第14話 1954年 『盆栽が・・・盆栽が・・・』
豪州日本
大陸の3分の2を占める中部、西部の砂漠の年降水量は250mm。
北部・北東沿岸地域の年降水量は1500mm弱。
大和大陸の緑化は、いろんな計画が持ち上がって、失速していく。
失速の理由は、予算、能力不足、無理解、前例がない・・・・
あと、利害が絡んで総論賛成各論反対。
権謀術数であいつを出世させたくない等々。
積極財政で乗り切りたいと思っても達成と回収まで年月を要すると財政破綻する。
とはいえ、世界で最も渇いた大和大陸にも熱帯雨林気候があった。
ヨーク岬半島がそれであり、半島面積ランキングで朝鮮半島に次ぐ、
年間降水量は2500mmを超えることもあり、朝から土砂降りの雨が延々と続いていた。
「・・・ここに幅15kmくらいで1000m級の山を逆U型に山を造成して森林を作り保水」
「人工的に川を南に流せば大河を造れるかも知れないな」
「ニューギニアから水を輸送する方が割安な気がするぞ」
「一度作ってしまえば、割安じゃないか。ニューギニアに依存しなくていいし」
「どの道、掘削で運河も建設しないとな」
「海岸側に流れないように塞き止めて、内陸側に誘導するだけでも、相当な水量になるがね」
「そうだな全長2000km以上の壁が必要かな。あとは、周囲から埋め立てて森林を作れば・・・」
「海側が養分不足で痩せないか?」
「大和大陸に養土があるものか、みんな流れてるよ」
「ニューギニアの川があるから、そんなに痩せないだろう」
「それもそうかな・・・」
結局、その場繋ぎの小手先で、やり繰りしながら水を補給していく。
実のところ、産業を興そうにも水源を確保しなければ何もできないどころか。
「盆栽が・・盆栽が・・盆栽が・・・」
「おじいちゃん、飲み水を盆栽にやっちゃ駄目ですよ」
「あ・・ああ・・・盆栽が・・・」
海水の塩分濃度は3.5パーセント。
飲料水は塩分濃度0.05パーセント以下が求められ、
日本の飲料水の塩分濃度は0.01パーセント以下が普通だった。
水は、生命活動から、あらゆる産業分野で絡み、
不足であれば、産業全体を抑制する。
この頃、水分を摂取しないと人は死ぬと日本人の大半が再認識する。
淡水プラントは2種類に大別されていた。
一つは、減圧蒸留法。
水不足のため海岸から海水が汲み上げられ、
水送管で内陸の製鉄所や火力発電所にまで運ばれる、
熱で海水を蒸発させ、冷却しながら水分だけ取り出して淡水化。
大量の熱源を利用するため製鉄所・火力発電所に併設されやすく。
同時に塩も生産できた。
もう一つは、研究段階で逆浸透膜で水分子だけを押し出すというもの。
“新” 京都 (キャンベラ)
「石炭があって良かったよ。燃料を燃やして大規模な淡水化プラントを作れる」
「水を作るのに燃料を燃やすなんて・・・」
日本であれば飲料水を燃やしてでも燃料を欲したため内心は複雑だった。
発想の転換が求められた。
「製鉄所とか、発電所に併設すれば良いだろう」
「どうせ、水を冷却に使わないといけないのだから」
「本当は海水より、水が良いんだけどね」
「間接的になら使えるよ。どうせ海水を気化させないと淡水化できないのだから」
「濾過用の木炭も欲しいよ」
「木が少ないからな」
日本信託統治領ラバウル
アメリカが残した軍事施設は、そのまま開発の拠点として利用できた。
区画整備が進むにつれ、田畑が広げられ、日本人の入植が進む。
水の心配がなく、振り分けられた土地は、豪州・瑞穂・秋津より大きい。
極東日本で制作された合板が組み上げられていくと3DK程度の家屋になった。
後は、広い土地に自分で増築していくことも出来た。
蒸し暑いサウナのような環境、未開の熱帯雨林である労苦は大和大陸と真逆。
服を脱いで絞ると汗水が滴り落ちる。
「水っ気をどうにかしてもらわないと・・・」
「高原の方に行きたいな。涼しくて、温泉があるらしよ」
「ふ この水っ気を大和大陸にくれてやりたいよ」
「トレス海峡に海底トンネルを掘って、強制的に水を送るって聞いたけど」
「いつになるんだよ」
「さぁ だけど、問題は、人食い人種だな。何とかしないと」
「いまは、人食い人種とそうじゃない部族を調べているだろう」
「まったく・・・安心して、道を歩けないよ」
豪州日本
共通する移民の労苦が私利私欲な寡頭権力の台頭を防ぎ、公平感を保っていた。
アメリカ資本家たちと日本人の有力者
「日本人もアメリカ信託統治領に少し投資したらどうだい」
「んん、回収率が良さそうだけど聖書じゃ “子供の食べ物を犬にやってはいけない” っていうし」
「利殖分を回せばいよ。安定収入」
「確かにアメリカの信託統治領と中国大陸でやっている事は芸術だね。惚れ惚れするよ」
「常に国民を借金状態にして借金を背負わせ働かせ、国家成長の足しにすべきだよ」
「大切なのは、国民が借金した時にお札を刷るんだ」
「お金は人を働かせ社会システムを維持させるために存在する」
「両陣営に武器弾薬を輸出するだろう」
「恐怖心を煽り、保身を強制して需要を起こせるからね」
「両陣営をちょっと煽れば、一発で借用書にサインする」
『本当に国家の成長なのか?』
『お前らの利権じゃないのか?』
「豪州も、このまま、農家と漁業組合同士の自給自足の地域コミュニティが作られると困るよ」
「そうだよ。政府の貨幣価値支配から国民が逃れてしまうだろう。手綱を締めるべきだよ」
「人間は怠惰で傲慢だからね」
「農業と漁業で、自給自足なんてやってたら、日本は後進国に戻っちゃうぞ」
「最高なのは株投資を煽って高騰させるんだよ」
「そして、分からないように他人に株を少しずつ押し付け売り払って、現金を溜めるんだ」
「そして、株が最高値になったとき、貨幣の供給を止める!」
「大恐慌になったとき、金を持っているのは、本当の資本家たちだろう」
「邪魔な新興勢力を一掃できる」
「政府を弱体化させてコントロール下に置くんだよ」
「な、なるほど・・・しかし、日本は貨幣を国が扱っているから・・・」
「政府から造幣の権利を奪っちゃえよ」
アメリカの連邦準備制度理事会FRB(造幣局)は、民間銀行の集まりだった。
「金の力で権力を奪って世界を支配していくんだよ。だから日本でもやろうよ」
「い、いや、そこまでは、ちょっと、ほら、まだ政府は、国民のための政府だから・・・」 汗々
「人工的に産業を成長させられるし。好きな時に生殺与奪権を奪える、儲かるのに・・・」
「そうだよ。政府と国民から財力を吸い上げて、余剰資本一杯なら開発費も一杯」
「い、いや、遠慮しておくよ」
「ったくぅ 日本人は、相変わらず保守的だな。だから産業の伸びが、いま一つなんだよ」
「あは、あは・・・あははは・・・」
「むかしの軍部は、軍拡まっしぐらだったのに・・・」
「そうそう、金を出すからって言ったら、ちょっと渋ったけどさ。どうせ借金払うの国民だし」
「分かんないうちにやっちゃいなよ。省も大きくなるし、産業も大きくなるし、手柄になるよ」
「うんうん、お金、貸してあげるよ。僕らのコミュニティにも入れてあげるし」
「あは、あは・・・あははは・・・」
「それとも日本・豪州交換のような。未知の経済システムを考えてるのかな?」
「そういう、びっくり箱があるのなら、是非、我々を驚かせてもらたいね」
「事の是非はともかく、日本豪州交換は、久しぶりに手応えを感じたよ」
「うんうん、忘れられない刺激だったな。我々は、世界と人生に退屈していたからね」
「ほんと、楽しませてくれたよ」
「あは、あは・・・あははは・・・」
大規模農法は、少数の生産者と多数の消費者を生んだ。
それが企業農法でも中間管理者が増え、貧富の格差は広がる。
ピラミッド構造は、政府が管理がしやすく。
富裕層も余剰資本が増えれば新規開発も容易になった。
これだと、高度な社会が構築できる反面。
自給率の低い消費者は生殺与奪権を奪われていく、
有力者が余計に贅沢を求めると物価が高騰し、生活苦を押し付けられていく。
無論、囲い込みは、他産業への転向が見込め、
産業は労働力を得られやすく、望ましいと言えた。
しかし、小作人は約束通り、土地を所有し私財を求める。
この公私財の比率。
そして、貧富の分布は、頭の良い心根不明な官僚の舵取りに委ねられていた。
主人の田畑を管理し、間引きの取捨選択するのが官僚の仕事だったりする。
もちろん、土地を分配した小作人たちも純朴、善良とは限らない。
彼らも貧しいながら組織を構築し、特権を確保しようと試みる、
異業種からの農民転向を防止させる排他的な素振りを見せた。
つまり、新規参入を恐れ、新参者の成功を妬み、未然に防ごうとする。
他者を成功を排斥することで己の利権を自衛し、組織拡大を妨害したり。
他者を攻撃すること地位を確保し、いつの間にか組織を縮小させたり破壊したり。
自己防衛本能が強過ぎる、癌のような人間は、どこにでもいた。
強者だけでなく弱者も後進のライバル排斥するのであり、
自然な行動であり、貧富に関係なく同類といえた。
八島(タスマニア)の面積は60637ku。
北海道78073ku。樺太76400kuより小さく。
九州36555ku。台湾35801ku。四国18780kuより大きい。
「こっち側は、雨量があるのか、壮大な原生林だねぇ 見事」
「やっぱり、起伏が大きい方が保水が利く、水資源が得られやすいか」
「水資源は豊富だけど、自然は手を付けたくないな」
「でも、日本の人口9000万行っちゃうよ。手をつけないと・・・」
「出来れば自然は残したまま、ステップ地帯の緑化が良いんだけどねぇ」
「それには、水を何とかしないと」
「大和大陸で起伏を作ればいんだけど。せめて、3000m級の山」
「最近なぁ、火山帯とか地震が妙にありがたく感じるよ」
「瑞穂と秋津。ニュージーランドは火山帯だぞ」
「どっちも、山と水があるね。エジプト人がピラミッドを造ったのは保水目的かと思うほどだよ」
「高さが150mくらいじゃ足りねぇ。それに造成した山だと、その高さが限界かな」
「ヨーク岬の半島の海岸を塞き止めて、内陸側に流す計画もあるらしいけど」
「ん・・・運河を削って、高低差を大きくできれば、そっちが良いかな」
ソビエトは反乱分子を強制収容所に送り、
国家の生き残りを賭けて国内資源開発を強行する。
「同志フルシチョフ。共産主義の浸透費と軍事費が増えてないようですが?」
「独伊東欧同盟に東欧を奪われ、極東もアメリカに押さえられた」
「南が残っているではありませんか」
「南に手を出している間にモスクワを占領されてしまう」
「シベリアを開拓して国力を増強させるべきだろう。戦車より土木建設機械、掘削機械だ」
「それにこれ以上、アメリカに供給された工作機械を軍事に使えば資源開発と国内経済が低下する」
ソビエトはアメリカとドイツに挟撃され、軍縮と引き籠りに移行し始めていた。
そして、ソビエト5カ年計画経済を延命させ、国内経済を回復させていく。
ヴォートXF5U フライングパンケーキ | |||||||
hp | 重量 | 全長×全幅×全高 | 翼面積 | 最大速度 | 航続距離 | 武装 | ミ・爆 |
1350×2 | 5958kg/7600/8533 | 8.73×9.91×4.50 | 44.2 | 775km/h | 1703km | 12.7mm×6 | 900kg |
アオガエルの編隊が豪州日本上空を飛ぶ。
軍縮中の日本軍でできる事は少ない。
軍拡の手の内を知っている元軍部、OBが敵となって監視していて抜け道がなかった。
その筋の者と関係が断たれ、5・15事件、2・26事件のような事件は未然に押さえ込まれる。
国防省は、涙ぐましくも慎ましい誤魔化しで満足し、
維持費の上澄みを兵器改良に回すなどで溜飲を下げていた。
奇天烈な機体が短い滑走でフワリと浮き、上昇していく。
機体底面が広く、揚力が大きいため、パイロットに安心感を与える。
一旦、浮き上がると逆風が強い時は、対気速度の関係でバックすることもあった。
国防省も、いい加減、かっこいいネーミングを募集したらしい。
しかし、アオガエルが定着して、正式名称を使う者はほとんどいない。
「何度見ても主力機とは思えんな」
「トランジスターのおかげで双発エンジンの同調性は良くなった」
「射線も安定するだろう」
「元々、機構的に良かっただろう」
「それでも安心だよ。機体の両端にプロペラだからね」
「アメリカは、ジェット戦闘機なんだろう」
「思ったより進んでいないらしい」
「ドイツは既にMeP1110を配備して、新型戦闘機の開発に入っているらしいよ」
MeP1110の情報は少なかった。
全長10.36m×全幅8.25m 速度1015km/h 30mm機関砲×3・・・
「アメリカがようやくF86セイバーを開発したらしいから、世代が一つ違うような気がするな」
「だけど、メッサーシュミット社は小型で発展性に欠けるよ」
「フォッケウルフのTa283は、少し大型で全長は13mらしい、レーダー装備かもしれないな」
「豪州日本は、そのアメリカのF86セイバーより一世代遅れているじゃないか」
「ドイツが新型機を開発できたら、旧式機を売って欲しいものだ」
「どうだろうな。ジェットエンジンの寿命が短いらしいよ」
「時速2000km出したのは本当かな?」
「音速を超えると高々度を飛んでも表面温度が高熱になるらしいよ」
「日本も、いい加減にジェット戦闘機を飛ばそうよ」
「だよねぇ」
アオガエルが軽快に飛んで行く。
いずれ、エンジンが強化され、機体も大きくなりそうだった。
機首がプロペラより前にせり出し、余剰容積にレーダーが装備され、
バランスを保つため尾翼が大きくなる。
積載量が増せば、対艦ミサイルも大型化できた。
この時期、
独伊東欧諸国が兵器武器弾薬の規格化を進めていた。
主力となる小銃はStG44 (7.92×33)
米英連合国も対抗して兵器武器弾薬の規格化を進める。
(7.62mm×51)もその一つであり、
アメリカ製スプリングフィールドM14、M60機関銃。
イギリス製L1A1。ベルギー製FN FALが製造されていた。
弾薬 | 全長 | 銃身長 | 重量 | 初速 | 装弾 | 発射速度 | 射程(狙撃銃) | ||
独伊 | MP40 | 9mm×19 | 630 | 251 | 4025g | 380m/s | 32 | 500発/分 | 100m |
StG44 | 7.92×33 | 940 | 419 | 5220g | 685m/s | 30 | 600発/分 | 300m | |
G3 | 7.62mm×51 | 1026 | 450 | 4400g | 790m/s | 20 | 600発/分 | 500m | |
ソ連 | AK47 | 7.62mm×39 | 870 | 415 | 4300g | 730m/s | 30 | 600発/分 | 600m |
米英 | M14 | 7.62mm×51 | 1118 | 559 | 4500g | 850m/s | 20 | 700発/分 | 460m |
FN FAL | 7.62mm×51 | 1090 | 533 | 4450g | 823m/s | 20 | 650発/分 | 500m | |
日本 | 54式 | 6mm×50 | 980 | 620 | 4000g | 900m/s | 20・30 | 800発/分 | 800m |
開発中 | 6mm×50 | 1100 | 580 | 10000g | 900m/s | ベルト | 800発/分 |
各国とも新型自動小銃・突撃銃が揃いつつあった。
そして、日本が54式突撃銃(6mm×50)を開発すると使用弾薬で4極体制になっていく。
携行武器弾薬の重要性は、直接、敵兵と対峙しないと分かりにくい。
分隊レベルの戦闘で “こりゃ駄目だ” だと感じられると師団全体に敗北感さえ漂う。
分隊規模(ミクロ)の戦闘結果が師団(マクロ)の戦略に与える影響は計り知れなかった。
独伊東欧規格のStG44(7.92mm×33)は、射程距離が短く、一見、性能が低く見られた。
とはいえ、武器弾薬は単体で使うものではなく、組み合わせや連携で価値が変わる。
戦後、ドイツ軍は軍縮しており、自動的にM42機関銃(7.92mm×57)の比率が増えていた。
M42機関銃が味方であれば頼りになり。
敵としてM42機関銃に出くわすと遮蔽物か、タコつぼの中に潜んで身動き出来ず。
平地だと、まず命がなかった。
自暴自棄で突撃すると、連射の利くStG44の援護射撃を受ける。
こうなると、航空支援か、火力支援、戦車・装甲車、狙撃兵のお出ましを願うのみだった。
また米英規格と同じG3自動小銃(7.62×51)も癪な事に名銃で狙撃銃として使われる。
ドイツは機能性を追求した結果、
分隊レベルで(7.92mm×57)(7.62mm×51)(7.92×33)(9mm×19)が使われている。
アメリカも(7.62mm×51)のほか、(12.7mm×50)(11.43mm×23)があり、
武器弾薬の組み合わせと連携、戦力の総量で勝敗が変わる。
そして、日本の(6mm×50)も4極の一角を占めた。
これは、使用弾薬6mm×50で突撃銃、狙撃銃、機関銃を開発したからといえた。
突撃銃はStG44に劣り、狙撃銃は38式に劣り、機関銃はM42に劣る。
個々の性能で目を見張るものがない。
しかし、使用弾薬の共有化は十分な利点となった。
結局、万能な兵装などあり得ず、兵装の長所を生かし、短所を埋めた軍隊が有利になっていく。
工場
プレス加工の利点は、大量生産に優れた加工法ということ。
欠点は、圧延による素材密度のムラと内部のひび割れが生じやすくなることだった。
作られた部品の一つ一つが検査されていく。
「金属の塊を削りだしだと中身が確実で安心だけどねぇ」
「素材なら強化プラスチック、合成繊維とかもあるよ、まだ、これからだけどね」
「まだ不安だ」
「もっと部品を減らしたい」
「まだ銃身命数が残っているから、生産は急いでないけどね」
「6mm×50は良いと思うよ。強装薬でも反動が小さく、命中率が良い」
「擲弾も投射したい」
「我が侭だな、確かに欲しいけど」
「だけど軽量化すると反動が大きくなるから、重さは、こんなものだろう」
「問題は、短機関銃と拳銃かな」
「開発費はないけど、百式短機関銃はいやだな」
「拳銃ならイタリアのベレッタM1951が新しいぞ。9mmだ」
「9mm×19か・・・実際のところパラベラム弾は優れているのかな」
「拳銃の概念で “ポケットに入る” なら9mmだよ。かさばるけど、我慢できるレベルだ」
「拳銃の小口径化はないの6mm×25とか?」
「ライフル弾と違って、拳銃は至近距離で撃ち合うだろう」
「6mm×25だと貫通して衝撃が小さい。即反撃されることもある」
「じゃ 短機関銃は、MP40になるかな」
「まぁ どの世界に行っても弾薬が買えるからね」
弾薬 | 重量 | 全長 | 銃身 | 装弾数 | 初速 | 発射速度 | 有効射程 | |
MP40 | 9mm×19 | 4025g | 833mm | 251mm | 32 | 380m/s | 500発/分 | 100m |
ベレッタM1951 | 9mm×19 | 1300g | 194mm | 114mm | 8+1 | 349m/s | - | 50m |
各国の国民は、第二次世界大戦が終結すると意識を変化させる。
もう戦争はこりごり。
主要国家同士で同盟を組んでの全面戦争は、忌み嫌われる。
今後、考えられる戦争は代理戦争であり、後進国同士の中列度紛争。
そして、内戦など、低列度紛争に向かう趨勢にあった。
活躍する武器が突撃銃、短機関銃、拳銃になっていく事は、誰にも見てとれる。
「もう大きな戦争はないかな」
「第一次世界大戦が終わった後も、同じ事を言ったやつがいたよ」
「じゃ あぶねぇ」
「だけど同じ失敗を三度やるやつはアホだね。滅びた方がいいよ」
「・・・じゃ 滅びそうだな」
江戸時代
幕府が米を徴収する比率は、6公4民、5公5民、4公6民・・・・
数パーセントに過ぎない特権階級は米を持て余す。
結局、米は、米以外のモノと交換するため売られてしまい、
米は農民へと戻されていく。
ここで重要なのは、権力体制を守る事だった。
余剰生産力が倒幕勢力に流れないよう、領民を生かさず殺さずにすること。
領民を働かせる資金と労力を常に確保できること。
需要と供給が商業・工業の発達を促進させてしまうこと。
国がサービスという形で公共設備に投資し恩義に思わせること。
領民を幕政無知、政策無知にさせること。
支配階級が権力構造を支えるため子飼いの勢力に資本を消費していくことだった。
そして、現代。
アメリカ信託統治領(満州・朝鮮・台湾)
自然・動植物は人権を侵害しない。
人権を侵害し人を虐げ踏み躙るのは人間だった。
日本・豪州交換が決まってから白人世界は、一つの認識を共有する。
独伊東欧、ソビエト連邦、米英連合の白人世界3極の北半球完全支配。
大戦後、有色人種で人権を認められているのは日本人だけだった。
アメリカ信託統治領は、もっとも新しい白人のニューフロンティアだった。
過去、アメリカがインディアンに対し行ったような。
帝国主義国家が植民地に対し行ってきたような。
それは、合理的かつ効率的で洗練された人間牧場となっていく。
信託統治領の住民に借金を背負わせるのだから羽振り良く資本投機され。
アメリカ極東信託統治領の住民は、生殺与奪を握られ “金のなる木” とされていく。
領民の労働と消費は、アメリカ資本に吸い上げられ、絞りかすしか残らない運命にあった。
アメリカ合衆国は、1916年時点で人口1億を超え。
鉄道路線総延長40万kmの世界屈指の鉄道大国だった。
その後、自動車社会となり、航空機が発達するようになると鉄道は縮小。
とはいえ、縮小していくアメリカ鉄道会社も、座して死を待つほどお人好しではなく。
利幅を得ようと極東信託統治領に経営に参入して中古機材を押し付けていた。
もっとも、信託統治領の統治は、江戸時代の統治と違い、積極的で効率的だった。
収穫の半分がアメリカ資本に奪われ、
加工されたモノとサービスを借金を背負わされながら買う。
これを繰り返していけば、全ての労働と土地と資財は、アメリカ資本のモノとなり。
アメリカ極東信託統治領は、半永久的な奴隷世界となっていく。
朝鮮総督府
朝鮮・中国・英語語の分かる日本人たちが雇用され働いていた。
一進会が知っている日本人に陳情し、肩を落として帰っていく。
「まぁ 気持はわかるけどね。しょうがないよ」
「安い集合アパートと食料を作って流通させる、そして、固定資産税を上げていくだろう」
「集合アパート住まいが増えたら、今度は家賃と食料を上げていく」
「まぁあ 何と言うか、日本がやりたかった事をこれほど上手くやられると呆れるね」
「資本力、建設力の差だよ。金持ちには勝てん」
「アメリカ合衆国国内も同じことやってるだろう」
「アメリカも戦後軍縮だろう、労働者に払える賃金を減らさないとやっていけないし」
「極東日本、極東信託統治領需要がなければ、大量解雇だったらしいよ」
「アメリカも膨れ上がっていた軍需バブルを日本・豪州交換で軌道修正できたわけか」
「高い賃金を払って、生産しても軍事産業だと再生産が利かない。尻切れトンボになるからね」
「アメリカで労働運動が強まる前にか・・・」
「だけど、アメリカ資本だって、えげつないからね。安い労働力を使い始めるよ」
「そりゃ 百分の一で済むなら・・・」
「でも、アメリカ国民も目先の安楽生活に酔わされ、借金を背負わされて働かされてるけど」
「極東信託統治領ほど酷くないよ」
「ここで領民の反応を実験しているんじゃないの、都合の良いように法律を変えられるし」
「日本はどうするのかな」
「貧富の格差を広げて余剰資本で新規開発しないと、アメリカに負けちゃうんじゃないか」
「小作人や将兵に土地を与える名目で移民したんだから無理だろう」
「そうそう、俺も割り当てられた土地があるし、国や資本家に取られたくねぇ」
「自分の土地、開墾したいな」
「先立つモノがいるだろう。我慢して働けよ」
「後は、インフレなんだよな」
「そうそう、ここで働いても小金溜めても、豪州日本がインフレだと困る」
「極東日本と極東信託統治領を押さえているアメリカ・ドルは、円より有利だと思うよ」
「それもそうかな。でもアメリカ資本に利用されてるからね」
「アメリカは貧富の格差が大きいけどグリーンカードあるし、安楽な余生も確保できそうだけど」
「豪州日本は、生活苦でも同国人なら国益になるし、救いがあると思うけどね」
「だけど豪州日本も広いから地域差がありそうだな」
「若いうちに豪州日本に行って開墾した方が、老後が落ちつけて良いような気もするけどね」
「そのうち、どこか、ポストを作ってくれるんじゃないか」
“富める者はますます富み、貧しき者はますます貧しくなっていく”
朝鮮人のほとんどは、満州に追い立てられていた。
そして、何とか残ろうとする朝鮮人も生活苦に追い詰められていく。
生活必需品はアメリカ・日本製で購入する度に私財が消えていく。
満足な教育を求めればさらに絞り取られる。
利便性の良い貸家生活をする者が増え、持ち家の朝鮮人はおらず。
持ち家があるのは、白人ばかり。
その気になれば、いつでも家賃と生活必需品を引き上げることができた。
朝鮮人は、家賃を払うため働かなくてはならず、食べるために働かなくてはならず。
生活するために働かなくてはならず。
生活のすべてがアメリカ資本に頼り、
アメリカ人が気紛れに価格を引き上げようものなら死活問題と直結する。
実弾射撃場
身体の視点、筋肉、神経の機能を精確に連動させる能力を有すること。
相対距離観、動体視力でブレを少なくすること。
基礎訓練は、実弾演習の予算がないため射撃でなく運動だった。
基礎訓練が終わってようやく、実弾が撃てた。
ベレッタM1951が標的に撃ち込まれていく。
結局、射撃訓練で何発撃ったかで命中率が決まってくる。
官給品が毎日のように消費されていく、
そして、50m前後の距離で標的に命中させる名手が量産されていく。
素人ヤクザが、絶対に外れない至近距離まで肉薄して撃つのと格が違う。
トップクラスになるとサブマシンガン相手に撃ちかったり。
当然、SP、公安に配置されるようになったりする。
「俺、北フランス行きだよ。ショック」
「俺、エジプト。泣きてぇ」
「俺なんか、イタリアだよ」
「日本・豪州交換で国防費が減ったんじゃ 間諜仕事に役回りが回ってくるよな」
「安全な警護が良いよな、グレーゾーンでトカゲのしっぽ切りじゃ 辛過ぎる」
「そうだよ。もっと軍隊増やして国境の内側に引き籠ろうぜ」
「いつから明石機関の真似ごとをするようになったんだ」
「あの人、明細書付けて全額返済なんて前例悪過ぎだよ」
「ふ 正気な人間のすることじゃないよな」
「だから、間諜任務が廃れたんだよ」
「ロクな仕事もしないのに機密費で私腹を肥やす役人が出てくると困るからじゃないの」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
月夜裏 野々香です。
大本営 “特行” 引っ越しまであと7年です。
極東日本はアメリカの国土・州にされ、
アメリカ極東信託統治領は “金のなる木” 史実の日本でしょうか。
日本は南半球の豪州に逃げちゃいました。
豪州日本が当面目指す鉄道路線総延長は8万km、
アメリカと比べ、日本の慎ましげな気質が知れます。
現在のオーストラリア、
総人口約2000万、ロクな産業もないのに渇水で苦戦中、涙目です。
さて、1954年の日本の総人口8800万です。
これが大規模な産業を必要としながら豪州に向かいます。
豪州移民最大の問題は “水” です。
日本民族は渇きを乗り切れるでしょうか。
史実の米ソによるドイツ技術争奪がなかったため米ソとも技術が5年遅れになります。
ドイツも製造関連に特化した技術ですので史実より技術レベルが低いです。
オーストラリア大陸
西オーストラリア州 鉄鉱石鉱山 マウントトムプライス、パラバード、マウントニューマン
西オーストラリア州 金鉱 スーパーピット山
西オーストラリア州 金・ニッケル鉱山 カンバルダ
クイーンズランド州 炭鉱 グーニエラ・リバーサイドー、モーラ、
ニューサウスウェールズ州 炭鉱 マウントソーレーイー
ノーザンテリトリー(北部準州) ウラン鉱山 ジャビル
クイーンズランド州 ボーキサイト鉱山 ウイパ
日本連邦 | |||
オーストラリア (大和) | 北ニュージーランド (瑞穂) | ||
ブリズベン | 広島 | オークランド | 旭川 |
シドニー | 東京 | ハミルトン | 札幌 |
ウェリントン | 函館 | ||
キャンベラ | 京都 | ||
メルボルン | 大阪 | 南ニュージーランド (秋津) | |
アデレード | 仙台 | クライストチャーチ | 高松 |
ダニーディン | 高知 | ||
パース | 福岡 | ||
信託統治領 | |||
ダーウィン | 沖縄 | ポートモレスビー | ポートモレスビー |
ラバウル | ラバウル | ||
タスマニア (八島) | |||
ホバート | 豊原 | ||
第14話 1954年 『盆栽が・・・盆栽が・・・』 |
第15話 1955年 『エヴァ・ブラウン銀行の挑戦』 |