月夜裏 野々香 小説の部屋

   

仮想戦記 『青白き炎のままに』

   

 

第49話 1946/06 『租 界』

 日本帝国議会

 「・・・日本は、アジア諸国のため血を流したのだから」

 「当然、恩恵を受けた独立諸国に諸経費の負担を強いるのは必然なのでは?」

 「ああ・・・配布されている書類にあるような諸条約によって」

 「日本は、アジア諸国から搾取しているので既に負担は強いているかと・・・」

 「総理は、日本の窮状を見て、どう思われるのか、このまま放置せよと?」

 「財政再建と戦後からの再建計画は進んでいるので、放置しているようなことはありません」

 「占領地から、より多くの投資を煽って国家再建を行うべきだと思いますが」

 「占領地からの投資と言われるが搾取と受け取っていいのかね」

 「いや、国債・・・」

 「それは、償還する気があるので?」

 「そ、そんなのは、当たり前だ!」

 「これ以上の負担の強要は、アジア諸国のためという大義名分を失いかねず」

 「同盟諸国の信義すら失うので、今回は見送りたい」

 「また、これ以上の国債発行も財政再建の足を引っ張るため見送りたい」

 「このまま座して待てば、その同盟諸国の産業に負ければ、日本の国防は保てませんぞ」

 「連合が敗北したのは拡大した既得権に酔いしれていたからでは?」

 「同じ轍を日本民族に踏ませてしまう恐れがありますよ」

 「国家再建の途上で、そのような精神論が通用するものか」

 「アジア諸国で日本が盟主たらんとすれば、明らかに力関係で差が必要なんですよ」

 「信義も含めた力関係という意味で捕らえたいものです」

 「では国債を発行すべきでしょう」

 「インフレ率をこれ以上、上げるのは市場と消費者を混乱させてしまう恐れがあります」

 「また、悪戯に水増しした特定産業は、国際競争力を根腐れさせてしまう恐れがあります」

 「そうとばかりは言えないでしょう」

 「」

 「」

 本音と建前が衝突する。

 本土が焼け野原、子供を抱えて生きていけない家族もいる。

 手を差し伸べるより、他人の弱みに付け込んで人権を踏み躙って支配。

 全て、奪ってしまう。

 力関係に開きがあり、

 大義名分さえあれば弱肉強食な衝動に突き動かされてしまう。

 これはヤクザばかりでなく、一般人でさえも誘惑された。

 欲に目が眩めば、子供から大人まで慎ましさなど、かなぐり捨てる。

 弱者の声は聞かれず、

 たとえ、聞いたとしても耳に入らない、

 聞いていたとしても聞いていないと言い張ればよく

 “弱者が悪い” と強者の論理がまかり通る。

 利害関係でリスクが低く得られるモノが莫大なら

 “やっちまう” が、すべからく人間。

 しかし、国の代表になり、総合的な情報が入ると、

 現地の暴動を恐れ事勿れになりやすい。

 野党は、与党が失敗すれば良く、

 失政させるように偽善を振りまいて失策へ誘導していく、

 現地が暴動を起こせば、それをネタに与党不信をぶちまけ、

 我田引水で国民を煽って倒閣で天下取り、

 立場が変われば言うことも変わるのが人間で、

 結局、権力闘争で国の行く末を危うくしてしまう。

  

 京都の料亭

 「・・・与党は、相変わらず弱気だな」

 「現地が暴動を起こせば、それを口実に現地民を大量虐殺」

 「その非道を追求して政権交代」

 「日本軍で鎮圧なら軍事予算も増大ですかな」

 「我々が与党になれば、現地と好条件で条約を結び」

 「党も、軍も、国も、安泰ですな」

 「兵器産業もな」

 腹黒い連中も現れたりする。

 「与党でも賛同者が少しずつ、増えているようです」

 「少しずつか、停戦で引き分けに持ち込めても議会は力を回復してしまった」

 「議会と国民は、軍国主義を警戒している」

 「多数派になるには、まだ足りないものがあるな」

 「結局、元軍官僚も天下りで租界で私腹を肥やしていますし、その辺を叩いては?」

 「いや、連中は、今の日本軍にとって先任将校に当たる」

 「それに自分の首を絞めてしまう」

 「失策がなければ血祭りにあげるのは難しい」

 「だいたい、現地民は近代化できないのだ」

 「弱い者が消え、強い者が残る。弱肉強食は、自然の理だよ」

 「精強な民族、国民が残れば良い」

 と、ブタのように肥え太った男が薄笑いを浮かべる。

  

  

 首相官邸

 「野党は相変わらずか・・・」

 「ですが、議員の比率だと与党の失策待ちですからね」

 「与党内部でも派閥によっては突き上げてくる」

 「次は、俺の番だから、さっさと交代するか、失敗しろですかね」

 「ふ よくも総理を支えて、などと嘘ばっかりだ」

 「与党が大き過ぎて派閥争いが大きくなっているのでは?」

 「危機感の不足が分裂か。国の行く末より国家権力とはね」

 「後先考えず国債発行したがる人間は多いですから」

 「また、財政破綻で戦争になるよ」

 「それとも数十年後に財政破綻持ち越しで無責任にやってしまうか」

 「まさか」

 「まさかだよ」

 「しかし、そういう気分にはなる」

 「有力者は、国債で膨れ上がった資本を集め」

 「一般庶民に税金でツケを払わせたがっています」

 「ふ 結果が見えてくるよ」

 「しかし、多くの議員と資本家が確信犯で国民を家畜化したがる」

 「人間は始末におえないね」

 「聖書でも主人に従う羊と主人に逆らう山羊に分けるそうで・・・」

 「やれやれだ」

 「今のところ軍国主義で国民も懲りています。野党の手に乗る者は少数派かと・・・」

 「だといいが、それでも占領地にしわ寄せが行くだろうな」

 「大陸特権にあぐらをかく日本人が増え」

 「労働意欲を削ぐのは将来的にまずいかと」

 「日本民族の美徳は、勤勉勤労、滅私奉公ですよ」

 「んん・・・白色テロ・・・やりてぇ・・・」

 「発覚すれば、与党は潰されます」

 「だよな。欧米諸国の近代化は搾取の結果だからな」

 「占領地を搾取するのが一番なんだが・・・」

 「暴動は、アメリカとイギリスに付け込まれるかと」

 「だよね」

 白色テロと赤色テロが横行する世界は、誰も望まず普通は最終手段。

 選択の余地が残されている間は別の策を取る。

 もっとも別の策が思い浮かばないバカタレだと、やり始めたりもする。

 

 

 京都 古びたビル

 京都を除く大都市が焼け野原からの再建中だと古びていても使えるものは使う。

 人気のない場所に陣取って38式小銃を構える。

 公式的に存在しない小銃。

 しかし、命中率だけなら世界最高峰。

 戦後体制は政府、軍、議会、業者、国民に自己変革、組織改革が要求される。

 資産の目減りで自己犠牲が要求され、

 価値基準の変更で自己否定も要求される。

 社会構造の破壊と創造でリストラ、弱者へのしわ寄せ。

 生みの苦しみも多い。

 保身が危機に晒され、生存権も危ぶまれる。

 打開するため危険は伴うが成功すれば利益が転がり込む、

 博打は必要だった。

 好き好んで戦争をする者はいない、

 生きるため邪魔な者を駆逐する。

 そして、犠牲も付きまとうと開き直る。

 人のエゴが組織の権益と絡んで戦争を起こしてしまう。

 権力闘争、派閥抗争が大義名分をつくり、しわ寄せは弱者に行く。

 統制派、皇道派、軍政の主導権を誰が握るか、権力闘争の方便でしかない。

 政府も、組み敷いて、皇族も自分の良いように利用するだけ、

 最後は国民生活も踏み躙る。

 迷惑な話しだ。

 連中が京都に集まるのは焼け野原が見えると興醒めするからだろう。

 ドイツ製のスコープを覗き込むと迷い込んだ鹿が見え、

 標的に向けて調整すると料亭の中が見える。

 国内の困窮を大陸権益で埋めさせる。

 国民にとって嬉しい計画といえた。

 大陸で、もう一度、満州事変、

 与党を潰し軍産と組んで権益拡大し、倒閣を狙う派閥政党があった。

 民需転換が上手くいかない業者が、もう一度、旨い汁をと思い。

 冷や飯ぐらいの軍官僚一派が、もう一度、権力を手にして軍政狙い。

 それぞれ、経験から学び、

 今度こそは成功すると思惑があるらしい。

 無責任に共犯頼みか、

 大同小異な構想に自信があるのか利害が一致する。

 彼らも守るべき家族がいて保養の責任を持っている。

 そして、彼らの組織は小さくない。

 しかし、利益配分で苦しく、足掻きもがいているのが実情だった。

 成功すれば国債増刷と大陸権益、

 そして、軍事費増大の収益、

 利益配分は最終的に全国民へと裾野を広げるらしいが、

 先行負担で、配分が得られるのは、ごく、一部だけ、

 いずれ、金と権力に眼を奪われるだろう。

 中間で搾取が横行し、弱い立場の弱者は踏み躙られていく。

 歯止めが利かなくなり日本が強盗の巣のようになっていく、

 無論、政府が間違って与党が正しい場合もある。

 リスクなしに莫大な権益が転がり込む魔法があるかもしれず、

 どっちに転ぶか、わからないとき人は都合の良い方を信じやすい、

 しかし、信者を募るには、戦災の傷跡が激しすぎた。

 引き金を引く瞬間、無線が入る。

 「・・・中止だ」

 「了解」

 標的の手酌の熱燗から銃口を外す。

 平和的に解決するのだろうか。

 始めて後悔するか、始めなかったことを後悔するか。

 それは、上層部の思い悩むことだった。

  

    

 

 揚子江経済圏を守っているのは日本軍ではない。

 漢民族に包囲されている朝鮮民族と少数民族 + 租界の弾薬庫に眠る武器弾薬。

 そして、ドイツ、イタリアの租界など国際力学なバランスだった。

 朝鮮民族は、恐怖して働き、

 日本から武器弾薬を購入し、武装して漢民族に備える。

 台風の目の中にいるのは租界の日本、ドイツ、イタリア。

 朝鮮民族も日本語が話せて

 “瑞穂民族ニダ〜” と日本民族に近いことを利用する。

 無論、好きで言っているわけでなく、

 朝鮮族は、漢民族に飲み込まれ、全てを失う瀬戸際。

 文句を言ってもしょうがなかった。

 もっとも、直情な朝鮮民族は日本人のように本音と建前で使い分けない。

 朝昼晩、気分と相手によって、ご都合主義的に言うことが違うだけといえる。

 本人は頭の回転が速いとか、知恵があるとか思っているらしく、

 見事なコウモリ振りを発揮する。

 自暴自棄になると “おれ違が、いないと困るニダ〜”

 と民族を人質にとって自殺的な発言。

 どちらかというと嫌われる。

 しかし、揚子江で朝鮮民族が消えると租界防衛負担が増大し、採算割れが確実だった。

 日本政府も、困るのは事実で適当に、なあなあで妥協したりする。

 とはいえ、その状況も船舶に余裕が出てくると変わってくる。

 台湾人が揚子江へと入植し始める。

 日本語と中国語に堪能な台湾人は朝鮮人より有用だった。

 そして、台湾人が増えていくに従い、

 揚子江のNO.2は、台湾人へと移り、

 やっかむ朝鮮民族と衝突していく。

 祟明島

 条件の悪い中州の造成が進んでいた。

 最低限の衣食住で雇われた漢民族が人海戦術で造成工事していく、

 戦後再建が進むとドイツ製土木建築機械も使われ作業がはかどる、

 ドイツも本国の再建で必要な物資を得るためアジア大陸へ依存する。

 「・・・凝固材の石灰石が足りないな」

 「あっちでも、こっちでも欲しがっていますからね」

 「んん・・・日本が好きにできるのは、租界より祟明島だがな」

 「この島が揚子江経済圏と大陸鉄道の要になるはずです」

 「ちょっと、無理やりだが地政学的に悪くないだろう」

 「確かに悪くないですがね」

 「内地で地図見て陣取り合戦で、あれこれ言ってる連中は現場の空気がわかりませんからね」

 「まぁ 簡単に開き直れるものでもないし、悪びれるのも辛い」

 「日本人の所業は、大陸で美化して伝えられるからな」

 「戦記物でも、こういう黒い汚い部分は避けますからね。薄っぺらですよ」

 「臭い物に蓋をすれば、取り返しの利かない拝金亡者と権威バカが増えていくだけだ」

 「想像力がないと悪事の結果なんて、わからないでしょう」

 「やっても自己正当化で続けてしまう」

 「それでも中国歴代王朝よりマシだと思うが・・・」

 「匪賊が減ったのは確かなんですがね」

 「漢民族は、そのことを知りません、中国政府も自己嫌悪は学ばせませんから」

 「中華思想か、選民主義と自尊自大は国を滅ぼすよ」

 「日本も自画自賛で危なく滅びかけた」

 「日本本土が焼け野原になっていなかったら、本当に懲りなかったでしょうね」

 「日清戦争から、ずっと外征が続いていた」

 「日本人全体が痛い目に合わないと戦争の恐ろしさは身に沁みないで、またやるだろうし」

 「日本人は損得勘定とか」

 「その時、その場の勢いに合わせて道理も、倫理も、引っ込みますからね」

 「日本本土爆撃は、良い薬ですよ」

 「まぁ 気質に問題ありだからね」

 「どの道、中華の自尊自大も朝鮮の自尊心重視も直らない。前途多難だな」

 「中華は、文盲が多い割りに狡猾ですからね」

 「ふ まったく」

 「しかし、漢民族の識字率は、上がってきているんだろう?」

 「ええ」

 「複雑な漢字は支配を維持しやすくするため」

 「大国は、そうやって階級を守りながら、体制を維持するんだろうな」

 「識字率の増大は中国史上初めてですよ。どうなることやら」

 「先に覚えたやつが文盲をだまくらかして支配するんだろう」

 「山賊の大半は文盲で泣きっ面に、ハチに怒った力自慢だからね」

 「道理で中国が治安維持の装備を欲しがるわけです」

 「中国軍は対外防衛より、反乱鎮圧軍だからね」

 「悪循環の社会制度と付き合うのは大変ですよ」

 「良い出会いは良い結果。悪い出会いは悪い結果に繋がる」

 「日本人と、漢民族、朝鮮人との出会いは、どんなものかな」

 「内地で不正腐敗が増えなければいいのですがね」

 「ろくな技術もないのに欠陥住宅とか」

 「朝鮮人に大工仕事を教えるからだ」

 「軍隊に人を取られて人手不足でしたからね」

 「資源と消費地が欲しいだけなんだがな」

 「漢民族と朝鮮族の方が安く作るのなら、任せてしまうのでは?」

 「ふっ そうなりそうだな」

 「中国人からすると日本人は外患だろうな」

 「中国も、一人当たりのGDPが伸びて治安もいいのですから感謝すればいいんですよ」

 「感謝する漢民族は、漢民族じゃない」

 

 

 ドイツ人租界 上海

 租界の城塞化は、日本が始めたことで考え方としては悪くない。

 日本風の城が大陸に築城されていくようにドイツ風の城も建設する計画があった。

  

 利権を確保する意気込みを城で体現し、

 ドイツ人居留民と、

 同盟になびいている漢民族に安心感を与える。

 そして、日独伊同盟が城塞都市を構築し、

 力を誇示するようになれば漢民族は治安を求め、安心して身を寄せてくる。

 租界沿いは、いろんな人種が集まってくる。

 数人のドイツ人が租界の周りに集まる屋台を見回る。

 「・・・どうだ。随分と華やかになってきただろう」

 「この連中は、中国側には行かないのか?」

 「搾取が酷いらしい・・・」

 !?

 紳士然としたドイツ人たちに土下座する家族。

 妙に土下座が上手く、

 子供の頭を無理やり抑え付けて挨拶させる習慣に面食らわされる。

 「あれは?」

 「朝鮮人だ。日本語を話せる者もいるらしい」

 「最初、日本語を話すので日本人かと思えば朝鮮人だったよ。日本人は、しないそうだ」

 「あれだけ卑屈だと醜悪だな」

 「日本人に聞くと、ああしないとヤンバン(貴族)の搾取で殺されるらしい」

 「ほう、東欧でも搾取しているがスラブ人は、もっと気骨があるぞ」

 「ふ ヤンバンに無視されるだけで村八分」

 「村人からも簒奪されて生き地獄。野垂れ死にだそうだ」

 「中国の行政も酷いと聞いたが朝鮮人の行政も酷いのか?」

 「同じくらいらしい」

 「しかし、朝鮮人のほうが識字率が高くて比較的まともだそうだ」

 「中国の行政が健全になると形勢が逆転するというのは、信憑性があるのか?」

 「揚子江経済圏も大陸鉄道も風前の灯。だろうな」

 「大丈夫なのか」

 「中国人は利己主義でな。同族も平気で裏切る」

 「本当に?」

 「おいおい」

 「そうでなければ中国はアメリカを抜いて世界最強の国になっているよ」

 「にわかには信じられないが・・・」

 「漢民族ばかりで、5億の人口、言語はだいたい同じ」

 「知能も、能力も、人並み。資源も膨大。文化もソコソコ」

 「こんな条件に恵まれた世界が、ほかにあるものか」

 「・・・・」

 「そうなれないのは、同族で搾取、裏切り、殺し合っているからさ」

 「仲良くできないのか」

 「仲良くする漢民族は、漢民族じゃない」

 

 

 中国政府も不正腐敗を駆逐しようと躍起になっていた。

 もっとも、大悪党が悪党に不正腐敗をやめろ、では説得力がない。

 中国の官僚は日独伊の役人より明らかに搾取率が大きく、

 賄賂がなければ動かないのが基本だった。

 租界の外は無法地帯といえなくもない。

 こういう国だから中国拳法が強いのだろう。

 「おぉおお〜」

 ぱち! ぱち! ぱち! ぱち! ぱち! ぱち!

 漢民族の娘の拳法で、

 大柄で屈強なドイツ兵士があっさり蹴り倒される光景は面白がられる。

 それでも大陸の大勢が決まり、

 租界に異国の築城が造成されると中国女たちも考え始める。

 “情けない同族の男より、日本人や異国の白人の男が良い”

 “情けない男の種より、強い男の種”

 男が性悪で女が善人ということはない、

 強者と弱者で対応が変わるだけで、道徳観も同じレベル、

 そういう発想になる娼婦(慰安婦)、女たちは租界周辺に集まりやすい。

 租界の外で力任せな同族に強姦されるより、

 治安の良い租界の近くが良いに決まっている。

 弱者である女は、こういう時、現実的な発想をする。

 娘を持つ父親も安全な租界近くを選ぶ、

 おかげで見限られた同族男たちは、やっかみ、ひがんで、

 租界の外で、ますます不埒な衝動を起こし、

 女たちを租界近くへと向かわせてしまう。

 また、漢民族、朝鮮民族が地方で誘拐したり、騙したり、

 少女たちを集め租界周辺に慰安所街を作っていた。

 租界の経常収支に比例して、

 闇の部分、人権侵害、人権蹂躙の悪循環も拡大していく、

 

 しかし、悪いとばかりは責められない、

 慰安所街で作られた資本を元手に中国資本は活性化していく、

 女工の犠牲によって産業革命に続く近代化が成り立つなら、

 慰安所も意味ある犠牲かもしれない。

 どちらにせよ日本も、ドイツも、イタリアも公娼は違法だった。

 日独伊同盟は基本的に人身売買もせず、

 清く、正しく、美しく、綺麗事は租界の中、

 汚い慰安婦は、租界の外で、それらしい場所に集められる。

   

 元海軍将校でドイツ租界の代表と、

 巡洋艦艦長は、租界の外に出て行くドイツ人水兵を面白くなさそうに見つめる。

 対外的な外交折衝で慣れているのは陸軍将校より海軍将校だった。

 租界と軍艦は、相互補完関係、相乗効果で互いの立場を強化する。

 ドイツ兵は鉄の意志とモラルを持つべきで、

 個人が性欲に溺れると国家基盤を支える家庭が乱れる。

 国の枠組みで社会を考えやすいドイツ人な思考だった。

 もっとも個人の集まりで国を作るアメリカ人な思考でも似たような結論に達している。

 個人の人格を踏み躙る公娼制度を公認するわけに行かない、

 しかし、人間の欲望、闇経済は、どこの世界にも存在する。

 「・・・随分と広い滑走路だな」

 「ホルテン系の大型全翼爆撃機とか、貨客機を開発しているらしい」

 「全翼機は幅を取るからな」

 「あと、大型飛行船の着停も兼ねてだろう」

 「よくもまあ、こんなに人がいるもんだ」

 「機械で土台を脆くすれば人海戦術は早い」

 「安い労働力は魅力があるよ」

 「一人当たりの労働意欲が低くても本国より安く効率も良い」

 「なるほど・・・」

 「しかし、日本人は甘いな」

 「何で漢民族から全てを奪わないのだ」

 「遠回りだが協力者が得られやすい、軌道に乗れば相乗効果は悪くはない」

 「漢民族ごと殲滅しないのなら適当な手法だな」

 「同じ黄色人種で非道にもなれず、選民化も失速したのだろう」

 「ドイツもバルカンの殲滅には失敗しているよ」

 「だが、歴史や世界を変えるような思想や発明はドイツが多く、日本は少ない」

 「民族に自信を持てないのだろう」

 「そりゃ アジア人で優秀民族でも白人世界と比較すれば見劣りする」

 「最大の理由は、漢民族が多過ぎることだろうな」

 「いや、朝鮮民族の例もある」

 「そうしなかったのは人が良いからだろう」

 「まぁ ドイツが日本と切ってアメリカと組まなかったのも、アメリカが信用できず」

 「日本民族の資質が信用できただけ、かもしれないな」

 「しかし、大陸経営はドイツ人よりアメリカ人の南米経済植民地とか」

 「イギリス人の少数民族優遇政策に近いな」

 「合理的だが回収が遅い遠回りだ」

 「漢民族は、ドイツ・日本・イタリア商品が欲しくて働く。それは、それで、いいのでは?」

 「ドイツの工作機械は、ドイツ本国でも重要だ」

 「こんなところに持ってきても採算が合わんよ」

 「アジア市場は世界一。ドイツに必要な資源もある」

 「租界での生産が軌道に乗れば悪くないのでは?」

 「んん・・・ドイツ権益を守らせるため、東欧の人間を揚子江に強制的に移すか」

 「東欧で餓死するよりマシかな」

 「ゲルマン民族に恨みを晴らそうと思わなければ・・・」

 「思うだろうな」

 「しかし、漢民族に飲み込まれるより日独伊同盟のため働く道を選択するだろう」

 「スラブ人が揚子江で生き残ろうと思えば、ますます、日独伊の権益が強固になっていく、ですかな?」

 「気に入らないが悪くない手法だ」

 「郷に入れば郷に従え、かもしれない」

 「搾取を続ければ武力で押さえ込むため、租界防衛費の負担が大きくなる」

 「獅子身中の虫に頑張ってもらえば防衛費を手抜きできる」

 「・・・この調子で、アジア全域、インドにまで勢力を伸ばしたいものだ」

 「そして、ユーラシア大陸鉄道で?」

 「ここにいると、ドイツ本土との連結は悲願になるな」

 「日独伊同盟の利害を一致させたままユーラシア大陸鉄道まで持ち越せば、連合など恐れるになりない」

 「だが遠交近攻が基本でも、まさか外交戦略で日本と組むとは・・・」

 「まったくだ」

 「日本が華寇作戦でアメリカ西海岸に上陸してなければドイツ、イタリアだけで米英ソ連合と講和を結んでいた」

 「日本人は、自らの力で同盟国としての価値を証明したのだろう」

 「・・・実力を証明したのであれば、それに応えるのも、やぶさかではないよ」

 「矛彩型巡洋艦で同盟関係を強化したいものだ」

 「和独折衷か・・・」

 「しかし、誘導ロケットは、戦力になるのか?」

 「塩害は怖いな」

 「V2は、地対地ロケットで命中率が悪く、費用対効果も悪い」

 「しかし、軍艦は高価だ。沈めれば打撃も大きいだろう」

 「V2は大き過ぎて厳しいのでは?」

 「射程を短くして、徹甲弾にすれば良かろう」

 「艦橋からの有視界は、20kmから30km。レーダー誘導させれば軍艦も撃沈できる」

 「奇抜さに走るより堅実に勝ちたいね」

 「レクリング弾を誘導できれば、もっと、いいのだがね」

 「参謀本部は、アメリカのVT信管を応用して誘導砲弾を検討しているらしい」

 「軌道を変えられるかもしれないが有翼砲弾の翼舵が利くかどうか・・・」

 「ドイツの技術なら、できるのではないか」

 「ロケットで奇抜さを追求しているのだから普通の砲弾を使いたいね」

 「タングステンを使えるのなら通常の砲弾でも勝てるよ」

 「それより、Uボートは?」

 「2500トンから3000トンクラスの大型になりそうだ」

 「大きいな」

 「次の戦争は、原子爆弾で早期決着の可能性もある」

 「それなら開戦前の装備で早期決着。中型潜水艦を大量配備する余裕がない」

 「大型潜水艦を揃えていた方が、いいそうだ」

 「潜水艦だけは独自技術を持っていたいな」

 「未知の兵器が強み抑止に繋がる場合もあるからね」

 「しかし、原爆戦争は行われるのか?」

 「化学兵器と細菌兵器と同じだろう。持っているだけ。使うと歯止めが効かなくなる」

 「運が悪いと知らないバカが使ってしまう」

 「ポートモレスビーだったな」

 「あれがアメリカ製で良かった」

 「日本製だったら日本民族は報復で絶滅に追い込まれていた」

 「アメリカで白人至上主義が台頭」

 「ドイツが日本人と同盟で結束が進むのだから時代の皮肉だな」

 「なりふり構わずだよ」

  

  

  

 厚木飛行場 in 赤レンガの住人たち

 土煙を吹き散らしながらF1282コリブリ (ハチドリ) が地上からふわりと離れて行く。

 「・・・おお〜 浮いた浮いた」

 パチ パチ パチ パチ パチ パチ パチ パチ

 「「「「・・・・・」」」」

 ヘリの開発は余裕のある国か、

 必要性を感じやすい国が先行する。

 日本は、必要性を感じても金がなくて開発は遅れていた。

 「役に立つのか?」

 「んん・・・航続距離は短いが戦艦の射程より飛ぶしソコソコだろう」

 「軽すぎて潮風に煽られないか。すぐ撃ち落されそうだな」

 「だから制空権を確保しているときに飛ぶんだろう」

 「いや、それが心配。対潜用だろう」

 「もっと、航続力が欲しいよ。あと、対潜爆雷装備」

 「それなら、戦車の上にまで行って ぽとっ! って爆弾を落とすのもありだろう」

 「ゴキブリは使いやすそうというより、楽しそうだな」

 「コリブリ」

 「言いにくい・・・」

 「もう少し、性能が良くないとな」

 「艦載機で使うなら、もう少し、なんとかならないのか」

 「アメリカのベルH13が旧フランス領に流れていたぞ。買うか?」

  全長×全幅 全高 自重/最大備重 馬力 最大速度 航続力 乗員 武装 爆弾
フレットナーF1282コリブリ (ハチドリ) 6.56×11.96 2.20 760/1000 160 150km/h 170km 1 なし  
フォッケ・アハゲリス Fa223ドラッヘ 12.25×24.50 4.35 3180/4300 1000 175km/h 700km 6〜8 7.92×1 500
ベルH13スー 13.30×10.70 2.84 786/1293 265 196km/h 412km 2〜3    

 「んん・・・飛行場を使わないのなら、98式直協、3式指揮連絡機の方が・・・」

 「飛行場がいらないといっても、それなりに整地された広い場所が必要だろう」

 「軍艦で使うならヘリじゃないか」

 「アメリカで開発中のヴォートXF5Uは短距離離着陸で優れていると聞いたぞ」

 「んん・・・エセックスとか、たくさん作れるくせにそんな飛行機を開発するなよ。腹が立つ」

 「停戦で迎撃重視が落ち着いたらドイツも短距離離着陸の航空機も開発するんじゃないか」

 「んん、もう、ドイツ頼りだからな」

 「ホルテンは?」

 「翼面積も大きいし推力も強い」

 「ヴォートXF5Uより軽量だから短距離離着陸もいけそうだけど」

 「全高が低いから搭乗が便利でも翼が低すぎる・・・」

 「脚を伸ばすと全体のバランスが変わる」

 「本格的な配備は、遅れているよな」

 「操縦性に問題ありで、改修に時間をかけるそうだ」

 「無理しないで、垂直尾翼付けろよ」

 「ドイツ人は、こだわるのが好きなんだよ」

 「そういえば空廠がホルテンに尻尾を付けて飛ばしていたっけ」

 「しっぽぉ〜?」

 「ほら凧と同じ原理。一応、無線とか、レーダーも兼ねているらしい」

 「感度が良くなったとか、良くなかったとか」

 「そういえば見たな。ワイヤーだろう。危なくて編隊作れないぞ」

 「はぁ〜 それ、正しい航空力学なのか? 危なくないのか?」

 「いや、航空力学が作られたのは人間が飛んでから、だから・・・」

 「まぁ まだ予算がないから正式じゃないし、いいけどね」

 「日本も民需転換に人材取られて開発力が落ちている」

 「民需転換は、わからんこともないがね」

 「兵器の性能差が、これ以上開くのは、まずいだろう。責任取れん」

 「問題は、全翼機の旅客機に技術者を取られることだろう」

 「んん・・・旅客機で窓がないのは辛いぞ」

 「いや、そうじゃなくて主翼に居住性を求めると桁は、2〜3m」

 「機体は異常に大きくなって、飛行場も大きくなるだろう」

 「ドイツ人なら採算度外視でやるんじゃないの」

 「イタリア人も速度記録だけなら、変に燃えるし」

 「機体強度と材質から逆算して採算を取ろうとすると高出力エンジンとチタンだね」

 「エンジンも構造上、今より高度になるし精度も求められる・・・」

 「機能性じゃなくて、もう少し、合理性とか採算性を追求して欲しいね」

 「それは、ドイツ人じゃないかも・・・」

 「艦艇を矛彩型巡洋艦に集中して」

 「駆逐艦クラスを大型全翼機に代行させるのも、わからないこともないが飛行船とかぶるな」

 「大陸は、飛行場を馬鹿でかく、できるのがいいね」

 「半島移民が進んでいるから列島でも飛行場は建設できるよ。高くつくけどね」

 「矛彩型の誘導ロケットは、大丈夫なのか?」

 「さぁ ドイツも予算がなくて進んでいないらしい」

 「本土が爆撃されたくらいで軍事費削減は酷すぎる」

 「退役軍人は大陸権益側に乗っているからいいけど」

 「こっちの予算まで削る裏切り者だからな」

 「立場が変わると言うことも変わるか」

 「まぁ ドイツの工作機械が増えて、こっちも言うことが、だいぶ変わってきたからな」

 「日本製の工作機械も稀に精度の良い部品を作っているぞ」

 「稀だろう」

 「母体の工作機械より、誤差なしの高精度な部品が万に一つできてしまう」

 「上手く組み合わせれば、母体の工作機械より優秀な工作機械になるということか」

 「数を作れば、そういうのもできるだろうが」

 「まず、数を揃えるための発電所が足りなすぎるよ」

 「だからといって、軍事費を減らして発電所を建設するわけにも行かないだろう」

 「・・・そうだな」

 「一昔前は、軍人を工場に派遣して融通が利いたのに今じゃ それもなしか」

 「停戦で、OBが出張っただろう。もう疎まれて駄目だな」

 「新規の兵器体系は艦隊を整理しないと、どうにもならんな」

 「旧式艦から解体していくがね」

 「普通は、既得権益で代艦欲しがる。やれやれだな」

 「もう、予備役で大陸の利権に付けてやれよ」

 「ますます、軍事予算が削られるよ」

 「ただでさえ、大陸権益のせいで公僕より、民間の方が実入りが良くなっているのに・・・」

 

 

 

 伊豆半島

 「・・・お国のため、よろしく」

 「・・・・」

 公僕が頭を下げて住民たちが憮然とする。

 たとえ、住民が、いやでも実力行使する政府側の気構えがヒシヒシと伝わる。

 条件は、かなり良く選択の余地はない。

 気が進まないのは新天地への不安感と郷土への愛着、

 気持ちの問題だった。

 伊豆半島の一角にドイツ領300kuが区分けされつつあった。

 先祖伝来の土地を手放させるため、

 代替用地(1200ku)が住民に振り分けられていく、

 領土拡大で初めて成せる技といえる。

 一方、欧州でも、デンマーク側の付け根、

 やはり半島に日本領300kuが、振り分けられていた。

 これは信頼に裏打ちされなければ、できない。

 互いに本土の領土を交換することで同盟の利権を一致させる同盟政策、

 どちらも半島だと交換しやすいらしい、

 日独貿易関連企業は、それぞれの地に地所を構え、利益を上げようと模索する。

 日本政府は、この領土交換で

 日独経済の中心が半島・大陸へ流れていくのを防ぐ政策も兼ねた。

 もっとも300kuでは租界地の方が大きく

 中途半端で成果も期待薄だったりする。

 それでも本州側にドイツ直轄地があり、

 同盟国と意思疎通が容易に行える政治的力点が加わる。

 これなら政治の中枢まで半島・大陸側へ持って行かれずに済むと計算。

 伊豆半島の庶民は、政治外交戦略の犠牲を強いられてしまう。

       同尺

 

 

 

 海軍大綱

 戦後軍縮でも海軍の精強化は行われる。

 航空戦力の価値増大で軍艦の価値は、相対的に低下していた。

 しかし、公海を遊弋する軍艦は、国の明確な示威を代弁するため意識されやすかった。

 同盟と連合とも、たとえ、新型艦艇の建造ができなくても、旧式艦艇を解体しても装備を更新させる。

 大砲の多くが命数の大きいなドイツ製に換装され、

 機関もドイツが集大成しつつある新型ディーゼル機関電気推進へと換装されて行く、

 武蔵も、いずれは機関を換装し、

 副砲が払われて対空誘導ロケットが配備される予定で技術系、運用系の将校が集まっていた。

 開戦後に建造された艦艇で修理改装して使える艦艇は少ない、

 建造費 + 改装費 + 維持費で、建造費の3倍から4倍が軍艦の生涯、

 それ以上の金を掛けると損、

 開戦以前の艦艇だと改装自体無意味か、新装備の実験艦代わり、

 武蔵でさえ、大改装は一度で、その後、小改修しながら廃艦の運命だった。

 沈まなくても魚雷の衝撃で鋲が飛び、浸水してしまう戦艦であり、

 果たして大改装するだけの価値があるのやら・・・・

 「46cm砲の衝撃を考えるとロケットは筒に入れた状態で撃ち出すべきだろうね」

 「塩害もあるからな。当然の帰結といえば、そうなる」

 「本当は、重量が重くなったレーダー装置を副砲のあった場所に置きたかったがね」

 主砲の衝撃を避けようと思えば、艦橋の上にレーダーが集まる。

 「ドイツは誘導ロケット弾を主兵装にして艦首に47口径38cm4連装2基」

 「艦尾は主砲塔を外して対艦誘導ロケットの配備が望ましいとか」

 「艦尾の砲塔を剥がせば、艦首と艦尾のバランスが狂う・・・」

 「対艦誘導ロケットが、まだ、形にもなっていないのに戦艦の主砲を護身用にするのか」

 「ドイツ人の自信過剰だろう」

 「あそこまで科学万能で己の技術を信じられると宗教に近い」

 「せめて、長門と同じ45口径41cm砲で4連装にして欲しいものだ」

 「ビスマルク級の大砲を使いたいのだろう」

 「砲身命数が大きければ、それだけ訓練がしやすい」

 「訓練がしやすければ命中率も高い」

 「ビスマルクは沈んでティルピッツも、ノルウェーのフィヨルドに乗り上げているだろう」

 「予備の砲身が、あるんじゃないか」

 「しかし、38cm砲弾だとミズーリ級に効かないだろう」

 「タングステンを弾芯に使うんじゃないか」

 「戦艦の主砲弾にか?」

 「ぜ、贅沢だな」

 「いや、自己満足だから費用対効果とか、採算とか、考えていないと思うぞ」

 「どの道、対艦誘導ロケットを主兵装にするのなら38cm砲も、ありかもしれないがね」

 「しかし、ドイツが武蔵の改装に興味を持つとは、期待しているのか?」

 「いや、囮だろう」

 「もったいない気がするが」

 「ドイツ海軍が戦艦を通商破壊に使うのは戦艦で戦果を挙げるためじゃない」

 「連合の対Uボート作戦に大型艦艇を配備させるためだろう」

 「費用対効果で言うと、ありなんだよ」

 「連合の主要艦艇を他に転用させないためか・・・」

  

  

  

 呉

 武蔵 艦橋

 海を臨む長官は目減りしていく艦船をため息混じりに見つめる。

 日本海軍史上、予算取り最低の無能長官として名前が残ることは明らか。

 どちらかというと、その無能長官として名前を残すため政府から選出されていた。

 海軍のために国を犠牲にするか、

 国のために海軍を犠牲にするかの二者選択、

 無論、日本海軍の裏切り者、

 下手すれば殺傷沙汰で確信犯でなければ、できない。

 山本長官は、海軍増強の英雄。

 新海軍長官は昼行灯と影口を叩かれ、海軍縮小を認めようとしていた。

 全翼機も、陸軍機で使えればよく、

 艦載機として不適なことをいいことに空母建造を後回しにする算段であり、

 艦載機として成功する方が予算分配で困った。

 無論、一人では、できず。艦政側にも同志がいる。

 「これが艦政の次期海軍大綱主力案か・・・」

 ペラペラと紙がめくられる。

 「・・・10000トン級 “矛彩” 型巡洋艦50隻」

 「2500トン級 “龍” 型潜水艦50隻を主力にした艦隊です」

 「対艦誘導ロケットが駄目なら国を守れませんよ」

 「空母は?」

 「70000トン級 “海凰” 型空母5隻を検討していますが予算付かずです」

 「空母1隻と巡洋艦10隻で5個機動部隊と補給艦を含めた補助艦艇の部隊か・・・」

 「実にシンプルだな」

 「艦種が少ない方が管理しやすいですから・・・」

 「もう、戦艦の時代ではないと言われました」

 「ふ 矛彩が戦艦なのだろう」

 「この対艦誘導ロケットが本物なら戦艦の代わりもできる」

 「防御力のない戦艦など・・・」

 「この空母が、いい例だ」

 「大型空母の癖に艦載機の多くは戦闘爆撃機、対潜ヘリ」

 「敵機動部隊への攻撃力が劣ります」

 「最初からアメリカ機動部隊に劣ると計算して海上防空戦に徹しようということだな」

 「アメリカ機動部隊の艦載機攻撃を凌ぎきれば、よし、なのだろう」

 「犠牲が大きいのでは?」

 「それは、直衛の戦闘機しだいだろう」

 「矛彩が何隻残るかわからないが一定数が残れば対艦誘導ロケットを恐れる」

 「アメリカ機動部隊は接近できない」

 「・・・」

 「全翼機系爆撃機の開発が成功すれば長距離でアメリカ機動部隊を捕捉して撃破もできるだろう」

 「全翼機で着艦は無理と聞いていますが?」

 「まだ、開発中の機体だから、なんとも言えないな」

 「・・・・」

 「矛彩の対空誘導ロケットが本物なら最低でも10機撃墜」

 「矛彩10隻なら100機は撃墜することになる」

 「それは、アメリカ側が対艦ロケット弾を開発していない場合では?」

 「そうなるな」

 「連合の海軍を軽んじるのは、危険かと・・・」

 「予算が足りないだけで、軽んじてはいないよ」

 「少なくとも現海軍戦力より精強な布陣だ」

 「しかし・・・」

 「決められた予算配備で、最大限の人事を尽くす」

 「もう、政治に口出しするのは、はやらんよ」

 「この予算案も怪しいかと」

 「だろうね・・・わたしの家は爆撃で燃やされていた」

 「政府を無能だといって主導権を握った軍部が一番の癌だったよ」

 「大陸進出は生存権の確保のため、仕方がなかったことだと思われます」

 「軍部が政治の主導権を握らなければ満州で列強とぶつかることもなかった」

 「そして、陸軍の大陸進出の邪魔をしたのは海軍だ」

 「・・・・・・」

 「1億4000万の大和を建造せず」

 「2万円の95式軽戦車7000両を大陸に配備していたら」

 「日中戦争は終わって太平洋戦争は起こらなかっただろう」

 「・・・・・」

 「失策の原因は、政治家が負うもので、軍人が出張って原因になることはない」

 「陸軍の利権体質は、非難すべき点があるかと」

 「海軍は、大陸の利権から外れて蚊帳の外か」

 「それもしょうがなかろう。陸地で戦うのは陸軍の役目だ」

 「・・・・」

 「艦政が海凰の建造を後回しにして大陸権益を優先なら、それだけの理由があるのだろう」

 「たぶん租界の城塞都市化です」

 「日本人と、協力関係にある者達と二重構造に拡大するとか・・・」

 「どうせ、そんな、ところだろう」

 「海軍戦力を後回しにして、良い策とは・・・」

 「・・・軍人は、与えられた現状戦力で最善を尽くすべきだろうよ」

 

 

 

 

 

 


 月夜裏 野々香です。

 日本帝国議会を少しです。

 政治ごとだからといって、別段難しいわけじゃなく。

 表向き、露骨な本音を隠して綺麗事な建前。

 嘘ばっか、言ってますが、会社でも、おなじみな人間模様。

 力関係で媚びたり、やっかんだり、ひねくれたり、引き摺り落としたり、愛欲に走ったり。

 少数派と思いたいのは贈収賄、恐喝、などなど・・・

 利己的だけな強盗、泥棒は、良心の呵責で苦しみ。

 また人望が集まらないので我田引水 “お前も悪よの〜” な、権力闘争です。

 愛国心、権力、暴力、派閥、偽善、倫理、暴力、

 国民感情が混ざり合って混沌中です。

 

 

 ドイツ人は、タングステン弾芯を通常砲弾と言い切っているので、

 日本人と感覚が違うようです。

 日本の工作機械だとタングステンを精製、加工。弾芯にするのは至難の業で、

 わかっていても無理。という感じでしょうか。

 あと、史実と違い戦後のドイツは、アメリカのドイツ退廃誘導工作がないので性を開放していません。

  

 

 領土交換地が定まってしまいました。

 本州で適当な半島をいくつか探して、選んだ理由は、東京、大阪に近く

 あと、なんとなくです。

 色分けしませんが仮想なので現住所の方は、ご容赦です。

 ヒットラーは趣味で、選民、優性遺伝な繁殖を進めていたので、

 金髪青眼の八頭身な、美男、美人に会えるかも、と、笑って、済ませてください。

 歩いて外国旅行へ・・・

 

 

 満州で陸軍が暴走せず、満州国が興らない戦記・・・・・・・つまんなそう。

 満州で陸軍が暴走。関東軍を逆賊で処分。その後、政府主導の日本帝国・・・・つまんなそう。

 大和を建造せず95式戦車7000両で太平洋戦争前に日中戦争を押し切った戦記を・・・つまんな・・・

 いや、中国を落とした後、大和抜きで、太平洋戦争なら行けるかも・・・・

  

 

 

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第48話 1946/05 『金、金、恨めしいけど、金!』
第49話 1946/06 『租 界』
第50話 1946/07 『腹黒だね♪』