月夜裏 野々香 小説の部屋

   

新世紀エヴァンゲリオン 『赤い世界』

       

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 人類補完計画ゼーレ案主導のサードインパクト世界

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 第03話 『もう一つの可能性』

 海中排水量25000トン級潜水艦 “ノア” (全長260m × 全幅100m)。

 巨艦の割りに軽量なのはエヴァ光質を使っていたからだった。

 大き過ぎると普通の港に着けない。

 しかし、トライデント1機。ユミール1機を搭載できる容積があり、マギで自動操艦可能。

 エヴァ3体をギリギリ運用できたかも知れず。

 こいつで使徒戦なら太平洋艦隊に護衛させて、さぞ楽だっただろう。

 そして、この広い軍艦に人間は、たったの二人。

 自称世界の支配者、惣流・アスカ・ラングレー

 その下僕、碇シンジ。

 手下のマギ配下のロボット。青系色のメルキオール、赤系色バルタザール、緑系色カスパー。

 他に人間がいないのだから、世界の支配者なのも、あながち的外れでもない。

 ノア・ラングレーのマギは、世界中のネットワークを再構築して支配体制を固めていた。

 そして、アスカは、死ぬまで全部回るつもりなのか、

 遊び場所やら観光名所をリストアップさせている。

 「・・・シンジ。人間、遊びを知らないと駄目よ」

 アスカは、ノア・ラングレーの艦内菜園を面倒を見ているシンジにぼやく。

 「で、でもさぁ 作物って、育てていくと。かわいくなるんだ」

 「・・・・」 むっ!

 『このヘタレの小男が!』

 『他人の意思を恐れて、ていうか、私の意思を恐れてか・・・そういう物に・・・』

 能動的な少女と受動的な少年の出会いは、ある種、不幸を予感させる。

 これは、どちらが正しいとか、

 間違っているとかより、気質の差。

 「シンジ。エントリープラグに入って」

 「ん? なんで? エヴァないよ」

 「サードインパクトで、どんな影響があったか調べるのよ」

 「あれが一番、手っ取り早く調べられるの」

 「ぅぅ・・・血の味がするから嫌だな」

 「いいから入りなさい」

 エントリープラグで得られた情報がマギに送られる。

 数値の変化を見るアスカの表情が変わっていく。

 

 

 ドイツ

 惣流・アスカ・ラングレーの故郷。

 トライデント機が森林上空を旋回する。

 内陸に入り込むと赤い海の反射が弱まり、青み掛かった空に近付いていく。

 ライン川が深緑の大地を分け、

 小さな古城が川崖の上にポツリと取り残されていた。

 空き地にトライデントを着陸させ。

 先にシェーンブルク城に到着し

 準備していた青系色のメルキオール、赤系色バルタザールがアスカとシンジを迎える。

 「ここがアスカの家?」

 「そうよ。メルキオール。屋敷の準備はしているでしょうね」

 「はい、全て完了しています」

 「そう、シンジ。こっちよ」

 「うん」

 「まぁ 自分の家だと思って、部屋は腐るほどあるから好きに使っていいわ」

 「な、なんかする事ってあるかな?」

 「端末は、マギと繋いでいるから宿題でもしてなさい」

 「ぅぅ・・・」

 人類補完計画の詳細が3D映像で流れていた。

 惣流・アスカ・ラングレーは、斜め読みに見つめる。

 既に内容を理解し、別の角度から考察する段階。

 当時は、地球資源の枯渇と人口急増、人種・民族・宗教・国境で争い。

 貧富の格差、階級格差、地域格差、自然破壊など選択の余地が狭められていた。

 今は事情が違う。

 ゼーレのサードインパクトで人類補完計画が成功し、

 星全体が心身群集液状生命体と化そうとしていた。

 ゼーレは、人類社会のマイナスを消そうとするあまり、

 プラス面の可能性さえも否定している。

 不完全な群れで取り残された2人を除いて・・・

 このまま二人で人口を増やしてもゼーレの肥料でしかない。

 アスカは、ゼーレに対し、起死回生の巻き返しを画策する。

 「んん・・・よくも、まあ・・・」

 「人類全体の危機とリリスの継承戦争の狭間で人類補完計画遂行なんて、碇ユイか、とんでもないわね」

 相手が碇ユイ、惣流・キョウコ・ツェッペリン、赤木ナオコ・・・

 使徒戦の恐怖と脅威を省く事が出来れば、なんとなく同格の天才とライバル視。

 組織力のプラス分は、ゼーレ、NERVの圧力で捻じ曲げられ、

 自由にできない部分を差し引けた。

 いくつか人類補完計画の代案構想はあり、

 現在は、その中の取捨選択の一つ、

 最悪の結末を避けて、それほど悪くない結果と言える。

 まず、気になるのはマギの支配を受け付けないゼーレ本部のケルベロス。

 マギ2体を連結させたケルベロスは、まともに戦うと勝ち目がない。

 かといって、無視するには余りにも潜在能力が強大すぎた。

 「メルキオール。ミュールは?」

 『現在、ゼーレの本部に向かって進行中・・・50km地点です』

 「ゼーレのおもちゃか・・・」

 『マギとの回線は遮断されています』

 「陰に篭もって、どうするつもりかしら・・・」

 『量産型エヴァに反応はありません』

 「1体だけはN2爆弾で封印しているけど、残り8体は、フリーのはず・・・」

 『現在、ミュールは、妨害を受けていません』

 「んん・・・ゼーレの意思決定は、まだ、不完全のようね」

 ゼーレは、20億以上の精神体が融合しつつ溶け合っていた。

 知識が正誤で取捨選択しつつ一つになり、

 歴史観、記憶、感性、情感、経験、品性を重複共感する分野で整理させながら昇華していく。

 一つ一つの個性らしきモノは存在していた、

 20億以上の視点と感性を保ち、共有できる知識は膨大。

 虫唾の走るような個性は、忌み嫌われ、排斥され、寄せ集められて、押し潰さされていく。

 『完全になるまで、数万年と考えられます』

 「宇宙的には短いけど、気が遠くなるわね」

 『アスカ様の人類補整構想も、人類補完計画に負けていません』

 「・・・障害になるのは、ケルベロスね」

 『現状維持であれば、問題はないかと・・・』

 「地獄の番犬ケルベロスは、ゼーレが完成するまで持たない」

 「その場凌ぎで、ゼーレを守るためのタダの繋ぎでしかない」

 『ゼーレの人類補完計画が成功すれば完成した群集生命体になります』

 「そうなれば、ケルベロスは無用なレベルね。キール議長と交渉してみるか」

 『回線を開きますか?』

 「・・・・ミュールを停止させて」

 『ゼーレ本部まで45kmで停止しました』

 「これまで送電を断たれるといった妨害は受けていない・・・」

 『挑発しかできないのが見抜かれているだけでは?』

 「んん・・・・やっぱり、私が直接、行かないとね」

 『危険です』

 「でしょうね。私達は、ゼーレのタダの肥料とか、不確定性の燃料」

 「もう一つの可能性に過ぎない。絶対に必要とはいえない」

 『笑えない、罠があるかもしれません』

 「んん・・・・」

 

 シンジは、シェーンブルク城の中を歩き回る。

 人のいない世界で一人っきりは寂しかった。

 中学生まで生きれば “みんな死んでしまえばいいんだ” と、一度は、思ったりする。

 しかし、本当に誰もいない世界に忽然と残されると、かなり厳しい。

 南米の地下都市から持ってきたインスタント食品はあった。

 しかし、生鮮食品も食べたい。

 城の窓から外を見ると川があり、魚がいそうだった。

 そして、食べられそうな物もあるかもしれない。

 城を一回りすると・・・

 「アスカ、少し城の外を歩いてくるよ」

 「・・・・」

 アスカは、3Dに見入ったまま、手を振る。

 互いに人恋しいのだが壁がある。

 自分と他者を隔てるATフィールドは、心の壁。

 一つになろうとする衝動に反発し、人を葛藤させる。

 一時的に一つになっても個性を保つため離れたい衝動が生まれる。

 それが良い意味でも、悪い意味でも、違う可能性を育てる。

 

 シンジがライン川に釣竿をたれると、森の奥からウサギが顔を見せる。

 サードインパクトの影響で自然が正常な形に回復しているように思えた。

 「・・・アスカに見つかると食べられるよ」

 ウサギに忠告したりする。

 捕食するため鹿を撃ち殺せるのなら、朝飯前でウサギを撃つだろう。

 魚はいそうだが、なかなか釣れず、ウサギの食べている物に気づく。

 「これなんだろう」

 黒い粒粒の塊は、妙に美味しそうに見えた。

 

 

 城のマギ端末でのやり取り。

 「カスパー。これが最後の通信?」

 『はい』

 「碇ユイは解読したということね」

 『返事が “惣流・アスカ・ラングレー様の計画成功を祈る” ですから』

 「ふ〜ん」 笑み

 『認められたということですね』

 「認めさせたのよ」

 !?

 「・・・アスカ。これ見つけたんだけど」

 「あら、ブラックベリー♪ 他にはなかった?」

 「見つけたのは、これだけ・・・」

 「敷地内は、ブルーべリー、プルーン、ヘーゼルナッツ、リンゴ、ラズベリーも生えているはず」

 「ウサギもいたっけ」

 「ウ、ウサギは見なかったよ」

 「・・・・語るに落ちたわね。インスタントや缶類ばかりじゃ 病気になるのよ」

 「シンジの身長も伸びないわね」

 「・・・・」

 「シンジ。人間が適当に狩らないと増えすぎて面倒な事になるのよ」

 「そ、そんなに多くなかったから」

 「はぁ〜 まあ、いいわ、それより、宿題は?」

 「あ・・・」

 「シンジ〜 私をババァにするつもり?」

 「えっ、そんな事は・・・」

 「まぁ いいわ、ゼーレの本拠地に行くわよ」

 「えっ」

 

 

 量産型エヴァが砂浜に埋められていた。

 下手に動けばN2爆弾が爆発して死。

 もっとも、N2爆弾の壊変まで待てば爆発しないのだから動かなくても支障はなかった。

 元々、外界の問題より、内面の問題で忙しいため動きたくない。

 「・・・キョウコ。あの娘の発案どう思うね」

 「キール議長。不完全な群れが非連続性でリセットされるのは、プラスとも、マイナスとも取れますわ」

 量産型エヴァが声色を変えながら呟きが漏れる。

 「しかし、最小限の変革で効率の良い手法を構想している、君の若い頃の片鱗を見せるな」

 「お上手ですこと」

 「んん・・・親子の関係で連続性を補強してしまうとは・・・・」

 「通常 A + B で C が生まれます」

 「あの娘は無知覚な遺伝を知覚させて A + B で ABC にしようとしているだけ」

 「子供は自尊心が奪われて面白くなかろう」

 「彼女は、どの程度、親子の連続性に関わるのかね」

 「夫と妻の遺伝子比率で幅があるようです、無知覚を知覚させる程度でしょうか」

 「夫と妻の感情の不一致とリスクは?」

 「性格の不一致が大きいと子供の感性に幅が出ると思います」

 「分裂症の恐れは?」

 「選択の幅を広げているだけで、結局、決めるのは子供の意思ですから」

 「我々もそうだが人は善意だけで作られていない」

 「親子の間で善意を連続させるのは喜ばしいかもしれない」

 「しかし、親の子の間でも利己主義が存在する」

 「悪意も連続するのかね?」

 「家族単位で連続するはず」

 「私達は融合させつつ排斥、淘汰させていますわ」

 「もう一つ、固体差からくる自尊他卑はどうかね」

 「容姿、性格、知性など差別で起こる好き嫌いは人間誰しもある」

 「親子の絆が強まり、孤独感が小さいため薄められる可能性がありそうです」

 「親でさえ子供を差別する、他人ならなおさらというのに?」

 「無知覚だからですわ」

 「差別しようとする相手も自分自身なら、代償は親子の葛藤が大きくなることでしょうか」

 「不完全な群れは、もっと利己的だと思うがね」

 「親子でも生存圏で争い、主導権の奪い合いは良くあること」

 「それは調整次第では?」

 「子供を自分の分身とより強く認識されれば態度も変わるはず」

 「親が死んだ方が子供は自由になれる」

 「子供が死んだ方が親は自由になれる」

 「夫や妻が死ねと片方は自由になれる」

 「逆にいうと相手が死ねば束縛から解放される」

 「自制や束縛は、生きる糧にも社会規範にもなりますわ」

 「人が潜在意識下で思うことは怖いよ」

 「不完全な群れが最良と決まっていませんわ」

 「確かに人類補完計画は、そこからだったな」

 「ええ」

 「不完全な群れであった頃、孤独で辛く悲しいと感じやすい」

 「今だと、混沌で辛く煩わしいと感じやすい」

 「変革は取捨選択。捨てなければ得られませんわ」

 「そう、我々は、捨てたことで、得られた結果だ」

 「ゼーレ本部。娘に任せてしまうので?」

 「貸すだけだ」

 「クムラン・・・でしょうね・・・」

 「因縁だな。彼女のやろうとしていることは個別系の人口進化に属するからね」

 「彼女の狙いも、それだろうが・・・」

 「親子の絆が強まれば、ゼーレ球の合流で有利になると思われます」

 「兄弟間はどうかね?」

 「親を経由して結束が強まりそうです」

 「成功するかね?」

 「統計上、相思相愛な夫婦間で生まれた子供は、家族を大切にしますわ」

 「家族のためにお金を使う、家族のため犠牲になる、かね?」

 「美談ですね」

 「状況しだいで、情愛を断ち切った方が良い場合もある」

 「憧れませんか」

 「親子で人類補完計画か・・・」

 「彼女の精神が歴代の血筋で流れていくのであれば、本部を任せても支障はないだろう」

 「あら、キール議長。彼のことを忘れていますわ。碇シンジ」

 「そうだったな。イレギュラーにならなければいいが・・・」

 

 

 ゼーレ本部は湖に囲まれた城だった。

 その本体はジオフロントと同様、地下に存在した。

 『惣流・アスカ・ラングレー様、碇シンジ様ですね』

 3D映像のケルベロスが現れて確認する。

 「ええ、名前と画像が一致していないわね」

 『一般、受けだそうです』

 三つの頭、三つの尻尾の犬なのに可愛かったりする。

 「まぁ いいわ、クムラン派を全部調べるわ。案内して」

 『あそこは、個別人類人工進化計画の領域です』

 「不可侵じゃないでしょ」

 『一部、把握しきれていません』

 「みんな一緒にじゃなくて、自分さえ良ければって連中だものね。」

 『最後まで微妙な立場でした』

 「人間の脳をロボットに入れたものが進んでいたの?」

 『はい、他にオーラー強化。ナノマシーン内蔵型。バイオ融合型・・・』

 『それと・・・エヴァ光質を流用していたようですが、こちらがブラックボックスです』

 「ゼーレは危険性を認識しているのかしら?」

 『コアとN2機関だけは最後まで管理していましたから』

 「だといいけど。組織が大きくなれば隙間もできるけど、ゼーレで管理不十分は失態ね」

 『人間の自由と発展性は、比例している場合もあります』

 『人類補完計画が最終段階に入り、ゼーレ球入りで混乱。その前後を突かれたようです』

 「クムラン派の中心核で不明者は?」

 『3人です』

 「出して」

 ベディッカー・シュール、

 モルトケ・エンロープ、

 ザイドリッツ・ラングレー。

 「・・・どこかで・・・見覚えがある名前があるわね」

 『はい、ザイドリッツ・ラングレーは、アスカ様の父親です』

 むっすぅう〜

 「・・・コイツも天才だっけ?」

 『はい、ゼーレの中枢ですから』

 「ケルベロス。戦闘用ロボットはある?」

 『はい。戦闘になるので? 親子で?』

 「生体反応は?」

 『ありません』

 「そう・・・」

 『アスカ様。質問してよろしいですか?』

 「なに?」

 『親子で歪な感情をお持ちのアスカ様が親子の絆を強める計画を構想する』

 『不思議なのですが?』

 「どこぞの馬鹿が私の精神に干渉したせいね。今度あったら、償いをさせてやるわ」

 

 

 アスカとシンジが戦闘ロボットを率いてクムラン派のフロアへと入っていく。

 「・・・ったく、やっと開いたわ」

 『一つの部署は、通常。他の部署の干渉を排斥しますから』

 「異常はない?」

 『人間に危害を与えるような要素は、いまのところ確認できません』

 「木がある」 シンジが面白がる。

 「ここは、バイオ系よ。人間の精神を木に宿させる研究もしているわね」

 アスカがロボットのモニターで確認していく。

 「ど、どうして?」

 「サードインパクトで生き残ろうとすると、そういった方法も考え付くのよ」

 「で、できるの?」

 「さぁあ、理論が進んでも臨床段階で止まっている。コンピュータに刷り込む部署もあるけど」

 「アスカ。それは、幸せなことなのかな」

 「本人に聞いてみるしかないわね」

 アスカは、コンピュータの電源を入れると、木とのシンクロを合わせていく。

 「くすっ 木の精霊に会えるかも・・・」

 ・・・・・・

 「ベディッカー・シュール」 アスカが呼びかける。

 「・・・人間と会話するのは久しぶりだな。誰かね」

 「惣流・アスカ・ラングレー」

 「ほぉ こりゃ 懐かしい名前だ」

 「会った事、あったかしら?」

 「出不精でな。何度か見かけたことはあったがね、直接、話したことはない」

 「そう・・・あなた、幸せなのかしら?」

 「ふ 実直な質問だな」

 「植物は未知の可能性を持たない完成された素材なのだ」

 「私の想念が地球に広がっていくのなら、それは幸せなことになるだろうね」

 「植物相の幸福感が、それね」

 「そうだ」

 「人間的な喜びは?」

 「人間としての可能性は捨てたよ。幸福も、不幸もね」

 「想定内だわ」

 「わたしも想定内に収まったと思っている」

 「過剰な欲望は?」

 「土と水と光と風があれば良い」

 「人間の欲望は木や森が生きていくのに無用なものばかりだ」

 「そう・・・」

 「でも、どうして、こんなことを?」 シンジ

 「“どうして?” か “どうやって?” て、じゃないのが残念だ」

 「いや “どうやって” を聞きたいのがアスカであり」

 「“どうして” を聞きたいのがもう一人なら、面白い組み合わせなのだろう」

 「動機は人それぞれだ。しかし、方法論なら説明しやすい。君は誰だね」

 「い、碇シンジです」

 「ほぅ 碇ゲンドウの息子か。ゼーレの計画は成功したようだね」

 「あなたもね。サードインパクトを利用して、自分の心身を木に溶け込ませた」

 「その通りだ。ゼーレの群集生命体に反発してね」

 「その詳細なプログラムが欲しいわね」

 「構わんよ。好きに使いたまえ」

 

 

 もう一つのフロアへ行くと状況が変わる。

 戦闘ロボット同士が対峙して一触即発。

 「モルトケ・エンロープ。ケルベロスと戦争するつもり?」

 「ほぅ 惣流・アスカ・ラングレーか。そっちの少年は、碇ゲンドウの息子だな」

 「・・・・」

 バイオ系が静だとすれば、メタル系は動だろうか、生存圏を主張しようとする。

 「でも変ねぇ、サードインパクトで、LCL化しているはず」

 「どうやって、自我を維持しているのかしら」

 「ふん、わかるまい」

 「いえ、LCL化を否定しなかったということは、LCLを結晶化させたということね」

 「・・・・・・・」

 「ふ ドイツ人って、そういうところがあるのよね」

 「惣流・アスカ・ラングレー。お前もクォーターだろうが」

 「だから良くわかるのよ、ドイツ人の気質もね」

 「・・・・・・」

 「LCL結晶化の技術。教えてもらおうかしら」

 「なんだとぉ」

 「ここで戦争を始めてもいいけど、見逃して上げてもいいのよ」

 「・・・・・」

 「モルトケ・エンロープ。我を張らずに渡した方が身の為よ」

 「くっ!」

 

 アスカは、手に入れた技術プログラムを解析しつつ、にんまりする。

 「モルトケ・エンロープって凄いね。ロボットで動けるなんて・・」

 「どうかしらね、焦っているはずよ」

 「何で?」

 「コア無しだとLCLを光質で結晶化させても劣化する」

 「人工的に薄れていく自我の再書き込みを繰り返さなければず、自我を維持できなくなる」

 「こ、困るの?」

 「困るのは再書き込みに時に成長したのか、劣化したのか、変質したのか、わかりにくいことね」

 「じゃ ベディッカー・シュールの方が良いの?」

 「シンジ。木になりたい?」

 「い、いや、いいよ」

 「どちらにしろ、人間より、寿命が長いわね」

 

 そして、最後のフロア。

 アスカは扉の前に立って動かない。

 「・・・・・」

 「どうしたのアスカ?」

 「・・・・・」

 「・・・・・」

 「今日は疲れた。もう、寝るわ・・・」

 

 

 だきぃ〜

 ちゅっ!

 その日、シンジに抱きしめられキスされるアスカは、いつもと違って見えた。  

     

 

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 月夜裏 野々香です。

 量産型エヴァが声色変えて独り言・・・・かなりキモイ・・・

 

 

 

    

    

      

   

    

   

   

   

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第02話 『ノア・ラングレー よ』
第03話 『もう一つの可能性』
第04話 『そんなこんなで』
登場人物