月夜裏 野々香 小説の部屋

       

仮想戦記 『白亜の遺産』

 

 第10話 1941年 『パラドックス・ストラテジー』

 ユダヤ艦隊は、呉を出航すると東シナ海と南シナ海を南下し、

 インド洋から紅海とスエズ運河を北上して地中海に入った。

 途中、シンガポール港、コロンボ港、アレクサンドリア港で補給しなければならなかった。

 ユダヤ資本といえど、常に乗員を育て艦を補修しなければ艦隊は運用しえない、

 国家の施設と労働者を使わなければ艦隊を動かせない、

 金の問題じゃないと、国家が旋毛を曲げ、

 異邦人労働者がストを起こしただけで全てがストップする。

 ユダヤ資本は、必要最小限の人間を買収し、

 リスクを分散しながら艦船を移動させ、

 小型空母1隻、強襲揚陸艦1隻、軽巡17隻、輸送船15隻

 ガリラヤ(鳳翔)

 メギド(神州丸)

 アフェク(天龍) カナ(龍田)

 ツロ(球磨) アコ(多摩) ハモン(北上) ハロシェテ(大井) ケデシュ(木曾)

 シロ(長良) キネレテ(五十鈴) ハマテ(名取) ラマ(由良) ラマ(鬼怒) リモン(阿武隈)

 ヨクネアム(川内) ガテ・ヘフェル(神通) シムロン(那珂)

 サリテ(夕張)

 艦隊はパレスチナ沖に達した。

 メギド(神州丸)からソミュアS35騎兵戦車を載せた大型大発が発艦していく、

 日本で組織されたユダヤ軍は、日本軍の装備が支給されており、

 パレスチナ人を降伏させ、全土を制圧していた。

 艦橋

 ユダヤを代表するのは、モーセ再来と呼ばれた男だった。

 しかし、ユダヤ支族を仲介するのは名義上、黒服のラビたちであり、

 世界各国から集められたユダヤ人を統合する役も名義上、ラビが行っていた。

 ユダヤ会衆たち

 「ユダヤ軍は戦車部隊を先頭に全土の制圧に成功してるようです」

 「そうか、パレスチナ人を掃討し、定めた12管区で統治する」

 「問題は、イタリア艦隊の来襲だが」

 「駆逐艦の訓練までは進んでない、イタリア海軍が不活発であることを願うしかないな」

 「戦艦ヴァリアントとクイーン・エリザベスが監視してるのなら大丈夫だろう」

 「イギリスに長門と陸奥を取られたのは痛いですな」

 「構わんよ。戦艦がなくてもパレスチナは制圧できる」

 「ジブラルタルを東進して、パレスチナを制圧するより、スエズを越えて制圧する方が楽だ」

 「戦艦は、アジアとアンティル諸島の権益を守るためだ」

 ユダヤ軍はパレスチナ(113070ku)を占領すると

 オランダ領アンティル諸島 (960ku)

   アルバ島(193ku) ボネール島(284ku) キュラソー島(448ku)

   シント・マールテン島(34ku) シント・ユースタティウス島(21ku) サバ島(13ku)

 と合わせ、イスラエル建国を宣言した。

 

 

 ワシントン

 男たちが白い家に集まっていた。

 「イギリスは、ナイジェリアと交換で日本に5000億ポンドの借金を背負わせ」

 「長門と陸奥を売却させたよ」

 「回収は50年でも戦費分は回収できるわけだ」

 「日本領ナイジェリアとイギリス領東南アジア・太平洋地域の日英相互安全保証は厄介では?」

 「今のところ、日本にとってナイジェリアは負担にしかなっていないし」

 「日本は長門と陸奥を喪失している」

 「日本の戦艦保有はゼロで、建造計画すらない。日本を叩きたくなるな」

 「戦争が終われば、日英相互保証は解消させることができるだろう」

 「それより、イスラエルは、我々の楔の役割を果たしてもらえるのだろうか」

 「無論だ。ユダヤは契約は守るよ」

 「お前たちの契約書は、抜け穴がないか何度も見直さないとか」

 「「「「・・・・」」」」

 「とはいえ、アラブは油田が出る。面倒事に巻き込まないで欲しいものだ」

 「イスラエル軍創設は日本だ」

 「イギリスもイスラエル建国の関わりを持ってないようにしている」

 「アラブの反発を買うとしたらユダヤと日本だろう」

 「アメリカもユダヤとアラブの対立で漁夫の利が得られるのなら悪くない」

 「問題はドイツだ。ドイツ軍が中東に侵攻すれば全てが失われる」

 「イスラエル建国は、対ドイツ防衛の大義名分になってる」

 「しかし、お金持ちが軍事力を持つのはいただけないな」

 「軍事費は負担が大きいし、一時的なものだよ。洋上通商を妨げるつもりはない」

 「商人が国民を丸抱えするなんて不効率そのものだからな」

 「しかし、国民を丸抱えすれば不便なこともあるがいろいろとやってくれるだろう」

 「「「・・・・」」」

 「問題は、アメリカの参戦だが?」

 「今のところ、算段が立ってない」

 「日米通商航海条約を破棄し、日本に参戦させるか」

 「日本のアメリカ参戦より、イギリスがドイツに降伏する方が早いと思うが」

 「イギリスを守るなら、むしろ、日本を対ドイツ参戦させるべきだ」

 「宋 美齢(そう びれい)は、賄賂をばら撒きながらアメリカの対ソ参戦を要求してるが」

 「アメリカが戦争したくともソビエトがアメリカを攻撃してこないのならどうにもなるまい」

 「フラストレーションが溜まるな」

 「こうなったら自作自演でやるか」

 「議会は、大統領権限の強化を警戒してるし」

 「マスコミは、禿鷹のように金になる情報を嗅ぎまわってるそ」

 「国民は、民主主義を守るため我々の自作自演を警戒している」

 「確実に敵国の攻撃であると証明できない限り参戦は難しいだろう」

 「仮に開戦したとしてもだ」

 「アメリカ国民の高揚はなく、アメリカ国軍の戦意も保てない」

 「全軍は疑心暗鬼。国民は政府不信で、一度でも大敗したら総崩れ」

 「その上、自作自演がばれたら、わたしもアメリカも終わりだ」

 「短絡な日本には期待していたのだがな」

 「日本は妙な軍事的自信を持ってる」

 「自信・・・確かに満州鉄道と北樺太の交換。艦隊のユダヤ売却などの外交は派手だが」

 「何か隠してるのかもしれないな」

 「日本の諜報員をもっと増やすべきだろう」

 「それとアメリカに戦争させるよう、日本を仕向けてくれ」

 「しかし、使える朝鮮人が減ってる」

 「やれやれ・・・」

 

 

 イギリス オークニー諸島スカパ・フロー海軍基地、

 戦艦ネルソン 艦橋

 艦隊司令と艦長たちは、長門、陸奥を見つめていた。

 「ビスマルクの慣熟訓練は進んでいるようだ」

 「長門と陸奥の慣熟訓練とどっちが早いかな」

 「イギリス海軍は、ドイツ海軍よりベテラン水兵が多い」

 「新型戦艦と違って、長門、陸奥は既存の戦艦。訓練を先に終わらせられるはず」

 「日本戦艦は、使えそうかね」

 「はい、予想以上に・・・ネルソン型よりいいそうです」

 「たぶん、新型のキングジョージ型戦艦よりも・・・」

 「よく売ったものだな」

 「ナイジェリアと交換ですから」

 「ふっ 馬鹿が・・・」

 「それより、今のうちにフォークランド諸島を回復すべきでは?」

 「フォークランド諸島は遠すぎるし、ドイツを降せば、いつでも回復できる」

 「だが、着々と足場を強め、アルゼンチンは、対英参戦の一歩手前」

 「それがドイツの狙いなのでしょうな」

 「イギリス本土から遠く、通商破壊の拠点にしても効果が低い」

 「それでいて、我々を逆撫でする」

 

 

 日本領ナイジェリア

 北辺国境は仏領ニジェール、北東はチャド湖を挟んで仏領チャド、

 西は仏領ベナン、東はイギリス領カメルーン、

 南は700kmほどの海岸線が蛇行していた。

 ナイジェリア最大の港ラゴスは仏領ペナンから90kmほどしか離れていなかった。

 ラゴス港

  青葉、加古、古鷹、衣笠

    初春 子ノ日 若葉 初霜 有明 夕暮

    白露 時雨 村雨 夕立 春雨 五月雨

 に護衛された日本商船隊40隻が到着すると日本軍の進駐が始まり、

 イギリス植民地軍との交替式典が始まる。

 日本軍司令部

 「ここは地の果てアルジェリア〜♪」

 「司令。ソミュアS35騎兵戦車50両を陸揚げしました」

 「そうか。ラゴス島。イコイ島。ヴィクトリア島と要衝は押さえないと・・・」

 「それと鉄道も・・・」

 「国境沿いに環状線を作ってアパート群を作り」

 「外側の土地と家を作って現地民に分配するか・・・」

 「参謀。飛行場は?」

 「確保しました」

 「いずれ、イギリス領を経由して1式陸攻100機が到着するだろうし」

 「ゼロ式戦闘機 “瑞風” の組み立てもできるだろう」

 「ドイツの対日参戦はないだろうな。Uボートに襲撃されたら目も当てられない」

 「ドイツとは、長門、陸奥とナイジェリアの交換は、イギリスを利するものではないと話しを通している」

 「長い目で見ればそうかもしれないがね」

 「とてもじゃないが日本を利する協定と思えんよ」

 「一体どこのとんまが長門、陸奥をナイジェリアと交換しようと思ったのだ」

 「机上の空論を真に受けた政府だと思うが」

 「二枚舌のイギリス人の口車に乗せられたとしか思えん」

 「一度 “現場に来い” と言ってやりたい」

 「なんにせよ。軍需増産と部隊の増設で地位の安寧は嬉しいが」

 「5個師団分ですからね」

 「ふっ 嬉しいのはそれくらいか」

 

 

 

 真珠湾

 重巡愛宕が戦艦コロラドと並び、

 メリーランド、ウェストバージニアなど、アメリカ太平洋艦隊に囲まれて停泊していた。

 ハワイ日米首脳会談

 愛宕艦橋

 「よりによって、長門、武蔵を売った後、史上初の日米首脳会談か」

 「アメリカは、わざとやってるよね」

 「当然、わざとだろう」

 「せこい大国だな」

 「しかし、戦艦コロラドか。でかいな」

 「長門と陸奥を売るからだ・・・」

 「上層部は新型戦艦の建造を考えてないんだろう」

 「戦艦を建造するくらいなら潜水艦を建造するらしい」

 「やれやれ」

 「君もやるかね?」

 「はい?」

 「政府要人の写真と名札が入った藁人形と釘が闇市で売ってる」

 「それは欲しいですな」

 「「「「あはははは」」」」

 「欧州戦争で、イギリスに被害を与えてるのは水上艦より潜水艦だ」

 「それを考えるなら少ない予算で最大の戦果を挙げるなら潜水艦だよ」

 「しかし、何を話し合ってるんだろうね」

 「中ソ戦争か、英独戦争のことじゃないか」

 「アメリカは、日米戦争したがってる噂もあるけどな」

 「おいおい、軍縮でお手上げ。艦隊売却で艦隊半減」

 「さらに戦力の3分の1をナイジェリアに出してるのに?」

 「それは、やめて欲しいよ」

 

 

 

 ドイツ帝国ヴィルヘルムスハーフェン港

 通商破壊艦が捕獲した商船から積み荷が降ろされていた。

 修復を終えたポケット戦艦は外洋に出ており、

 ドイツ艦隊は、ひっそりとしていた。

 一際、巨大な戦艦は、港湾の住民から注目されている。

  45000トン級戦艦ビスマルク

   全長260×全幅36×9.3 138000馬力、30.8kt、16kt/10000海里

   47口径381mm連装砲4基。65口径105mm連装砲8基。83口径37mm連装機銃12基。

   甲板上 Ar196水上機4機   艦尾格納 Bv138飛行艇1機。

 ビスマルクは、日本戦艦の設計を参考に改良され、

 全長が20m延長し、バルバス・バウ採用で凌波性が増し、運用機能も改善されていた。

 艦橋

 「副砲無しが、最近のトレンドらしいが艦尾幅広もトレンドなのかね」

 「その傾向はあるようです」

 「まぁ Ar196より、Bv138飛行艇を搭載したいと思うのは分かるがね」

 「副砲無しは、商船拿捕で不便だな」

 「3発飛行艇追加搭載は、Uボート艦隊司令の陰謀では?」

 「いや、上陸作戦で、上陸用舟艇を搭載できると誰かが進言したからだろう」

 「ドーバー海峡くらいなら上陸用舟艇だけで往復できるだろう」

 「Sボートを載せる事もできるらしいが」

 「Sボートなら拿捕の時、便利かもしれん」

 「改装は、欲張り過ぎじゃないのか。陸軍と空軍が剥れてたぞ」

 「だが世界最強は気分が良い」

 「ソビエトは、黄河以北の鎮圧中で、こちらに戦力を向けないだろう」

 「しかし、日本も気前よく蓄積した技術をくれたものだ」

 「戦艦売却のバランスを取ろうとしたのだろう」

 「しかし、まさか戦艦10隻、全部売るとはな」

 「イギリスは相当、取られたのでは?」

 「戦艦2隻でナイジェリアだそうだ」

 「ふっ ナイジェリアといえばアフリカ大陸のインドともいえますからね」

 「泣きたくなるほどですかね」

 「それで東南アジア、インド洋、豪州の植民地と人質交換したようなものだ」

 「日本は、ナイジェリア維持のために国力を浪費させられるだけだ」

 「戦艦2隻は戦局打開で、必要だっただろう」

 「一度、時勢を失えば、簡単に取り戻すことはできないからな」

 

 

 ベルリン 参謀本部 (Generalstab ゲネラールシュタープ)

 バルカン半島を含んだソビエト側の地図が広げられていた。

 全ソビエト軍の3分の1が東アジアに配備されていた。

 開戦を誘われてる気もするが、

 対ソ戦に踏み切ればシベリア経由の資源は得られなくなった。

 「北アフリカのイタリア領リビアは、マンシュタイン大将を派遣する。とりあえず安定するだろう」

 「イタリアは足を引っ張るから、関わりたくない」

 「だが同盟国だ」

 「アルゼンチンの方が頼りになりそうだな」

 「アルゼンチンは戦訓を欲してるのだろう」

 「しかし、フォークランドは、遠すぎて通商破壊で不効率だ」

 「まぁ だから占領できたともいえるがね」

 

 

 北アフリカ ベンガジ港

 エーリッヒ・フォン・マンシュタイン大将は、迫るイギリス軍を撃退すると、

 ベンガジ港を中心に陣地を構築していた。

 彼に与えられた任務は、北アフリカ戦線の維持で、ベンガジ港を維持すれば事足りた。

 イギリス海軍は弱体化し、イギリス本土防衛に戦力を引き抜かれている、

 イギリスは、エジプトを保護領にして年月が長く、地の利で勝っており、

 インド・豪州軍の増援で北アフリカから中東の戦線を防衛しつつあった。

 北アフリカ戦線は、ベンガジ港とトブルク港を挟んだキレナイカ高原になると考えられ、

 オアシスが多く、肥沃な土地だった。

 マンシュタイン大将

 「イタリアのバカがエジプトに侵攻しなければ、トブルクを失わずに済んだモノを」

 「今後はどうされますか?」

 「ベンガジを守りながら、キレナイカ高原で攻防戦になるだろう」

 「土地の豊かなキレナイカを押さえていた方が有利だ」

 「本拠地エジプトに積極的な攻勢をかけなくてもよいので?」

 「ドイツの国益にならない北アフリカで無駄な血を流す事もなかろう」

 「まして、ドイツ人がイタリア人のために血を流すなど・・・」

 目的があり、そのための手段がある。

 目的を達成させるための手段が弱ければ目的は叶わず無理無謀をしたくなる。

 マンシュタインは兵站以上の作戦を好まず、

 防衛線を形成すると補給に合わせて陣地の厚みを増やしていった。

 

 

 ナチス・ドイツは、国家社会主義を推し進め、ドイツ帝国時代の失地を回復する。

 その後、反ゲルマン主義によって、チェコスロバキア、オーストリアを乗っ取り、

 ポーランド、ノルウェー、オランダ、ベルギー、フランスに侵攻した。

 ユーゴスラビア王国政府の独伊同盟加盟は、ドイツの脅威から独立を保つためだった。

 しかし、ユーゴ軍は、独伊同盟加盟後、クーデターを起こして国権を掌握、

 新ユーゴスラビア政府は、独伊同盟条約から脱退し、ソビエトと不可侵条約を調印する。

 ドイツは、ソビエトの脅威を慢性的に受けており、

 ソビエトとユーゴスラビアの結束は、ドイツの安全保障を脅かし、

 ソビエトの勢力拡大に脅えたドイツは、ユーゴスラビアとギリシャに侵攻し、1ヵ月で制圧占領した。

 

 ドイツの大型飛行艇が長大な航続距離を利用して安全なルートを通報し、

 ドイツ艦隊は、イギリス艦隊の追撃を回避していく、

 北大西洋

 ビスマルク、シャルンホルスト、グナイゼナウ、

 ドイツ艦隊は、北海を脱出するとイギリス艦隊を振り切り、北大西洋を南下する。

 ドイツ艦隊は長大な航続距離を持ち、

 商船貿易で成り立つイギリスを恐慌に落としいれた。

 ブロームウントフォスBv222ヴィーキング飛行艇は世界最大の6発飛行艇であり、

 ビスマルクから給油すると水上を滑空していく、

 赤道付近で、燃料補給できたらマルビナス諸島に到着できた。

 しかし、主戦場から離れたマルビナス諸島への戦力傾注はドイツ帝国のプラスにならない、

 そういう意見も少なからず、

 マンシュタイン軍団の北アフリカ戦線派遣と並んで問題視されていた。

 ビスマルク 艦橋

 「・・・なんで、ビスマルクがシャルンホルスト型の後ろなんだ」

 「艦尾側に連装2基あるからじゃないでしょうか」

 「飛行艇を出す時にも邪魔になりますし」

 「Bv138飛行艇の航続距離は4000kmですから飛行艇で敵船団を捜索する方が効率的です」

 「・・・・」 ため息

 「輸送船団を護衛している戦艦は、通常2隻」

 「3隻なら勝てる気がするな」

 「報告では、長門と陸奥、空母2隻も追撃しているはずでは?」

 「・・・まぁ 長門型とまともに戦う気はないし、見つかったら逃げるか」

 

 

 

 中国大陸

 黄河以北を占領したソビエト軍は、以北岸の陣地を強化し、

 黄河以南の中国国民軍も、黄河以南の防衛陣地を増強していた。

 中国軍陣地は、ソビエト空軍機の領空侵犯や爆撃を受け、

 国民軍の動きはソビエト軍に筒抜けとなっていた。

 中国陣地は、中国に同情的なアメリカ人がおり、

 ソビエトに武器弾薬を供給しているはずの日本人とドイツ人がいた。

 そして、欧州でソビエトを味方につけたいはずのイギリス人までいる。

 彼らは、政府と関係のない民間人ながら取引量は莫大だった。

 その利益は祖国へ流れ社会資本として還元されていく。

 それでいて、政府と代理人は互いに関与していないのである。

 政府が国民の面倒を直接見る共産主義でない限り、

 企業は放任主義で、政府に頼らず才覚に応じ、利益を上げなければならない、

 といった建前的な言い分はある。

 しかし、学校を出ていない人間すら騙せないことを隠蔽しているような言い分にも聞こえ、

 アメリカの武器貸与法はソビエトに侵略された中国に対して行われていた。

 そして、義勇空軍のフライング・タイガースが派遣される。

 戦闘機P40ウォーフォーク100機とパイロット100機という計画だった。

 アメリカ義勇軍機が中国大陸に配備され、

 黄河上空でP40ウォーフォークは、I-15、I-16戦闘機と交戦、制空権を回復するようになると、

 ソビエト軍は南進する気もなかったことから黄河戦線が安定する。

 フライング・タイガース航空基地

 「それで、日本の義勇航空部隊も派遣されると?」

 「ええ、日米ハワイ会談で決まったそうで、当面は30機が配備されるそうです」

 東の空から爆音を響かせた深緑色の機体が降下し、

 次々と滑走路に着陸する。

 日本製D520戦闘機が、初めてアメリカ軍パイロットの目に触れた瞬間だった。

 「シェンノート隊長。日本の義勇空軍隊長は加藤建夫元中佐です」

 日米の将校は通訳を介しながら握手を交わした。

 

 

 ニューファンドランド島沖

 戦艦ネルソンで、米英会談が行われ、

   1) 合衆国と英国の領土拡大意図の否定

   2) 領土変更における関係国の人民の意思の尊重

   3) 政府形態を選択する人民の権利

   4) 自由貿易の拡大

   5) 経済協力の発展

   6) 恐怖と缺乏からの自由の必要性

   7) 航海の自由の必要性

   8) 一般的安全保障のための仕組みの必要性

 北大西洋憲章が発表される。

 

 

 そして、勢力均衡の原則が働いたのか、

 ドイツとソビエトは、フィンランドで対抗するかのような似て非なる宣言、

   1) ドイツ、ソビエト、イタリアの領土相互保障

   2) 領土変更における関係国の人民の移動

   3) 国家における人民の権利

   4) 大陸貿易の拡大

   5) 鉄道運用協力の拡大

   6) 貧富の是正と平和の必要性

   7) 自由交易の必要性

   8) 一般的安全保障のための仕組みの必要性

 ユーラシア大陸憲章を発表した。

 

 

 南大西洋

 艦隊上空をBv138飛行艇が飛んでいた。

 戦艦ビスマルクが主砲を向けるとイギリス商船は無線を発信をやめ停船する、

 戦争中期以降、武将商船は当たり前で、潜水艦による拿捕は不可能になっていたものの、

 戦艦への抵抗は無意味だった。

 戦艦であれば、Uボートが不可能な拿捕も容易にできた。

 ビスマルクからドイツ軍将兵を乗せたカッターが降ろされ、

 ドイツ軍将兵は商船に乗り込むと、積み荷を確認、

 拿捕船は、必要な積み荷を奪った後、通商破壊作戦遂行のプラットフォームとなるか、

 マルビナス諸島か、ドイツ本土へ向かう。

 民間人は、中立国を経由して返還されるため、抵抗しなければ殺されることはなかった。

 ビスマルク 艦橋

 「ずいぶん南に来ましたね。赤道を超えそうですよ」

 「ポケット戦艦と違って、戦艦群が南大西洋に行くのは非効率だし」

 「このままフォークランドに行くと破産させてしまうからな」

 「もう、護衛艦10隻、輸送船20隻撃沈。輸送船20隻拿捕だ」

 「ドイツ本土に帰還してもいいだろう」

 「そうですね」

 見張り員が飛び込んできた。

 「提督。9時方向、距離30000m。高度5000。水上偵察機です!」

 「ちっ 見つかったな」

 「ええ・・・」

 「進路北上、速度このまま」

 「無線を発信しています」

 「グナイゼナウとシャルンホルストも近くにいるはずだ」

 「この座標で会合させよう」

 「はっ」

 しばらくするとフッドが東から現れ突っ込んできた。

 「フッドです」

 「まさか突っ込んでくるとは・・・」

 「T字戦用意。全砲門をフッドに向けろ」

 「距離21000」

 「撃て!」

 ビスマルクの47口径380mm砲砲弾8発が炎と共に撃ち出され、

 放物線を描いて、フッドへ向かっていく、

 そして、フッドからも42口径381mm砲弾4発が撃ち出され、

 ビスマルクに向かってきていた。

 「「我、交戦セリ」」

 双方の戦艦は水柱に囲まれながら、無線を発信し、僚艦の援軍を求めた。

 砲弾は、敵艦必中を狙って何度も撃ち出され、

 「提督。前方26000。長門です」

 「正面か」

 「T字戦か・・・挟撃・・・」

 提督の頭の中で、相対速度、相対距離が計算され、

 幾つもの戦術が同時並行的に繰り返されていく、

 「取舵。フッドに向けて直進。」

 「アントン、ブルーノはフッドに。シーザー、ドーラは長門に主砲を向けろ」

 「援軍はまだか・・・」

 「長門、直進」

 「ちっ 挟撃か、嫌味な戦艦だ」

 「長門に艦尾を取られる前にフッドを撃沈せよ」

 「提督。北西120kmでシャルンホルスト、グナイゼナウがレパルス、レナウン交戦に入ったそうです」

 「なんてことだ」

 ビスマルクの砲撃がフッドを直撃し、戦場に爆音が広がった。

 フッドは、艦体を真っ二つに折りながら沈んでいく、

 「「「・・・」」」

 「取舵! 長門と同行戦で決着をつけるぞ」

 ビスマルクの砲弾8発と長門の砲弾8発が互いに交差し、

 敵戦艦を水柱で包み込んだ。

 ビスマルクが爆音が轟くと衝撃で揺れ、

 そのたびに被害報告が届いた。

 長門を包む水柱からも爆炎が立ち上り、命中したことがしれる。

 歓声が上がるが黒い砲弾が向かってくるのが見えると、すぐに消える。

 「提督。シャルンホルストとグナイゼナウがレパルスを撃沈しました」

 歓声が上がる

 「長門との距離は?」

 「18000m」

 「旧式のくせに粘り強い戦艦だな」

 「提督。シャルンホルストとグナイゼナウがレナウンを撃沈」

 「しかし、陸奥と交戦に入ります」

 「なんだと」

 「ちっ 何としても長門を撃沈して、グナイゼナウとシャルンホルストの救援に向かうぞ」

 長門の砲弾3発が立て続けにビスマルクに命中するとビスマルクは大きく傾いていく、

 「どうした!」

 「中排水機構が損傷しました」

 「おのれぇ 長門め」

 「提督。シャルンホルストが撃沈されました」

 「アジアの黄色い猿が建造した戦艦に負けられるか。撃て!!!」

 

 

 北大西洋

 長門と陸奥は黒煙を吐き傾きながら北上していた。

 ビスマルク、シャルンホルスト、グナイゼナウを撃沈したといっても無事では済まず、

 両艦とも満身創痍だった。

 長門 艦橋

 「まさか、長門がビスマルクに撃ち勝つとはな」

 「フッドのおかげで体勢的な優位性はありましたが驚くべき、攻撃力と防御力です」

 「提督。ネルソン。ヴィクトリアス、アークロイヤルです」

 「ヴィクトリアスに護衛してもらって、帰還しよう」

 「ネルソンとアークロイヤルは、引き続き、ポケット戦艦の追撃を・・・」

 

 

 

 そこは、樹木が育ちにくく、吹き曝しの入り組んだ大地が天然の良港を作っていた。

 雨が多く、湿度は高く、冬は2.8度。夏でさえ8.3度だった。

 11月のみ乾季で、羊の放牧ができたものの自給率は低かった。

 島民と守備隊は、アルゼンチンに退避させられ、

 島はドイツ軍守備隊とアルゼンチン義勇軍によって、運営されていた。

 主力のドイツ守備隊は5000人、

 4号D型戦車20両。3号突撃砲B型5両、火砲20門に達していた。

 もっとも前線が存在せず、安穏としてるのか、

 将兵は羊を飼い、魚を獲り、作物を植える。

 拿捕した船から物資が降ろされ、兵舎が大きくなり、

 港湾は、Uボートが並んでいた。

 危険を冒してドイツ本土へ帰還する必要がなくなったせいか、

 フォークランドの艦船入港は増え、

 第12独立艦隊アドミラル・シェーアが拿捕輸送船2隻を伴って入港していた。

 拿捕したイギリス商船から積み荷が降ろされ、

 アルゼンチン船から降ろされた食料が山を作っていく、

 港管理者

 「積み荷は、金、ダイヤモンド、プラチナ、鉄鉱石、石炭、銅、クロム、マンガン、石綿」

 「とうもろこし、柑橘類、果物、小麦、砂糖、羊毛、皮革類か」

 「工作機械を持ってきたから工業用ダイヤは使えるが」

 「原料はドイツ本土へ持って行くべきか」

 「いや、アルゼンチン経由で資金に変える方が効率的だそうだ」

 「もう一隻は、兵器武器弾薬船か」

 「大佐。P40ウォーホーク12機分が倉庫に・・・」

 「ほぉ・・・」

 イギリス商船の積み荷はアメリカ製や日本製が占めていた。

 別段珍しいことではなく、ジープのような便利な自動車もあった。

 アドミラル・シェーア 艦橋

 「艦長。ビスマルク、シャルンホルスト、グナイゼナウがフッド、レパルス、レナウン、長門、陸奥と交戦」

 「フッド、レパルス、レナウンを撃沈したものの」

 「ビスマルク、シャルンホルスト、グナイゼナウは長門、陸奥に撃沈されました」

 「なんだと・・・」

 「詳しい報告は、本国に帰還してからだと」

 「参謀本部は “現状。ポケット戦艦が恐れる恐れる巡洋戦艦は存在せず” です」

 「なんてことだ・・・」

 「空母は追撃戦に参加してなかったのか」

 「どうやらシュペー追撃で参戦できなかったそうです」

 「今は空母の方が怖いのだが・・・」

 「参謀本部は、北アフリカ戦線に部隊を出すので次の便が遅れるかもしれないそうだ」

 「陸軍は要らないが、機材と燃料だけは欲しいな。あと航空戦力」

 「ポケット戦艦3隻を配備すると予備機材と燃料があっという間になくなる」

 「現状では、交替でポケット戦艦を1隻配備するのが限度だ」

 「余剰戦力はイギリス輸送船の拿捕にかかってるが、日本商船に紛れ込んでややこしい」

 「いや、ドイツ商船も日本商船隊に紛れ込めるということさ」

 「ふっ」

 

 

 

 日本

 資本投資が毎年のように拡大し、

 多くの人々が雇用のために引き抜かれ、

 人々は、身の回りの出来事に躍起になり、人間関係に足掻いていた。

 刹那的な生活が確保され、将来の展望に望みが出る頃、

 景気を左右する中ソ戦争と欧州戦争の戦況は号外となって巷を騒がせる。

 どこかの主婦たち

 「まぁ 奥様、まだ、戦争が続いていますのよ」

 「いやぁね〜 戦争なんて、どうして平和でいられないのかしら」

 婦人たちの服は以前にも増して上質なモノになり、毎食の食材も増えていた。

 しかし、毎度毎度の衣食住を賄っていたのは紛れもなく戦争だった。

 中には、外圧の影響を受けた者も現れる。

 国防に不安を感じた諸士は、右翼活動に身を投じ、

 貧富の格差の是正を望む諸士は、社会運動に身を投じた。

 もっとも、人は志だけで生きていけない、

 生きて行く上で資本を得なければならず、

 多くの場合、集金のための右翼活動、左翼活動となり、

 大言壮語と大義名分を語りながら、中道勢力を削ぎ落し引き抜いていく、

 基本的な行動様式は、宗教の勧誘のそれと変わらない。

 主義者の敵は、相互存在保証を裏付ける反対主義者でない。

 主義者を存在軽視する中道であり、笛吹けど踊らずの大衆だった。

 彼らの目的は、組織基盤を構築し、既得権益圏に食い込む事であり、

 権力に到達することにあった。

 喫茶店 ウヨ

 「上層部の動きが悪い」

 「やっぱり、国防産業では、食って行けんのか」

 「まぁ 黒部ダムの方が大きいからな」

 「いや、だいたい、ユダヤに戦艦8隻を売却する方がおかしい」

 「海軍はなんと?」

 「んん・・・うるさ型を突いてみたんだが、軍機とかでな・・・」

 「なんだ、それは?」

 「我々が加勢せんと予算で苦しくなるのはわかっているはずだ」

 「どうも、腑に落ちないのだが、新型戦艦建造に意欲がない」

 「じゃ 潜水艦の建造でお茶を濁すつもりか」

 「らしいな」

 「バカな!」

 「大西洋の戦いは、戦艦の活躍でドイツが勝っているのだろう」

 「戦艦は、海軍の主力だ」

 「俺が同じことを海軍将校に言わなかったと思うか」

 「それで反応は?」

 「どいつもこいつも、黙して語らず、苦笑いしかせん」

 「まさか、社会運動家の連中に引っ張られていないだろうな」

 「いや、共産主義は嫌ってる。それは確かなんだが、どうも煮え切らない」

 「だからと言ってやめられるわけがなかろう」

 「支持層を失えば、我々の存在価値がなくなる」

 「我々は常に吠えて行動していなければならないのだ」

 「国防産業が盛り返しても庶民から金を巻き上げるだけだがな」

 「「「「あははは」」」」

 「無いよりマシだよ」

 

 

 喫茶 サヨ

 「賃上げ運動についての反応は?」

 「戦争が激しくなれば、賃上げできるが」

 「戦争が終結する気配を見せたら、賃上げは無し、雇用も維持不能だそうだ」

 「戦争で成り立つ経済か」

 「自給自足で近代化は不可能だ。商品経済で大量生産するしかない」

 「大量生産は、資本、労働、資源の集中と競争から生まれるし」

 「競争すれば必然的に貧富の格差は生まれる」

 「だからと言っていまさら退けるものか」

 「労働運動で成果を上げなければ組合が潰される」

 「社会福祉を獲得して、そのポストに就ければな・・・」

 「まぁな」

 「ふっ どうせ、庶民に振り分けられる福祉はわずかだがね」

 「「「「あははは」」」」

 「無いよりマシだよ」

 

 

 

 中国大陸 黄河以南

 空襲警報が鳴り響くと、

 P40ウォーホークとドボワチンD520が列強の二股貿易を隠すため上昇していく、

 フライングタイガースと加藤隼戦闘隊は、表向き義勇軍であり民間組織だった。

 侵攻の意図がないソビエト領空侵犯は戦訓欲しさと言えなくもなく、

 アメリカと日本の義勇軍も、侵犯を防ぐ外交努力は、何らなされていなかった。

 日本のドボワチンD520は幾つかの点で、アメリカのP40ウォーホークの性能に勝り、

 いくつかの点で劣っていた。

 日米の義勇空軍は欧州の戦訓から2機を基本とした4機編隊を基本とし、

 相互支援をしながらソビエト軍機を撃墜していく、

 2機のD520が捻り込みから、上昇して、I-15戦闘機の後方に付いた。

 速度も運動性もD520が上だった。

 イスパノ20mmモーターキャノンの弾道がI-15戦闘機に届き機体を飛散させた。

 「隊長。4時下方にI-16!」

 「良し、今度はお前がウィングをやってみろ」

 「はっ!」

 D520は、優れた機体と優れた航空戦術によって、I-15、I-16戦闘機を撃墜していく、

 P40ウォーホークは、何度もD520に出し抜かれ・・・

 飛行場

 アメリカ義勇軍パイロットは、遠巻きに日本のD520を見つめ・・・

 「日本は後進国のはず。なんで、あんな機体を作れるんだ?」

 「フランス製なんじゃないか」

 「ライセンス生産してるらしいけど、全部、日本製らしいよ」

 「設計も多少改良されてスマートになってるらしい」

 「それより、日本は実戦を経験していないはず」

 「なのに空戦技術がスマート過ぎるけど、なんでだ?」

 「日本の無線はGが掛かってるときも明瞭な気がするけど、何かあるのかな」

 「なぁ ちょっと、模擬戦を申し込んでくるわ」

 「や、やめとけ、勝てる気がしない」

 「う、うるせ!」

 基地上空をD520とP40ウォーホークが旋回し、

 D520に後方を突かれたウォーホークは逃れられず。

 ウォーホークに後方を突かれたD520は容易に危地を脱し、

 逆襲を受けたウォーホークは、敗北する。

 「「「「・・・・・」」」」

 

 

 目標とする数値を求めるための式を組み立てていくには想像力が必要だった。

 各国の技術者は、前人未到の目標に向かって試行錯誤していた。

 しかし、日本には、目標をはるかに超える数値を求める式があり、

 現物の答えもあった。

 ドリルの答えを見ながら解答を書き、そこに至る試行錯誤が日本に存在しない。

 航空技術廠

 軸流式圧縮式ジェットエンジンが炎を吹き流していた。

 螺旋状に集束する炎の放出は、軸流コンプレッサーの精密性と効率性の高さにあった。

 「・・・悪くないな」

 「耐久時間が短過ぎる・・・」

 「材質を落とすからだ」

 「こんな複雑な曲線で加工が出来るか」

 「ドイツ製の工作機械でも、ここまでか・・・」

 「やっぱり、簡素な構造で、材質を高めた方が長持ちするだろう」

 「しかし、どう考えてもマザーマシーンの品質だよ」

 「これを兵器の品質に求められたら国家財政は破綻する」

 「ジェット戦闘機開発の暁には、欧米に対し十分な制空権が得られる」

 「知的所有権だけで充分、列強を圧倒できるはず」

 「しかし、この品質を確保する産業は、相当大きなものになるぞ」

 「日本製品で世界市場を征服できない限り無理な相談だな」

 「あり得ねぇ」

 「少なくとも商船をイギリスに売却して資源と金を得てるし」

 「ドイツにはゴムとニッケルを売却して工作機械を得ている」

 「どっちにも恨まれそうだ」

 「特に長門、陸奥の輸出で憎まれてそうだ」

 「そんなのスイスだってやってるだろう」

 「中国大陸は、漢民族が敵と味方に分かれて滅茶苦茶やってるし」

 

 

 9000トン級 潜水艦 白亜

 白亜会の技師たちが機能を一つ一つを検証していた。

 電装品の半分は、6500万年の時を経て劣化しており・・・

 「こんな巨大潜水艦をチタンで作れる工業力は、凄まじい世界だな」

 「解析は、どうだね?」

 「科学技術でいうなら100年以上進んでいるような気がしますね」

 「「「「・・・・」」」」

 「総人口は100億を超えてそうですね。経済力、工業力も、そうとなものだ」

 「それが隕石で滅ぼされてしまったわけか」

 「諸行無常、盛者必衰の理ですかね」

 「「「「・・・・」」」」

 「当然、社会の矛盾とかも・・・」

 「権威主義と年功序列は人を腐らせ」

 「拝金主義と成果主義は人を狂わせる、ですかね」

 「白亜の社会も封建社会から君主制、立憲君主制から民主化へと移行したようです」

 「戦争もあっただろうな」

 「社会的な生き地獄よりは、みんな一緒に滅ぼされて安堵しているかも」

 「浮かばれているのなら祀り甲斐もあるよ」

 「白亜神社は、本決まりですか?」

 「少なくとも彼らの滅亡がなければ、我々は存在し得ないのだから、祀ってしかるべきだろう」

 「まぁ 表向き恐竜の化石を入れてるだけだがね」

 「しかし、よく船体もったものだ」

 「隕石衝突を知って、潜水艦を慌ててタイムカプセル化したようです」

 「記録媒体もチタンとセラミックの複合素材ですよ」

 「それでも、この艦の保存状態が良かったのは運がいいのでしょう」

 「埋まってた海底の土砂がメタンハイドレート化して船体を覆った節もあるようです」

 「彼らの存在は隠匿するとしてもだ。業績は無にするまい」

 

 

 イランで反英主義が台頭していた。

 簒奪皇帝のレザー・シャーはソビエトとイギリスの圧力を防ぎ、

 イランの近代化と独立を維持するため独裁色を強め、親独政策を執っていく、

 そして、そのことがイギリスを怒らせてしまう、

 もっともイギリス軍は戦況の悪化で脆弱になっており、

 民主主義のアメリカは動けず、

 日本も軍事的に消極的になっていた。

 そして、幸運にもソビエトも政治的に崩壊寸前で、

 派遣部隊がそのまま反乱軍になる可能性が高く動けない、

 

 この時期のイランの年間採掘量は800万トン

 イラン石油利権比率は、イギリス70パーセント、イラン16パーセント、日本14パーセントだった。

 日本の取り分は、112万トン。

 石油消費量の65パーセントを占めていた軍消費を20パーセントに減らしてるはずなのに

 民間の石油消費量が急増し、日本の年間消費量は600万トンに達しようとしていた。

 イランで500万トンくらい欲しくても採掘権比率は協定で変わらず、

 イランでの利権を増やそうとすると、

 日本は14パーセント。イギリスは70パーセントの比率の増収が自動的に決まる。

 なので100パーセントの投資で、見返りが14パーセントは面白くない、

 “親独政策を執るイランをどうするか会議”

 「日本は、もっとイラン支配に加担すべきだ」

 「しかし、1個師団駐留は、さすがに日本の負担が大き過ぎます」

 「イラン分の6パーセントをやろう」

 「では、イギリスの取り分が80パーセント。日本の取り分が20パーセントになるのですか」

 「そういうことだ」

 『このドアホォが、イランから買えば30パーセントになるんだよ』

 『6パーセント貰って20パーセントにしたって、残りはイギリスから買わんといかんだろうが!』

 『丸損だろボケが!!!』

 「ん?」

 「い、いや、しかし、日本はユダヤ資本への軍事支援でアラブで評判が悪く」

 「イランの国民感情を考えると・・・」

 「イランはペルシャであってアラブではない」

 「しかし、同じイスラム教で・・・」

 「我々は戦争してるのだ」

 『戦争してるのはイギリスだけです!』

 「何か?」

 「い、いや、なんでも・・・」

 戦艦を保有してない国は発言力が小さい、

 戦艦そのものが値崩れしてるのだが、気付いていない夜郎自大もいる。

 「とにかく、今は、石油がいるのだ」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 「そうだ。日本もイラクに1個師団配備しろ。イラクの採掘割り当てを10パーセント渡そう」

 イラクの石油採掘はイランの半分だった。

 10パーセントなら単純計算で40万トンくらいは手に入る。

 「イラクでも反英運動が起きてますが、それにイラクは完全にアラブ・・・」

 「掃討してくれ」

 『この野郎、石油利権をダシに中東支配を安定させて、日本を消耗させようとしてやがる』

 

 

 

 バトルオブブリテンでイギリス本土で大空中戦が繰り広げられていたころ、

 クルト・シュトゥデント大将は気象用地図を見つめていた。

 入念な気象観測は数か月前から続けられ、

 過去10年分の同月同日の気象と比較されている、

 「大将。Uボートからの報告です」

 「・・・・・」

 「天候はよさそうだな。いいだろう。作戦を始めよう」

 第11空挺軍団 (XI Luftkorps)

  第7落下傘師団 (1st Fallschirmjager Division)、

  第22空輸歩兵師団 (22nd Air Division)、

 約21000名が500機のJu52機体に乗り込むと出撃した。

 第11空挺集団はオスローから西650km、

 最も近い飛行場からは350kmほど西のシェトランド諸島(1466ku)に向かって飛び立ち、

 3時間から6時間の低空飛行後、シェトランド諸島を強襲した。

 

 

 ドイツ帝国ヴィルヘルムスハーフェン港

   戦艦   ティルピッツ

   重巡   ブリュッヒャー、ブリュッヒャー、ザイドリッツ

   軽巡   エムデン、ケーニヒスベルク、

         ライプツィヒ、ニュルンベルク

 戦艦の稼働率は低く、

 装甲1枚を製造するのに数カ月が必要であり、

 一旦損傷すれば補修部品から、修理改装にかかる手間は膨大だった。

 あり余る国力がなければ機械、燃料、消耗品、人員、食糧の都合を付けられず運用もできない、

 開戦後、ドイツ戦艦部隊は通商破壊と数度に渡る海戦によって疲弊し、整備の月日が増えて行く、

 戦艦ティルピッツ

 「提督。作戦開始です」

 「絶好の作戦日和だな」

 「霧のせいで訓練が遅れてますがね」

 「大型艦は、このティルピッツとポケット戦艦3隻しか残ってない」

 「キングジョージ5世型5隻が完成して、英独戦艦比率は絶望的だな」

 「ビスマルク、シャルンホルスト、グナイゼナウが撃沈されるとは・・・」

 「長門、陸奥のおかげでドイツ海軍は、一気に窮地に立たされてしまったようなものだ」

 「本来、逃げるところを巡洋戦艦との戦闘で、射程内に引き摺り込まれたからです」

 「そうでなければ今頃・・・」

 「救いがあるとするなら長門、陸奥は修理改装中」

 「キング・ジョージ5世は慣熟訓練中」

 「イギリス空母も整備中で動けない」

 「旧イギリス戦艦は、地中海とマルビナス諸島に向かっている」

 「動けるのは、慣熟訓練御終わった本艦だけ・・・」

 「作戦は成功するでしょうか」

 「クレタを中止して回ってきた作戦だ。成功させたいね」

 「全艦。出撃・・・・」

 空襲警報が鳴り響き、爆音が霧の上空で響いた。

 風を突き破るような音が落ち、

 「「「「・・・・・」」」」

 周囲に水柱が落ち、至るところで爆発が起こり海水を噴き上げた。

  アブロ ランカスター

   1280hp×4 自重16783kg/全備重28576kg

   全長21.18m×全幅31.09m×全高5.97m 翼面積120u 

   速度450km/h 航続距離4300km 7人

   7.7mm機銃×8 爆弾10000kg

 しかし、軍艦が被爆した時の金属を引き裂くような響きはなかった。

 「・・・艦隊に損害はなさそうだな」

 「幸先がいいです」

 

 シェトランド諸島

 ドイツ特殊部隊は潜水艦で潜入し、

 Ju52やグライダーが離着陸できそうな平地に狼煙を仕掛けた。

 ハインケルHe111からパラシュート部隊が飛び降りて、

 大空に落下傘の花を数百と咲かせ、

 ドルニエDo17から切り離されたDFS230グライダーが狼煙を目印に広い平地に着陸し、

 Ju52も平地を見つけると着陸しては降下兵を降ろし、

 降下兵は島の4つの主要飛行場

  メインランド島(968.79ku)

    スカッツタ空港(北端)、ティンウォール空港(中央)、サンバラ飛行場(南端)

  ホールセイ島 ホールセイ空港をめざした。

 シェトランド諸島の飛行場がドイツ空挺部隊の強襲部隊に制圧され、

 3機のメッサーシュミットBf110に曳航されたメッサーシュミットMe321が飛行場に着陸し、

 機首格納庫から3号戦車が降ろされるとシェトランド諸島制圧は時間の問題となった。

 ドイツ空挺部隊のシェトランド諸島強襲は、イギリスを震撼させ、

 ドイツ艦隊が上陸部隊を率いてシェトランド諸島に向かっていることを知ると

 イギリス国防省は、大恐慌となった。

 イギリス海軍艦艇の多くは修理中で、

 就役中の艦船も護送船団の護衛か、地中海作戦か

 フォークランドに向かって移動していた。

 反撃に使用できる戦力はスカパ・フローの戦艦ネルソンと駆逐艦8隻のみだった。

 ネルソン 艦橋

 「提督。コーンウォールにスカパ・フローの守備隊2300名を乗せました」

 「提督。ティルピッツの艦隊が船団を率いて出撃した模様です」

 「いよいよ。ドイツ軍がシェトランド諸島に上陸作戦か」

 「艦隊を呼び戻してますが、間に合わないかと」

 「航空部隊は?」

 「哨戒部隊ばかり、ですが120機が準備中です」

 「上陸作戦ならティルピッツは逃げまい、刺し違えてもティルピッツを撃沈するぞ」

 「こちらの再上陸部隊は?」

 「まだ編成できてません」

 「じゃ ドイツ艦隊と上陸作戦部隊を殲滅できなければシェトランド諸島は・・・」

 「占領されますね」

 「空挺部隊を使いたいならクレタ島にでも使えばいいものを」

 「Uボート作戦を効率良く使いたいのでしょう」

 「シェトランド諸島に航空部隊を配置できればスカパ・フローも爆撃圏ですから」

 

 シェトランド諸島

 サンバラ飛行場(南端)

 シェトランド諸島の占領は防空と敵艦隊の空襲能力が前提条件になっていた。

 巨大なメッサーシュミットMe321が滑走路のわきに寄せられていく、

 ドイツ軍空挺部隊

 「戦闘機が来るぞ。滑走路を開けろ」

 「あのアブロ・アンソンをもっと奥に」

 飛行場制圧で

  双発戦闘機デ・ハビランド モスキート

  双発哨戒機のアブロ・アンソン、

  双発爆撃機ブリストル ブレニム

  4発爆撃機ハリファックス、アブロ マンチェスター

 数十機を捕獲していた。

 「・・・司令。来ました」

 「まだ、滑走路の準備が終わってないだろうが・・・」

 「フォッケウルフFw190戦闘機とユンカース Ju87シュトゥーカですね」

 「侵攻作戦で出来立ての戦闘機か」

 「フォッケウルフは主脚幅が広いから、未経験の飛行場でも降りやすいだろう」

 「どちらにしろ、作戦が成功するかどうかは、海軍次第かな・・・」

 「着陸許可を求めています」

 「出してやれ、少し狭いがな・・・」

 シェトランド沖海戦の砲声が低い雲の下に籠もっていた。

 

 ティルピッツとネルソンは24000mの距離から示し合わせたように撃ち合った。

 戦艦同士は互角に撃ち合っているかに見えたが、

 勝敗を決したのは護衛艦隊の戦力差だった。

 重巡ブリュッヒャー、ブリュッヒャー、ザイドリッツ

 軽巡エムデン、ケーニヒスベルク、ライプツィヒ、ニュルンベルクは、

 イギリス駆逐艦8隻を次々に撃沈し、

 戦艦ネルソンを砲撃し、雷撃しようと接近していく、

 ネルソンが魚雷をかわそうと回避したとき、

 ティルピッツの砲弾が立て続けに命中し、艦の戦闘力と将兵の戦意を奪っていった。

 ティルピッツは、沈黙するネルソンに2斉射すると爆音が北海に轟き、

 巨艦は黒煙を上げながら海面から消えてしまう。

 

 駆逐艦に護衛された輸送船がシェトランド諸島に着岸し、上陸部隊を降ろしていた。

 予断を許さない戦況だったものの、

 十分な陸軍部隊が展開すれば航空部隊と艦隊で負けても島を維持することができた。

 将官は、潮風が強くなっていく様子を眺めていた。

 「ロンメル将軍、全島はほぼ制圧しました」 

 「島流しか、北アフリカ戦線のマンシュタイン元帥が羨ましい」

 「マンシュタイン元帥は、ベンガジ港東のアフダル山地を押さえて動かないようです」

 「ふっ 砂漠で機動戦術を試みないとは堅実な男だ」

 「マルビナスのパウル・ハウサー将軍と同じような立場かと」

 「ふっ 島の御守りを老人にさせるのは賛成だよ」

 「しかし、わたしはまだ老人ではない」

 

 

 北アフリカ戦線

 ベンガジ港東にアフダル山地(標高600m)が広がっていた。

 北アフリカで珍しく緑の大地が広がり水も豊かで地中海農業がなされ、

 オレンジ、レモン、イチジク、コルクガシ、オリーブ、ブドウが実を鈴ならせ、

 穀倉地帯となっていた。

 マンシュタイン元帥はトリポリ港とベンガジ港と山岳地の防衛線を強化すると、

 イギリス軍の攻勢を押し返すだけの戦闘に終始していた。

 将校が並ぶテーブルに果物が置かれ、

 兵士が搾り立てのジュースを並べていく、

 「将軍。クレタ島のイギリス艦隊はジブラルタルに移動するようです」

 「ギリシャ反攻計画は延期か」

 「これで、我々の輸送航路は確保できそうです」

 「イギリスにすれば北アフリカより、シェトランド諸島回復が優先でしょう」

 「ふっ ユダヤ軍の動きは?」

 「イスラエル建国後もパレスチナ全域を制圧しているだけのようです」

 「そろそろ、ユダヤ艦隊の訓練が終わるころだろう」

 「連中がどうするか見ものだな」

 「ユダヤ人は人口が少ないですからね」

 「高速戦艦8隻を保有しても開戦は躊躇すると思われます」

 「だろうな。ユダヤ人の目的は達成した」

 「当面は、内政だろう」

 「今後の展開は?」

 「アフダル高地を守るだけでよかろう」

 「我々の出世の機会が減りますな」

 「戦車を並べて待っているとオコンナー将軍を招待状を出してくれ」

 「気前のいい彼のことだから、きっとプレゼントを持ってきてくれるだろう」

 「「「「「・・・・・」」」」」 にやぁ

 

 

 日本領ナイジェリア ラゴス港

 日本軍先遣隊がイギリス植民地軍と交替し、

 後続の主力軍が上陸すると要衝を掌握していく、

 師団は戦車大隊(30両)が1個配備され、

 戦車を先頭に進む日本軍を阻む部族はなかった。

 工作部隊は密林を切り開きながら鉄道を施設し、

 仮の駐屯地を作っていく、

 日本軍将校たち

 「イギリス軍は、武器弾薬を現地人に渡していないようですな」

 「約束は守ってもらわなくては・・・なるべく早く、通訳者を育てたい」

 「日本人の入植者は、今のところ少ないそうです」

 「半島の土地分配が決まってるからな」

 「ナイジェリアは人口が多そうです」

 「3500万ほどらしい」

 「政府は現地人をどうすると?」

 「国境線の内側50km沿いに環状線を施設」

 「外側にアパート群を作って自治州を作らせる気のようだ」

 「ずいぶん、理不尽ですね」

 「まぁ 奴隷じゃなくなるのなら喜ぶだろう」

 「だといいのですが」

 

 アダマワ高地(標高1000m:面積70000ku)

 赤道の近くでありながら標高が高く、涼しい風が吹いていた。

 飛行場が拡張され、

 一式陸攻とゼロ式戦闘機 瑞風 が少しずつ配備されていた。

 日本政府関係者たち

 「いいねぇ この辺りは涼しい」

 「だいたい、22度から25度で水源になってる」

 「雨が多いけど・・・」

 「砂漠の砂塵で喉をやられそうだな」

 「牧畜が多いのか」

 「水田でもいいさ」

 「しかし、感染症がこわいし、この辺の毒に抵抗力がないよ」

 「マラリアが多い、そうでなくても蚊にかまれると5倍くらいかゆい」

 「赤痢とコレラは?」

 「日本より多いね。髄膜炎やらポリオやら狂犬病やら寄生虫やら・・・」

 「交換に応じた政治家殺す」

 「「「「あははは・・・」」」」

 「しかし、日本から遠いから入植者が増えるとは思えんが」

 「とりあえず、アメリカの殺虫剤買ったし。受刑者に来てもらって、開拓してもらおうよ」

 「入植呼び込むなら、日本の城郭神社仏閣を作るべきじゃないか」

 「半島でやってて忙しいからな」

 「分配面積を5倍に増やしてはどうだろう」

 「まぁ そのくらいは最低でも欲しいよね」

 「その前に基幹産業予定地と道路予定地を決めとかないと揉めるよ」

 「資源はありそうだな」

 「それが一番だね」

 「日本から遠い」

 「それが一番の問題だけど、反発が少ない」

 「俺はアメリカがどう出るか怖いがね」

 「あそこ戦争したがってるから」

 「挑発に乗らなければ何とかなるだろう」

 「ユダヤ資本の味方をしていれば、押さえてくれるだろう」

 「イスラエル建国でそれも変わるのでは?」

 「アメリカで反ユダヤ主義が台頭している」

 「イスラエルにとって日本は安全保障上の保険だよ」

 「だといいけど」

 

 

 呉

 関係者たち

 「軍艦は?」

 「輸送船の建造で埋まってるし」

 「あと、簡易住宅用建材を日本で作って持っていくし」

 「日本の森林を伐採したくないから現地伐採か、外国で木材を買わないと・・・」

 「外貨は?」

 「戦争需要で結構ある」

 「おいおい、国防は?」

 「んん・・・フランス領の朝鮮人がナイジェリアに入ってくるのは嫌だな」

 「きちんと労働管理してるんだろう」

 「逃げ出して、現地に溶け込んでるのもいるらしいよ」

 「タフだな」

 「あの・・・軍隊は・・・」

 「川が多いから大発とトラック。あと重機がたくさんいるな」

 「ニジェール川とベヌエ川で水力発電所を建設しないと」

 「なんか、ブラジルといい、最近は、水力発電ばかりだな」

 「電気は基本だからね」

 「ナイジェリアは石油が出るという噂があるが」

 「しかし、日本は山師が信用されてないからな」

 「だいたい、日本の石油地層研究は実績が少なくて遅れてる」

 「投機で掘れるかどうか」

 

 

 イスラエル (パレスチナ)

 首都エルサレム

 ユダヤ人は、ドイツ人がユダヤ人にやろうしていたことをパレスチナ人に実行していた。

 パレスチナで何が起きようと、史上最大の国際問題の前では些細なことに過ぎなかった。

 ユダヤ軍将兵が街を巡回していた。

 パレスチナ人はソミュアS35騎兵戦車の圧倒的な戦力に抵抗できず

 見守るよりなかった。

 その一方、ユダヤ資本はイスラエルの国家基盤と社会基盤の構築を急がなければならず、

 反ユダヤ政策を執っていない国との取引が増加していく、

 ユダヤ人財務大臣と日本人

 「必要なのは火力発電所。工場。公共設備全般だな」

 「特に軍事的独立は重要だ。航空機と戦車がいる」

 「航空機と戦車は、何分、発注が多くて」

 「我々は石油利権で日本を優遇している。優先的にやってもらう」

 「し、しかし・・・」

 「インドネシアの輸出分を1年間5パーセント割引しよう」

 「・・・・」

 そう、ユダヤ資本の気前の良さは、日本産業によってイスラエル向けの資源と資材を増やすためでもあった。

 「それより、日本のイランとイラクへの進駐が遅れている」

 「いま、利権が競合しておりまして、国民のコンセンサスも調整中しないと・・・」

 日本の民需権益拡大とイスラエル建国軍需拡大、

 日本海軍の縮小とユダヤ資本艦隊の拡大は、日本軍の中東進駐に繋がる。

 

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 遠い過去か、遙か未来か、

 今の世界と似たような地形と種族の国際情勢です (笑

 価値観や声帯が違うのですが人類語に翻訳してますが、

 同姓同名の国名、組織、名称が出てきても偶然です。

 高度な社会を構成する知的生命体は、個体と全体の軋轢は大きく、

 個体も善意を取るか、利己主義を追求するか、全体に妥協するか選択肢しろいろ、

 生態系を含め、社会全体で馬鹿やってます。

 

 ユダヤ海軍

 戦艦8隻、小型空母1隻、強襲揚陸艦1隻、軽巡17隻、駆逐艦36隻

 ルベン(金剛)、シメオン(比叡)、イッサカル(榛名)、ゼブルン(霧島)、

 ダン(伊勢)、ナフタリ(日向)、ガド(扶桑)、アシェル(山城)、

 ガリラヤ(鳳翔)

 メギド(神州丸)

 アフェク(天龍) カナ(龍田)

 ツロ(球磨) アコ(多摩) ハモン(北上) ハロシェテ(大井) ケデシュ(木曾)

 シロ(長良) キネレテ(五十鈴) ハマテ(名取) ラマ(由良) ラマ(鬼怒) リモン(阿武隈)

 ヨクネアム(川内) ガテ・ヘフェル(神通) シムロン(那珂)

 サリテ(夕張)

 峯風、澤風、沖風、島風、灘風、矢風、羽風、汐風、

 秋風、夕風、太刀風、帆風、野風、波風、沼風

 神風、朝風、春風、松風、旗風、追風、疾風、朝凪、夕凪

 睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、

 文月、長月、菊月、三日月、望月、夕月

 

 

 

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第09話 1940年 『所詮、庶民は利権の奴隷』
第10話 1941年 『パラドックス・ストラテジー』
第11話 1942年 『黒塗りは保身色』