月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン

『一人暮らし』

      

 第15話 『静止した闇の中で』

 NERV

 エレベーターの扉が開きミサトが入る。

 「お〜い。待ってくれ〜!」

 ミサトは、加持を確認すると黙って “閉” のボタンを押す。

 加持は、閉まる扉に間一髪で手を挟む。

 チッ!

 ミサトは舌打ちし、

 「こんちまた。ご機嫌斜めだね」

 加持は横に並ぶ。

 「来た早々。あんたの顔を見たからよ」

 

 

 NERVに向かう途上のシンジ、レイ、アスカ

 シンジが携帯で話していた。

 市長選の看板が並んで、選挙運動の声が聞こえる。

 『はい。しばらくお待ちください』 秘書

 「・・・・・・・・」 シンジ

 『・・・・なんだ』

 「お父さん。学校で進路相談のことで父兄に報告するように言われたんだけど・・・」

 『そういうことは、葛城君に一任してある』

 『くだらん事で電話するな。こんな電話をいちいち取り次ぐん・・プッ』

 「!?・・・あれ、切れた」

 「忙しいんでしょう」アスカ

 「そうかな、途中で切ったというより、なんか故障したような気がするけど」

 「男の癖に、いちいち細かいこと気にすんの止めたら」

 「そうなのかな」

 「そうよ」

 「信号機が消えている」 レイ

 「・・・・・」 シンジ、レイ、アスカが信号機を見上げた。

  

  

 ミサト、加持

 ガクン! とエレベーターが停止。

 エレベーター内の非常灯が点く。

 「あら?」

 「停電か?」

 「まっさかぁ、ありえないわ」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 「変ね。事故かしら」

 「りっちゃんが何かミスったかな?」

  

  

 実験場

 電源が落ちた。

 全ての照明、パイロットランプが消える。

 「主電源ストップ。電圧ゼロです」 伊吹

 人差し指を照明スイッチに置いていたリツコが固まる。

 背中に視線が集まっているのがハッキリとわかる

 「わ、わたしじゃ、ないわよ」

  

  

 エレベーター

 ミサト、加持

 「すぐに予備回路に切り替わるわよ」

 「何分でだ」

 「・・・・」

 

 

 発令所

 「・・・駄目です。予備回路。つながりません」 青葉

 「バカな、生き残っている回路は?」 冬月

 「全部で1.2パーセント。2567番からの旧回線だけです」 オペレーター

 「生き残っている電源を全て 『マギ』 と セントラルドグマ に回せ!」

 「全館、生命維持に支障が出ますが」 青葉

 「構わん、最優先だ」

  

  

 実験場

 男数人が実験場の自動扉をこじ開けてへたり込む

 「とにかく、発令所に急ぎましょう。7分たっても復旧しないなんて」

 リツコと伊吹が管制室に向かう

  

  

 エレベーター

 ミサト、加持

 「ただ事じゃないわね」

 「ここの電源は?」

 「正副予備、3系統。それが同時に落ちるなんて考えられないわ」

 「となると・・・」

  

  

 発令所。

 真っ暗な中にいくつもの懐中電灯で照らされていた。

 「やはり、電源は落ちたというより、落とされたと考えるべきだな」

 「・・・・・」 ゲンドウ

 「原因は、どうあれ、こんなとき、使徒が現れたらことだぞ」

  

  

 戦自管制室

 レーダースクリーンが反応していた。

 「対地レーダーに正体不明の反応。上陸地点は旧熱海方面」

 「おそらく、9番目だな」

 「使徒だろう」

 「どうします」

 「一応、安保シフトにしておけ、決まりだ」

 「どうせ、目標は第三東京市だ」

 「そうだろうな」

 「建前上、俺たちのすることはない」

 「しかし、N2バズーカ巡航ミサイルを4発入荷しているから使ってみるか」

 「そうだな、マスコミと市民に見えやすく。被害が及ばないで、効果的な場所・・・・ここかな」

 「・・・そうだな」

  

  

 戦自管制室

 「使徒依然。進行中」

 「第三東京市は」

 「沈黙を守っています」

 「一体、NERVの連中は、何をやっておるのだ」

 「N2バズーカ4つが背中に直撃したというのに、まったく効果なしか」

 「ATフィールドって、なんなんだ」

 「戦自技研がサンプルから研究しているがね」

 「まったく。わからないそうだ。やはり、生きたコアが必要だな」

  

  

 NERV本部

 リツコ、マヤ

 「タラップなんて使うことないと思っていたけど。使うとはね」

 「杓子定規な建築法に助けられましたね」

  

 NERV入口

 セキュリティーゲートで3人が途惑っていた。

 「・・・あれ」

 「なにやってんのよ。シンジ。替わりなさい」

 しかし、反応無し、

 「ああ、壊れてんじゃないの。これ」

 アスカがカバンをまさぐって、緊急時マニュアルを取り出す

 「アスカ。何しているの?」

 「あんたバカァ〜 緊急時非常マニュアルよ」

 「・・・非常事態。第三項」

 「本部と不通の場合、直ちに所属する上司。または、本部に向かい。判断を仰ぐこと」

 レイが、暗唱。

 アスカが、忌々しげにバチンとマニュアルの手帳を畳む

 「・・・行動開始の前にリーダーを決めましょう」

 「「・・・・」」 キョトン

 「当然。わたしがリーダー。異議はないわね」

 「「・・・・・」」

 「では、出発しましょう」

 「この第7ルートから下に入れるわ」

 レイがアスカの行こうとする、方向の逆方向を指差す。

 R-07と書かれた扉の脇に巨大なハンドルがあった。

 レイの無言の視線に顔を引きつらせ。

 シンジは退く。

 「ほら、シンジの出番よ」

 必死にハンドルを回すシンジ

 『こういう時だけ、男にされるんだよな〜』

 シンジは、汗だくになってハンドルを回し続ける。

 「・・・保安部員に手伝ってもらおうよ」

 「保安部員の護衛は、指揮系統が違うのと」

 「わたし達がNERV内に入ると任務が解かれて休憩に入るわ」

 「それに保安部員は、自分の手を塞いでしまうようなことしないもの」

  

  

 戦自管制室

 スクリーンに映し出される使徒。

 万策尽きた戦自幕が、電話中

 「統幕会議は・・・わかった・・・それで、政府は・・・」

 「第二東京市の方々は、逃げ支度だそうだ」

 「サードインパクトから逃げられる場所があるのか」

 「タスマニア地下コロニーかな」

 「まだ、試掘途上だろう」

 「アメリカが建設しているパタゴニア地下コロニーでは?」

 「そこまで、恥知らずではないだろう」

 「とにかく、NERVと連絡を取ろう」

 「どうやって?」

 「・・・直接、行くんだよ」

  

  

 第三東京市

 上空に飛来する戦自の重戦闘機がスピーカを流す。

 “こちら第3軍管区航空部隊です”

 “ただいま、正体不明の物体が本地点に接近中です”

 “住民の皆様は、速やかに避難してください”

 手動ドアを開けていた日向が慌てる。

 「やばい。何とか本部に知らせなきゃ」

 「ったく、遅番で来た途端に、これか」

 日向の前を選挙カーが走っていく。

 『こういった非常時にも動じない。高橋。高橋をよろしくお願い致します』

 日向は、ウグイス嬢の声にニヤリとする

  

  

 NERVの通路

 やたら狭い通路をシンジ、レイ、アスカが進む、

 クモの巣にアスカが、いやな顔をした。

 「なんで、駅からこんなに歩かないといけないのよ」

 「せっかくの計画都市なんだから、もっと近くに本部を作ってくれたら良いじゃないの」

 たくさんの分岐点が目の前に広がる

 「おまけにやたらと複雑怪奇な地下構造」

 「ミサトさんが迷うわけだよ。何で、もっと単純に作らなかったんだろう」

 「テロ対策なの」 レイ

 「テロ? 何それ?」

 「わたし達のすることに文句がある人たちよ」

 「外部からの侵入を防ぐために複雑にしているの」

  

  

 エレベーター内

 加持は、ミサトを肩の上に乗せる

 「あったまに来る連中よ」

 「ま、生きる努力を捨てた連中は、とかく他人を巻き込むものだからな」

 「邪魔くさい連中よ」

 顔を上げる加持

 「あ、もう。変なことしないでって、言ったでしょう!」

 「すまん、すまん」

 「んもう、一体全体、どうなってんのよ・・・やってくれた連中。ぶん殴ってやる」

   

  

 発令所

 オペレーター達が非常灯とローソクの火を頼りに原始的な作業をしていた。

 「被害状況です」

 青葉がライトの明かりで、手書きの報告書を読み上げる

 「現在まで電線の物理的な切断が27ヵ所。プログラムによる工作が16ヵ所発見されています」

 「やはり、故意に行われたものか」

 「・・・復旧の見通しは」 ゲンドウ

 「プログラムによるものは、2時間以内。物理的なものは8時間以内に」 リツコ

 「外部との回線を最優先に復旧させてくれ」

 「はい」

 「しかし、よどんで来たな」

  

  

 エレベーター内

 ミサト、加持

 「あつう・・・」

 「空調も止まっているからな」

 ミサトは、シャツをパタパタさせている

 「暑けりゃ服ぐらい脱いだらどうだ?」

 「いまさら恥ずかしがることもないだろう」

 「バカ、あっちに行ってよ、暑苦しい」

 「こういう状況だからって、変なこと考えないでよ」

 「ハイハイ」

  

  

 発令所

 リツコ、マヤ

 「不快指数120を超えているわね」

 「でも、さすがね。司令と副司令。この暑さにも動じていませんね」

 リツコと伊吹は上層階を見る。

  

 上層階

 ゲンドウと冬月が水の入ったバケツに足を突っ込んでいた。

 「ぬるいな」

 「・・・ああ」

  

 迫る使徒

 “当、軍管区内における非常事態宣言に伴い。緊急車両が通ります”

 “道を通りますって・・・あ、あのう、行き止まりですよ”

 ウグイス嬢が封鎖されたゲートに気付いた。

 「よし、構わないから、そこのゲートから中に突っ込め!」

 威勢のいい日向

 「は、はい!」 運転手

  

  

 真っ暗な、分岐点

 シンジ、レイ、アスカ

 「さあ、こっちよ」

 「私は、違うと思うわ」

 「うるさいわね。シンジは、どうなのよ」

 「あの・・・どっちかな」

 「うっとうしい男ね。わたしがリーダーなんだから、黙って付いてくればいいのよ!」

 勢いよくドアを開ける・・・・・・・・

 足場のない絶壁。

 アスカは、ドアノブに辛うじて掴まって、振り子になっていた。

 「もう、いや〜ぁ〜」

 絶壁の空間にアスカの声が木霊する。

  

  

 発令所

 ゲンドウ、冬月、リツコ

 「このジオフロントは外部から隔離されても自給自足できるコロニーとして造られている」

 「その全ての電源が落ちることなど理論上ありえない」 冬月

 「誰かが故意にやったということですね」

 「恐らく、目的は、ここの回線調査だろうな」

 「復旧ルートから構造を推測するわけですね」

 「しゃくな連中だ」

 「ダミーのプログラムを走らせます。猫の神経組織でも利用しますか」

 「任せる」

 「はい」

 踵を返すリツコ

 「本部初の被害が使徒でなく、人間にやられるとは、やり切れんな」

 「所詮、人間の敵は人間だよ」

  

  

 NERV階段

 シンジ、レイ、アスカ

 「・・・いつもなら2分で行けるのに、ここ、本当に通路なの」

 はるかかなたに光が見える長い通路があった。

 「あそこまで行けば、きっとジオフロントよ」

 「さっきから、4回も聞いているよ。そのセリフ」

 「あんたって、ほんと、細かい男ね」

 「シィー」

 「何よ、優等生」

 「人の声・・・」

 目を合わせるシンジとレイ

 「日向さんだ。おお〜ぃ」

 “使徒接近中! 繰り返す。現在、使徒接近中!”

 日向がスピーカで叫ぶ。

 走り去る選挙カー

 「使徒接近中ですって!」

 「時間が惜しいわ。近道しましょう」

 「リーダーはわたしよ、勝手に仕切らないで。で、近道ってどこ?」

 狭い通気口を四つん這いで進む3人

 「いくら近くても・・・・カッコ悪すぎるわ」

 「ねえ、使徒って何なのかな?」

 「何よ、こんな時に」

 「使徒、神の使い。天使の名を持つ、僕らの敵・・・・なんで戦うんだろう」

 「あんたバカ?」

 「ワケわかんない連中が攻めてくんのよ」

 「降りかかる火の粉は取り除くのが当たり前じゃない」

 釈然としないシンジと、黙ったままのレイ。

 分岐点に着く

 「きっと、こっちね」

 シンジとレイは、疑っている。

 

 

 長い坂道を登る3人

 「やっぱり変だよ。ここ、上がり坂だよ」

 「やっぱりとは何よ?」

 「いちいち、うるさい男ね」

 非常口が見えてくる。

 「ほら、今度こそ間違いないわ」

 でぇい!!

 ドアを蹴り開けるアスカ。

 地上の風景が広がり。

 巨大な使徒の足。

 ズシィィイン!!

 と響く

 「いっ!!」

 アスカ、固まる。

 慌ててドアを閉める。

 「使徒を肉眼で確認!」

 「これで急がないといけないとわかったわね!」

 「「・・・・」」 冷たい視線

  

  

 市街地の中心を闊歩する蜘蛛形の使徒

 基地内通路に飛び込んでくる選挙カー

 “使徒接近中。直ちにエヴァ発進の必要ありと認む!”

 日向の放送が聞こえて、ざわつく発令所

 「冬月、後を頼む」

 「碇?」

 「私は、ケイジでエヴァ発進の準備をする」

 「手動でか?」

 「緊急用のディーゼルがある」

 「しかし・・・・・」

 ゲンドウは、タラップに跳びつき手際よく降りていく。

 「・・・パイロットがいないぞ」

  

  

 通路

 シンジ、レイ、アスカは、分岐点の前に立っていた。

 「まただ」

 「こっちよ」

 レイは、さっさと進み。

 アスカは、ムッとして続き。

 シンジは、追いかけていく。

 「あんた碇司令のお気に入りなんですってね」

 「・・・・」 レイ

 「やっぱり、可愛がられている優等生は違うわね」

 「こんな時に止めようよ」

 「ちょっとヒイキにされているからって、舐めないでよ」

 「舐めてなんかいない」

 「・・・・」 アスカ

 「ヒイキも、されていない」

 「・・・・」 シンジ

 「自分でわかるもの・・・」

 「「・・・・・」」

  

  

 ケイジで作業員とオペレーターが手動でエヴァ3体の発進準備を進める。

 「停止信号プラグ、排出作業終了」

 「よし、3機ともエントリープラグを挿入開始」

 「しかし、いまだ。パイロットが・・・・」

 「作業続行だ」 ゲンドウ

 「大丈夫、あの子たちは、必ず来るわ」

  

  

 3人は、分厚い扉の前に立っていた。

 「・・・これじゃ。開けられないよ」

 「仕方がないわ。破壊しましょう」

 アスカが、シンジに耳打ちする

 『ファーストって怖い子ね』

 『目的の為には、手段を選ばないタイプ・・・いわゆる独善者ね』

 

 

 ゲンドウと他十数人は、汗だくになってクレーンの鎖を引き、

 エントリープラグを挿入していく。

 「プラグ固定。準備完了」

 「あとは、あの子達ね」

 シンジ、レイ、アスカは、狭いダクトを四つん這いに前進する

 「絶対に前、見ないでよ! 見たら殺すわよ!」

 「え?」

 アスカのケリがシンジの額に命中

 「バカ! バカ! バカ! 見るなって言ったでしょう」

 「仕方がないだろう。前を見ないと進めない・・・ぐはぁっ!・・・」

 アスカのケリがシンジの額に命中

 「見るな。バカシンジ」

 ダクトの蓋が外れ、

 シンジとアスカが落ちる。

 あいたたたたっ。

 シンジとアスカが呻く

 その横にレイがスタッと綺麗に着地する

 「あなた達」 リツコ

 「エントリー準備」 ゲンドウ

 「了解、手動ハッチ開け」

 作業員が総出で動き始める

 「エヴァは?」

 「スタンバイできているわ」

 「何も、動かないのに」

 「人の手でね・・・・司令のアイデアよ」

 「・・・お父さんの?」

 シンジは、汗だくになって発進の指揮を執っている父を見つめる。

 「碇司令はあなた達が来ると信じて準備していたわ」

 数人掛かりでプラグのハッチが開けられようとしている

  

  

 シンジ達は、エントリープラグに入り

 キーを回し、エントリープラグが沈んでいく

 「・・・・エントリー問題なし」

 「全機補助電源にて起動完了」

 「ロックボルトを外せ」

 斧でパイプを切断する男たち。

 オイルがパイプから噴出すと油圧が抜けてロックボルトがガクンと下がる

 「よし、自力で拘束具を外して発進しろ」

 「「「了解」」」

 エヴァ3体は、非常用バッテリーを背負い、

 アンビリカルブリッジを押し退け、壊しながらケイジを出た。

 二号機、零号機、初号機は、狭い通路を進んでいく、

 電源のカウンターが徐々に減っていく

 「カッコ悪い・・・」

 「縦坑に出るわ」

 二号機が分厚い扉を蹴り破る。

 二号機、零号機、初号機は、縦坑を這い登る

 「・・・カッコ悪〜い」

  

  

 

 突然。

 液体が落ちてきて、零号機のライフルにかかる。

 溶けていく銃身。

 「いけない。避けて」

 「えっ!」

 慌てて避ける二号機。

 ズルリと零号機と初号機の上に落ちてしまう。

 「うわぁっ!!」

 滑り落ちるエヴァ3機。

 初号機のライフルも落ちる。

 初号機、二号機、零号機は、慌てて横穴に滑り込み、溶解液を避ける。

 溶解液のせいで、モウモウと煙が縦坑を立ち昇る。

 背中のバッテリーが無くなり、外され、

 「目標は、強力な酸で本部に侵入するつもりね」

 「どうするの?」

 「決まってんじゃない。やっつけるのよ」

 「だから、どうやって? 残ったライフルは溶かされているし、背中の電池も切れちゃったし」

 「先行する機体がディフェンスよ。ATフィールドでオフェンスを守る」

 「バックアップは下降して落としたライフルを回収。オフェンスに渡す」

 「そして、オフェンスの一斉射にて、目標を破壊。いいわね」

 「いいわ、わたしがディフェンス」

 「おあいにくさま。わたしがやるわ」

 「落ちたライフルが酸で溶かされてなくて無事ならね」

 「でも、ATフィールドが、一番強いのは、僕だよ」

 「うるさい。あんたにこの前の借りを返しとかないと気持ち悪いのよ」

 「で、でもあれは、もう・・・」

 「男の癖に細かいことをいちいち言うな」

 「シンジがオフェンス。ファーストがバックアップ。良いわね」

 「・・・・わかったわ」

 「う、うん」

 「じゃ 行くわよ。Gehen!」

 一斉に飛び出す3体のエヴァ。

 飛び降りた零号機が非常用のロケットで軟着陸。

 縦穴の壁を手足で支える二号機。

 直後に溶解液が背中に落ちて、溶けていく二号機。

 背中と両足を軸に体を支える初号機。

 零号機が無事なライフルを見つけて放り投げ、初号機がそれを受け取る。

 「アスカ。避けて!!」

 身を引く二号機。

 

 劣化ウラン弾が、溶解液を弾き飛ばしながら。

 クモ型使徒の体を突き抜けると、ガックリと沈み

 初号機は、落ちてくる二号機を受け止めるた。

 「これで、スッキリしたわ」

 

  

  

 エレベーター内

 加持は、ミサトを肩に乗せてふらつき、

 ミサトは、非常用のハッチを開けようと悪戦苦闘。

 「もう〜 何で開かないのよ。非常事態なのに〜 もう、漏れちゃう」

 「こら、上を見ちゃ駄目って言ってるでしょう!」

 「はい、はい」

  

  

 回復する照明と、動き出すエレベーターにミサトと加持は、体勢を崩して重なって倒れ込む

 チンッ!

 という音とともに開く扉。

 上着を脱ぎ捨て、加持を押し倒しているミサトの姿がそこにあって、

 ゲンドウ、冬月、リツコ、伊吹、青葉が憮然と冷たい視線を二人に向けていた。

 「フケツ」

 マヤが呟き。

 ゲンドウだけが口元をゆるませていた。

  

 

 

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第14話 『平和は良いね』
第15話 『静止した闇の中で』
第16話 『綾波と昼食を』
登場人物