月夜裏 野々香 小説の部屋

    

架空戦記 『大本営特攻』

 

 

 第17話 1957年 『天孫降臨の儀』

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 祭典など無駄浪費と言えなくもない。

 とはいえ、節目節目で必要なモノであり、行った事実のみで歴史の本に載るのである。

 そして、この日、どんな薄い歴史の本でも数行載せられるであろう行事が行われる。

 八咫烏(やたがらす) 金鵄(きんし)を描いたアオガエルが先行し、新京都上空を旋回。

 古事記、日本書記など古式にのっとった一連の儀式が進む。

 その後、アオガエル2機と御座機の連山が飛行場に着陸する。

 それなりに格調高く仰々しい儀礼の後、連山から降りてきたのは一家族だった。

 御召の自動車と護衛の隊列が皇居に向かって街道を走っていく。

 豪州日本と極東日本で二重生活を送っていた天皇家が正式に皇居を新京都に置く。

 天孫降臨の儀式は、当事者が願うより大きく。

 当人の意志により、政府の思惑より縮小された形で終わる。

 

 

 

 南極大陸

 氷の世界に昭和基地の建設が進む。

 零式輸送機(元DC3)が天候の合間を縫って離着陸を繰り返し。

 天候が急変した時は、物資をパラシュート投下させる。

 「もっと、良い輸送機が欲しいな」

 「土建屋に予算を取られているからな」

 「山を刳り貫けば、予算が入ってくるかもね」

 「やっぱり、刳り貫くのか?」

 「標高は高い方がいいよ。氷の下に閉じ込められたくないからね」

 「それに地質調査で氷の下の大地までボーリングするより、山の上を押さえたい気もする」

 「どの道、凍土だから、直接、地面を掘りたくなるのは確かだね」

 「問題は空輸できるだけのシールドマシンだけどね。燃料も馬鹿食いされそうだ」

 「取り敢えず、本命の基地建設は、来期以降だ」

 

 

 新京都 日本連邦議会

 豪州日本の歴史は始まったばかり、

 ほとんどの日本人は、誇り得る祖国にしようと心機一転する。

 とはいえ、日本人の行動の指針は欧米と違う。

 “恥ずかしくないようにする” であり “罪を犯さないようにする” ではない。

 他人の目から見てどう思われるか、なのであり、法に照らし合わせての是非でなかった。

 結局、みんながそう思うのなら・・・・

 で、最大公約数的な妥協の産物、徴就法案が可決する。

 官庁・企業が求める雇用人数を政府が確保するものだった。

 一定以上の雇用条件が確保されていることが条件だった。

 義務教育後、あるいは、高校・大学卒業後の3年から5年を出来た。

 小学校中学校が近くにあっても、高校が近くにない場合、働きながら通学も出来た。

 そのため抵抗が少なかったりもする。

 金次第で徴就拒否も可能で赤紙の半分の強制力もなかった。

 とはいえ、徴就法により農業に向かう豪州日本の産業バランスをコントロールできた。

 そして、住宅制度、賃金統制にも影響を与え。

 豪州の都心では、貸し家が急速に増え始めた。

 新京都 首相官邸

 「とりあえず。一息ついた」

 「雇用条件を満たせない企業が一発で分かるのは、問題ありだがね」

 「旧財閥で市場を確保したいのだろう」

 「どうかな、極東日本で小金を貯めた人間が新興企業で参入しはじめるはずだ」

 「アメリカ風か、フレンドリーなところは悪くないが・・・」

 「アメリカは投機性と弱者切り捨てが強過ぎて、反発したくなりますね」

 「日本の慣れ合い談合体質もゲンナリ気味だがね」

 「欧州の方が堅実じゃないか?」

 「あそこ、伝統が合わないし、貴族主義的なところも嫌い」

 「でもエヴァ・ブラウン銀行と組むとドイツ企業と有利な取引ができるんですがね」

 「あそこは、非ユダヤ金融の雄だし、危険分散の意味で預けやすいからな」

 「やっぱり、国家から独立した銀行って安心できるというか、良いよね」

 「その銀行が信用できればですね」

 「銀行で成功しているところは、信用で成り立っているし、やめられないだろうよ」

 「銀行が信用を失うと国家経済が破綻するからね。国から独立しているのなら尚更だ」

 「問題は、南極開発の財源でしょう。国力を削がれるし、維持費も馬鹿になりませんし」

 「引っ越しの最中で金がいるというのにアメリカもドイツも作為的だな」

 「金なら増刷中だよ。土木建設と運河建設で土地の売り買いが増えている」

 「しかし、お金持ちは貧富の格差が縮まる事を望まないからね」

 「お金がないと好景気に弾みがつかないよ」

 「公共設備なら再生産でお金も戻ってくるし」

 「それは言える。しかし、貨幣の価値が低下していないか?」

 「お金を使わなくても、ポイント制で生活が補えるのなら、貨幣の価値も半減かな」

 「言ってる場合か? 権力体制とか、市場経済が困るだろう」

 「弱小企業は、痛し痒しだ」

 「まぁ しばらく様子を見よう、拝金主義が強くなって売国奴が現れるのも困るし」

 「それに一過性のモノかもしれないし、政府が干渉するのもまずい」

 「あと、皇紀はどうします?」

 「候補は?」

 「新皇紀、日本紀、豪州紀、東暦、南暦、大和暦、朱雀紀、南皇紀、瑞穂暦、扶桑暦などです」

 「んん・・・大和暦かなぁ・・・でも瑞穂暦は響きが好きだな・・・」

 「砂漠の大陸ですので、希望は持てそうですが」

 「じゃ 西暦1961年から瑞穂暦元年」

 西暦と下一桁を合わせて、瑞穂暦と計算しやすくする。

 

 

 

 

 豪州日本

 農地に植えられた作物が実り始める。

 米、小麦、キュウリ、ハクサイ、ニンジン、ジャガイモ、玉ねぎ、卵、

 アーモンド、イチジク、キイチゴ、ベリー類、ジューンベリー、チョークベリー、

 ブルーベリー、ぶどう、桃、ユスラウメ

 アケビ、アンズ、蜜柑、キウイ、栗、さくらんぼ、すもも、プルーン、ナツメ、

 梅、柿、クルミ、びわ、ザクロ、なし、

 ギンナン、ユズ、

 多種類の作物を育てるより、小種類の作物を育てた方が管理しやすく、数を捌けた。

 単一種の大規模農業に比べ、多種の小規模農業は非効率である。

 しかし、自作農が増え、自給自足が根付くと土地を手放すことを惜しみ、

 非効率な農業政策となってしまう。

 駅を中心に円心状に学校や公共施設が整備され町が作られ、

 その中に公民館と市場が結び付いた公民市場が形成され、

 自家製で余った作物が持ち込まれる。

 子供がリヤカーに乗せた柿を届けた。

 「お、坊、来たか」

 「柿だよ。1kgを20個」

 「・・・そうだな・・・Bの3って、ところか、今日の時価だと・・・1500点かな」

 「へぇ〜 椅子とか、机とかも、並んでる」

 「木がなくてもアルミは採れるらしいからね」

 この頃、移転による銀行の出店の遅れで

 貨幣経済が歪になり金が流通しにくくなっていた。

 持ち込まれた生産品が一般商店のモノを参考に規格、等級、時価で点数がつけられる、

 運び込んだ生産量に点数が掛けられ、点数が割り振られていく。

 生産者は合計の点数に応じて、別の生産品と交換できた。

 いくつかの集落が作られると公民市場が作られる。

 最初、農産物、魚介類など一次産品が主だった。

 しかし、市場が大きくなり、点数が価値が強くなると生活用品が置かれ。

 いくつもの公民市場で規格、等級が一致させられるようになり、ポイント制が共有化され始める。

 金が介在せずにモノが動き、サービスが行われた。

 公民館と市場が結びついて始まった非営利サービスが農協を巻き込み、全国に広がっていく。

 そして、規模が大きくなるにつれ、喫茶店、食堂、床屋も点数制を利用し始める。

 少年がいくつもの穀物をリヤカーに乗せて運んで行く。

 「なんだ? ここは、お金が使えないのか?」 お金持ち

 「公民館で売買できるわけないでしょ」 役員

 「じゃ ここは?」

 「生産者か、サービス業者だけの交換市場」

 新楽市楽座と呼ばれた一連の非営利機構は、金が動かず、

 利子も発生しないコミュニティーだった。

 そして・・・

 イスラエル(マダガスカル)のキブツ(共有集団)の見学者も来ていた。

 「8世紀頃の日本は、口分田制を敷いて、6歳以上で田畑が与えられ、死んだら国に返したそうだ」

 「封建制度でも、そっちの方が共有が強くてキブツに近いかな」

 「いまの日本人より、自立意識は早かったかも知れないな」

 「日本人は、老後の事を考えやすい傾向だから、子離れ、親離れ出来ないでのは?」

 「確かに実情に合わず、廃れたらしいね」

 「しかし、公民市場は、口分田と違うだろう」

 「私有地で生産したモノを公民市場に持ち寄って、交換しているだけだ」

 「あまったモノをここで交換しているのか」

 「公民市場の中で生活している人間は、役員とサービス関係者だけか」

 「貨幣を流通させている市場と抗争にならないのか?」

 「一般市場へ持って行けない事もないらしい。しかし、小口取引は、好かれていないようだ」

 「普通は、農協に集めると聞いたが」

 「ジュースにする生産工場がまだないとか、規格が五月蠅いとか、あるんじゃないか」

 「お互い換金しない方が楽な事もあるよ」

 「大地主は小作人を集められず、企業農業化している。企業農業が市場で強いのだろう」

 「公民市場は、弱小農業者が多いのか」

 「外に住んでいるのに現金収入がないのではないか?」

 「だから物々交換できる公民市場を作ったんじゃないか」

 「公私が分かれているのが面白いと言える」

 「公の部分が中心にあるのだから、キブツの思想を否定するものではないよ」

 「公だけというのも、アレだけどね」

 「崇高な社会主義精神で公は上だよ」

 「とりあえず、マダガスカルから持ってきた作物は?」

 「103000点」

 「2000点分の作物と交換していこう。当分は足りるはず」

 「欲が出ると金も欲しくなる気もするね」

 「社会主義者も贅沢には惹かれるからね。日本人はどうだろう?」

 「モノとモノの交換だけだろう。我々のキブツの平等の精神はないよ」

 「しかし、形としては、参考になるね」

 「まぁな」

 

 

 極東日本

 オーストラリア人、ニュージーランド人、アメリカ人は、日本文化を観光収入。

 集金システムとして捉えていた。

 それは、紛れもない事実であり、

 安定収入に繋がるのであるが副産物もあった。

 白人たちも好奇心から、しばし、日本文化に浸る。

 漢字がペイントされた服を着て歩く白人も少なくなく。

 忍者は人気があった。

 自前の文化と日本の文化の相違点、長所、短所、グレーな部分も明確になっていく。

 価値観の違いで欧米寄りの者もいれば、日本寄りの者もいる。

 傲慢であれば学ぶことなく唾棄し。

 謙虚であれば、取捨選択して取り入れていく。

 彼らの多くは、生活圏を脅かされない限り、日本文化を保存し利益に還元させる。

 柔道、空手、剣道の類も見直され、教わろうとする者もいた。

 道場で大の男が小男に転がされる姿は信じ難く。

 自分が同じ目に合わない限りは信じなかった。

 一旦、信じると教わることに躊躇せず。

 技を教われば、体格差で白人が有利になっていく。

 アメリカ資本がバックに付いた白人有段者が現れ、道場を引き継いでいく。

 そして、プロレス、ボクシングに近いビジネス興行として確立される。

 幸か不幸か彼らの修行歴は10年未満であり、達人の域に達していない。

 それでも体格差で日本人を圧倒する。

 そして、それだけでない何かに気付き始める。

 日本人は、武道を精神修養など総合に視点を置いた。

 欧米人は、物理的な視点。

 てこの原理、支点、力点、作用点などのベクトル、力学。

 相対速度、物量など速度と質量で分析していく。

 そして、公式化していく。

 合気道道場

 日本人の先輩が白人の後輩に投げられる。

 「・・・・しかし、体格が大きいとはいえ、強くなるものだ」

 「欧米人に武道を教えたことが改良され、日本人にフィードバックされれば良いよ」

 「・・・・」 憮然

 「結局、白人が日本人を尊敬するとしたら、奪われたからでなく、与えられたからだろう?」

 「そりゃ 尊敬はされたいけどね」

 「少なくとも合気道のビジネスショー化しない約束だけはしてもらったけど」

 「まぁ 日本人も科学技術に関しては学ばされたけどね」

 「しかし、欧米人の強さは体格差だけと思えないな。秘密は何かね」

 「人格のある神を信じることで、自我を客観的に見つめることができることでしょうか」

 「目に見えない神や死んだ人間を祭っていると楽だな」

 「精神的に地動説状態にあるというところかな」

 「では、自我が主観的な仏教は、精神的に天動説というところか」

 「日本社会は、天皇がいるから親子の観念が強く権威的になりやすい」

 「欧米社会は、目に見えない神だから兄弟関係になりやすく、法が重視されるからね」

 「そりゃ キリスト教は勧善懲悪でメリハリがあるがね」

 「人間は、善悪混在で曖昧だから、仏教が好きだね」

 「人間に合わせた宗教か。人間を超越した宗教かの違いじゃないの?」

 「物語性としてはキリスト教が良いね」

 「堕落という観念で、人間の渇望、未完、矛盾を表わし、完成の可能性と希望を与える」

 「仏教は曖昧な部分が多くて良く分からんからな」

 「日本だと天皇が神のような立場で、実存しているから善悪も曖昧になるね」

 「精神的に自立しやすいのは欧米人の方じゃないか」

 「日本人だって、豪州に行けば一皮剥けるよ。たぶん」

 「まぁ 豪州日本行きも精神的な巣立ちと思えば、気持ちも変わるだろう」

 「アメリカ資本は、残って欲しいらしいよ」

 「そりゃまぁ 結構な年俸だけどねぇ」

 「アメリカが精神的な修養に真摯になるのなら悪くないと思うよ」

 「他の武道も、結構、残っているんじゃないの」

 「金の力って、偉大だよね」

 「しかし、円とドル混在の経済って面倒だけどね」

 「法的には、61年まで円だよ」

 極東日本は61年からアメリカ合衆国Apan州となり、

 アメリカ憲法が施行される予定だった。

 観光地は日本語表記が強いものの。

 公文書も、表記も英語表記に切り替えられていく予定だった。

 

 

 極東アメリカ信託統治領(満州・朝鮮・台湾)

 満州北端

 アメリカは、信託統治領を守るため、20個師団にも及ぶ陸軍部隊を展開させていた。

 M48パットン戦車、M41ウォーカー・ブルドッグ軽戦車、M75装甲兵員輸送車・・・

 冬季の明けのソビエト領側に向かって、機甲師団が配置される。

 アメリカ軍の将校たちがソビエト国境を監視する。

 「ソビエト軍は30個師団だそうだ」

 「T55もですが、装甲兵員輸送車のBTR152、BTR40は強力です」

 「満州・朝鮮は、極東ソビエトの穀倉地帯だ。攻撃すれば食糧なんだよ」

 「攻めてきて、それが失敗すれば、ソビエトは、極東シベリアを失うだろう」

 「こっちは、ソ連軍の侵攻を待ち構えれば良いわけですね」

 「そういうことだ」

 「しかし、核兵器は、まずいのでは?」

 「核兵器はアメリカが先行している」

 「しかし、半径5kmくらい一掃されるからな」

 「日本に一杯食らわされた気分ですよ」

 「ロケット開発も、ジェットエンジンの開発も遅れている。運搬手段に問題ありだよ」

 「まだ、ドイツに追いついていないので?」

 「どっちも5年近く引き離されている」

 「B36で頑張るしかないでしょう。対ソ戦に限定すれば有用ですよ」

 「あの機体もターボプロップエンジンに換装できれば、もう少しマシなはず」

 「ターボプロップエンジンもドイツとイギリスが先行しているよ」

 「アメリカは、採算性重視でラインに乗せるまでが大変ですからね・・・」

 「現状でも、対ソ戦では支障ないよ」

 「極東日本を併合した後は、信託統治領の安全性も高まるでしょう」

 「しかし、極東日本で日本人が減ると労働力で困るらしいよ」

 「そうなんですか?」

 「あれだけ知能が高くて、大人しく、勤勉従順に働いてくれる人種はいないそうだ」

 「アメリカ人労働者より、良いじゃないですか」

 「資本家は、みんなそう思い始めてるよ」

 戦力が大きくても副次的なモノと言えた。

 格安の人件費と巨大な土木建設機械が国境線の防衛力を強化していた。

 どんなに高性能な戦車であっても、お手上げな事もある。

 車体長をはるかに超える対戦車塹壕は越えられない。

 まして、対岸が高ければ尚更だった。

 また車体上面を射線に晒してしまうような地形を造成していた。

 米ソが国境線で直接、対峙すると米独関係も変化する。

 アメリカ合衆国の脅威がドイツ第三帝国からソビエト連邦に摩り替わっていた。

 満州全土が囲い込みによって、いくつも区切られ、移動が制限されていた。

 匪賊は、犯罪を犯せば逃亡できず、捕らえられた。

 内戦中の中国大陸との国境は、何重にも閉鎖されて行き来できなかった。

 ニュー・イースト・フロンティアと呼ばれた新天地は、一部のアメリカ人を刺激した。

 信託統治領であれば、アメリカ人の権力は絶大であり。

 中国人の人権は、著しく抑圧できた。

 むかし、黒人を使役させたように中国人を使役できると考えた。

 そして、現実に人海戦術で苦役を強い、自らの墓穴を掘らせたのだった。

 もし、満州の中国人や朝鮮人が人間牧場で生きていくことを望まず。

 起死回生の復権と成功を望むのであれば、アメリカ資本の犬として、中国大陸側に行くよりなく。

 漢民族も朝鮮民族も、武器・覚醒剤の運び屋として中国大陸に蔓延っていた。

 

 

 満州平原

 B36ピースメーカー爆撃機が飛行場に着陸する。

 「疲れた。24時間もグルグル回るって、どうかと思うよ」

 「24時間飛べるのが強味なんじゃないか」

 発電量の大きな大型警戒レーダーが装備されており、ソビエト国境上空を睨み。

 ソ連空軍の出撃を知れば、すぐさま、地上基地に警報を出すのが仕事だった。

 信託統治領に配備されているB36爆撃機は対空哨戒用だった。

 極東信託領地はソビエト本土と国境を接しており、大型爆撃機でなくても良いと考えられていた。

 戦闘機はF84セイバーであり、

 対ソ戦用爆撃機はB47ストラトジェット中型爆撃機が配置されていた。

  自重/最大備重 全長×全幅×全高 推進力 最大速度 航続距離 爆・ミ 機銃 乗員
B36 77580/186000 49.40×70.10×14.25 3600×6 685km/h 11000km 39000kg 12.7mm×16 15
2300kg×4
F84 5000/9300 11.4×11.3×4.5 2710kg×1 1120km/h 1026km 900kg 12.7mm×6 1
B47 36600/90000 32.9×35.4×8.51 1670kg×6 945km/h 6437km 4540kg 12.7mm×2 3

 原子爆弾を搭載している機体はB36爆撃機の本国配置であり、基本的に陸上待機だった。

 大陸間弾道ミサイルは、まだ遅れており、安穏とした世相でもあった。

 そして、爆撃機による原爆投下が危険視されていた段階だった。

 B52大型爆撃機は開発中であり。

 いまのところ、満州配備の中型爆撃機が有用視されており。

 B56中型爆撃機の方が注目されていた。

 ソビエト空軍は、MiG9ファーゴ、YaK23フローラの配備が始まったばかりだった。

 

 

 

 人海戦術で城塞都市が建設されつつあった。

 アメリカ資本は既得権益を守ろうと平原を造成し、城塞都市を建設していく。

 相手が中国軍で人海戦術であれば、造成工事や城塞都市は有用だった。

 街道の両岸に堡塁を作るだけで爆撃や砲撃の有用性を高め、

 機銃掃射の命中率を高めることができた。

 「ここに300m級のビルを建てるって?」

 「支配の象徴だよ。漢民族は力の差を見せつけないと理解できないからね」

 「まぁ どうせ、労働力なんて安いものだ。資源もある」

 「地震は?」

 「土台をしっかり作って、鋼材を増やせばいいさ」

 「中国人だけだと不安だな」

 「とび職は、日本人がやってくれるそうだよ」

 「へぇ 日本なんて高層ビル作ってないだろう」

 「腕は良いらしいよ」

 「豪州日本って、権力より権威社会だし、国土が広いのなら摩天楼いらないし」

 「村社会でこじんまりしているから・・・まぁ これは、変わっていきそうだがね」

 「良くそんなんで、アメリカと戦えたな」

 「極東日本全土を併合できたのだから勝ちでしょう」

 「勝った気が全然死ねぇ」

 「じゃ お手並みを拝見するか」

 

 

 アメリカ合衆国 ジョージア州 とある島

 「ドイツ系のエヴァ・ブラウン銀行に資本が集まっている」

 「我々の金融支配から逃れたがっているのだろう」

 「我々の支配は、極東信託統治領とイギリスにまで及んでいる」

 「Apan州編入でさらに弾みがつくはずだ」

 「もう一つ、豪州日本で構築されている地域コミュニティー。非貨幣経済は、まずいぞ」

 「アレだけの大陸なのだ。普通なら大規模農業経営で工業・サービス業人口を増やすはず」

 「しかし、現実には、非大規模農業経営で徴就制だ」

 「アメリカは大丈夫だろう、全ての情報と富は、我々が握っている」

 「アメリカ合衆国でコミュニティーを作れるような勢力は起こさせない」

 「アメリカは、我々の金。富によって支配されている」

 「アメリカは自らの欲望に支配され、富と支配を目指し、金を得るため働きアリのように労働するしかない」

 「アメリカ人は資本主義支配から独立することなどできないよ」

 「現実問題として、貨幣経済でなければ、近代化も重工業も育てられないはずだ」

 「しかし、日本の公民市場は増えているのにもかかわらず、日本経済のGDPは、大きくなっている」

 「それに必要な資源が豪州にあるのなら、日本人のハングリー性が薄れているのではないか」

 「尽きない渇望と欲望が国家を近代化させるのだ、豪州日本で産業が発達できるとは思えんが」

 「アメリカのような資本主義でなければ急速な近代化はあり得んよ」

 「しかし “金” の裏付けがない利子が人を強奪者にし、金本位制を破壊したのだ。ドルの “金” 換金もいずれ・・・」

 「日本が貨幣経済から脱却しているとは思えんよ。ポイントが紙幣なのではないか?」

 「アレは生産品や運びこんでポイントが発生する。あるいはサービスでポイントが付くものだ」

 「ダイレクト過ぎるな」

 「日本の民族的特性ではないのか、国際社会では通用しない」

 「人間を動かすモノは欲望と金だ。金を介在させないシステムは、まずい」

 「アメリカに波及するのでは?」

 「いまのところ豪州日本にとどまっている。極東日本は作られてはいない」

 「作ってもすぐに破壊してやるよ」

 「問題は、非貨幣経済がまかり通る豪州日本で近代化と、重工業が育つかだよ」

 「現に豪州日本の軽工業と重工業は生産力を増しているし、育っているよ」

 「高品質のサービスで劣るのでは?」

 「お金持ちのためのサービスかね」

 「大事だろう?」

 「かなりね」

 

 

 イギリス海軍は、1952年に艦載機の空母飛行甲板の斜め離着艦を成功させた。

 秘蔵したものの傍目に見えての離着艦は気付かれる。

 気付いた国から採用され、最終的に有効性を世界に知らしめてしまう。

 アングルド・デッキは、空母のドレッドノート革命といえた。

 アメリカが角度の広いアングルド・デッキを採用。

 ドイツ、イタリア海軍も当然、新造空母に採用し始める。

 そして、金欠日本海軍も有用性を確認しなければならず。

 数年越しの予算を絞り出し、

 ディーゼル機関電気推進、右艦橋、傾斜煙突、サイドエレベーター、一層格納庫・・・

 改装中だった飛龍、蒼龍もアングルド・デッキを採用する。

 サンゴ海

航空哨戒艦 飛龍(艦歴19年) & 蒼龍(艦歴20年)
排水量 全長×全幅×吃水 hp 速度 航続距離 71口径88mm砲 艦載機
19000 230×30×8 100000 30 18kt/12000 6 30

 改装を終えた飛龍、蒼龍で、アオガエルV型が離着艦を繰り返していた。

 大きく変貌した艦影は、以前と違う印象を与える。

 アメリカ、ドイツの大型空母がジェット艦載機を運用すると日本空母は相対的に弱体化していく。

 脆弱なった空母で空母同士の戦いは考えられず、

 対潜哨戒・対空哨戒が主任務になっていく。

 アオガエルのほとんどが対潜哨戒型・対空哨戒型だった。

 「どうかね。アングルド・デッキは?」

 「ジェット機を運用するのであれば有用ですね」

 「むしろ、大型空母の方が有効でしょう」

 「空間を広く使えますからアオガエルでも有用ですよ」

 「大鳳、瑞鶴、翔鶴もアングルド・デッキが良いだろう」

 「しかし、完全に洋上の動く飛行甲板にされてしまったのが悲しいですよ」

 「洋上哨戒と対潜哨戒に限れば、及第点だよ」

 「ふ 護衛空母に格下げされた気分だ」

 「一番良い対空レーダーと対潜ソナーを装備している」

 「通信管制能力も情報処理能力も高い、戦隊旗艦として有用だよ」

 「どうでも良いけど電子機器が高過ぎないか?」

 「ドイツとアメリカの爆撃機は、大陸間を爆撃できるし、哨戒任務は重要だよ」

 「ジェット戦闘機を開発しろよ」

 「金がないらしいよ」

 「ドイツみたいにVLSミサイルを装備すれば良いのに・・・」

 「開発する金がないらしいよ」

 「そんなに水が大切か?」

 「大切なんじゃないの」

 

 

 

 ドイツ第3帝国

 東部に向かって領土を広げ、異民族を排斥した後も設備投資に国力を削がれていた、

 しかし、領土拡大に伴い農地が増え、人口が拡散。

 生産者・サービスから消費者が遠くなると多くの産業が採算割れを起こしていく。

 また、独裁の反発と世情の流れで、中央集権国家から緩やかに地方分権が進んでいく。

 それは、それとして、戦後とはいえ、国防は重要であり、

 それなりの陣営を整えなければならなかった。

 大陸間弾道ミサイル、大陸間爆撃機、原子爆弾は、開発されていた。

 もっとも原子爆弾の小型化も進んでおらず、大陸間団労ミサイルに搭載されていない。

 内陸国家で周辺国と地続きの国家は、海軍による覇権が困難になりやすい。

 南北フランスとオランダ、ベルギーの復権がなされたのちは、特にそうであり、

 海軍力を増強するとしても、示威、通商破壊が主であり、艦隊戦は避けるべきと言えた。

 しかし、国民は社会資本、設備投資、社会福祉を欲し、

 財政の関係で、国策を軍事力に傾注できず、軍事費が削減され、数を揃えられない。

 ドイツ国防省は、少ない予算内であっても、一定の海上戦力を欲し。

 海上で示威を目論もうと大型飛行船、飛行艇、大型爆撃機を開発。

 大陸間を越えての爆撃が可能だった。

 全長60mを越える機体は、原子爆弾の小型化が進まない、

 であれば大型爆撃機に搭載という発想で生まれた。

 アメリカのB36爆撃機を軽く超える。

 ドイツ空中艦隊と言える規模になっていた。

 サルガッソーと呼ばれる海は、気流がなく、波が静かであり、

 示威のためか大型飛行艇、大型飛行船の集合場所に使われやすかった。

 

 

 ドイツの某工場

 ドイツを工業立国にしたのは、少ない農地と人口増加。

 そして、ルールの炭鉱、ロートリンゲンの鉄鉱石だった。

 大量の原料は、余剰開発力となり、思考錯誤するだけの余裕を与え、技術を蓄積させた。

 実のところ工業力は、安い原料と技術の蓄積と経験によって保たれていた。

 部品が増えるほど単価は高くなり、組み立てられた機械の精度は低下する。

 高品質の素材がまずます求められ、歩留まりが悪化していく。

 性能を向上させながら可能な限り規格部品をを減らし共有させるという相反する矛盾とぶつかる。

 単純に技術の結晶として製造できても、工業製品として採算ラインに乗せられるかの問題になった。

 そして、この採算ラインで最も強いのがドイツ工業だった。

 とはいえ、農業人口が増えると労働者の人件費が高くなっていく。

 「新入社員の集まりが悪い・・・」

 「このままだと農業用地が増えると、むかしのフランスみたいになっていくよな」

 「機械化で農地面積を増やして、農家を減らせばいいだろう、工業人口を増やせる」

 「アメリカ式か・・・」

 「日本は、農地をそのままというかコミュニティーを作らせて、徴役制で工業・サービス人口を確保したよ」

 「まぁ 愛国心が土地に根差していると思えば、それはそれで正解だがね」

 「技能の資質が問題になるよね。たぶん」

 「コミュニティー間で物々交換させられると、貨幣経済による国家統制から国民が切り離されないか?」

 「金が動かないと税金がとれないからね」

 「世の中金じゃないというが、世の中、金じゃないと困るともいうし」

 「豪州日本の金に換算しない物流と消費をGDPに換算すると、かなり大きくないか?」

 「まぁ 一種の闇経済だからね。小さい店は潰されるな」

 「まっとうな産業を営んでいる者からすると金で購入する小口消費者が減るから、貨幣経済の敵だよ」

 「ああいう事をやられると、貨幣経済が幻想だって、思わされるよ」

 

 

 

 どこの国でもあるのが特権階級の治外法権、アウトローの非合法の部分。

 アメリカを支配しているのは、お金持ち。

 イギリスを支配しているのは、貴族。

 ドイツを支配しているのは、法。

 そして、戦前のイタリアを支配していたのは、コーサ・ノストラ (マフィア)。

 血縁と沈黙の掟によって結ばれた絆は、法や道徳よりも強靭で宗教より優位だった。

 麻薬・人身売買・売春・公共工事・密輸・・・

 そして、コーサ・ノストラは強過ぎた。

 イタリアの戦前・戦中・戦後、

 ムッソリーニ・ファシストとコーサ・ノストラは、血で血を洗う骨肉の攻防戦で明け暮れる。

 もっともムッソリーニ・ファシスト党が最大のマフィアと言えなくもなく。

 実態はファシスト党とコーサ・ノストラが利権で結びつき重複している。

 社会構造の根幹にまでメスが入り、ファシスト内部を巻き込んで流血の応酬が続く。

 内戦状態かとも思える暗殺や銃撃戦が何度も起こり、

 軍・警察・法務関係者から、聖職者まで、ムッソリーニの親族に死傷者が現れる、

 他国が見れば、自分で自分を傷付けているようでもあり、

 一部、有力なコーサ・ノストラの国外脱出も行われ。

 ムッソリーニの退陣にもつながる。

 結局、その退陣劇と逃亡事件後、イタリア政府対コーサ・ノストラの興亡が終息していく。

 イタリア ローマ

 少し寂れた商店街。

 「結局、イタリア政府とコーサ・ノストラの痛みわけなのか?」

 「んん・・・どうかな、貧富の格差が広がっただろう」

 「共産主義勢力が暗躍し始めて、終息したというのが正しい見方だと思うな」

 「イタリア政府もコーサ・ノストラも、共産主義は脅威だからな」

 「土地持ちばかりの豪州日本と違って、欧米は荒れてるからね」

 「貧富の差が広がらないと大規模投機できなくなる。近代化でマイナスなんだけどね」

 「イタリアの場合、別の要因が大きいと思うな」

 「それは言える」

 「しかし、イタリア料理や衣類は、日本人好みが多い」

 「北フランスが気取り過ぎなんだって」

 「南フランスは、農地が多くて、純朴なイメージになってしまったな」

 「そうかな、アルジェリア併合戦争やって血生臭いけど」

 「イタリアもリビアで血生臭いらしいけどね」

 「おかげでタイガー戦車Vの売れ行きがいいらしい」

 「それより、リビアで油田が出るという噂を聞いた・・・」

 !?

 唐突に始まる銃撃戦。

 拳銃の有効射程は、50m。

 とはいえ、訓練を受けないと50mの距離から命中させられる人間はいない。

 人々は、現地から離れようと右往左往する。

 その中には日本の外交官たちもいた。

 「なんだ。またか」

 「俺たちは関係ないよな」

 「なんというか、日本のヤクザと違って、政府と戦争できるアウトローだから怖いよ」

 「アメリカ・イタリアのマフィア合同会議をやるらしいから、それで荒れているんじゃないか」

 「ていうか、外国の要人でさえ、誘拐する連中だから・・・」

 と言いながら、胸ポケットのベレッタに手を入れる。

 「おい、ジャッポーネ。お前たち狙われてるぞ」

 「うそっ!」

 「って、お前たち、だれ?」

 「イタリアの諜報部SISMEよ」

 「な、なんで?」

 「日本の外交官を殺して、はく付け・・・」

 「「マジ?」」

 こくり × 2

 護送車が横付けされ、日本人外交官が危機を脱する。

 

 

 ドイツ領クレタ島の南に25km四方ほどのガブドス島があった。

 ・60・59・58・・・・・

 この島から世界初の人工衛星が打ち上げられるのは、南の方が軌道に乗せやすかったため。

 ・30・29・28・・・

 国内の領域であり、失敗しても南東側600km〜900kmは、海しかなく安全だったからと言えた。

 ・20・19・18・・・・

 弾道軌道線上には、ドイツ艦隊が適度な間隔で配置され、エジプト側にも救援隊を配置。

 ・10・9・8・7・6・・

 打ち上げロケットは全長40m×直径3.2m、発射重量320トン

 バイエルンにある標高2960mの山ツークシュピッツェの名を冠した打ち上げロケットだった。

 ・5・4・3・2・1・0

 爆音とともにロケットと白煙が青い空に向かって立ち昇り、

 ドイツ人たちの誰もが計画の成功を祈り、歓声を上げる。

 各国とも得意分野で先行し、後続の国を慌てさせ、焦燥感を募らせ無駄な予算を強いる。

 どこの国でもやっていることであり、乗るやつが馬鹿なのである。

 とはいえ、置いてけぼりを食らうのが嫌だと思うのが国民であり。

 予算が欲しいとか、利権になるとか、民衆を巻き込んだり、栄誉心から世論を動かしたり・・・

 「凄いな・・・」

 「うん」

 「日本も欲しい」

 「んな、予算はねぇよ」

 「衛星軌道から監視されたら、隠しようがないよ」

 「きっと平和そうな日本を見てやっかむだろうね」

 「ロケット開発技術を向上させるためには予算を取る必要がある」

 「9割の負け組と1割の勝ち組で貧富の格差も広がる。血税も相当なものになる」

 「ロケット関連なら9割9分の負け組と1分の勝ち組みだろうね」

 「国防費から出せよ」

 「2個師団潰すか?」

 「軍隊か、なんか、豪州に来て、国防軍の必要性を感じなくなったな」

 「平和は、中央集権の敵だよ。国民が弛むだけでなく地方分権を要求しやがる」

 「女も子供も強くなりやがる。むかしは良かったよな」

 「インドネシアに軍国主義化してもらうか」

 「もう、まっとうな理由がないと税金が取れないよ」

 「世論誘導も正しいとか、間違っているからじゃなく、地元の視野の狭〜い、要望だよ」

 「あと、上っ面の良い政策」

 「がぁ〜! 民主主義嫌いだ」

 「散々、無茶やったからね。戦前・戦中を忘れた頃には、右翼の揺り戻しがあるだろうね」

 「大本営が特攻しなくて済むのなら、考えても良いがね」

 

 

 

 豪州日本

 ステップ地帯

 目標の廃車に向かって火線が浴びせられ、一分もせずして穴だらけになっていく。

 無理してスペックを競争をしなくても、機関銃であれば敵兵の動きを止めることができた。

 映画やアニメのように命知らずに姿を現わせばハチの巣になるのである。

 というわけで、良い機関銃とは何かというと “連射が利いてジャムらない機関銃” と言えなくもない。

 とはいえ、撃てば衝撃で部品が歪んだりするのであり、分解整備は日常のことと言えた。

 アメリカ ブローニング(12.7×99) 重量38kg  横流し(M60)機関銃(7.62mm×51) 重量10.5kg

 ドイツ  M42(7.92mm×57) 重量11.6kg

 そして、開発中の新型機関銃(6mm×50) 10kg の実弾演習が行われていた。

 「良いと思うよ」

 「威力が小さいのだから、もっと軽い方がいいよ」

 「銃身を冷やせなくなる」

 「分隊支援火器なんだから、もう少し、手を抜いて良いんじゃないか」

 「威力が小さいのだから連射だけでも確保したいんだよ」

 「まぁ 弾が続く限り近付けさせないのは大きいけどね」

 「しかし、M42は、古い割に洒落にならんな」

 「装甲車は機関銃以上の防御で製造するから、相手は数を揃えられるよ」

 「別に相手を日本に限って装甲車を開発したりしないよ」

 「それに対車両は、パンツァーファウストとパンツァーシュレックで戦える」

 「それより、シャーマン戦車に飽きたぞ。アラブ・イスラムの戦車にも負けてるじゃないか」

 「そういえば、米独ソから戦車買わないかと打診があったらしいぞ」

 「M48戦車、タイガーV、T54か・・・」

 「列強は、更新が早いよな。攻められるとヤバいかもしれないな」

 「敵上陸部隊を大陸奥地に引き込んで殲滅してやるんだと」

 「焦土作戦上等かよ」

 「土地持ちが多いと焦土作戦で強いぞ」

 「そういえば、土地持ちが多過ぎて戦意低かったっけ」

 「本音は、開戦劈頭、主力戦艦部隊を真珠湾に特攻させた伝統があるからね」

 「もう貧乏将兵を前線に押し出して、高みの見物なんてできないよ」

 「ぐっはぁ〜! そ、そうだった〜」

 元山本長官は国民から軍神と言われながら、

 国防省エリート軍官僚からは疎まれていた。

 

 

 豪州日本

 国産開発か? 購入か?

 二つの選択は、常にあった。

 外側日本で内側外国製というのもあった。

 実のところ、引っ越しと農業対策の皺寄せで他業種への補整予算が付かず、

 日本航空業界の主力は零式貨客機だった。

 「新型エンジンは2000馬力だ」

 「なにが新型だよ。限りなくパクリに近い、良いとこ取りの寄せ集めじゃないか」

 「金がないのが悪い」

 「農業と土建屋に金が流れているからな」

 「開発費が捻出できん」

 「DC6を買うの?」

 「んん・・・ドイツ製より安いし、長距離対空対潜哨戒機も欲しいし、買うよりないかな」

 「別に通商破壊やられても困らんよ」

 「そんなことだから、予算が出ないんだ」

 「豪州って、危機感低過ぎるよ」

 

 

 

 バレニー諸島

 天候の回復を待っていた零式輸送機30機が飛び立って行く。

 極地は夏でも零度以下だった。

 そして、少し内陸側に入ると、指先が凍傷になりそうな気温に低下する、

 日本が選んだ越冬場所は、そういう場所だった。

 越冬隊の交代が行われ、新しい越冬隊が建築資材を組み立てていく。

 南極大陸

 昭和基地の格納庫

 「雪上車か、組み上がれば、大きいだろうがね」

 「空輸で組み立てにして、逆に良かったかもしれないな。完成すれば15トンになる」

 「完成するまで時間がかかるよ」

 「越冬中に組みたてれば良いんだけど、いま欲しい」

 「すぐ使えるのはスノーモービルかな」

 「楽しそうだな」

 「氷上亀裂に落ちなければね」

 「沿岸部より少ないだろう」

 「氷が海側に押し出されているから、山脈側はクラックしやすいよ」

 「遊んでいたら燃料が底を尽くよ」

 「当面は、空輸物資の運搬だよ」

 「もっとマシな輸送機を開発すれば良いのに」

 「それより、よさげな高台は、あったの?」

 「アオガエルが離着陸できそうな場所があったらしい、標高720m」

 「そのくらい高ければ、氷に閉じ込められなくて良さそうだけど。高台で風速50mなんていやだよ」

 「刳り貫くんだろう。中は大丈夫」

 「外に出たとたん、はるか彼方にまで飛ばされそうだな」

 「頑丈に作ればいいさ」

 「凍土を掘る方が辛いかも」

 「掘るというより、爆破に近いね。指向性爆薬の威力は大きい」

 「それに氷は水より体積が大きい、温度が高くなると体積が減り、隙間ができる」

 「成形炸薬弾って、軍事用じゃないの、高いだろう」

 「穴さえ開ければ、発破を仕掛けられるからね」

 「まぁ 石炭でも掘れれば、自家発電で自給自足しやすいと思うけど」

 「氷が融けるとまずくないか」

 「それもそうか」

 

 

 

F-8J クルセイダー

 

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 月夜裏 野々香です。

 大本営 “特行” 引っ越しまであと4年です。

 ジェット機関係はドイツの科学技術を吸収できなかったので各国とも5年遅れです。

 

 目指すは、豪州日本ほのぼのペンギン村でしょうか、

 一億総コアラ化、ゆとり社会は可能か?

 

 

 オーストラリア大陸

 西オーストラリア州 鉄鉱石鉱山 マウントトムプライス、パラバード、マウントニューマン

 西オーストラリア州 金鉱 スーパーピット山 

 西オーストラリア州 金・ニッケル鉱山 カンバルダ

 クイーンズランド州 炭鉱 グーニエラ・リバーサイドー、モーラ、

 ニューサウスウェールズ州 炭鉱 マウントソーレーイー

 ノーザンテリトリー(北部準州) ウラン鉱山 ジャビル

 クイーンズランド州 ボーキサイト鉱山 ウイパ

 

 

 

 

日本連邦
オーストラリア (大和) 北ニュージーランド (瑞穂)
ブリズベン 広島 オークランド 旭川
シドニー 東京 ハミルトン 札幌
    ウェリントン 函館
キャンベラ 京都    
メルボルン 大阪 南ニュージーランド (秋津)
アデレード 仙台 クライストチャーチ 高松
    ダニーディン 高知
パース 福岡    
    信託統治領
ダーウィン 沖縄 ポートモレスビー ポートモレスビー
    ラバウル ラバウル
タスマニア (八島)    
ホバート 豊原    
       

  

 

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第16話 1956年 『晴れたらいいね』

第17話 1957年 『天孫降臨の儀』

第18話 1958年 『富からの巣立ち』