月夜裏 野々香 小説の部屋

    

架空戦記 『大本営特攻』

 

 

 第08話 1948年 『南太平洋波低し』

 非常識なほど広大な大地が日本人の前に広がっていた。

 とはいえ、道路沿い、川や湖水の周辺の土地は地価が高い。

 “新” 京都 キャンベラ 首相官邸

 「製鉄所、発電、鉄道、造船所、港湾設備、公共施設が優先だよね・・・」

 「城郭神社仏閣は五月蠅いけどね。労力を得られにくいし」

 「土地の配分が進むとね。自分の土地を耕したくなるんだよね」

 「どいつもこいつも、所帯染みやがって」

 「金融を絞め付けて労働者でしか資本を得られないようにするか」

 「そんな事したら不況になるよ」

 「日本人は資本を持っても貯金するだけで市場を活性化しないような気がする」

 「だから銀行が創業力のある人間に貸すんじゃないの?」

 「日本はアメリカと違って創業力が育つ土壌じゃないし担保経済だから無理だよ」

 「本当は、アメリカからもっと学ばないとね」

 「極東日本から移転してくるまでアメリカ系外資企業で働く日本人もいる」

 「ノウハウくらい手に入れてくるだろう」

 「だと良いけどね」

 「あとは、一般居住区か・・・兵役経験者はバラした方が安全かな」

 「暴動を起こされると困るからね」

 「問題は、燃料か・・・」

 「石炭はあるよ」

 「即効性が高いのは、石炭をそのまま使う。石炭燃焼の船舶、木炭車」

 「何かいやだ」

 「じゃ 発電で電力を得てから、家電、工場、電気自動車など、発電所建設があるから、中期型」

 「まぁ 需要はありそうだけどね」

 「人工石油だと発電所より価格が高騰する。でも汎用性は高いよ。長期型」

 「燃料はアメリカから買う事も出来るし、中東からも買える。インドネシアからも・・・微妙だな」

 「じゃ 中期型ね。鉄道も電気機関車にできるな」

 有力者が先に良い土地を選んで行く。

 もっとも真面目な官僚もいて公益性優先に区画整理していったりもする。

 配分された土地に人が住みつき、少しずつ家屋を増築していく。

 土木建築が得意な者なら自分で家を建築し、家を売っては別の土地を買う。

 そこで家を建て増して転売する職種も生まれる。

 豪州特産は、やはり目を引いた。

 どこかの湖畔。

 糸が湖面を小走りに掻き回し、時に潜り込む。

 竿が大きくしなり、湖水を乱して飛沫をあげる。

 釣りは、生命の躍動と直接向き合わさせられる。

 魚に憎しみはなかった。

 むしろ、尊ぶべき対象であり、誇りうる相手といえる。

 これが人間同士の戦いになると憎しみが生まれ、軽蔑し謗り始める。

 戦争になれば、それまで利害関係のなかった者まで鬼畜扱いして無機質に殺し合う。

 地上最強の生物、人間が背負わなければならない間引き。

 人間を狩る生物でも現れない限り人間同士の殺し合いは終わらない。

 もっと違う価値観が生まれ、違う生き方をすべきともいえる。

 数十分と感じるような戦いののち。

 オーストラリア大陸で最も大きいと言われる淡水魚マレーコッドが釣り上げられる。

 「70cmだ♪」

 「すげぇ!」

 「刺身で食いてぇ」

 「虫がいるかもしれないから、焼いて食えだと」

 「・・・まぁ いいか」

 

 

 アデレード沖

 空母エセックス 飛行甲板

 アメリカ軍将校の監視のもと整備会社社員、清掃会社社員が仕事をしていた。

 戦闘能力の高い人間を維持するより、余程、安く上がる。

 赤レンガの住人たちが見学で甲板を歩きまわる。

 「アメリカ製は直線的で部品数が少ない、造りやすそうだな」

 「生産性と採算性が優先なんだろうな」

 「個艦性能じゃなく相手より多く建造してぶつけるって発想か」

 「良いねぇ。豪勢過ぎて気にいったよ」

 「いや、真似できねぇ」

 「国力次第だろう」

 「しかし、空母を預かったおかげで一気に戦後軍縮に入っちまったな」

 「志願制導入も容易で予算と人員削減の嵐か。おまんまの食い上げだな」

 「軍縮しないと国が傾くから早くしてくれだと」

 「しかし、軍縮も過ぎると元軍人の犯罪が増えるぜ、あいつら分別足りない」

 「土地があるからそれほどでもないだろう」

 「それに。駄目な奴は、しょっ引いて刑務所に入れてやるから削減して欲しいってよ」

 「冷てぇな」

 「世の中は冷たいもんだよ。元軍人ばかり特別扱いするわけにはいかないだろう」

 「5・15、2・26で特別扱いしたからおかしくなったな」

 「しかし、等閑にすると現役将兵の士気が低下するよ」

 「だからって、武器を手に政府脅迫して国権を奪うなんざ、最低ではある」

 「既得権だから命懸けで抵抗したいというのは分かるけどね」

 「もっとも、首相・摂政制度を執られたら、軍部もお手上げかな」

 「首相の独裁じゃないか」

 「首相は、官僚に対する人事権がないし、選挙で変わるのなら独裁とは言えないよ」

 「官僚の方が聖域を作っているから官僚独裁とは言えるけどね」

 「しかも加点制じゃなくて減点制だから失敗しなければいいや的な消極性もあるし」

 「加点制は積極的だけど、競争が激しくなり成否の差が膨れ上がる」

 「今回の豪州移民は、あり得ない方に積極的じゃないか」

 「軍部の独走も限界だったから・・・」

 「どうしようもなく追い詰められていたからね」

 「政治にげたを預けて、誰かのせいにして終わらせたかったと言えなくもない」

 「かくして、軍部は一連の国家存亡の諸問題を豪州引っ越しで有耶無耶にしましたとさ」

 「豪州引っ越しが失敗したら、そいつのせいにできるわけか」

 

 

 

 満州帝国滅亡。

 愛新覚羅溥儀 (あいしんかくら ふぎ) の退位が決まると満州帝国は滅んだ。

 そして、アメリカの信託統治が始まる。

 アメリカ信託統治領 満州・朝鮮・台湾では、英文と漢文の看板が所狭しと並び。

 アメリカ商品が店の棚に並ぶ。

 キリスト教が広まるとアメリカ資本投資が加速する。

 アメリカが満州帝国滅亡を急いだのは欧州の戦争が終結したこと、

 ソビエト共産主義の圧力が増大することを恐れたためと言えた。

 中国北東部の軍閥は、ソビエトを当てにできず。

 日本も撤収してしまったことからアメリカに擦り寄るほかなかった。

 

 

 朝鮮半島

 朝鮮人はファビョっていた。

 道路に横たわり、泣き叫びながら地団太を踏む。

 血だらけになりながら体を建物にぶつける。

 石で頭を叩く。

 多くの朝鮮人たちが荒れ狂い、あるいは呆然とたたずんでいた。

 日本が撤収すれば独立か、アメリカ国民かと思っていたのがアメリカの信託統治領。

 日本国国民だったのが、アメリカ信託統治領の領民に格下げ。

 朝鮮総督府の決定は、朝鮮全土を揺さぶる。

 朝鮮総督府を守るアメリカ軍の前に朝鮮人が押し寄せる

 「「「「ひ、酷いニダ〜!!!!!」」」」

 総督府の窓

 引き継ぎしている日本人たちが見下ろしていた。

 「むかしから、慟哭する国、咽び叫ぶ国と言われて来たけど、荒れてるね」

 「だって、信託統治領だもの」

 「まぁ 独立は早い。アメリカも朝鮮併合は厭だろうし、信託統治領は必然じゃないかな」

 「治まるかな」

 「泣けば済むってわけじゃないと思うけどな」

 「ちょっとだけ、かわいそうに思えてきたぞ」

 「でも、日本列島がアメリカに譲渡されるって聞いて喜んでたぞ」

 「でも、日本が豪州に移転していくと聞いたら思いっきり悔しがって、足を引っ張るし」

 「いまなら極東日本と豪州日本を制圧できるとか騒ぐし・・・」

 アメリカ職員がやってくる。

 「日本人。アレはなんだ?」

 ファビョって泣き叫びながら頭を地面に叩きつけている男を指さした。

 「ひ、火病かな。興奮するとああなる」

 「どんな病気だ?」

 「ん・・・風土病かな」

 「日本人もなるのか?」

 「いや、ほとんどないんじゃないかな。癇癪とは違うし」

 「き、危険な風土病だな。二次感染は?」

 「民族的なものじゃないかな。日本の医療は遅れてるから」

 「こりゃ 独立は見送りだな」

 

 

 

 冬季戦の間、ドイツ軍がソビエト軍陣地を侵食し、東部戦線に変化が訪れる。

 ソビエト軍は戦線が寸断され、冬季明け攻勢計画を根底から潰されてしまう。

 とはいえ、ソビエト戦車の方が寒冷地に強く、立ち上がりは早い。

 冬季明けとともにソビエト軍・T34戦車がドイツ軍に浸食された突出部に殺到する。

 MG42が迫るソビエト軍将兵を掃討し。

 パンツァーシュレックとパンツァーファウストがT34戦車を撃破していく。

 トーチカや塹壕の中のドイツ軍は迎撃しつつ後退。

 タイガー戦車の正面におびき寄せられたT34戦車の群れが撃破されていく。

 

 

 ドイツ第三帝国

 ベルリン、爆撃された廃墟の中。

 日本の建設業者がゴシック風建築物を再建していた。

 日本人は、一度要領を覚えるとマニュアル化してしまう。

 ドイツは、産業を支えるため言葉のわからない日本人を使う方が安心だった。

 日本人は、豪州で生存圏を確保、以前のような危急存亡の危機感がなく。

 ひどくゆったりと構えていた。

 そして、危機感の低さが停滞を生むのではないかと不安がられたり。

 余裕が別の可能性を模索すると思われたり。

 

 

 円盤型の機体が滑走路に着陸する。

 ヴォートXF5U戦闘機 愛称フライングパンケーキ。

 「この美的センスのない機体はモノになりそうかね?」

 「高い買い物だからモノにしないと元が取れないよ」

 「艦載機として使うならこいつでしょう」

 「しかし、これだけエンジンとプロペラを切り離して、よく振動を起こさないな」

 「さすがアメリカ」

 「問題はライセンス製造できるか、だけどね」

 「製造は?」

 「やっているけど、エンジン直結でプロペラを回さないから構造上の問題があるよ」

 「やっぱり、ここはドイツ製工作機械で・・・」

 「ドイツの水冷エンジンで、というのもありかも」

 「ジェットエンジンの方が流行りじゃないの」

 「ジェットエンジンは燃料消費で泣かされるからね」

 「そういえば、パイロットの飛行時間でも随分と泣かされたっけ」

 「もう、何千機も配備就役させられなくなるな」

 

 

 シンガポール港

 戦艦キングジョージ5世が入港する。

 艦橋

 「・・・6年しか経っていないのに東南アジアは別世界だな」

 「現地民の視線を見ろよ」

 「・・・軽んじられているな」

 「もう、白人の威厳は消し飛んだな」

 「日本人が管理してなければシンガポール入港も難しいとはな」

 「もう再占領は不可能、独立を認めるより手はない。オランダも諦めているよ」

 「やっぱり、豪州を奪われたことが大きいか」

 「奪われたというより日本列島と交換か、アメリカ領だし。大英帝国は大損だな」

 「ロスチャイルド系の利権は確保しているよ」

 「それにオーストラリアとニュージーランド人はイギリス人の意識の方が強い」

 「前向きに考えれば、極東の利権は、悪くないけどね。失ったモノが大き過ぎる」

 「アメリカは、満州・朝鮮・台湾を信託統治領にして本性を現している」

 「イギリスも利権の一部を得られるのだろう」

 「アメリカの極東政策にイギリスを追随させるためだろう」

 「まぁ 利益になるのなら悪くないさ」

 北半球のイギリス植民地は15年後に返還される。

 しかし、マレー半島もブルネイも独立させなければ治まらない。

 現地民の反発は強くマレーもシンガポールも独立を食い止められず。

 辛うじて香港がイギリス領として残りそうだった。

 

 

 

 京都(キャンベラ)

 取り敢えず豪州の新知名が付けられるか、オーストラリア時代の旧名称で届く。

 古い酒は、古い袋に入れ。

 新しい酒は、新しい袋に入れる。

 とはいえ、日本の古式ゆかしい伝統が失われていくのは惜しく。

 目新しいモノ好きな世代でさえ、伝統を持って行きたがる。

 とはいえ、この際、度量衡法、尺貫法を可能な限り、消したいと官僚は思ったりする。

 「バカか、貴様、ヤード・ポンドを無視して製品を作れるか!」

 「升、使わんで酒の商いができるか!!!」

 「お前の身長を言うてみぃ 寸を使わず服を作ってみぃ このボケが!!」

 「じゃかわしい、真珠は昔から匁じゃ タコ!!」

 「坪を使わんで田畑が売り買いできるか!」

 けんもほろろな目に遭いながら少しずつメートル法が定着していく。

 

 

 中国大陸

 戦後、南京陳公博政府、重慶蒋介石政府、蘭州毛沢東政府の三つ巴が続いていた。

 裏切り売国の外患で苦しむ南京陳公博政府は、親日のダーティイメージを払拭するため。

 中国民離反の内憂で苦しむ重慶蒋介石政府は不正腐敗を誤魔化すため

 南京陳公博政府と重慶蒋介石政府は統合政府を樹立する。

 しかし、ダーティイメージが薄まるとは限らず。

 逆に親日・不正腐敗のダブルダーティイメージが拡大。

 中国民衆の感情を逆撫で苦境に立たされる可能性もあった。

 とはいえ、現状でも不利な状況を抜け出そうと統合。

 そして、アメリカは満州・朝鮮・台湾を押さえると信託統治領化を進め。

 南京国民政府を支援していくと、火に油を注ぐように中国人の蜂起が拡大していく。

 蒋介石総統は中国民衆の離反を鎮圧し、強圧的な独裁政権と化していく。

 そして、蒋介石国民党と毛沢東共産党の内戦は激化していく。

 アメリカは、中国大陸赤化を恐れ、勢力を巻き返そうと投機を増やしていく。

 そして、極東日本の日本労働者は、外資系企業に吸収されつつ、生産力を上げていく。

 外資系Jpan州工場。

 「ずるいよな。満州帝国に反対していたからって、アメリカは信託統治領だぜ」

 「強いやつがやると誰も反対しないんだな」

 「弱者は悪い事をするな。法を守れが世の中だよ」

 「あはは・・・」

 「アメリカは、黒部にダムを建設するから人足を欲しがっているらしいよ」

 「そういうところに気が付くアメリカ人は、さすがに抜け目がない」

 「とりあえず。外貨を稼ぎながら移民していけばいいじゃないか」

 「軍事力は、国家基盤の上澄みだからね」

 「強国に付き合って国庫食い潰しちゃ駄目ってことだろう」

 「アメリカは余裕あるからな」

 「マネできると思うよ。日本はユーラシア大陸から離れた南太平洋の大国だから」

 「そうだった」

 

 

 

 北半球で白人世界が広がり。

 南半球に黄色人種の大国が生まれる。

 大国が大国として成功するため、必要な要素があった。

 政府・官僚・資本家・国民の規範。

 労力、資源、資本の集約。

 差別格差。

 そして、政府と国民が共有し糾合できる指針。

 動機は意思と行動を決める指針だった。

 動機は軽視できない要素だった。

 動機がなければ、人が死んでも、殺人でなく、過失致死になってしまう。

 極東時代の日本は遅れた後進国。列強の危機意識。無資源。貧しさ。

 いくつもの逆境が政府と国民を糾合させ、富国強兵の道を進ませた。

 それは、歪な精神構造となったものの日本を近代化させる。

 日本の国民糾合と近代化は、恐怖心、貧しさ、保身を糧としていた。

 京都 (キャンベラ)

 首相官邸

 閣僚たちが居並んでいた。

 国民学校の生徒たちの意見とか、目を通していたりする。

 「・・オーストラリアに富士山を持っていきたいです、か・・・」

 「ふ 目頭が熱くなるね」

 「富士山は無理だろう」

 「一応、入国とか、登山ができるようには計らってくれるらしいよ」

 「アメリカとは仲良くしたいものだ」

 「心の故郷を奪われたからね」

 「交換した。だろう」

 じぃ〜!!! × 多数  →  一人

 「・・・・・」

 「なんか、背徳というか、背信というか、郷土が懐かしいよ」

 「みんな、そう思っているんだから、もう言うな・・・」

 「独伊東欧を当てにして、豪州攻略したのが失敗」

 「豪州攻略戦で、航空戦力磨り潰して、砲身命数、弾薬を使い切ったから戦争にならんからね」

 「それは、それとして、前向きに考えようよ」

 「しかし、国民のデモクラシーを止める手立てはないような気もするが」

 「一度、権利やテリトリーを与えると命懸けで守ろうとしますからね。それこそ、国を滅ぼしても」

 「それは、軍国主義で懲りたよ」

 「問題は、必要な部署には予算が集まる。止めることはできないよ」

 「それは致し方ありません」

 「状況的にアメリカ合衆国より有利な気もするがね」

 「ええ、だからアメリカもモンロー主義で苦しんだ」

 「いまじゃ 13年後には日本列島を手に入れて、満州・朝鮮・台湾を信託統治領か・・・」

 「アメリカのモンロー主義は欧州に対してであって、それ以外には、積極的だったよ」

 「だが、ここまでとはね」

 「日本の真珠湾特攻がモンロー主義を吹き飛ばしたのが皮肉だけどね」

 「モンロー主義が悪いとは言えないよ。日本の江戸時代といえるものだ」

 「国民性の成熟期間とでも?」

 「いつの時代も自己同一性と自己改革が求められる」

 「矛盾する二つの要素が失われたとき個人も国家も破綻し滅亡するからね」

 「政治哲学ですか、形而上学ですか。我が儘な国民は付いてきませんよ」

 「日本民族はしおらしい方だよ。それでも有権者は実利的だからね」

 「まぁ わからない者には魔法のようなものだ」

 「しかし、統治側は知っておくべきだろう」

 「それで、しばらく内に籠もるので」

 「そうとばかりも言えない、日本は後進国だよ。認めたくない者は多いけどね」

 「自己満足に浸ると成長も止まりますからね」

 「取り敢えず豪州日本への移転は13年先。アメリカ資本の極東日本への投資も始まっている」

 「せいぜい、ノウハウを吸収しながら豪州日本で花を咲かせようじゃないか」

 「それはそうとして外圧と危機感がないと国民は、利己主義でバラバラになるのではないか」

 「では、日本は後進国と認め数値的に正確な情報を公開してはどうです?」

 「まぁ 身の丈を知っても構うまい」

 「後進国と認識されても、これだけ国土が広ければ慰められるよ」

 「確かに」

 「あとアメリカ機動部隊の強大さだろうな。国民に見学させるべきであろう」

 「まぁ アメリカに勝てないことが分かれば祖国の極東日本を捨てた正当性にもなる」

 「あとは三井、三菱、住友の財閥を拡大させるか、新規財閥を育てるか・・・」

 「野心的な者は社会資本を欲しますよ」

 「日本人の創業能力は期待できるのかね」

 「アメリカ人は学生の頃からマネージメント教育されて採算性に聡いから負けると思うよ」

 「親方日の丸で積極財政が安心」

 「新規独立起業は、社会基盤を大きくしてからの方が良いと思うよ」

 「そ、それはそうとして、城郭神社仏閣は、どうする?」

 「選挙じゃ 命取りになるよ」

 「そりゃ 期待していた城郭神社仏閣が来ないとなると有権者が怖いからね」

 「国益とか、利権とか。有権者以外の要素も、あるんだけどね・・・」

 「もう少し、軍国主義でやれば・・・」

 「いや、それはまずい」

 「まぁ なぁなぁで分かってくれるよ」

 「国民は、事勿れだし、長いモノに巻かれるし、村八分を恐れて臆病だし」

 「その甘え体質も、大国日本で通用すれば良いけどね」

 「長年培ってきた気質だから・・・」

 「だと良いけど、国民も軍国主義に思うところがあると思うよ」

 「まぁ 済んだことだし、軍事費は、縮小だよ」

 「だけど豊かになるのは良いとしても、豊かな人間は働くかな・・・」

 「やっぱ、生かさず殺さずで働かないと生きていけない世界じゃないと」

 「労働者は過労死寸前まで追い詰めないと近代化しないような気もするよ」

 「取り敢えずさ、積極財政するとして、人権を拡大して社会資本も少し増やした方が良いよ」

 「「「「んん・・・・」」」」

 

 

 極東日本 Jpan

 東京 第一生命相互ビル アメリカ新州移転機構

 英語で書かれた地図が発行されていた。

 欧米の地図は “通り” が住所の要。幹に付いている葉が家という発想と言える。

 日本で発行されている地図は、丁・目など “面” で書き記されていた。

 「南樺太、北海道、本州、九州、四国、南洋州の日本人は移転していくので問題ないようです」

 「問題は、朝鮮人、台湾人か、一緒に豪州に連れていけばいいものを・・・」

 「とりあえず。満州と朝鮮を信託統治領化して、その後、独立かな」

 「まぁ 最大限利権を確保して独立させるのが妥当だろうな」

 「いっそのこと満州帝国と朝鮮半島を一緒にしてはどうですかね」

 「んん・・・国は大きくなるが朝鮮民族と漢民族を同居させた方が独立できなくなるだろうな」

 「それか、朝鮮民族と台湾族を満州帝国側に押しやってしまうとか」

 「んん・・・まぁ それが一番良いような気もするがね」

 「そういえば、オーストラリア人、ニュージーランド人は、イギリスの権益を誘導させています」

 「イギリスも北半球利権を維持しようと必死なのだろう」

 「いまのところ豪州移民者が圧倒的に多い。イギリス権益の誘導を防ぐのは賢明ではないよ」

 「痛し痒しか・・・」

 日本列島がアメリカの州になる事は決まっていた。

 イギリスも豪州を失って癪らしく、極東日本の利権を最大限に拡張させようと画策。

 イギリス-カナダ-極東日本・アメリカ信託統治領と北半球利権ラインを確保してしまう。

 とはいえ、現地。

 アメリカ人は欲に駆られ、

 日本人、オーストラリア人、ニュージーランド人は諦めていた。

 白人と日本人が疎遠でありながら、適度な距離を保ち行き来する。

 既に決まったことであり、新天地での待遇を少しでも良くするために働く。

 そう、引っ越しに先立つもの、金がいる。

 出雲大社

 宮司たちと手伝いの者たちが涙ぐみながら神迎祭の準備を進める。

 「どうしても、移籍せねばならんのかのう」

 「地脈の専門家が引き抜かれる前に、手を売った方が・・・」

 「ほんに、困ったことじゃ」

 「戦争に負けても出雲の地に居たかったの・・・」

 「そうじゃ そうじゃ 日本に居られるなら、豹変した朝鮮人に襲撃されても我慢したわい」

 「それに林業、やっているからホンに辛いわ」

 「杉は豪州に持って行けないからの」

 「木に登って枝を切って、長々と育ててきたのにの」

 「オーストラリアの若い衆は、仕事を覚えているのか」

 「ああ、どっかの外資系に雇われた連中じゃ、恐々と登ろうとしとるよ」

 「鬼畜のくせに木も昇れんか」

 「鬼畜じゃなかったのじゃろ」

 「また、豪州で杉を植えんといかんのかの」

 「でも、豪州は墓の移籍場所に困らないそうですよ」

 「まぁ 広いからの」

 「砂漠が多いらしいぞ」

 「困ったのぉ」

 「それで、わたしに出雲移転先候補を見てこいと?」

 「次はお主だからの」 はぁ〜

 「そうですね。やはり、オーストラリアより、ニュージーランドの方が良いと?」

 「オーストラリアでも良い場所があれば、そこで良い」

 「しかし、良く見て回ってくれ、木っ端役人は三倍の敷地面積でも良いと言ったからの」

 「はい」

 「小作人どもは目の色を変えて喜んどる。反対すると簀巻きにされそうじゃ」

 「はぁ 情けない事になったの、もう軍には協力してやらん」

 「ですが日本は、豊かになれるのでは?」

 「・・・そう思わんと豪州になんか行けないだろうな」 ため息

 国民感情を無視した政策は井戸の中の蛙と言われても押し通せるものではない。

 現状を越えられる可能性がなければ人は動かない。

 苦肉の策でも日本が置かれていた問題の多くを解決してしまう。

 そして、新たな問題も抱え込む。

 それらの多くはモラルさえ保てれば克服し得るレベルと言えた。

 

 

 

 軍縮の産物は天下りではなく、局外人事移動も行われる。

 各省官庁とも元軍属官僚を揃えて、それなりな陣容を揃えていく。

 某官僚たちの集会 “先進国は上下水道” 垂れ幕があり気勢が上がる。

 それまで顧みられず、歯牙にもかけられなかった部署。

 「日本の夜明けは、上下水道にあ〜る!!!」

 「いまどき、汲み取り〜? 恥ずかしゅうて生きていけんわ」

 「「「「「おお〜!!!!」」」」」

 「これからは、軍隊なんぞ、いら〜ん!!!」

 「「「「「おおお〜!!!!」」」」」

 「番犬は余計に吠えるな!!!」

 「「「「「おおお〜!!!!」」」」」

 「他省を全て敵と思え!!!」

 「「「「「おおお〜!!!!」」」」」

 「俺について来い!」

 「「「「「はい、辻局長。ついてきます!!!!」」」」」

 「日本上下水道完備〜!」

 「「「「「えいえい、おー!!」」」」」 

 「日本上下水道完備〜!!」

 「「「「「えいえい、おー!!!」」」」」  

 「日本上下水道完備〜!!!」

 「「「「「えいえい、おー!!!!」」」」」 

 元軍属は、あっさりと趣旨を変えて国運を賭けるかのようなモノ言い。

 草葉の陰から刃を研ぐ音が聞こえる気もする。

 とはいえ、根回しが進むと日本人の多くは英霊に引き摺りこまれ、苦しめられることを拒む。

 生きている者は、そんなに強いわけでなく、陰口叩いたり、苦笑いするだけで事勿れ。

 長いモノに巻かれるのが社会の処世術だった。

 

 

 ワシントン 白い家

 「極東Jpanへの投資は?」

 「イギリスのロスチャイルド系と住み分けは終わったようです」

 「ロックフェラー、ヴァンダービルト、 モルガン、アスターも極東Jpan需要で浮足立っている」

 「日本の基幹産業は、アメリカ資本が買い取りか、ドル箱だな」

 「そのために日本と講和したようなもですから」

 「日本は、購入代金で豪州日本に基幹産業の建設と設備投資をしているようですが・・・」

 「アメリカは旧式で日本が新規か、不利では?」

 「日本人の移転を急がせた方がアメリカの利権に繋がりますからね」

 「オーストラリア人、ニュージーランド人は比較的イギリス寄りです」

 「多少、極東Jpanにロスチャイルドに食い込まれても、しょうがないといえるな」

 「どちらにしろ、軍事費を押さえてJpan開発が優先だろうな」

 「信託統治領の満州・朝鮮・台湾もドル箱ですよ」

 「中国民衆の反発は、それなりのようだ。不買運動には至らない」

 「買う相手がアメリカだけだからな」

 「一応、メイド・イン・ジャパンもあるよ」

 「アメリカ資本だけどね。反発が大きいと困る」

 「まぁ 最終的には独立させるべきだろうが、それでも英語圏にしたいものだ」

 「ですが信託統治領は、識字率を減らしたいですな」

 「確かに・・・」

 「問題は、アメリカ国内でしょうね」

 「ナチモドキのUSA in USAと有色人種を糾合している黒の騎士団の台頭が激しい」

 「ドイツとイタリアの工作員の置き土産か」

 「中核メンバーに対する情報を得ていますが既に組織として自立しています」

 「USA in USAと黒の騎士団をぶつけて相殺させよう」

 「あまり放置すると合衆国の治安が失われます」

 「可能な限りコントロールしてくれ」

 「はい」

 

 

 中国

 国民軍は、大戦で余ったアメリカ製装備を供給され戦力を立て直していく。

 共産軍は、中国民衆を糾合させている。

 両勢力の戦いは混迷する。

 国民軍は裏切り続発。共産軍も乏しい武器しかなく士気が低下していく。

 日本商船が揚子江を登って行く。

 積荷が降ろされ、そのブツが中国へと引き渡された。

 口輪が切られるとクロコダイルは勢いよく池に入り込んでいく。

 「随分、購入されましたね」

 「食用ある」

 「ワニの食用だと経費がかかり過ぎるのでは?」

 「心配ないある。上等な餌が来るある」

 トラックに載せられたモノがゴロゴロと池に落とされていく。

 「!? いっ!」 退き〜

 クロコダイルがそのモノを食べ始める。

 「そのままだとアメリカ人が退くある。こうやってワンクッション置くある♪」

 「な、なるほど・・・」

 「そのうち、から揚げにして日本に輸出ある♪」

 「い、いや、日本は、食糧輸出国側でして・・・」 ほっ

 東洋の偉大な反面大国。勘違い大国は健在だった。

 

 

 もう一つの勘違い国家、豪州日本

 XF5Uフライング・パンケーキと呼ばれる機体が飛行場に並び始める。

 ボート社と契約していた50機が搬入されていた。

 プロペラ機で高性能でもジェット機が飛ぶ世界では、時代遅れの観があった。

 時代遅れと後ろ指さされながらもライセンス生産も進んでいく。

 戦雲低い南太平洋豪州だと高性能機であるより、維持費を含めた総合力が求められた。

 結果的にMe262は、後回しにされ、フライング・パンケーキが滑走路に並ぶ。

 十数メートルの滑走でふわりと浮かび、上昇していく。

 「満載でこれかよ。いつ見ても凄げぇ〜」

 「ジェット機の時代なんだけどな」

 「しかし、平和になると人件費が増える。性能が増せば単価が高くなる」

 「配備できる機体も減っていく」

 「まぁ 良いだろう。機動部隊も喜んでいるし。ジェット機はちょっと不安だし」

 「俺はアオカエルの外見が気に入らないぞ」

 「それくらい我慢しろよ」

 「志願制はな。外見が命なんだぞ」

 「いいよ、大和、武蔵に離着艦できるのならね」

 

 

 “新” 東京 (シドニー)

 修理・改装が終わった大和、武蔵が停泊していた。

 68000トン、全長270m×全幅38m×吃水10m、

 143000馬力、27ノット、16/20000海里、乗員2800。

 45口径410mm3連装2基、71口径88mm連装砲50基、

 XF5Uフライング・パンケーキ30機

 艦尾側 航空管制艦橋

 「ちっ! 連合艦隊の旗艦が、こんな隅っこで・・・」

 「捕鯨船団の邪魔をしたら怒られるよ」

 「早く “新” 仙台 (アデレード) に行きたいよ」

 「一応、修理改装が終わったという事で、お目見えしたいのだと」

 「なにがお目見えだ。長門、陸奥の予備艦砲なんて泣きたくなるよ」

 「命数尽きたらドイツ製47口径381mm砲、イタリア製50口径381mm砲。あと45口径356mm砲もある」

 「大砲の時代じゃないけど手抜きじゃないか」

 「大砲で手抜きしても良いけどアオガエルの定数は、いつ揃う?」

 「後回しじゃないか、いまのところ3機」

 「それ、弱い戦艦ということだよな」

 「あはは・・」

 「ん? 妙高はどこに行くんだ?」

 「独立したインドに挨拶だって」

 「そうえば、近くなるのか」

 「外交政策も変わっていくんだろうな」

 「楽になると思うよ」

 「・・・来た」

 「着艦許可を求めています」

 「着艦を許可する」

 「んん・・・しかし、もうちょっと形がな・・・」

 「しょうがないよ」

 艦載機の着艦は独特の緊張感が漂う。

 「「「・・・・・・」」」

 「すげぇ〜 本当に着艦しやがった」

 「停泊しているのに・・・」

 

 

 極東日本譲渡で保証金代わりの安全保障M4戦車が並ぶ、

 戦車は、空母と違い譲渡であり、維持費がかかる。

 志願制に移行すると兵員が減少し戦車密度は高くなっていく。

 整然と並ぶ将兵とM4戦車。

 動機がある志願兵は意欲が高くなる。

 戦中を生き残った歴戦ばかりで編成された部隊は勇ましく見えた。

 とはいえ、年間の経費が決まっており、1日に使える経費が決まる。

 当然、一日に使える燃料と走行距離も、使う弾薬数も決まっていた。

 操縦者の仕事は、稼働状態を維持するため一日一度、少しだけ動かす。

 小銃弾でさえ、滅多に撃てない。

 というわけで、教室で戦略・戦術の勉強をしたり、装備品をバラしたり、組み立てたり。

 基礎体力向上がほとんど。

 赤レンガの住人たち

 「M4戦車の時代じゃないんだけどね」

 「訓練もね」

 「訓練か、結局、燃料と弾をいくら使った、だからね・・・」

 「師団潰して少数精鋭の大隊を造ろうぜ」

 「大隊なら4倍の高密度兵装で20倍の燃料と弾薬で訓練できるか・・・」

 「最強の将兵を集めた大隊か、夢だな」

 「だけど最強の兵装を装備させた少数精鋭の大隊でも800人弱。師団には勝てないよ」

 「少数精鋭部隊は別の使い方をするからね」

 「アメリカは、もっと戦車が欲しいなら売ってくれるらしいよ」

 「いらない。その分で給与を上げて欲しい」

 「やっぱ、先立つものは金だよな」

 「そうそう、衣食住揃って国防だよ」

 「国民は衣食住揃えられないような国は潰れてしまえって思うからね」

 「でもねぇ 国民に媚びても良いことないよ」

 「婦人参政権は引っ越し後、衆議院だけだから媚びているわけじゃないよ」

 「でも確実に肩身が狭くなるな」

 「先進国は、婦人参政権を認めているし、しょうがないよ」

 

 

 インド ムンバイ港

 独立したばかりのインドは、ヒンズー教徒とイスラム教徒の間で諍いを起こしていた。

 日本の外交使節団が巡洋艦妙高のタラップを降りて行く。

 「バラモンを頂点とするピラミッド構造か。血統で人生が決まってしまうんだな」

 「日本もむかしは、士農工商だったよ。明治維新後は、藩閥、門閥、族籍・・・」

 「固定しないで曖昧にしているだけだよ」

 「日本も血統的な権益圏を有している門閥は歴然として残っているよ。つまり血統で人生が決まる」

 「上層部だけで、そんなに多くないだろう」

 「財閥系の三井、三菱、住友」

 「華族系の有力者。薩摩、長州の官僚。各県庁の豪族系くらいだ」

 「あとは、閨閥を実力者、優良官僚を組み込み補完しながら血縁で上層階層を構築していく」

 「豪州移転で有力者は、賃貸家屋、小作人を失っている。支配権縮小じゃないのか?」

 「代わりに国債を貰っているはずだよ。そうでなければ門閥族は良しとしなかった」

 「国債ね・・・」

 「バカにしたものじゃないよ。税金を払わずに金利を得られる。豪州移転で将来性も高い」

 「まぁ 庶民でも努力すれば何とかなるレベルだろう」

 「生まれながら贔屓されるからね。教育費が高騰しない事を願うね」

 「どうかな、教育費も高騰させて差を拡大するんじゃないか」

 「ったく、上層部がちょっと優位な状況を作ろうとするだけで、下々は瀕死か」

 「そういうもんだろう」

 「しかし、インドのカースト制に比べればかわいいものだ」

 「とりあえず。交渉をまとめてテリトリーを作っちまおうぜ」

 「老後安定組合だな。定年後は貿易関係企業に天下り」

 「それだって、せいぜい3代くらいの生存権を確保するくらいだよ」

 「慎ましいな官僚って」

 

 妙高 艦橋

 「あつ〜い!」

 「暑いから争っているんじゃないか」

 「崇高な宗教がイライラの捌け口で殺し合いに発展じゃな」

 「世の中、仲間をたくさん作ってテリトリーの奪い合いだからね。孤立すると負け犬になる」

 「組織同士だって離合集散だろう。ヒンズーとイスラムだからって無理に戦わなくても・・・」

 「内紛がある方が優位性を確保できるらしいよ」

 「優位性ねぇ」

 「豪州日本とインド、中国は、ほぼ同距離、良い市場になるらしいよ」

 「インドはともかく、中国は、アメリカ側だろう」

 「そういえば、日本列島で中国のほとんどとソビエトも押さえられるんだ」

 「んん・・・今更ながら気付く日本の地理的優位性」

 「アメリカがあっさり講和に応じるわけだ」

 

 

 

 欧州

 独伊東欧諸国とソビエト連邦ともに限界に達していた。

 両陣営に戦略物資を輸出して儲けているのは日本だけ。

 アメリカとイギリスは、講和条約上、どちらも支援できず、うまみがなかった。

 というわけで、水面下で講和が進む。

 第一次スウェーデン、ストックホルム。

 第二次トルコ、イスタンブール

 第三次スウェーデン ストックホルム。

 第四次トルコ、イスタンブール

 非公式な会談が行われていく。

 兵力数で少ない独伊東欧軍は、殺す人間が必然的に多くなる。

 大戦果を上げていながら深刻な問題として膨れ上がっていく。

 正常でない将兵はともかく。

 正常な将兵は人殺しが飽きていた。

 一方、ソビエト連邦は、いくら死のうと構わなかった。

 しかし、極東を足場に力を付けているアメリカが気がかりでならない。

 米独に挟撃されれば、ソビエト連邦に勝ち目などない。

 「人は復讐、糧を得るため、障害を排除するため、生きていくために人を殺す場合がある」

 「しかし、人は人を殺すためには生きられないものだ」

 「人を戦争に駆り立てるような政策は長続きしないでしょう」

 「我々は、文明人として紳士的な歩み寄りをすべきではないでしょうか?」

 ホスト国の杓子定規で社交辞令、ありがちな平和主義も、少しだけ有難味が増す。

 このまま戦争してもドイツもソ連も損するだけ。

 問題は利害の線引き。

 いや、それを決めるための戦争と言えた。

 独伊東欧諸国とソビエト連邦の両国は、限界に達し。

 12月24日クリスマス・イブに講和を結ぶ。

 

 

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 引っ越しで大混乱というか、いろんな意味で涙目。

 豪州日本の国力はどの程度でしょう。

 まず面積

 アメリカ合衆国   9,631,420 + 極東日本377,835 + 南樺太

 豪州日本  大和 7,686,850 + 瑞穂・秋津268,680

 とっても広くなりました。

 でも面積に対する人口比も考えもの、均等に広がると近代化で失速します。

 労力、資本、資源の集約で近代化ですから、人口もオーストラリア東岸に集中します。

 1948年の日本の総人口7600万は、1900年頃のアメリカの総人口とほぼ同じ。

 とはいえ、1948年の時代的な技術の向上が加算されます。

 設備投資も進めなくては駄目で、それにも国力が削がれていきます。

 警戒すべきアメリカは、満州・朝鮮・台湾を信託統治領にして、中国大陸にも手を出して大忙し。

 豪州日本は、安全な気がします。

 

 

 南太平洋波低し

 引っ越しまであと13年。

 戦前戦中の高速艦は、ディーゼル・電気推進に換装して哨戒艦に改造されていきます。

 兵装が減らされ人員も削減されていきます。

 

 

日本連邦
オーストラリア (大和) 北ニュージーランド (瑞穂)
ブリズベン 広島 オークランド 旭川
シドニー 東京 ハミルトン 札幌
    ウェリントン 函館
キャンベラ 京都    
メルボルン 大阪 南ニュージーランド (秋津)
アデレード 仙台 クライストチャーチ 高松
    ダニーディン 高知
パース 福岡    
    信託統治領
ダーウィン 沖縄 ポートモレスビー ポートモレスビー
    ラバウル ラバウル
タスマニア (八島)    
ホバート 豊原    
       

  

 

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第07話 1947年 『いらない子たち』

第08話 1948年 『南太平洋波低し』

第09話 1949年 『日本人なら温泉』