月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

   

 シンジは、部屋に戻るとリュックから熊のぬいぐるみを取りだして居間の机の上に置く。

 苦しかったことが思い出され。

 なんとなく。ミサトさんに感謝してしまう。

   

 第14話 『平和は良いね』

   

 地下鉄

 駅のホームにリニアが滑り込んでくる。

 リツコ、伊吹、青葉の順で入ると、

 冬月福司令が座って、日経新聞を見ている。

 「・・・あら、副司令。おはようございます」

 「「おはようございます」」 伊吹、青葉

 「ああ、おはよう」

 「今日は、早いですね」

 「碇の代わりに、上だよ」

 「今日は、市の評議会の定例ですか?」

 「くだらん仕事だ」

 「碇め、むかしから雑務は、みんな私に押し付けよって」

 「マギがいなかったら、お手上げだな・・・」

 「そういえば、市長選近いようですね、上は」

 「市議会は傀儡に過ぎんよ、東京第三都市の市政は事実上マギがやっている」

 「議会は、マギがシミュレーションした優先順位を承認していくだけで」

 「親NERVと反NERVの反発があっても、マギ依存は、変わらんよ」

 「少し怖いですね。人間くささがないのは」 青葉

 「人間くささというのは、この場合、癒着と腐敗をさすのよ」

 「やはり、他の行政区とは、差が出ますか」 伊吹

 「効率が良く。無駄な金が使われ難いという点で優れている」

 「一応、マギは、3系統のコンピューターによる合議制になっている。多数決では、あるな」

 「知情意の3系統ですね」

 「真理を追究しようとするメルキオール」

 「美を追求しようとするバルタザール」

 「正義を追及しようとするカスパー」

 「人間も、その3つの性質がせめぎ合っている」

 「利己主義と拝金主義と嫉妬を外しているから人間よりも健全だけど」

 「人間の方がマギを理解できない」 リツコ

 「バルタザールは、わかり難いですね」 伊吹

 「美を突き詰めると愛よ」

 「合理的でも、機能的でも、能率的でもなく、費用対効果を無視しても追求しようとするの」

 「盲目的に社会保障関連予算を増やそうとするのがバルタザール」

 「単純に切捨て、民間活力を利用して、経済再建を優先しようとするのがメルキオール」

 「バルタザールとメルキオールの争いに悩みながら正道を貫こうとするのがカスパー」

 「そういわれると、人間ぽっく思えますね」 青葉

 「それは、バルタザールが一番ね」

 「コンピューターを人間に近付けさせようとした結果がマギだもの」

 「使徒戦は、メルキオールで足りるけどね」

 「被害を最小限に抑えようとバルタザールが介入してしまうことが多くて・・・」

 「科学を追及しているのに科学的でなくなってきているような」 伊吹

 「人間のための科学だ。科学のための人間ではない」

 「どんなに機能的、合理的、能率的な服でも駄目よ」

 「人は、美しくない服、人に害する服を着ようとしないものだ」

 「そうですね」

 「そっちは、複座の実験があったな」

 「はい。1030時から初号機です」

 「シンジ君は、変わってきたな」

 「ええ、頼もしくなっています」

 冬月は、視線を日経新聞に落として呟く。

 「レイも変わった・・・・」

  

  

 403号室

 シンジとレイが一緒に朝食を食べる。

 シンジは、アスカとのキスのせいで後ろめたさ100パーセント。

 そして、アスカに惹かれるという迷い・・・

 「せ、成功するといいね。複座」

 「ええ」

 『うう・・・・なんか、浮気してきた夫みたいな感覚だよ。後ろめたいよ〜』

 「あ、お土産買ってきたんだ。田舎だから、あまり良いものなかったけど」

 シンジは、シンプルなプラチナの鎖と小さなサファイア石がひとつ付いたネックレスを渡す。

 レイは、少し驚いた後、表情が和む。

 「ありがとう。碇君・・・・・・つけて良い」

 「うん、ちょっと質素だったね。田舎だったから、こういうのしかなかったんだ」

 「そんなことない、嬉しい」

 レイが首に手を回す・・・・・・・

 ネックレスが上手くつけられない

 「あ、僕が付けるよ」

 シンジは、レイの後ろに回ってネックレスをつける。

 サラッとした青髪に手が触れると頬が赤くなる。

 『ずっと、触っていたいよ〜』

 「に、似合うよ」

 「ありがとう」

 レイも、心なしか頬が赤い

 わずかに目立つ程度の小さいサファイアのネックレス。

 シンジが買った室内着、普段着、外出着でも違和感なく付ける事ができそうだった。

 「今日は、散歩しながらNERVに行かない」

 「ほら浅間山に行ったから、どこにも行けなかったし」

 「勉強は?」

 「そ、それは・・・」

 「熱膨張・・・役に立ったでしょう。中継で見ていたわ」

 「はい、役に立ちました」

 「でも、いいわ・・・散歩しながら行きましょう」

 「えっ い、いま、綾波、僕に意地悪したの・・・」

 シンジが驚くとレイが照れたのか顔が赤くなった。

 「変?」

 「あ、いや。かわいい」

 「・・・・・」 レイ、シンジ。さらに赤くなる

  

  

 シンジとレイが部屋を出ると、アスカが通り過ぎようとしていた。

 「あら、ファースト。お泊り?」

 「食事・・・」

 「ふ〜ん。仲のいい事でNERVでも複座のエントリープラグでしょう」

 「・・・・・」 レイ

 「おはよう。アスカ」

 「おはよう・・・早いのね」

 「散歩しながらNERVに行こうと思って」

 「奇遇ね」

 「・・・・・・」 シンジ、レイ、アスカ

 なんとなく、シンジを中心に左にレイ、右にアスカで歩く。

 『き、気まずい・・・アスカとキスしたからだ・・・』

 『でも、あれは不可抗力だよ。僕は望んでいたわけじゃなかった・・・』

 『でも、そういうのは、卑怯かもしれない・・・逃げちゃいけない』

 他人が見れば羨ましがられる状態。

 しかし、シンジは、力不足で状況を楽しむほどの余裕がなく、

 緊張のあまり、右手と右足が一緒に出たりする。

 アスカの方が豪胆で、いつもと同じ。

 「へえ〜 ファースト。珍しいものつけているじゃない」

 「ネックレスなんて女の子みたいよ」

 「碇君のお土産」

 「・・・・・」

 アスカの視線がシンジに刺さる。

 「シンジ。わたしには、お土産ないのね」

 「だ、だってアスカは、一緒に浅間山に行ったじゃないか」

 シンジは、アスカに睨まれると怖気づく。

 基本的にアスカの方が強い。

 「こ、今度、なにか、買うよ」

 「ふっ かわいがり甲斐のあるやつ」

 「う・・・アスカって、いじめっ子なんだね」

 「シンジって、ストレス発散に、ちょうどいいわ」

 「ひどい、大卒なのに、中学生をいじめるんだ」

 「だから、かわいがって、あげると言ってるでしょう。都合の良いときだけ大卒扱いにするつもり」

 「この前のテストは、僕の方が良かったよ」

 「くっ 漢字が、まだ読めないだけよ」

 「ボキャブラリーだけは、異常に多いけど」

 「vocabulary。悪口を先に覚えるのがコツよ」

 「ははは」

 「ファースト。あんたも、もっと、vocabulary。覚えたら」

 「・・・問題ないわ」

 ブッ!

 シンジとアスカが同時に噴出し、笑い始める。

  

  

 シンジとレイ、アスカは、公園から商店街と大回りしながら、NERVへと向かう。

 3人が、ゆっく歩くというのは初めてのことだった。

 アスカは、ペラペラと話してシンジが応じる。

 レイは取り残される。

 それでも、レイは、ほとんど気にかけていない。

 シンジは、時々、意識するのか、

 チラチラとレイの様子を見ていて、アスカがムッとする。

  

  

 ハーモニックステスト

 初号機

 シンジとレイが複座エントリープラグ。

 正=シンジ、副=レイの組み合わせで、もっとも効率のいい比率を調整していく。

 シンジを強くすればシンクロ率とATフィールドが増大。

 レイを強くすれば、体術と戦術が増大。

 リツコとミサトが流れる情報を見ていた。

 
初号機(シンジ) 零号機(レイ) 初号機(シンジ・レイ) 零号機(シンジ・レイ) 二号機(アスカ)

エヴァ素体

1.0 0.7 1.0 0.7 1.3
ハーモニックス率 57 23 68 50 15
シンクロ率 65 36 77 64 73
ATフィールド 1.0 0.3 1.3 0.8 0.5

 

 「どう思う?」

 「作戦課としては二体出撃より、複座で初号機単独の方が優位よ。各個撃破されるより良い」

 「MAGIも、単独で第7使徒に勝てるとしているわね」

 「第5使徒だと怪しいけど」

 「第7使徒を二体とも、ねじ伏せてコアを引きずり出して、同時に握り潰しか」

 「シンジ君とレイの良いとこ取り、怖いわね。三座も検討したくならない」

 「生命維持を考えると検討したくないわね」

 「単独で、ハーモニックス率、シンクロ率が高い方が良いのよ」

 「まぁね、だけど、複座の初号機なら、二号機に勝っている」

 「単独だとアスカに勝てないのにね」

 「アスカ、怒っているわよ。二号機が、初号機に捻じ伏せられたんだから」

 「レイの体術に倍のATフィールドが加算されたら。いくら素体が強くても初号機が強くなるでしょうね」

 「後でパフェでも奢るか」

 「負けず嫌いか」

 「諦めなければ伸びるわ」

 「諦めたら。天才は脆いわよ」

 「アスカは、努力家よ。シンジ君の才能に嫉妬しているだけよ」

 「確かにハーモニックス率が高いと。わずかな努力でシンクロ率が大きくなる」

 「アスカが潜在的に二号機を拒絶しているのが原因ね」

 「でも技術的な力で高いシンクロ率を維持している」

 「ということは、ハーモニックス率が増大すれば飛躍的なシンクロ率になるわね」

 「でも、シンジ君も、レイも、なんとなく嬉しそうね」

 「近いものね」

 「一緒に風呂に入っているより、親密でしょうね」

 「LCL液を上から排水して下から吸水して浄化循環させているから、そういう意味の親密とは違うけど」

 「そうなの?」

 「親密になるのは、精神的なかな」

 「気分的にはそうね」

 「シンジ君とレイの神経接続の0.05パーセントがエヴァを介して重複しているのよ」

 「第6使徒でのシンジ君とアスカの神経接続の重複が0.006パーセントだけだったのに」

 「うっ それって・・・」

 ミサトは、興味深げに二人を見る。

 二人とも集中しているのか、顔色に変化なし。

 「まぁ シンジ君とアスカの神経接続も調整すれば0.009パーセント程度には、なるけどね」

 複座エントリープラグのテストが始まると。

 シンジとレイは、互いの心身が同化するような感覚を覚える。

 レイの方もシンジとの肉体的な重複を感じているのか、

 互いに惹かれるように集中力が増していく。

 「リツコ、ど、どんなものなの?」

 「聞いてみたら・・・」

 「正直に言うかわからないけど、シンクロ率に波がないでしょう」

 「それに上昇傾向にある」

 「二人とも拒絶してない。凄い集中力ね・・・何に集中しているのかしら・・・」

 「シミュレーションは、こなしているから戦闘は出来るみたいだけど・・・」

 「うっ・・・」

 「倫理的に問題ありね」

 「教育委員会にばれなければ、いいわ」

 「ミサトも外道になったわね」

 「勝てば官軍よ」

 「勝てればね」

 「あとで個人面談するわ」

 「市長選で反NERV勢力が動いているから」

 「なるべく、年齢相応の節度は、保って欲しいわね」

 「チルドレンの不始末が一面を飾ることはないと思うけど、人の口に鍵はかけられない」

 「はぁ 世俗は、偽善者ぶって、建前で押し切ろうとするから」

  

  

 アスカが先に上がると管制室にくる。

 「・・・まだやっているの。あの二人?」

 「二人とも集中力が落ちていないから」 リツコ

 「ふん、二人掛かりで、わたしに勝ったからって、調子に乗っているのね」

 「アスカも、今度、シンちゃんと入ってね」

 「イヤよ」

 「じゃ レイと入って」 ミサト

 「もっとイヤよ」

 「じゃ シンジ君とね」

 「ハーモニックス率が向上すると、シンクロ率が容易に上がりやすいの」

 「このままだと一人で勝てないわよ」

 ニヤリとするリツコ。アスカが憮然とする。

 「あなたは、シンジ君と二号機に乗ってからATフィールドが張れて」

 「ハーモニックス率が上がっている」

 「アスカの場合、ハーモニックス率が上がると飛躍的にシンクロ率が上がるわ」

 「わかったわよ。シンジと入るわよ」

 「そのほうが、効率いいわね・・・やさしくしてあげてね」 リツコ

 「へ、変なこと言わないで・・・わたしは、一人だって、やれるんだから」

 「あれえ、アスカ・・・単体で最強なのに・・・なんで焦っているのかな〜」

 「焦ってなんかいないわよ」

 「エントリープラグを作戦上の柔軟性から全て複座にするわ」

 「なるべく、たくさんのデータが欲しいのよ。正と副の調整も時間がかかるし」

 「あんたたち、倫理観が欠如してきてない・・・なんかいやらしいわよ」

 「そ、そんなことないわよ・・・はは、はは」

 「ほ、ホントよ。LCL液の注排水システムは完璧よ」

 「ほら、対流がわかるでしょう。壁で分けているのと、ほとんど変わらないわよ」

 「どうだか・・・あの二人に集中力で負けるなんて・・・わたしは、どうするの?」

 「ええと、加持君がいたわね・・・」

 「え、加持さん。やった!」

 「電話してみるわ・・・」

 アスカは、眼を潤ませながら、ミサトの電話を見守る。

 「加持。わたし、アスカの訓練の相手して欲しいの・・・」

 「シンジ君とレイは、長くなりそうだから・・・」

 「そう・・・うん・・・わかった。よろしくね」

 「訓練〜」

 「当たり前でしょう。先に訓練場に行ってるって」

 「まぁ いいか」

 アスカは、嬉しそうにスキップしていく。

 「はあ〜」

 「気を使うわね」

 「あの世代って、理性と感情にムラがあって、安定してないから」

 「でも、シンジ君とレイ。いつまで集中していられるのかしら」

 「単座でも、その傾向があったけど」

 「複座になると、精神的にほとんど負荷がかかっていない」

 「リツコ。やめさせて、休ませる?」

 「その必要はないわ・・・調べたいから」

 「人類補完計画のデータかしら」

 「まぁ テストケースのひとつにはなるわね。二人が補完し合っているならね」

  

  

 NERV総司令官公務室

 「どう思う・・・碇・・・」

 「有用だが人類補完計画とはいえんよ」

 「ユイの計画に近いが、おまえのとも、ゼーレのものとも違う」

 「特定の人間だけの補完計画など。無意味だ」

 「では、不安定要素にしかならんな。やめさせるか」

 「最優先は、使徒に勝つことだ」

 「負ければサードインパクトを利用した人類補完計画もない」

 「だが、レイは要のひとつだ。彼女が自分の存在目的を忘れなければいいが」

 「ああ・・・他の方法もあるさ」

 「予算は?」

 「ふっ 貰って来るよ」

 

 

 管制室

 初号機、零号機の単座ハーモニックステスト

 「信じられないわね・・・調整したといっても、本当に負荷が、かかっていないなんて」

 「よっぽど気持ち良かったのかしら」

 「そうね。二人とも。もう終わりなのっていう顔だったものね」

 「なんか、いやらしいです」

 伊吹が最終報告書を持ってムッとする。

 「でも、レイは単座でのシンクロ率も、一日で、+2も上」

 「シンジ君も+1。複座は、一晩中でも、いけそうね」

 「慎重にやるべきよ。慎重にね」 リツコ

 「そろそろ、出さないと、アスカがむくれるわ」

 「あの娘、あれで寂しがりやだから」

 「シンジ君じゃ 受け止めきれないわね・・・せめて加持君並みだったらね」

 「だれが、あんな、遊び人」

 「だから、せめて、よ」

 「ハンッ!」

 「加持なんて女の敵よ。不器用でも、誠実なシンジ君がまだましよ」

 「いざとなれば命令してでも、つなげて見せるわよ」

 「お手並み拝見したいわね」

 「わたしの見たところ。シンジ君は、誠実じゃなくて臆病なだけだけど」

 「シンジとアスカとの複座・・・やってくれるでしょうね」

 「そっちで、いくの」

 「まずは、くっつけてからよ」

  

 

 食堂NERV

 ミサト、シンジ、レイ

 「さあ、二人とも何でも、好きなの選んでもいいわよ」

 「チャンポン」

 「山菜釜飯」

 「し、渋いわね・・・あんた達・・・・」

 「・・・・・」 シンジ、レイ

 「ところで、複座のエントリープラグの感想を聞きたいんだけど・・・」

 「・・・・・」 シンジ、レイ

 「ど、どうだった。レイ」

 「碇君と感覚が重なっているような気がしました」

 「そ、そう。感覚がね・・・気分はどうだったの?」

 「心地良くて、安心しました」

 「そ、そう、複座で戦えそう?」

 「問題、ありません」

 「そ、そう・・・シンジ君は、どうだったの」

 「あ、綾波と同じです」

 シンジと綾波の頬が赤い。

 「そ、そう・・・あ、あのね・・・二人とも、わかっていると思うけど・・・」

 「中学生としての節度は守ってね」

 「反NERV政治勢力とかね。あの人たち、節操がなくて、何でも、利用するから・・・」

 「・・・・・?」 シンジ、レイ

 「ああ、まったく駄目って言うわけじゃなくてね・・・」

 「あのう。ほら、一般的な常識的な範囲でね」

 「不純異性交遊は駄目よ。一応、建前として言っておくから」

 「はい」 シンジ、レイ

 「あは、あは、ははは。ごめんね、変なこと言っちゃって・・・食べて、食べて」

 「大丈夫ですか?」

 「ミサトさん、僕たちより、年棒少ないんじゃ」

 ドキッ!

 ミサト引きつる

 「こ、子供は、そんなこと心配しなくていいのよ。食事奢るぐらいの余裕はあるわよ」

 「ちゃんと部屋、掃除していますか? ミサトさん」

 ギクゥ〜

 ミサトさらに引きつる

 「シ、シンちゃん〜」

 もはや上司。年長者としての権威を失っている。

 「葛城一尉。まだ部屋が汚いんですか?」

 レイの冷めた眼。

 「埃はともかく。ゴミ袋くらいは、片付けた方が良いですよ」

 綺麗に掃除しているシンジ。

 それほど掃除していないけど、物(ごみ)の少ないレイ

 ミサトの部屋は、ゴミに埋まって、言い返せない。

 「あっ! そうだ。シンちゃん」

 「学校とNERVと家の間。走らなくて良いからね」

 「シンちゃんも、少しは、体力付いてきたみたいだから」

 「本当ですか?」

 「ええ、だから・・・部屋の件は、言わないでね。シンちゃん」

 「いいですけど・・・結婚できなくなっても、知りませんよ」

 「シンちゃんがいじめるぅ〜」 いじける

 「・・・・・・・」 シンジ、レイ

 「あ、そうだ。シンジ君、レイ。アスカって、あれで寂しがり屋さんなの」

 「二人が仲良くなるのは全然かまわないんだけど。時々、構ってあげてね」

 「はい」

 「・・・・・・・」 レイ

 アスカが食堂に入って来る。

 「ミサト。なに塞ぎ込んでんのよ・・・ゴミで、床が抜けた?」

 ミサトが、泣き始める。

 アスカが、ミサトの隣に座る

 「あ、あんた達。よく知らないくせに私の部屋のことで、随分、良いたいこと言ってくれるわねぇ」

 「これから、ミサトの部屋を見にいってもいいのよ」

 「床が抜けてないか、確かめに」

 「うううぅぅ アスカ・・・好きなもの食べていいわよ」

 「あら、無理しちゃって、年俸少ないのに・・・・」

 「ムキッ〜! あんた達、二人とも同じようなこと言って! 憎たらしいわね」

 アスカがシンジを見る

 「じゃあ・・・スタミナ定食にするわ・・・」

 「もう、加持さんたら、タフなんだから。わたしメロメロ♪」

 「おいおい。誤解されるようなこと言うんじゃないぞ。アスカ」

 シンジとレイは、慌てて後ろを見る。

 加持が、ふてぶてしく微笑んでいた。

 声がかけられるまで、まったく気配を感じない。

 加持は、テーブルをつなげると座る。

 「・・・加持君。あんたを呼んでないんだけど」

 「つれないな。葛城。半分出してやるよ。車、買い換えたんだろう」

 「・・・・・・・」

 ムッとするがそれ以上言わない。

 

 

 シンジ、レイ、アスカは、歩いて家に帰る。

 「良かったわね。シンジ。走らずに良くなって、まだまだなんだけどな〜」

 「うん。かなり恥ずかしかったよ。ひとりだったら、とても続かなかったから」

 「でもあんた達、訓練場に来なかったけど・・・」

 「ずっとエントリープラグに入ったんじゃないでしょうね」

 「うん、なんか、集中力が付いて負荷があまりなかったんだ」

 「まあ、最初は、汚染域から離れての試験的なものよ」

 「それより。加持さん、食堂で後ろに付かれていたのに全然気が付かなかったよ」

 アスカが、呆れる

 「あんた。加持さんの実力わからないの?」

 「強いんだ」

 「あったりまえよ〜 諜報の世界で、加持さんは名人なのよ」

 「へぇ〜」

 「体術だって加持さんに勝てる人、NERVに一人か、二人いるかどうかよ」

 「総合力は、世界最強の諜報員よ」

 「へえ、凄いんだ」

 「そうよ」

 「ところで、ファーストの部屋って、どうなっているの・・・ひょっとして、ミサト並」

 「・・・・・・」 レイ

 「どうなのよ・・・ファースト、ゴキブリ飼ってんじゃないの」

 「飼ってないわ」

 「どうなの、シンジ?」

 「そういえば、家具買ってから行ってないよね」

 「家具を買う前はハードボイルド風の部屋だったけど」

 「見に来る?」 レイ

 「うん」

 「ゴキブリを飼ってるかどうか、見に行って上げるわ」

 

  

 402号室

 レイの部屋は、基礎になる電化製品と家具は、シンジの部屋と同じ配置。

 そして、部屋は、それなりに清掃されていた。

 「ふ〜ん。シンジの部屋と似てるわね。小綺麗なのはシンジの方か・・・」

 「ハードボイルドってどんな、だったの?」

 「家具と電化製品がほとんどなかったんだ」

 「テレビとかタンスとかもなかったし、引っ越す前の殺風景でベットだけって感じ」

 レイは、コーヒーを入れる。

 「ちょっと、服は、どこにしまっていたのよ」

 「ダンボール。制服は剥き出しでかけていたけど・・・・」

 「その部屋、見たかったわね」

 「それでもミサトのゴミため、よりましか」

 「足の踏み場には困らなかったよ。何もなかったから」

 コーヒーの良い香りが部屋全体に広がった。

 「コーヒーメーカは、違うものだね」

 「赤木博士から貰ったの。コーヒーメーカと浄水器」

 「入れ方、上手だね・・・こんなにいい匂いがするなんて」

 「赤木博士に教わったから」

 レイは、コップ3杯にコーヒーを入れた。

 「どうぞ」

 「頂くよ」

 「頂くわ」

 「美味しい。僕が作ったものよりも美味しい」

 「リツコ直伝なら、美味いでしょうね」

 リツコの入れたコーヒーは、プロ級と評判だった。

 「でも台所は、使われてないわね」

 アスカが、勝ち誇ったように宣言。

 「アスカは、何か作ったの?」

 「ふふふっ。ちっと二人とも来なさいよ。私の部屋に」アスカ

 

  

 404号室

 アスカの部屋に初めてきたレイが見回す。部屋は、シンジと同じ程度綺麗。

 アスカの部屋は、ドイツ風の重厚な家具と電化製品で格調高く、機能的だった。

 台所用品は、いつの間にか充実。

 たいていの料理は、作れそうだった。

 アスカは、冷凍庫からタッパを取り出すとレンジに入れる。

 「綺麗な部屋だね・・・センスが良いや」

 「ほほほ、セットもので妥協してないから、こんなもんよ」

 「じゃじゃん。ロールキャベツ。食べて食べて」

 「へえ、凄い。アスカ、作ったんだね」

 アスカが、フォークをと皿を出す。

 「美味しいよ」

 「当然よ・・ん・・」

 「わたし、肉嫌いだから・・・」

 ガクッ

 「ファースト。あんた、好き嫌い治しなさいよ」

 「・・・・・・」

 「加持さんに食べさせてあげるの?」

 「ふふふ、もっとレパートリーが増えたら、いちころよ」

 「碇君。そろそろ、勉強の時間だわ」

 「えっ・・・・」

 「・・・・・・・」 アスカ

 「行きましょう」

 「あっ そ、そうだね。行くよ」

 「・・・・・・」

 「あっ、アスカ。また、そのうち、お邪魔するよ」

 「・・・・・」

 

 

 学校

 「シンジ。土産や」

 トウジとケンスケが待っていた。

 「ありがとう。トウジ、ケンスケ」

 「さあ、報告だ・・・・」

 ケンスケが、腕を背中に回す。

 ドキィィイイ〜

 冷や汗が流れる。

 『うぅぅ・・・忘れてた・・・』

 『ア、アスカとキスしたなんて言ったら、生きて帰れないよ、きっと』

 シンジ、真っ青。

 「あ、あのさ、使徒と戦って・・・そ、それどころじゃなかったんだ」

 「なんやと・・・やっぱり、おまえ、惣流が〜」

 「い、いや、それは、ないんじゃないかと・・・」

 シンジは、眼をそらせる。

 「う・・・歯切れが悪い。おまえ、惣流と何かあったな」

 シンジ。引きつる。

 「あったんかい!!!」

 「あったのか!!!」

 『な、なんで、この二人は、こんなに鋭いんだよ。超能力者なんじゃないか』

 「・・・な、ないよ・・・ないに決まっているじゃないか」

 思いっきり動揺するシンジ。

 「本当だろうな。シンジ。俺達の気持ちを裏切ってないだろうな」

 「・・・・・」 シンジ

 思わず退く。

 ゴクンッ!

 「「シンジ〜」」

 トウジ、ケンスケが一歩接近。

 「そ、そんな、はずないじゃないか・・・」

 シンジが下がると、

 トウジとケンスケが接近する

 「「シンジ〜」」

 トウジ、ケンスケがさらに迫る

 「あ、あるわけないだろう」

 シンジ。目が泳ぎまくる

 「シンジ〜 カマかけたら、モロに引っかかりやがって、吐け!」

 「シンジ〜 吐いて楽にならんかい!」

 シンジが逃げ出す。

 トウジとケンスケが追いかける

 「うおおおおおぉぉぉ〜 待たんかシンジ〜!!」

 「吐いて楽になれ。シンジ〜!!」

  

  

 

 「アスカ。はい。お土産」

 「なかなか楽しかったわ」

 「ありがとう。ヒカリ、チアキ」

 「旅行中に、なにやっていたの」

 「うん・・・・まあ、内職よ」アスカ

 「かわいそう。アスカ、そんな若くて綺麗で頭が良いのに、内職やっているなんて」

 泣く振りのチアキ

 「ほんとう」

 ヒカリが同情する

 「ヒカリ、それ、持って行ったほうが良いんじゃない。遅れると渡し辛くなるよ」

 「うん・・・・・玉砕してくるか・・・・・バレンタインチョコ渡す方が、気楽なのはなぜ・・・」

 「あれ、バレンタインチョコ。誰かに渡したことあったっけ?」

 「ないけど・・・それくらい緊張するのよ」

 「ヒカリ。ないんだ〜」

 「なんで、バレンタインデーだと好きな男子もいないのに」

 「強迫観念に囚われて、チョコレート買わなきゃいけないわけ・・・」

 ヒカリ、視線がトウジへ

 ヒカルが、修学旅行のお土産を持ってレイのところに歩いていく

 「ねえ、アスカ。碇君となにかあった。バカ騒ぎしているみたいだけど」 チアキ

 「バカが3人で騒いでいるだけよ・・・」 アスカ

 アスカが走り回っているシンジ、トウジ、ケンスケを見てため息をついた。

 「ふ〜ん。それならいいけど・・・碇君、また、カッコ良くなったんじゃない」

 「そう思ってるんなら、アタックしてみたら」

 「気のせいかな。ずっと一緒にいると違いがわかり難いけど」

 「1週間以上、離れていると、なんかさ、碇君の内面的な違いというか」

 「雰囲気が違って見えるのよね」

 チアキがシンジを見つめる。

 「まあ、悪くないわね」

 「そう言えばさ、今日、例の3年の5人組と碇君がすれ違ったけど」

 「5人組のほうが避けていたわ」

 「もし、噂がウソなら5人組が碇君を避けたりしないもの」

 「ふぅ・・・」 ヒカリが戻ってくる。

 「ご苦労様。委員長」

 「どうだった。綾波さん」

 「んん ・・・ “ありがとう” って」

 「へえ・・・・綾波さん、そんな言葉使えるんだ」

 「最近、ボキャブラリー増えてきたんじゃない」

 「思わず、ポッ! としちゃった」

 「あははは」

 「よくそんなんで、今まで生きて来れたわね。あいつ」

 「でも、アスカの方が長い付き合いになるんじゃないの」

 「アスカと碇君と綾波さんと保護者が仕事の関係で付き合っているんでしょう」

 「アスカが一番まともだから面倒見てあげないと」 ヒカリ

 「いや〜 そんなのいや〜」

 「ねえ、アスカ、今日は、碇君と三人で歩いてきたみたいだけど?」 チアキ

 「体力が、だいぶ付いてきたから、走らなくても良いって言われたみたいよ」

 「それで、3人で仲良く歩いてきたわけね」 ヒカリ

 「近くに住んでいるから、しょうがなくね」

 「しょうがなくてか・・・・」 チアキ

 「何よ」

 「外から見るとアスカと綾波さんが碇君を取り合っているようで面白いんだけどな」 チアキ

 「そんなわけないわよ。バカシンジなんて」

 ヒカリとチアキがジッとアスカを見る

 「な、何よ」

 「ふ〜ん、満更でもないってわけか」 ヒカリ

 「あのね。あんなの相手にしないわよ」

 「「・・・・・」」 ニタニタ

   

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  

   

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第13話 『ファーストキス』
第14話 『平和は良いね』
第15話 『静止した闇の中で』