月夜裏 野々香 小説の部屋

    

架空戦記 『大本営特攻』

 

 第05話 1945年 『し・ん・て・ん・ち』

 米英軍のノルマンディー上陸作戦と、

 日本軍の豪州上陸作戦は、世界各国を驚愕させる。

 西部戦線のラジオから枢軸サリーの声が流れる。

 “ヤンキーの皆様、ごきげんよう”

 “懐かしいアメリカ合衆国のニュースをお伝えしましょう”

 “カリフォルニア州で森林火災が3件起きています”

 “また、森林火災の飛び火で製油所に引火した模様です”

 “アメリカは社会運営が損なわれるほど大きな動員が行われているようです”

 “21日、テキサスのヒューストンで黒の騎士団とKKK団が市街戦を起こし”

 “十数人の民間人を巻き込んだそうです”

 “アメリカの治安は悪化しているようなので、心当たりのある方は連絡を取った方が良いでしょう”

 “一部、ドイツ、イタリアの破壊工作と噂されていますが全くのデマ、誤報です”

 “または、連合国の卑劣な陰謀か、誹謗中傷です”

 “ドイツ第三帝国と同盟国は、そのような卑劣で姑息な作戦は行いません”

 “治安の悪化は、男手が減少した事による、自警能力の喪失が原因と思われます”

 “引き続き、アメリカとメキシコの越境紛争ですが、双方の政治折衝で和解が図られたそうです”

 “良かったですね。ご安心ください”

 “もう一つの国境紛争ですが、24日、カナダのメリタという町で銃撃戦が行われたそうです”

 “原因は不明ですが国力を越えた無謀な動員による治安悪化と考えられます・・・”

 この手のプロパガンダは、信用第一。

 相手に都合の悪い情報を流すだけでよく、意外に正確だったりする。

 もっとも、解釈はいい加減だったり、推測も枢軸国に有利なものだったり。

 米英連合軍はドイツ軍の機動戦術によって翻弄され、

 攪乱され、寸断され、戦力と戦意が削がれていく。

 

 ノルマンディー アメリカ軍陣地

 丘陵全域に爆発で空いた穴が点々と広がり、黒煙が立ち昇る。

 アメリカ軍将校たちが腕を組んでため息。

 「地の利がドイツ側だったとはいえ、M4戦車5両が格下の3号車6両にやられてしまうとはな」

 「これで4号車、タイガー戦車、パンター戦車が来たら大変な事になるのでは?」

 「キルレートが悪いと予備役に回され・・・」

 「大佐、グラスホッパーが戻ってきました」

 観測機L4パイパーカブが原っぱに着陸する。

 燃費の良い65馬力のエンジンで軽量な機体は短い距離で離着陸できた。

 パイロットたちが降りてくる。

 「敵の動きは?」

 「ドイツ軍は後退していますが大型戦車2両、トラック5台と合流しています」

 「大型戦車・・・タイガー戦車か、パンター戦車だな」

 「撮影したので現像すれば分かると思います」

 「御苦労、しばらく休憩してくれ」

 ・・・敬礼・・・

 「・・・どちらにしろ、補充がないと連隊は進めない。しかし、補給は遅れ気味だ」

 「アメリカ国内が気になって、上の空の将兵も多いようです」

 「ちっ アメリカ国内に工作員を潜入させるなど、西海岸をがら空きにしやがって」

 「東海岸と違って西海岸側は、有色人種が多いですから。味方を作りやすいのでしょう」

 「一番、白人至上主義の癖に、ふざけやがって」

 「ドイツのブランデンブルク部隊15チーム」

 「サルデーニャ竜騎兵団8チームを殲滅したそうですよ」

 「その割には、治安が悪化しているじゃないか?」

 「イタリアチームが勢力を拡大しているのでしょう。マフィアと結託している節もありますし」

 「イタリア人?」

 「破壊工作ではなく、遊んでいるから捕まらないのではないか?」

 「イタリア人は、仕事している時より、遊んでいる時の方が危険です」

 「そ、そうだった」

 「イタリア系将兵には足を引っ張られてますしね」

 「「「うんうん」」」

 

 

 一等輸送艦17隻、二等輸送艦56隻が並び、

 上陸部隊が橋頭堡を確保していた。

 星の光と艦載レーダーを頼りにB17爆撃機の編隊がケアンズに迫る。

 海岸と艦船が近いと見分けが付き難く、低空から反跳爆弾を投下していく。

 一等輸送艦が反跳爆弾の直撃を受けて大破炎上。

 そして、艦船に命中しないくても橋頭堡で炸裂して上陸部隊に被害を与えていく。

 妙高 艦橋

 「米豪軍はケアンズを放棄して北上しています」

 「街の制圧は?」

 「7割を押さえました」

 「陽動か・・・抵抗の激しい街の残部に砲撃を集中させる」

 「はっ!」

 B17爆撃機が妙高の上空を通過していく。

 爆撃で、二等輸送艦が大破、紅蓮の炎を上げ、艦橋が紅く照らしらされる。

 「・・・よ、良くやる」

 「危なかったです」

 「ポートモレスビーとケアンズは840km」

 「夜間に低空爆撃とは、アメリカ軍も思い切った事をする」

 「電探の差でしょうか、日本航空部隊では夜間低空爆撃なんて、出来ない芸当ですよ」

 「アメリカのパイロットは2000時間以上がざら」

 「日本のパイロットは飛行時間600時間以下ばかりだそうだ」

 「随分、差が出来ましたね」

 「アメリカ航空部隊はベテラン。まともな航空戦でも翻弄されるな」

 「夜明け前に全て荷揚げを終わらせて、艦隊を撤収させないと壊滅だ」

 「ポートモレスビーの弾薬が先に尽きれば良いのですが」

 「そ、そういえば変だな」

 「アメリカ航空部隊はニューギニア北岸に集中していて、ポートモレスビーの弾薬は少ないはず」

 「ポートモレスビーの海路はUボートと伊号で押さえている」

 主砲発射と同時に ばぁあ〜ちぃ〜!!! 砲身が砕け散る。 

 「艦長! 2番砲塔1番砲身が命数割れを起こしました」

 「またか、弾薬を振り分けて全弾撃ち尽くせ」

 「このままでは、艦隊戦が不可能になりますね」

 「かまわん」

 「ですが・・・」

 「大本営は、豪州を降伏させて、何としても講和に持ち込みたいらしい」

 

 

 ポートモレスビー

 ポーンパイプを吹かせた男がイライラと海を睨みつける。

 「将軍。もう弾薬が底を尽きます」

 「北海岸から弾薬を空輸させろ」

 「ですが、それでは、ニューギニアを守る弾薬が」

 「いや、日本にニューギニアを攻略する力は残っていない」

 「もう、息切れのはずだ」

 「アメリカ太平洋艦隊の回航が遅れています。もう少し、自重されては」

 「オアフを無力化できたというのに、豪州の策源地が失われるとは・・・」

 

 

 アメリカ機動部隊がジブラルタルから地中海に侵入する。

  第1機動群(任務群) 司令官:ジョゼフ・J・クラーク少将

   空母(ホーネット、ヨークタウン、エンタープライズ) 軽空母(ベロー・ウッド)

   重巡ボストン、キャンベラ、

   防空巡オークランド、サンファン

   駆逐艦14

 

  第2機動群 司令官:A・E・モンゴメリー少将

   空母(レキシントン、サラトガ) 軽空母(モントレー、カボット)

   軽巡サンタフェ、ビロクシー  防空巡アトランタ、ジュノー

   駆逐艦12

 

  第3機動群 司令官:J・W・リーブス少将

   空母(バンカーヒル、ワスプU) 軽空母(プリンストン、サン・ジャシント)

   重巡インディアナポリス  軽巡クリーブランド  防空巡レノ

   駆逐艦13

 イタリア空軍の主力は、地中海沿岸に分散され、半分は東部戦線に送られていた。

 アメリカ機動部隊を空襲するだけの戦力は存在せず、近付いただけで迎撃機に撃墜され。

 VT信管の弾幕に撃退される。

 戦闘機F4Uコルセアがイタリア空軍を蹴散らしイタリア上空の制空権を握る。

 そして、爆撃機SB2Cヘルダイバー、TBFアべンジャーがイタリア本土の港を旋回。

 「このナポリタン野郎。アメリカ国内で暴れやがって、見てやがれ〜」

 『あまりやり過ぎるとアメリカに帰ってからイタリアンマフィアに始末されないか?』

 「ビ、ビビんじゃねぇ いてこませ!!」

 新型戦艦リットリオ、ヴィットリオ・ヴェネト、ローマ

 旧式戦艦カイオ・デュイリオ、ジュリオ・チェザーレ。

 その往復の攻撃で新型戦艦3隻、旧式戦艦2隻が撃沈。

 巡洋艦、駆逐艦も撃沈され壊滅していく。

 イタリア海軍で生き残ったのはインド洋の空母アキラと潜水艦のみとなっていた。

 そのまま、給油を受けつつ、地中海を荒らし回りながら横断し、

 中東沿岸にまで達して帰還する。

 地中海から帰還途中のアメリカ移動部隊を狙ってドイツ空軍が集結し、反撃していた。

 地中海上空

 F4UコルセアとFw190フォッケウルフが航空戦を展開していた。

 コルセア部隊は、フォッケウルフとの航空戦に忙殺される。

 機動部隊に爆撃機が接近してもVT信管で撃墜出来ると油断していた。

 Do 217双発爆撃機の編隊が高度5000m以上でフラフラと機動部隊の弾幕に突っ込んでいく。

 「アメリカ海軍め、ティルピッツ、シャルンホルスト、グナイゼナウの仇〜」

 そして、Do 217双発爆撃機から “何か” が次々と射出されていく。

 時速1035kmのフリッツXが機動部隊の弾幕を擦り抜けていく。

 母機に無線誘導されたフリッツXは、空母ヨークタウンを貫き、

 艦内で弾頭320kgを炸裂させた。

 空母ヨークタウン

 振動で空母が震える。

 「艦長、艦尾に命中しました! 機関室、炎上中!」

 「消火を急がせろ!」

 「くっそぉ 弾幕の外から攻撃しやがる。艦隊に近付く前に爆撃機を撃ち落とせ」

 フリッツXの射程は15000m。

 コルセア部隊が慌てても時すでに遅しだった。

 フリッツXは、アメリカ機動部隊の弾幕を掻い潜り空母に命中していく。

 夕刻迫る頃、

 空母ホーネット、ヨークタウン、レキシントン、

 軽空母プリンストンは地中海で炎上し沈んでいく。

 

 

 

  アメリカ合衆国ニューヨーク州サラトガ市

   独立戦争時、カナダからイギリス軍が進軍するルートがあった。

   イギリス軍は進軍ルートを守ろうとし、

   大陸軍はルートを断ち切ろうとする。

   このサラトガの戦いは、カナダ援軍ルートを賭けた戦いであり、

   ジョン・バーゴイン中将が指揮するイギリス軍は、

   イギリス兵3300。ドイツ人傭兵3900。

   カナダ王党派・同盟インディアン650で構成され、

   イギリス軍将兵の合計は7850。

   タイコンデロガ砦とエドワード砦を陥落させる。

  

   一方、大陸軍は、

   ペンシルバニアとバージニアの部隊から1200を集めて主力部隊としていた。

   そして、13植民地から、続々と人手を掻き集めていた。

   数こそ増えていくが寄せ集めの民兵部隊は、統制が取れておらず。

   組織作りから始めなければならなかった。

   そして、大陸軍は、サラトガの戦いを左右する、

   権謀術数に長けたホレイショ・ゲイツ少将と、

   勇猛果敢なベネディクト・アーノルド少将の、

   二人の指揮官の主導権争いと確執も注目される。

   他にも、組織力の劣る大陸軍の兵站は、陣容が大きくなるほど歪になり、

   部隊ごとに待遇の格差が大きくなる。

   兵士同士の不公平感が増し、

   仲違いの火種は多様で指揮系統が混乱していく。

   イギリス軍が攻撃してきたのは、そんな空中分解気味の時と言えた。

   イギリス精鋭部隊の攻勢で大陸軍の左翼軍は、寸断され切り崩されていく。

   しかし、地の利は大陸軍にあった。

   大陸軍のホレイショ・ゲイツ少将は戦線を構築し持つだけだったのに対し、

   アーノルド少将とダニエル・モーガン大佐は、待ち伏せでイギリス軍を翻弄していく。

   対するイギリス軍は杓子定規で欧州の伝統的な戦いに拘り、柔軟性を欠いていた。

   それでもイギリス軍は、力技で要衝ベニス高地を占領してしまう。

   もっとも、イギリス軍の損害は、大陸軍より多く、物資も不足していた。

 

   大陸軍は日に日に兵力を増し、

   イギリス軍は撤収路を確保しようと攻勢をかけた。

   しかし、大陸軍の圧倒的な数に梃子摺らされ、

   有能果敢なアーノルド少将の反撃で押し潰されていく。

   サラトガのイギリス軍の勝機は急速に失われ、

   そして、アーノルド少将の指揮権が剥奪された頃は、雌雄が決していた。

   イギリス軍は、二度と参戦しないと制約し、イギリス本土へと帰還していく。

 

 サラトガ市民は、アメリカ独立を勝ち取ったサラトガの戦いを誇りにしていた。

 もちろん、サラトガ市長も同様だった。

 そのサラトガの市長は酷く怯え、周囲を警護されていた。

 「いったい。どこのファミリーが動いている?」

 「マランツァーノ家、ルチアーノ家、マンガーノ家」

 「ガリアーノ家、プロファチ家とも動いていないと」

 「だがコーサ・ノストラは、サルデーニャ竜騎兵団を支援しているのではないか?」

 「一概にはいえませんがシシリアの血縁は、合衆国の絆より強いですから」

 「それに黒の騎士団、ファースト・ネイションズの可能性も・・・」

 「ホーネットの市長がやられたのだ」

 「関連性からサルデーニャ竜騎兵団の・・・」

 銃声が轟くとサラトガ市長が倒れた。

 ホーネット、ヨークタウン、エンタープライズ、レキシントン、サラトガ・・・

 各市の市長が暗殺される。

 組織力で集団になると強いドイツ人・日本人。

 利害、外道、血縁、個人、利己主義で強いイタリア人。

 イタリア人が真価を発揮すると国家上層部だけでなく市民さえも震え上がらせた。

 

 

 04/12

 ワシントン 白い家

 テーブルの上にアメリカ合衆国の地図が広げられていた。

 有力者暗殺、森林火災、工場火災の印が付けられている。

 風船爆弾の被害も記されていたが僅かだった。

 各州で黒の騎士団、ファースト・ネイションズなど反政府組織が作られて挑戦している。

 白人至上主義のUSA in USAもKKKを取り込みつつ勢力を拡大していた。

 「いまとなっては、黒の騎士団、ファースト・ネイションズが全国的で大きいですがね」

 「サルデーニャ竜騎兵団を殲滅できても彼らは崩れないほど大きくなっている」

 「ブランデンブルク部隊が組織化したUSA in USAは民主主義を破壊しかねない」

 「気がついたらアメリカ合衆国がナチズムに支配されている場合もあるわけか」

 「ふぅ〜」

 車椅子に座った男がテーブルの手紙を広げる。

 「・・・次はお前だ、か・・・うぅ・・・」

 「「「だ、大統領!」」」

 アメリカ合衆国第32代大統領フランクリン・D・ルーズベルト急逝。

 

 白い家

 副大統領だったハリー・S・トルーマンは33代アリカ大統領に昇格していた。

 住人が変わってもすぐに政策を変更できるわけもなく・・・

 「中国が日本と和解し、中国大陸にいた日本軍は豪州を制圧しつつある」

 「白人はアジアに手を出したばかりに豪州を失う事になろうとはな」

 「藪蛇ですね」

 「アメリカ機動部隊の太平洋回航を急がせよ」

 「ですがドイツ本土爆撃は犠牲が多く、航空機パイロットは欧州優先されています」

 「空母艦載機パイロットは、著しく消耗して定数に達していません」

 「それは豪州攻略作戦を行った日本機動部隊も言えることではないのか?」

 「確かに豪州上陸作戦支援を行った日本機動部隊もパイロットを消耗しています」

 「問題は豪州回復のための基地とルート確保が遅れていることです」

 「ラバウル、ポートモレスビー、エスピリットサントか・・・」

 「その間を埋める基地がまだ弱いな」

 「オアフ攻防戦にこだわり過ぎたようです」

 「日本は弱体化していくばかりだと思ったが?」

 「日独伊連絡が取れて状況が変わったようです」

 「だが日本戦車は弱いはず」

 「しかし、豪州侵攻が速過ぎる」

 「北アフリカ戦線で捕獲されたイギリスのハンバー装甲車、ダイムラー装甲車が使われたようです」

 「あとドイツのSd Kfz 234プーマ装甲車。Sd Kfz 251装甲車も使われています」

 「マインバッハ140馬力装備の95式軽戦車と」

 「マインバッハ300馬力装備の97式戦車も生産しているようです」

 「心臓がドイツ製なら無理が利くか・・・ドイツも余計な事を・・・」

 「情報部は、ドイツが日本の豪州占領に反発していると報告しています」

 「あそこも白人至上主義だからな。そのまま、同盟が破綻すれば良いがね」

 「ノルマンディー上陸作戦後では難しいかと」

 「逆に戦争に勝つため日独伊同盟が強化されていく可能性もある」

 「豪州に救援艦隊を送れないのか?」

 「空母パイロットが消耗していますから潜水艦による通商破壊」

 「あるいは、巡洋艦隊による強襲になるかと」

 「問題は、国内の工作部隊だな」

 「ドイツのブランデンブルク部隊7チーム」

 「イタリアのサルデーニャ竜騎兵団4チームを殲滅しました」

 「芋蔓式に捕まえられないのか?」

 「いえ、担当地区のチーム名を二つから三つ知らされているだけで連携はないようです」

 「ライバル同士を競わせているわけか」

 「構成員は11人ですから、サッカーのつもりなのでしょう。士気は高いようです」

 「特に黒の騎士団は、雪ダルマ式に膨れ上がり、全米で組織されています」

 「ほかのチームも真似始めたわけだな」

 「黒人に白人が殺され始めてKKK団は急増中だ」

 「KKK団はブランデンブルク部隊が作ったUSA in USAに吸収されつつあるようです」

 「あとメキシコから麻薬を運び込んでいるチームもあり、資金源にしているようです」

 「アメリカとカナダ、メキシコを戦争させたがっているチームもいる」

 「要人暗殺を行っているチームもあるようですので、大統領も気を付けた方が」

 「山火事の件数も増えています」

 「こちらは、自然発火と風船爆弾もあるので確実ではありません」

 「・・・もう一度、メキシコとカナダに親書を送っておくか」

 「その方が良いかもしれません」

 大統領制は、トップが変わると官僚スタッフも入れ替わるため継続性がなく。

 政策が劣化することもあった。

 

 

 

 ニューギニア ラバウル

 米豪連合軍は、戦意が低下していた。

 「ケアンズ、タウンズビルが落ちたのか」

 「計算上、日本海軍は砲身命数を使い切っていると思われます」

 「確かに限界だろうが、豪州も・・・」

 オーストラリアはブリズベン陥落で降伏する。

 ニュージーランドもウェリントン、オークランド、

 ダニーディン、クライストチャーチが陥落して降伏。

 オーストラリア シドニー

 利根 艦橋

 「綺麗な港だな」

 「シドニー港、サンフランシスコ港、リオデジャネイロ港は世界の三大美港だそうです」

 「しかし、豪州占領なんて、なんか、大それた事をやっていないか?」

 「白人世界を怒らせてしまったと思うよ」

 「最悪だよ」

 「移民政策が軌道に乗れば、何とかなるよ」

 「損害が大き過ぎて、何とかならないような気もするがね」

 「ニューギニアに展開している米豪連合軍は1線級」

 「しかし、オーストラリア、ニュージーランドの米豪軍は2線級のはず」

 「2線級でもそれだけ苦戦させられたということだよ」

 オーストラリア大陸

 人殺しの慣れていない米豪連合軍 VS 人殺しの慣れた日本軍の戦いが繰り広げられる。

 シドニー 飛行場

 B24爆撃機、B17爆撃機、B25爆撃機、P38ライトニング、スピットファイアが並ぶ。

 日本が豪州攻略戦で失った戦力に比べれば戦利品は少ない。

 赤レンガの住人たちが缶詰を開けて中のビスケットを頬張る。

 「Cレーションも少し変ったかな」

 「44年度版だろう」

 「保存食として大量に貯蔵してあったのは嬉しいね」

 「しかし、いつ見ても贅沢な機体だな」

 「んん・・・日本は爪に火を灯すように戦っているというのに・・・」

 「オーストラリアに居着いてしまえれば、もう少し豊かになれるよ」

 「背に腹は替えられないよ」

 「このまま経済が悪化していけば、身内を殺してでも資産の奪い合いになるよ」

 「移民船は?」

 「増えていくと思うけど、水がな・・・」

 「まだニュージーランドの方が水資源を確保しやすいか」

 「しかし、日本は侵略国になってしまったんだな」

 「パワーゲームで日本を追い詰めたアメリカが悪い」

 「お互い様ではあるけどね。日本は外交戦略で負けたと思うよ」

 「基礎条件が変われば、外交戦略も変わってくるよ」

 

 

 

 アメリカ機動部隊の強襲によってイタリア海軍は、壊滅。

 生き残った空母アキラの地中海回航が求められた。

 アレクサンドリア港

 空母アキラ、

 軽巡やまがら(デ・ロイテル)、やませみ(ジャワ)、

 給油艦 襟裳

 

 空母 アキラ 艦橋

 「本当にイタリア海軍は、全滅したのか?」

 「行き残っているのは、コルベットや潜水艦ばかりだそうだ。それも半分くらいだそうだ」

 「インペロも?」

 「建造ドックごと破壊されたらしい」

 「イタリア空軍は、何をしていたんだ」

 「東部戦線じゃないのか。ドイツ空軍が仇を取ったらしいがね」

 「何と言うことだ」

 「元々、アメリカ機動部隊の強襲に耐えられるようなイタリア空軍じゃないからね」

 「ドイツ海軍も水上艦艇が壊滅らしい、大慌てで再建するらしいよ」

 「どうやって?」

 「日本の捕獲駆逐艦を買い取るらしい。当面は、ギリシャに配備するらしいがね」

 「日本軍は、豪州攻略で限界だったと思ったが」

 「だから、だろう」

 「それで、ドイツの工作機械が大量に日本に行くのか」

 「イタリア海軍は?」

 「対抗上、軽巡やまがら(デ・ロイテル)、やませみ(ジャワ)を買い取るらしいけどね」

 「イタリアは代価が払えたっけ」

 「軽巡2隻くらいの対価は払えるだろう」

 「しかし、ツーロンのフランス艦隊の方が強くなってしまうとはね」

 「ヴィシーから買えばいいのに」

 「ヴィシー領ごと奪い取るというのもありだけどね」

 「ドイツの戦争遂行でヴィシーの協力が不可欠らしくてね」

 

 

 ニューファンドランド島

 B17爆撃機が滑走路に着陸すると数カ国の政府要人たちが握手を交わす。

 本来、ホワイトハウスで話し合われる事柄だった。

 それが、なぜ、ニューファンドランド島かというと、

 後ろめたい事柄が含まれているからに過ぎない。

 「ヒットラー総統が米英と停戦したいと?」

 「負けそうになったからと言って、停戦とはね」

 「アメリカとイギリスも、対日戦に集中したいのでは?」

 「まぁ 確かに日本人には躾が必要ですな」

 「ドイツは、対ソ戦だけに集中できる」

 「そして、アメリカとイギリスは対日戦だけに集中できる」

 「だが、我々には、面子があるんだが?」

 「面子? アメリカにとって、パールハーバーの復讐は、日本のはず」

 「まぁ そう言えなくもない」

 「問題は、線引きをどこにするかでは?」

 「それは、そうです」

 ゲルマン系の男が持ってきた地図を提示する。

 「「「「「・・・・・」」」」」

 

 05/07

 独伊・米英講和条約調印。

 日独伊三国同盟破棄。米英の対ソ援助停止。

 フランスは、ドゴール北フランスとペタン南フランスに分割。

 オランダ、ベルギー、デンマークは、中立国として存続。

 米英・独伊は、フランス、オランダ、ベルギーの占領地から段階的に撤収する。

 北フランス・南フランスは、今後、10年は、陸軍兵力を10万以下とする。

 

 

 アレクサンドリア

 軽巡やまがら(デ・ロイテル)、やませみ(ジャワ)、

 給油艦 襟裳

 軽巡やまがら(デ・ロイテル)艦橋

 「くっそぉおお〜 ドイツとイタリアめ〜 裏切りやがったな」

 「本国は?」

 「工作機械と捕獲駆逐艦の交換は予定通りだそうだ」

 「裏切り者と取引するのか!」

 「工作機械がないと日本が困る。ドイツ・イタリアは駆逐艦がないと困る。それだけ」

 「ちっ 日本はアメリカとイギリスから集中攻撃か」

 「だが、ドイツとイタリアはソ連に集中できるから、ソ連の日本攻撃はなくなる」

 「それは嬉しいが、米英軍の総力が日本に向かう方が怖い」

 「豪州を占領して、白人世界を怒らせてしまったかな」

 「ドイツ・イタリアにすれば、対米英戦を終わらせられる切っ掛けになったわけか」

 「ま、負けそうだな」

 

 

 “一億死に徹すれば危局・活路あり、銘肝せよ! 大戦に楽勝なし”

 新聞の見出しは勇ましかった。

 現実は、大日本帝国は、独伊・米英講和条約で苦境に立たされる。

 米英の総力が日本に向けてくると誰もが理解する。

 日本軍には豪州攻略で余剰戦力がなく、太平洋上に分散させられていた。

 御前会議

 「まさか、欧州戦線が終わってしまうなんて・・・」

 「日本は、アメリカとイギリスから集中攻撃を受ける」

 「豪州を攻略した日本は余力が残されていないぞ」

 「こぉのおおおお〜! 薄らバカが!」

 「兵站以上の兵力を前進させてどうする!!!」

 「ドイツとイタリアが裏切るとは、思わなかったんだよ」

 「アメリカ機動部隊の艦載機は著しく消耗しているはず。いっそ、豪州から退くか」

 「いまさら退けるか〜!!!」

 日本陸海軍の制服組は、恐怖で徹底抗戦を唱える。

 背広組の男が一つの選択肢を提示した。

 たちまち、御前会議は紛糾し、混乱する。

 そして、選択は天皇に一任される。

 

 

 中国大陸は、日本軍の撤収に伴い国民軍と共産軍の間で内戦が激化していた。

 満州帝国

 五族協和は方便。

 王道楽土も嘘っぱち。

 大東亜共栄圏も詐欺。

 支配と被支配の関係でしかなく、漢民族との関係も悪化、朝鮮民族との関係も悪化。

 日本人同士でも仲違いするのに外国人同士で上手くいくのは稀。

 日本人だけで構成できるオーストラリア大陸に魅力を感じたのも当然。

 島国根性で神経質な日本人たちは、いそいそと引っ越しを進めていた。

 煩わしい漢民族、朝鮮民族とも手切れ・・・

 

 

 オアフ島

 真珠湾司令部

 「総督。アメリカ機動部隊がサンチアゴに回航した模様です」

 「ドイツ空軍は、地中海から帰還中のアメリカ機動部隊を空襲して、打撃を与えたらしい」

 「事実とすれば驚くべきことです」

 「もう、技術差を訓練で埋められる段階ではないのかもしれないな」

 「ですが太平洋に回航ですか。大西洋からインド洋だと思いましたが」

 「その手もあるかもしれないが艦隊基地がなく」

 「オーストラリアもニュージーランドも降伏した・・・」

 「ですが・・・中国から撤収して豪州なんて」

 「中国人は多過ぎるからね」

 「それはそうですが」

 「長官。大本営から、日本の全権外交使節団がアメリカに向かうと」

 「なに?」

 白塗りの4発爆撃機連山がハワイ島ヒロに着陸した。

 アメリカ軍将兵が物珍しそうに日本軍の4発機を見守る。

 

 

 日米協議は、数日で終わる。

 08/15

 日米豪講和条約調印

 01) 赤道以北の日本本土と占領地を15年後、アメリカ合衆国に譲渡。

 02) 赤道以北の満州帝国、朝鮮半島を含めた利権をアメリカ合衆国に継承。

 03) オーストラリア人、ニュージーランド人を日本に住まわせること

 04) 日本はオーストラリア、ニュージーランドを新たな国土とすること。

 05) 日本は、パプアニューギニア領を委任統治領として継承すること。

 06) アメリカは日本の豪州国有を承認。

 07) 日本国民は、15年以内に豪州移民を行うこと。

 08) 遺跡、神社仏閣の移転は、新規発掘を含め完了まで日本が所有とすること。

 09) エセックス型空母12隻、ガト型・パラオ型潜水艦120隻を15年間日本に貸し置くこと。

 10) アメリカはM4戦車1200両を日本に譲渡。

 11) 東南アジア、自由選挙による独立。

 12) 北半球でイギリス領だった占領地区は、イギリスへ返還する。

 などが決まっていく。

 

 

 ワシントン 白い家

 イギリス宰相チャーチルが剥れていた。

 「アメリカ合衆国は、オーストラリア、ニュージーランドの救援を不可能だと断定したのだ」

 「嘘をつけ!」

 「日本列島と朝鮮半島、満州帝国、大陸沿岸、北太平洋の諸島の利権を欲したためだろう!」

 「アメリカ機動部隊は空母パイロットは、二度のオアフ島攻撃」

 「そして、ノルマンディー上陸作戦、ノルウェー作戦、地中海作戦で著しく消耗した」

 「これ以上の攻略作戦は不可能なのだ」

 「オーストラリア人とニュージーランド人の衣食住はアメリカ合衆国が支援する」

 「・・・・日本も豪州攻略作戦で疲弊している!」

 「我がアメリカ合衆国は日本の完全占領で日本と和解できる、アメリカ国民も納得する」

 「日本が豪州で力を付けますぞ」

 「アメリカも北太平洋全域で力を付ける」

 「もちろん、イギリスも、その片棒を担ぐだろう」

 「し、しかし」

 「日本側の譲歩はアメリカにとっても、イギリスにとっても大きな利益だ」

 「・・・・」

 「それにマレー半島、ブルネイも、シンガポールも北半球側だよ」

 「・・・・」

 アメリカは合理的な拝金主義の国だった。

 

 

 

 東部戦線

 独伊東欧軍とソビエト連邦軍が戦争していた。

 ドイツ軍陣地

 「日本とアメリカ、イギリスが戦争をやめたんだと」

 「本当に?」

 「アメリカは日本列島と大陸利権を貰って、気を良くして戦争をやめたらしい」

 「「「「はぁ?」」」」

 「日本人はオーストラリア大陸とニュージーランドにお引っ越しだそうだ」

 「イギリスは?」

 「豪州を日本に奪われ、インドも独立、東南アジアも独立だろう。もう、駄目だな」

 「「「「・・・・日本人は、そんな事ができるのか」」」」

 「というわけで、世界で戦争しているのは、独伊東欧軍とソビエト連邦だけということだな」

 「「「「ひでぇ〜」」」」

 

 

 アデレード港セントビンセント湾

 アメリカ海軍の空母15隻と潜水艦120隻が並んでいた。

 乗っているアメリカ軍将兵と日本軍将兵は、わずかで、

 ほとんどは、清掃会社、整備会社の人間ばかり。

 エセックス 艦橋

 「やっと太平洋回航と思いきゃ 物質(ものじち)かよ」

 「戦うより良いと思ったんじゃないか」

 「人が死ななきゃいいという問題かよ」

 「まぁ 北太平洋の国土と利権を差し出して許しを請われたらねぇ」

 「戦って得れば良いだろう」

 「たぶん、犠牲は、数百万で得られるモノは少ないと思うよ」

 「それに無人の土地にならないだろうし」

 「逆に日本人を殺せばいいのかという問題にもなるしね」

 「それを言うなら戦費を日本に貸すだけで戦争は回避できたという・・・」

 「それを言っちゃお終いだな」

 「とはいえ、弾薬無し、燃料もほとんど抜かれた軍艦で、整備と掃除三昧か」

 「なにやってんだかな」

 「物質(ものじち)を取りたくなるほど、アメリカが怖いということでは?」

 「まぁな。しかし、屈辱だよな。あれ、アメリカの元駆逐艦だぞ」

 1500トン級バッグレイ型駆逐艦

  はくがん、はちくま、はましぎ、はやぶさ、はいたか、へらさぎ、ほおじろ、が並んでいた。

 「拿捕艦の返還を要求すれば良かったのに」

 「日本本土の代価らしいよ。それに、もう旧式の軍艦なんていらないし」

 「それに捕獲した駆逐艦はドイツかイタリアに売るらしいよ」

 「ほぉ 売るのか」

 「豪州の日本を攻撃する国なんてないだろうし、軍事費は削減したいだろうよ」

 「しかし、そんなに日本本土と日本の北半球の権益が欲しいかね」

 「そりゃ 15年間だけ空母と潜水艦を貸し置くだけで、北太平洋の覇者だぜ。やめられんよ」

 「その代り、日本は豪州で生存圏を確保か・・・」

 「・・・石造りらの捨てた石が角の頭石になった」

 「聖書?」

 「アメリカ合衆国のことさ。そして、日本にも当てはまるかもな」

 「日本人は、土地から来る因縁を捨てた。日本民族の底力が試されるな」

 「大したことないと思いたいね」

 「いったい誰が損をしたんだろうな」

 「さぁね。イギリスじゃないか」

 「あいつら大航海時代で儲け過ぎたんだよ。いい気味だ」

 監視は厳重で、アメリカ国籍の軍艦で、期限付きの物質(ものじち)だった。

 

 

 アメリカ合衆国の移民船は、新天地の日本へと向かい。

 大日本帝国の移民船は、新天地の豪州へと向かっている。

 日本もアメリカも戦争どころではなかった。

 死に行く年寄りは新天地が苦痛でしかなく。

 中高年は、これまでの労苦が成果ごと失われていく。

 全てを新しく始めなければならない喪失感も大きかった。

 もっとも若者は未知への好奇心に満ちており、日本で一番多い層が若者だった。

 区役所では、土地の配分が定められ、農地の開墾が始まっていた。

 牧畜業に慣れた者は少なく。ほとんどの場合、塩分のある農地に切り替えられていた。

 大鑽井盆地の井戸水は、水田に使われる。

 オーストラリアのニューフロンティア

 「井戸水は塩分があるのか」

 「しょうがないよ。そういう国だから」

 「姫路城とか、奈良の大仏とか、どこに移すのかな」

 「先に工場移転らしいよ」

 「なんか大丈夫か? 弱体化しているような気がするが」

 「アメリカも日本投資で忙しいし」

 「空母も潜水艦も日本にとられたくないから手を出さないと思うよ」

 「だと良いけどね」

 「だけどM4戦車って、こんなにいらないんじゃないか?」

 「こっちに戦車があるなら、アメリカは攻め難いということだろう」

 「それにM4戦車2000両も持つ国を攻めようなんて思わないだろう」

 「できれば、国家再建を急がせたいね」

 「わかってるよ」

 

 

 呉

 リバティ船が何隻も入港し、アメリカ人が降りてくる。

 アメリカ人の移民も始まろうとしていた。

 日本の老人たちは、泣きそうな顔で日本で死を望み始める。

 しかし、日本で死んでも祀られることはなくなる。

 日本の先祖崇拝が破壊されてしまったのだ。

 「ご先祖の墓があるというのに・・・」

 「日本は、戦争で負けることより、負けない事を選んだんだよ」

 老人たちは涙ぐみ、中高年は不安で落胆し、若者は未知の世界を夢見る。

 海軍工廠

 豪州の米豪連合軍の総力で攻撃され大破した大和と武蔵が改装されていた。

 修理改装する価値があるかといえば “ない” と言えなくもない。

 しかし、豪州占領の殊勲艦であることに違いなく、改装されていく。

 3番艦信濃の資材を流用することもできた。

 「ディーゼル機関に替えるのか?」

 「ドイツのMAN式ディーゼル機関は悪くないよ」

 「電気推進も?」

 「真珠湾でアメリカ製電気駆動タービンを得たからね」

 日本は真珠湾でWestinghouse式。General Electric式のアメリカ製電気駆動タービンを入手。

 そして、複製も可能になっていた。

 「戦争が終わったからね。ドイツ製の良いのが入ったし、経済性重視だよ」

 「低速になるんじゃないか?」

 「バルジを薄くして、3番砲塔を取っ払って全長を伸ばすし、大丈夫だと思うよ」

 「寂しいぃ〜」

 「主砲があっても役に立たないと思うよ」

 「主砲塔1基で2760トンあるが艦首側と艦尾側の重量バランスは?」

 「だから艦尾側を伸ばすんじゃないか」

 「でもアメリカ人も来ているし、急がないと、お引っ越しだよ」

 「アメリカ人は、怒っていないのかな?」

 「ジャパン州というニューフロンティアを合法的に手に入れたんだから。それほど怒っていないよ」

 「だと良いけどね」

  

 

 朝鮮半島 朝鮮総督府

 日本人の官僚たちがアメリカの官僚と交替しつつあった。

 「いよいよ。朝鮮半島ともお別れか」

 「半島は、随分、投資したんだけどね」

 「半島の我の強い資質から離れられて清々するよ」

 「彼らの気質は、権威主義と年功序列とエゴしかないから」

 「連中の影響を受けると “和をもって貴しと成す” が掠れてしまうからな」

 「併合以降は、日本人の良さが失われていったからね」

 「日本人の良さが大陸でも残ると良いけど」

 「なんか、大陸で日本人らしさが変貌しそうだな」

 「朝鮮人と比べたら、我が弱くて融和的な気質だからね。郷に入れば郷に従いやすいし」

 「やっぱり、日本人らしさを保つならニュージーランドかな」

 

 

 キャンベラ 新首相官邸

 「取り敢えず。土地の配分を行えば兵員を田畑に戻して軍を縮小できるはず」

 「あとは、都市ごと伊本陣を移動させて・・・議会制民主主を回復できるはずだ」

 「土地の名前も変えていかないと」

 「そりゃそうだ。日本とオーストラリア、ニュージーランドの名前も総取っ換えかな」

 「んん・・・しかし、首都が東京だとまずい気もする。一応、東にあるけど」

 「では、京都では?」

 「それにしよう」

 「問題は、800万弱のオーストラリアに7500万の日本人ですから、住宅公団は必須です」

 「15年以内に何とかしないとな」

 「土地が広いので最低限の住宅家屋を作って」

 「あとは、自分たちで作らせる方法もありますが」

 「それが手っ取り早いか。土地が広ければ、勝手に増築もできるだろう」

 「・・・あとは、当面の目標としては、大陸環状鉄道の建設だな」

 「あと鉄道です」

 「広軌1600mm、標準軌1435mm、狭軌1067mm、狭軌762mm、狭軌610mm」

 「5種類がごっちゃんです」

 「1つにまとめるべきだろうね」

 「1600mm狭軌にするか」

 「そりゃ 大きい方が豪勢だけど、コストとか・・・」

 「1600mm狭軌。決定〜!」

 

 

ドイツ南部ベルヒテスガーデン

 ドイツ南部域ヒットラーの官邸ベルグホーフ (鷲の巣)

 対米英戦争終結により、米英軍の総力がインド・太平洋に削がれるはずだった。

 独伊東欧同盟軍は戦力の多くを東部戦線に注ぎ込むことができるはずだった。

 しかし、日本も売国的な講和条件により、対米英戦争を終結させてしまう。

 アメリカ、イギリスは、対日独伊戦を終結し、

 フリーハンドを得て西部戦線で余力を残してしまう。

 ドイツ・イタリアは西部に不安を残しながら、

 東部戦線に戦力を投入しなければならなかった。

 「予定通りとはいきませんでしたな」

 「まさか、日本が国土を捨てるとは・・・」

 「豪州と交換ならお釣りがくるのでは?」

 「そう思っても割り切れるものか」

 「対米英戦でダラダラと惨めに負けていくと思っていたのに・・・」

 「その間にソ連に止めを刺してやろうとしていたのだが予定が狂わされた」

 「日本も手強いですな」

 「これくらいの戦略を執れないようであれば、白人世界と覇を競えないだろうよ」

 「今後は?」

 「日本との交易は継続し、利用できる国は利用していく」

 「対ソ戦で豪州の資源は有用だ」

 

 

 

   

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 月夜裏 野々香です。

 だいたい見えてきたと思います。

 日本と豪州の交換、取捨選択です。

 日本国土を捨てるくらいなら負ける方がマシ。

 負けるくらいなら日本国土を捨ててやる。

 人それぞれです。

 この戦記では、日本国土そのものを失います。

 日本を失っても、日本人は、日本人であり続けられるでしょうか。

 鉄道の他にも発電、製鉄、工場、神社仏閣の移転など色々あると思います。

 しかし、この戦記、やっぱ鉄道でしょう。

 

 あと、史実で沈んだ空母ホーネット、ヨークタウン、レキシントン、プリンストンも沈めてやりました。

 もっとも4隻ともドイツ空軍の手柄ですが・・・

 

 

 日本の某所 暗い一室。

 「作者。なぜ、日本を捨てたのだ」

 「そうだ。先祖崇拝とか、郷土心とかないのか、お前は?」

 「左様、大日本帝国補完計画とは、すなわち日本が不足なモノを補完することにある」

 「命より大切なモノを捨ててどうする。バカモノ」

 「家康も三河を捨てて関東に行きました」

 「劉備も住民を率いて荊州を放浪し」

 「共産軍も長征を行っている」

 「大成の前は心機一転しました」

 「アフォか、全部国内やんけ。日本はな2000年の歴史があるんだぞ」 つ〜! 泣き〜

 「何か大切なものを失ったという気持ちにはならんのか、愚かモノ」

 「オーストラリア大陸は鉄鉱石、石炭、希少金属などの資源も豊かです」

 「また、より広い国土があれば、軍国主義を脱することができます」

 「権力構造は貧困と暴力によって脅迫されずに済むでしょう」

 「んん・・・」

 「また、アメリカとの関係は日本と北半球の利権を引き渡す事で修復できました」

 「んん・・・」

 「ソビエトの脅威からも離れ。中国大陸との悪癖からも逃れてます」

 「・・・・・・」

 「朝鮮人とも手切れすることもできました」

 「・・・まぁ 取り敢えず、我々の権力構造が維持されるのであれば良しとしよう。作者君」

 「そう、我々が勝ち組でなければ、例え戦争で負けなくても意味がないのだ」

 「左様、戦争で負けたとしても、我々が勝ち組であればいいのだ」

 「そ、その辺は、善処しております」

 

 

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第04話 1944年 『もう、転戦!!!』

第05話 1945年 『し・ん・て・ん・ち』

第06話 1946年 『鏡の国・・・』