月夜裏 野々香 小説の部屋

   

新世紀エヴァンゲリオン 『赤い世界』

       

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 人類補完計画ゼーレ案主導のサードインパクト世界

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 第04話 『そんなこんなで』

 だきぃ〜

 ちゅっ!

 その日、シンジに抱きしめられキスされるアスカは、いつもと違って見えた。

 

 バイオ系ベディッカー・シュール。

 メタル系モルトケ・エンロープ

 アスカの計画は、2人の研究を取り入れ、少しずつ成果を上げていく。

 二人の技術プログラムが3Dで流れていく。

 矛盾するモノを取捨選択しながら必要な技術を流用し、融合させつつ昇華させていく。

 アスカが構想している親子の連続性を強化する人類補正計画が推し進めていく。

 そして、もう一人、ザイドリッツ・ラングレー。

 父親が前の二人と同レベルであれば、サードインパクト後でも自我を保っているはず・・・

 『アスカ様。よろしいので?』

 「人は子供を残しても断絶している。人は財産を残しても死んでいく」

 「連続性、非連続性のメリットも、デメリットも、計算ずくよ」

 『ドイツ系が世界の常識を作る。ですか?』

 「そういうことね」

 アスカの精神構造はプライドによって支えられていた。

 その可能性を碇ユイが認め、ゼーレも消極的ながら自由にさせていた。

 

 

 とある午後

 深緑が湖を取り巻き、木漏れ日がそよぐ。

 鳥がさえずり。リスやウサギが顔を見せる。

 午後の茶会をバルタザールが準備していく。

 ゼーレ本部だけあって相当な食料備蓄がされてる。

 小麦粉、インスタント、缶詰など保存食は事欠かない。

 しかし、生鮮食料も食べたい・・・

 シンジ、アスカ、メルキオールが並んで湖水に釣竿を垂れていた。

 シンジは、時折、隣のアスカを気にする。

 アスカは絶世の美女で毎日のように綺麗さを増していく。

 シンジは半年ほど年上だった。

 しかし、身長、知能、体力など全ての面でアスカが上。

 もし、自分一人だけなら、あの赤い海岸で人生が終わっていたはず、

 それが生活の主導権を奪われて、ここにいる。

 恋愛対象より怖いお姉さんに近かい。

 とはいえ、この赤い世界の人類はシンジとアスカだけ。

 本当にそういう関係になるのだろうかと思い悩む。

 「・・・シンジ。釣れなかったら。わかっているでしょうね」

 アスカは横に猟銃を置いていた。

 いつでも、ウサギを狩れるように準備している。

 思わず真剣に水面を見つめる。

 「き、きっと釣れるよ」

 「だいたい、釣りなんて、ドイツじゃ免許制なのよ」

 「えっ!」

 「なに?」

 「魚釣るのに免許がいるの?」

 「ドイツは、そういう国なの、因みに無免許だけど捕まる心配はないわね」

 「うん・・・」

 「ん? あのウサギ。大きいわね」

 青い眼が輝く。

 「だ、駄目だよ。まだ、3時になってないし」

 「んん・・・・香ばしく照り焼きにされたウサギが食べたいわ」

 「さ、魚釣るから・・・」

 !?

 「あっ!」

 手応えを感じて引き揚げる。

 鯉。

 「・・・見て、アスカ」

 「へぇ〜 凄いじゃないシンジ。少しは、腕を上げたわね」

 「アスカ。この大きさなら、大丈夫だよね」

 「・・・あんたが上手に作ればね」

 「う・・・し、塩焼きにしてみるよ」

 「シンジ。茶会が終わったらエントリープラグに入るわよ」

 「またエントリープラグに入るの?」

 「サードインパクト前と数値が違うから用心のためよ」

 「うん・・・」

 「シンジ。誤差修正を確認するからダブルエントリーよ」

 「うん・・・」

 さらにメルキオールが魚を一匹利上げ、城へと持っていく。

 

 午後の茶会はイギリスの伝統だった。

 しかし、ドイツの上流階級だと茶会も珍しくない。

 バルタザールが紅茶を注いで並べていく。

 ゼーレ本部のロボットは家事手伝いなど仕える能力が低く。

 日本化学重工のロボットは接待能力が高かった。

 シンジは、正面に座るアスカに見惚れることもある。

 アスカは知っているのか、知らない振りをしているのか、面白がっている様にも見える。

 見ないで知らん振りをすると、かなり不機嫌になったりする。

 シンジは腫れ物に触るように戸惑う。

 「ア、アスカ。もう一つのフロア。行かなくていいの?」

 アスカの表情が陰る。

 「あの二人の技術プログラムでも足りている・・・」

 「ぼ、僕が行こうか?」

 「はぁ〜 死にたいわけ?」

 「い、いや、死にたくはないけど・・・」

 「・・・そうねぇ 上手くやったら、下僕時間をゼロにしてあげてもいいか」

 「本当♪」

 「シンジ。バンジージャンプの方が生還率高いのよ」

 「えっ」

 「まぁ いいけど・・・」

 

 

 シンジは、ビビリながら扉の前に立つ。

 ごくんっ!

 ケルベロスが暗号を解読して扉を開ける。

 戦闘ロボットを先頭にフロアなの中に入っていく。

 シンジは暗い部屋を恐々と覗き込む。

 第一歩。

 ロボットのライトで照らされたフロアは機械類が整然と並んでいた。

 こそこそ、こそこそ、こそこそ、こそこそ

 フロアの奥へと進んでいく。

 静寂の中、不意に照明が点けられ、戦闘ロボットが散開していく。

 次の瞬間、十数体の戦闘ロボットが機能を停止。

 「メルキオール!」

 機能停止。

 !?

 背後の気配にシンジが振り返る。

 

 

 

 

 

 

 数十分後

 シンジがペンペンを連れてアスカのもとに現れる。

 「・・・・・」 むっすぅうう〜!!!!

 「アスカ。久しぶりだな」 ペンペン

 ちゃっ!

 アスカが拳銃をペンペン突きつけ・・・

 「だ、駄目だよ。アスカ」

 「家畜にアスカ呼ばわりされる筋合いはない!」

 「アスカ。お、お父さんじゃないか」

 「家畜を父親に持った覚えもない!」

 「そんな、酷いよ」

 「アスカ。どうやったか、知りたいかね」 ペンペン

 「ふん! 全然、興味ないわ」

 「サードインパクトを利用して、LCL化した自分自身を光質と闇質を融和させつつ凝縮したのだ」

 「・・・・」

 「凝縮率を間違って、この体積になってしまったのが失敗だったがね」

 「・・・・」

 「この体積で思い出したのが面白半分で作った温泉ペンギンでな」

 「ほかの物にも変えられるが・・・」

 「・・・・」

 「・・・まだ怒っているのか、アスカ」

 「・・・パパなんて呼ばないからね。罰として、その格好でいるのなら許してあげる」

 「そうか、実は、かなり気に入ってな。ありがとう、アスカ」

 なんとなく家庭的に和んでしまう。

 

 

 ペンペンとテレビゲームをするというのも妙な気分で、シンジは落ち着かない。

 「・・・ほう、相手に自分を傷付けさせて精神的に優位に立ったわけか。我が娘ながらやりおる」

 「あ、あのう・・・ザイドリッツ博士」

 「ペンペンでもいいぞ」

 「で、でも・・・」

 「最初に “ペンペン” と言われて、まぁ 悪くないと思ったよ」

 「この姿でザイドリッツ博士と言われても変なものだ」

 「そうなんですか?」

 「このペンペンは小さいように見えて、内面世界は、とてつもなく大きくてな」

 「実を言うと、じっとしていても、全然、困らないのだ」

 「・・・・・」

 「自分が創造した世界が内面世界に作られて生きていける」

 「どうやら、リリスは自我空間を保存する器の性質があるのだろうな」

 「博士、リ、リリスというのは、なんだったんです?」

 「選りすぐれた生命を伝えるための魂の箱舟、かもしれないな」

 「でも戦いました」

 「勝ち残ったのだから第18リリン系人類は優れているのだろうな」

 「あ、あのう・・・」

 「ん?」

 そして、ザイドリッツ・ラングレーも天才だった。

 ペンペンがアスカの計画に参加すると進捗度が増していく。

 

 

 そして・・・

 「アスカ」

 「なによ」

 「宿題だけど・・・」

 もじもじ・・・

 “・・・シンジに宿題を出してあげる”

 “・・・・”

 “・・・若い男女が愛し合って結婚するの”

 “・・・・”

 “そして、子供ができて、いつの間にか、夫婦は疎遠になっていく”

 “・・・・”

 “次第に反発しあって、憎みあうようになり。10年後には、殺しあって二人とも死ぬ”

 “・・・・”

 “なぜだと思う?”

 もじもじ・・・

 「・・・言ってみたら」

 「人は、心も、体も、飢える。満たそうとしても満たされないとき」

 「奪い合い、嘘を付き合い、憎み合う」

 「そして、自制できないと殺し合いになる」

 「・・・ペンペンに聞いたのね」

 「うん」

 「まぁ いいわ・・・やってあげても・・・」 ぽっ

 「えっ!」

 「・・・・・」

 「い、いいの?」

 こくん

 ごっくん!

 「と、途中で気を変えて殴ったりしない?」

 「するか!」

 「アスカ・・・」

 「・・・・」 ぽっ

 

     

 ペンペン、ケルベロス、メルキオール、バルタザール、カスパー、

 オメデトウ

 パチッ! パチッ! パチッ! パチッ! パチッ! パチッ!

 

 

 

 

 その夜

 だきぃ〜

 ちゅっ!

 「アスカ・・・」

 「シンジ・・・」

 「えい」

 「あっ・・・」

 ・・・し・あ・わ・せ・〜・・・  × 2

 

 

 

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 オメデトウ

 パチッ! パチッ! パチッ! パチッ! パチッ! パチッ!

 また、やっちまいました。

 『赤い世界』 終わりです。

 

 

 

    

    

      

   

    

   

   

   

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第03話 『もう一つの可能性』
第04話 『そんなこんなで』 完
 
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