撒き上げた大陸の反発をねじ伏せるの?」

 「装甲車の方がマシ」

 「それ以前に遺族年金とか、見舞金とか、洒落にならないけど」

 「戦災被害者と戦傷者も、多いね」

 「だいたい、医療技術低すぎるんだから・・・」

 「強制的にインフレするとか?」

 「面積当たりの人口も減って、地価、下がっているし・・・」

 「戦傷者、戦災孤児、年金受給者に死ねって事かな」

 「この場合、尊い犠牲だったりして」

 「なりふり構っていられないかな」

 「良く考えて公共工事やらないと軍事予算も、しわ寄せが来るよ」

 「連合側と、まだ直接貿易できないのが痛いね」

 「ヌーヴェル・フランスを筆頭に中立国は大儲けか」

 「直接貿易か。国民は理屈で望んでも感情で望まない」

 「上層部で数十人が生け贄になれば、できないこともないけど無理だろうね」

 「年月に解決してもらうしかないか」

 「予算もね」

 日本の官僚は、トップ次第で、それなりに有能だった。

 しかし、予算がないと無力だったりする。

 

 

 北アメリカ大陸。

 目の前に大河が広がっていた。

 周りは森が広がり自然ばかりで遠くに家が一軒、見えるだけ、

 40代くらいの釣り人が倒れ、

 少し離れた場所で黄色人種が2人。釣りを始める。

 「・・・お腹が空いたニダ〜 釣れないニダ〜」

 「満腹なのに何で、お腹が空くある?」

 「そっちこそ、順華なのに上手くいかないニダ」

 「川があるのは、順華のせいじゃないある」

 「なんと言う川ニダ?」

 「さっきの標識だと、ミシシッピーある」

 満腹と順華は、ここまで到達するまで数え切れないほど殺生をしていたが悪気はない。

 中国人と朝鮮民族の人権をアメリカ合衆国が認めるまで殺生を続ける。

 満腹・順華の視点だと当然の権利で要求・・・

 というより交戦中は、食うか、食われるか、

 殺し合いなので対等以上 “アメリカは降参して、俺の言うことを聞け” な関係なので命令だった。

 中国歴代王朝が漢民族の人権を認めたことがあったか、というと “ない”

 アメリカ合衆国の視点だと黒人とインディアンにさえ差別していた。

 なので、かなり理不尽な要求をされている。

 アメリカ合衆国は自らに資本主義と民主主義のルールを定め、

 個人主義を謳歌すると人心を集約して、国力の成長率は早い。

 しかし、そのことで伴う建前と本音の矛盾は、付け込まれやすかった。

 「おっ!」

 ばしゃ! 

 順華が竿を引き揚げると竿がしなり、魚が跳ねる、

 「やった大物ニダ〜♪」

 全米を恐怖に叩き込む2人組も、魚が釣れると普通に嬉しいらしい。

 食後、しばらく和むと悲鳴が聞こえる。

 女の悲鳴だったので、にやりと笑い、早速出かける。

 「何やっているある」

 双眼鏡で覗き込むと茂みで男3人が女性1人を襲っている。

 「襲っているニダ♪」

 「どうするある?」

 「見物するニダ♪」

 「あの家の娘ある」

 「あの車は男たちの物ニダ」

 「キーは?」

 「付いているニダ♪」

 「今のうちに、車、もらうある」

 「しかし、車だと橋を渡るとき見つかるニダ」

 「本当は船が欲しいある、あの家にあるかもしれないある」

 「ニカ!?」

 「どうしたある?」

 「・・・アイゴ〜 あいつら中国の刀を持っているニダ」

 「終わった後、アレで女を刺し殺して、俺たちのせいにするあるか・・・」

 「女を殺すなんて、もったいないニダ」

 「やってもいない犯罪まで付け加えられる・・・」

 「俺たち、俊足仙人で歴史に名が残るある」

 「全部、自分がやったことにして生き残ったら仙術で儲けるある♪」

 「でも、あいつらをこのままにすると俺たちが、ここにいたことがばれるニダ」

 「んん・・・あいつらの口を塞ぐある」

 「それに他人に罪を擦り付けるのは中華だけに許されたことある」

 「蛮人は許されないある」

 「天誅 (ある & ニダ) 〜!!」

 その日、3人+1人の白人男性が土に返り。

 数日後

 満腹と順華が対岸へ向かうボートから手を振る。

 「バイバイある〜!」

 「元気で生きるニダ〜!」

 散々、遊ばれた若い白人女性が木に縛られ取り残されていた。

 女は、いっそ殺されて楽になりたかったのか、

 死んだような目でミシシッピーの水面を見つめる・・・

 

 

 テネシー州 ナッシュビル

 州軍と州警察が押し問答していた。

 「ミシシッピーを渡った華寇のグループは、4つから5つ」

 「しかし、本当に華寇か、疑問ですよ、大尉」

 「ここに娘の家に書き残された文書の写真がある」

  This is a war that is not the crime. I continue until the United States surrenders.

  ※ 訳 “これは、犯罪ではない戦争だ。アメリカが降伏するまで続く”

 「待ってくれ、その文書は英語で書かれている」

 「華寇が英語を書けると思えないが」

 「よく言う。中国語で書かれていたときも白人が偽装したと言ったぞ」

 「その通りだったじゃないか」

 「だいたい風船で、こんなところに降りられるわけがない」

 「パラシュートをつけた華寇の死体は、あった」

 「全部、偽装なんだよ」

 「華寇が西海岸から、ここまで来られるものか。常識で考えろ!」

 「英語は、襲った女から教わったのだろう」

 「女は華寇と言ったのかね」

 「まだ混乱している」

 「若い娘だ。華寇に襲われたなど簡単に言うものか」

 「ふん、トロールが人語を理解できるものか。アメリカ人の偽装犯罪だ」

 「とにかく、州軍が出張るから邪魔をするな」

 「いや、これは強盗殺人で犯罪だ。州軍の出る幕じゃない」

 「戦争だ! そっちが、協力すべきだ!」

 「ふざけるな。戦争は停戦で終わりだ!」

 「偽装強盗殺人事件で、いちいち州軍に出てこられてたまるか!」

 「」

 「」

 互いに華寇を捕らえる栄誉を得ようと軍と警察が主導権争い、

 喧々諤々は、続く

 

 

         

        


 月夜裏 野々香です。

 やっぱり、焼肉とキムチは食べたい。

 ということで満州は、朝鮮人がいることになるかも・・・

 

 ホルテン229は、全翼のまま大型爆撃機へ、B2化するかもです。

 アメリカの全翼機YB49も影響するかも・・・・

 

 

 

   

 

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第46話 1946/03 『我を通して、選択が狭まれる』
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