月夜裏 野々香 小説の部屋

    

架空戦記 『大本営特攻』

 

 

 第16話 1956年 『晴れたらいいね』

 シドニー港に集結していた政府徴用船団が南下していた。

 風速25mの雹混じりの強風が吹き荒び、海は大きく荒れていた。

 小型船は、木の葉の様に浪間に揉まれ、

 大型船は、叩き付ける雹がやかましいほどだった。

 950トン級2号輸送艦 艦橋

 「久しぶりの大船団だな」

 「民間に貸し出されていたと思ったら、またもや徴用か」

 「民間が強くなっていても、イザというとき大ナタを振るえる政府には逆らえんよ」

 「しかし、酷い揺れだな」

 「吠える40度、狂う50度、絶叫の60度だと」

 「南緯60度を越えれば、なんということはないよ」

 南半球の暴風圏のさらに南へ行くと凪いだ海になっていく。

 南緯66度15分〜南緯67度35分。東経162度30分〜東経165度。

 無人の火山島。ヤング島、バックル島、スタージ島が北から南東にかけて並んでいた。

 バレニー諸島 (総面積400ku、最高峰1524m)

 航空基地を建設すれば一番近い南極大陸まで336km。南極点まで2530km。

 バレニー諸島から南極大陸までの空路を確保できた。

 日本は、輸送機を投入した南極開発のため、3つの島に航空基地を建設する。

 3つの島に飛行場を建設するのは霧に備えて、であり、それでも不安があった。

 暴風圏を抜けた日本の船団は、バレニー諸島に積荷を降ろしていた。

 大半は、南極開発で実績を造るため建設機材だった。

 横1.2m、縦2.4m、厚さ10cmの板がコネクターで接合され組み合わされていく。

 凍土の大地にプレハブ住宅と飛行場が建設されていく。

 「飛行艇の偵察だと最短400kmから540kmまでのところに良さそうな場所があるそうだ」

 「近くに剥き出しの山があるな」

 「750mくらいだそうだ」

 「大地が安定してればいいがね」

 「そういえば、アメリカがDC6の売り込みに来ていたよ」

 「へぇ〜 足を引っ張るかと思えば・・・」

 「国は国の論理があるし、企業は企業の論理があるんじゃないか」

 「元DC3の零式輸送機に実績を上げさせるより、新開発のDC6に手柄を立てさせたいんだよ」

 「性能は良いだろうけど、扱い慣れている機体は良いし、軽い方が安心なんだがね」

 「気持ちはわからない事もないけど、軍用輸送機の頑丈さは必要だよ」

 「頑丈さなら、アメリカ民間機の方が上だろう」

 「あははは、南極大陸向けは、改造したからね」

 「4発機は組み立てるのが大変だからな・・・」

 「日本も新型ジェットプロップエンジンが間に合わなかったのが痛いね」

 「来年だな」

 「カラフト犬は、ここで、育てるのか?」

 「暴風圏の島でも良いけど、寒さに強くさせたいからね」

 「大丈夫か? シベリア、アラスカ、グリーンランド産の犬に比べると不利な気がするね」

 「大丈夫だよな。タロ、ジロ」

 一人が近くにいたカラフト犬二匹を撫でる。

 「準備できていなかったのだからしょうがないよ」

 「あいつら示し合わせやがって・・・」

 「日本も砕氷艦くらい準備すべきでは?」

 「豪州日本に引っ越してからと考えていたからね」

 「この苦しい時に・・・随分、急じゃないか」

 「豪州日本の引っ越しが終わると南極が注目されるだろう」

 「当然、各国とも日本の南極独占が気に入らない。国際協調で唾を付けておきたいのだろう」

 「さすがに米英連合、独伊同盟、ソビエトが相手だと反対できないか」

 「だけど、ドイツとソビエトの砕氷艦が、ここで休息を取るらしい」

 「やっぱり金か」

 「国際協調もあるよ」

 「ドイツとソビエトのシベリアン・ハスキー犬は降ろすのか?」

 「散歩くらいさせたいだろう」

 「カラフト犬とケンカしなければ良いがね」

 

 氷の大陸 南極

 冬の内陸部は最低気温-90度。−60〜70度がざらだった。

 沿岸部でも冬季は−40度から夏季でも0度ほどだった。

 6時間から12時間のブリザードは、珍しくなく。

 視界全てが真っ白となるホワイトアウトも珍しくない。

 土地狂った列強でさえ、南極に手を出せなかった。

 しかし、各国とも背伸び出来るだけの科学技術と国力を持つようになっていた。

 

 

 ワシントン 白い家

 男たちが集まっていた。

 「日本に置いているエセックス型を日本に売却するというのか?」

 「工業設備の購入費は大きいですからね」

 「それに城郭、神社仏閣、遺跡類の購入、複製の対価も・・・」

 「ドイツが日本の城郭・神社仏閣に興味を持ち始めてから価格は値上がりしているよ」

 「豪州日本は通商破壊が通用しない国になろうとしているのだろう?」

 「アメリカ合衆国は、極東の利権と欧州の利権で通商破壊に脆弱になったからね」

 「日本に潜水艦を建造されるより、空母を売った方がマシということかね」

 「それにドイツが大型空母を建造したら、エセックス型では勝てませんし」

 「アメリカも大型空母を建造できると嬉しいですし」

 「日本が一旦エセックス型空母を購入すれば潜水艦に比重を移せないでしょうし」

 「ポストは数世代続くからね」

 「戦争になればもっと嬉しいですがね」

 「国に借金を背負わせて、対価を国民に支払わせ、自分のポケットに入れる」

 「やり過ぎると国が疲弊してしまうよ」

 「もうしばらく様子を見れば良い。買っても負けても懐に金が入ってくることになっている」

 「まぁ 引っ越しで忙しいし。国民は、乗り気じゃないのが痛いがね」

 「戦争は、引っ越し後として、ドイツも、ソ連も、豪州日本も軍縮気運が馴染んでいるのがまずい」

 「民需産業も強くなってるしね」

 

 

 南北フランス

 南北分断の国際的制約が終わって1年が過ぎていた。

 南北フランスが統合するのも再軍備するのもフランスの勝手。

 再軍備は、それなりに行われているものの、統合の話しは進まない。

 南フランスのアルジェリア殺戮が原因だと誰もが分かるのだが、南フランスは止めなかった。

 国際社会といえば、人道的な非難を行う程度に押しとどめ、経済制裁もない。

 再生した国際連盟は、事務レベル国際協議の場。

 縁の下の力持ちでしかなく。国際舞台を背景にした偽善は届かない。

 アメリカやソビエト連邦が加盟しているのに以前の国際連盟より弱かった。

 不利になるとすれば通信、流通、交通などで滞る程度だった。

 そして・・・・

 アルジェリア、アルジェ港に自由の女神像が建設されていた。

 ペタン・南フランスは、ヴィシーからアルジェに首都を移転してしまう。

 これには賛否があった。

 フランス統合を目指す組織は反発する。

 しかし、丸っきり理解できないわけではない事情が両者の間に存在した。

 北フランスが大戦の敗北を工業力をバネにして巻き返そうとしたように

 南フランスもアルジェリアを併合することで国威と国力を巻き返そうとしていた。

 両者の溝は、理解で埋められるほど浅いといえた。

 しかし、行動の結果は不統一であり、

 南北フランスの溝幅が広がっていく事は明白だった。

 

 

 アルジェリアの内陸 アハガル山地

 最高峰タハト山(3003m)

 「標高が高いのに乾燥しているな。寒いが湿気は少ない」

 「北回帰線付近だ。豪州日本にも南回帰線が横切っている」

 南フランスと豪州日本は、砂漠の緑化で情報を交換していた。

 「乾燥した大気では、3000m級の山があっても足りないってことかな」

 「山脈じゃないと駄目ってことだよ」

 「しかし、北アフリカに首都を遷都するくらいなのだから、緑化は本気じゃないかな」

 「アメリカも緑化に関しては、意識してるようだが、やはり切実なのは、南フランスじゃないか」

 「イタリアも大国を目指そうと思えば、リビアの緑化だが、どうも意欲に欠けているようだ」

 「民族性じゃないか」

 「どちらにしろ、緑化できない限り大規模な移動は無理だ」

 「無理でも大規模な移動をしなければならない日本とは違うよ」

 「日本人も市民権をとったり、グリーンカードとったりだからな」

 「日本だけでなく、デモクラシーが好きな人間もいるだろう」

 「いなくなるより良いような気もするね」

 

 

 ドイツ帝国

  重量 全高×直径 速度 射程 弾頭
V2ロケット 12800kg 14m×1.7m M3 300km 1000kg
対艦 3000kg 8m×533mm 1000 120km 400kg
対空 1500kg 8m×340mm M3 65km 100kg
対潜 3000kg 8m×533mm 500 50km 200kg

 V2ロケットを開発したドイツは、その後もミサイル技術を向上させていた。

 ドイツは、暗中模索、思考錯誤しながら先行する。

 追随する米英ソ日は、ドイツを模倣しながら、いくつかの分野で追い付こうとしていた。

 しかし、それは、一部分でしかなく、ドイツは総合で圧倒する。

 垂直発射(VLS)ミサイルを巡洋艦に装備させたのもドイツ海軍が先だった。

 “W” 型級として計画されたミサイル巡洋艦は、ヴェルト型として就役する。

10000トン級ヴェルト型ミサイル巡洋艦5隻
排水量 全長×全幅×吃水 hp 速度 航続距離
10500 178×17×7.25 100000 33 19kt/14000海里
ヴェルト、ヴィルヘルム、ブランデンブルク、ヴァイセンブルク
60口径150mm砲 71口径88mm砲 対空ミサイル 対艦ミサイル 対潜ミサイル
2基 4基 20発 20発 20発

 ヴィルヘルム 艦橋

 「反ナチな名称になったな」

 「ナチの支持を拒否したヴィルヘルム・フォン・プロイセンの皇帝復権もありかな」

 「どうだろうな。元はといえば、彼の親のヴィルヘルム2世の失策が招いたことだし」

 「ヒットラー総統は、その尻拭いとゴミ掃除をしたに過ぎんよ」

 「ドイツの悪の部分を全部引っ被って、銀行業に転身とは恐れ入ったがね」

 「だけど、ドイツ帝国の国庫持ち出しはちょっとかな」

 「ズルズル権力の座に居座られるよりマシだろう」

 「ナチ親派を国外に引き寄せてくれるし、静かだし、助かるよ」

 「そ、そう考えると楽だけどね」

 

 

 

 極東日本

 国土の大きさで換算すると日本民族は戦争で負けていない。

 しかし、日本民族発祥の地、日本列島から日本人が去り、豪州日本へ向かっていく。

 歴史の教科書のほとんどが極東日本での事柄であり。

 世界でもっとも歴史の新しい豪州日本の歴史は、これからだった。

 そうであるからこそ、古き良き日本の伝統を豪州日本へと移そうと躍起になり。

 新しい豪州日本の歴史を誇れるものにしようと躍起になった。

 

伝国の辞

国家は先祖より子孫へ伝候国家にして、我私すべき物にはこれ無く候

人民は国家に属したる人民にして、我私すべき物にはこれ無く候

国家人民の為に立たる君にて、君の為に立たる国家人民にはこれ無く候

 右三条御遺念有るまじく候事

 

 極東日本を去る前、上杉鷹山の銅像を前に泣く者は後を絶たない。

 国家を統治する者は、国家を統治する資質を持ち訓練を受けなくてはならない。

 統治者は、己を律し私心なく、国民全体の親でなくてはならなかった。

 それが財欲、支配欲に駆られた有力者と民衆に選ばれては逆になる。

 有力者と民衆の利害で統治者が貶められ、国を危うくする。

 国家に対し責任を保てず、守るべき規範も維持できない民主主義は衆愚制に移行していく。

 民衆は自らの利権と欲望に従って、都合のよい木偶を統治者とし、弱者を淘汰した。

 民衆は自らの驕りと欲望によって引き起こした戦争の結末を悲しみ悔んだ。

 「私たちは、個人であっても、公人としての心を持とう」

 「権力があっても、国家を私利私欲に扱ってはならない」

 「公人として人生を生きような。同じ失敗をしないようにしような」

 「日本を離れても、日本人の気持だけは持って行こうな」

 先生が泣き、生徒たちと付き添いの親たちも泣き始める。

 

 

 日本型資本主義とアメリカ型資本主義の違いは、国民性の違いと言えた。

 企業を株主のモノと考えるのがアメリカ型資本主義であり。

 企業を公のものであり、私物化を避けようとするのが日本型資本主義だった。

 貧しい日本社会は必然的に “公” と “共” の比重を大きくしなければならず。

 豊かなアメリカ社会は “私” と “個” の比重を大きくしてもやっていけるのだった。

 日本は武士階級、欧州は貴族階級があり、世襲的であり、領土と領民を守る意識が存在した。

 しかし、アメリカは、金を持つ者が武士・貴族であり、そこに所有地と労働者しかなかった。

 日本の株主は、無駄を許容し、利回りと消極的なプラスアルファで考えていた。

 アメリカの株主は、無駄を削り、支配を目論むだけでなく、ダイナミックな投機としてみていた。

 アメリカ資本が極東日本に参入し、日本型資本主義からアメリカ資本主義へと変わっていく。

 外資系企業

 日本人たちがいた

 「アメリカの弱肉強食経済は滅茶苦茶だな」

 「大恐慌の様に一人の人間が数千人から金を巻き上げて企業ごと潰してしまうようなところがある」

 「大恐慌はアメリカ国内の支配権だけだが、全世界も巻き込んだ」

 「賭博を仕切っているような連中だな」

 「アメリカは、大恐慌で味を占めている」

 「そのうち自国の製造業を壊滅させ、国民の大半を貧民層にするかもな」

 「いくらなんでも、製造業を移したりしないだろう」

 「アメリカ国債や株を外国に買わせて、支配のために外国に製造業を任せてしまうかも」

 「確かに労働運動を避ける日本人労働者は、好まれている節があるね」

 「今度は全世界の支配権も視野に入れて、株価を上げて急落させるかも」

 「んん・・・前科があるからやりそうで怖いよ」

 「アメリカの権力の私物化と競争社会か。日本人もアメリカナイズされてきているからな」

 「合理化できるのなら、アメリカナイズが悪いというわけじゃないけどね」

 「日本の膠着した年功序列と権威主義が利用されてしまうと、合理化も出来ず最悪だよ」

 「競争社会もプラスに働けばいいけど、足を引っ張る方に働きやすいからね」

 「そういや、教育委員会の重鎮が教育内容を薄くしようとしていたっけ」

 「なんで?」

 「自分の孫息子や孫娘より、ほかの子供の頭が良くなったら立場的に困る」

 「あははは」

 「自分の孫息子、孫娘だけ家庭教師付けてか?」

 「教育委員会の重鎮が家庭教師に頼っちゃ駄目だろう」

 「金持ち有利にしてしまう競争社会や市場原理は利己主義が強くなる、考えものだな」

 「アメリカじゃ 弱者切り捨ては普通だろう」

 「そのうち、泥棒捕まえるために被害者から袖の下欲しがる警官が出てくるぞ」

 「日本の悪癖とアメリカの悪癖がくっ付いて、社会がおかしくなったら勝てんわな」

 「豪州日本は、そうならないようにしないと・・・」

 

 

 

 豪州日本

 北はタウンズビルから南はメルボルンからアデレードの線路は4000kmほど伸びていた。

 車体の大きさは、国情によって変わる。

 また貿易上、他国の規格に合わせた方が有利な面もあった。

 狭い国土では車体幅はどうしても狭くなり、小回りを利かせるため全長も短くなる。

 鉄道の車両最大幅は、軌間の3倍未満。2.7〜2.8倍以下が常識だった。

 軌間1600mmであれば車両最大幅は4480mmと余裕が見込めたものの。

 橋の橋梁も大きくしなければならず。

 急なカーブで車体が軌道の外にはみ出してしまうこともあった。

 しかし、それも、それが許せる国土と国情次第と言えた。

 結局、車体幅は、4200mmで落ち着く

 

 

 鉱山を取り巻くように鉄道が円周を描き、

 中央は露天掘りで掘られ銀、鉛、銅、亜鉛が採掘されていく。

 周囲に火力発電所が建設され、製鉄・精錬所が建設され、工場が立ち並ぶ。

 そして、緑化が進み、農地が整備される。

 鉱山は、次々に発見され、今世紀一杯、十二分持ちそうだった。

 閉山が決まれば、炭鉱跡は地下施設が造られるか。

 巨大な湖水となって大地を潤し、農地が広がる予定だった。

 日本の産業は、第一次産業が強く。

 第二次第三次産業は農閑期産業とも期間産業とも言われ、伸び悩んでいた。

 料亭

 寿司ネタにダチョウ、ワニ、カンガルーが乗るようになって久しい。

 「戦前戦中の基幹産業の移設と増築は、問題ないがね」

 「んん・・・参ったな。どうにも新規産業が遅れ気味だ。こんなものか?」

 「農地で堅実に働くか、農閑期は山師で一発当てたいと思う人間が増えているのだろう」

 「そりゃ農閑期を炭鉱で働くより、自分で炭鉱を見つけて権利を得る方がいいよな」

 「だけど国家としては寂しいぞ。結局、国民の資質だからな」

 「国が第一次産業に頼りっきりはどうかと思うよ」

 「移転で人間同士が離れたからな。人間関係をもう一度構築して・・・」

 「モノを製造しても消費者に届けるのがこれほど大変とはな」

 「国が広いと流通も通信も大変だよ。消費者が遠いから自動車もいる」

 「やっぱり、人口を集約させるか、自動車産業を振興させるかだね」

 「それには土地を取り上げて勤勉な労働者を作らないと」

 「どうしても行きつくところがそこになるな」

 「しかし、土地を奪うと愛国心が失われる。愛国心は土地の所有から生まれるからね」

 「国家の利害と個人の利害が一致していないと戦前と戦中の様に無理が生じるからね」

 「しかし、国民から土地を奪い過ぎると、また侵略願望が生まれるぞ」

 「まぁ 農地を取り上げて労働者と小作人を増やして無理やり近代化したツケだよ」

 「近代化したくても、同じ轍を踏むのはまずい」

 「土地持ちのエゴと金持ちの野心か、弱者のしわ寄せは酷かったからな」

 「かといって、理不尽な市場原理を導入すると負け組が増えるし・・・」

 「学業明けの3年から5年、職業選択の自由を取っ払うか」

 「国民を徴役するのか」

 「国民が土地を奪われたくないのなら仕方がないだろう。懲役制導入だよ」

 「むかしの租・庸・調だな。私有地はなかったけどね」

 「徴兵より健全でマシかも知れないがね」

 「要は、高度な技能が徴役制で育つかだよ」

 「石の上にも3年というがね、資質なんて3年じゃわからん」

 「個人の希望は聞くとしてもだ。農地という逃げ道もあるし、好き好きもあるからな」

 「可能性が広げられるならヨシとすべきだよ」

 「じゃ 民間企業に社宅を作らせるか。それとも国が・・・」

 「むかしっから国が作って払い下げじゃないの、親御さんは、娘とか不安だろうし」

 「まぁ 企業努力が実れば、そのまま就業で良いかもしれないな」

 「企業は、社員の選別を徴役の間でやればいいし」

 「徴役者も社会勉強になるし、職業選択の幅も広がる」

 「うんうん、若者に第一次産業以外の機会を与える。これも国のサービスだよ」

 「なんて至れり尽くせりの日本なんだろう。まるで天国だ」

 「「うんうん」」

 陶酔

 

 

 イスラエル(マダガスカル)島 (587041km²) 世界第4位の島

 ユダヤ人。

 ポーランド、チェコ・スロバキア、セルビア人、ウクライナ人、ベラルーシ人の入植が進む。

 入植者の多くが白人であり、総人口は5000万に達しつつあり注目される。

 ホテル

 町並みを見るとユダヤの世界が作られていく。

 「資金力のあるユダヤ人は、マダガスカルの国家権力を手に入れるだろうか」

 「ユダヤ人らしくないな。ユダヤ人が欲するのは、義務を負う国家権力ではない」

 「国家と国民を食いモノにするユダヤ人が国民の面倒を背負い込むのは気が進まないか」

 「権力より金、金より支配だからね。自分本位な亡者だよ」

 「しかし、ユダヤ人の夢がかなった瞬間、ユダヤ人は亡者でいられなくなるわけだ」

 「ユダヤ人たちがマダガスカルに第2のアメリカを作ろうとしている可能性もあるよ」

 「でも、ユダヤ人だけでアメリカを作ったわけじゃないからね」

 「地政学上のマダガスカルは悪くないよ」

 「しかし、言語はポーランド人2500万が強い。公用語のヘブライ語復活は手間取りそうだな」

 「第二のバルカン半島になるならいいけど、白人世界なのが気になるね」

 「アルゼンチンの例もある。白人だからと言って強国になるとは限らないよ」

 「アメリカの例もある」

 「自由資本主義と拝金主義は、ユダヤ人にとって水魚の交わりだから、好都合だろうよ」

 「しかし、コミュニティを構築するには歴史、文化、言語を共有できるモノが欲しいからね」

 「どちらにしろ、ユダヤ人は金融を支配するから損しないと思うよ」

 「政治に引き摺られなければね」

 「パレスチナ奪還とか?」

 「別に奪還しなくてもパレスチナに行けるだろう」

 「相続人のユダヤ人の聖地巡礼が制限付きだと面白くないはずだ」

 「あいつらパレスチナ奪還も金に換える錬金術師だからな・・・」

 「ユダヤ人の真似をして、同じ土俵で戦うのは気が進まないな」

 「しかし、日本も、積極財政に頼ってばかりだと権益が膠着するし、累積赤字が膨れ上がる」

 「貧富の格差を認めて、民間活力を生かさないと近代化が進まない」

 

 

 瑞穂(北ニュージーランド)の山間

 北海道と四国の地名が多いにもかかわらず、もっとも古い日本が造られていた。

 極東日本の城郭・神社仏閣・遺跡の6割が瑞穂・秋津に集中する。

 移設前の極東日本の地名と地図、模型。

 そして、移設前写真が四季折々で写された展示場が併設してあった。

 他にも有名・無名画家が描いた絵画も並んでいた。

 清水寺

 「こっちの方が良いじゃないか」

 「そりゃ 起伏のある森にある方が映えて良いけどさ」

 「電線とか地下だし。町並みも、平安京風とか、平城京風とか悪くないよ。飛鳥朝ぽくて」

 「しかし、歴史的背景と経過が断絶だとな・・・」

 「しょうがないよ。戦争の結果だし」

 「アメリカは、なるべく日本の歴史を残したがってるぞ」

 「あいつら目がドルマークになってるからな」

 「それに町中に歴史建造物があると興醒めすることがあるしな」

 「まぁ 複製を作る事を良しとしたから、模倣して作るんじゃないか」

 「建築物の設計図は、売ったのか?」

 「売ったよ。移転費用にもなるし、観光にも行きやすい」

 「あいつら日本人より、取捨選択が上手いから、逆に上手く経営してくれるんじゃないか」

 「飛鳥、奈良、鎌倉、室町、南北朝・戦国・安土桃山、江戸、明治、大正、昭和か・・・」

 「歴史があったんだよな」

 「逆に日本史の勉強が盛んになってるし、良かったんじゃないの」

 「そういえば、全然、意識してなかったな」

 「惜しむようになって、古きを訪ねるんじゃ 手遅れって感じかな」

 「時の流れより、その場限りの利害が優先だからね。いろんなモノを見失ったと思うよ」

 

 日本で採れる山菜がこの地で栽培されていた。

 アケビ、ウバユリ、ウド、ウワバミソウ、エゾタンポポ、オオバギボウシ、オケラ、

 クサソテツ、コシアブラ、サンショウ、スギナ、セリ、ゼンマイ、タラノキ、ツリガネニンジン、

 ツルニンジン、ナンテンハギ、ノビル、バイカモ、ハコベ、ハナイカダ、フキ、ミツバ、

 モミジガサ、モリアザミ、ヤブレガサ、ヤブカンゾウ、ユリワサビ、ヨモギ、ワラビ・・・

 大衆向けというより料亭など、これがないと困るという需要だった。

 地場の山菜も開発されて、期待されていたりする。

 「山菜は中国モノとかあるんだけどね」

 「香港を通じて買うよりないけど、あそこも混乱しているからな」

 「今更だが、移転のための専修学校は必要じゃないかな」

 「まぁ 試行錯誤で先生がいないからね」

 「実のところどうすれば最良なのか誰も知らないのがな」

 

 

 中国大陸

 法治政治と徳治政治はそれぞれメリットデメリットを持つ。

 列強各国とも厳正な法治国家としながら、幾分かの裁量を官吏に与えていた。

 しかし、徳治政治に重きを持つ中国社会は官吏の裁量が大きく、法を超えることもあった。

 良い官吏であれば不公平感は少なく、温情ある社会となる。

 ところが、上手くいかないと不正腐敗の温床となる。

 一度、崩壊した秩序は混乱が収まらず、

 破壊された信頼と絆は失われるばかりだった。

 国民軍と共産軍の内戦は継続していた。

 この国で最も力があるモノは、国民党でもなければ共産党でもなくなっていた。

 世界中の拳銃とサブマシンガンがこの大地に流れ込み。

 国民軍・共産軍が所有するより多くの銃が地方軍閥に集まり、

 さらに多くの銃が匪賊に出回る。

 権力とは、他者を強制する力であり、ピラミッド状に構築された構造だった。

 拳銃を持つ民衆の意に反する強制ができる官吏は少なく。

 自らの保身と利権を守るために私兵を作るまでになっていた。

 より多くの私兵と武器を持たなければ、搾取することが困難となり、

 農村は武装し、官吏の取り立てに抵抗し、国民党や共産軍にも反発する。

 官吏は、搾取した収益を中央の国民党や共産党にあげることも難しくなっていた。

 拳銃と麻薬の流入が国民軍と共産軍の内戦を縮小させたと言えなくもない。

 それは、それとしてヨシと言えなくもないが統一国家建設から後退する。

 香港

 安全な場所もあれば危険な場所もあった。

 惨状は毎日のように広がり、安全地帯は徐々に狭まっていた。

 危険を冒す必要のない人間は安全な場所から国の行く末を見つめる。

 満漢全席

 大陸の仕掛け人たちが集まっていた。

 「・・・まぁ 人は優しくないからね。自業自得だし、現状を憂いても仕方がないよ」

 「では、引っ越し事業が終わるまで、現状維持という事で・・・」

 「個人も国も同じだ。尊敬を勝ち得ない人間と国家は搾取され奪われやすい」

 「国民は国家から人権を勝ち取るものだし。国家も世界から国権を勝ち取るものだ」

 「権力闘争もあるじゃないか」

 「権威を失い、尊敬を勝ち得なくなったとき権力闘争が起きるよ」

 「だけど、血を血で洗う戦争をしただけで、評価されることもあるじゃないか?」

 「日本人の様に?」

 「力を見せる。一番分かりやすい方法だ。同じ次元で戦えただろう」

 「野蛮でない方法で尊敬を勝ち得ようと思わないのかね?」

 「けっ 既得権益にしがみつくアメリカ白人が、そんなに良心的だったかね」

 「傲慢な人間は力しか認めないし。無恥な人間は恐怖でしか懲らしめることができないよ」

 「おいおい、人種差別しているのは、そっちだろう」

 「まぁ 生憎、余裕がなくて・・・」

 「いまは、余裕ありまくりだな」

 「水問題で、それどころではありませんよ」

 「大型の運河が完成すれば、潤うんじゃないかね」

 「元々、乾燥している大陸ですから」

 「緑化問題は、協力し合いたいものだ」

 「それには賛成だね」

 「砂漠を買った後に金を集めて運河を通せればお金持ちだからね」

 「ばかだな。公益性だよ」

 「「「「「あはははは・・・」」」」」

 

 

 アメリカの船が停泊していた。

 「地方軍閥は保身と権益を守るため武器弾薬と麻薬を欲しがり、私兵を集めているある」

 「実に遺憾なことだね。早い統一国家の建国を心から望むよ」 なぜか嬉しそう。

 「アメリカ人が匪賊どもに拳銃をバラ撒かなければ、これほどの負担はなかったある」

 「人は暴力から地位、名誉、財産、生命、人権を守るための力が必要なのだ」

 「人が人を殺すのであって、銃が人を殺すのではないよ」

 「人が人を殺さない、高い倫理観を持つ社会を作るべきだ」

 「とにかく、我々が権力を維持するためには、より多くの武器と麻薬が必要ある」

 「資源は持ってくるある。しかし、ここに運ぶまでの費用は高くなっているある」

 「揚子江を遡って直接、購入しても良い」

 「そうしたら、もっと武器を匪賊にばら撒くつもりある」

 「君たちは儲かるじゃないか」

 「確かにそうある」

 国民軍と共産軍の内戦だけでなく、匪賊の間に出回る銃器類。

 危険に晒された生命と財産ほど需要を掻き立てるモノはなかった。

 強盗と従業員の銃撃戦も珍しくなく。

 出店の主人さえ身を守るため拳銃を欲し、身銭を振り絞って拳銃を入手する。

 そして・・・

 「た、大人。いまは中国が一つになるとき」

 「これ以上、大衆に拳銃を行き渡らせてはいけないある」

 ばぁ〜〜ん!

 「・・た、大人・・・」 がくっ!

 外敵にしか銃を向けられない中国人が権謀術数に巻き込まれ味方に殺されていく。

 

 

 アオガエル (XF5Uフライング・パンケーキ)

 欧米でジェット戦闘機が飛び交う中、

 極東日本と豪州日本で飛んでいたのはアオガエルだった。

 頑丈な機体は耐久性が高く、生産数が増えるに従い、治具が増え稼働率も高くなっていく。

 離着陸制限の低い機体は、有利な基地を選定することができた。

 軍事基地の警備歩哨で赤外線・レーダーが多用されるようになり、人員が削減されていく。

 そして “砂漠の方が防御力高いじゃん” というより開発の邪魔になり辺鄙な場所へと移されていく。

 極東日本の国防は、ずさんとしか言いようがなく。

 豪州日本の国防は、手抜きだった。

 そして、どちらも講和条約によって守られていた。

 アメリカは、黙っていれば国土が増え。

 日本も既に意識は豪州日本。

 ソビエトも敢えて、アメリカと敵対するつもりがなかった。

アオガエル3型  (XF5U フライングパンケーキ)
hp 重量(kg) 全長×全幅×全高 翼面積 最大速度 航続距離 武装 ミ・爆 乗員
1700×2 5958/7600/8533 9.73×10.91×4.50 52.8 875km/h 1703km 25mm×1 900kg 1〜2

 アオガエルは、高速域から低速域まで多彩な運用が可能だった。

 もっとも空戦能力でジェット戦闘機に劣るため攻撃機、あるいは哨戒機となっていく。

 そして、真価を発揮したのは哨戒といえた。

 陸上哨戒機の東海が重量4800kg、610馬力×2、翼面積38.20uであり、

 アオガエルの低空低速域の哨戒能力は、東海より高かったのである。

 対潜用アオガエルは、機関砲を外し、コクピットを大きく前方に張り出し、下部も丸見えとなった。

 磁気探知装置を装備し、潜水艦探知ブイと対潜ホーミング魚雷を搭載する2機編隊で哨戒する。

 「対潜哨戒も対空哨戒も長距離・長時間で運用するなら大型機でやるべきだね」

 「そうそう、いくら自動操縦装置が付いていたって、狭いコクピットじゃね」

 「大陸なんだから大きなレーダーと磁気探知装置を装備して巡回させるべきだね」

 「アメリカのダグラスDC6、ロッキード・コンステレーション、ボーイング377のどれかを買うんじゃないかな」

 「100人乗りか、いいなぁ・・・」

 「ドイツのフォッケウルフ238とかも・・・」

 「た、大陸間爆撃機は、ちょっとな、まだ飛行船の方が良い」

 「ドイツはMeP1085爆撃機でアメリカ本土爆撃が可能だからな」

 「これで日本も大陸間戦略爆撃機を開発したら、本腰を入れてハルマゲドン時代だよ」

 「いまのところ米独ソとも数が少ないから、それほど緊張状態じゃないけどね」

 「取り敢えず、内陸から飛べってことじゃないの、ますます、肩身が狭くなる」

 「げっ!」

 

 

 対地攻撃用アオガエル

 撃った銃弾は、空気抵抗で速度が徐々に低下して放物線を描いて落ちていく。

 戦闘機の速度が増すと機関砲の脅威は相対的に低下していく。

 99式20mmFF機銃一号銃 (20×72RB)。初速600m/s

 99式20mmFFL機銃二号銃 (20×101RB)。初速750m/s

 米英対空機関砲20mmFFS機銃 (20×110RB)。初速850m/s

 エリコン機関銃が遅いというより、銃弾の薬莢の大きさと銃身長の問題といえた。

 ブローニングM2重機関銃(12.7mm×99)。初速853m/s

 96式25mm高角機銃(25mm×60)。初速900m/s

 「アオガエルは、もう、対地戦用だろう。25mm弾は大き過ぎる気がするね」

 「対戦車用と思えばいいだろう。装甲車なら破壊できる」

 「対人は?」

 「爆弾で足りるよ。25mmの散弾でも良いし」

 「対戦闘機用の戦闘機が欲しいね」

 「それだと、機銃の初速は1000m/s以上欲しい」

 「発射速度も1000発以上欲しい」

 「砕氷艦建造に金を取られそうだな」

 「10000トン級だっけ?」

 「航空機で十分なのに・・・」

 「ほら、制海権が欲しいとかじゃないの?」

 「また、つまんねぇ 面子に縛られやがって・・・」

 

 

 南氷洋

 ドイツ船団が氷山を取り囲み、氷山の上に滑走路を建設していた。

 ドルニエP214飛行艇

 自重76000/全備重145000kg。全長60m、全幅51.6m、全高14.3m、翼面積500u。

 速度490km/h、航続距離7000km

 「余裕がないというのにドイツも南極開発か、島から飛べる日本が羨ましいよ」

 「アルゼンチンとチリからでも良いんだけどね」

 「結局、アメリカと足を引っ張り合って、どっちも使えないって、悲し過ぎるよ」

 「機密保持なら自前の船団か氷山を基地にやる方がいいよ」

 

 

 

 モスボール

 軍艦の内部を窒素で充満させて完全密封し、酸化を防ぐ。

 外側も風雨に晒されても錆びないように油が大量に使われている。

モスボール
排水量 全長×全幅×吃水 hp 速力 航続力 38口径 56口径 78口径 艦載機 乗員
127mm砲 40mm砲 20mm砲
27200 270×29×7 150000 33 15kt/28000 12 32 46 102 2600
27200 270×45×8.8 150000 33 15kt/28000 12 32 46 100 3448

 戦後、

 27200トン級エセックス型・タイコンデロガ型12隻。

 潜水艦150隻とも、モスボール状態で置かれていた。

 しかし、それでも維持費はかかる。

 海水に面している艦底はフジツボが付くため、グリスの上からセメントで固められていた。

 「アメリカにしても、条約明けに旧式のエセックスを返されても困るらしい」

 「潜水艦はともかく、1隻当たりの乗員が2600人から3500人じゃな」

 「45000トン級パールハーバー型。59000トン級フォレスタル型の時代か」

 「60000トン級キティフォーク型も建造しているらしい」

 「今更、エセックス12隻を再就役させるくらいなら、キティフォーク型6隻がマシと考えているわけだ」

 「イギリスに売ると思ったがな」

 「歴史建造物購入額を相殺したいらしいよ」

 「なんか、日本とアメリカで偉い金が動いているらしいからな」

 「それとロイヤル・ネイビーの意地があるんだと」

 「たしか、28700トン級セントー型。33600トン級オーディシャス型か・・・」

 「しかし、アメリカがねぇ 潜水艦より、見える空母の方が安心か?」

 「日本が侵略しないであろうと、傍目で分かるらしいからね」

 「し、しかし、エセックス型12隻購入なんて、どうするんだ?」

 「大は小を兼ねるだろう。それに平甲板は何かとやりやすいよ」

 「石綿、PCBって、どうなの?」

 「人体に対して、微妙に怪しい。代用はあると思うけどね」

 「装備は?」

 「まぁ アオガエルだと。そう言えなくもないがね」

 「まぁ 水の問題で、それどころじゃないよ」

 「しかし・・・国防を潜水艦で割安に済ませようと思っていたのにな」

 「作為的なモノを感じるな」

 「購入するとしたら、人員削減とコストを考えないと1200人くらい」

 「3交代制にすると常時400人だぞ」

 「歩哨は警備システムを導入すれば、割り引けないか?」

 「速度が遅くなっても、低燃費のデーゼル機関に換装すべきだね」

 「2期、3期で分けて再就役させるとしてもだ。護衛艦もまともに付けられそうにないよ」

 「じゃ 改装は、対空・対潜能力が中心だな・・・」

 「サイドスラスター、バルバス・バウ、エンクローズド・バウ、アングルド・デッキも入れたい」

 「電子装備優先じゃないの、発電も桁違いに必要になるよ」

 「トランジスターの生産は水を使うらしいからね、それも不純物無しのH2Oだから贅沢品だよ」

 「ほう、水の多いヨーク岬半島と瑞穂・秋津に、その種の工場が作られるわけか」

 「設備投資が異常に大きいのに成果がボチボチだからな」

 「レーダーとソナーか、対空対潜ミサイルが欲しいね」

 「全部やると、排水量は32000トンくらいになる」

 「機体数を減らせよ。対潜対空哨戒のローテーションなら40機で十分」

 「レーダー射撃と連動した71口径88mm砲を装備したいものだ」

 「対潜ミサイルと対空ミサイルも」

 「エセックス型正規空母も航空巡洋艦扱いか・・・」

 「日本製の軍艦もまだ、残ってるからね」

 「エセックス型くらい大きいと何かと詰め込み易いよ」

 「強襲揚陸艦も夢があるね。豪州日本の発言力が増す」

 「インドネシアを警戒させるのは面白くないよ」

 「瑞穂と秋津を守るためだよ」

 「本当は、島自体の防衛力を上げるつもりだったのに・・・」

 「罠っぽいよな」

 「アメリカ海軍も日本に海軍力がある方が予算が取れるから嬉しいんじゃないの」

 「もう、列強軍事同業組合だな」

 「茶番に付き合う気にはなれんよ」

 「茶番に付き合わないと挑発されるし、相互不信が高まる」

 「行き過ぎると戦争か、軍縮条約だ。もうワンパターンだな」

 

 

 無人の火山島。ヤング島、バックル島、スタージ島が北から南東にかけて並んでいた。

 バレニー諸島 (総面積400ku、最高峰1524m)

 3つの島、4つの飛行場で薄い霧が立ち込めていた。

 「もうすぐ、燃料が尽きそうだな。偵察が早過ぎたかな」

 「哨戒船と二式大艇を待機させているから、最悪は、そっちに着水するしかないな」

 「晴れそうなんだがな・・・」

 「ドイツの船団は大型砕氷艦と大型飛行艇の両方を使っているらしいよ」

 「霧のない海上に降りられるわけか」

 「地上に離着陸はできないけどね」

 「カタリナ飛行艇は、どっちでもござれだ」

 「離着水性能で怪しいよ」

 「・・・バックル島の霧が晴れたそうです」

 「助かった。すぐに向かわせてくれ」

 「南極は?」

 「いまのところ、良いがね」

 「目的地の2時間後、帰還後の4時間後は、どうですかね」

 「燃料はなるべく積んでおくべきだろうな」

 「越冬にも燃料を使うのにな」

 「一番高い燃料を消費したのだから、成果を出して欲しいものだ」

 零式輸送機30機が飛び立っていく。

 400km先の南極大陸へピストン輸送を繰り返した。

 1往復4時間。1機が4トンの物資を降下させ、30機で120トン。10往復で1200トン。

 プレハブ住宅の壁は、横1.2m、縦2.4m、厚さ10cmの板を組み合わせたものだった。

 既にバレニー諸島で建設の実績があり、

 降下した隊員は、投下された板をコネクターで結合していく。

 氷雪を確認した隊員たちが氷雪上に即席の滑走路を作っていく。

 そして、スキー下駄を装着した零式輸送機が雪原に離着陸できるようになっていく。

 二重、三重の壁で船の様な構造で越冬用住居が建設されていく。

 「さむぅ〜」

 「床も天井も壁も三重の家なら何とかなると思うがね」

 「室内の熱で床底の氷が溶けないと良いけどね」

 「少し、隙間を空けているから大丈夫だろう」

 僅かな時間で積荷を下した降ろした零式輸送機が飛び立って行く。

 カラフト犬たちが遠くに落ちた物資を引っ張り、戻ってくる。

 「・・・もうすぐ、霧になりそうだな」

 「島に気象情報を伝えよう」

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 大本営 “特行” 引っ越しまであと5年です。

 ちょっと水の話し。

 日本人一人が一日に消費している飲料水は2〜3リットル。

 生活用水は、約300リットル。(最近)

 産業は、一人換算で一日1.76トン。海水2割、回収水6割。

 農業用水は、一人換算で1.4トン。

 鋼材1トンの生産に100トン。自動車1台120トン。

 牛肉1kg=20600リットル。豚肉1kg=5900リットル。鶏肉1kg=4500リットル。

 卵1kg=3200リットル。米1kg=3600リットル。

 小麦1kg=2000リットル。大麦1kg=2600リットル。大豆1kg=2500リットル。

 トウモロコシ1kg=1900kg。パイナップル1kg=396リットル。

 ざっと、そんな感じです。

 日本人9000万の生活用水は270億リットル。

 もう、肉食うな、な豪州日本は大変です。

 “水” を人間から産業まで全てを動かす資源と気付いた日本人です。

 

 

 遂に南極大陸です。

 史実と違って航空機による第一歩です。

 列強の作為を感じますが取り敢えず、予算のない中、横並びしています。

 

 

 オーストラリア大陸

 西オーストラリア州 鉄鉱石鉱山 マウントトムプライス、パラバード、マウントニューマン

 西オーストラリア州 金鉱 スーパーピット山 

 西オーストラリア州 金・ニッケル鉱山 カンバルダ

 クイーンズランド州 炭鉱 グーニエラ・リバーサイドー、モーラ、

 ニューサウスウェールズ州 炭鉱 マウントソーレーイー

 ノーザンテリトリー(北部準州) ウラン鉱山 ジャビル

 クイーンズランド州 ボーキサイト鉱山 ウイパ

 

 

 

 

日本連邦
オーストラリア (大和) 北ニュージーランド (瑞穂)
ブリズベン 広島 オークランド 旭川
シドニー 東京 ハミルトン 札幌
    ウェリントン 函館
キャンベラ 京都    
メルボルン 大阪 南ニュージーランド (秋津)
アデレード 仙台 クライストチャーチ 高松
    ダニーディン 高知
パース 福岡    
    信託統治領
ダーウィン 沖縄 ポートモレスビー ポートモレスビー
    ラバウル ラバウル
タスマニア (八島)    
ホバート 豊原    
       

  

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第15話 1955年 『エヴァ・ブラウン銀行の挑戦』

第16話 1956年 『晴れたらいいね』

第17話 1957年 『天孫降臨の儀』