月夜裏 野々香 小説の部屋

    

架空戦記 『大本営特攻』

 

第04話 1944年 『もう、転戦!!!』

 グアム島沖

 爆発音が響くと掃海艇が吹き飛んだ。

  1850トン級ポーター型

    いぬわし(セルフリッジ) 、いそしぎ(フェルプス)、

  1365トン級ファラガット型

    あおげら(ファラガット)、あおしぎ(デューイ)、あおばと(ハル)、

    あかはら(マクドノー)、あかひげ(ウォーデン)、あおさぎ(デール)、

    あまさぎ(モナガン)、おおるり(エールウィン)、

 いぬわし(セルフリッジ) 艦橋

 「ちっ! 掃海艇がやられた」

 「磁気探知機雷と接触機雷の両方を使っているようです」

 「あまり損失を出すと怒られるな。査定に響く」

 「将兵は、良くやってくれてますよ。無血占領とはいかないようです」

 「上陸部隊の方は?」

 「地雷がかなり仕掛けられているようです」

 「もっと早く占領していたら良かったな」

 「アメリカは潜水艦で輸送していたようですから、商船の損失が少なかったのでは?」

 「・・・つまり、今後は、商船の損失が増えるということか」

 「アメリカ製の対潜装備の複製を装備したので少しは戦えるそうです」

 「だが戦前の初期型だろう」

 「それでも日本製より良いようです」

 「軍事費に予算を集中しても科学技術や工業力の差は埋まらんな」

 

 

 ウェーク沖

  1500トン級バッグレイ型

    はくがん(バッグレイ)、はちくま(ブルー)、はましぎ(ヘルム)、

    はやぶさ(マグフォード)、はいたか(ラルフ・タルボット)、

    へらさぎ(ヘンリー)、ほおじろ(パターソン)、

  1450トン級マハン型

    かわせみ(カミングス)、かるがも(タッカー)、かささぎ(ダウンズ)、かっこう(レイド)、

    きばしり(ケース)、くさしぎ(カッシン)、ごいさぎ(ショー)、ささごい(カニンガム)

 駆逐艦が爆雷を投下していた。

 1隻が停船して探信を打ち、2隻から3隻が並んで爆雷を投下していく。

 はくがん(バッグレイ) 艦橋

 「初任務が人のいないウェーク攻略とはね」

 「ここを落とせばウェークからオアフまで3700kmですからね。有利になるはずです」

 「有利か。豪州作戦を等閑にしてオアフ島ばかりじゃな」

 「ミッドウェーを落とせば、艦隊も進出できますよ」

 「オアフ島に上陸されなかっただけマシかな」

 

 

 中国大陸

 日本軍は、後退していた。

 中国とはまだ和解していなかったが、日本軍の再編成と休息を目的としてだった。

 

 

 夜間、低空を二式大艇が飛ぶ。

 「月夜か、まずいな」

 「南方、上だ。見ろ!」

 「ちっ ライトニングか」

 「まずいな」

 「見つかるなよ・・・」

 ジョンストンとミッドウェーの間は1200km。

 パルミラとジョンストンの間は1400km。

 アメリカ軍の哨戒線が構築されていた。

 この哨戒線の密度を上げるため、ウェークとグアムが放棄されたともいえる。

 二式大艇と97式大艇は、アメリカ軍の哨戒線を掻い潜って飛ばなければならず。

 運が悪いと撃墜される。

 日独伊の潜水艦も対空レーダーで監視し合い、

 潜水艦同士で雷撃戦が行われる。

 日本とオアフ島の輸送手段は病院船と潜水艦を除けば大型飛行艇しかない。

 今では、戦闘機より大艇の生産優先順位が高く。毎日のように飛行艇が離着水する。

 日本はオアフ島を押さえれば、アメリカの進攻を牽制できた。

 食糧さえ自給できれば武器弾薬の補給だけでよく、二式大艇の2トン輸送は意義があった。

 夜間、二式大艇と97式大艇が夜間にオアフ島沖に着水する。

 夜間飛行は専門の航法士がいないと難しい芸当であり、

 それだけに迎撃されにくかった。

 真珠湾

 二式大艇から2トン分の機材が降ろされ、

 手紙や高級将校用の手荷物が手渡される。

 その横では、甲型潜水艦の格納庫が開かれ、

 解体された25mm機関砲が降ろされていく。

 「久しぶりのゴールデンバットだな。マルボロが切れたから寂しかったよ」

 「金鵄(きんし)と呼んでくださいよ」

 「硬いこと言うな。光と鵬翼(ほうよく)もあるな。将兵が喜ぶ」

 「オアフ島でタバコを作らないんですか?」

 「ガンジャ(大麻)は医療用で禁止したからな。まぁ 食糧優先かな」

 「タバコは、軽いからいいですけど、かさばりますよ」

 「パイロットが出撃前に飲みたがる」

 「それで落ち着いて操縦できるのならしょうがないよ」

 「それより、持ってきましたよ」

 「ほぉ これがパンツァーファウストか」

 「重量3kg、砲弾重量0.68kg、弾頭直径100mm、有効射程30m。装甲貫徹能力140mm」

 「M4戦車を撃破できるのなら、何でも良いよ」

 「いま、有効射程80mのモノも開発しているそうです」

 「早めに持って来てくれ」

 「重くなるそうですがね」

 「ん・・・それはちょっとな。なるべく、軽く作ってくれ」

 この時期、オアフ島は、日系人15万人。日本軍・軍属12万人になっていた。

 開戦時のハワイ人口約42万6000人。内日系人約16万人であり人口密度で余裕があった。

 そして、日本軍将校士官の家族が呼び寄せられ、

 背水の陣でモラルが高かったり。

 すぐ降伏しそうだったり。

 敗北すれば玉砕どころかお家断絶、日本軍の将校と士官は、慎重に戦う。

 

 

 ハワイ島ヒロ

 アメリカ軍司令部

 戦略情報部から報告書が届けられていた。

 大局的な見地から見れば、ハワイ戦線の局地的な位置付けも認識しやすかった。

  1) 優先順位は、対独戦を優先。

  2) 日独連絡の阻止

  3) ハワイ基地の主任務は、オアフ島の無力化

  4) 無力化の後、オアフ島の制圧。

 アメリカが生産する戦力のほとんどが大西洋・欧州戦線に向けられ、

 対日戦は副次的な戦力しか送られてこない。

 ハワイ島のアメリカ航空部隊は優勢な航空戦力を有していながら攻勢力に欠いていた。

 日本軍は、強かに戦い、

 アメリカは、対独と対日の比率で内部の不和が強まり、戦力が後回しにされ、

 アメリカ太平洋艦隊司令部は苦心していた。

 「戦果が低いのは日独通商破壊作戦」

 「独伊第5列の妨害工作。日本航空部隊の防空能力が原因かな」

 「日本軍は、開戦前の歴戦パイロットがまだ残っています」

 「輸送力は、こっちが上のはずだ」

 「オアフ島は工作能力が高いですし、オアフ島のパイロットと整備士はAクラスです」

 「機材と航空用エンジンを大型飛行艇でオアフ島に運べば、なんとかしてしまえるわけか」

 「金星装備の飛燕は手強いですよ」

 「新型の疾風もだ」

 「ゼロ戦は?」

 「超々ジュラルミンの引っ張り強度と耐圧力は年月とともに強度が低下する」

 「ゼロ戦は、構造がギリギリだから食い合いで消えていくよ」

 「空中分解を期待したいね」

 「新型の52型は厚みが増えて丈夫らしい」

 「山本総督は、海軍を二式大艇、陸軍を4式戦闘機に集中させているぞ」

 「随分割り切ったじゃないか」

 「総督だから背に腹は替えられないんじゃないか」

 「ムスタングがもっと欲しい」

 「欧州戦線が優先だそうだ」

 いくつかの理由でオアフ島の制空権は、日本航空部隊が握っていた。

 

 

 厚木飛行場

 数機のフォッケウルフ、メッサーシュミットが並ぶ。

 南方資源を余計に輸出した結果、得られた機材だった。

 「これがコマンドゲレート(自動制御装置)か。エンジンに組み込んでいるんだな」

 「プロペラ・ピッチ、直噴ポンプ、混合比、点火、過給器の切り替えを自動的に制御するなんて・・・」

 「洋上を長距離飛行する日本軍機は必需品かな」

 「だけどエンジンに組み込みって・・・」

 「日本は良いエンジンがないからな」

 「誉、金星、火星は悪くないよ」

 「悪くないだけじゃ勝てない」

 「まぁ DB605、ユモ。マリーン。ダブルワスプと比べると日本製エンジンは見劣りする」

 「良いところ取りの劣化コピーだからしょうがないよ。しかも重量削り過ぎて耐久性劣化」

 「品質維持は、やはり取捨選択を進めて単能工作機械で製造するべきだよ」

 「山本長官は陸軍の規格で妥協するって?」

 「まぁ 海軍は戦闘機そっちのけで二式大艇ばかり生産だからな」

 「そりゃ 補給は重要だけどさ」

 「大和や武蔵が置き物扱いされても、ゼロ戦までお座成りじゃな」

 「おっ 戻ってきた」

 ドイツ製Jumo213A装備の烈風が飛び立っていく。

 原型の烈風より機首が75cmほど長く、エンジンは重量100kgほど重くなっていた。

 視界の低下を補うためコクピットは競り上がる。

 前後のバランスの違いは、より強靭な主脚を作る事で吸収できる範囲以内で収まる。

 もっとも、水冷1770馬力は、誉の空冷2200馬力より低下しているように思えた。

 しかし、水冷エンジンの高々度性能は高く、最大速度720kmを捻りだす。

 「こりゃ凄い」

 降りてきたパイロットの第一声は、どことなく空虚に思えた。

 ドイツ製エンジンの大量生産などできるものではなく。自己満足で作っただけだった。

 

 

 

 第58機動部隊

 空母11隻、軽空母8隻、戦艦7隻、重巡9隻、軽巡9隻、防空巡8隻、駆逐艦79隻。

 20世紀の無敵艦隊がサンチアゴを出撃した。

 

  第1機動群(任務群) 司令官:ジョゼフ・J・クラーク少将

   空母(ホーネット、ヨークタウン、エンタープライズ) 軽空母(ベロー・ウッド)

   重巡ボストン、キャンベラ、

   防空巡オークランド、サンファン

   駆逐艦14

 

  第2機動群 司令官:A・E・モンゴメリー少将

   空母(レキシントン、サラトガ) 軽空母(モントレー、カボット)

   軽巡サンタフェ、ビロクシー  防空巡アトランタ、ジュノー

   駆逐艦12

 

  第3機動群 司令官:J・W・リーブス少将

   空母(バンカーヒル、ワスプU) 軽空母(プリンストン、サン・ジャシント)

   重巡インディアナポリス  軽巡クリーブランド  防空巡レノ

   駆逐艦13

 

 第4機動群 司令官:W・K・ハリル少将

   空母(カネオ・ビーチ、カイルア・ビーチ) 軽空母(カウペンス、ラングレー)

   軽巡ビンセンス、マイアミ 防空巡サンディエゴ

   駆逐艦14

 

 第5機動群

   空母(パールハーバー)  軽空母(バターン)

   重巡ノーザンプトン、シカゴ、ヴィンセンス  軽巡クインシー、アストリア、

   駆逐艦12

   

 第7機動群 W・A・リー中将

   戦艦ワシントン、ノース・カロライナ、サウス・ダコタ、インディアナ、アラバマ、

   戦艦アイオワ、ニュージャージー、

   重巡ミネアポリス、ウィッチタ

   駆逐艦14

  

 

 オアフ島上空で航空戦が行われていた。

 ゼロ戦、隼、飛燕、疾風が飛び立ち決死の防空戦を行うが多勢に無勢。

 サンダーボルト、ライトニング、コルセア、ヘルキャットがオアフ島上空を乱舞する。

 サンダーボルトがゼロ戦に追いかけれられいた。

 「な、なんだ、あのゼロ戦は、何であんなに速い」

 『き、急降下で逃げろ』

 「急降下すれば、対空砲火の餌食だ」

 『海上まで逃げろ』

 「だ、駄目だ。間に合わな・・・ぶっ・・・」

 ゼロ戦が真珠湾に不時着水するとタグボートが近付き、ゼロ戦が沈まないよう支え。

 パイロットが救出される。

 「大丈夫ですか?」

 「はぁ いくら空戦に勝つために手段を選ばないって、引っ込み脚を投下するって、どうかしてるぜ」

 「主脚は、エンジンの次に重いから400kgくらい軽くなるよ」

 「アホか」

 「燃料を減らした分と合わせれば、機体を補強してもアメリカ軍機を追いかけられる」

 「しかし、一度の出撃で不時着じゃ 割に合わないだろう」

 「撃墜されるよりマシだろう」

 「もう、このゼロ戦はガタが来てるし、3機も撃墜すれば、割得だよ」

 「キルレート3対1なら悪くはないがね」

 「しかし、本当にアメリカ軍の上陸作戦が始まるのか」

 「だから、耐久性の怪しいゼロ戦に引っ込み脚投下命令が出たのでは?」

 足のないゼロ戦が次々と真珠湾に不時着水してタグボートに救われていく。

 ダイヤモンドヘッド 要塞 日本軍守備隊

 「いよいよ上陸作戦か」

 「北のハレイワ・ビーチからですかね」

 「ワイアナエ山脈とコオラウ山脈の間に上陸するのは道理だからね」

 「むしろ、山脈の向こう側に上陸される方が対処に困る」

 「対戦車塹壕がどこまで役に立つかな」

 「司令! アメリカ上陸作戦部隊がカウアイ島に上陸を開始しました!」

 「げっ!」

 アメリカ軍は、防御力の強いオアフ島を無視。

 カウアイ島に上陸することでオアフ島を封鎖してしまう。

 この可能性は以前から示唆されていた。

 日本軍は、カウアイ島の占領もできず放置したままだった。

 単純にカウアイ島の社会基盤が弱く、

 占領しても各個撃破されると考えられていたに過ぎなかった。

 そして、危惧されていた通りオアフ島は、空海で閉塞されることになった。

 

 

 

 

 アメリカ西海岸で森林火災が多発し、アメリカ州軍を慌てさせた。

 サンフランシスコの石油精製所が爆破され炎上する。

 カナダでアメリカ人による破壊工作。

 アメリカ合衆国でカナダ人とメキシコ人による破壊工作。

 メキシコでアメリカ人による破壊工作が頻繁に起こり始める。

 カナダ国境守備隊とアメリカ国境守備隊との間で銃撃戦が行われる。

 ワシントン 白い家

 「精油所が燃やされただと! 州軍は何をしていた!」

 「それが山火事で・・」

 「山火事は、風船爆弾だろう!」

 「いえ、ガソリンの跡が残っていました」

 「ぅぅ・・・山火事などで惑わされるな。優先順位を考えろ」

 扉が叩かれ、

 入室の許可より先に扉が開けられる。

 「大統領!」

 「カナダ国境ノースカロライナ州クロズビーで我が軍と、カナダ軍の国境警備隊が銃撃戦です」

 「なんだと! 誰が勝手に戦争始めたんだ」

 「はっ 現地指揮官は、大統領から発砲許可が出たと」

 「バカもん〜! そんな命令を出すか! ドイツとイタリアの潜入部隊に決まってる」

 扉が叩かれ、入室の許可より先に扉が開けられる。

 「大統領!」

 「メキシコ国境エルパソで我が軍とメキシコ軍の国境警備隊が銃撃戦を始めています」

 「な! 止めさせろ! 撃ってはならん」

 「はっ!」

 「いったい、FBIとCIAはなにやっているんだ」

 不意に扉が叩かれ、

 またもや、入室許可より先に扉が開けられる。

 もはや、怒る気もなく、不法侵入者を睨みつける。

 「大統領、カンザス州知事が暗殺されました」

 「・・ど、どいつも、こいつも・・・・スパイ狩りだ!!!」

 「太平洋作戦司令部にオアフ島を制圧するように伝えよ」

 「オアフ島は、既に閉鎖されているので、その必要はないのでは?」

 「ハワイは、潜水艦基地となっている」

 「潜水艦は、カナダとメキシコに特殊部隊を上陸させている」

 「し、しかし、それでは、余計な被害が・・・」

 「かまわん」

 

 

 

 カウアイ島に飛行場が建設され、

 ライトニング、コルセア、B24爆撃機が配備される。

 オアフ島を攻撃するのは、キルレートで不利なため挟撃され、放置されていた。

 孤立したオアフ島は潜水艦しか辿り着けなくなっていた。

 オアフ島沖に伊19号が浮上する。

 真珠湾に入港するのは危険過ぎた。

 「早く降ろすんだ」

 コソコソ、コソコソ、コソコソ

 深夜、生き残るため、作戦を成功させるため、

 精鋭中の精鋭部隊がゴキブリのように這い回る。

 そして、海岸にパンツァーファウストが降ろされる。

 

 

 アメリカ合衆国

 保安官事務所、地図に印が付けられていた。

 風船爆弾、不審火、山火事、暗殺事件・・・

 犯罪は急速に増大している。

 電話が鳴る。

 保安官(シェリフ)と助手たちが事務所から飛び出した。

 「人を集めろ、警察署がやられたぞ」

 「それから、警察署で車を確保してくれ。パンクしていない車が残っているはずだ」

 保安官が矢継ぎ早に命令を下すとライフルを空に向けて撃つ。

 銃声が轟き渡ると住民たちが集まり始めた。

 「みんな。銃を持て集まってくれ」

 「警察署に下剤が仕込まれた。すぐに自警団を組織する」

 事務所から助手が飛び出す。

 「シェリフ! 大変だ。銀行がやられた。銀行強盗だ」

 「なに? すぐに追いかけるぞ!」

 

 

 銀行

 突然警報が鳴り響く、マスクをした男たちが飛び出し、車に乗って逃走する。

 「よ〜し! 軍資金が出来たぞ。隣町に逃げるぞ」

 大きな仕事をしようと思えば金がいる。

 割り当てられた金を使ってしまうと銀行強盗などやってしまう。

 ドイツ特殊部隊ブランデンブルク部隊、

 イタリア特殊部隊サルデーニャ竜騎兵隊

 二つの特殊部隊は、祖国を守るためアメリカ合衆国で破壊活動を続けていた。

 アメリカ西海岸から上陸すれば活動しやすかった。

 黒人が警察に暴行を受けていた。

 白人たちは見て見ぬふり。

 次の瞬間、警察官たちが機銃掃射を受けて倒れる。

 「ま、まさか」

 「あれは」

 黒いマフラーを首に巻いた男たちがトミーガンを持って立っていた。

 「「く、黒の騎士団だ」」

 その場から白人たちが一斉に逃げ出していく。

 「大丈夫か?」

 「は、はい」

 「名前は?」

 「マーキス」

 「黒の騎士団は、仲間を募集している・・・」

 「なります。仲間になります。黒の騎士団に入れてください」

 とある廃墟

 「デショーン。何人集まった?」

 「15人です」

 MP40(9mm×19)、百式機関銃(8mm×22)、

 黒人、スパニッシュに武器と金を渡してネットワークを構築することができた。

 「白人狩りを始めるぞ」

 「「「「おー!!!」」」」

 「白人を打倒し、真の自由を取り戻すんだ!」

 「「「「おー!!!」」」」

 「白人を打倒し、真の自由を取り戻すぞ!」

 「「「「おー!!!」」」」

 「黒人の国を作るぞ〜!」

 「「「「おー!!!」」」」

 「黒人の国を作るぞ〜!」

 「「「「おー!!!」」」」

 「黒人の国を作るぞ〜!」

 黒いマスクを被った男が指導者だった。

 隊員たちが出撃していく。

 「ふ バカどもが・・・」

 「ルチアーノ・ルカレッリ少佐。上手く行きましたね」

 「ご協力感謝いたします。フランコ将軍によろしくお伝えください」

 「いえいえ、米西戦争の折にはアメリカに苦しめられましたからね。これくらいは・・・」

 「サルデーニャ竜騎兵団ウディネーゼ隊が、この国を転覆して見せますよ」

 「ですがアメリカ合衆国は世界最強の国家ですよ」

 「ふ、アメリカ合衆国国民の心の絆を断ち切って見せますよ」

 「心強いですな」

 「アメリカめ、自らの傲慢で滅びるがいい」

 

 

 メキシコの小さな村。

 村人たちが虐殺され略奪され、アメリカ軍テキサス州軍の装備が残される。

 女子供数人が意図的に生き残らされ。

 「よ〜し 撤収して服を換えるぞ」

 

 

 

 カウアイ上陸作戦後、アメリカ機動部隊はサンチアゴからパナマ運河へと向かい。

 大西洋へと回航されていく。

 これだけの大艦隊が動けば、わかると思われた。

 しかし、日本もドイツも気付かない。

 グレートブリテン島とアイルランド島の間、アイリッシュ海にアメリカ機動部隊は入り込む。

 日本の赤城と加賀と同様。

 レキシントン、サラトガも生き残っていた。

 レキシントン 艦橋

 「太平洋艦隊総出で大西洋に来るとはな」

 「カウアイ上陸作戦は、ハワイ基地航空隊を主力で戦いましたからね」

 「本命は、こっちですよ」

 「こっちに来ている間、日本艦隊がハワイに来なければ良いがね」

 「基地航空戦力だけでも十分撃退できますよ」

 「だが通商破壊されると厳しい」

 「通商破壊なら、こっちの作戦が終わるまで大丈夫ですよ」

 「だと良いがね」

 

 

 東部戦線

 シュトルモビクが空を覆うように飛んできては、爆弾の雨を落として去っていく。

 半地下の堡塁に囲まれたタイガー戦車が近付くT34戦車を仕留めていく。

 T34戦車は、タイガー戦車の至近距離に接近しようとしても対戦車塹壕に阻まれる。

 T34戦車が戦線を突破しようと対戦車塹壕の迂回路を進む。

 待ち伏せしていた4号突撃砲と、

 パンツァーファウストがT34戦車の側面から攻撃して破壊していく。

キングタイガー ポルシェ型

 独ソ戦が激しさを増している頃

 ドイツ空軍の主力は、ドイツ本土防空戦と東部戦線に振り分けられていた。

 

 西部戦線

 フランス配備のドイツ空軍は少数派でありフォッケウルフも、メッサーシュミットも少ない。

 そして、ドイツ陸軍の4号戦車、5号タイガー戦車、6号パンター戦車は東部戦線に配備され。

 西部戦線は、1号戦車、2号戦車、3号戦車など2線級装備だった。

 ノルマンディー海岸

 ドイツ軍将校たちが海を睨んでいた。

 「イギリス本土に米英軍が集結して上陸作戦が行われる可能性は高まっている」

 「防衛線は?」

 「戦艦の主砲が届かない辺りに防衛線を構築していますよ」

 「しかし、3号戦車じゃ M4戦車に勝てんだろう」

 「新型車両は、東部戦線に持っていかれましたからね」

 「おかげで何とか防いでいるだけだ」

 「陣地に拘らず、柔軟に後退しながら殲滅戦をすれば良いのに」

 「西部で、それをしなければ、ならなくなるかもしれないな」

 「しかし、東部戦線が主戦戦でも、もう少し、航空部隊が欲しいな」

 「日本の空戦フラップは悪くないらしいよ」

 「まぁ 一つぐらい使える技術を開発してもらえなければ、同盟している意味もないからな」

 「・・・将軍、レーダーで大編隊を確認したそうです」

 「よし、迎撃戦を開始する」

 イギリス本土から爆撃部隊が来襲し。

 メッサーシュミットとフォッケウルフが迎撃するため飛び立っていく。

 

 米英軍のノルマンディー上陸作戦が始まる。

 この作戦でイギリス本土米英航空部隊は大損害を蒙り。

 アメリカ機動部隊も航空戦力を消耗させてしまう。

 結果的にノルマンディー上陸作戦は成功し、米英軍は欧州大陸に第2戦線を構築した。

 レキシントン 艦橋

 「提督。機動部隊の艦載機消耗率は、40パーセントを越えました」

 「カウアイ上陸作戦で予備機を使い果たし」

 「ノルマンディー上陸作戦で定数まで激減したか」

 「艦載機パイロットの再建まで戦力半減です」

 「まさか、これほど苦戦させられるとはな」

 「メッサーシュミット、フォッケウルフの制空能力は驚異的です」

 「翼面積の大きなヘルキャットが低空でメッサーシュミットやフォッケウルフに後れを取るとはな」

 「ドイツ空軍は計算通りの総数だった」

 「しかし、質は計算より強かったのだろうな」

 「とりあえず。機動部隊を太平洋に戻すべきでは?」

 「それは、上が決めることだ」

 

 

 

 インド洋

 空母エセックス、

 重巡ボルチモア、

 軽巡バーミングハム、モビール

 エセックス 艦橋

 「もっと、北にいかないと、戦果をあげられないな」

 「ですが、北へ向かえば、シンガポールの第二機動部隊が出てきます」

 「南太平洋側の方が良かったかな」

 「南太平洋側は、トラックに第一機動部隊がいる。エセックスだけで行くのは危険過ぎる」

 「提督 喜望峰沖で輸送船団が空襲されたそうです」

 「喜望峰沖? 日本の第三機動部隊か?」

 「第三機動部隊は日本本土で改修中だ」

 「では、第四機動部隊?」

 「慣熟訓練中だよ」

 「じゃ あの艦隊が出てきたのか」

 「空母アキラ。13艦隊だ」

 「西に向かうぞ。喜望峰だ」

  

 

 喜望峰の南、南氷洋45〜55度は、暴風圏だった。

 その南に濃霧圏があり、日本船団は、そこに隠れる。

 アメリカ海軍が来ても、イギリス海軍が来ても、暴風圏に入り込むとお手上げになった。

 空母エセックス 艦橋

 最後の砲声が止む。

 「・・・提督。氷山だったようです」

 「ちっ 紛らわしい」

 レーダー射撃用アイスコープに点々と影が映っていた。

 濃霧圏の南に行くと驚くほど静かな海になり、氷山が浮かぶ。

 捕鯨船の甲板で猟師が捕鯨銃を構え、吹き上がる潮に銛(もり)を向ける。

 黒い地肌が海面に見えたとき、ワイヤー付きの銛がクジラに撃ち込まれていく。

 大型母船と小型捕鯨船の組み合わせで捕鯨が行われていた。

 捕鯨隊が存在し、食糧を自給しながら機動部隊や潜水艦部隊に補給する。

 クジラから取れる鯨油は燃料になり、生活必需品にもなり、それなりに運用も出来た。

 

 インド洋

 空母アキラ、

 軽巡やまがら(デ・ロイテル)、やませみ(ジャワ)

 Uボート15隻、伊号10隻

 給油艦 襟裳(えりも)

 捕獲船 リバティ12隻

 アキラ 艦橋

 「工業用ダイヤと金塊、宝石か、大量だな」

 「問題は、また、あの艦隊が追いかけてくることでしょうか」

 「空母エセックスか・・・しつこいな」

 艦橋に士官が入室する。

 「さっき取れた獲物です」

 「ほう、クジラの刺身か」

 「クロマグロ、メバチ、メカジキもあります」

 「ふ 平和になれば、内地に送れるのにな」

 「早く戦争を終わらせたいものです」

 「まったくだ」

 「艦長! 東側にアメリカ機動部隊です」

 「すぐに北上しろ」

 「提督」

 「艦載機の固定を急がせろ!」

 「はっ!」

 

 

 南氷洋の暴風圏 最大風速35メートル毎秒、波高8メートル

 日伊艦隊、空母アキラ、軽巡やまがら(デ・ロイテル)、やませみ(ジャワ)

 アメリカ艦隊、空母エセックス、重巡ボルチモア、軽巡バーミングハム、モビール

 二つの艦隊が10kmの距離で睨み合う。

 どちらの艦隊も精一杯、隊列を広げ衝突を避ける。

 平行戦も、逆行戦もなかった。

 船乗りとして常識的な行動を執り、艦首を高波に向ける。

 これを怠れば、転覆して沈む。

 空母アキラ 艦橋

 「無駄だと思っても、なんとなく、撃ちたくなるな」

 「ええ・・・」

 時折、砲撃が行われるが当たらない。

 艦首まで海水に浸かる暴風圏の中で大砲が命中するはずもなく。

 むしろ、弾薬を減らして浮力を増すのが目的だった。

 各艦とも衝突しないように離れるしかなかった。

 エセックス 格納庫

 索具が切れ、吊り下げていた機体が落下して破損、炎上。

 消火活動が開始される。

 空母エセックス 艦橋

 「提督。鎮火しました」

 「良くやった」

 「さらに索具を補強する必要がありそうです」

 「くぬぅうぬぬぬ〜 おのれぇ せっかく会敵したというのに・・・」

 「日本艦隊は、船団を逃がすため現状海域にとどまる模様です」

 波濤が艦首に被り、海面が大きく上下する度に艦体が軋み音を奏でる。

 今にも艦体がねじ切られそうな錯覚を覚える。

 「提督、軍艦は余剰浮力で不利です」

 「・・・・全速前進、日伊艦隊を突っ切ってケープタウンに入港する」

 アメリカ艦隊と日伊艦隊が暴風圏の中で擦れ違っていく。

 時折、砲撃が轟くが砲弾は、明後日の方に飛んで行くだけだった。

 元商船構造のアキラの方が僅かに復元性で勝っていた。

 しかし、暴風圏で衝突すれば確実に轟沈だった。

 正面から迫るエセックスは高波に揉まれ、飛行甲板まで海水を被り、

 衝突しそうな勢いで向って来る。

 「「提督!!!」」

 不意に迫る高波、

 空母アキラと空母エセックスは同じ行動を執った。

 「機関全速 取舵一杯〜!!!」

 「機関全速 面舵一杯〜!!!」

 両艦は、艦首を高波に向け、

 その後、下り落ちる海面をサーフィンのように並びながら滑走していく。

 「「うぁああああああ〜〜〜!!!!!!」」 エセックス & アキラ

 互いの舷側は相対距離で30mも離れておらず。

 ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ 

 ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ 

 次の瞬間、アキラとエセックスは離れていく。

 波濤に揉まれる日伊艦隊と、

 アメリカ艦隊は、何度も接触しそうになって機関全速で乗り切りつつ離れていく、

 

 

 軽巡やまがら(デ・ロイテル)とボルチモア

 「「ちっ! 全然、当たらん」」

 護衛の巡洋艦同士も危険な距離で擦れ違っていく。

 !? × 2

 「機関全速 取舵一杯〜!!!」

 「機関全速 面舵一杯〜!!!」

 ごっくん!! × 2

 軽巡やまがら(デ・ロイテル)とボルチモアが高波の合間を交差。

 擦れ違っていく。

 

 

 ノルマンディー上陸作戦後、

 アメリカ機動部隊は作戦稼働率が4分の1に減っていた。

 空母レキシントン 艦橋

 「空母艦載機再建もまだというのに総力をあげて作戦とはね」

 「寒くなる前にやっておきたかったのでしょう」

 「先にやれば良かったな」

 「それでは、アメリカ機動部隊の大西洋回航が知られてしまいますよ」

 「それはまずい。しかし、対日作戦が心配だな」

 「空になった空母機動部隊は、太平洋側に回航させましたから、牽制になると思います」

 「翼無き艦隊でか?・・・だと良いがね」

 飛行甲板の艦載機がカタパルト射出されていく。

 アメリカ空母艦載機は、艦隊上空で編隊を組むより。

 多数の空母から艦載機を飛ばす事で五月雨攻撃を行う。

 コルセア、ヘルダイバー、アべンジャーの大編隊が鉛色の海上を飛んで行く。

 迎撃に上がったのは、メッサーシュミット、フォッケウルフだった。

 しかし、多勢に無勢、圧倒的な航空戦力に押しまくられ、防空線は突破される。

 ドイツ海軍基地は、大損害。

 フィヨルドの奥では、急降下爆撃と雷撃が繰り返された。

 ティルピッツ、シャルンホルスト、グナイゼナウは撃沈され。

 アメリカ軍がノルウェーに上陸するとドイツ軍守備隊は、降伏していく。

 

 

 

 

 紀伊半島の森の中。

 神社で護摩木が焚かれ、幾筋も煙が天に向かって昇っていく。

 「こんなの効くのかな」

 「さぁ 気休めじゃないの」

 ぐらっ!  ぐらっ! ぐらっ!  ぐらっ!

 「うぁあああ、地震だ!」

 12/07 東南海地震

 三重県、愛知県、静岡県を中心に震度5〜6の地震が発生。

 9mもの津波が沿岸部を襲って1223名の死者・行方不明者を出した。

 名古屋の三菱工場など大打撃を受けてしまう。

 三菱の工場

 「MK9が、MK9が、MK9が〜!!!」

 2000馬力級エンジンの生産が低迷していく。

 人を呪わば穴二つ・・・

 

 

 ラバウル

 コーンパイプの将官が軍団を睨んでいた。

 「日本で大地震があったそうです」

 「酷いのかね?」

 「国民党からの情報ですが産業基盤がやられたとのこと」

 「そうか、オアフ島が孤立したいま。ここが最前線となっていくな」

 「大統領は、ノルマンディー上陸作戦が終わるまで本格的な攻勢は行わないと」

 「航空戦力を集結させて、トラック、ビアク、パラオを叩くくらいなら問題はない」

 「しかし・・・」

 「中国からも後退している。日本は攻勢の限界なのだ」

 「それに地震で産業基盤ややられたのなら、これ以上の攻勢はないだろう」

 「はぁ」

 「トラック、ビアク、パラオを順番に無力化してやる。豪州の戦力を集めよ」

 

 

 呉

 第一機動部隊

  空母(赤城、瑞鶴、翔鶴) ゼロ戦124機、彗星42機、天山41機

  重巡 利根、高雄、愛宕、摩耶、鳥海

  駆逐艦 秋月、照月、

  駆逐艦 夕雲、巻雲、風雲、長波、巻波、高波、

       大波、清波、玉波、涼波、藤波、早波、

 

 第二機動部隊

  空母(加賀、飛龍、蒼龍) ゼロ戦112機、彗星41機、天山33機

  重巡 筑摩、那智、羽黒、足柄、妙高

  駆逐艦 涼月、初月、

  駆逐艦 陽炎、黒潮、親潮、早潮、夏潮、初風、

        雪風、荻風、舞風、秋雲、浦風、磯風、

 

 第三機動部隊

  空母 (隼鷹、飛鷹、龍鳳) ゼロ戦72機、彗星26機、天山22機。

  重巡 最上、三隈、鈴谷、熊野

  駆逐艦 新月、若月、

  駆逐艦 吹雪、白雪、初雪、薄雲、白雲、磯波、

        浦波、綾波、敷波、朝霧、夕霧、天霧、

 

 第四機動部隊

  空母 (大鳳) ゼロ戦34機、彗星18機。

  軽巡 大淀、阿賀野、能代、矢矧

  駆逐艦 霜月、冬月、

  駆逐艦 朝潮、大潮、満潮、荒潮、

        朝雲、山雲、夏雲、峯雲、霞、霰、

 大鳳 艦橋

 「アメリカ機動部隊がノルマンディー上陸作戦に参戦したと聞いたが」

 「事実なら太平洋側はガラ空きだ。例の計画遂行なら好都合かもしれないが」

 「ドイツの報告だろう。信用できるのか」

 「欧州の武官は直接確認していないが、そうらしいということだ」

 「だからと言って、ハワイはまずかろう。基地航空隊の攻撃をまともに受ければ壊滅する」

 「それに東南海地震で三菱の工場がやられたらしい。航空機産業は、お先真っ暗だな」

 「三菱だけじゃなくて、あの辺全部やられたんじゃないの」

 「もう、戦争どころじゃないだろう。国家再建しなきゃならんのに・・・」

 「再建すると軍縮だからね。それに自業自得とは言え、周りは敵対国ばかりか」

 「正気な国なら仮想敵国を減らす政策をするものを増やしてどうするんだろうな」

 「軍事費を確保するためにあっちこっちと戦争じゃな。魔が刺したじゃ済まないよな」

 「軍縮しようとすると軍部の強硬派が怖いよ。暴走して殺傷沙汰だからな」

 「無分別ぶりはバカとしか思えんが」

 「国軍は国家の手足に過ぎない手足に国家が支配されるなど言語道断だよ」

 「まぁ 言うこときかないような手足なら切ってしまう方がマシだよ」

 「・・・でも、やめられないんだよな。バカは死んでもバカだよ」

 「強硬派はオアフ島に送ったから、国内は少しばかり落ち着いたけどね」

 「オアフを助けに行かなくていいのだろうか」

 「遠過ぎるからね」

 「なんか、助けに行きたくない」

 「しかし、せっかく、大鳳が完成しても待機とは理不尽過ぎる」

 「オアフに必要な物資やパイロットが優先だったからね」

 「艦艇から25mm機関砲を外して、あらかた持って行ったし」

 「温存策は正解だよ。それにオアフなら食料を自給できる」

  

 

 養成機動艦隊

  空母 (龍驤、瑞鳳、祥鳳)

 1685トン級白露型駆逐艦

     白露、時雨、村雨、夕立、春雨、五月雨、海風、江風、涼風

  空母 (千代田、千歳)

 1680トン級吹雪型駆逐艦

     朧、曙、漣、潮、暁、響、雷、電、叢雲、

 ゼロ戦が離着艦を繰り返す。

 空母パイロットは、パイロットの適正と同時に艦隊搭乗員としての資質も求められた。

 比較的優遇されているパイロットも海上では海水風呂に慣れなければならず。

 限られた時間で海水と石鹸で体を洗い。タオルを水に浸し何度も体を拭く。

 洗面器1〜3杯程度の飲料水で一日持たせられなければ、空母パイロットになれない。

 それでいて、海軍は身だしなみに五月蠅く、階級の低い兵士の生活は厳しくなった。

 陸上生活の半分の生活水準を求められたら軍艦は岸から離れなくなる。

 どれほど能力が高くても、艦隊生活が出来なければ、陸上勤務に回される。

 飛行時間300時間ほどかけて、空母パイロットを育て、機動部隊へと配属させていった。

 ゼロ戦を1時間飛ばせば80リットルほどの燃料を消費してしまう。

 空母パイロットを一人育てるのに300時間であれば24000リットル。

 ドラム缶一個が200リットルなので120缶分になった。

 もっとも1時間80リットルの燃料消費は巡航速度で、

 複雑な機動をすると、倍以上の燃料を使う。

 航空機エンジンの耐久年数から逆算すれば、訓練で軽く1機を使い潰し、

 練度維持で1機を潰す。

 事故を起こせば目も当てられない。

 もっとも、初等訓練が終わるまで2〜3機を潰しているので、国富削って航空戦力を維持していた。

 パイロットがいかに貴重な存在か分かりやすい。

 同時にこの燃料で土木建設機械を動かせばどのくらいの仕事ができるかも逆算できた。

 そして、日本は、大量に燃料を消費し、

 国力を削ぎ落すパイロットを大量に必要としていた。

 空母 龍驤 艦橋

 「やれやれ、我々にも、ようやく出撃の機会が来たよ」

 「随分と艦載機パイロットを養成しましたからね」

 「陸軍航空部隊をハワイに送ったおかげかな」

 「燃料は、大丈夫だろうか。あとで足りなくなって慌てても困るんだがな」

 「少なくとも陸軍は乗り気だよ。というか。勢いがついて止まらない」

 「バカとハサミも使いようかな」

 「ハサミが切れるなら使えるが、陸軍は怪しいからな」

 

 

 大和、武蔵

 2567トン級島風型駆逐艦 島風

 2077トン級夕雲型駆逐艦 浜波、沖波、岸波、朝霜、早霜、秋霜、清霜、

 2000トン級陽炎型駆逐艦 浜風、谷風、野分、嵐、時津風、不知火、天津風、

 1700トン級初春型駆逐艦 初春、子ノ日、若葉、初霜、有明、夕暮

 1850トン級ポーター型駆逐艦

     いぬわし、いそしぎ、

 1500トン級バッグレイ型駆逐艦

     はくがん、はちくま、はましぎ、はやぶさ、はいたか、へらさぎ、ほおじろ、

 1450トン級マハン型駆逐艦

     かわせみ、かるがも、かささぎ、かっこう、きばしり、くさしぎ、ごいさぎ、ささごい、

 1365トン級ファラガット型駆逐艦

     あおげら、あおしぎ、あおばと、あかはら、あかひげ、あおさぎ、あまさぎ、おおるり、

 大和 艦橋

 「提督。海上護衛総司令部から、護衛艦を貸して欲しいと」

 「護衛艦があるだろう」

 「修復と改装で不足だとか」

 「ちっ」

 

 海上護衛総司令部

 17500トン級護衛空母 神鷹

 17830トン級護衛空母 大鷹

 7470トン級護衛空母 鳳翔

 1315トン級睦月型駆逐艦11隻

  睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、長月、菊月、三日月、望月、

 1270トン級神風型駆逐艦8隻

  神風、朝風、春風、松風、旗風、追風、朝凪、夕凪、

 1215トン級峯風型駆逐艦15隻

  峯風、沢風、沖風、島風、灘風、矢風、羽風、 汐風、

  秋風、夕風、太刀風、帆風、野風、波風、沼風、

 820トン級若竹型駆逐艦7隻

   若竹、呉竹、早苗、朝顔、夕顔、芙蓉、刈萱、

 940トン級御蔵・鵜来型海防艦

 870トン級占守・択捉型海防艦

 旧式駆逐艦は、魚雷が剥がされ、ソナーと爆雷投射機が搭載されていた。

 アメリカ潜水艦隊は、ミッドウェー、ジョンストン、パルミラへのモグラ輸送に投入。

 日本商船隊の被害は少なかった。

 とはいえ、最前線がオアフ島になると機動部隊を派遣できるわけもなく。

 艦隊決戦より領域防衛が重視され、輸送船団護衛艦隊も充実していく。

 護衛空母 神鷹 艦橋

 「準備は?」

 「ええ、完了しています」

 「しかし、本気なんですかね」

 「どうせ、正気を失っていたのだから丁度良いよ」

 「やれやれ」

 

 

 メキシコ国境守備隊の軍服を着た男たちがアメリカの村を襲撃する。

 軍服を着ている男たちはスパニッシュだけでなかった。

 黒人やドイツ系、イタリア系がいても遠目からみるとメキシコ軍にしか見えなかった。

 弱肉強食、強者が暴力で弱者を食い物にしていくの世界が繰り広げられていた。

 だからどうだというのか、強者が法によって、弱者を食い物にしていくのは良いのか。

 今のアメリカ合衆国がそうなのだ。

 もっとも、ドイツにとって、アメリカ国内問題など些事に過ぎなかったが戦争ともなれば別。

 アメリカ・テキサス州軍が向かってくる街道は、一つしかなかった。

 当然、州軍が来れば、すぐにわかった。

 「中部で “黒の騎士団” とか言う黒人武装組織がKKK団を襲撃し」

 「逆さ張り付けにしたそうです」

 「ふ どこかの部隊だろう」

 「我々が知っているのは、サルデーニャ竜騎兵団ウディネーゼ隊くらいでしょうか」

 「ブランデンブルク部隊の名誉にかけて連中だけには負けられんな」

 「ヴェルフ少佐。アメリカ軍です」

 「よし、例の場所に行くぞ」

 逃走する偽メキシコ軍が国境を越えるとアメリカ軍も国境を越えてしまう。

 「ほぉ 国境を越えてきたか」

 「勇気がありますね」

 「まったくだ」

 M4戦車の砲撃。

 偽メキシコ軍は、追い詰められていく。

 しかし、谷の頂から機銃掃射と銃撃がアメリカ軍の追撃を挫いた。

 アメリカ合衆国メキシコ州軍は、谷でメキシコ軍に包囲されてしまう。

 「ご協力、感謝します。将軍」

 「なぁあに、アメリカ人の横暴は、いい加減、腹に据えかねていましたからね」

 「アレは?」

 「良い物を得られたので、試してみますよ」

 メキシコ軍は、パンツァーファウストを撃ちM4戦車を破壊する。

 メキシコ軍はM4戦車を破壊して大はしゃぎ。

 谷底に包囲されたアメリカ軍は苦戦し、航空部隊に支援を求めてしまう。

 航空部隊の支援攻撃でアメリカ軍は、越境と降伏という無様な事態を避けることができた。

 

 

 第一機動部隊、第二機動部隊、第三機動部隊、第四機動部隊、養成機動部隊。

 総動員だった。

 日本の全機動部隊と主要船団が赤道を越えて南下する。

 ダーウィンに40隻、パースに60隻、アデレードに120隻の船団が現れ日本軍が上陸する。

 95式軽戦車でも十分と言えた。

 人口とほぼ同じ程度の日本陸軍が上陸するとオーストラリア軍に勝ち目はなかった。

 

 

 

 日本軍が開戦と同時にオアフ島に侵攻し占領。

 ニューギニア島・ビスマルク諸島は、米豪連合軍の最前線基地として取り残される。

 その後、戦力が増強されつつ対日通商破壊作戦の基地となっていた。

 B24爆撃機、ライトニングが翼を並べ、

 潜水艦部隊が通商破壊を開始しようとしていた。

 ラバウル

 「潜水艦部隊はウェーク、グアムへのモグラ輸送をやめて」

 「ようやく、まともな通商破壊作戦ができる」

 「数も増えていますから、ようやく反撃ができますよ」

 通信兵が駆け寄ってくる。

 「大変です!マッカーサー将軍。日本軍がオーストラリア大陸に上陸しました」

 「な、何だと!」

 「インド洋から南オーストラリア側へ回り込んだ模様です」

 「そんな馬鹿な」

 「このままでは、我々は、ニューギニア・ソロモン戦線で孤立します」

 豪州軍の戦力の7割は、ニューギニア・ビスマルク諸島に集められていた。

 日本軍は、インド洋側から回り込み、

 戦力のほとんどないオーストラリア大陸へと上陸してしまう。

 

 

 

 シドニー港

 大和と武蔵が入港していた。

 大和 艦橋

 「本艦の損傷は、魚雷4本。900kg爆弾2発。450kg爆弾3発。225kg爆弾2発。大破です」

 「本当に豪州の米豪航空隊は2線級パイロットだったのだろうな」

 「米豪パイロットは我が空母パイロットと飛行時間で互角だと思われます」

 「ちっ! 訓練用の燃料を湯水のように使いやがって」

 「日本は空母艦載機の3割を失った。作戦を続行するとしたら、さらに失われる」

 「陸軍の増援も急がせています」

 「米豪地上軍とアメリカの航空部隊の主力がニューギニア方面にいて良かったな」

 「燃料を浪費して、ここまで来た甲斐があったようです」

 「この大和と武蔵に攻撃が集中したおかげで輸送船団は無事に上陸できた」

 「ヨシとすべきだろう」

 「オーストラリア大陸は、陸軍の評判が良いようです」

 「中国人と違ってウジャウジャいないからな」

 「無事に占領できれば良いのですが・・・」

 「中国から撤退するのだ。大変なのは、むしろ、これからだな」

 中国戦線から引き抜かれた日本軍70万がオーストラリア大陸に上陸していく。

 

 

 

 ワシントン 白い家

 「日本軍がオーストラリア大陸に上陸した?」

 「マ、マッカーサー将軍は何をしていた」

 「ラバウルで指揮を執っていました」

 「ニューギニアは、突破されていないのか」

 「日本海軍は、インド洋から南オーストラリアに回り込んだ模様です」

 「そんな兵力がどこにある。もう日本は限界のはずだ」

 「中国から後退しているので、その撤収した部隊です」

 「なっ!」

 「オーストラリア大陸の総人口は750万弱です。70万の日本軍将兵なら・・・」

 「バカな」

 扉が叩かれると入室の許可を出す前に士官が入る。

 いつの間にか、緊急の場合は、勝手に出入りする風潮が出来上がっていた。

 「日本軍がニュージーランドに上陸しました。北島に約4万。南島に約4万です」

 「・・・・」

 「現在、交戦中ですがオーストラリア同様、ニュージーランドもアメリカに救援を求めています」

 「な、何と言うことだ・・・」

 

 

 

 ケープタウン

 エセックス艦橋

 「破損個所の修理を急がせろ」

 「まさか豪州を落とされるとは?」

 「オアフ島に拘り過ぎだ」

 「・・・駐屯地から黒人の暴動を抑えるため港区画に陸戦隊を出して欲しいとのことです」

 「ちっ! 休息する暇もない。各艦から合わせて1個小隊を出してやれ」

 「大統領は、準備が整い次第。インド洋から豪州へのヒット&ウェイ攻撃を行うようにと」

 「増援は?」

 「大西洋での作戦後、急行させると」

 「ったく〜 艦載機の増援は?」

 「4日後にボルチモアを出港すると」

 「後手後手だな」

 「先ほど、空母アキラのシンガポール入港を確認しました」

 「そうか」

 

 

 

 

 中国大陸は3つの勢力に分裂し覇を争っていた。

 日本の傀儡、南京の汪兆銘政権。

  日本には、南京政府を維持させられるの資本はなかった。

  軍事力で押さえようとしても損益収支で赤字になるばかり。

  汪兆銘が亡くなると陳公博(ちん こうはく)に委ねられたがモラルは低下していく。

  そして、日本軍は中国大陸から後退しつつあった。

 

 米英と資産家層に支持された重慶の蒋介石政権。

  43年以降、アメリカもイギリスも、蒋介石政権の支援が不可能となっていた。

  供給されていた物資は、私腹に消えて雲散霧消。求心力は急速に失われつつあった。

 

 共産主義を標榜し農民に支持された延安の毛沢東共産政権。

  頼るべき財力も、軍事力もなかった。

  しかし、思想と規律を根幹に草の根的に民衆の信望を集め急速に勢力を拡大していた。

 

 重慶

 真っ白な一式陸攻が飛行場に着陸していた。

 「日本は、中国と講和を結びたいあるか?」

 「ええ、日本軍は、中国沿岸部にまで後退するつもりです」

 「それで?」

 「これだけの資源と汪兆銘政権の承認と沿岸域の領有を承認していただければ・・・」

 数種類の資源の目録と地図が広げられた。

 中国沿岸部の島や港の一角が赤く記されているだけだった。

 「それで講和としたいと思っています」

 「随分、慎ましいある」

 「これ以上、中国の内戦に巻き込まれたくないものですから」

 「日本は豪州にも上陸して勝っているある」

 「白人世界はアジア世界に干渉して豪州を失う」

 「それくらいの痛みを与えたいものです」

 「汪兆銘政権は日本の傀儡ある」

 「我が軍は、沿岸部まで後退しますよ」

 「汪兆銘政権が蒋介石政権と連合しても、それは勝手です」

 「分かったある」

 「約束の資源供給は、守っていただけるでしょうね。我が軍は・・・」

 「わかったある。既にアメリカの支援は届いていないある」

 

   

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 月夜裏 野々香です。

 アメリカ合衆国と真面目に戦争してはいけません。

 呪詛も駄目です。

 ですが史実でも、この時期、頻繁に行われる “転戦” です。

 この戦記でも、やっちゃいました。

 中国戦線から撤収で豪州攻略戦に転戦です。

 アメリカ機動部隊は、オアフ島を封鎖した後、欧州へ。

 そして、ノルマンディー上陸作戦でアメリカ空母艦載機は大損害。

 

 

 

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第03話 1943年 『財産も捨ててやるわい!!!』

第04話 1944年 『もう、転戦!!!』

第05話 1945年 『し・ん・て・ん・ち』