月夜裏 野々香 小説の部屋

       

仮想戦記 『白亜の遺産』

 

 第09話 1940年 『所詮、庶民は利権の奴隷』

 人は己が生存圏と支配権を求めて戦い、

 国家も生存圏と支配権を確保するために戦う。

 そして、人も国家も聖域を確保したとき、醜悪さだけが増していく、

 日本は、類稀な幸運で白亜の遺産を引き受け、

 将来的な軍事的優位性と

 国際競争力のある商品開発の見込みから侵略から足を洗い、堅気に戻っていた。

 南満州権益と北樺太の交換で、軍事的な脅威と浪費は軽減され、

 中ソ戦争による軍需は、日本経済を立て直し、

 ユダヤ資本への高速戦艦の売却とユダヤ陸海空軍の創設による収益と、

 資源と工作機械の購入は、日本の工業力を押し上げてしまう、

 公共事業投資は、日本の雇用を確保し、産業を一気に拡大させ、

 欧州戦争による需要も日本経済を歓喜させただけだった。

 日本商船は、比較的安全な港に物資を輸送し、

 そこからソビエト、ドイツ。

 そして、中国、イギリスへと物資が送られていく、

 日本は、どこの国がどうなろうと知ったことではなかった。

 大半の庶民は、生きることが先決であり、

 生活の保障のまえでは、大義も信条も取るに足らない。

 明日の生活のために働く者だった。

 電力供給の安定と工作機械の更新によって、日本産業の生産性は急速に高まり、

 政府→大企業→下請と上下に流れる資本だけでなく、

 国民の趣向を捉え横に流れる隙間産業が広がり、

 社会資本は急速に増加していた。

 日本 国会

 「反対多数」

 「国家総動員法案は否決」

 「よって、発電と配電は規格法によって管理され、自由競争とする」

 閉会

 議員たち

 「やれやれ、土壇場で軍部の足掻きか」

 「発電所単体事業の独立採算制なら他業種参入の機会もあるし」

 「民間企業も自家発電の売買で損失を押さえられるし」

 「利権そのものは小さくなるから設備投資を抑制できるし」

 「民需拡大を牽制できると思ったんじゃないか」

 「産業の足を引っ張ってまで、軍拡に拘るかね」

 「一度、軍部のうま味に浸ったら民間会社で働きたくないのだろう」

 「ふん、年功序列と権威主義だけの卑屈な組織にどんな希望があるって」

 「まぁまぁ ピラミッドを大きくして非生産部門で下層が苦しむのも忍びないし」

 「民需主導とはいえ、中ソ戦争と欧州戦争で軍需も伸びてる。ここは退くべきだろうな」

 

 

 静岡市で大火(焼失5121戸、死亡4名)

 

 

 ドイツ帝国ヴィルヘルムスハーフェン港

 ポケット戦艦グラーフ・シュペー艦橋

 僚艦アドミラル・シェーアの援軍があったとはいえ、無事に帰還できたのは奇跡といえた。

 修復を終え、物資を積載するともう一度出撃する。

 「そろそろ、ユダヤ艦隊が参戦してきそうな予感がするが」

 「どうかな。連中は、パレスチナ回復を優先する気がするが」

 「それに人口が少ないし、単独で犠牲の大きな作戦を行うとは思えない」

 「そのあとは?」

 「そのあとは、アメリカと一緒に参戦するかもしれない」

 「アメリカは議会が “うん” と言わない限り参戦できないだろう」

 「議員は “うん” というと、次の選挙で負けるからな」

 「ふっ アメリカ産業はフラストレーションがたまってるだろうな」

 「こっちがアメリカの挑発に乗らなければ何とかなるだろう」

 

 

 

 

 日本人と日本製品は、シベリア鉄道を使えばドイツ帝国まで到達することができた。

 ドイツ人とドイツ製品もシベリア鉄道を使えば日本まで到達する。

 そして、ドイツ、ソビエト、日本は、国益に従って交流していた。

 シベリア鉄道

 客車の日本人たち

 「ドイツは、南方資源を欲しがってるようだが」

 「ゴムとスズは戦略物資だからね」

 「しかし、それらは欧州ユダヤ資本に押さえられているし」

 「中国のタングステンも欧州ユダヤ資本に押さえられている」

 「売るとしてもユダヤ資本の顔色を伺いながらじゃないと難しいな」

 「そういえばアメリカ系ユダヤがナイロンを作って、欧州ユダヤのくびきを脱したな」

 「ナイロンか、日本でも作れるようだ」

 「日本も欧州ユダヤのくびきから離れられるのなら悪くないが原料が石油じゃ脱したとはいえんよ」

 「なんにしてもドイツは資源で押さえ込まれそうだな」

 「ドイツは、日本にLZ127グラーフ・ツェッペリンを売りたがってるらしい」

 「なんで?」

 「戦争で使えないからだろう」

 「大西洋は?」

 「制空権がなければ、空母に見つかったらただの的だからな」

 「それどころか、水上機にすら撃墜される」

 「それに水素じゃ・・・」

 「代価は? というよりどうやって日本に?」

 「ノルウェーを抜けて北極圏を突っ切って日本か、シベリアを通過するか」

 「大冒険だな」

 「妨害できそうなのはソビエトとアメリカだろうがどちらも中立」

 「あまり目立ったことして、ユダヤ資本に睨まれるのは面白くないぞ」

 「それに高そうだ」

 「アメリカは民主主義でキリスト教だけど、資本主義でユダヤ教だからな」

 「それがドイツの飛行船と何の関係が」

 「飛行船を欲しがってるのが日本で創設中のユダヤ空軍なんだよ」

 「げっ なんで?」

 「結局、戦艦と護衛艦だけじゃ 対潜哨戒で弱いって気付いたんじゃないか」

 「そういや、空母と潜水艦だけは売らないって突っぱねたっけ」

 「ドイツは怒るんじゃないか」

 「怒るだろうけど南方資源は、それにもまして貴重らしい」

 「ソビエトも戦艦建造でユダヤ資本の情報待ちって噂だ」

 「お金持ちにはかなわんな」

 

 

 大西洋上

 リュッツォウとアドミラル・グラーフ・シュペーは意図的に存在を知らせながら南下していた。

 イギリス艦隊は、ドイツの通商破壊を防ぐため

 本国艦隊から空母フューリアスと巡洋戦艦レナウンを北海から引き抜き追撃させ、

 H部隊と合わせて、ポケット戦艦2隻を包囲しようとしていた。

 

 

 UボートIX型潜水艦

 排水量水上1120t/水中1232t

 全長76.8m×全幅6.8m

 最大速度 水中7.3kt / 水上18.3kt

 航続距離 水中4kt/63海里 / 水上10kt/13450海里

 乗組員:44名(うち4名は士官)

 兵装:53cm魚雷発射管×6(艦首4、艦尾2 搭載魚雷22本)、

 105mm単装砲×1、37mm機関砲×1、20mm単装機銃×1、

 他に機雷(TMA、TMB)も搭載可能

 

 深夜の洋上

 UボートIX型潜水艦12隻が決められた時間と座標に浮上する。

 フォークランド諸島沖の対潜哨戒はあまく、

 “4月馬鹿” と呼ばれたる作戦は支障なく進んでいた。

 Uボートの艦首艦尾の魚雷格納庫に魚雷は積み込まれておらず、

 臨時の営倉が作られ、

 魚雷発射要員の代わりにドイツSS部隊25人が居座っていた。

 ドイツ海軍将兵とドイツSS部隊は犬猿の仲だったものの、

 この作戦だけはと和解し共闘する。

 圧縮空気によってふくらまされた黒塗りの大型浮きボートに親衛隊装備一式と、

 時限式爆弾が載せられ、SS部隊25人が乗り込むと黒い島影に向かって消えていく、

 12隊25人の総勢300人は、闇夜に紛れ爆弾を仕掛け、

 夜明け前に爆発させた。

 

 7000t級仮装巡洋艦トールは、大西洋上を隠遁し、

 定められた日にちと時間になるとアラドAr196水上機を出撃させ、

 トールは、45口径150mm単装砲6基6門で砲撃しつつフォークランド諸島を強襲した。

 フォークランド島のイギリス艦隊は出払っており、

 守備隊は、Uボートで潜入したドイツSS部隊が仕掛けた爆弾によって混乱し、

 兵舎は夜襲を受け、指揮官は狙撃され、組織的な反撃がとれなくなっていた。

 アラドAr196水上機がフォークランド諸島上空を旋回し

 イギリス軍残存部隊は、仮装巡洋艦によって砲撃され、

 SS部隊700人が上陸すると戦力差でも圧倒され、

 イギリス軍守備隊200人と島民2000人は降伏するよりなかった。

 

 

 北海

 戦艦ウォースパイト

 「ドイツはノルウェーに上陸するはずだ」

 「何としてもドイツの作戦を阻止するんだ・・・」

 「提督。フォークランド諸島が4月1日。ドイツ軍に占領されました」

 「なんだと、どういうことだ」

 「潜水艦による奇襲部隊の上陸と仮装巡洋艦の強襲上陸により」

 「フォークランド守備隊は殲滅されたそうです」

 「ば、馬鹿な・・・」

 「国防省は、直ちにフォークランドの再占領に向かえと」

 「ノルウェーはどうする。ドイツにくれてやるのか?」

 「駆逐艦だけで・・・」

 「駆逐艦だけで守れるものか」

 「しかし、もたもたしてるとアルゼンチンがドイツ側で参戦する事態になると・・・」

 「・・・・」

 

 

 スタンリー港

 7000t級仮装巡洋艦トールから物資が降ろされていた。

 仮装巡洋艦1隻分の物資では、戦力で不安だったものの、

 島に蓄積してある軍事物資を押収することができた。

 そして、トールはアルゼンチンとフォークランド諸島を数度、往復すると、

 フォークランドのイギリス将兵と島民をアルゼンチン義勇兵2000人を交換してしまう。

 ドイツ軍SS将校とアルゼンチン義勇将校

 「パウル・ハウサー将軍」

 「なんだね」

 「本当にこの戦争が終わったらマルビナスをアルゼンチンに引き渡していただけるので?」

 「総統は、この島に関心がありません、戦争に勝つため、一時的に所有したいだけです」

 「素晴らしい。アルゼンチンは、ドイツ帝国に協力を惜しみませんぞ」

 その日、旧式化していた27720t級戦艦リバダビアとモレノが鉄くずとして、ドイツに売却され、

 50口径305mm連装砲6基 50口径152mm単装砲16基 50口径102mm単装砲16基

 50口径305mm連装砲6基 50口径152mm単装砲16基 50口径102mm単装砲16基

 2隻ともイギリス戦艦の砲撃が届きにくいマルビナスの浅瀬に埋め立てられていく、

 そして、アルゼンチン空軍機がマルビナスの飛行場に輸送されてしまう、

 カーチスP36戦闘機14機

 1184馬力 自重2096kg/全備重2726kg

 全長8.69m×全幅11.38m×全高2.90m 翼面積21.92m

 最大速度501km/h  航続距離1320km

 武装:12.7mm 機関銃 1門、7.62mm 機関銃 3門

 

 Ae.MB2攻撃機14機

 715馬力×1 自重2125kg/全備重3510kg

 全長10.9m×全幅17.2m×全高2.8m 翼面積35u

 速度285km/h 航続距離600km  爆弾400kg

 ドイツ空軍パイロットたち

 「なんじゃこりゃ この機体で死ねってか。死ねってか」

 「ふっ 攻撃機は、水上機のアラドAr196の方が性能がいいよな」

 「メッサーシュミットの設計図と交換してよかったのかね」

 「イギリス戦艦の砲撃が届かない程度の入り江に入れてる」

 「イギリス空母に戦艦を爆撃させなければいいよ」

 「あの戦艦は旧式とはいえ助かるね」

 「アルゼンチンは反英が強い。マルビナス諸島をもらえるのなら何でもいいのさ」

 

 

  

 

 04/09 ノルウェー沖

 霧と荒れた海をドイツ艦隊が進んでいく、

 ドイツにとってノルウェーの鉄鉱石排出港ナルヴィクは戦争遂行上、必要不可欠であり、

 どうしても占領しなければならなかった。

 そして、イギリス艦隊もノルウェーが焦点になっていることに気付いており、

 ノルウェーが中立であるにもかかわらずノルウェー沖に艦隊を進出させていた。

 

 ドイツ艦隊

  ナルヴィク派遣艦隊

    巡洋戦艦シャルンホルスト、グナイゼナウ

    駆逐艦10隻

      ヴィルヘルム・ハイドカンプ、ゲオルク・ティーレ、ヴォルフガング・ツェンカー、

      ベルント・フォン・アルニム、エーリッヒ・ギーゼ、エーリッヒ・ケルナー、

      ディーター・フォン・レーダー、ハンス・リューデマン、ヘルマン・キュンネ、

      アントン・シュミット

    上陸部隊2000名(第3山岳師団主力)

 シャルンホルスト艦橋

 「今のところ、敵影なしか」

 「リュッツォウとアドミラル・グラーフ・シュペーが陽動で出て」

 「トールとUボート部隊がマルビナス諸島を占領している」

 「運が良ければイギリス艦隊を引き付け」

 「そのまま、イギリス本国艦隊も南大西洋に移動するはず」

 「ユダヤ艦隊が参戦してこなければいいのですが」

 「海の男は一朝一夕で作られるものじゃないよ」

 「日本人にはむかついたが、イギリス、フランス、アメリカに売らなかったことだけは評価するよ」

 「ユダヤ艦隊は、将来、敵になるのでは?」

 「日本はユダヤ資本の利権に食い込み、ユダヤの力を戦艦の維持で削いでるし」

 「欧米キリスト教勢力全体を警戒させて収益を減らしてる」

 「ユダヤ資本は収益減を取り戻すため、パレスチナ占領を強行するはず」

 「そうなったらますます、キリスト教徒勢力はユダヤに敵対するだろう」

 「アメリカ国民が対独参戦を拒めばこっちのモノだ」

 「作戦上、リュッツォウとアドミラル・グラーフ・シュペーの抜けた穴が心配です」

 「イギリスの大型艦が南下してるなら問題ないだろう」

 巡洋戦艦シャルンホルストとグナイゼナウはイギリス駆逐艦5隻と遭遇、

 砲撃を繰り返しながら撃沈していく、

 さらにイギリス駆逐艦9隻と遭遇し、雷撃され、被雷しながらも7隻を撃沈、

 シャルンホルストとグナイゼナウは、中破して帰還中、

 空母グローリアス、駆逐艦2隻と遭遇して撃沈してしまう。

 

 

 トロンハイム派遣艦隊

  重巡洋艦アドミラル・ヒッパー、

  駆逐艦パウル・ヤコビ、テオドール・リーデル、ブルーノ・ハイネマン、フルードリヒ・エッコルト

   上陸部隊1700名

 

 ベルゲン派遣艦隊

 軽巡洋艦ケルン、ケーニヒスベルク、

 砲術練習艦ブレムゼ、水雷艇レオパルト、ヴォルフ、

 Sボート母艦カール・ペーターズ、

 SボートS18、S19、S20、S21、S22、S24、その他の艦艇2隻

  上陸部隊1900名

 

 クリスチャンサン、アーレンダール派遣艦隊

 軽巡洋艦カールスルーエ、

 水雷艇グライフ、ルクス、ゼーアドラー、

 Sボート母艦ツィンタウ、

 SボートS9、S14、S16、S30、S31、S32、S22

  上陸部隊1100名

 

 オスロ派遣艦隊

 重巡洋艦ブリュッヒャー、ポケット戦艦リュッツォウ、

 軽巡洋艦エムデン、

 水雷艇アルバトロス、コンドル、メーヴェ、

 掃海艇(Rボート)R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、その他の艦艇2

  上陸部隊2000名

 

 エゲルスン派遣艦隊

 掃海艇(Mボート)M1、M2、M9、M13

 

 

 ドイツの北欧侵攻は、ヴェーザー演習作戦と呼ばれ

 一連の作戦は、戦争遂行上、必要な戦略資源の鉄鉱石確保が目的だった。

 イギリスは、ドイツの戦争目的を妨害しなければならなかったものの、

 リュッツォウとアドミラル・グラーフ・シュペーの追撃で巡洋戦艦レナウンを派遣し、

 戦力比で不利となり、

 さらにドイツ軍によるフォークランド諸島占領で、戦艦ウォースパイトが引き抜かれると、

 ノルウェー防衛は絶望的になった。

 ドイツの作戦は4月9日から始まり、デンマークは開戦から2時間で降伏 

 ノルウェー王国侵攻も5月28日までに終息し、ドイツは北欧を占領してしまう。

 北欧の支配を巡る戦いは、練度の高いイギリス海軍と戦力で勝るドイツ海軍の戦いであり、

 ノルウェーに静寂が戻った時、

 イギリス艦隊は壊滅的な打撃を受けて後退、

 ドイツ艦隊は、艦隊戦術と運用の拙さから損傷が多く、ドックに入渠することになった。

 ヴィルヘルムスハーフェン港

 ドイツ海軍将校たち

 「空母グローリアス、駆逐艦16隻を撃沈しました」

 「ドイツ海軍は?」

 「ブリュッヒャー撃沈」

 「シャルンホルスト、グナイゼナウ大破」

 「アドミラル・ヒッパー大破」

 「その他、全艦は、中破といったところです」

 「ノルウェー占領で沈没艦が1隻なのは救いだが、戦力比からすると望ましくない戦果だな」

 「少なくとも海軍将兵の多くは戦闘経験者になりました」

 「それは心強いというより幸運だったな」

 「新型戦艦の副砲を剥がして水上機を増やせただけでもよしとするか」

 「拿捕のとき、困ると聞いております」

 「惜しいが主砲を向ければ良いだろう。戦艦が索敵してくれるのなら、潜水艦で撃沈できる」

 「ティルピッツ建造後は、潜水艦建造に振り分けられるとのことです」

 

 

 中ソ国境 黄河

 北岸のソビエト陣地にはT26戦車、BT戦車が並び、

 飛行場には、I-15、I-16戦闘機が配備されていた。

 華北域の中国人民は、駆り出され、

 人海戦術でモスクワ行きシルクロード鉄道を建設させられ、

 いたるところで処刑の銃声が響いた。

 完成すれば、ソビエトは世界最大最強の帝国になることが確実に思われた。

 漢民族にすれば、白い肌をした清国再来と高を括っていた節もあった。

 中国大陸を支配したはずの満州族の血が薄れ、漢民族に飲み込まれたのだ。

 漢民族とロシア人の人口比なら一概に違うとは言い難く、

 ロシア人の血が混ざった子供は、両方の特性を兼ね備えていた。

 一方、黄河南岸は、蒋介石率いる国民軍が展開し、軍の近代化を推し進めていた。

 その近代化で一役買っていたのは、日本であり、

 日本の商船は、武器弾薬を降ろし、戦略資源と金銀宝石を載せると帰っていく、

 国民軍の飛行場には96式戦闘機と97式戦闘機が並び、

 駐屯地には、新型の19.5t級ソミュアS35騎兵戦車が並び始めていた。

 そして、中国人は、長城防衛陣地を建設するため働かされ、

 南岸のいたるところで処刑の銃声が響き、

 川の両岸とも似たような状況が作られていた。

 人口の多さが階層の厚みを増やし、貧富の格差に拍車をかけ、

 ピラミッドが巨大になるほど下層の重圧は大きくなり、

 支配者が違うだけで行われている事は同じだった。

 国民軍将校と日本商人。

 「もっとも、武器が必要ある。日本人は、もっとたくさん持ってくるある」

 「日本軍正規軍の10倍以上の装備は、簡単に生産できませんよ」

 「このままだと、中国大陸が全部、ソビエトに奪われるある」

 「黄河の南側は蒸し暑くなるので、ソビエト軍は来ないのでは?」

 「そんなのわからないある」

 「中国防衛という大義名分ある」

 「たくさんの武器弾薬を持って、中国人民を恫喝して支配して贅沢するある」

 「それ本音です」

 「う、うっかりある。とにかく、武器が必要ある」

 「まぁ 資源と金さえもらえれば、用立てられますよ」

 「そろそろ、まともな空軍と戦車部隊が欲しいある」

 「そりゃ 売れないこともないですが、高くなりますよ」

 「日本人は鬼ある。守銭奴ある。反共の気骨に欠けてるある」

 「同じアジアの同胞として恥ずかしくないあるか」

 「日露戦争のおり助けてくれなかったじゃないですか、何をいまさら」

 「あ、あのときは、清国が悪いある。それに、いろいろ事情があったある」

 「はいはい」

 

 

 イギリスとフランスは、ドイツのポーランド侵攻に対し、宣戦布告で応じた。

 しかし、ポーランド救援のための進撃は行われず。

 第二次世界大戦が始まった後もマジノ線に引き籠もったままだった。

 無為に流れた9か月は、宣戦布告した事さえも各国から疑われ、

 まやかし戦争とも呼ばれた。

 国境を接するフランスの消極的姿勢は、政争に明け暮れていたことに起因し、

 フランス軍も戦う資質に欠いていた事に求められた。

 無論、フランス軍上層部にドイツの油断を誘い、

 ドイツ軍をしてマジノ線の消耗戦に引き摺り込み、

 最小限の人的損害で余力を残し、

 ドイツ本土侵攻という遠望な計画が立てられていた事もあるが、

 どちらにせよ、第一次世界大戦の死傷者は、膨大であり、

 トラウマとなってフランス軍将兵をマジノ線に張り付けさせた。

 それが戦略的な失態だとしても非難するには当たらない。

 ドイツのトラウマは、第一次世界大戦で敗北した事であり、

 経済的窮状は、中ソ戦争で回復の兆しが見られたにもかかわらず、

 対ソ中貿易によって国家財政を再建するより、

 覇権で欧州列強の誇りを取り戻そうとした失態に比べるなら同情できる余地があった。

 ドイツ帝国は、東部の戦力を引き抜き、戦力を西側へと集結させていた。

 

 ドイツ軍は、突如としてフランスとオランダに侵攻した。

 ドイツ戦車隊は、ムーズ川を渡河し、

 アルデンヌの森を抜けて、フランス国内に流れ込んだ。

 オランダ戦線も圧倒的な空軍力と、空挺部隊と機甲師団の連携作戦によって、

 オランダ軍の防衛線はズタズタにされ、オランダは降伏。

 余勢を駆って進撃するドイツ軍にベルギーも敗北する。

 僅か一ヵ月で、オランダ、ベルギー、フランスの防衛線は崩れさり、

 無防備なフランス国土が剥き出しにされてしまう。

 イギリス海峡に近いブーローニュ港、カレー港がドイツ軍に制圧され、

 イギリスへの退路を断たれてしまう。

 もっとも、機甲師団ばかりで前進したドイツ軍も補給で苦しみ、

 歩兵部隊の進撃を待たなければならず、ダンケルク攻撃が見送られ、

 フランス、イギリス軍は、ダンケルクの防衛線を固めつつ、

 ありとあらゆる船舶を出して、イギリスへ逃亡していく、

 

 

 イタリアが対英仏宣戦布告

 

 パリ無血開城

 

 ドイツ軍は、フランス南部へと進撃し、

 フランス軍は、戦線を構築できず後退していく、

 

 イタリア軍がフランスに侵攻。

 

 ペタン首相がドイツ軍に休戦を提示、

 

 

 マルビナス(フォークランド)諸島

 ポケット戦艦リュッツォウとアドミラル・グラーフ・シュペー

 Uボート12隻

 給油艦ウッカーマルク。仮装巡洋艦トール、アトランティス。客船ナンキン

 ドルニエDo26(1機) アラドAr196(3機)

 ドイツ艦隊といって支障のない艦船群が停泊していた。

 追加のドイツ軍とアルゼンチン義勇軍が上陸し、陣地増築を行い、

 陸軍部隊の増強は、イギリス海軍の再上陸を躊躇させていた。

 もっともイギリス艦隊の攻撃が遅れている最大の理由は、別にあって、

 イタリア参戦と戦艦ビスマルクの就役にあった。

 リュッツォウ艦橋

 ドイツ海軍将校たち

 「アトランティスは、戦車を運んできたのか」

 「4号D型を5両」

  4号D型戦車 24t 24口径75mm砲 300馬力 38km/h 航続距離210km

 4号潜水戦車は水陸用防水シールと吸気排気逆流防止チューブが施され、

 アトランティスから浅瀬の海底に下ろされると煙を吐き出しながら海岸に乗り上げた。

 「どうせなら、航空機を持ってきて欲しいね」

 「航空機なら持ってきただろう」

 「アルゼンチン製のP36が役に立つとは思えん」

 「航空機はイギリス本土爆撃で必要でね」

 「戦車がいるなら、敵は三倍以上の戦車を上陸させようとするだろう」

 「敵にとって、それは負担になる」

 「少数の戦車を配備するのは効果が小さいと思うが」

 「そういうな。次の便でもう5両持ってくるらしい」

 「外洋に脱出できそうなのか」

 「フランスのボルド港が使えるのなら何とかなると思うが」

 

 

 日本 某秘密の研究所

 「まず、これを運び込んで、溶液を器の中に入れるニダ」

 「こんな簡単な仕事で日本にいられるなんて、嬉しいニダ」

 「でも “ちゃんとやらないと殺すからな” って言ってたニダ」

 「どうせ、厚い扉の向こうで見てないニダ」

 「だけど、前任者は、ここで倒れて死んでたニダ」

 「どうして死んだニダ?」

 「よくわからないニダ」

 「ん? なんか、青く光ったニダ」

 

 

 朝鮮半島

 新義州市

 特定企業が両国の間の交易を行い、

 アメリカ製、イギリス製、フランス製だけでなく、

 ソビエト製とドイツ製のモノが市場に流れ込み、

 満州産物の大豆、粟、高粱、小麦が山を作っていた。

 日本人は、国境の向こう丹東市を興味深げに見ることはあっても普通に生活し、

 新天地での日常を繰り返していた。

 日ソ貿易関係者たち

 「丹東市は、ロシア人の入植者が増えつつあるようだ」

 「じゃ 満州は、いよいよ。ソビエト領か」

 「日本の防衛上、かなりまずいよね」

 「モスクワから離れすぎてる。こんな辺境で戦力を枯渇させるような戦争は避けるだろう」

 「だといいが日露戦争の復讐をしたがってるかもしれないだろう」

 「それじゃ 日本人の移民も進まないんじゃないかな」

 「税制上の優遇があるから結構来るよ」

 「もう少し、日本の軍事力があれば安心なんだけどね」

 「予算を軍事費に取られたら発展できないだろう」

 「しかし、よく軍縮できたもんだ」

 「軍部と縁戚関係を結んでる政界財関係者や有力者は多かっただろうに」

 「なんか、凄いお宝を拾って、一気に民需に傾いたらしいけど」

 「へぇ 日本は外国に占領してもらうか。内戦でも起こさないと無理だと思ってたが」

 「軍需から民需に変わっただけだよ。庶民は所詮、利権の奴隷さ」

 

 

 日本軍駐屯地

 19.5t級ソミュアS35騎兵戦車が並び始めていた。

 スペック上、ソビエト軍の13.8t級BT7快速戦車、11.5t級BT5快速戦車、9.4t級T26軽戦車に対抗でき、

 多砲塔戦車の28.9t級T28中戦車を苦戦させることはできそうだった。

 問題は数の劣勢が大きく、

 それ以上に深刻なのは動かせば、未舗装道路を破壊することだった。

 戦時ならともかく、平時に身動きが取れないのは、練度維持の点で支障があった。

 陸軍将兵たち

 「最近は道路舗装ばかりやってるんだな」

 「重量の重い戦車を走らせたいとか」

 「携帯用ロケット弾を作るって聞いたがな」

 「新型戦車は30t級だそうですよ」

 「ほう、少しは期待できそうだな」

 「なんか、防弾重視になるって聞きましたよ」

 「はぁ」

 

 

 釜山港 某所

 「いまこそ、チャンスニダ。仏印に進駐するニダ」

 「世界に冠たる大日本帝国になるニダ」

 「「「「・・・・」」」」 こくんこくん

 「絶対にうまくいくニダ。日本の生命線シーレーンを守るニダ」

 「このままだと日本は欧米列強に舐められるニダ」

 「ユダヤ資本の飼い犬のままで満足ニダか!」

 「アジアの盟主がそれでは、いけないニダ」

 「アジアのため、黄色人種のため、有色人種のため、日本は戦わないといけないニダ」

 「「「「・・・・」」」」 こくんこくん

 汽笛が鳴る

 「出発だな」

 「日本は、アメリカと戦争するニダ!!!!!」

 「絶対に勝てるニダ!!!!!」

 「行きたくないニダ。朝鮮民族は日本人に未来永劫感謝するニダ」

 「(日本人は)永遠に(朝鮮人の)下僕になるニダ。本当ニダ!!!」

 「信じるニダ!!!!」

  椿咲く春なのに あなたは帰らない〜♪

 

 

 

 上海

 ガド(扶桑)、アシェル(山城)

 艦橋に黒装束の男たちが集まっていた。

 ラビ族は司祭で12支族に属しておらず各支派の仲介を執り行っていた。

 もっとも10支族は失われ、残ったユダ族とベニヤミン族の2支族もバラバラで、

 消えた10支族の生き残りも一部取り込み、

 主流はハザール人でラビもまともに継承されてるのか、怪しかった。

 「今度はなんだ」

 「バドワイザーのお土産を持ってきた」

 「やれやれ、アメリカ人は、どうしてこんな下品なものを飲みたがるのかね」

 「パレスチナを占領すべきだ」

 「まだ、訓練途上でまともな軍編成ですらできていない、時ではなかろう」

 「だが、兵站と戦力は揃っている」

 「兵站と兵器が揃っていてもだ」

 「訓練されていない将兵をひっくるめたら戦力とは言わんのだ」

 「ロックフェラーは日本の長門、陸奥を購入しようと画策しているよ」

 「ふっ 価格はともかく、長門と陸奥は世界最強の戦艦で日本の象徴なんだがな」

 「売らんだろう」

 「ユダヤは安住できる足場が欲しい」

 「日本が欲しいものはなんだ」

 「保身だよ」

 「「「「あはははは」」」」

 「まぁ 資源だろうな。渡したくないが」

 「遠くの資源なら日本に渡したところで怖くはあるまい」

 「だからイランの石油利権の一部を渡したのだ」

 「ブラジル資源はどうだろうか」

 「ブラジルか・・・」

 「1500万の朝鮮人に囲まれて日本人が利権を維持できるか試してみるのも面白かろう」

 「そういえば、フランス領の朝鮮人1000万人が不穏な動きをしてるそうじゃないか」

 「フランスが負けたからね。朝鮮人は混乱を利用して足場を広げてるのだろう」

 「朝鮮人がフランス領アフリカで主権を執れると思うか」

 「フランスの植民地軍は圧倒的だし」

 「現地民に比べ朝鮮人の人口比は小さ過ぎると思うが」

 「ふっ マイノリティは結束し、マジョリティは相反する」

 「我々ユダヤ資本が経済で勝ってる理由だよ。朝鮮人にも当てはまる」

 「流浪の民なら第二のユダヤ人になるかもしれないな」

 「連中は資質的に商人にはなれないよ。マフィアならなれそうだが」

 「利用するのか」

 「我々は何でも利用する」

 「日本が資源という餌で番犬になってくれるのなら与えることができる」

 「欧米キリスト教勢力に対する保険くらいにはなるだろう」

 「日本は民族主義が強すぎて、我々が安住できそうな国ではありませんが」

 「だが金を増やしてくれる貯金箱くらいにはなるさ」

 「ドイツが日本の仏印進駐を勧めているようですが」

 「日本に仏印に進駐しないよう伝えてくれないか」

 「アメリカは、ドイツ以外でも口実さえあれば戦争を仕掛ける」

 「日本は仏印に戦車を輸出していましたから、インドシナ占領は困難と思ってるようですが」

 「それに仏印は植民地軍を維持するため、日本と取引を増大させると」

 「ふっ オランダ領インドネシアと同じか」

 「植民地の戦車送る暇もなく本国が占領されてしまうとは皮肉なことだ」

 

 

 イギリス

 ロンドン ダウニング街10番地

 欧州全域の地図を見るイギリス上層部の目は厳しかった。

 フォークランド諸島が占領され、アルゼンチンで参戦の動きが強まっていた。

 そして、ノルウェーがドイツに占領され、フランスも降伏し

 丸裸のイギリス本土が欧州大陸にへばりつき、北大西洋に浮かんでいた。

 ドイツの海軍、陸軍、空軍は精強だった。

 ドイツ戦艦2隻とポケット戦艦3隻は損傷しているものの健在であり、

 ビスマルクが就役すると、

 対抗できる軍艦は、老朽艦の巡洋戦艦フッドだけになっていた。

 しばし作戦上の口論が行われた後、沈痛な静寂に包まれ、

 それが何度か繰り返された。

 「ドイツ空軍は?」

 「戦闘機は1200機以上、急降下爆撃機は、1000機。ほか300機ほどと思われます」

 「戦闘機はともかく、双発爆撃機がないことが幸いだな」

 「どこかで、爆撃機1500機分の買い物をしたのかもしれませんね」

 「買ったのは、シベリア経由で資源だろうな」

 「何はともあれ、すぐにイギリス本土爆撃はないと考えるべきだな」

 「しかし、ドイツ高速戦艦は、イギリス本土を艦砲射撃できるだろう」

 「戦艦をイギリス本土周辺に配備しては?」

 「船団護衛はどうするのだ?」

 「手持ちの高速艦は、巡洋戦艦フッドだけ、どうしようもないな」

 「フッドは高速なものか、老朽化で改装中だよ」

 「レパルスとレナウンの修復は?」

 「両艦とも、あと2ヵ月必要だそうだ」

 「デューク・オブ・ヨークは、来年の4月」

 「キングジョージ5世は?」

 「来年の6月」

 「プリンス・オブ・ウェールズは、来年の12月」

 「実戦は慣熟訓練の後になるな」

 「ビスマルクが既に就役していて慣熟訓練中だ。対抗することもできない」

 「日本め、ユダヤに戦艦を売るならイギリスに売ればいいモノを」

 「ふっ ユダヤと違って我々は戦力化が早いからな」

 「軍事バランスを最小限守り、イギリスを敵に回さないならユダヤに売る選択はあるのだろう」

 「なにより戦艦を欲していたのはイギリスではなく、ユダヤ資本だからね」

 「そして、パナマ船籍で、参戦する気はないそうだ」

 「アメリカの参戦は?」

 「アメリカ産業は戦争したがっているよ」

 「厳密にいうとユダヤ資本だけど」

 「戦争などしたくはなかったが連中の思惑通りか」

 「アメリカ国民は?」

 「人殺し好きは賛成だろうが少数派だろうな」

 「ドイツが無制限潜水艦作戦をしてくれるなら・・・」

 「ポケット戦艦部隊は、撃沈数が少なくても毎月20万トンを拿捕している」

 「特にフォークランド諸島を制圧してからは拿捕率がいいようだ」

 「それにドイツは、フランス、オランダ、ノルウェー占領で1000万トン以上の船舶を手に入れている」

 「イタリアは、エジプトに侵攻してるぞ」

 「それどころかイギリス本土が上陸されるのでは?」

 「ドイツ空軍にイギリス本土を爆撃できる機体は少ないし、護衛戦闘機は皆無だ」

 「「「「・・・・」」」」

 「当面、戦艦を護送船団の護衛に付けさせることで乗り切ろう」

 「後は、アメリカか、ソビエトの参戦を願うしかないな」

 「日本の参戦は?」

 「戦艦をユダヤに輸出してしまった日本海軍に何ができる」

 「「「「・・・・」」」」

 「欲しいのは駆逐艦なんだが・・・」

 「ロスチャイルドは、パレスチナの占領に手を貸すなら駆逐艦20隻を貸与できると」

 「ユダヤがパレスチナを占領すると中東の石油採掘がアラブ人に妨害されるかもしれません」

 「アメリカはバミューダー島の基地と旧式駆逐艦50隻を交換できると」

 「どいつもこいつも・・・」

 

 

 

 日本

 中ソ戦争以降、日本の中ソ貿易は右肩上がりに伸び、

 発電所の建設と工場の増設に従って、生産量も急増していく、

 拡大する産業と公共投資は、土地無し水飲み百姓を雇用し、

 日本の陸海軍は、産業拡大のため兵卒を産業側へと放出し、

 軍縮に合わせ、近代化していた。

 イギリスからも発注が舞い込み、

 シベリア経由でドイツからも発注が届いた。

 産業関連者たち

 「人手不足だな」

 「朝鮮人を国外に輸出するからだ」

 「工業化しないとな」

 「半島の土地で農作されたら国策産業なんてできないだろうが」

 「そうは言っても、地主制や企業支配は、自作農に嫌われてるぜ」

 「それじゃ産業の近代化に覚束ないし、ユダヤ資本に対抗できん」

 

 

 日本海軍は、潜水艦へ傾倒し、

 日本陸軍は、将兵40万にまで削減されていた。

 人減らし分の予算が機械化に振り分けられ、

 大砲、機関砲、トラック、装甲車が増え、火力と機動力が増強していた。

 兵力削減を民間が吸収し、

 雇用率が高まり収入が増え、共産主義の恐怖や軍事色が薄れ、

 日本産業は、分別を無くしたように武器弾薬を輸出し、

 民需生産が急増していた。

 政府関係者

 「ドイツも思い切った侵略をするものだ」

 「戦争したくなったのかな」

 「国家と国民が国軍を養えなくなったとき、侵略がはじまるからね」

 「日本も軍拡と暴走で危なかったんじゃないか」

 「建造中の潜水艦は世界最強だし」

 「軍事技術上の優位性が確保できるのなら、年月を稼ぐことはできるよ」

 「まぁ 喚いてる人たちはいるがな」

 「愛国とか、綺麗ごとでまとめたがるのが好きな連中もいるからね」

 「本音は利権のうま味が忘れられない連中で」

 「全体の利益のため弱者を殺す連中だが」

 

 呉

 製鉄所で複雑な工程を経て強靭な高張力鋼が製造され、

 造船所で、船殻が連結されていく、

 その品質は白亜の言語解析が進んでいないためか、

 白亜紀と大気構成が変化しているためか、調整しなければならず、

 また、肝心の施設が劣っているため、製造不可なモノが多い。

 電装関係は、あまりにも未熟で、真空管が列強並になっただけであり、

 ICは、設計図があり素材も分かり、

 理論と理屈を理解しても製造不能だった。

 まして、その先にあるLSIに到達することなど到底不可能に思えた。

 そして、産業の裾野を押し上げなければ科学技術の集大成の軍事軍術も高められなかった。

 4000トン級白亜級潜水艦が建造されていた。

  排水量 水上2750t/水中4000t  全長82×全幅8.9m×吃水7.4m

  ディーゼル2基7750馬力/水上12kt  3400馬力/水中20kt 乗員75人

  発射管6基24本

 「・・・酷いものだな。白亜の足元にも及ばん」

 「出来あいのモノで造っているのだからしょうがなかろう」

 「「・・・・」」

 形の真似ができても品質で劣り99パーセントが複製不能だった。

 現物を知っている技術者は、鬱な表情で日本産業の小ささと、工業力の低さを嘆き、

 知らない関係者は、その威容に目を見張り、顔を綻ばせた。

 未知の高見を目指している者たちと

 現状の高見を知っている者たちの違いだった。

 目を輝かせて握手を求めてくる関係者に苦笑いし、

 功労者たちが成果に対し、謙虚に応える光景は、後ろめたくも、神々しくもあった。

 「電装品の未熟さは、装甲で補うか」

 「原始爆弾を作れば、国防は不可能じゃないよ」

 「原爆も手間取ってるよ」

 「まず、工作精度を高めないと話しにならんね」

 「原子力発電は?」

 「白亜の原子炉を応用できる」

 「原子爆弾より、原子炉の方が難しいのでは?」

 「原子爆弾はウラン235だけで、一度に爆発させる」

 「原子炉はウラン238が95パーセントで、ウラン235が5パーセントで」

 「中性子を吸収しやすいホウ素とカドミウムで制御棒を作って調整し」

 「水で中性子を減速させ、一定の割合で核分裂させて熱を利用する」

 「どちらにしても原子力で生成されるプルトニウムは使える」

 「それ以前にウランを何とかしないといけないのだが」

 

 

 

 カリブ海

 亡命オランダ領

  スリナム(163270ku)

  オランダ領アンティル諸島 (960ku)

   アルバ島(193ku) ボネール島(284ku) キュラソー島(448ku)

   シント・マールテン島(34ku) シント・ユースタティウス島(21ku) サバ島(13ku)

 オランダ政府はオランダを脱出するとスリナムに移動していた。

 そして、キュラソー島で隠然たる勢力を持つユダヤ資本とことを構えなければならなくなっていた。

 キュラソー島(448ku)

 イッサカル(榛名)、ゼブルン(霧島)、

 黒装束のラビたち

 「オランダもついにドイツに占領されてしまったか」

 「オランダの独立は、元々 我々の都合だよ」

 「ユダヤとしては、パレスチナを支配するとしても地中海の最奥で袋小路だ」

 「外洋に領地が欲しい。つまり、この島だ」

 「亡命オランダ領アンティルはキュラソー島を含め総面積が960kuで小さいと思うが」

 「我々ユダヤは私兵を有しているし、実行支配して独立しても良いのでは?」

 「アメリカは資本主義国家でもあるが民主主義国家でもあるのだぞ」

 「軍事力で強硬手段を執るには、非ユダヤ資本勢力が大きすぎる」

 「キリスト教徒どもは、口実さえあれば、この島を砲撃したがるだろう」

 「それにオランダ王家がなんというか」

 「インドネシアに足場を作ってやれば黙るだろう」

 「それに政府は気分に過ぎない。直接、手足を動かしているのは我々だ」

 「だが、イギリスは対独戦でアラブと事を構えたがってない」

 「イギリスが首を横に振ると、パレスチナ入植が上手くいくかどうか」

 「だが、ソビエトがイランを狙っていると情報もある」

 「欧州ロスチャイルドは、日本戦艦の対価で石油利権の一部を認めている」

 「無駄なことを、日本軍は軍縮続きでソビエト軍と事を構えられないだろう」

 「だが極東でソビエトを牽制できるし」

 「日本産業は石油利権を欲しがっているし、軍部は戦争で利権拡大を狙っている」

 「日本政府は、日本国民がどう思おうとイラン進駐に躊躇しないだろう」

 「しかし、日本は、欧州ロスチャイルドの意向が強過ぎて面白くない」

 「我々ユダヤ資本の代理人をアメリカにするか、日本にするか、微妙だな」

 「幾つかの取引で我々アメリカ系ユダヤの意向も通るさ」

 「長門、陸奥は、我々アメリカ系ユダヤの主導権で買う」

 「空母がいいと噂だが」

 「日本人は、ただの新し物好きに過ぎんよ。戦艦の底値は見えたし存在力は健在だ」

 「我々は、訓練期間が必要だ。長門、陸奥を買うのならなるべく早い方がいい」

 「問題は、乗員となるドイツ系ユダヤ人は信用できるのかだが・・・」

 「彼らの反ドイツは強いよ」

 

 

 イタリア軍がエジプト侵攻

 

 イタリア軍がギリシャへ侵攻。

 

 アルゼンチン

 国民の隅々に反英主義が浸透し、ドイツ義勇軍への参加がもてはやされていた。

 事の発端は、世界恐慌(1929年)だった。

 フスト政権は経済不況から脱するべく、

 イギリスとロカ=ランシマン協定(1933年)に調印しブロック経済に入る。

 しかし、ロスチャイルド系ユダヤ資本とアメリカ系ユダヤ資本の抗争でアメリカ市場を失い、

 アルゼンチン経済はイギリスの支配を受ける有様になっていた。

 その反動でアルゼンチンは国粋主義が強まり、

 ドイツ軍のマルビナス占領によって、アルゼンチン国民のドイツ贔屓は極に達していた。

 そして、ヒットラーにマルビナスのアルゼンチン帰属が確約されるとイギリス資産の没収が始まり、

 参戦運動にまでなっていた。

 ブエノスアイレス港

 6800t級重巡ベインティシンコ・デ・マジョ、アルミランテ・ブラウン

 6500t級軽巡ラ・アルヘンティーナ

 日本外交官たち

 「なんとまぁ 戦争はドイツが勝ってしまいそうな勢いだな」

 「日本経済はユダヤ資本が浸透してる。むしろ、イギリスに負けて欲しいね」

 「ユダヤ資本は、民族資本が反ユダヤ資本の温床になると思ってる」

 「元々はキリスト教徒のユダヤ人に対する差別のせいだろう。なんで日本まで巻き込むかね」

 「アルゼンチンとの貿易は、どうなるかな」

 「このままだろう。日本は一応中立国だし、アルゼンチンも味方が欲しいはず」

 「そういや、日本製の武器弾薬を買いたがってた」

 「ドイツとイギリスが戦争していたら、それ以外の国から買うしかなかろう」

 「しかし、ユダヤは、武器弾薬類をアルゼンチンに売るなと」

 「アルゼンチンの反英は、ロスチャイルドの自業自得だろうが」

 「部品の輸出くらいならできるさ・・・・」

 2隻の海防戦艦がマルビナス諸島へと出航していく、

  2336t級海防戦艦インデペンデンシア、リベルタード

   35口径240mm単装砲2基 40口径120mm単装砲4基

   43口径47mm単装機砲4基 40口径37mm単装機砲4基

 既に屑鉄のような代物だったが大砲は本物であり、装甲も用をなしていた。

 少なくともイギリス海軍は、埋め立てられようとしている戦艦2隻と海防戦艦2隻を

 無力化できなければ島を再占領できなかった。

 「少なくともイタリアより頼りになりそうかもな」

 「イタリアは駄目なのか」

 「ドイツ外交官と話すと、イタリアは、ドイツの足を引っ張っているらしい」

 「ふっ」

 

 

 

 東京湾

 全長236.6m×直径30.5m 体積10万5千m3

 マイバッハ製550HPエンジン5基。積載量60t

 ドレフュス(LZ127グラーフ・ツェッペリン)は、ダビデの星(六芒星)が大きく描かれ、

 ユダヤ資本に供給されたヘリウムガスで、湾上空に浮かんでいた。

 そして、アメリカ戦艦ニューメキシコが砲艦外交で入港してくる。

 港湾は、興味本位と怖いもの見たさで市民が集まっていた。

 アメリカにとって、日本は、不況脱出のための東アジアの足場に過ぎず、

 資源と市場の小さな日本に目的があるわけでもなかった。

 日本が大陸から退くと緊張関係から一転し、大陸権益の交渉相手になっていた。

 ニュー・メキシコ 艦橋

 「飛行船ドレフュスか、ユダヤ人も嫌味な名前をつけやがって」

 「フランスにとってはでしょうね」

 「ユダヤ冤罪の代表だからな」

 「それを目につく、上空に滞空させるのだから・・・」

 「日本じゃ なんのことかわからないでしょうが」

 「あはははは」

 「しかし、いよいよ。ユダヤ空軍の創設か」

 「撃ち落としてやったら壮快でしょうね」

 「まったくだ。高角砲を一基、飛行船に向けとけ」

 「はい」

 「副大統領。右がナガト。左がムツです」

 「強そうな戦艦だな」

 「日本は、長門と陸奥の売却でイギリスとユダヤで交渉しているようですが」

 「ほう、国の威信と資本家の維持か」

 「日本は、海軍列強国から一転して、商業帝国。不思議ですね」

 「港湾の工業化を見れば不思議とも言えまい」

 「不思議なのは日本人が、この近代化をイメージできたことか」

 「外交武官によると、日本は、ここ4、5年で、目まぐるしく経済が進んでいるそうです」

 「日本を占領すれば日本の工業力で、中国大陸の市場を押さえられそうだがな」

 「ですが、失敗すれば日本はソビエト側に靡いてしまうでしょう」

 「そうなればソビエトの思う壺か」

 「黄河以北のソビエトと対抗するには、日本と同盟しないと・・・」

 「日本は、自らを東アジアのキーパーソンにしてしまったわけか」

 「副大統領。総理大臣の会見で日米関係が変わるので?」

 「大陸は、ソビエトと中国が敵対関係にある」

 「アメリカと日本が別々の勢力につくか」

 「日米協調で片方につくか。3勢力の均衡にとどまるか・・・現状のまま、だろうな」

 「日本が戦艦8隻をユダヤに輸出して作られた現在の世界情勢ともいえる」

 「それでは、日本に振り回されているようなものでは?」

 「残念ながら、アメリカ国民は職を求めているが戦争は望んでいない」

 「大半のアメリカ人はユダヤ人の意図に気付いてる」

 「対日戦は無理なので?」

 「無理を通したくなるのが人間というものだ」

 「アメリカ政府は、どうしたいと?」

 「それは会見次第だな」

 「低迷していたと思っていたら伸び出した新興産業国家だ」

 「この情勢が続くならイギリス、フランスは転落」

 「日本産業は、アメリカ、ドイツ、ソビエトに次ぐだろう」

 「ユダヤは日本の国債を買って、戦争させて、利益を上げようとしてるし」

 「銀行や企業そのものに投資したがってる」

 「アメリカでやろうとしてることですな」

 「資本家は国債株、金融株、企業株、生産、流通を押さえてる」

 「戦争になれば国民の献身と血を吸いながら数十倍に膨れ上がる」

 「アメリカが戦争してくれたら資本家は大儲けだ」

 「しかし、アメリカはともかく、日本は、鉄、石炭、石油を自前で得られなければ」

 「たとえユダヤ資本を味方に付けたところで・・・」

 「後進国が身を守るには大衆に無理をさせても国力をつけ」

 「軍事力を振り分けるしかないからな」

 桟橋近くに迎賓用乗用車が並びはじめた。

 「お迎か・・・」

 

 

 日本 総理官邸

 イギリス大使が来ていた。

 「ドイツはビスマルクを完成させている」

 「残念ながら我が国は対抗できる戦艦を持っていないし」

 「新型戦艦の完成は来年以降になる」

 「これからすぐ、慣熟訓練を行って、ビスマルクに対抗しなければならないのだ」

 「選択の余地はない」

 「しかし、先約があって、ユダヤ資本が長門、陸奥の購入を打診しているのですがね」

 「それにイギリスに売却では、ドイツとの中立関係が保てなくなる恐れがある」

 「ユダヤ資本は利権を配分するか、資源供給を打診しているに過ぎない」

 「日本の主権が及ばぬのであれば利権があっても心もとなかろう」

 「「「「「・・・・・」」」」」

 「我が国は、日本に植民地を提供する用意がある」

 「植民地・・・」

 「ナイジェリア」

 「はぁ? ここはブルネイとか、マレーシアとか、ニューギニアだろうが」

 「そうそう、オランダ領インドネシアとか」

 「せめて、ケニアやタンザニア・・・」

 「ナイジェリアは大きいですぞ」

 「そういう問題じゃないだろう」

 「イギリスは、大西洋で孤立している」

 「日本の支援がどうしても欲しいのだ」

 「ブルネイなら喜んで長門と陸奥を売る気になってるのだが」

 「ナイジェリアの面積は92万ku相当だ。石油も産出するだろう」

 「朝鮮人移民が国際問題にならないよう世論操作してますし」

 「移民後の船の使い道もできたでしょう」

 「だいたい、ナイジェリアは大西洋の赤道より北にあるじゃないか」

 「しかも海岸線が大陸に入り組んで外洋への活路が弱い」

 「もし、我々の船がUボートに襲撃されたらどうするつもりか」

 「そうそう、イギリス商船隊も我々の日本商船体に紛れ込んでナイジェリアまで来れることになる」

 「イギリスは日本を巻き込んで、無理やりドイツと参戦させようとしてるのではないですか」

 「なにをおっしゃる! 日本はナイジェリアを植民地にできるのですぞ!!」

 「「「「・・・・」」」」

 「し、しかし、ナイジェリアなど守りようがない」

 「あと10数年。日本の権益に手を出す国などおるまいよ」

 「アメリカ以外は・・・だいたい、植民地など負担ばかりで・・・」

 「そうでもない、日本もグローバルスタンダードになるべきだ」

 「対アメリカ戦略でも日本はイギリスと協力し、大西洋に足場を築くべきなのだ」

 「もちろん、イギリスは日本に全面的に協力する」

 「大使は、まるで身代金ごと人質を奪おうとしてる詐欺師のように思えるが」

 「売り物も代金もネコババされそうですな」

 「何を無礼な。ここは日英で植民地を相互保証し合うべきです」

 「まさか、日本が上海から東南アジアのイギリス権益に近いから人質交換ではないですか」

 ごほん!

 「「「「・・・・」」」」」

 「ユダヤは、我々よりいい提案を日本にしているのかね?」

 「少なくともインド洋ですし、民族問題もナイジェリアより複雑じゃないでしょう」

 「中東の石油利権の比率が増えれば嬉しいし、リスクは小さいな」

 「リスク分散は誰でもやる上策だと思うのですが」

 「イギリスは、長門、陸奥との交換で、東南アジア、インド洋に面した植民地を渡す気はないと」

 「イギリスは、必要最小限の損失で帝国権益を守る意思があるのですよ」

 部屋の空気がイギリス大使に丸め込まれていく、

 「「「「・・・・・」」」」 ため息

 

 

 ブラジル

 日本の派遣会社が地主の依頼に応じ、朝鮮移民家族を振り分けていく、

 前人未到のジャングルが切り開かれ、整地されていく、

 牧場とコーヒー園で働かされ、

 ユダヤ資本の資源開発で新たな鉱山開発、炭鉱開発が進んでいた。

 これらの労働で朝鮮人が関わっていないものはなく、

 最大はブラジルとパラグアイの国境を流れるパラナ川に建設するイタイプダムだった。

 アメリカは機械で、イギリスは資本で、日本は人材でイタイプダム建設に関わり、

 その株配当で莫大な利益が転がり込む手はずになっていた。

 日本人たち

 「欧米の資本家は欧州戦争と中ソ戦争中なのに何やってるんだか」

 「アメリカ資本は参戦できなくて金を腐らせてるから」

 「ロスチャイルドはリスクが高くてイギリスに投資しにくいから」

 「日本は、格安賃金の人材派遣業をやってるから」

 「人身売買・・・」

 「そういうのはいいんだよ。資本はローリスク・ハイリターンなとこに流れる」

 「ユダヤ資本は、アメリカ合衆国も信用してないってこと」

 「ユダヤにとって資本主義が矛なら、民主主義が盾だし」

 「個人主義は内堀で、リベラルは外堀だ」

 「しかし、ドイツの例があって民族主義が選民主義に化けると弾きだされるし」

 「国粋主義のアイデンティティをプロテスタントやカトリックにされると白刃の上だ」

 「足場のないユダヤにとっては、敵ばかりだが、どっちにも利権を作っておきたいんだろう」

 「自分の資産を守るのに必死ということか」

 「舵取りを誤ると国粋主義と民族主義が強まって、ドイツと同じように叩き出されるからね」

 「しかし、いいのかねぇ ブラジル経済に深くかかわり過ぎてないか」

 「少なくとも日本は損をしないよ。朝鮮人を仕事に振り分けているだけだし」

 「朝鮮人移民を加速させることができる」

 「それに天引き分が俺たちの収入か。やめられんな」

 「根に持たれそうだけどな」

 「国策だよ」

 

 

 

 大統領選挙(11/05)でルーズベルトが三選

 白い家

 男たちが集まっていた。

 世界有数の国土と資源と人口を有し、

 積極的な民間活力が得られる国は、自らの発展の法則が足かせになっていた。

 世界最大の工業力を消費する需要を国内で得られず、

 ライバルとなる国家と資本家を淘汰する計画を空転させてた。

 「アメリカの産業で必要なのは、参戦だよ」

 「選挙に勝つには中立を宣言するしかない」

 「そして、宣戦布告するには、ドイツに攻撃してもらうよりない」

 「あの頃よりは、工業力があるし、国民のアイデンティティも強まってる」

 「第一次のような発言力の得られないような参戦では困る」

 「モンロー主義もな」

 「しかし、ドイツはアメリカの挑発に乗るまい」

 「日本か、ソビエトは?」

 「日本も軍縮に向かってるし、スターリンは狡猾だ」

 「それでは、アメリカ産業を救うことはできないぞ」

 「日本との交易を止めれば?」

 「ロスチャイルドは、上海を足場に東アジアに食い込んでるし」

 「中東利権の一部を日本に分配してる」

 「日本工業は我々と違って、中ソ戦争と欧州戦争需要だけでフル回転のようだ」

 「日本の戦力は大したことないのでは?」

 「大したことはない。国軍用に建造してるのは3000t級潜水艦が20隻ほどだ」

 「それと4発爆撃機が目立ってるが、どちらも60隻と200機の定数制だ」

 「戦争中だというのに戦力の定数制か、のん気なものだ」

 「定数制は悪くないよ。軍事費を安定させられる」

 「戦闘機は?」

 「我が国のエンジンをライセンス生産して戦闘機を量産してるようだが」

 「機体は?」

 「陸上機は国産らしいが、艦上機はフランスのD520戦闘機を改良している」

 「機体は大したものじゃなさそうだな」

 「いや、スピットファイアの部品を日本で生産し

 「イギリス本土に輸出させる契約を結んでる」

 「早晩、イスパノエンジンをやめて、ロールス・ロイス マーリン66を生産するだろう」

 「一体どの馬鹿が日本の国力を増強させてるのだ」

 「日本が大陸に足場を求めないのなら構わんだろうというのがイギリスの意向だろう」

 「ロスチャイルドの意向だ」

 「日本はドイツも支援してるのだぞ」

 「資金力はイギリスが上だよ」

 「何としても参戦したい」

 「ソビエトに満州北辺にまで後退するよう求めては?」

 「んん・・・」

 「米中同盟で対ソ戦か・・・」

 

 

 

 地中海、

 夜間、イギリス空母イラストリアスがタラント軍港を空襲した。

 照明弾に照らし出された湾内をソードフィッシュ21機が低空で迫り、

 戦艦リットリオに魚雷3本、戦艦コンテ・ディ・カブールに魚雷1本、

 戦艦カイオ・ドゥイリオに1本魚雷を命中させ、戦艦3隻を海底に着底させたのだった。

 この作戦のイギリス軍機の損失は、ソードフィッシュ2機だけであり、

 元々戦意の低かったイタリア海軍をさらに消極的にさせてしまう。

 深夜の海上に浮かぶ空母にソードフィッシュが次々と着艦する。

 空母イラストリアス 艦橋

 「作戦は成功したようだ」

 「これで地中海から艦隊を引き抜けるな。フォークランド奪回もできるだろう」

 「ビスマルクが就役する。簡単に艦隊を引き抜けるとは思えんが」

 「インド、豪州、アジアからも戦力を引き抜いた方が良くないか」

 「日本の動向が不安だな」

 「日本海軍は、ナガト、ムツの2隻だけだろう」

 「ユダヤ艦隊は、パレスチナを狙っているだけだろうし」

 「我々は、ユダヤ艦隊の梅雨払いしてやってるわけか」

 「戦艦より空母が怖いな」

 「それだって日本空母は3隻だろう」

 「いや、戦艦も十分に脅威だ」

 「日本海軍は縮小している、新規の艦隊建造すら潜水艦くらいだ。撃沈できるよ」

 「湾内の強襲と違って、外洋は逃げ回られるよ」

 「雷撃機で追いかけ回して撃沈してやればいいだろう」

 「上手くいけばな」

 「しかし、アメリカも怖い」

 「イギリスは、大統領選3選に協力してやったんだから大丈夫だろう」

 「そうかな、政治家なんて嘘付きばかりだ」

 「それは言える」

 通信士官が電文を持ってくる。

 「提督。日本が・・・」

 

 

 モスクワ

 クレムリン カザコフ館

 スターリンは、不機嫌そうにアメリカの親書を見つめる。

 「ほぅ アメリカは、華北どころか、満州からも撤収しろと?」

 「アメリカ合衆国大統領の意向です」

 「ふ〜ん、アメリカは戦争を望んでいるわけか」

 「「「「・・・・」」」」

 「実は、我が国も戦争を望んでいるのだ」

 「どうだろう。ロシア人を虐殺しながらモスクワを目指してくれないだろうか」

 「「「「・・・・」」」」

 「頼むよ」 ニコッ!

 

 

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 日本は、白亜の遺産を完全に相続しようと、ひたすら近代化と金儲けに走り、

 中ソ戦争と欧州戦争は、肥やしにしています。

 アメリカは、参戦の機会を求めつつ、

 東アジアは、黄河以北のソビエト連邦。

 黄河以南の蒋介石の国民政府に分かれています。

 ロシア人は、漢民族を飲み込むことができるでしょうか、

 それとも歴史は繰り返す、漢民族は、ロシア人も飲み込んでしまうでしょうか。

 創設されたユダヤ軍はパレスチナを占領できるでしょうか。

 朝鮮人は釜山港に帰れるでしょうか (笑

 

 

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第08話 1939年 『開演、第二次世界大戦』
第09話 1940年 『所詮、庶民は利権の奴隷』
第10話 1941年 『パラドックス・ストラテジー』