月夜裏 野々香 小説の部屋

       

仮想戦記 『白亜の遺産』

 

 第05話 1936年 『狐と狸の・・・』

 第2回ロンドン海軍軍縮会議

 イギリスがドイツ海軍の再建に堪えかねワシントン条約、ロンドン条約を破棄

 

 スペイン総選挙で人民戦線派が圧勝。

 

 

 排他的組織権益は所属するだけで恩恵が受けられ、

 組織人は国益や民益より国民から吸い上げる組織権益を優先する。

 組織が巨大になるほど利権を配分が良くなり、上層部の実入りも良くなってく、

 将来性と実入りのいい “金のなる木” が台頭し、

 己が “金のなる木” が枯らされるとき、

 自称愛国者は亡国民となって大勢に抗い、暴力と犯罪に打って出る者たちが現れる、

 日本は白亜の技術開発により国際競争力を持つ商品の開発が可能になり、

 政官財主流派は、利権構造の “金のなる木” を軍需産業から民需産業へ移行させていた。

 二・二六事件勃発

 クーデター派は降伏し、関係者が処分されていく、

 上層部

 「クーデターの原因は、貧困かと」

 「国防とは関係なかろう」

 「このまま貧困層が増えると共産革命が起こるかもしれませんよ」

 「脅迫する気かね」

 「もっと、軍事費を減らすしかないのでは?」

 「何だと!」

 「まぁまぁ 軍事技術上、工業力が必要だし」

 「軍縮した方が新規装備をしやすいのは確かだよ」

 「まぁ それはそうだが士官たちの食い扶持を考えるとな」

 「食べていけない末端兵士を増やしてしまうだけだ」

 「しかし・・・」

 「水稲農林1号なら東北でも米が育つし」

 「住宅公団で家を建設して、農地を広げれば、農民層は勝手にやっていける」

 「その金はどこから出るんだ?」

 「国家予算じゃ・・・」

 「増税出来なければ、軍事費が減るということだな」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 

 

 ホワイトハウス

 大統領は、怪訝な面持で報告書に目を通していた。

 日本は、閉じた島国と封建的な主従秩序で成り立っている。

 外貨を得る資源もなく、

 競争を好まず既得権保護と利権支配を重んじ、科学技術で劣っている、

 日本が近代化した強力な国を目指すには、技巧を高めつつ、

 貧富の格差を広げなければならないものの

 利権による怠惰と惰性によって低迷し、負の連鎖経済に移行していた。

 しかし、1933年以降、日本は日ソ基本協定で満州権益を北樺太と交換、

 大陸から後退し、軍国主義から脱却を図っていた。

 ワシントン条約失効後も戦艦の建造を進めておらず、

 最大利権である軍需産業を減らしている、

 そして、あろうことか、浄不浄と建前の強い日本人が朝鮮民族を売買するなど・・・

 合理的なアメリカ人なら、そうするだろう。

 しかし、日本人は、アメリカ人ではない、

 大勢迎合と偽善が好きな日本人なら最大利権の軍拡を推し進めるはず・・・

 「日本は、戦艦を建造していないのかね」

 「建造しているのは、潜水艦のようです」

 「不可解だな」

 「日本は、それほど優れた潜水艦を建造しているのかね」

 「潜水艦は、第一級の軍事機密ですから」

 「人事上も戦艦や空母の上だとか」

 「しかし、意外だな・・・自ら金のなる木、軍需利権を減らすなんて」

 「特定産業にとってだけの金のなる木ですからね」

 「大多数の国民にとっては、負担以外の何物でもない」

 「ですが、航空部隊と基地建設の予算が増えているようです」

 「不可解だな。何か、別の金のなる木を拾ったとしか思えないが・・・」

 「「「「・・・・」」」」

 部屋の扉が開けられる

 「大変です」

 「並行線が匪賊に襲撃されました」

 「なんだと」

 「どうやら、アメリカは極東ソビエト軍や中国軍閥の矢面に立たされたようですな」

 「日本が裏で手を引いてるのか」

 「さぁ しかし、日本は高みの見物ができるはず」

 「このまま、日本の謀略に乗るのは面白くないな」

 「「「「・・・・・」」」」

 

 

 ナチスドイツは再軍備宣言後、急速に国力を増大させていた。

 ドイツ人の勤労堅実な気質が根底にあったとしても、経済は種も仕掛けもあった。

 国債発行による積極財政による公共事業は、失業問題を解決し、

 見かけ上の発展をもたらした。

 第11回ベルリンオリンピック開幕

 華やかに見えるベルリンオリンピックの台所事情は厳しく、

 国情は、国家社会主義特有の蓄財切り崩しと膠着化を招き、

 食糧不足、外貨不足、原料不足により、危機的状況に陥っていた。

 日本人たち

 「ドイツも行き詰ってそうだな」

 「もう経済は限界らしいよ」

 「ドイツも軍縮で利権解体か、利権保護の侵略か。の二者選択じゃないのかな」

 「ドイツは、まだ鉄と石炭と高度な工業製品がある」

 「日本は輸出できるものがない」

 「日本は、人身売買してるだろう」

 「そういうのは記憶や意識から消し去りたいね」

 「しかし、そのお金でドイツのディーゼル機関船を買えるし」

 「アメリカの重油燃焼電気推進船を買えるから悪くない」

 「船や飛行機は日本でも作れる。買い過ぎじゃないのか」

 「人身売買は反発を買いやすいからね」

 「戦争にならないようにアメリカ製のモノも買ってるだけだろう」

 「アメリカの資本家のオベッカとったって図に乗るだけだぜ」

 「しかも、欧米資本はユダヤ資本と反ユダヤ資本に分かれて抗争中だ」

 「ユダヤ資本を味方に引き込みたいが、ドイツの様子を見ると怖いものがある」

 「美味しいが毒があるから河豚計画なのさ」

 

 

 ハルピン

 日本が半島に後退するとソビエトの軍事支配が強まっていく。

 現地民はソビエト陸軍将兵に怯え、

 外国人は、満州のソビエト支配がどこまで強まるか興味深く見つめていた。

 外国人用ホテルで日本人とドイツ人外交官が新聞を確認していた。

 「匪賊に並行線が襲撃されて、ソビエト軍が追い払ったらしい」

 「なんかわざとらしいな」

 「ソビエトが北洋軍閥をアメリカ権益にけしかけさせ」

 「今度は、ソビエト軍が北洋軍閥を裏切って、アメリカ側に付き、恩を売ったわけだ」

 「筋書きはともかく、アメリカはどうするかな」

 「仮に気付いていたとしても証拠がないし」

 「アメリカの子供たちを救ったのだからソビエトの悪いようにできないと思うな」

 「スターリンも緩急上手く飴とムチを使い分けてくれる」

 「ここで、米ソが衝突すれば、我々としては助かるが・・・」

 「アメリカもそれくらい気付いてるでしょう」

 「気付いていても、いったん手に入れた権益だ」

 「日本みたいに退くことができるかどうか」

 「ところで、ヒットラーは東と西のどっち向きなんです」

 「最大の脅威は地続きの東でしょう」

 「それは助かりますね」

 

 

 上海

 ユダヤ人町

 ユダヤの青年と日本軍人

 「やれやれ、雑然とした街だな」

 「元々満州より、上海の方がユダヤ人が多かったのですから」

 「上海の方がビジネスチャンスが大きいのでは?」

 「ビジネスチャンスが大きいのは、日本なのでは?」

 「はい?」

 「南満州の米ソ衝突で漁夫の利」

 「日本は戦争需要で美味しい」

 「ま、まぁ そういう話しも聞こえてきますな」

 「ふっ 日本人がアメリカとソビエトに対して謀略戦を仕掛けてくるとは思いませんでしたよ」

 「また、そのような。南満州の地の利が弱いので退いただけだと思いますよ」

 伝令兵が走ってくる

 「大佐! 大変です。アメリカが並行線をソビエトに売却するようです」

 「なんだと!」

 「大佐。どうやら、アメリカは日本の思惑に乗らないと決めたようですね」

 「そんな・・・」

 「ユダヤ資本としては、もっと、うまみがないと日本と組めませんな」

 「・・・・」

 

 

 関門鉄道トンネル起工

 白亜の人たち

 「白亜時代にも鉄道があったなんて、一般人は知らないだろうな」

 「他の国で痕跡が見つからないことを祈るよ」

 「見つかりっこないだろう。あの映像を見たら・・・」

 「あれは、作り物の活動映画だろう」

 「巨大隕石の衝突じゃ 実況中継は無理だと思うよ」

 「潜水艦で海中に避難させたのも正解だな」

 「白亜は、運のいい潜水艦なんだろうな」

 「それはそうと、また予算を取られちまったな」

 「まぁ 慌てることはないだろう」

 「解析が進めば、米英独ソを圧倒できるはずだ」

 「その前に産業を拡大しないと話しにならないわけか」

 「そうい事になりそうだな」

 

 

 呉

 重巡洋艦から主砲塔が剥がされていく、

 古鷹、加古、青葉、衣笠は、155mm連装砲3基となり、

 妙高、那智、足柄、羽黒、

 高雄、愛宕、摩耶、鳥海、

 最上、三隈、鈴谷、熊野は、155mm連装砲4基となっていく、

 白亜の関係者たちは、ミサイル、レーザーの設計図を見ているのか、

 巨艦巨砲の感慨は、消えていた。

 浮いた重量分がレーダーとソナーへと分配され、

 艦橋は、フェーズド・アレイ・レーダーに囲まれ、

 対レーダーで無駄に傾斜していく、

 白亜の関係者たち

 「本当は新しく作り直したいけどね」

 「新しく作るなら、もっと解析が進んでからが良いな」

 「じゃ 繋ぎか」

 科学と技術の間には、隔たりがあり、

 技術と工業力の間にも隔たりがあり、

 工業力と産業の間にも隔たりがあった。

 オーパーツの科学的分析と技術習得に年月を要し、

 技術として成り立たせ、

 工業力を採算ベースの産業にまで拡大させるまで、さらに年月を要した。

 原子力潜水艦の分析と解析は、先が長く、

 技術的な追い付きまで、さらに年月を要しそうだった。

 白亜号は、現有技術で建造されたものでしかなく、

 それでさえ、列強の潜水艦の性能を上回っていた。

 潜水艦は、護衛を必要とせず、護衛機も必要とせず、

 単艦の戦闘艦として完成されていた。

 2000トン級白亜型甲潜水艦 12隻が建造され、

 条約失効後、

 3000トン級白亜型乙潜水艦 20隻の建造がはじまろうとしていた。

 

 海軍将校と技術者たち

 「旧型潜水艦は?」

 「伊号12隻を改装中です」

 伊6、伊68、伊69、伊70、伊71、伊72、伊73

 伊5、伊65(伊165 )、伊66(伊166 )、伊67、

 「ソナーと静粛性能が増せば、戦果も上がるだろうが・・・」

 「白亜号型と比べると、見劣りしますね」

 「そうだな」

 「しかし、潜水艦は数。使える間は使うべきだろうな」

 「問題は、水上艦艇でしょうか」

 「ソナーだけは一流だ」

 「模造品にしてはね」

 「現物が優れているからでしょう」

 「言語の解読と電子計算機の分析が進めば、さらに向上すると思われます」

 「だといいがな」

 

 

 格納庫

 白亜の職員たちが火を噴き出す筒を見つめていた。

 重量470kg 全長2700mm×直径620mm。回転数11000rpm。タービン入口温度約700℃

 推力約472kg。

 柔らかい素材で数百の試作品を作り、

 一番効率の良かった試作品を強靭な耐熱素材で作り直していく、

 「白亜でいうところの航空機の優位性は、どこまで本当なのだろうか?」

 「資料によると軍艦を撃沈できるようだ」

 「ふっ 白亜紀でも似たような戦争をしていたかと思うと呆れるというか、どうしようもないな」

 「戦争は、間引きと生存競争の一環と言う事で・・・」

 「ともかく、航空機や潜水艦の優位性が前例であるのなら予算比も変わるよ」

 「しかし、技術的に作れるとしてもだ」

 「量産となると産業基盤がな」

 「航空機で使えそうなのは、このレベルだろうな」

 「もう少し、仕様を落とすべきじゃないか」

 「自慢じゃないが我が国の加工精度は低い」

 「だったら産業にエリートを振り分ければ良いんだ。軍ばっかりで人材取りやがって」

 「満州から退いたから軍縮はできるよ」

 「鴨緑江の要塞化で金がいるんじゃなかったか」

 「まぁ 足りないと思えば、どこも予算は足りないだろうけどね」

 「ジェット戦闘機が行けると思うけどな」

 「そりゃ 熱で溶けなきゃ いけるだろうよ」

 「構造設計と冶金技術は問題ないと思うよ。産業が貧弱すぎるだけだからな」

 「だから、それが最大の問題なんだろう」

 「96式陸攻は、もう少し手を加えられそうだけどな」

 「というか、産業基盤や社会基盤をどうにかしないと」

 「産業基盤や社会基盤をどうにかしようとすると予算が減る」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 

 

 アメリカ合衆国大統領選挙でフランクリン・ルーズベルト再選

 世界恐慌により富は集中し、アメリカの富と利権は集約され、

 国家規模の統制は可能になっていた。

 しかし、世界恐慌からの再建は成功してない、

 白い家

 富豪たちが集まって世界地図を見ていた。

 「アメリカが並行線から退く必要はあったのか」

 「遼東半島をソビエトとに押さえ、日本に退かれたら地の利はないよ」

 「我々の計画が狂ったのはなぜかね」

 「日本が軍事的な冒険を避けたからでしょう」

 「問題はアジアの足場を失ったことなんだが」

 「まだフィリピンと大陸の租界があるよ」

 「日本、ソビエト、中国を戦争させよう」

 「それを起爆剤にして不況から脱することができるはず」

 「小競り合いではだめだ。世界大戦並みの戦争じゃないとな」

 「もう少し、日本とドイツに投資してみるか」

 「日本、ドイツ、イタリアに軍拡させて、冒険させないと」

 「あまり投資し過ぎても負けるし」

 「それに日本は、こちらの意図気付いて南満州から退いて軍縮した可能性もある」

 「なぁにアメリカの工業生産力は世界の半分程度ある」

 「少しくらい余計に投資しても勝てるよ」

 「生産力はともかく、戦意は別だよ」

 「どこかの国に攻めてもらわないとアメリカの世論を動かせない」

 「気前よくアメリカを攻撃してくれる馬鹿な国を探さないといけないわけか」

 「ふっ 日本の人身売買を邪魔してやるか、怒って攻めてきたらやっつける」

 「「「「あはははは」」」」」

 

 

 ブラジル

 コーヒー農場の朝鮮人たち

 「悔しいニダ。日本人に騙されたニダ」

 「もう駄目ニダ。未開の地で滅ぼされるニダ」

 そこにお金持ちの白人たちがやってくる

 「へぇ 酷い生活してるな」

 「白人の旦那。引き揚げてくれたら何でもするニダ」

 「ほぉ なんでも・・・」

 「何でもするニダ」

 「そうだな。ブラジルとフランス植民地で我々の代理人になれるか、試してみるか」

 「全力で旦那たちの応援をするニダ」

 白人たちは笑いながら去っていく、

 「これで、助かるニダ」

 「こうなったら、ブラジルとフランス植民地に売られた朝鮮人は結集するニダ」

 「そして、大西洋高麗連合を建国して日本を見返してやるニダ」

 「そうニダ。大西洋高麗連合で日本人を復讐してやるニダ」

 「そして、日本人に賠償させるニダ」

 「「「「ウェーハハハハ!!」」」」

 

  

 各国は、ワシントン海軍軍縮条約失効後、新造戦艦を開始していた。

 しかし、日本は、戦艦を建造せず、潜水艦の建造に傾倒し、

 それ以外の水上艦艇は、改装で誤魔化していた。

 5170トン級長良型軽巡洋艦 五十鈴

 全長162.15m×全幅14.17m×吃水4.80m。45000馬力、30ノット。

 40口径127mm連装砲4基。爆雷投射機6基×120発。

 機関を半減させ、球状艦首とし、代わりに対空火器を強化。

 ソナーは、拾い物の原子力潜水艦のソナーを模倣したモノを装備していた。

 五十鈴 艦橋

 「まさか、対潜巡洋艦にされてしまうとはな」

 「駆逐艦も軒並み、4連装2基から4連装1基で、雷装が半分ですよ」

 「赤城と加賀の乗員は、その方が安心だと」

 「ふっ」

 「魚雷も投射数が問題になるんだがな」

 「対戦艦は、どうするつもりなんですかね」

 「潜水艦に任せるのでは?」

 「潜水艦に任せるには、数が少な過ぎる気がするね」

 「条約が破棄されても、潜水艦は値段が高いですから」

 「短い耐久年数の欠点と少ない人員で済む利点を差し引いてどっちが得かな・・・」

 汽笛が鳴ると商船が入港してくる。

 「16000t級客船アンデスか」

 「なんか、外国船が増えてる気がするが」

 「大恐慌で物が売れなくて価格が暴落して中古船が安く買えるらしい」

 「だからってな。日本で建造できるんだから中古を買わなくても」

 「朝鮮人の輸出の大型船が必要でね」

 「それに船と一緒に石油や屑鉄も買ってるらしいよ」

 「人身売買なんて阿漕な仕事しやがって・・・」

 「長官。総理官邸で話しがあると」

 「新造戦艦の建造でも決まったかな」

 

 

 

 97式戦闘機は、白亜の技術が一部取り入れられていた。

 自重1110kg/全備重1790kg。730馬力。全長7.53m×全幅11.31m×全高3.25m。

 最大速度490km/h。航続距離827km。7.7mm×4丁。

 引っ込み脚を採用した最初の戦闘機であり、

 空冷9気筒単列星型エンジンのシリンダーの隙間に銃身を4丁配置し、

 カウリングの開口部から射撃できた。

 「ちっ まだ、この程度か。まだ楕円シリンダーも作れんとは」

 「原子炉なんて数作れないものだから楕円シリンダーしたんじゃないか」

 「大量生産で楕円シリンダーは無理だろう」

 「だから、科学知識と技術の間には壁があるし」

 「技術と工業力の間にも壁がある」

 「そして、工業力が採算ベースになるにも産業を押し上げないと・・・」

 「どいつもこいつも金を欲しがりやがる」

 「まぁ 当然といえば当然」

 「でもプロペラを可変ピッチにできたのは良いと思うよ」

 「カムの削り出しに手古摺ったけどね」

 「楕円はやめようよ。精度厳しいし、耐久性怪しいし、油漏れするとヤバいし」

 「ジェットエンジンがマシだな」

 「ところで、ジェットエンジンは?」

 「型はだいたい決まってきてるけどな」

 「耐熱素材は良い工作機械がないとな」

 「あと、電力も安定してないと・・・」

 「くっそぉ どうしても、そこに突き当たりやがる」

 「基礎工業力は、大切だよ」

 

 

 95式軽戦車

 重量7.4t 全長4.30m×全幅2.07m×全高2.28m。

 120馬力。航続距離240km。速度40km/h。

 36.7口径37mm戦車砲×1。6.5mm機銃2丁。3人。

  

 R35

 重量9.8t 全長4.02m×全幅1.85m×全高2.10m

 82馬力 行動距離138km(路上)/80km(不整地) 速度20.5km/h

 21口径37mm砲 7.5mm機関銃 乗員2名

 

 日本の工場

 「ずいぶん、R35戦車の部品生産が増えてるじゃないか」

 「賃金格差で商売繁盛だ」

 「できれば安定供給で発電所を建設してもらいたいな」

 「予算減で軍人が剥れてるぞ」

 「そういわれても電力がないことには工作機械の数を揃えられない」

 「工作機械の数を揃えられなければ、工場は小さくなるし、汎用工作機械にならざるを得ない」

 「それだっていいじゃないか」

 「煩雑に目盛りを変えれば無駄な時間と不良品が増える」

 「単能工作機械で目盛りを変えず、ぶっ続けで同じものを作り続けるのがいいのだよ」

 「知ってるか、仏領インドシナの戦車が増えてる」

 「フランスはインドシナ支配を強めようって腹だろう」

 「日本の周辺がそれだけ強力な軍事力に囲まれていることになるんだぞ」

 「植民地なんて手放した方がいいんだよ。朝鮮半島だって赤字だろう」

 「さ、最近は違うぞ」

 「奴隷売買してるからだろう」

 「う・・うぅ・・・移民だよ」

 「美辞麗句に言い換えたって、被害者はそう思ってないだろうな」

 

 

 上海

 ユダヤ人街 サッスーン・ハウス

 「アジア市場は大きいがロックフェラーのアメリカと違って足場が弱い」

 「日本を使おうと思ったが日本は大陸から退き気味のようだ」

 「意外だな。自前で満州資源を狙うと思ったのに」

 「日本は我々の経済支配に入る気でいるのか」

 「それともロックフェラーに付く気か」

 「いや、ドイツと接近してるし、反ユダヤ資本に付くんじゃないのか」

 「アメリカが並行線を捨て退いたのは、あの連中の入れ知恵かな」

 「それじゃ ソビエトとフランスを煽って、中国を攻めさせようか」

 「アヘンも金になるが、武器弾薬も金になるからな」

 「ソビエトは行けるが、フランスは貧乏だから・・・」

 「グンツブルグ家として言わせてもらうとスターリンは狡猾だ」

 「あいつは、グルジア人だから商売仇でもあるし、こっちの意図に乗ると思えない」

 「簡単に乗りそうなのは、お馬鹿な日本人だと思うが」

 「日本は乗らなかっただろう。どこで間違った」

 「どちらにしろ、満州から退いた日本に魅力はないな」

 「日本の国内市場開放してくれるのなら別だが」

 「「「あはははは」」」

 

 

 

 日本 首相官邸

 お通夜のような静けさが赤絨毯が敷き詰められた部屋を覆っていた。

 「・・・総理。いま、なんと」

 「米ソ戦争が期待できないのでは致し方ない」

 「朝鮮人を人身売買してるのにまだ資源が足りないと?」

 「日本の工業力は伸びてる」

 「しかし、消費資源も急増してるし、伴って市場も必要になってる」

 「華僑資本もだが、ユダヤ資本を味方につけなければ」

 「だからといって! 満州が駄目なら国内に引き入れたらいいじゃないですか」 

 「国内経済をユダヤ資本に荒らされるわけにはいかない」

 「それに上海では、反ユダヤ主義の先鋒ドイツの勢力も強まってる」

 「最大公約数的な処置だよ」

 「し、しかし」

 「どうせ、アレは役に立たないだろう」

 「そんなこと分からないじゃないですか」

 「ユダヤには象徴が必要なのだよ。金以外の統合の象徴が」

 「日本は、その統合を支えてやればいい」

 「「「「・・・・・」」」」

 「反日の強いサッスーン家やアメリカのスティーブン・ワイズ博士がどう出ますかな」

 「アレの魅力に勝てる人間などいないだろう」

 「しかし、同じユダヤ資本でもな」

 「東洋に進出しているロスチャイルド系とアメリカ合衆国を足場にしてるロックフェラー系の対立もあるし」

 「だから、あれを使うのでしょう」

 「「「「・・・・・」」」」

 

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 白亜のおかげで軍事手技術上の余裕が生まれ、

 不良債権の南満州鉄道、遼東半島を北樺太を交換。

 しかし、大恐慌で生糸との売れ行きが落ちてします。

 仕方がないので朝鮮民族の人身売買で急場を凌ぎます。

 何とか得られる外貨で、欧米の工業製品を買い支え、

 欧米との間に外交パイプを強めます。

 って、どことだろう (笑

 

 

 

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