一人暮らし 『碇シンジ物語』
冬・・・・・
冬も恋の季節
雲が厚く、雪もチラチラ・・・
高校生活も、黄昏時。
結婚も控えて、人生の節目。
昼下がりの午後
碇シンジと渚カヲルは、公園のベンチで、ハトとスズメにポップコーンをあげていた。
最初は、手持ちぶたさの暇潰しだったが、次第に楽しくなって、いまは、惰性。
次第に近付いてくるスズメがカヲルの手からポップコーンを銜えていく。
「カヲル君は、クリスマス・プレゼント、どうするの?」
「シンジ君の希望があれば、何とかするよ」
「い、いや、僕じゃなくて、カヲル君は、洞木さんにどんなプレゼントするのかなって・・・」
「・・・そうだね・・・・!?」
公園の影でキスをしているカップル気付く。
!?
良く見ると、ディープキスだった。
ソフトなキスで止まっている二人の高校生は、少し刺激が強く、思わず赤くなる。
「「・・・・・・」」
「ク、ク、クリスマスは、ディ・・ディープキスとか・・・」 真っ赤
「ディ、ディープキスは、い、いいねぇ。リ、リリンの生み出した文化の極みだよ」
ドキドキ ドキドキ
「で、でも、クリスマスプレゼントは、別にしないと・・・」 真っ赤
「そ、そうだねぇ 気分的に、な、何でもよくなってきたよ」
クリスマス・イブ
そして、クリスマス
カップルは、ドキドキの季節
ディープキスか・・・・
シンジは、その日、いつになく緊張していた。
人生の目標が一つ、目の前に迫っていた。
『お、男になるんだ・・・』
不自然に気合を入れようとする少年が鏡に映る
『し、舌を入れるんだ・・・』
ドキドキ
『し、舌を入れて、どうするんだろう・・・』
ドキドキ ドキドキ
『な、舐めるのかな・・・か、絡めるのかな・・・舌と舌を・・・』
ドキドキ ドキドキ ドキドキ
『あ、綾波・・・怒らないかな・・・お、怒らないよね・・・こ、婚約者だし・・』
ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ
「碇君。ご飯できたわ」
「わっ〜!」
ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ
「・・・・」
ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ
「い、いま、行くよ」
ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ
「そう・・・」
ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ
なぜか、右手と右足が一緒に動いていたりする。
クリスマスイブ
香取がクリスマスツリーを飾り終えて、それなりの気分。
クリスマスケーキは、冬月副司令が注文して準備するという。
朝食は、いつもと変わらない。
「シンジ君。いつもより、歯磨きが長い」
じー!
ジー!
「・・・・・」
「そ、そうかな、い、いつもと、同じだよ」
ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ
「・・・シンジ君」
「な、なに?」
「綾波先生に “いけないこと” しようとしているでしょう」
どきぃ〜!!
じー!
ジー!
「・・・・・」
「そ、そんな・・・い、いけないことなんて・・・」
ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ
じー!
ジー!
「・・・・・」
「あ、綾波。ちょ 朝食食べたら、よ、洋服を買いに行こうよ」
「ええ」
「私たちは?」
「えっ」
じー!
ジー!
「・・・・・」
「ああ・・じゃ 一緒に・・・」
というわけで、ナイトメアで、お買い物。
なんとなく、綾波の唇が気になったりする。
ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ
心ここにあらず。
ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ
じー!
ジー!
「・・・・・」
「えっ! な、なに?」
「シンジ君。綾波先生に “いけないこと” しようとしているでしょう」
じー!
ジー!
「・・・・・」
ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ
「そ、そんなことないよ」
『・・・なんで、そんなに鋭いんだよ』
高級ブティック
ちょっとしたファッションショーが始まる。
「シンジ君。ほら、着物よ。着物」
「マナ・・・よ、良く似合うよ」
「そう? 正月は、これを着ようっと♪」
赤系統の綾波レイ。
緑系統の惣流・アスカ・ラングレー。
オレンジ系統の霧島マナ。
三人並ぶとかなり壮観。
人も羨む光景。
しかし、シンジの意識は・・・綾波とのディープキス・・・
ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ
シンジがお金を支払って、冬物を配送させる。
「・・・あ、綾波。二人で町を歩かない?」
「ええ」
「シンジ君。綾波先生に “いけないこと” しようとしているでしょう」
じー!
ジー!
「・・・・・」
ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ
「そ、そんなことないよ」
『・・・なんで、そんなに鋭いんだよ』
クリスマスイブで華やいだ街。
綾波は、買ったばかりのコートに身を包んでいた。
中央のジオフロントの大穴は、見事な湖水になってボートが浮かび、
周りに公園とその外に街を作っていた。
綾波に腕を組まれて歩く町は心が躍る。足が地に着いていないような気にもなる。
時々、腕に当たる胸の感触が心地よくて、意識が散漫になっていく。
そして、ディープキスの切っ掛けは、なかなか見つからない。
よくよく考えれば、街中でディープキスができるわけもなく、
クリスマスイブのジオフロント公園もカップルが大勢いたりする。
がぁあ〜ん!!!
『し、しまった〜 人気のないところに行くんだった〜』
シンジは、ディープキスができそうな場所を探したりするが見つからず。
ボートに乗って釣竿を垂れたり。
・・・大漁・・・
「どうしよう・・・」
「あそこで、卸してくれるみたい。活き作りも作ってくれる」
小料理店に入ったり。
レジャーランドに行ったり。
「綾波。アイススケートは久しぶりだね」
「ええ」
レイは中央付近で滑るベテラン勢の真似をしているだけだった。
それでも、氷の妖精が舞い滑ると視線が集まる。
ため息・・・
喫茶店に入ったり・・・
ちょっと寂しく、海岸の豪邸に戻ってしまう。
じー!
ジー!
「・・・・・」
「な、なにもないよ」
「あれ〜 デートしてきたのに、なにか、物足りないような口ぶり〜 なんでかな〜?」
「そ、そんなことないよ。た、楽しかったよね。綾波」
「ええ・・・」
「ふ〜ん じゃじゃ〜ん! シンジ君。これ、やろうよ」
マナが新ゲームを取り出す。
「ど、どんなゲーム?」
「ランダムでペアを作って、競争しながらロールプレイング」
ランダムって・・・・
「マナ、あんた、個人の目的のためにこんなゲームを作らせたわけ」
「脱税をしているのを事前に教えて上げただけよ」
「ったく、トリニティの目を盗んで脱税なんて、無理なのに・・・」
二つの影が扉の前で抱き合っていた。
「愛しているよ。シンジ」 ぽっ
「あ、愛しているわ。アスカ」 真っ赤
ブザーがなって、やり直し。
バキッ!
ぅ・・・
「シンジ! 何回もやり直しさせるな!」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」 orn 涙々
香取がクリスマスケーキを切り分けて、運んでくる。
「マナ・・・男女の組み合わせもランダムって、売れると思ってるの?」
「人気あるのよ・・・」 orz 涙々
「世の中、腐っているわね」
「マナ、愛しているよ」
「・・・レイ・・・愛しているわ」
ブザーがなって、やり直し。
「あ〜ん こんなはずじゃなかったのに・・・」 orz 涙々
チップに仕組まれた隠しパラメーターを誰かに書き換えられただけの話し。
ペアを組んだ相手と、金龍リツ王と紫龍ミサ副王を倒しに行く戦いは、延々と続く。
そして、1時間の休憩・・・
「あ、綾波、す、少し、歩かないか」
「ええ」
「シンジ君。綾波先生に “いけないこと” しようとしているでしょう」
「そ、そんなことないよ、さ、散歩だよ」
じー!
ジー!
ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ
「・・・・・」
小雪降るクリスマスイブの浜辺
プライベートビーチだけあって人影がない。
密かに厳重な監視がされていても目に入らないのなら、気にしないことにしよう。
ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ
「綾波。寒くない?」
「平気」
「そう・・・」
「な、なんか変なゲームだよね。あれ」
「そう・・・」
「“愛しているよ。綾波” って言いたかったな」
「わたしも “愛しているわ。碇君” って言いたかったわ」
「綾波・・・」
「でも、無理・・・」
「えっ」
「無理・・・」
「でも・・・」
「“綾波” と “碇君” で登録しないと」
「そ、そうだった。つ、次は、そうしよう」
「ええ」
「綾波・・・」
シンジは、婚約者、先生、同級生、秘書、戦友の顔を持つ少女を抱きしめる。
女性らしい肢体と、胸の膨らみ。
そして、ほのかな暖かさが服の上から伝わる。
ごっくん!
レイの瞳が閉じられ・・・
『はぁ〜 綺麗で、かわいい・・・・』
ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ
『いつものように・・キスを・・・』
重なる唇
『し、舌を・・・舌を入れないと・・・・』
『逃げちゃ駄目だ 逃げちゃ駄目だ 逃げちゃ駄目だ 逃げちゃ駄目だ』
『逃げちゃ駄目だ 逃げちゃ駄目だ 逃げちゃ駄目だ 逃げちゃ駄目だ』
ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ
「「・・・・・」」
『逃げちゃ駄目だ 逃げちゃ駄目だ 逃げちゃ駄目だ 逃げちゃ駄目だ』
『逃げちゃ駄目だ 逃げちゃ駄目だ 逃げちゃ駄目だ 逃げちゃ駄目だ』
ドキドキ ドキドキ ドキドキ ドキドキ
『えい!』
びくっ!
シンジの舌はレイに銜えられ、舌と舌が絡み合う。
なんとなく歯が邪魔だったり。
綾波の舌は、少し薄い感触で甘い香りがする。
ペロ、ペロ、ペロ、ペロ、ペロ、ペロ
「「・・・・」」
舐めているようで、舐められている。
ペロ、ペロ、ペロ、ペロ、ペロ、ペロ
『い、いつまで続ければいいんだろう・・・』
舌を絡めているようで、絡められていたり。
ペロ、ペロ、ペロ、ペロ、ペロ、ペロ
いつもより、長いキスが終わると、互いに照れたり。
「「・・・・」」
いままでより、近付いた気がするのにキスが終わった後は、妙に寂しかったりする。
いつもより、しっかりと腕を組まれて歩く浜辺は美しかった。
「・・・あ、綾波、ま、また、しょうね」
「いつ?」
首を傾げる仕草が可愛すぎる。
「・・・・」
『い、いつだろう・・・』
じー
「いま・・・」
「うん」
やさしく抱きしめると、レイが目を閉じる。
『はぁ〜 綾波・・綺麗で、かわいい〜』 でれぇ〜
ペロ、ペロ、ペロ、ペロ、ペロ、ペロ、ペロ、ペロ
綾波の小さな舌も、シンジの口の中に侵食してくる。
ペロなめ、ペロなめ、ペロなめ、ペロなめ、ペロなめ、ペロなめ
ペロなめ、ペロなめ、ペロなめ、ペロなめ、ペロなめ、ペロなめ
・・・・
家路に着く。
「・・・シンジ君」
「な、なに?」
「綾波先生に “いけないこと” したでしょ」
じー!
ジー!
「・・・・・」
「そ、そんなことないよ」
声が裏返ったりする。
むっすぅう〜!
その夜、徹夜でロールプレイングが続けられ・・・
“その籠の動物は、なに?”
“子猫”
“・・・頂戴”
子猫を渡すと金龍リツ王が、子猫と遊び始める
“こら、金龍リツ王! なにやってる。戦え!”
“いまは駄目よ”
その間に紫龍ミサ副王をやっつけて、残った金龍リツ王をやっつける。
「よ〜し! もう一度よ〜!!」
気合の入ったマナが宣言する。
「「「・・・・・」」」
翌日のクリスマス。
「愛しているよ。アスカ」
「愛しているわ・・碇君」
ブザーが鳴る。
バキッ!
ぅ・・・
「シンジ! なんで “碇君” なのよ。気色悪い!」
「・・・・・・」
「なんで・・・・」 orz 涙々
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月夜裏 野々香です。
碇シンジ君は、ちょっとだけ男になれました。
第72話 『秋も・・・・』 |
一人暮らし 『碇シンジ物語』 |
登場人物 | |||