第04話 1935年 『北風と太陽』
デュポン社のウォーレス・カロザースがポリマー66(ナイロン)を開発
日本
15000t級貨物船が就航していた。
関係者たち
「やれやれ、軍艦より貨物船か」
「朝鮮人を輸出して、対価で資源を輸入すると金になるらしい」
「しかし、大きな船を建造したもんだな」
「パナマの向こう側に行くとなると船は大きい方が利益になるからね」
「生糸はも駄目なんだな」
「生糸はどこの国でも作れる。しかし、奴隷を輸出してくれる国は少ないよ」
「なんか、イギリスのアヘン戦争並に恥ずべき歴史になりそうだな」
「子供には教えられんな」
「「「「あははははは」」」」
アドルフ・ヒトラーがヴェルサイユ条約を破棄
ドイツ再軍備宣言
ロンドン
イギリス将校たち
「ドイツが再軍備を宣言した」
「ワシントン・ロンドン条約を守っていられないぞ」
「日本が条約破棄すると思ったんだがな」
「ドイツが戦艦を建造する前に軍縮条約を破棄しないと大変な事になる」
「イギリスは、日本より生活水準が高いし」
「過剰な軍事費増大には耐えられない」
「それに軍事より政治的な思惑が強いからね」
「無理難題を日本に押し付けて条約破棄させようか」
「んん・・・日本は中国大陸から退いてるから期待できん」
「そういえば日本が古代兵器を発掘したという噂があるが」
「古代の石弓でも復活させるのかね」
「「「「あはははは」」」」」
「・・・・」
国家予算が民間に流れると社会資本が増え、
軽工業の発達と輸出産業にも力が入っていく、
特にドイツの再軍備宣言とイギリスのワシントン条約破棄は列強の軍拡を誘発させ、
日本企業は列強の軍需予算数百万ドルに食い込もうと海外へ営業に向かう。
フランスはドイツの再軍備により、軍事費増大が求められていた。
しかし、世界恐慌と人口減によりフランス経済は低迷している。
パリ
日本人ビジネスマンとフランス軍人
「どうです。我社の部品の調子は?」
「ドボワチンD510とF17の補修部品としては悪くない」
「それに日本製は安いからね」
「要望があれば、もっと供給できますよ」
「しかし、F17の補修部品で有用でも、主力戦車はR35になってるからな」
「それに戦闘機も新型のモラーヌ・ソルニエ M.S.406が生産に入る」
「もちろん、規格さえ教えていただければ格安で供給できます」
「しかしなぁ 大恐慌で国内産業を守らねばならんからな」
「もちろん、採算の悪そうな部品でも結構ですよ。日本で作れば安く上がりますから」
「だいたい、おまえらドイツにも部品を輸出してるだろう」
「予算内でドイツの軍拡に備えなければならないのでは?」
「んん・・・痛いところを突くなぁ」
トラック環礁
補修用ドックと飛行場が建設されていた。
「少し小さくないか」
「全長130mで幅20mだ」
「大きいのは無理でも潜水艦ドック程度なら補修できるだろう」
「航空機と潜水艦が主力になるというのは、本当だろうな」
「たぶん・・・」
「戦艦は?」
「条約上、維持した方が良いだけで無駄なモノに金を掛けられないね」
アメリカ合衆国で公共事業促進局発足
フィリピンが独立協定を批准
ハルピン
ユダヤ人たちが上海へ移動しようと日本人と一緒に列車に乗り込んでいた。
ユダヤ人と日本人将校
「我々ユダヤと日本帝国の約定は反故にされそうですな。大佐」
「シモン氏。並行線はユダヤ資本のハリマンじゃないですか」
「我が国は極東ソビエト軍の軍事的圧力だけでなく」
「あなたの同胞企業に支援された匪賊に日本国民が攻撃されたのです」
「予算を釣り上げるために日本人の保護をボイコットしてたのでは?」
「ま、まさか、そんなことは・・・」
「それに、元々、日露戦争はユダヤ資本と組む事で勝ったのではありませんか」
「で、ですから、より安全な並行線か、上海租界へ移動していただいてるじゃないですか」
「しかし、日本が英霊だ。生命線だ。と言って、守っていた南満州を放棄するとは・・・」
「じょ、状況が変わりまして・・・」
「・・・・・・」
「も、もちろん、生命線を放棄した以上、ユダヤ資本との連携は確実なものとなりますし」
「本当に確実なのでしょうな」
「我々ユダヤ人は、反ユダヤ主義によって包囲されている」
「民族攻防の瀬戸際にあるのですよ・・・」
「もし、不安でしたら代替地を検討してますので」
「どの世界も反ユダヤのキリスト教勢力を恐れ、我々を除け者にする・・・」
関東軍は満州権益をソビエト軍に引き渡して、満州から撤退し、
日本樺太守備隊は、ソビエト軍が撤退した北樺太を受領する。
土地があるからといって、近代化できるわけではない、
社会基盤が軌道に乗るまで莫大な投資が必要で、
幾つもの諸条件が成り立たなければならなかった。
北樺太は、気候が寒冷地に属し生産力が乏しく、
魅力のない土地だったものの、反逆する勢力も少なかった。
中国共産党が抗米救国統一戦線を提唱(八・一宣言)
台風に晒された帝国海軍艦艇が破損した。
第四艦隊事件
駆逐艦 初雪、夕霧 艦橋付近で艦体が切断
駆逐艦 睦月、菊月、三日月、朝風 艦橋大破
空母 鳳翔 前部飛行甲板損傷
航空母艦 龍驤 艦橋損傷
重巡洋艦 妙高 船体中央部のリベットが弛緩
軽巡洋艦 最上 艦首部外板にシワ、亀裂が発生
潜水母艦 大鯨 船体中央水線部及び艦橋前方上方外板に皺
軍艦も海に浮かぶ船であり、
艦体強度が性能に優先するという事を痛感させられていた。
白亜の将校・技師たち
「酷いねぇ」
「金がないというのに・・・」
「電気溶接がまずいのかもしれない」
「リベットだって、怪しいもんだ」
「白亜みたいな艦体を建造できるのはいつになるやら」
「白亜を見れば、溶接が主流になるのは確かだな」
「それは、そうとして、シームレスを増やすべきでは?」
「製造単価を倍にしても技術的に出来ないことはあるよ」
「白亜の溶接は?」
「あったけど、専門用語が多過ぎるし」
「それと、当時と大気成分が違うみたいだからな」
「少なくとも軍艦より設備に金を掛けるべきだよね」
「それ言うと予算が減らされる」
イタリア軍のエチオピア侵攻(第二次エチオピア戦争)
ブラジル
851万1965kuの国土に人口4300万が住む国、
コーヒー産業と牧畜産業ばかりが育ち、
地主制度を守るため教育はなされず、
科学技術や工業力で失速した社会が広がっていた。
1930年以降、ナショナリズムが台頭し、工業化を目指していたものの
地主勢力の反発により教育改革は遅れ、
代わりに移民業による底上げが求められていた。
カーザ・デ・ぺドラ鉱山
露天掘りの鉱山に人身売買された朝鮮人が運ばれてくる。
「凄い数だ。これだけの人手がいたら鉱山採掘も速い」
「もっともっと連れてこれますよ」
「日本とは上手くやっていけそうだ」
「製鉄所の建設でも助けられますよ」
「ほぉ 日本が欲しいのは鉄鉱石や希少資源で?」
「ええ、鉄がないと何にもできませんからね」
「ブラジルの鉄は質がいいので助かりますよ」
鉱物資源の欲しい日本と人手の欲しいブラジルの利害が一致してしまう。
青島港
日本商船が入港すると武器弾薬が降ろされる。
華僑商人と日本商人
「ソビエト軍の南進が始まるある。日本人は中国人民を見捨てたある」
「武器弾薬は、これまで以上に供給して応援しますよ」
「冗談じゃないある。日本がソビエト軍の防波堤になっていたある」
「いまさら逃げ出すのは困るある」
「供給した装備で軍を近代化すれば大丈夫でしょう」
「駄目ある。中国軍は信用できないある」
「このままだと蒋介石の軍政か、毛沢東の共産化の二者選択ある」
「中国人民は悲劇ある」
「ソビエトに占領されないよう。最大限、供給しますから」
「値段が高いある」
「物価が上がっていて、もっと資源を日本に供給してくれないと」
「お前たち日本人も人の弱みに付け込んで強盗商人ある!!!!」
「なにが中国を応援するある!!!!」
「日本はソビエトにも部品を売ってるある!!!!」
「「「・・・・」」」 たじたじ
ロンドン海軍軍縮会議(第2回)開催
欧米列強の人たち
「日本海軍が縮小気味のようだが」
「航空機と潜水艦に力を入れてるようだ」
「それで陸軍航空隊の航洋化も進んでるらしい」
「じゃ 部品の共有化?」
「らしいね」
「縦割りが好きな国民性だったはず」
「予算の都合だろう。何か一つの技術に資本を集中させてる節がある」
「調査は?」
「埒もない噂話ばかりだ」
「それと鉄道、港湾、飛行場など公共投資も拡大している」
「日本は南満州投資がなくなって、内需拡大か」
「よく世界恐慌中にそんな金があるものだ」
「日本は朝鮮人を南米輸出で鉱山資源を得て、代価の一部を軍事予算にしてるようだ」
「アメリカの御膝元ですな」
「・・・・・」
「しかし、人身売買とはね」
「一昔前の白人並の外道ぶりじゃないか」
「不況で賃金の安上がりな奴隷は生糸より売れるからな」
「積極的な知的労働者がいいのだが」
「世界恐慌じゃ賃金の高い知的労働者は雇いにくいのでは?」
「ケースバイケースだろう」
「日本の場合、不良民を輸出で鉱物資源を得てるのだから三重四重に儲かってる」
「フランスも輸入してるのでは?」
「安上がりで手頃な労働者だからね。植民地の押さえで都合がいい」
「それに朝鮮人の特性でね」
「彼らは倫理や国益より、人脈の繋がりを重視するから買っておいて損はしない」
「権力者や組織にとって有益でも国家全体ではどうかと思うが」
「金のなる木の番犬さ。誰でも買ってる」
「まぁ いいか」
アメリカ合衆国
倉庫は売れない物資が山のように積まれ、
農作物は買い手もなく捨て去られ、捨てられた牛乳で川は白く濁っていた。
借金に借金を重ねて買った債権は紙切れと化し、
人々は家もなく職もなく負債を抱えて放浪ししていた。
アメリカは物を買って欲しいのであって、物を買いたいわけではなかった。
日本で作った生糸が売れるはずもなかった。
そして、不換金の紙幣の円紙幣など紙切れ以下のものでしかなった。
日本人たちは、南米に人身売買した利益を宝石・貴金属に変え、
宝石・貴金属でアメリカの石油と機材を買っていく、
「富を信じ、富を追い、富に溺れ、富に裏切られた大国アメリカか」
「明日は我が身どころか、不況は日本も波及してるんだがね」
「生糸が売れなくても人身売買で日本の景気は持ち直してるよ」
「ふっ 惨たらしくて因果な商売だ。後孫が呪われる前に足を洗うべきだと思うね」
「というより、人身売買を国家産業にたら駄目だろう」
「ま、世界恐慌だし、緊急避難。超法規的処置だよ」
「なんだかな・・・」
「戦争よりましさ」
「右翼は国と民族が誇れない歴史を曝すより、戦争がましだと言ってる」
「右翼の美学に滅ぼされるのも、左翼の偽善に踏み躙られるのもごめんだね」
九六式陸上攻撃機
重量4777kg/7642kg 910馬力×2 全長16.45×全幅25m 全高3.685m
速度348km/h 航続距離4550km 爆/雷 800kg 7.7mm×3 乗員5人
コクピット
「給油ケーブル曳航」
「給油ケーブル曳航します」
機体から給油ケーブルが垂らされ、
96式戦闘機が空輸のため後方に回り込んだ。
この時、怖いのは乱気流や気圧の変化による機体の揺れと浮き沈みだった。
操縦桿の操作は慎重に慎重を重ね。
左右の翼端のフックにケーブルフックを引っ掻ける。
空中空輸の歴史は1923年のアメリカ陸軍航空隊から始まり、
世界各国で研究されていた。
日本の給油ケーブルは曳航装置も兼ねた試作機だった。
「機長。96式がフックに引っかかりました」
「三隈曹長。聞こえるか」
“ハイ。最上少尉。よく聞こえます”
「さすが有線」
「給油弁。開け」
「給油弁開きます」
この時代、姿勢制御能力、プロペラの障害と、脆弱な機体の破損、
馬力不足による燃料不足など、空中給油のメリットは少なかった。
新型の給油装置はケーブルが二股に分かれ
ワイヤーの部分が96式戦闘機の翼端フックに引っかかっていた。
「機長。給油完了しました」
「バブルを閉鎖」
「バブル閉鎖します」
96式陸攻は空中給油を終えた96式戦闘機を曳航していく、
この曳航装置は、数十キロの重量を機体に加算させ、
それが戦闘力に反映されないことから人気がなかった。
しかし、陸海軍とも大陸から後退し、外洋作戦の比重が増加していた。
作戦能力の向上は検討しなければならない命題になっていた。
この曳航装置があれば、1人乗りで航法が苦手で、足の短い96式戦闘機でさえ、
給油を受けながら千数百キロ先の離島まで移動できた。
もっとも、危険な曳航航法に違いなく、
引っ掛かってるだけのフックが乱気流で外れるなど、
気を付けなければならないことは多い、
日本の某工場
ターボファンエンジンの概略図が検討されていた。
開発で最大の難関は、アイデアでそれが得られたとしても、
素材と加工技術の難関が続く、
「2軸式ターボファンエンジンの基本構造は、3つ」
「低圧軸のファン、低圧圧縮機、低圧タービン、コアノズル」
「高圧軸、高圧圧縮機、高圧タービン」
「静止部はナセル、燃焼器、ファンノズルで構成されている」
「ガソリンエンジンより部品が少なくて単純ではある」
「問題は、高熱に耐える素材と加工技術だよ」
「素材か」
「特に燃焼器から後ろ、高圧タービン、低圧タービン、コアノズルは500度以上の高温に晒される」
「アルミでは寿命が短い」
「一番いいのは軽量で耐熱性の高いチタンだが、今の日本の基礎工業力では難しい」
「ファンやフレームの加工が良ければ、温度はもう少し下げられるだろう」
「単純な板切れなら加工しやすいが」
「それだと空気の流れが効率悪くなってファンが溶けやすくなる」
「とりあえず、簡単に加工できる素材で、たくさんのエンジンを作って、一番寿命の長い形を決めよう」
「その後、耐熱素材で製造するのがいいだろう」
「予算がもっといるな」
「造艦予算を減らして、航空予算に持ってくるそうだ」
「だといいがね」
日本経済は人身売買収益と負担だった南満州鉄道の放棄により、
世界恐慌ただなか景気を好転させることに成功していた。
とはいえ、満州全域を軍事的支配下におくソビエトの南進は警戒され、
南満州の並行線を維持しようとするアメリカ資本と対立していた。
そして、半島北辺の鴨緑江防衛線は強化されていた。
日本 総理官邸
「国内経済はいいようだ」
「しかし、消費資源は急速に増えている」
「日本の生命線、満州を捨てては・・・・」
「あんな鉄道に毛が生えたような鉄道権益では、日本の生命線にならん」
「南満州から退いたからだ」
「ユダヤ取り込みの河豚計画にも支障をきたしている」
「ユダヤ資本の後援がなければ石油、鉄材、石炭も得られない」
「だが、反ユダヤ資本の受けはいいじゃないか」
「日本周辺の脅威は高まっている」
「お前は、軍事でしかものを考えられんのか」
「極東ソビエト軍の満州支配は強化されているし、南下する可能性は高い」
「南下と言っても中国側で、半島側と思えないが」
「それはわからんだろう」
「予算を軍事費だけに使い込むわけにはいかんよ」
「オートバイや扇風機の工場を大きくしたって国は守れん」
「軍事費は税負担に耐えられず、自殺者を増やすだけだ」
「しかし、挙国一致、愛国心で全国民が国難を乗り超えていくべきだろう」
「あのなぁ そういう “軍部にあらずんば人にあらず” みたいな考えはやめて欲しいね」
「誰もそんなことは言っておらんだろう」
「日本経済は持ち直しているし、設備投資すれば更なる貿易黒字も可能だ」
「軍を等閑にすれば、国家の国体を守れなくなる」
「そうやって、危機感を煽ることもなかろう」
「ソビエト軍は日本本土に上陸させるだけの船団を持っていない」
「しかし」
「ソビエトが船団を極東に配備するまで時間的余裕はあるよ」
「し、しかし・・・」
「今は軍事力より国力を高める時だよ」
「「「「・・・・」」」」
日本
原子力研究所
「白亜の元々の原子炉は30万kwほどの発電を出せる加圧水型原子炉で」
「改装中、急遽シェルター用原子炉と入れ替えたらしい」
「どういう代物かね」
「周囲をタングステンと鉛で覆ったちくわ型の制御棒で」
「中心の穴に水を入れ、アルファ線、ベータ線、ガンマー線を集約させて熱源にしている」
「炉心溶解は?」
「プルトニウムが元々少ない」
「対流型原子力炉で待機電圧は500kwほどだ」
「ずいぶん簡単に原子炉を入れ替えられたものですな」
「元々 潜水艦の加圧水型原子炉が原子炉の基準になっていたようだ」
「それと潜水艦の構造が輪切りした船殻を連結していく物だったのが功を奏している」
「白亜は、潜水艦の原子炉を基準に発展させている?」
「合理的ではあるね」
「ところで我が国も原子炉を開発するので?」
「んん、研究はすべきだが、生憎、ウラン鉱山がない」
「しかし、少量でもあれば核兵器の開発はできるだろう」
「白亜の歴史を見ると原子炉はあまりいいようには思えませんが」
「確かに、しかし、小規模でも研究はすべきだろうな」
「原子力潜水艦は、魅力ありますからね」
「原子爆弾もね」
「サイクロトロンの予算増額が必要ですな」
「「「「・・・・・」」」」 ため息
半島
日本の大陸への足掛かりは半島だった。
極東ソビエト軍は東清線、南満州線、安泰線を中心に展開し、
日本側の新義州市とソビエト側の丹東市は600mほどの鴨緑江を挟み、
日ソの利権がぶつかる。
とはいえ、営口港からアメリカ資本の打通線と奉海線の利権が南満州域に食い込み、
日米ソ中が幾つもの思惑を抱え、複雑な謀略戦を展開していた。
日本
新義州市と対岸の丹東市を見下ろす標高130mほどの小高い山があり
そこに第19師団の対ソ監視塔が建っていた。
鴨緑江から10Kmほどしかなく、
仮にソビエト軍が侵攻してくれば、制圧されるとしても、
観測基地としての役割が与えられていた。
監視塔
白衣の防疫士官が空気中の煤煙を計測していた。
「一体全体、どんな工場を建ててるんだ。埃が酷すぎる」
「少なくとも朝鮮人が根を上げて移民するまでこの状態かな」
「酷いことするな」
「俺たちも巻き添えかよ」
「まぁ そういわずに」
「それはそうと、ずいぶん列車の行き来が激しいじゃないか」
「アメリカ特需ってやつかな」
「アメリカとソビエトと北洋軍閥が張り合って、日本製品を買ってくからね」
「ソビエトが領有を宣言したらどうなるやら」
「軍事費が増えて、俺たちの階級が一つ上がるかもな」
「ふっ むしろ軍事費が減ってるのが面白くない」
白人と日本人の非公式な会話
「もし、ソビエトとフランスが中国と戦争することになったら日本はどうする?」
「その可能性があるので?」
「可能性だけなら総当たりの世界大戦が起こることもあるよ」
「それに比べたらソ仏対中国の可能性は高い」
「そうですね」
「もしそうなったら日本は、中立でしょうね」
「アメリカはどう出るかな」
「さぁ それよりドイツの再軍備の方が気になるのでは?」
「そうだよね。ドイツの再軍備は気になるよね」
この時期、いろんな国がいろんな探りを入れていた。
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月夜裏 野々香です。
何でも値段をつけて商売するのは節操がなくて敵味方問わず困りもの、
でも特定の人々の懐だけは暖まります (笑
第03話 1934年 『白亜の希望』 |
第04話 1935年 『北風と太陽』 |
第05話 1936年 『狐と狸の・・・』 |