月夜裏 野々香 小説の部屋

仮想戦記 『白亜の遺産』

 

 第08話 1939年 『開演、第二次世界大戦』

 少数の特権階級が民を搾取し、悪が栄え、

 国家すら人質にとって私利私欲と利権を守る。

 正義の存在しない国家は、国民が体制を守ろうとせず、

 公益性が失われ、利己主義が進む、

 現体制の滅びを待ち望み、外患誘致を積極的に行う国民が形成される、

 そして、特権階級層も自らの地位と名誉と財産を守ろうと外患勢力を利用した。

 この時代の中国大陸がそうだった。

 反乱や解放軍を喜ぶ層が存在し、

 現にソビエト軍の軍政下の満州華北は、軍閥支配と変わらない、

 むしろ、ソビエト軍は、不正腐敗を共謀する中国軍閥を解体させ、

 富豪の財産を没収したことから公平感が増し

 民衆の目にはソビエト軍が解放軍のように映った。

 ゲオルギー・ジューコフ中将は、ロシア国民と似たような眼をしている漢民族を見て苦笑する。

 ソビエト国民の多くが恐怖独裁から救ってくれる解放軍を待ち望んでいる。

 しかし、そんなものは存在しないのだ。

 中国特権階級が踏み躙られて、

 ソビエト軍媚を売る漢民族を中心に階級が再編成されているだけであり、

 再編成後の民衆の苦しさは、変わらないか、もっと悪いものだった。

 そうソビエト軍は解放軍ではない、

 治安維持を行っているのは、当面の間、中国大衆を味方につけるためであって、

 それ以上ではなかった。

 ゲオルギー・ジューコフ中将は、守備隊を黄河北岸に配置すると

 主力部隊で華北の軍事支配を強めていた。

 「出鱈目な人口だな。ソビエト連邦は倍の人口を抱え込んでしまった」

 「将軍。国民軍は、日本製、ドイツ製、アメリカ製の戦車で部隊を再編しているようです」

 「国民軍が川を越えてこない限り、どうということはない」

 「南下はしないので」

 「これ以上、不良民族を抱え込めるか」

 「毛沢東は、黄河北辺をソビエト領と承認するので、戦力を貸して欲しいと」

 「すぐには無理だな」

 「華北で軍政を強行するにしても、もう少し増援が欲しいところですな・・・」

 「スターリンは、ドイツが気になって戦線の拡大を望んでいない」

 「当然、極東ソビエト軍の増援は、期待できそうにない」

 

 

  

 赤いクレムリンは白銀に包まれてた。

 カザコフ館

 スターリンにとって重要なのは権力と支配であり、

 国益は二の次だった。

 権力掌握の大粛清で国防力は低下し、

 反スターリンで薄れた愛国心を恐怖で無理やり繋ぎとめていた。

 国民の多くは解放軍を待ち望み、体制崩壊は目前に思えた。

 「同志スターリン。ユダヤ人の流出が増えています」

 「くそぉ 艦隊で我が国の商船を脅しやがって」

 「中国戦線は黄河を挟んで安定したようです」

 「ジュコーフが英雄になってクーデタを起こすかもしれないな」

 「召還しますか」

 「んん・・・政治局員をもっと送り込もう、将軍の言動を記録させよ」

 「ジュコーフに対抗するような将校に戦功をあげさせたらどうでしょう」

 「フィンランドか。ドイツと取り決めた権益線の内側だが忠誠を誓う者にやらせないとな」

 「ドイツは攻めてくるような動きがあったらすぐに連絡せよ」

 「ヒットラーがユダヤ資本の口車に乗せられ、ソビエトに攻め込んでくるかもしれない」

 「はっ」

 「同志スターリン。同志毛沢東が会見を求めています」

 「・・・いまは、会いたくない」

 「「「「・・・・・」」」」

 黄河以北直接支配が検討され、

 労と益で折り合いがつくのならソビエトの直接支配もあり得た。 

 むろん、折り合いがつかないのなら毛沢東を傀儡にした間接統治なのだが、

 結論を出すには早すぎた。

 「中国軍は?」

 「中国軍は、ドイツと日本から武器弾薬を供給され、強化されているようです」

 「ソビエトもドイツと日本から武器弾薬を得ているだろう。同じだ」

 「欧米と中国から日本に供給される資本と資源は膨大なようです」

 「黄河北岸までの足場を築いたら地歩を固めるだけでいい」

 「長期的には、黄河以北の労働、資源、土地を押さえたソビエトが強いだろう」

 「国連、アメリカ、中国がソビエトの撤退を要求してますが」

 「先に撃ったのは国民軍だ。無視していい」

 スターリンは、盧溝橋事件の経緯と顛末を善悪にするつもりなどなかった。

 まして、占領地や被支配者に同情する気もない。

 「アメリカ人とイギリス人は、中国救出のため、死にたがらないだろう」

 「日本人も今更攻めてくることなどしまい」

 「中国人を使ってモスクワと北京までの鉄道を繋げよ。いくら死んでも構わん」

 「黄河北岸の中国人は多すぎるのだ。殺すために鉄道を繋げよ」

 「御意・・・」

 「それより、ユダヤ戦艦部隊は?」

 「いまだ、慣熟訓練中のようです」

 「海の男を育てるのに何年必要なのだ」

 「兵士だけなら3年もあれば」

 「将校や士官となると継承が多く数世代は必要かと」

 「ソビエツキー・ソユーズ型戦艦4隻の建造は嫌な予感がするな」

 「不凍港を手に入れましたのに?」

 「粛清で国民の愛国心と軍が弱体化してる状況で、東の果てで中ソ戦争」

 「さらに戦艦建造で陸軍はさらに弱る・・・」

 「建造を棚上げにしますか」

 「んん・・・ドイツの動向に注意せよ」

 「正式に不可侵条約が結ばれても信用できない国だ」

 「はっ」

 

 

 

 ドイツ帝国ヴィルヘルムスハーフェン港

 完成したばかりの32000トン級戦艦シャルンホルストが曳航され、

 同型艦グナイゼナウと並ぶ。

 グナイゼナウ 艦橋

 「提督。キュラソー島の戦艦ルベン(金剛)から発信」

 「“ナチスドイツのユダヤ人迫害は国際的に違法である” と発信してます」

 「ふっ パナマ船籍の戦艦がドイツ帝国に宣戦布告するつもりか」

 「本体が土地なし商人所有の流浪戦艦部隊ですからね」

 「パナマ船籍で停泊してるキュラソー島はオランダ領ですし」

 「ユダヤ商人の乗った戦艦など撃沈してやりたいが」

 「まだ、日本人の将兵が乗艦してるようですが」

 「いまのところはだろう」

 「ユダヤ人は、パレスチナを狙ってるのでしょうか」

 「そうだな。土地に執着するならパレスチナだ」

 「しかし、今は、戦艦部隊があって、世界中のユダヤ人が戦艦部隊に集中してる」

 「戦艦に10支族の名を冠してますからね」

 「日本が長門と陸奥をユダヤ売れば10支族分が揃って、ユダヤの象徴になるだろう」

 「逆に言うならユダヤの戦艦部隊を全滅させることができればユダヤは大きな痛手になる」

 「日本の謀略でしょうか」

 「ふっ 売却益だけじゃなく、戦艦部隊の維持費もユダヤ資本に背負わせてる」

 「その上、ユダヤの日本投資が増大してるのに、株の分配すらなく、ただの借金だ」

 「日本は巧妙にユダヤ資本の浸透を防いでいる」

 「世間知らずの引き篭もりか、知っていての謀略かもしれんな」

 「ドイツはユダヤの金融支配で痛い目を見てますからね」

 「日本の官僚はそれに気付いたのでしょう」

 「まぁ ユダヤ人の方が公正で目敏いだけなのだが」

 「日本人がユダヤ人と同じ程度、公正で目敏ければ銀行業務に支障はあるまいよ」

 「ドイツ人の銀行業務は、支障をきたして、いろいろありそうですからね」

 「残念ながら、ドイツ人の銀行家は目敏さが足りんな」

 

 

 東京 総理官邸

 新しい世界地図が壁にかけられていた。

 ソビエト連邦は赤い色で、満州から黄河北辺までピンク色になっていた。

 偉い人たち

 「こうして地図を見ると半島は、風前の灯に見えるな」

 「半島は、満州や華北より防衛力があるよ」

 「本当に5個師団で半島を守れるのか」

 「ソビエト連邦は黄河北岸でとまってる」

 「もう南下はないだろうし、数世代は年月を稼ぎたいと思うが」

 「日本も半島で数世代は年月を稼ぎたい」

 「このまま中ソ膠着状態で小競り合いしてくれた方が黒字貿易で嬉しいし」

 「石油と鉄と石炭を買わなければならないから欧米との取引は継続したい」

 「ドイツは対ソ戦に打って出るだろうか」

 「それが一番の気がかりだ」

 「いや、華北のソビエト軍の変質も気になるね」

 「ジューコフ将軍がスターリン支配を逃れ、独立する気になるか」

 「それはそれで嬉しいが」

 「問題は経済かな」

 「この戦争でアメリカ系と欧州系のユダヤ資本が伸びる傾向にある」

 「そして、アメリカ系と欧州系の非ユダヤ系資本は、生き残りをかけて東アジアに足場を築こうとしてる」

 「東アジアで先行してるロスチャイルドの欧州ユダヤ資本は、上海で伸びようとしてるし」

 「戦艦を買ってくれたのも欧州系ユダヤ資本が窓口になってる」

 「主導権は欧州系ユダヤ資本が中心になってるが」

 「パレスチナ占領でアメリカ系ユダヤ資本が主導権を握りたがってるらしい」

 「しかし、私兵を持ってるのは上海のユダヤ資本では?」

 「それはどうかな。日本で訓練してるユダヤ人は多国籍だし」

 「そのまま、ユダヤ艦隊に編入されている」

 「神州丸の追加発注は、ユダヤは陸戦隊が欲しいということかな」

 「非ユダヤ系は、ユダヤ資本の私兵取得を警戒して結束している」

 「アメリカの参戦は流動的になってようだ」

 「どちらにしても財閥の人脈と金脈は大きいよ。植民地で市場を広げてくれるし」

 「ビジネスチャンスも増えてる」

 「しかし、ユダヤ資本の世界経済支配は面白くない」

 「民族資本を守りたいのだが」

 「国民は、我々が思うほど民族カーストを望んでいないのだよ」

 「朝鮮人を追い出すとしても、貧困層や同和関係者は外資の力を借りても這い上がりたいし」

 「だからって工作員を容認するわけにはいかない」

 「ガス抜きくらいしないとな」

 「国が外資に国債を買ってもらって国内企業に配分するのとはわけが違うのだが」

 「外資の株所有率を5パーセント以下で認めるのなら良いのでは」

 「妥当ではあるがうま味のない、それでは外資が投資しないのでは?」

 「確実に資産を数倍にしてくれる日本企業に投資したがる外資は多いよ」

 「日本経済が金のなる木だから?」

 「外資にすれば小遣いほど資本が、数年で家を建てられるほど膨れ上がるのだからやめられんよ」

 「日本企業は、外資向けに株を増資しても外資を欲してるぞ」

 「しかし、外資に面白半分に株を上げ下げされたら日本の相場がガタガタにされる」

 「まるで脅迫だな」

 「5パーセント程度の売買なら、そうそう踊らされたりはしないだろう」

 「だといいがね」

 「日本製品は、白亜の技術を習得できたらグローバルスタンダードで世界市場を席巻できる」

 「当面、非ユダヤ系、ユダヤ系の軋轢を利用するにしても、北アメリカ資本と欧州資本の対立を利用するにしてもだ」

 「日本が最低限、自前で確保したいのは石油と鉄だ」

 

 

 

 バルセロナ陥落、フランコ軍の占領下に置かれる

 

 イギリス・フランスがスペインのフランコ政権を承認

 

 

 北樺太 オハ化学工場

 石油を使ったプラスチック、合成繊維、合成ゴムが試作されていた。

 これらの試作品は何度も試験が繰り返され、

 完成度の高いモノが機密性の高い軍部でテストされる。

 「非鉄化は国情でいいけど、加工精度の段階でいろいろ大変だな」

 「設備投資に金が要るな」

 「日本人は、新規開発が苦手だからな」

 「官営でやって民間に下ろすにしても機密性が高いから市場は軍部くらいだ」

 「そうなると財政で赤字が出るな」

 「しかし、白亜では、化学物質による細胞の悪性腫瘍が問題にされてたようだ」

 「医療部のモルモットで問題ありの病床が出てるよ」

 「種族が違っても科学物質では悩まされるわけか」

 「もう少し改良の余地はあるが少量生産ならともかく、大量生産になると管理が厳しくなるな」

 「アメリカが生産したら負けずに生産しないと、市場で負けるのはまずい」

 「そのためには良品を作れってことじゃないか」

 「市場で利益が得られないと研究費が少なくなるし、当然、物で負けるのでは?」

 「それはそうだが賃金格差で有利ではある」

 「賃金少ないとやる気が減退するし、全体主義も意欲を阻害させられるし」

 「あははは、欧米の賃金格差と野心は異常だからな」

 「欧米から見ると日本が異常なのかもしれん」

 「公共教育が強いからね」

 

 

 

 

 ドイツがボヘミア・モラヴィアの保護領化を宣言(チェコスロバキア併合)

 

 独ソ不可侵条約締結

 

 

 釜山港

 19.5t級ソミュアS35騎兵戦車が船から降ろされ、鉄道貨車へ乗せられていく、

 S35騎兵戦車のライセンス生産は、95式軽戦車と97式中戦車を旧式化させてしまう。

 もっとも、34口径47mm砲は安心にほど遠く、高性能な戦車開発が求められていた。

 しかし、戦車最大重量と道路・港湾整備は比例し、

 舗装率が低ければ戦車が移動するたびに地域住人に被害を与えてしまう。

 欧米列強の道路舗装平均28〜44パーセントに達し、

 日本の道路舗装率は国道で17パーセント、

 指定県道9パーセント、県道2パーセント、市町村道1パーセントと

 最大延長距離で平均するなら舗装率2パーセントと惨憺たる有様で

 近代的な行政府と秩序正しい国民性がなければ植民地に毛が生えた国家と見られかねなかった。

 主力となったS35騎兵戦車さえ、地域住民にとって恨めしい鉄の塊でしかなかった。

 陸軍関係者たち

 「これっぽっちのS35騎兵戦車で半島を守れってか、政府は何考えてるんだか」

 「道路・港湾整備が進んだら30t級戦車を開発してやる、そうだ」

 「その前にソビエト機甲師団が鴨緑江を越えて南下してきたらどうするんだよ」

 「その時は、ソビエトの戦車は重戦車になってるだろうな」

 「半島の道路整備は進んでるの?」

 「移民させられたくない朝鮮人ががんばってるけど」

 「ん? 追い出さないの」

 「追い出すけど」

 「悪だな」

 「あはははは」

 「しかし、道路整備だと、お金借りやすいんだよな」

 「舗装道路が増えたら自動車が増える、自動車が増えたら石油が売れるし」

 「日本の経済的なウィークポイントになる。簡単な理屈だよ」

 「そんな手に乗るのは面白くない」

 「だから水力発電と鉄道建設と電気自動車の開発に力を入れてるんじゃないか」

 「おかげで軍部が貧乏なんだが」

 「だよなぁ」

 

 

 09/01 ナチス・ドイツ軍とスロバキア軍がポーランド侵攻

 

 ロンドン

 日本人外交官がいた。

 「ドイツは、ポーランドに仕掛けたのか・・・」

 「ドイツの景気は回復していたんだろう?」

 「それ以上に国債の累積赤字が大きかったんじゃないか」

 「まぁ イギリスとフランスとことを構えても資源はソビエトから入るがね」

 「侵攻前に何隻か商船を日本に売ったのは、最初からそのつもりだったのだろうな」

 「同盟国のイギリス、フランスは、どうするかな?」

 「なにも出来ず、ポーランドは見殺しと思うな」

 

 

 ダウニング街10番地

 ネヴィル・チェンバレン首相は、報告書に目を通していた。

 「ポーランドは先制攻撃を受けて苦戦中か」

 「ポーランドは、もう少し戦えると思ったが、シミュレーションと違うな」

 「ドイツは、中ソ戦争需要で産業からの動員が遅れ」

 「陸海空軍の正面戦力編成でもたつくと考えられてました」

 「ですがドイツ軍の機械化は予想以上のようですし」

 「ポーランドは、こちらが思うより動員が遅く、国防を怠っていたと思われます」

 「戦況は、戦える段階なのでは?」

 「ポーランドの動員が早ければ持ち直せるかもしれません」

 「・・・・」

 イギリスとフランスは、9月6日、ドイツに宣戦布告した。

 

 

 

 上海

 ダン(伊勢)、ナフタリ(日向)

 アメリカ製の対空レーダー、対艦レーダー、射撃用レーダーが装備されつつあった。

 資本家が艦橋に乗り込んでいた。

 「参戦するか。もう少し待つべきか・・・」

 「正直、艦隊は戦力になりえていませんな」

 「乗員を全て日本人にするなら別ですが」

 「では、そうすべきだろう」

 「それでは、ユダヤ艦隊の勝利と言えないだろう」

 「それに我々はパレスチナを回復したいのであって、ドイツと戦争したいわけではない」

 「ふっ ただドイツから追い出されただけというのは厄介だな」

 「ユダヤ人が殺されていれば、反ドイツで固められたものを」

 「資産を奪われた」

 「奪われたのは固定資産だろう」

 「流動資産は持ち出せたし、ユダヤの歴史でいうなら生きて国外に脱出できたら幸運だよ」

 「しかし、これでフランスの北進はなくなったな」

 「国民軍を弱体化させて、そのままユダヤの経済植民地にしてやるところだったが・・・」

 「どちらにせよ。反ユダヤ国家は一掃すべきだ」

 「共産主義のソビエトにけしかけさせては?」

 「ソビエトは華北支配を抱え込み、牛を飲み込んだ満腹なアナコンダみたいになってる」

 「ドイツと戦争などできるものか」

 

 

 

 ユダヤ資本にとって反ユダヤ資本の牙城ドイツ帝国は打倒すべき存在であり、

 非ユダヤ資本の日本帝国は警戒すべき存在として映っていた。

 共産主義のソビエト連邦は懸念すべき存在だったものの、

 生存戦略上、反資本主義と反ユダヤでは、1万歩ほど射線が離れ、

 ユダヤだけが迫害され白眼視されるわけではなかった。

 この時代、日本人の国際社会と世界史の認知力が強まっていた。

 ドイツ高官の口車だけでなく、

 ユダヤ資本に対する警戒感は強まり、

 一定の経済保護政策が執られている。

 これが日本の国内利権売却でなく、現物の艦隊売却の形で現れた現象だった。

 しかし、日本でも日本の国家予算の数十倍の資本を持つ資本家が干渉しようとし、

 ユダヤ資本、非ユダヤ資本、

 あるいはアメリカ系、イギリス系の資本の投資が行われ、

 政界を2分、4分するような影響も受けてしまう。

 「戦争はどうするって?」

 「どうするもこうするも、お前ら与党が戦艦を売ってからどうしようもならんわ」

 「空母、重巡、駆逐艦、潜水艦は残してるから戦力的に問題ない」

 「お前の頭から長門と陸奥は消えとるのか」

 「売ってもいい気がする」

 「馬鹿もん!」

 「おかげで、好景気じゃなかか」

 「手足とられて好景気と言えんだろうが」

 「手足を動かすのは、鉄と石油だろうがボケが」

 「その鉄と石油も満州権益を北樺太と交換したらどうにもならんわ」

 「けんど、鉄も石油も入ってきちゅう」

 「そんなこつわかっとる」

 「それに我が国の潜水艦は強いっちゅうやなかか」

 「それに開発してる4発爆撃機で戦艦を撃沈できるって話しだ」

 「そんな保証はない」

 「とにかく、欧州需要と中ソ需要で経済はいい」

 「国民は戦艦を建造せいいうとるぞ」

 「いうとらんわい、もっと公共設備と財政投資しろっていうとるやろうが」

 「空母は?」

 「空軍独立論が強うなって難しゅうなった」

 「予算を減らすから統合せんと数を揃えられんようになったからだ」

 「研究開発費が物凄く伸びたからしょうがなかろうもん」

 「このまま、しょうがなかろうもんで、国策を進めるつもりやなかろうな」

 

 

 

 日本は、第二次世界大戦への不介入を表明

 

 アメリカは、中立を表明

 

 東京湾

 とあるビルのとある人たち

 「資本主義で重要なのは、情報です」

 「情報ですか」

 「そうです。99パーセントの事実と1パーセントの宣伝です」

 「宣伝ですか」

 「100回嘘を付けば事実になるといった全体主義的な宣伝は破綻します」

 「なので嘘をごり押しできる社会は全体主義が進んでいる証拠でもあります」

 「民主主義では大衆に1パーセントの宣伝を刷り込ませ」

 「情報操作したり、売り上げに反映させるので、よりソフトなのです」

 「なるほど」

 「ここで重要になるのは各派閥の力関係なのです」

 「それぞれの派閥で情報戦が展開されるでしょう」

 「しかし、広告業が利害関係を調整し一括管理し」

 「タブーを作って、それ以外を排斥する方法もあります」

 「おおお・・・」

 「我々は、それが得意なのですよ」

 「おおお・・・」

 「我々に任せてくださいませんか」

 「日本国民の目と耳と口を塞ぎ、今以上に支配しやすくなりますよ」

 「えぇええ・・・」

 「羊飼いは、羊の統制が上手いものですよ」

 「し、しかし、日本は農耕社会で、大勢寄りの事勿れでして」

 「保守層権力者に騙されたり、裏切られない限り、惰性で状態が続くので・・・」

 「「「「・・・・」」」」 茫然

 

 

 ドイツ商船隊が入港して日本海運へのレンタル契約が進んでいた。

 イギリスとフランスに拿捕されるよりましで、

 日本にすれば商船隊は多ければ多いほど利益を上げることができた。

 空母3隻、戦艦2隻、重巡16隻、駆逐艦35隻が並んでいた。

 空母  赤城 加賀 龍驤

 戦艦  長門 陸奥

 重巡  古鷹 加古 青葉 衣笠

      高雄 愛宕 摩耶 鳥海 高雄 愛宕 摩耶 鳥海

      最上 三隈 鈴谷 熊野

 駆逐艦

      吹雪 白雪 初雪 叢雲

      東雲 薄雲 白雲 磯波

      浦波 綾波 敷波 朝霧 天霧 狭霧

      夕霧 朧 曙 漣 潮

      暁 響 雷 電

      初春 子ノ日 若葉 初霜 有明 夕暮

      白露 時雨 村雨 夕立 春雨 五月雨

 

 空母 赤城

 「大日本帝国海軍もずいぶんとすっきりしたものだ」

 「戦艦と旧式の巡洋艦と駆逐艦を売っぱらってしまいましたからね」

 「潜水艦60隻がなければ泣きたくなりますよ」

 「くそぉ 何が公共投資に設備投資だ」

 「政府のアホが。国土省と産業省の口車に乗りやがって」

 「これで日本と日本の領海が守れると本気で考えてるとは嘆かわしい」

 「長門、陸奥も売りたがっていたようですが」

 「俺が長官である限り、絶対に許さんからな」

 「ですが、ユダヤ資本から魅力的な対価が提示されてるようですよ」

 「冗談じゃない、これ以上、退けるか・・・」

 ぼそぼそぼそぼそ

 『ほ、本当に・・・』

 『霞が関は目の色を変えて上へ下への大騒ぎです』

 「・・・・」 ごくん!

 「「「「・・・・」」」」

 「今のところ、世界中の欧州に向けられているようですが」

 「中ソ戦争は黄河を挟んで膠着状態で、流動的なのは欧州だからな」

 「欧米の反ユダヤ勢力が増大して、ドイツに同情的な庶民も多いようです」

 「そんなにユダヤの金融支配が嫌なのかね」

 「まぁ 嫌でしょう」

 「日本人同士はしがらみが悪くて同族嫌悪のなところもありますからね」

 「大同小異でそう言われてもな」

 「デモクラシーとか、社会運動とか」

 「権威が強過ぎて、外国勢力に頼る貧困層は少なからずいますよ」

 「陸軍や海軍は、組織縮小で犠牲になったんだぞ」

 「庶民も我慢してもらわなければ困る」

 「最近は、陸海軍も国家のために犠牲になるのが当たり前になってますからね」

 「嘆かわしい」

 

 

 駿河湾沖

 富士山が見える沖合で、戦艦4隻が一斉に回頭し、直線航行に入ると主砲を発射していく

 白地に青い縁が描かれ、

 白地の中央に六芒星を配置した旗が風にはためいていた。

 六芒星はダビデの星とも言われ、ユダヤを象徴していた。

 イッサカル(榛名)、ゼブルン(霧島)、ガド(扶桑)、アシェル(山城)

 イッサカル 艦橋

 日本人教官たち

 「だいぶ、動きが様になってきたわい」

 「言葉が違うのに柔軟性があるというか、呑み込みだけは早いな」

 「基本的には単純作業の組み合わせですからね」

 「しかし、湯水のように金が使えるのが凄い」

 「燃料はともかく、主砲弾と砲身の製造が間に合わんぞ」

 「本当に欧米の一部の資本家だけが金を出してるのかね」

 「日本人」

 「はい?」

 「もっと、防御力の高い軍艦と戦車と航空機が欲しい」

 「し、しかし・・・」

 「我々 ユダヤ人は人口が少ない。戦争での犠牲を最小限にしたい」

 「そうは言われても日本の国情に合った兵器ドクトリンが・・・・」

 「何をおっしゃる将兵の生存性こそ、重視すべきこと」

 「あなたたちにも大事に思う戦友がいるはずです」

 「これは “心付け” です」

 ぽん ぽん ぽん ぽん

 「「「「「ぅぅ・・・」」」」」

 「参謀本部への口利きだけでいいですから・・・」

 「「「「「い、いやあぁ・・・・・」」」」」 汗々 にやぁ

 

 

  

 イギリス

 ロンドンは、恐慌に包まれていた。

 新聞を見れば、ドイツUボートがイギリス周辺海上を遊弋し、

 商船を次々と撃沈していることが伝えられていた。

 カフェテラスに日本人たちがいた。

 「ユダヤ資本は日本に参戦して欲しがってる」

 「そういわれても軍艦がないじゃないか」

 「陸軍だって列島と半島を守る30万弱だし」

 「ソミュアS35のライセンス生産が認められたそうじゃないか」

 「それとD520戦闘機のライセンス生産も」

 「フランスもなりふり構わないところが好きだね」

 「もう少し待てば、スピットファイアとロールスマリーンエンジンのライセンス生産も認めるぞ」

 「もっと焦らしてやろうぜ」

 「「「「あははは・・・」」」」

 「そういや、ブラジルの外交官が日本は参戦するのかって聞いてきたけど」

 「自分の国のことくらい自分で決めろよ」

 「あははは・・・人のこと言えんけどな」

 「「「「あはははは」」」」

 「結局、ユダヤ資本が金を出せば参戦不参戦に関わらず生産して渡すしかないんだから」

 「参戦は、人命まで渡せるかってことじゃないの」

 「独ソ不可侵条約は、独ソ同盟になるかね」

 「んん・・・資源の輸入を考えると独ソで戦うって選択肢はないと思うな」

 「ぶっちゃけた話し、ドイツに同情するぞ」

 「まぁな」

 「しかし、背に腹は代えられないんだよな。金になるし」

 「そうそう」

 「ところでドイツがジェット戦闘機を飛ばしたらしいが」

 「んん・・・ドイツか・・・まったく、非常識な国だ」

 「ひょっとして、白亜時代の遺物を拾ってるのでは?」

 「それは、確証がないと何とも言えない」

 

 

 フランス パリ

 イギリス軍将校とフランス軍将校

 「ドイツ軍はポーランド侵攻を手古摺っている。ドイツを攻撃すべきではないか」

 「ドイツ軍の勢力をマジノ線で削げば、ドイツ軍は疲弊し自滅する」

 「だいたい、フランス軍は、インドネシアに2個師団送ってただろう」

 「いや、政府もばかだなって」

 「中ソ戦争のどさくさを利用して北進しようと思ってたんだろう」

 「いゃあああ」

 「あほが」

 「ドイツがベルギー側を通ってる事はないだろうな」

 「要塞を延長するようにしている」

 「もう、戦争は始まってるんだぞ」

 「ソビエトが東から牽制すれば戦争は、終わるだろう」

 「ソビエトは中ソ戦争で忙しそうだぞ」

 「スターリンは黄河以北で占領政策を進めている。このまま、現状維持を続けるだろう」

 「しかし、Uボートに制海権を脅かされてる」

 「このままでは、イギリスもフランスも、日干しにされるぞ」

 「第一次世界大戦を忘れたか。何百万も人間を失った。マジノ線を利用すべきだ」

 「・・・・」

 

 

 ソビエト軍がポーランドへ侵攻。

 東西から挟撃されたポーランドは占領され、

 ポーランド政府と軍の一部は、降伏せず、中立国を経てイギリスへと向かう。

 

 

 ドイツ・ソビエト境界友好条約(ポーランド分割占領を決定)

 ソビエトは、ニッケル、石油資源と交換にポーランドの一部を手に入れた。

 これは、ポーランド回廊を狙うドイツと、

 対独緩衝地帯を欲するソビエトが最初から仕組んでいたことであり、

 独ソ不可侵条約の密約だった。

 ワルシャワ

 ドイツ将校とソビエト将校

 「ソビエトも資源と権益線の内側を交換とは気前が良いですな」

 「ドイツは西に戦線を構え、ソビエトは東に戦線を構えている。独ソ友好のためですよ」

 「しかし、ソビエトがフィンランドに手を出さなかったのは意外でした」

 「同志スターリンが中ソ戦争が一息つくまで、戦場を広げたくないとか」

 「黄河北岸で一息ついているのでは?」

 「ええ、ドイツの1号戦車と2号戦車に梃子摺らされましてね」

 「希少資源が必要でしたので」

 「わかりますよ」

 「占領はいつごろまで?」

 「占領政策が軌道に乗るまでですので数世代は必要でしょう」

 「・・・・」

 

 

 厚木飛行場

 エンテカナード型 ゼロ式戦闘機 “瑞風” 

 プラット・アンド・ホイットニーR1830空冷1200馬力 自重2500kg/運用3600kg

 全長10m×全幅12m×全高3.55m 主翼面積22u

 速度580km/h 航続距離1800km

 イスパノ・スイザHS.404 20mm機銃3丁 or ブローニングM2重機関銃12.7mm機銃6丁

 「エンテカナード型か、トンデモな機体に仕上がったな」

 「白亜の記録を見ると戦闘機は足回りが重要なんだと」

 「しかし、プロペラが邪魔だな」

 「だからジェット戦闘機にすれば良かったんだ」

 「耐久時間が短過ぎて破産する」

 「社会資本に金を取られ過ぎたんじゃないのか」

 「ダム建設が立て続けらしいよ」

 「ダムを作ったら今度は工場に鉄道に港湾だろう」

 「その後も、たぶん、産業投資だ」

 「で、いつになったら軍国主義になるんだ?」

 

 飛行場の格納庫

 全長22.93m×全幅32.54m×全高7.20m 翼面積112u

 ライトR1820 1200馬力×4基  自重量16.4t/全備重量28.15t

 速度440km/h  航続距離3219km 〜 5800km(最大)

 乗員7人  雷爆4000kg

 外見はB17で性能がB24に似てると言われる4発爆撃機が試作されていた。

 一式陸攻は、潜水艦用の95式酸素魚雷(1665kg)×2本を搭載できた。

 射程9000m/49ktは、91式航空魚雷(838kg)の射程2000/42ktより長射程であり、

 炸薬弾頭400kgは、航空魚雷の弾頭204kgの倍近い威力があった。

 そして、その気なら艦艇用93式魚雷1本を搭載することも可能だった。

 むろん航空魚雷なら4本を搭載でき、対艦攻撃力は、非常に高かった。

 これは、日本の航空機が対地戦より対艦戦を重視していたからといえた。

 「悪くない」

 「とりあえず200機作るらしい」

 「200機か・・・32機配備で航空基地6個分だな」

 「予算がなくてな」

 「というより、飛行場の拡張と格納庫の建設で大忙しだ」

 「開発中の音響魚雷にできるのなら、まぁ 足りないが相手も躊躇してくれるだろう」

 「それはそうと、ユダヤは空軍を創設したがってる」

 「本当に?」

 「ああ」

 「作るってか?」

 「最近の政治家は金に目がくらんでてな」

 「国益売り渡すくらいなら軍艦売り渡す糞たれな連中だからな」

 「逆にいうなら、経済支配させないが、ユダヤの軍備整備と教育をするってことか」

 「民族系大企業を永続的に干渉されるよりましかもしれんが・・・」

 「国民は仕事があって、生活が豊かになっていくのなら何も言わないし」

 「企業は資源が買えるし、社会整備で仕事があるし、貿易も黒字なら黙り込むか」

 「よりによって、軍部にシワ寄せしなくても・・・・」

 「軍人ではない人間は、人間ではない時代は終わったな」

 「いまは、国土開発省と産業省でなければ人間じゃない時代だ」

 

  

 呉

 科学と技術の間には、隔たりがあり、

 技術と工業力の間にも隔たりがあり、

 工業力と産業の間にも隔たりがあった。

 オーパーツの科学的分析と技術習得に年月を要し、

 技術を成り立たせ、工業力を採算ベースの産業にまで拡大させるまで、さらに年月を要した。

 原子力潜水艦の分析と解析は、先が長かった。

 白亜号は、現有技術で建造されたものでしかなかったものの、

 列強の潜水艦の性能を上回っていた。

 潜水艦は、護衛を必要とせず、護衛機も必要とせず、単艦の戦闘艦として完成されていた。

 2000トン級白亜型01〜12号 12隻。

 3000トン級白亜型21〜40号 20隻。

 

 海軍将校と技術者たち

 「旧型潜水艦は?」

 「伊号12隻を改装中です」

 伊6、伊68、伊69、伊70、伊71、伊72、伊73

 伊5、伊65(伊165 )、伊66(伊166 )、伊67、

 「ソナーと静粛性能が増せば、戦果も上がるだろうが・・・」

 「白亜号型と比べると、見劣りしますね」

 「そうだな」

 「しかし、潜水艦は数。使える間は使うべきだろうな」

 「問題は、水上艦艇の方でしょうか」

 「ソナーだけは一流だ」

 「模造品にしてはな」

 「現物が優れているからでしょう」

 「言語の解読と電子計算機の分析が進めば、さらに向上すると思われます」

 「だといいがな」

 「日本は、参戦するのですか?」

 「いや、日本から参戦することはないだろうな」

 

 予算不足で新規の空母建造が消え、

 36000トン級空母赤城の改装が行われる

 可能な限り艦載機を搭載する必要に迫られ、

 格納庫は大きく広げられ、搭載機は90機に達した。

 200mm連装砲2基、200mm砲6基、127mm連装砲6基を降ろし、

 航空機運用に集中できる空母に改装されてしまう。

 127mm連装砲一基7.8トンは、戦闘機でいうなら3機分の重量に相当した。

 中型砲台の廃止は、艦隊防衛で不利だったものの、

 機関銃の増設は個艦防空を増強させた。

 そして、加賀も203mm砲が降ろされ、

 航空機運用を中心とした空母となっていった。

 

 3000トン級白亜25号型 艦橋

 「戦艦と空母の代わりに建造する軍艦が潜水艦とはね。世も末だ」

 「それも一軸だ」

 「機関が信頼できるという事でしょうか」

 「金を賭けたのは事実らしいがね」

 「総員75名。配置につきました」

 「そうか、出航しよう。前進」

 

 

 ポナペ島 (330ku)

 巨大な鋼鉄と鉛の丸角長方形パイプが地下に埋められていく、

 白亜潜水艦の原子炉を応用した循環冷却型原子炉で、

 構造は、丸角長方形パイプの4時くらいの位置に燃料棒が固定され、

 ウランの熱源で熱せられた重水がパイプの中を上り、

 自然冷却しながらパイプの中を循環する水流がファンを回し発電する。

 構造的に水力発電のような使い方ではあったが、

 熱源となるウランが少なければ発電量は小さいものの、

 安全性が高く離島で使いやすい電源になった。

 「大丈夫なのか。危なくないのか」

 「でかい割に発電量が小さいのは安全性のためだよ」

 

 

 

 ソビエトフィンランド侵攻

 

 スイス ジュネーヴ

 日本人、イギリス人、フランス人、ロシア人

 「大使。もう行くのかい?」

 「残念ながら、これ以上の話し合いは無意味だからね」

 「サモワールとジャムは置いて行くから、君たちでロシアンティを楽しみたまえ」

 ソビエト代表が出ていく、

 ソビエトはフィンランドに侵攻し、国際連盟を脱退していた。

 「ソビエト脱退で、連盟は、いよいよ。寂しくなりましたね」

 「もう、連盟の存在価値もほとんどないな」

 「だから、ブラジルを常任理事国に」

 「あんな、三等国、うまみがない」

 「しかし、そうはいっても・・・」

 「まだ、ユダヤ艦隊を連盟軍として引き入れた方がいい」

 「それだと分担金を取られそうですし、ユダヤ資本がますます増長するのでは?」

 「アメリカを国家として増長させるよりましだ」

 「それは言えるかもしれませんが、アメリカとユダヤ資本を切り離すのは困難かと」

 「民主主義国家は、構造的にユダヤ資本の切り離しに失敗する」

 「ユダヤを利用し、好きな時に切り離しが成功するのは王政、独裁、全体主義だけだ」

 「日本も国際ユダヤ資本の標的ですか」

 「いずれな」

 「金を借りている間が花で、そのうち、日本で競争で負けた企業の利権を買い始めるんだ」

 「そして、雪だるま式に足場が大きくなっていく」

 「気付いたらあっという間に国家経済を乗っ取られてる」

 「商業学校を作って、護送船団式の資本主義じゃないと難しいですかね」

 「あはははは・・・弱肉強食の資本主義で?」

 「それだと人事が膠着して競争力が低下するじゃないか」

 「クロッケーの同好会じゃあるまいし。会計ができてもビジネスができるとは限らないだろう」

 「ですよね」

 「ユダヤ商人は生まれつきの商人。マイノリティゆえの結束力もあるし」

 「特権に胡坐をかいてる民族商人が敵う相手じゃない」

 「日本企業の一部で総合商社を考案してるのですよ」

 「総合商社?」

 「軍の離職者が増えましてね」

 「企業型参謀本部といいましょうか、国内外業務全般を統括するシステムですよ」

 「なるほど・・・そういうのもあるのか」

 「そういえば、日本は新型戦艦を建造してないようだが」

 「潜水艦の建造と、あなたがたの造船発注が立て込んでましてドックが空いてないのですよ」

 「儲かったな。日本は・・・」

 「戦艦と護衛艦を売ったので、国防が不安ですがね」

 「欧米諸国はユダヤ資本に牛耳られてる」

 「ユダヤ軍創設中の日本を攻撃するなら、まず民主革命を起こさないとな」

 「まぁ ユダヤがパレスチナに建国して国軍を持てば、ユダヤ資本の保護もなくなるがね」

 「今のところ中国市場支配が目的だから日本市場は後回しじゃないのかな」

 「人権問題を押さえてもらってるだけでも嬉しいのですけどね」

 「朝鮮人か」

 「移民船を3000回ほど往復させないといけないので輸送船建造と輸出入増加は助かりますよ」

 「10隻なら300回。100隻なら30回の往復か・・・」

 「まぁ 戦争が終わる頃には移民が片付きそうだな」

 「それより、なんなんだあの人種は?」

 「日本人と全然違うじゃないか。毒が強すぎる」

 「というより “蛇よ、マムシの子らよ”」

 「“どうして、あなたたちは地獄の罰を免れることができようか” って、人種だな」

 「ブラジルとフランス植民地で朝鮮人の犯罪が増えて摩擦が広がってるぞ」

 「農場や炭鉱で働かせるのがいいかと」

 「ユダヤ資本は、もっと有用な使い道を考えてるらしいが」

 「なんですと?」

 「裏社会で・・・」

 「・・・・・」 茫然

 

 

 

 ドイツ海軍は、イギリス海軍に封鎖される前にいくつかの艦隊を外洋に出撃させていた。

 ラプラタ沖

   アドミラル・グラーフ・シュペー

       VS   重巡エクゼター、軽巡エイジャックス、アキリーズ、

 シュペーは、エクゼターを大破させて、後退させたものの、損傷激しく、

 モンテビデオ港に入港したのだった。

 そして、沖には、重巡カンバーランド。軽巡エイジャックス、アキリーズが展開していた。

 12月17日AM04:20

 夜明け前の海上は暗く静かだった。

 重巡カンバーランド 艦橋

 艦内にコーヒーの香りが漂っていた。

 紅茶のカフェインは、コーヒーの倍、

 しかし、それは、あくまでも茶と豆の含有量であり、

 カップ一杯当たりの含有量は、コーヒーが勝る。

 各艦とも将兵の眠気を押さえるため少ないコーヒーが当直に振る舞われていた。

 「いまが一番眠い時だな・・・」

 「来るなら、この時間と思ってました」

 「シュペが、夜戦で抜け切らないなら、時間ギリギリに出るかもしれないな」

 「どちらにせよ。エイジャックスは、砲塔2基が破損している」

 「しかし、状況は、初戦よりいいはずだ」

 「増援は?」

 下士官が海図を見つめつつ、

 コンパスと定規で線を引いて行く。

 「アーク・ロイヤルは、まだ、遠方ですので、あまり期待できないかと」

 「栄光のイギリス艦隊も、ドイツUボート艦隊のせいで、てんてこ舞いか」

 「Uボートは整備完了でいつでも出撃できますが」

 「イギリス海軍は、ドイツ海軍の出撃合わせて整備しなければなりませんから」

 「胃の痛くなる話しだ」

 「それも、あと18時間で退去期限です」

 「その前に撃ち合いになるかと・・・」

 エンジンの音が上空から聞こえ、

 見上げると水上機が飛んでいた。

 吊光弾が投下されると、艦隊上空が真昼のように照らし出された。

 「・・Ar196・・」

 身を竦めたくなるような砲声が轟き、

 重巡カンバーランドの周囲に砲弾が降り注いだ。

 「ぜ、全速前進! 総員戦闘配備につけ!」

 

 アドミラル・シェーア

 レーダーに3つの艦影が映し出されていた。

 「慌ててるみたいだな」

 「索敵機より、イギリス艦隊が展開を開始したそうです」

 「このまま殴り込んで、砲撃せよ」

 「いいのですか? 装甲なんてありませんよ」

 「283mm砲の直撃なら敵艦も似たようなものだ」

 「撃って撃って、撃ちまくれ!」

 レーダーで捕らえられ、

 吊光弾に照らされたイギリス巡洋艦3隻に逃げ道はなかった。

 52口径283mm砲の発射速度は毎分2.5発。

 「なかなか、当たらんな」

 「Uボートに人材を引き抜かれましたからね」

 「ったくぅ〜」

 白々と夜が明けるようになると、砲撃が精確になっていく。

 カンバーランドの中央に爆炎が立ち昇り、黒煙が噴き出し、誘爆を起こした。

 「右舷の艦に砲を集中させろ」

 重巡カンバーランドは大破。

 軽巡エイジャックスは主砲2基が破損、

 損傷していない軽巡アキリーズも283mm砲弾に砲撃され、苦戦を強いられていた。

 砲声の後、爆音が轟き、エイジャックスが炎に包まれた。

 モンテビデオ港を出航したアドミラル・グラーフ・シュペーが砲撃を開始したのだった。

 重巡カンバーランド。軽巡エイジャックス、アキリーズは、大破炎上しつつ逃亡し、

 アドミラル・シェーアは、追撃して、重巡カンバーランドを撃沈。

 さらに軽巡エイジャックスを撃沈してしまう。

 

 モンテビデオ港

 アドミラル・シェーアとアドミラル・グラーフ・シュペーが並んでいた。

 艦橋

 「はぁ? シュペの蒸気熱パイプが破壊されたぁ」

 「ディーゼル油を加熱しないと機関を動かせないのは、性能を追求し過ぎだな」

 「どうするんだよ」

 「最高機密だからね・・・」

 「曳航してなんか行けないぞ」

 「取り敢えず。どこか隠れる場所があればいいんだが・・・」

 「イギリスとフランスは、戦艦1隻、空母4隻、巡洋艦16隻を出してる」

 「巡洋艦を2隻撃沈。2隻撃破したから、巡洋艦は12隻に減ってるがね」

 「この近くにイギリス艦隊から身を隠せるような海域などないだろう」

 「高速戦艦部隊が動いてくれたら、もう少し、余裕ができるんだが・・・」

 その時、ドイツ製日本商船がモンテビデオ港に入港してくる。

 「艦長・・・」

 「あれ・・・たしか、ディーゼル機関船だったよな」

 「「「・・・・」」」

 アドミラル・グラーフ・シュペーの艦長は、日本商船と交渉に入る。

 

 

 カリブ海 キュラソー島

 ルベン(金剛)、シメオン(比叡)

 ルベン艦橋

 「戦艦ニューヨークとテキサスが沖合にいるようです」

 「大した戦艦じゃないが、非ユダヤ系の嫌がらせか」

 「非ユダヤ系は多数派ですからね」

 「パナマ船籍とはいえ、ユダヤ資本の艦隊なのは明らかですし」

 「自前で私兵艦隊を持った代償か」

 「それに欧州ユダヤ資本は上海で足場を広げたがってますから」

 「ユダヤ資本も一枚岩とはいかないか」

 「戦艦で疑似国家気分を味わえるのは悪くないですよ」

 「それより、ラプラタ沖でイギリス艦隊が敗北したようです」

 「訓練が済んでいたら参戦して、ドイツの艦隊を撃沈していたのに」

 「それより太平洋のイッサカル(榛名)、ゼブルン(霧島)と交替すべきでは」

 「戦艦の維持とは、煩わしいものだ」

 「それより、イギリス、フランスから参戦要求が出てますよ」

 「我々はパナマ船籍だから勝手に戦争するわけにいかんだろう」

 「「「「あはははは」」」」

 「とりあえず、パナマに圧力をかけておけ、戦争はこっちで決めなきゃならん」

 「議長。来ました」

 艦隊が入港してくる

 「あれが神州丸か」

 「はい、ソミュアS35騎兵戦車を1両ずつ戦車用舟艇20隻に搭載しています」

 「パレスチナは落とせると思うか」

 「ユダヤ軍は実戦を経験していませんが、日本での訓練は十分です」

 「二陣以降は、いわくつきのオチキスH35戦車60両か。95式軽戦車20両になります」

 「こういう時、どうしたものかな」

 「日本の将校は “決断したら迷うな。信念を疑うな” と」

 「んん・・・常に最新の情報で補正するユダヤ人には、一番難しい事柄だな・・・」

 「イタリアがドイツ側で参戦する可能性は高いです」

 「あの貧乏くさいイタリア海軍が邪魔をしてくると思うかね」

 「可能性はありますというか、我々は航空戦力と潜水艦戦力で劣勢ですから」

 「小型空母しか買えなかったのが痛いな」

 「とにかく、整備、訓練、補給を急がせよ」

 「この大戦で世界から反ユダヤ勢力を一掃してやる」

 

 

 

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 メルカバフラグがちょっとだけ立ったかもしれません。

 いいですよね。メルカバ (笑

 65tは重たいけどメルカバ配備した日本も見たい。

 なんとなく、今アメリカがやってるイスラエル贔屓を日本がする羽目になるような

 しかし、アラブを敵に回すと・・・・たら〜

 

 

 

 

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第07話 1938年 『来た。見た。×った』
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