月夜裏 野々香 小説の部屋

    

架空戦記 『大本営特攻』

 

第02話 1942年 『名誉も捨ててやる!!!』

 第一戦艦部隊のオアフ島攻略。

 第一機動部隊と第二機動部隊による、フィリピン攻撃、マレー攻撃、南シナ海、ジャワ海進攻。

 一連の作戦でABCD包囲網は崩れてしまう。

 とはいえ、航空戦と海戦で勝っても地上戦は残されていた。

 東南アジア攻略は、当初の計画より輸送船と陸軍将兵の数が少なく装備率も低かった事が災いする。

 もちろん、大本営特攻の功績もあった。

 暗号の半分がアメリカに解読されていたと気付いたことで、

 手の内が相手に知られては戦争にならない。

 しかし、真実が明るみになっても、どうにかなるとは限らない。

 首相官邸

 「本当に海軍の暗号が解かれていたのか?」

 「陸海軍情報暗号。外交暗号。海軍商船暗号が解読されています」

 「あと、海軍作戦暗号29種類の一部も解読されているようです」

 「91式印字機。97式印字機も、かね」

 「はい」

 「・・・なかった事にしよう」

 「えっ!」

 「聞かなかったことにしよう」

 「それは、無理でしょう」

 「予算がないと対処も無理だろう」

 「し、しかし・・・」

 「新しく暗号を変えたとして、印字機を造り替えるのか、いったいいくらかかると思う」

 「はぁ・・・」

 「金があるのなら、いくらでも造り替えてやるわい」

 「私は能無しではない。予算が “無い” のだ」

 「日本は、もっと政策的な練達と予算を作れるような人材を登用すべきでは?」

 「日本は、実力者同士の根回しによって歴史が作られてきた」

 「能力のある者はキャリアとして特権階級を認め体制を固めさせてきた」

 「実力者と能力者の二重構造なのだ」

 「実力者を制約してしまうような倫理、法、正義も排除してきた」

 「実力者が自ら自身を縛るような法を作るかね」

 「議会制でも同じだ。人脈、金脈、利権を握る者の政低党高になりやすい」

 「権力側に居座る者が庶民に求めるのは愛国心より忠誠だ」

 「政策が矛盾していても気付かない庶民だ」

 「例え、気付いても事勿れ式に従う庶民だよ」

 「倫理の強い庶民でも、知恵のある庶民でも、正義感の強い庶民でもない」

 「しかし、従順な人間だけでは、戦争に勝てなくなってきてるのでは?」

 「権力を守るため、従順な部下を優先するのだ」

 「自分を脅かしてしまうような才覚のある者は、反対する者より危険なのだ」

 

 

 廃墟と化した真珠湾

 真珠湾炎上後、日本海軍将校たちが、港湾内に取り残された戦利品を見て回る。 

 水道を塞ぐ扶桑、山城を爆破解体する大音響が港湾内に響く。

 破壊された資材の中から使えない機械類を同じ部品ごとに集めていく。

 ドックの戦艦ペンシルバニアは解体されていた。

 アメリカ戦艦は、甲板より上の構造物。砲塔、鐘楼、煙突が破壊されていた。

 甲板以下の設備は使えるらしく。再利用が検討されていた。

 舶来物は誰でも自慢する。

 それは、戦争中でも同じで、愛国心とは別の物差しで、純然たる品質の差。

 虚栄心を愛国心と偽り、口々に出来の差を捻じ曲げても舶来物は安心感を与える。

 10000トン級工作艦メデューサは工作艦明石のモデルであり。

 12500トン級工作艦ヴェスタル、6250トン級工作艦リゲルは工作能力も高い。

 真珠湾内に取り残され捕獲された工作艦3隻は、

 日本海軍にとって、なくてはならないものとなっていた。

 そして、真珠湾自体が巨大な工廠であり。

 これほど、充実した設備は日本本土にもない。

 この工作艦3隻をフルに活用すると比較的早いうちに解体と修復が進んでいく。

 

 日本軍6万と日系人16万は、今後の関係を模索していく。

 白人26万のうち民間人は、小型船で一番近いモロカイ島へ輸送され。

 アメリカの病院船でアメリカ本土へ帰還していく。

 空ドックは、小型艦船や伊号の修理用に使われていた。

 

 1365トン級ファラガット型駆逐艦あおしぎ(デューイ)

 日本軍将兵たちがバケツで海水を汲み上げ、上澄みの重油を捨て。

 重油で煤けた駆逐艦を洗っていた。

 艦橋

 「38口径127mm単装砲5基。4連装魚雷2基。爆雷投下軌条2基か・・・」

 「破損している兵装も多いから」

 「そのまま使える艦と内地で装備を換装する艦に分かれるらしい」

 「動かせそうかね」

 「ええ、なんとか。艦隊乗員なら残っていますし。燃料も残っています」

 「こういうオーソドックスで無理のない設計は、安心感を与えるよ」

 「片道特攻の成果としては大きいでしょうね」

 「まぁ そう言えなくもない」

 「命名はどうするって?」

 「“あおしぎ” だと」

 「鳥の名前から適当に取りやがったな」

 

   1850トン級ポーター型

     いぬわし(セルフリッジ) 、いそしぎ(フェルプス)、

   1500トン級バッグレイ型

     はくがん(バッグレイ)、はちくま(ブルー)、はましぎ(ヘルム)、はやぶさ(マグフォード)、

     はいたか(ラルフ・タルボット)、へらさぎ(ヘンリー)、ほおじろ(パターソン)、

  1450トン級マハン型

    かわせみ(カミングス)、かるがも(タッカー)、かささぎ(ダウンズ)、かっこう(レイド)、

    きばしり(ケース)、くさしぎ(カッシン)、ごいさぎ(ショー)、ささごい(カニンガム)

   1365トン級ファラガット型

     あおげら(ファラガット)、あおしぎ(デューイ)、あおばと(ハル)、

     あかはら(マクドノー)、あかひげ(ウォーデン)、あおさぎ(デール)、

    あまさぎ(モナガン)、おおるり(エールウィン)、

 

 

 真珠湾に二式大艇、97式大艇が並び、パイロットと整備士が到着していた。

 真珠湾は、南鳥島から6000km、マーシャルから3600kmだった。

 大艇から38式小銃、38式機関銃、96式機関銃、百式短機関銃、弾薬が降ろされていく、

 2トン積める大艇に4kg〜30kgの武器弾薬なら十分詰めた。

 開発された島は食糧自給しやすく、大型飛行艇のピストン輸送で戦力を維持できた。

 

 オアフ島配備のアメリカ軍機は400機だった。

 ほとんどが破壊され捕獲した機体も修理と共食いで目減りしていく。

 フォード島飛行場

 整備士とパイロットが生き残ったP40ウォーホークを調整していた。

 使えそうな機体は136機。修理と調整に手間取っていた。

 フォード飛行場の滑走路にB17爆撃機6機、B18ボロ爆撃機24機、双発水上機カタリナ6機

 P40ウォーホーク62機、P36ホーク戦闘機30機、P26ピーシューター戦闘機14機が並ぶ。

 「無傷で占領できていれば西海岸だって行けたのに」

 「アメリカ本土は、もっと設備が充実しているのでは?」

 「それはあるかもしれないな」

 「しかし、コンクリートで道を作っているなんて、なんて、豊かなんだろう」

 「取り敢えず。日系人が島で食糧を作るそうだ。自給自足は何とかなるらしい」

 「本当に?」

 「白人が来る以前、ハワイ諸島は人口30万人くらいだったそうだ。随分と死んだがね」

 「そりゃ 白人は疫病神どころか、死神だな」

 「それは言える」

 「それは良いとして、畑は、パイナップルばかりじゃないか」

 「魚も獲れるだろう。ほかの穀物も植えればいいだろうし」

 「んん・・・」

 「だけど日本機が配備されないと寂しいな」

 「だよなぁ」

 日の丸に塗り替えられたP40ウォーホークが滑走路上空を旋回する。

 水冷エンジンで時速570kmの高速。稼働率は安定していた。

 「格闘性能は低いな」

 「しょうがないよ。でもP36戦闘機、P26戦闘機よりマシかな」

 

 

 首相官邸

 「取り敢えず。現行の97式印字機を調整して使うとしてだな」

 「しかし、アメリカに同じ印字機があった場合・・・・」

 「だから、予算が付くまでの間は、上手く調整してだな」

 「取り合えず、陸海軍で500万ずつという事では?」

 「まぁ 兵装が減らされても、仕方がないと言えば、仕方がないが・・・・」

 「しかし、年月がかかるな」

 「併用するしかないのでは?」

 「旧式の暗号機が解読されているのだから、併用はまずいだろう」

 「旧式を足がかりに新型も解読されるか・・・」

 「暗号を全部作り直して、暗号機製造して切り替える前に戦争が終わると思うよ」

 「91式から97式の時も苦労したし」

 「んん・・・」

 「暗号電文が少なければ解読される危険も減る」

 「海底電線を敷けば良かったのに・・・」

 「海底電線より。軍艦を建造したかった」

 

 

 アメリカ軍は、ミッドウェー、ウェーク、ジョンストン、パルミラ、グアムで粘っていた。

 ハワイを占領されて、輸送が困難になった島にも、輸送艦が命がけで到着する。

 輸送作戦は、日本潜水艦の通商破壊を突破しなければならず。

 輸送艦に改造された旧式4本煙突駆逐艦で強行するか。

 飛行艇を使って空輸するか。潜水艦で輸送した。

 パルミラ

 「やっと輸送が来たか」

 「まともな食事にありつける」

 当然、哨戒任務など滅多にできることではなく、基地上空を守るだけで精一杯だった。

 

 

 ブルネイ

 陸軍将校と海軍将校が腕を組み睨み合う。

 「なぁ 油を分けてくれないか」

 「駄目だ」 こともなげ

 「「・・・・・」」

 「困ったな。友達になれると思ったのに・・・」

 「ふざけんな! 誰が海軍と・・ぉ・・・」

 『・・・なんで、艦隊が大砲をこっちに向けているんだよ・・・』

 『沖に向けろよ。敵は沖だろう・・・』

 「困ったねぇ 陸軍に協力してもらわないと・・・」

 「・・・わ・・・わかった・・・わ、わけてやろう・・・」

 「おお、そうか、陸軍の協力に感謝するよ」

 「も、もちろんだとも、陸軍と海軍は、友達だ・・・」

 『この・・・海賊野郎〜』

 

 

 数日後

 「何だと! 海軍に燃料を取られた?」

 「はぁ こっちに大砲を向けていたもので」

 「なっ くっそぉ〜 わかった。中国戦線に送るはずの重砲をそっちに送る」

 「はっ!」

 「絶対に海軍に燃料を渡すな!!!」

 「はっ!」

 

 

 

 戦績表が並び、第一機動部隊南雲長官と第二機動部隊山口長官が見ていた。

 第一機動部隊 戦績 戦艦2隻、駆逐艦4隻、潜水艦1隻。撃沈

 第二機動部隊 戦績 重巡2隻、軽巡5隻、駆逐艦18隻、潜水艦5隻。撃沈

 なんとなく、学生時代の成績発表に似ている。

 もっとも戦果が出世の目安の一つになるため、互いに切実だったりする。

 プリンスオブウェールズ、レパルス、4隻以外は、第二機動部隊が撃沈したものだった。

 「「・・・・・」」

 「さすがは南雲司令。老練な指揮で戦艦2隻と駆逐艦4隻撃沈。実に素晴らしい戦果です」

 『このクソ爺ぃ 老いぼれのくせしやがって、戦艦2隻を・・・』

 「いや、そちらこそ、若いだけあって、勢いがあるな」

 『この若造が数沈めれば良いもんでもないだろう』

 「「・・・・・」」 苦笑い

 『『絶対に負けてやらん』』

 

 

 

 そして、インド洋ではイギリス艦隊が集結しつつあった。

 東洋艦隊

 空母インドミタブル、フォーミダブル

 戦艦ウォースパイト

 重巡コーンウォール、ドーセットシャー、

 軽巡エメラルド、エンタープライズ

 駆逐艦パラディン、パンサー、ホットスパー、フォックスハウンド、

 駆逐艦ネイピア、ネスター(豪)

 

 空母ハーミス、

 戦艦レゾリューション、ラミリーズ、ロイヤル・ソヴァレン、リヴェンジ、

 軽巡カレドン、ドラゴン、

 軽巡ヤコブ・ファン・ヘームスケルク(蘭)

 駆逐艦グリフィン、アロー、デコイ、フォーチュン、スコット、

 駆逐艦ノーマン(豪)、

 駆逐艦イサク・スウェア(蘭)

 

 

 日本第一、第二機動部隊は、コロンボを空襲して壊滅させる。

 その後、イギリス機動部隊を捜索するため、南下。

 第一機動部隊が重巡コーンウォール、ドーセットシャーを発見し撃沈。

 赤城 艦橋

 「ふっ 勝ったな。重巡2隻撃沈♪」

 「南雲司令・・・第二機動部隊から電文です」

 “第二機動部隊は空母ハーミーズと駆逐艦 (ノーマン・豪)を発見して撃沈する”

 赤城 艦橋

 ビリッ!

 「おのれぇ 山口め、イギリス空母を撃沈するとは小癪な」

 「こっちも全力で、イギリス・・・」

 赤城の周りに水柱がいくつも立ち昇る。

 「なんだ!?」

 「ウェリントン爆撃機です・・・数は・・・9機」

 「んん・・・南を捜索する。インド大陸から離れろ」

 

 モルジップ諸島の最南端にアッツ環礁があった。

 アッツ環礁は 北東-(12km)-南西。北西-(7.2km)-南東

 第一機動部隊は環礁内のイギリス艦隊を発見する。

 その後、第二機動部隊も環礁内のイギリス艦隊を発見。

 発見の早いはずの第一機動部隊の攻撃準備は遅れ。

 発見の遅い第二機動部隊の攻撃準備は速かった。

 結局、ほぼ同時にアッツ環礁を空襲してしまう。

 戦艦5隻、空母2隻を含む24隻の艦艇と輸送船3隻がアッツ環礁に並んでいた。

 東洋艦隊

 空母インドミタブル、フォーミダブル

 戦艦ウォースパイト

 軽巡エメラルド、エンタープライズ

 駆逐艦パラディン、パンサー、ホットスパー、フォックスハウンド、

 駆逐艦ネイピア、ネスター(豪)

 

 戦艦レゾリューション、ラミリーズ、ロイヤル・ソヴァレン、リヴェンジ、

 軽巡カレドン、ドラゴン、

 軽巡ヤコブ・ファン・ヘームスケルク(蘭)

 駆逐艦グリフィン、アロー、デコイ、フォーチュン、スコット、

 駆逐艦イサク・スウェア(蘭)

 

 アッツ環礁のいたるところで爆発が起こり、十数条の黒煙を上らせていた。

 200機以上の艦上機が環礁上空を舞い。

 空母2隻、戦艦5隻は戦わずして鉄屑にされていく。

 戦艦を保有しない第一、第二機動部隊がアッツ環礁を封鎖し、

 戦艦5隻、空母2隻を有するJ・サマヴィル中将率いる東洋艦隊を壊滅させていく、

 

 

 重巡 筑摩、那智、羽黒、足柄、妙高がアッツ環礁に向けて砲撃していた。

 既にイギリスの戦艦5隻、空母2隻は沈み。

 生き残ったイギリス巡洋艦と駆逐艦も壊滅していく。

 砲撃で軽巡ヤコブ・ファン・ヘームスケルク(蘭)が爆発する

 妙高 艦橋

 「な、なんだ」

 「第一機動部隊の巡洋艦艦隊の砲撃です」

 重巡 (利根、高雄、愛宕、摩耶、鳥海)が環礁の反対側から砲撃していた。

 「ちっ! 紛らわしい」

 「なんか、戦果が交錯し過ぎてわからんな」

 「ええ、しかし、何で、こんなところに停泊していたんでしょうね」

 「んん・・・この環礁で反撃の補給でもしていたのだろう」

 「では、こちらが引き揚げる頃を見計らって送り狼で・・・」

 「運が良かったのかもしれないな」

 

 加賀 艦橋

 「浅瀬用魚雷が残っていて良かったですね」

 「まぁ 真珠湾をやるとかで作っていたモノらしい」

 「それしか残ってなかったのは、好都合だったな」

 「次はどうします?」

 「取り敢えず。島は占領した方がいいだろう。陸さんに燃料の恩返しすべきだろうな」

 「ですかね」

 

 

 角田覚治少将率いる空母パイロット養成部隊が編成されていた。

 空母 (龍驤、瑞鳳、祥鳳、鳳翔)

 駆逐艦 追風、疾風、朝凪、夕凪、睦月、弥生、望月、卯月、三日月、夕月

 龍驤 艦橋

 「艦戦、艦爆、艦攻の搭乗人を10機ずつ、第一、第二機動部隊へ拠出のこと・・・」

 「やれやれ、第一機動部隊と第二機動部隊の踏み台にされてしまったな」

 「機動部隊は大戦果をあげていますからね。パイロット供給は、急務なのでしょう」

 「どうせなら、インド洋の掃討でもさせてくれれば良いのに・・・」

 「最上型と仮装巡洋艦の部隊がするそうです」

 「空母の方が索敵能力が高いというのに・・・」

 「残念です」

 

 第一機動部隊と第二機動部隊がリンガ泊地に停泊。整備休養。

 代わり巡洋艦4隻、駆逐艦14隻、輸送船10隻がインド洋へ向かう。

 重巡 最上、三隈、鈴谷、熊野

  吹雪、初雪、白雪、白雲、叢雲、薄雲、磯波、

  浦波、敷波、綾波、天霧、朝霧、夕霧、白雲

 最上 艦橋

 「アッツ島の制圧だと、巡洋艦だけでやれるかね」

 「イギリス艦隊は、壊滅しているとか」

 アッツ環礁に日本軍が進駐。

 日独仮装巡洋艦8隻+2隻と潜水母艦2隻、伊号潜水艦12隻が配置についていた。

 環礁内に戦艦5隻と空母2隻が転覆した状態で沈んでいた。

 イギリス軍は、捕虜とされ、シンガポールへと連行されていく。

 施設が少なくイギリス軍将兵の評判が悪い島だった。

 しかし、日本軍将兵にとっては、南洋の楽園だった。

 

 東洋艦隊不在のインド洋で活躍したのは、この仮装巡洋艦隊と潜水艦隊だった。

 大型の船体は長距離航行を可能とし、その火力で米英輸送船を圧倒する。

 愛国丸 報国丸、護国丸。10000トン。

  50口径140mm8門。25mm連装2基。13mm連装2基。

  530mm魚雷連装2基。水上機2機

 金竜丸9000トン

  152mm4基。80mm1基。7.7mm2基。水上機2機

 清登丸、金剛丸、浅香丸、栗田丸、赤城丸7000トン。

  152mm4基。80mm1基。7.7mm2基。水上機2機

 ドイツ仮装巡洋艦トール(3800トン) ミヒェル(4700トン)

  15cm砲6門、37mm砲2門、魚雷発射管4門、水上機1機

 

 

 

 ドイツ海軍が戦艦ティルピッツとシャルンホルスト、グナイゼナウの出撃準備を進める。

 イギリス海軍は、ドイツ戦艦部隊に備え、

 高速戦艦と空母を待機状態にしなければならず身動きが取れなくなる。

 イギリス海軍のローテーションは、イギリス東洋艦隊の壊滅によって最悪だった。

 そして、アメリカ軍のハワイ反攻作戦が進むと航空戦力まで太平洋側にシフトし、

 イギリス海軍は、地中海を縦断する独伊軍の北アフリカ輸送船団を妨害できなかった。

 

 ベルリン

 「北アフリカに3個師団送ろう」

 「し、しかし、それでは、東部戦線が・・・・」

 「もう3個師団送って、スエズを押さえられるのなら悪くなかろう」

 「イギリスがインド洋から追い出されれば、インドから切り離される」

 「イギリスにとってスエズ、インドは、ソ連にとってスターリングラードを失うのと変わらない」

 「で、ですが、東部戦線は?」

 「少しぐらい攻め足が遅れても良いだろう。その間、鉄道を伸ばして、輸送力を増やそう」

 「はっ」

 「アメリカもハワイを落とされて、そっちに意識がいってる」

 「イギリスを脱落させる好機でもある」

 「御意」

 

 

 ロンドンの戦略情報部は、恐慌状態と言えた。

 日本戦艦部隊による真珠湾特攻。

 第一、第二機動部隊による東南アジア掃討作戦。

 第一、第二機動部隊によるイギリス東洋艦隊の殲滅。

 そして、アッツ環礁占領とインド・太平洋の通商破壊作戦。

 日本の開戦は、アメリカを対ドイツ参戦に巻き込み、戦略的に大戦果と言えた。

 しかし、日本軍が緒戦にあげた戦果は欧州戦線にも影響を与え、

 大西洋から喜望峰経由、インド洋回り、エジプト行きの輸送航路が途絶えてしまう。

 北アフリカ戦線のイギリス軍の補給難は深刻だった。

 トブルクを占領したロンメル機甲師団はエル・アラメインを狙い。

 イギリス軍は苦境に立たされた。

 喜望峰回りの輸送船団が打撃を受け始める。

 ヒットラーは、この機に乗じ、3個師団の戦力を北アフリカ・トブルクに送った。

 1号戦車、2号戦車、3号戦車ばかり300両。そして新たにトラック500台。

 ロンメル将軍は、それで充分だった。

 いや、普通の将官であれば不足なはずだった。

 しかし、何を勘違いしたのか、ロンメル将軍は、十分と錯覚する。

 エルアラメインの戦い。

 独伊軍15万。戦車885両。航空機500機 VS 米英軍15万。戦車1000両。航空機1400機。

 補給難でも攻撃したドイツ軍は、補給難のイギリス軍を脅えさせた。

 そして、イギリス軍は、ドイツ軍が十分な補給を得られたと錯覚。

 イギリス軍をエル・アラメインから敗走させ、

 ロンメル軍団はエル・アラメインを占領してしまう。

 北アフリカ戦線の天秤が傾くと戦局に変化が訪れる。

 イギリスは有力な港を失い。独伊軍は、有力な港を得てしまう。

 結果的にイギリス軍はアレクサンドリアまで後退。

 ドイツ軍は、エジプト領内奥深くへと進攻するとエジプト独立勢力の蜂起が始まり。

 疲弊したイギリス軍とエジプトに来たばかりのアメリカ軍が浮足立った。

 

 

 第三機動部隊

 小沢少将の下に艦隊が編成されていく。

 空母 (隼鷹) ゼロ戦12機、99艦爆18機、97艦攻18機。

 重巡 最上、三隈、鈴谷、熊野

  吹雪、初雪、白雪、白雲、叢雲、薄雲、磯波、

  浦波、敷波、綾波、天霧、朝霧、夕霧、白雲

 隼鷹 艦橋

 「まだまだ、作戦ができる規模とは言えないな?」

 「飛鷹と龍鳳が編入されるそうです」

 「それで、インド洋で作戦を継続しろと?」

 「そのようです」

 「第一機動部隊と第二機動部隊は?」

 「一仕事した後、本国で整備とか」

 「骨休めか」

 「戦艦部隊の乗員と交替させてみるそうです」

 「ふ 部署を失った将校や水兵ほど惨めなものはないからな」

 「山本長官も、らしくなく思い切った事をしましたからね」

 「田舎者扱いされてキレたんじゃないか?」

 「逆なでされて、いつもの保身が飛んだのでしょう」

 「人間。開き直ると怖いな」

 「そんな感じですね」

 「インド洋は、仮装巡洋艦と潜水艦で、十分のような気もするがね」

 「上手くいけば、ロンメルがカイロを落として、日独伊連絡を可能になるのでは?」

 「だと良いけど。あっちも、こっちも、物資が足りないからな」

 「足りないのは開戦前からでしたけど、開戦後は凄まじく足りませんからね」

 

 

 サンチアゴ

 病院船がサンチアゴに入港するとハワイの住人たちが降りてくる。

 ハワイの白人たちの衣料品、食糧を大量に準備しなければならず負担になっていた。

 とはいえ、日本軍にハワイ住人をモロカイ島に置き去りにされ、

 救出しないわけにもいかず。

 病院船を何度も往復させなければならなかった。

 サンチアゴ アメリカ軍太平洋作戦司令部

 将校が慌ただしく行き来する。

 「インド洋のイギリス機動部隊が日本機動部隊の攻撃で、やられたらしい。それも壊滅」

 「何と言う間抜けだ」

 「真珠湾に閉じ込められ壊滅した太平洋艦隊と良い勝負かと」

 「真珠湾は戦争開始と同時だろう」

 「戦争中にそんな間抜けなやられ方をする方が悪い」

 「日本側の損失は?」

 「良くて、2、30機だそうだ」

 「じゃ インド洋は?」

 「イギリスは、アメリカ大西洋艦隊をインド洋に出して欲しいそうだ」

 「ハワイの反攻作戦が先だろう」

 「上は、米英ソ連合の戦力の振り分けで大騒ぎだと」

 「確かに大西洋でドイツ艦隊が動くとまずいだろうな」

 「イギリス空母は、イラストリアスとヴィクトリアスだけか。かなりまずい」

 「戦艦は?」

 「キングジョージ5世。ディークオブヨーク、レナウンか」

 「アンソンとハウは慣熟訓練中だな。旧式戦艦は追撃戦で役に立ちそうにない」

 「ピンチじゃないか」

 「ああ、ピンチだ」

 

 

 赤レンガの住人たちの下に新聞より正確な報告書が届く、

 「ええと・・・第一主力艦隊と引き換えにオアフ島を制圧しつつあり」

 「アメリカは太平洋反攻計画のオアフ再占領のため太平洋寄りに戦力をシフトしていく」

 「日本の第1、第2機動部隊はイギリス東洋艦隊を殲滅」

 「インド洋全域に通商破壊部隊を繰り出している」

 「んん・・・戦艦が無い割に健闘してるね」

 「大和、武蔵の2隻があるだろう」

 「アメリカ海軍はコロラド、ニューメキシコ型3隻、ニューヨーク型2隻の6隻」

 「新型戦艦はワシントン型2隻。あとサウスダコタ型4隻、アイオワ型6隻を建造するらしい」

 「まともに艦隊決戦だと負けるな」

 「どの道、不利でしたから」

 「旧式艦艇も解体したし。信濃建造も中止しただろう」

 「山本長官が年月のかかる戦艦の建造を嫌ったらしい」

 「治具類とか、機材とか。戦闘機とか。潜水艦とか・・・」

 「矢面に出されたら、そうなるよ。上級将校の家族もオアフ居住なんだろう」

 「“総督で帰って来るな” は、本気かな」

 「場所が場所だから、行ったり来たりできないからね」

 「欲しいのは即戦力で丈夫で長期使える航空機と水雷戦隊らしい」

 「あと通商破壊で潜水艦だ」

 

 

 オアフ島 工廠

 P40ウォーホークが並んでいた。

 「1200馬力のV1710水冷エンジンか・・・」

 「ドイツ製エンジンより劣るらしいけど、とりあえず。こいつで守りたいらしい」

 「フィリピンの捕獲機材もこっちに持ってくるらしいよ」

 「山本長官も必死だな」

 「今はハワイ総督だそうだ」

 「「「「あははははは・・・」」」」

 「二式大艇と九七式大艇で戦闘機の機材を運んで、こっちで組み立てるらしい」

 「陸軍も飛燕を持ってくるらしいよ」

 「飛燕は水冷だろう」

 「V1710水冷エンジンを装備できるかな」

 「そのままじゃ無理だな」

 「ハ40より55cmほど長いし、幅も5cmくらい広い。重量は15kg重くなる」

 「重量はともかく、寸法が違うのは駄目か」

 「まぁ オアフの工廠なら、改造するくらい出来そうだけどね」

 

 

 愛国丸 報国丸

 南大西洋での通商狩りは、意外に成功を収めていた。

 「前回のM4戦車に続き。ついてたね」

 「さっきの積み荷、ダイヤだったな」

 「ありゃあ 工業用ダイヤだ。少しはマシな部品を作れるかも知れないね」

 「そりゃいいや、舶来物がないと工員がイラつくからね」

 「この調子で、捕獲して回ろう」

 

 

 地中海のアレクサンドリア沖。

 この周辺海域のイギリス戦艦は、マラヤ(42口径381mm砲8門)しかおらず。

 慌てたイギリス海軍は、ネルソン、ロドニー(45口径406mm砲9門)を差し向けた。

 イタリア艦隊

  新型戦艦リットリオ、ヴィットリオ・ヴェネト。(50口径381mm砲9門)

  旧式戦艦カイオ・デュイリオ、アンドレア・ドリア、ジュリオ・チェザーレ。(43.8口径320mm砲10門)

 イタリア艦隊はアレクサンドリアに接近していた。

 イギリス空軍は、独伊軍にかかりっきり、接近するイタリア戦艦部隊を空襲する余裕もない。

 アレクサンドリア沖

 停泊地だったアレクサンドリアの上空で空中戦が行われ、地上部隊の砲声が聞こえる。

 艦砲射撃で支援したくても、

 イタリア戦艦部隊の接近の急報を受けた後では、それも厳しかった。

 イギリス戦艦マラヤ 艦橋

 「援軍は?」

 「ネルソンとロドネーは、まだです」

 「空軍も駄目そうだな」

 「アレクサンドリアの戦闘は激しそうですからね」

 「・・・提督。来ました」

 水平線の彼方から向かってくるのは、イタリア艦隊だった。

 「やれやれ、イタリア艦隊が先に来たか」

 戦艦マラヤは、速度差で負けて逃げ出す事もできず、

 屠殺場に引き出された様な状況だった。

 敵艦隊から砲声が届くと観測用試射砲弾が10時方向500メートル先に水柱を昇らせた。

 「・・・旧式戦艦1隻でイタリア新型戦艦2隻と旧式戦艦3隻と撃ち合う事になろうとはな」

 リットリオとヴィットリオ・ヴェネトの50口径381mm砲18門から時折、砲弾が降り注ぐ。

 まだ試射で本気ではないらしい。

 同じ381mm砲でも50口径と42口径では既に射程が違う。

 「惜しいですね。新型戦艦なのに経験値が足りない」

 「試射をそれだけ多く撃たなければならないということだ」

 「我々なら目算で至近弾ですよ」

 「ふっ」

 軽口だけでも余裕を持ちたくなる心境だった。

 最大射程で撃ち返せば届く距離であったが届く距離と命中させられる距離は開きがある。

 「そろそろ、撃って慌てさせてやるか」

 「ええ、そうしたいところです」

 「・・・撃てぇ!!」

 マラヤの42口径381mm砲8門が爆炎とともに主砲弾を撃ち返すと艦体に衝撃が走る。

 同時にもっと大きな衝撃が戦艦マラヤを震わせた。

 大口径砲弾が立て続けに命中し、

 上甲板が破壊され鋼材が軋みを上げてねじ割れていく。

 爆音で耳がおかしくなっていく。

 揺れのほとんどない戦艦マラヤが振動し揺さぶられる。

 乗員は、衝撃と振動で床や壁に叩きつけられ、血が飛び散っていく。

 気付くと艦橋が傾いており、マラヤは炎上し、誘爆を繰り返していた。

 既に勝負は見えていた。

 「・・・海岸に近付けろ」

 集中砲撃を受けたマラヤは浮かぶ棺桶となっていた。

 味方の海岸に近い浅瀬に沈みはじめ、上甲板に海水が達する程度の海底に着底した。

 撃沈を避けたものの主砲塔は破壊されており、無力化されていた。

 そこにネルソンとロドネー(45口径406mm砲×9)が到着する。

 ネルソン VS リットリオ

 ロドネー VS ヴィットリオ・ヴェネト。

 互いに水平線の戦艦に向かって砲撃が始まる。

 両艦隊とも、並行戦のまま、ゆっくりと接近していく。

 イタリア戦艦部隊は速度差だけでなく、砲数でも勝り、イギリス戦艦を追い詰めていく。

 ネルソン型戦艦は、艦尾側に大砲がないため逃げる事も出来ない。

 イギリス戦艦とイタリア戦艦が相殺戦を繰り広げている間。

 旧式戦艦カイオ・デュイリオが急速に接近しつつネルソンを砲撃。

 そして、旧式戦艦アンドレア・ドリア、ジュリオ・チェザーレもロドネーに向けて砲撃を加える。

 

 ネルソン 艦橋

 水柱が視界を遮り、衝撃と破砕音が続く。損害報告が伝わるが既に大破していた。

 水柱の隙間からリットリオも炎に包まれていることが分かった。

 衝撃が走ると艦橋が爆炎に包まれていく。

 「ちっ! 邪魔くさい」

 「旧式のカイオ・デュイリオのようです」

 43.8口径320mm砲でも距離が近づけば砲数が多く脅威となった。

 「先に片付けるか」

 「リットリオは、さらに接近しています」

 「イタリア海軍らしくなく粘るじゃないか」

 「マラヤを撃破して気が高ぶっているのでしょう、戦意が折れませんね」

 「もっと早く来るか、ゆっくり来ればよかったな」

 「座礁して沈まないマラヤ相手に砲弾を使わせる事ができた」

 「提督・・・」

 大音響が戦場に木霊し、アンドレア・ドリアが轟沈していく。

 ロドネーが目障りな旧式戦艦アンドレア・ドリアに向けて放った砲弾が弾薬庫を貫通していた。

 「ロドネーが一矢報いたか・・・」

 黒い物体がネルソンの第二砲塔に命中して装甲を食い破って炸裂する。

 

 アレクサンドリア沖海戦で、ネルソンとロドネーが沈黙したとき。

 リットリオとヴィットリオ・ヴェネトも、それぞれ4発づつ命中弾を受けて大破。後退していく。

 残ったイタリア旧式戦艦カイオ・デュイリオ、ジュリオ・チェザーレ2隻がアレクサンドリア沖を支配し。

 エジプトの米英軍の退路を断ってしまう。

 海上での勝敗が決すると制海権を奪われた米英軍は、戦意を喪失していく。

 ロンメル軍団は前進するほど、エジプト人の蜂起が激しさを増していた。

 ドイツ・イタリア軍は、アレクサンドリアを占領し、カイロを制圧、日独連絡が可能になった。

 独伊軍がエジプトを制圧するとムッソリーニ総統は喜び勇び。

 イタリア軍30万でリビアからエジプトまでの北アフリカを固め支配権を確立していく。

 ドイツ軍がカイロに到達したとき、ドイツ製戦車は、ほとんどが壊れ、

 ロンメル軍団の主力装備は捕獲したイギリス・アメリカ・イタリア製になっていた。

 実のところ、戦力と補給物資が切れかかっていたため、ギリギリの勝利といえた。

 カイロの連合軍は、病症兵か、負傷兵ばかりで戦う力がなかった。

 そして、エジプトで修理整備中だった戦車を捕獲してしまう。

 マチルダU歩兵戦車MkU(125)、ヴァレンタイン巡航戦車MkV(217両)、

 クルセイダー巡航戦車MkY・Mk-W、(240両)

 M3軽戦車(100両)、M3中戦車(55両)、M4中戦車(280両)。

 カルロ・アルマートM13中戦車(68両)

 2ポンド(52口径40mm)砲。6ポンド(52口径57mm)砲。

 17ポンド(58口径76.2mm)砲。25ポンド(87.6mm)砲。

 中には一度、イタリアが奪われ、再捕獲した32口径47mm砲などなど。

 ドイツ・イタリア軍のエジプト占領で日独伊連絡が可能になっていく。

 この戦果は、アメリカ軍のハワイ上陸作戦のためと考えられ。

 さらには、日本軍のインド洋通商破壊作戦のためとも言われる。

 ムッソリーニは無事な旧式戦艦カイオ・デュイリオで、アレクサンドリアに入港。

 カイロ入城を果たしてご満悦となった。

 

 

 ドイツの北アフリカ戦線の増援は、東部戦線に悪影響を与えていた。

 軍用トラックがなくては補給ができず戦線を維持できない。

 計画していたブラウ作戦が戦力差が開いて攻勢をかけられなかった。

 東部ドイツ軍は、輸送難となってブラウ作戦が困難になり進撃を停止。

 越冬のため防衛線を構築していた。

  枢軸国   ソビエト連邦
ドイツ軍 230万 ソビエト軍 540万
フィンランド軍 45万    
ルーマニア・ハンガリー・イタリア軍 50万    
全軍 325万    
       

 多少の戦力比は、ドニエプル川の防衛線で押さえることができた。

 フリードリヒ・パウルス元帥は、構築されていく対戦車陣地を見て回る。

 戦車に対する防壁は、単純で、手間暇かければ可能だった。

 幅5mほどの塹壕が掘られ、味方側に土が盛られる。

 ソビエト戦車がいかに大群でも、対戦車塹壕を埋めなければ越えられない。

 「悪くないな」

 「ソビエトはドイツより国力が上のはず」

 「年内に攻勢を仕掛けなくて良かったのでしょうか」

 「さぁな。補給が滞っては戦争はできんよ」

 「ロンメル元帥にトラックを取られて、良い格好をさせてしまいましたね」

 「バカめ。カイロなんか占領してどうする。主戦場は東部戦線だろう」

 「エジプトからイギリス軍の戦利品を持ち帰るとか」

 「来年の夏季攻勢に期待する方がいいのでは?」

 「国力比だとな。来年からは、防戦だよ」

 「じゃ・・・」

 「年内に落とせなかった時点で、ソ連に勝てる可能性が消えたよ」

 

 

 ドイツ・イタリア軍がスエズ運河を占領。

 スエズ運河の占領は、日独伊連絡が可能になって初めて効果が現れる。

 エジプト人の蜂起によって米英軍20万が降伏。

 米英軍戦闘車両1000両、航空機500機以上が戦場に取り残され、散乱していた。

 ドイツ軍は、それらの捕獲戦力を回収し、戦力を再建していく。

 「なんか、かなり壊れているな」

 「M4戦車は、それなりに残ってるよ」

 「イギリス人は転換訓練中で慣れてなかったか」

 「アメリカ人は初陣で砂漠に慣れてなかったんだな」

 「取り敢えず、チュニジアの防衛が最優先だろうな」

 「良い思いしているのは、イタリアだけか」

 「イタリア軍は30万を北アフリカに残して、残りは東部戦線に送ってもらうんだと」

 「それくらいやってもらわないとねぇ」

 

 

 ロンドン

 大騒ぎの海軍司令部

 「戦艦ネルソン、ロドネー、マラヤが撃沈されたって?」

 「ヤバいよ」

 「地中海に戦艦と空母を送ると北大西洋ががら空きになる」

 「大西洋には、アメリカ戦艦もいない」

 「こちらが動けば、ティルピッツ、シャルンホルスト、グナイゼナウ、ポケット戦艦2隻が動き出す」

 「・・・駄目だ。艦隊は動かせんよ」

 「しかし、スエズ運河がとられるとは・・・」

 

 

 機動部隊が大海原を東進していた。

 第一機動部隊、第二機動部隊、第三機動部隊から艦載機が発艦していく。

 加賀 艦橋

 「暗号も出さず大丈夫だろうか?」

 「先行した二式大艇で伝えているので大丈夫のはずです」

 「新しい暗号に変えましたが使わずに済むのなら、それに越したことないでしょう」

 「暗号に頼り過ぎて使い過ぎたな」

 「海底電線を敷くべきでしょうね」

 「軍の予算が減らさるのはいやだがな」

 「大本営が戦艦を捨てたのですから、覚悟すべきでは?」

 「それくらいの腹がないと、この戦争は駄目だろう」

 「・・・提督。全機発艦しました」

 「そうか、すぐ引き揚げよう。アメリカ機動部隊に狙われたくない」

 「了解です」

 ゼロ戦32型153機、99艦爆144機、97艦攻96機。

 大編隊はオアフ島の定められた滑走路に着陸していく。

 前回、二式大艇が到着したとき、日本軍機の来援は知らされていた。

 そして、各飛行場への根回しは済んでいた。

 フォード飛行場

 ゼロ戦が着陸する。

 「・・・台南空部隊、着任しました」

 「良く来てくれた」

 「はっ」

 「ハワイも、ようやくまともな航空部隊を編成できるな」

 2式大艇10機、97式大艇12機も配備される。

 「第一機動部隊と第二機動部隊は?」

 「内地で改装工事に入るとか」

 「第三機動部隊もインド洋。あとはオアフ航空部隊で島を守れか」

 「まぁ 台南空とあっちこっちからの寄せ集めですが何とかなるでしょう」

 「ゼロ戦は新型32型ですし」

 「何とかねぇ」

 

 

 

 ニューギニア・ソロモン戦線

 ラバウル

 マッカーサー将軍率いる米豪連合軍がここに集結していた。

 飛行場の格納庫では、ライトニング戦闘機が組み立てられていた。

 「通商破壊は?」

 「グアム、フィリピン、ウェークへの輸送を優先しないと」

 「オアフが奪われて輸送航路の安全性すら得られないとはな」

 「日本機動部隊の攻撃と潜水艦の通商破壊で豪州は孤立しています」

 「ニューギニア・ソロモン戦線に戦力を集めよ。ここで日本軍を撃退する」

 「防衛線は、構築していますが後方が不安です」

 「日本は燃料不足だ。長征して占領作戦などできるものか」

 「ですが、オアフ島は?」

 「緒戦で油断していたのだ」

 「それに、もう突入させられる戦艦は残っていない。不可能だよ」

 

 

 

 戦艦 武蔵 艦橋

 甲板を手慣れた風に働く海軍将兵たちがいた。

 「長門、陸奥、伊勢、日向、扶桑、山城、金剛、榛名、比叡、霧島の生き残りか」

 「人材で余裕があると楽です」

 「真珠湾特攻のドサクサで上官がかなり殺されたようで、少しは懲りていると思われます」

 「人格に頼らず権力を笠に着るやつは、どこにでもいる」

 「人格に頼ると甘く見られたり馬鹿にされやすい部分もありますからね」

 「ふ 上も下も性根の問題か・・・」

 「閉塞的な艦内で階級がしっかりしていると歪になりやすいのかもしれません」

 「鬱積も溜まりやすいですからね」

 「ドサクサに上官殺しをしたくなるでしょうな」

 「殺されるような人格だった場合もあるし、自分が後釜になろうという奴もいる」

 「その辺は、憲兵に任せた方が良いだろう」

 「ええ」

 「褒めるつもりはないが、そういう事も起こると分かれば良い」

 「将兵間で無駄な諍いは無くすべきでしょうね」

 「そういえば、信濃建造が中止になったそうです」

 「旧式艦艇も解体されて製鉄所に消えている」

 「戦艦が消えたというのに、何考えているんだか」

 「オアフ島の長官が迎撃機と戦車を欲しがっているそうですから」

 「自分が最前線に立つと言う事が変わりやがる」

 「長官は、元々、航空戦力優位派でしたから」

 「この武蔵と大和だけでも艦隊戦で戦わせたいものだ」

 「まったくです」

 

 

 サンチアゴ

 「ようやく艦隊と陸軍が集まったか、やれやれだ」

 「まぁ オマハ型軽巡洋艦8隻は大西洋に取られたが、残りはこっちに回された」

 「スエズを奪われ、北アフリカ反攻作戦が延期され、チャーチルは御立腹だったらしいよ」

 「ハワイで駆逐艦30隻を失ったのが利いてるよ。輸送作戦が困難になってる」

 「日本機動部隊は?」

 「東南アジア制圧とインド洋作戦が終わって、整備中だそうだ」

 「それは、好都合だ」

 ハルゼー長官から作戦立案書がチェスター・ニミッツ司令長官に届けられる。

 加点主義な部署では、こういった事が評価される。

 ・・・憮然・・・

 「・・・司令」

 「駄目だな。ヒット・アンド・アウェイ作戦は中止だ」

 「なぜです?」

 「どこに来るかわからないのであれば、ヒット・アンド・アウェイ作戦は有効だ」

 「しかし、オアフ島に来ると決まっているのであれば・・・」

 「・・・・」 むっすぅううう〜

 その後、南太平洋への機動部隊移動とインド洋牽制が立案される。

 「ハワイに拠点を確保するまで、この作戦も駄目だ」

 「・・・・」 むっすぅううう〜

 

 

 空母エンタープライズ、ヨークタウン、ホーネット

 戦艦ワシントン

 重巡ペンサコラ、ソルト・レーク・シティ、ポートランド、インディアナポリス

 防空巡洋艦アトランタ、ジュノー、オークランド

  駆逐艦10隻

 

 空母レキシントン、サラトガ、ワスプ

 戦艦ノースカロライナ

 重巡アストリア、ミネアポリス、タスカルーサ、クインシー、ヴィンセンズ

 防空巡洋艦サン・ディエゴ、サン・ジュアン、リノ

  駆逐艦10隻

 

 戦艦ニューヨーク、テキサス。ニュー・メキシコ、ミシシッピ、アイダホ。コロラド

 重巡ウィチタ、ノーザンプトン、チェスター、ルイスヴィル、シカゴ、オーガスタ

 軽巡ブルックリン、フィラデルフィア、サヴァンナ、ナッシュビル、ボイス

  駆逐艦40隻、輸送船20隻。

 

 

 真珠湾

 湾内に沈められていた水中2225トン級潜水艦ドルフィンが浮上する。

 湾内が炎上したとき魚雷の誘爆を避けるため乗員が脱出。

 無人で潜航させただけだった。

 「使えそうか?」

 「トラップがあるかもしれませんから調べてみないと」

 「先に日本に回航させた4000トン級ナーワルの方が良さそうだな」

 「1600トン級キャッシュロットは小さい。2370トン級タウトグは最新鋭で参考になりそうだ」

 オアフ島占領後、真珠湾に沈められた潜水艦ドルフィン、タウトグも発見される。

 そして、ようやく浮上させられ、捕獲された。

 

 1365トン級ファラガット型あおげら(ファラガット)、

 艦腹の穴を塞いで粗油で機関を拭き上げ、

 破壊された装備を剥ぎ取るか、載せ変える。

 少しくらいの戦力減でも戦力である事に変わりなかった。

 「ドックがあると便利だな」

 「水道は?」

 「幅はギリギリだが出入りできるよ」

 「戦艦乗りから駆逐艦乗りか。格下げって感じだな」

 「宮仕えの辛いところか、地位を失うと名誉もないな」

 「とほほ・・・」

 「だが、性能は悪くない。居住性も良い」

 「機関が装備が破壊されて減っても、燃料タンクが増えて航続力を確保できた」

 「取り敢えず。最低限の練度で日本に帰還させよう。戦力化はそれからだ」

 「山本長官、伊10号から入電。サンチアゴ沖で敵機動部隊の出撃を確認したそうです」

 「そうか。2式大艇に索敵させた方が良いな」

 「それと、援軍の要請もだ」

 「援軍は来るでしょうか?」

 「当てにできなくても、一応な」

 「はっ!」

 「艦隊はどうします?」

 「練度が低いからな。全艦、内地に回航させろ。ここに置いても邪魔になるだけだ」

 「はっ」

 「機関銃など武器で降ろせるものは降ろして行ってくれ」

 「はっ」

 

 

 真珠湾

 「山本長官。潜水艦が敵艦隊を発見しました。北北西。距離500km」

 「もう、暗くなってる」

 「たぶん、夜明けと同時に空襲してくるのでは?」

 「仕方があるまい。夜明け前にゼロ戦を出撃させて迎撃させるしかないか」

 「攻撃できませんね」

 「空母がないと、どうしても、守勢に回るしかないな」

 

  

 第16任務部隊

 空母レキシントン

  F4Fワイルドキャット22機 SBDドーントレス36機 TBDデバステーター12機

 空母サラトガ

  F4Fワイルドキャット25機 爆撃機SBDドーントレス37機 TBDデバステーター12機

 空母ワスプ

  F4Fワイルドキャット28機 SBDドーントレス36機 TBDデバステーター9機

 

 第17任務部隊

  空母ヨークタウン

    F4Fワイルドキャット20機 SBDドーントレス38機 TBDデバステーター13機

 

  空母エンタープライズ

    F4Fワイルドキャット27機 SBDドーントレス38機 TBDデバステーター14機

 

  空母ホーネット

    F4Fワイルドキャット27機 SBDドーントレス38機 TBDデバステーター15機

 

 アメリカ機動部隊は、夜明け前に急速にオアフ島に接近し、

 ワイルドキャット91機、ドーントレス212機、デスバテーター69機の攻撃部隊を出撃させる。

 

 アメリカ機動部隊の空襲が始まり。

 上空で待機していたゼロ戦32型143機の迎撃も始まる。

 「日本の戦闘機だ!」

 『待ち伏せだ。被られたぞ。戦闘機部隊はどうした!』

 「いま、反撃に向かっている」

 『いつの間に航空部隊を増援したんだ。数で負けてる』

 「空母発艦は、どうしても五月雨になるよ」

 ゼロ戦に切り込まれたワイルドキャットが逃げまどい。

 『助けてくれ! ゼロが背後に突いた!』

 深緑に塗られたP40ウォーホークが急降下しつつ、ワイルドキャットを撃墜していく。

 『駄目だ。こっちも、後ろについてる・・・・ウォーホークだ!』

 『ガッティム! ガッティム! ガッティム! ガッティム! がっ!!・・・』

 ドーントレス爆撃機が撃墜され。

 デスバテーターが低空から侵入して飛行場を爆撃していく。

 オアフ島の軍事拠点で爆発が起こり、爆音と地響きが伝わってくる。

 オアフ島上空で日米500機以上の航空機が入り乱れ、空中戦を展開していた。

 戦闘配置のない軍属たちがパラソルの下、ビーチベットに寝そべって、空を見上げていた。

 「朝っぱらから、凄い空中戦になったな」

 「32型は悪くないようですね」

 「そうだな・・・P40も連携が良い」

 「無線機が良いのでしょう。ゼロ戦もP36の無線機を剥がして使っていますし」

 「もっとゼロ戦が欲しいな」

 「しかし、輸送が大変ですよ。わざわざ、ハワイまで空母で輸送ですからね」

 

 フォード基地

 「長官。二式大艇が、アメリカ機動部隊の位置を発見しました」

 「そうか、攻撃部隊を出撃させろ」

 「しかし、護衛機がありません」

 ゼロ戦部隊は機銃弾を撃ち尽くすと飛行場に降りてくる。

 機体に12.7mmの弾痕が生々しく残っており、迎撃はともかく艦隊攻撃は、はばかれた。

 機銃の補給が間に合わないと、

 捕獲修理され深緑に塗られたP36ホークが飛び立っていく。

 「どうしたものか」

 「上陸作戦が始まったとき、敵輸送船団攻撃に投入しては?」

 「それなら基地の近くですし、帰還に支障ないかと」

 「ん・・そうしよう」

 99艦爆と97式艦攻は、格納庫と飛行場周辺に隠されていた。

 爆撃され、被害も出ている。

 「長官。出撃させてください!」

 「ん、そうだな。しかし、滑走路が爆撃されて、全力出撃は、難しいぞ」

 「このままでは、上陸されてしまいます」

 「んん・・・」

 

 

 空母エンタープライズ 艦橋

 「提督。第一波ワイルドキャット91機、ドーントレス212機、デスバテーター69機・・・」

 「未帰還機は、ワイルドキャット78機、ドーントレス165機、デスバテーター54機・・・」

 「現在の総残存機は、ワイルドキャット71機、ドーントレス55機、デスバテーター21機です」

 「ば、馬鹿な。そんなに撃墜されたのか」

 「日本軍の飛行場は爆撃しましたが、最後は、ウォーホークに追撃されたそうです」

 「んん・・・」

 「上陸作戦の継続は・・・」

 二式大艇が爆炎を上げながら海面に叩きつけられ、海水を噴き上げる。

 飛行艇を撃墜したF4Fワイルドキャット2機が旋回して艦隊上空に戻る。

 「戦闘機の数が、まったく足りないな。後退したいが・・・」

 「しかし・・・」

 「北アフリカ上陸作戦を延期しての上陸作戦では、それもできないか・・・」

 アメリカ上陸作戦部隊は、将兵10万に達し、戦車250両を数えていた。

 アメリカ軍はオアフ島の制空権を維持できないと判断しても突入する。

 

 

 呉

 「ハ、ハワイが攻撃されたぁ!」

 「まさか、アメリカの反攻作戦は43年中旬。来年のはず」

 「どうする?」

 「どうするって、第一機動部隊、第二機動部隊は修理改装中だ」

 「動かせるとしたら艦載機パイロット育成部隊と新設の第3機動部隊だけです」

 

  艦載機パイロット育成部隊

   空母 (龍驤、瑞鳳、祥鳳、鳳翔)

   駆逐艦 追風、疾風、朝凪、夕凪、睦月、弥生、望月、卯月、三日月、夕月

 

  第3機動部隊

   空母 (隼鷹、飛鷹) ゼロ戦24機、99艦爆36機、97艦攻36機。

   重巡 最上、三隈、鈴谷、熊野

 吹雪、初雪、白雪、白雲、叢雲、薄雲、磯波、浦波、敷波、綾波、天霧、朝霧、夕霧、白雲

 

 「こんなことなら、もっと、ハワイを増強しておけばよかった」

 「そんな。いまさら言われてもね」

 「ていうか、内地も準備できていない物を送れるわけがない」

 「二式大艇と97式大艇で武器弾薬を輸送するしかないな」

 

 

 オアフ島上空

 ゼロ戦32型とF4Fワイルドキャットが航空戦を展開していた。

 ゼロ戦32型が降りてくる。

 「給弾、急げ!」

 「すぐは無理だ」

 「ちっ! P40はあるか?」

 「いま、出払った」

 「しょうがねぇ P36を出せ」

 「しかし、あ、あれは」

 「援護くらいならできる」

 P40ウォーホーク機、P36ホーク戦闘機、P26ピーシューター戦闘機が出撃し、

 B17爆撃機、B18ボロ爆撃機、双発水上機カタリナ。

 99艦爆、97艦攻がオアフ沖のアメリカ艦隊を空襲する。

 空襲で飛行場が破壊され、

 滑走路の隙間を離着陸する日本機の出撃は、数機単位となっていた。

 そして、アメリカ上陸作戦部隊が艦砲射撃を開始した。

 戦艦ニューヨーク、テキサス。ニュー・メキシコ、ミシシッピ、アイダホ。コロラド

 重巡ウィチタ、ノーザンプトン、チェスター、ルイスヴィル、シカゴ、オーガスタ

 軽巡ブルックリン、フィラデルフィア、サヴァンナ、ナッシュビル、ボイス

  駆逐艦40隻、輸送船20隻。

 砲撃は、日本軍、日系人に関係なく、間断なく行われ、

 オアフ島の市街地を吹き飛ばしていく。

 一方、空襲されるアメリカの戦艦、巡洋艦、駆逐艦、輸送船も被害を出していく。

 オアフ島司令部

 「潜水艦部隊は?」

 「伊号8隻と呂号5隻は、脱出に成功しました」

 「作戦中の12隻も通報したのでハワイに向かっていると思います」

 「オンボロ呂号を持ってきて、良かったな」

 「どちらかというと、オアフに着くまで沈まなくて良かった。ですがね」

 「少しでも戦果をあげてくれれば良いが・・・」

 「ええ」

 「しかし、水冷のP40はともかく。空冷のP36は、紛らわしいな」

 「緑色に塗って、日の丸をつけても、形が米軍機ですからね」

 「踏ん張ってくれよ。負ければ虐殺されるぞ」

 「日系人にも躊躇なく機銃掃射していますし、こちら側で戦ってくれていますよ」

 「それが救いかな」

 湾の外に座礁させた長門、陸奥、伊勢、日向で生き残った砲台が砲撃が始まる。

 艦橋がないため正確な砲撃はできなかった。

 それでも山頂の観測所と連携し、方位、仰角を割り出して砲撃する。

 しばらくすると山脈の向こう側に隠れていたアメリカ戦艦が回り込んでくる。

 戦艦ニューヨーク、テキサス。ニュー・メキシコ、ミシシッピ、アイダホ。コロラド。

 アメリカ戦艦部隊の砲撃に日本戦艦部隊は晒される。

 真珠湾に特攻したとき、艦橋を破壊され、まともな測量が出来ない。

 時折、撃ち返すが、統制射撃には程遠く、命中率は低かった。

 アメリカ戦艦部隊の艦砲射撃で真珠湾に爆発が起こり、空を黒煙が覆う。

 真珠湾

 「長官。潜水艦からの通報です」

 「アメリカ軍がハワイ島ヒロに上陸しています。船団は100隻以上」

 「なるほど、ここを無力化し」

 「その間にハワイ島に航空基地を建設して反撃か。良い手だ」

 「困りましたね」

 「まったくだ」

 

 

 横須賀

 10000トン級工作艦メデューサ、12500トン級工作艦ヴェスタル、

 6250トン級工作艦リゲル

 外国製工作機械が降ろされていた。

 「どうするの?」

 「鉄工所に振り分けるんだと」

 「海軍で使わないんだ」

 「山本長官がもっとマシな工作機械を製造して欲しいんだと」

 「アメリカ系のコーハン400も、ドイツ系のD20も、汎用工作機械で旋盤だからね・・・」

 「アメリカは単能工作機械のボール盤をいくつも組み合わせて作ってしまうらしい」

 「旋盤は多目的過ぎて熟練工向き。ボール盤は素人向きだからね」

 「でもボール盤でやると床面積が必要だし、数を揃えないといけないし」

 「電力も余計にいるし、人材もたくさんいるよ」

 「設備投資をケチるからだ」

 「もっと精度の高いフライス盤とか、中ぐり盤も欲しいらしいよ」

 「でも、これだけ外国製機械があれば、精度も上がるかな」

 「あれは?」

 「真珠湾で入手したアメリカ戦艦の電気駆動タービンだ」

 「ほう」

 「ウェスティング式14300馬力4基とジェネラルエレトニック式13400馬力6基」

 「まとめて使っても、4基57200馬力。6基80400馬力か。弱いな」

 「元々、速度差なんて無視して、力押しで攻める国だからね」

 

 

 呉

 作戦海域が広がると兵装より、作戦能力が求められた。

 旧来の過剰過ぎる兵装では、将兵の疲労が激し過ぎた。

  2325トン級バッグレイ型

    はくがん(バッグレイ)、はちくま(ブルー)、はましぎ(ヘルム)、はやぶさ(マグフォード)、

 戦利品が真珠湾から回航してくる。

 「そのまま、真珠湾配備で良かったのでは?」

 「練度を上げるためにも、輸送船団の護衛に使わないとね」

 海軍工廠

 「砲塔一つ、魚雷発射一基減らして、乗員の負担を減らし、対潜装備が重要だ」

 「しかし、いまさら軍艦を改装しなければならないとは」

 「真珠湾ごとアメリカ太平洋艦隊を葬って、敵艦攻撃より領域防衛が重要になったからね」

 

 

 大和、武蔵

 北上、大井

 雷、電、響、暁、谷風、浦風、浜風、初春、子の日、

 初霜、若葉、有明、夕暮、時雨、白露 

 村雨、五月雨、春雨、夕立、野分、萩風、舞風

 朝雲、峰雲、夏雲、山雲、海風、山風、江風、涼風

 春風、旗風、朝風、文月、皐月、長月、水無月

 曙、潮、漣、菊月、夕月、卯月、汐風、帆風、朧、秋雲

 大和 艦橋

 「出撃はどうした?」

 「まだ、油送船の手配が付きません」

 「何やってるんだ?」

 「いま出撃せんで、どうする」

 「せめて、ミッドウェーか、ジョンストン島でも占領していたら良かったのですが・・・」

 「うぬぅうう・・・」

 「97式大艇か、2式大艇で弾薬、陸兵、パイロットを輸送するそうですが・・・」

 「埒が明かんだろう」

 「それでも、気休めになるかと・・・」

 「・・・・」

 「それと・・・大本営は、熟練工をハワイに送ると国内生産で支障をきたすと」

 「前線で熟練工を欲している」

 「送ると内地で生産される部品は、さらに手に負えない部品になると」

 「ふ 国力差を知らずに始めた戦争なら無知。国力差を知って始めた戦争なら愚かだな」

 「距離が遠いので大丈夫と思ったのでは?」

 「日本からハワイより、アメリカ西海岸からハワイの方が近いんだ」

 「確かに不利ですね」

 「食料だけでも自給自足できるのなら、マシか」

 「とはいえ、艦隊を動かさないと練度を維持できませんし」

 「戦果をあげている機動部隊と階級差が広がりますし」

 「特別手当を出さないと将兵が拗ねますし」

 「将兵の生活給付のため、内地と戦場を行き来して、燃料を使えってか」

 「まぁ そんなものでしょう」

 「はぁ〜」

 

 

 艦隊行動と統制射撃ができるアメリカ戦艦部隊と座礁した日本戦艦部隊の砲撃戦。

 日本戦艦部隊は艦橋が破壊された状態で、

 山頂からの計測は正確でなく、一方的に叩かれた。

 「チェスト〜〜〜!!!」

 捕獲したB18爆撃機が一直線に戦艦ニュー・メキシコに突入して爆発、四散する。

 そして、機内の900kg爆弾が炸裂して火焔が艦橋を覆う。

 それが転機になったのか、

 低空から進入した97式艦攻の3機編隊がアイダホに魚雷3本を命中させ。

 伊号が2本の魚雷をコロラドに命中させる。

 アメリカ機動部隊は艦上機を失って、翼無き艦隊となり航空支援ができず。

 日本の航空戦力もゼロ戦とP40ウォーホークが被弾と整備と補給で減少。

 敬遠されていたP36戦闘機が使われ始める。

 「戦況は?」

 「双方ともボロボロです」

 爆発音に気づいて沖を見ると戦艦テキサスが火焔を上げていた。

 「なんだ。どうした?」

 「日向の砲撃が命中したようです」

 「ほう。マグレ当たりか」

 「乾坤一擲の一撃というべきでは?」

 「じゃ 乾坤一擲のマグレ当たりだな」

 「長官・・・」

 

 

 潜望鏡で確認後、すぐに潜望鏡を降ろしした。

 速度と方向が変わっていない事は、音響に聞き耳をたてて推測する。

 敵艦隊の懐近くで深度20mは命懸け。

 伊19号は用心深く空母ワスプに接近していた。

 「てぇ〜!!」

 艦首魚雷発射管から魚雷が発射。

 雷跡が広がっていく。

 魚雷4本をワスプに命中させ、

 駆逐艦オブライエンにも1本命中させて、一緒に撃沈してしまう。

 さらにノースカロライナも1本が命中していた。

 駆逐艦が探信を打ちながら、日本潜水艦を捜索し、

 僚艦を誘導して、爆雷を投下していく。

 「急速潜航!! 着底する」

 駆逐艦数隻が並びながら爆雷を投下。

 爆雷が爆発すると一定の間隔で海上が吹き上がっていく。

 

 オアフ島の基地航空部隊は優勢だった。

 1対1の航空戦から2対1の航空戦となり。

 航空戦力の差が広がるとすぐに多対1となっていく。

 ランチェスターの法則により、アメリカ空母の艦上機は急速に失われ、

 戦闘機の防空がなくなると、99艦爆、97艦攻、B17爆撃機、B18爆撃機が突入してくる。

 対空砲座

 「弾薬の予備を急げ!」

 「はっ!」

 砲声が轟き、火薬の匂いが籠り。

 数十条の弾道が吸い込まれるように99艦爆に吸い込まれていく。

 艦隊周辺にいくつもの水柱が上がり。

 「わっ!」

 援護の機銃弾が艦体に弾かれ、跳弾が傍を掠めていく。

 「あぶねぇ」

 飛行甲板に火の手が上がる。

 ホーネット 250kg爆弾1発。

 ヨークタウン 250kg爆弾2発。

 エンタープライズ 250kg爆弾1発。

 レキシントン 450kg爆弾1発。

 ダメージコントロールの優れたアメリカ空母は消火栓が多く、

 火災を消し止めるのも早かった。

 99艦爆が火達磨となって、海面に叩きつけられ水柱をあげる。

 空母サラトガ 艦橋

 「こりゃ 消耗戦になってしまったな」

 「提督。ハワイ島への上陸作戦は成功しました」

 「オアフ島の無力化も進んでいると思われます。ここは、いったん退いても・・・」

 「そうだな。これ以上被害を出すより・・・航空写真は・・・」

 オアフ島地図の上に数十枚の航空写真が並べられた。

 爆炎と黒煙に包まれた光景は、1年前の光景とほぼ同じ。

 重油タンクの延焼が少ない分だけ、

 マシと言えたが1年前の戦傷すら修復されていない。

 「・・・引き揚げよう」

 

 100隻以上の輸送船団がハワイ島ヒロに上陸し、軍事拠点として強化していた。

 滑走路は伸ばされ、陸揚げされた航空機が組み立てられていく。

 すべてが機能すれば、戦力比は引っくり返り、

 アメリカ軍有利に傾いていく・・・はず・・・

 

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 史実との違いは、ありえねぇ〜〜!!!!! 

 主力戦艦部隊の真珠湾特攻。

 そして、爺ぃの第一機動部隊と若造の第二機動部隊の間で起きた競争原理。

 東南アジア制圧。

 イギリス東洋艦隊の全滅。

 日独連絡も可

 それと、91式暗号(レッド)、97式暗号(パープル)が、

 アメリカに解読されていた事が発覚したこと。

 

 北アフリカ作戦に兵站を奪われて、スターリングラード攻撃(ブラウ)中止。

史実   戦記
イギリス兵35359 イタリア兵850000 イギリス兵35359 イタリア兵850000
アメリカ兵16000 ドイツ兵102860 アメリカ兵16000 ドイツ兵150860
捕虜79978   捕虜109978  
131337 950000 131337 1000860

 史実で何で負けたんだろう、というほどの戦力差です。

 砂漠戦恐るべし。

 それともランチェスターの法則を無視できたイタリア軍恐るべきでしょうか。

 実はドイツ軍も多い。

 この戦記では、さらにドイツ軍の増援部隊を出しました。

 独伊軍のスエズ運河制圧のおかげか。

 アメリカ軍の第一次ハワイ上陸作戦のせいか。

 この年、トーチ作戦が行われなかったため、

 ツーロンの悲劇は、行われませんでした。

 

 

 LST1番艦が建造されたのは、42年12月14日。

 このハワイ作戦にLSTは存在しませんでした。

 というわけで敵前上陸は、大変そうです。というか命捨ててます。

 

 ガダルカナル島、面積5336ku、東西160km、南北48kmの芋虫形。

 オアフ島は、面積1600ku、規模は南北71km、東西48kmの菱形。(某アニメのソロモン要塞型)

 

 

 

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第01話 1941年 『地位を捨ててやる!!!』

第02話 1942年 『名誉も捨ててやる!!!』

第03話 1943年 『財産も捨ててやるわい!!!』