月夜裏 野々香 小説の部屋

       

仮想戦記 『白亜の遺産』

 

 第14話 1945年 『銃声とカザーク再燃』

 5年前、日本の自動車市場を支配していたのは国産車でなく。

 日本フォード社と日本ゼネラル・モーターズ社(GM)のノックダウン企業で外資だった。

 一方、日本の国産自動車は稚拙といっていいほど遅れていた。

 しかし、軍需産業が外注に奪われて開発が低減していくにつれ、

 人材が公共事業を中心に民需産業へ流れ、

 日本の国産自動車会社3社は、航空会社3社と提携していく、

  桜自動車 SAKURA  (三菱+石川島自動車製作所)

  八島自動車 YASHIMA (中島+東京瓦斯電気工業自動車部)

  大和自動車 YAMATO (川崎+ダット自動車製造)

 有能な技術者が鉄道や自動車で働き、

 戦争需要の追い風に乗って生産台数は増え、

 日本自動車も見る見るうちに技術が向上し、ほぼ互角のスペックに達しつつあった。

 某自動車会社

 日本車とアメリカ車がテストコースを回っていた。

 関係者たち

 「悪くないな」

 「アメリカ車には勝てないと思っていたが」

 「政府は石油輸入に不安があるからガソリン車依存を面白くないと思ってる」

 「ガソリン自動車は、もっと省エネにしないとモータリゼーションの主役になりえないそうだ」

 「だから電気自動車というのもな・・・」

 「発電所は増えてるから、電気自動車でもやれないわけではない」

 「だいたい、産業的に技術的に電気自動車は面白くない」

 「ふっ 電気自動車は雇用が得られないのは確かだがね」

 「高い工業社会を維持しようと思うならガソリン車だろう」

 「高い工業社会といっても流れ作業だから工員の作業は単純作業だよ」

 「意識の高い社員なら全体像を掴めるかもしれないがね・・・」

 無音の車が通過していく

 「インホイールモーターの電気自動車は、ガソリン車に負けてないな」

 「時間はかかるが、家のコンセントで充電できるのもいい」

 「予備の鉛蓄電池を載せ替える方が早いだろう」

 「鉛蓄電池は重いし出し入れが大変だ」

 「リチウム電池やニッケル電池は?」

 「あまり外国に教えたくない技術があるらしい」

 「「「「・・・・・」」」」 ため息

 「出し入れは工夫すればいいが、電池は寿命があるからな」

 「新品と中古を交換されたら困るだろう」

 「基本的に電気自動車は短距離用だよ」

 「鉛電池が重いのは性能的に大変だと思うな」

 「車体をアルミで作るか」

 「そ、それは・・・」

 「部品が少ない分、安くできるし、下町企業が鋼板で電気自動車を作っても性能で勝てる」

 「運用としてはガソリンスタンドで充電するのか」

 「時間を惜しむなら鉛電池を交換する方がいい」

 「ガソリンを売り買いするより、鉛電池の交換が健全だろう」

 「しかし、大衆車生産で後れをとって機械力で欧米に負けるのは面白くないが」

 「需要は全部、ガソリン車とディーゼル車だよ」

 「国内向けで考えるなら東日本が60Hzに切り替えられていくし」

 「電気自動車にシフトしてもいいと思うな」

 「結局、半島の60Hzに引っ張られたようなものではあるが・・・」

 「まぁ 国内を石油に依存するのは面白くない」

 「結局、火力発電所で使う石油を買うことになるけどな」

 「電力会社に権力が集中するのは面白くない」

 「鉄道は発電所経営してるし」

 「自動車会社でも発電所を運営すればいいだろう」

 「多角化は生産手段を集中できなくて困るが」

 「電気自動車はガソリン自動車より部品が少なくて済むだろう」

 「そういう考え方もできるか・・・・」

 電気自動車がガソリン自動車を抜いて行く、

 

 

 南鳥島沖

 上空を最新のレーダーと磁気探知装置を搭載した哨戒機5機が旋回し、

 洋上では、赤城、加賀、青葉、衣笠、古鷹、加古、駆逐艦12隻が対潜哨戒訓練についていた。

 ソナー音が海中を探り、磁気の変化に注意する。

 赤城 艦橋

 誰しもが時計と海図を睨み・・・・

 「まだ発見できないのか? 訓練時間が終わるぞ」

 「あの野郎、遅刻したのか」

 「橋本は、ルーズな男ですが、命令には忠実ですよ」

 「じゃ 事故か・・・」

 時計が訓練終了の時を刻んだ。

 「艦長。右舷です!」

 見張り員が叫んだ。

 白亜31型潜水艦 鋼龍 は赤城の真横、1000mの距離に潜水艦は浮上した。

  5200t/6500t 全長100m×10m×吃水7.5m

  ディーゼル1625hp×2基 (3250hp)

  トリウム原子炉1基(750kw・1000馬力)

  電気推進  水上4000hp/海中9000hp  水上13km/h 水中 20kt

  魚雷533mm×6 36本  70人

 突然現れた新型潜水艦の性能に驚嘆する。

 鋼龍

 「潜ったまま、ここまで来れるとはな」

 「水と酸素をケチって、余剰電気でちんたら航行すれば何とかなるもんですね」

 「艦隊は、驚いてるみたいですよ」

 「微小泡発生装置の微小泡で艦体を覆えば速度は向上するし」

 「ソナーを乱反射させて攪乱できる」

 「航行中でも艦首から放出して艦を包み込めば、ほぼ見つからない」

 「こちらのソナーが使えないのは面白くないが対潜哨戒中の艦隊に突撃するときは有用だ」

 「敵に教えたくない技術ですね」

 「味方にさえ、機密だからな」

 

 

 九州阿蘇

 地表から4000m〜5000ほど掘り進むとマグマだまりに達する、

 地上から地下の花崗岩盤を探知し、

 ボーリングで掘り岩盤の亀裂を広げ、水を注水する。

 2か所に穴をあけ、一つの穴から水を注水し、

 もう1つから熱水が吹き上がれば熱蒸気でタービンを回し発電する

 火山地帯の日本は、地表から3000mほど掘り進むだけでマグマだまりに達する、

 日本は高温岩体地熱発電で有利だった。

 もっとも適当な震度で適当な大きさの花崗岩の有無は、震度表で判断するしかなかった。

 関係者たちは排出パイプを見つめていた。

 「・・・出ないかな」

 「当たりだと思ったのにな」

 「適当な花崗岩盤がなかなか見つからないよね」

 「採算深度3000から4000m。採算熱量200℃から250℃以上」

 「採算水回収率80パーセント超えか・・・」

 「今のところ最大が150000kwだが。なかなか、大きいところがない」

 「50000kwくらいなら嬉しいけどな」

 「日本で山師は胡散臭さ一杯だからな。予算取りが難しいよ」

 「農林水産省が間伐材発電に参入してるし」

 「自治体のゴミ焼却発電も大きくなっている」

 「例の有明海の洋上風力発電と天草島原潮汐発電に予算を取られそうだな」

 「有明潮汐発電は天草と島原の5kmを塞き止めて上に鉄道を敷く気のようだ」

 「干満の水位差5mだからかなり行けそうだけど」

 「有明より仁川の方が10m以上の落差があって有利だらしいけど」

 「海苔はいいが、ムツゴロウがどうにかなったら反乱だ」

 「あははは」

 「風力発電は、なんで洋上なんだ。あそこ、海苔作ってるだろう」

 「騒音対策らしい」

 「ふ〜ん」

 「それと、崩壊熱発電も予算が取られそうだし」

 「崩壊熱発電所?」

 「政府関係者が話題にしていた」

 「使用済み核燃料の崩壊熱は、最大2400℃〜2800℃だからな」

 「循環水で100℃以下で安定させるとして」

 「正規の原子力発電所の100分の1の発電でも100基作れば1個分」

 「1000基作れば正規原子力発電所10基分の発電になるからね」

 「地震のない半島や高千穂に作って、利益を列島に還元する計画のようだ」

 「崩壊熱発電は、地中に埋めて密閉自然対流型にしても放射線量が怖いだろう」

 「放射線は100mm厚の鉛と大量の水があれば防げることだからね」

 「ジルコニウム、ステンレス、セラミックで補強する必要はあるが」

 「地震のない地域の地下に埋めるなら、欲しがってる企業は少なくない」

 「地熱と違って当たり外れがないから予算が組みやすい」

 「貧困層やナイジェリア現地民を使い捨てしないと成り立たないような産業は潰してしまえばいいんだ」

 「人でなしどもが」

 「今は難しいだろうな」

 「そりゃ 地熱発電は馬券買うようなもんだが当たるときは当たるし・・・」

 排水パイプから勢いよく蒸気が立ち昇る。

 「来た」

 「「「「「ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい! ばんざーい!」」」」」

 

 

 

 高千穂(ナイジェリア)州

 石油精製工場が建設され、設備投資が急速に進んでいく、

 利権は強まっていくものの、

 抽選制衆議院は省庁を監視し、

 透明度を強めることで高千穂州の自主独立を牽制してた。

 日本人移民者たちは、決められた口分田へと移動し、

 高千穂全域に広がっていく、

 “かちかち山” 区

 政府関係の日本人たちが地下深く掘られていく穴を見つめていた。

 側溝の鉄筋コンクリートの厚みは大きく、

 特殊鋼と鉛の壁が何重にもサンドイッチされていた。

 底は数百メートルもあって、縦長の原子力発電所が建設されていく、

 石油を採掘できる高千穂に水力発電や風力発電を作り原子炉を配置し、

 石油を日本へ輸送していた。

 穴の中に巨大な円柱筒が降ろされていく、

 「例の法案は、通ってしまったのか?」

 「ああ、衆議院が出した紙幣100億保有上限法案?」

 「通ったよ。しかし、海凰空母建造が7億円だぞ」

 「いくらインフレでも100億なんて紙幣を保有してる資本家なんていないだろう」

 「しかし、上限を決められるといろいろ詰まらんな」

 「そんなの何十年も先の話になりそうだがね」

 「だが、紙幣が上限に達したら固定資産に変えるなり」

 「有価証券で投資するだろうから、好景気にはなる」

 「まったく、抽選制衆議院なんてやるから碌なことにならん」

 「最低賃金制より健全ではあるよ」

 「まぁ 拝金主義も行き過ぎると害悪だし」

 「それよりイギリス領ペナンの様子はどうだった?」

 「部族同士、バラバラに対立させて殺し合わせて、少数民族を使って支配してますね」

 「間接統治で現地民の特権強化で良識派を排斥して殺し」

 「大衆の無知化で植民地の発展を閉ざしてる」

 「植民地500年の歴史は、そういうものでしょう」

 「あと、優秀な現地民は必ず殺してるようです」

 「「「「「・・・・・」」」」

 「そういうのは流石にできないな」

 「現地民は原発で使い捨てにするか、外周へ移住させて自治させるのがせいぜいだよ」

 「原発が低層階層によって維持されてると思うと泣きたくなるね」

 「正規の原発を3、4基だけにして、あとは、崩壊熱発電で細々とやっていくしかなさそうだ」

 「現地民の自治は、どうなの?」

 「無茶苦茶だから軌道に乗るまで日本人が代行してる」

 「朝鮮人よりましか」

 「李氏朝鮮は、特権を持つ両班が人口の5分の1を超えていた」

 「権力構造は重複して権力ばかりで義務がなく、無能化し」

 「下層は搾取されて労働意欲を失い、国家の体を成してなかった」

 「李氏朝鮮は自滅だよ・・・・」

 騒ぎが起こり、警官たちが胡散臭そうな男たちを引き摺ってくる

 「どうした?」

 「不審者ですよ」

 「なんだ?」

 「ま、間違えて入ってきたニダ」

 「朝鮮人か・・・」

 「どこから来た?」

 「ペナンニダ」

 「あそこは、イギリス領だろう」

 「フランス人は極悪ニダ」

 「なんでもするニダ。助けて欲しいニダ」

 「「「「「・・・・」」」」」 ため息

 「先生さまたちの利権を守るニダ」

 「利権を大きくして、発言力を強めさせてあげるニダ」

 「お、女も世話してやるニダ」

 「「「「「・・・・」」」」」 ため息

 「どうやって、娘を世話してくれるのかな?」

 「お金を刷るのをやめるといいニダ」

 「お金を刷る政府機関と基幹産業と特権階級に、お金が集まるニダ」

 「庶民は貧乏になって、娘は売春をするニダ」

 「庶民はお金が集まる官吏に媚びて靡くニダ」

 「特権層を増やして、大衆を愚民化させれば地位は安泰ニダ」

 「日本の政治家と官僚とお金持ちは、この世の天下ニダ」

 「紙幣を減らせば中央集権で官吏はウハウハニダ」

 「任せるニダ。本当のこと言うやつは徹底的に弾圧して嘘つき扱いしてやるニダ」

 「絶対に上手くいくニダ」

 「「「「「・・・・」」」」」 ため息

 「この馬鹿どもを国外に追い出せ」

 警官たちは朝鮮人たちをトラックに乗せ、国外に追放していく

 「口封じしなくて良かったのか」

 「どこまで知ってると思う」

 「さぁ アメリカも原爆を開発してる節があるそうだ」

 「核戦争なんてしたくないがな」

 「しかし、ここまで入ってくるとは・・・」

 「朝鮮人の意図は明確だよ」

 「しかし、背後のユダヤ資本とアングロサクソンは日本を朝鮮化させる気のようだ」

 「そんなことされたら国家は、反社会的なグループと結託し」

 「国民が反日勢力と結託して国家に離反し」

 「国体がバラバラにされて植民地化される」

 「白人世界にとって、日本は目の上のコブなのだろう」

 「戦争が終わったら、対日外交攻勢が始まるんじゃないか」

 「いやだねぇ 欧米と戦争なんて」

 「高千穂は狙われそうだな」

 「イスラエルは公共投資と設備投資で建国中だ」

 「それが終わるまで、大丈夫だけど思うけどな」

 「企業主義のユダヤ人の思惑と国家主義のアングロサクソン人の思惑は別だよ」

 「高千穂を守れるだろうか」

 「まぁ 守れないこともないと思うが日本は国力が分断されてるし」

 「戦力的に分散されてる」

 「社会設備と生産力を急いで高めないと」

 「あと周囲を朝鮮人に囲まれている」

 「遺伝子を利用した国民総背番号制を取り入れないと朝鮮人に入り込まれるぞ」

 「だよなぁ」

 「むしろ火病遺伝子探知機を開発したいね」

 「「「「「あははははは」」」」」」

 

 

 1式陸攻20機編隊、D520戦闘機20機が高千穂(奴隷)海岸を越えてギニー湾上空を巡回する。

 高千穂(ナイジェリア)は、大陸国家の様相を持ち、自給率が高く海外依存が低くかった。

 国防上、海上防衛に拘る必要は小さく、

 ギニー湾の制海権を維持する程度でも十分だった。

 コクピット

 「議員。耳鳴りはどうですか?」

 「いまは良くなったよ」

 衆議員の監視は、現地陸海空軍に及び、

 空軍も衆議院の理解を得るため、実機に搭乗させることが増えていた。

 「アメリカ艦隊に攻撃されても大丈夫そうかね」

 「そうですね。本機は魚雷3本搭載して、20機編隊なので60本」

 「護衛の戦闘機がなく、敵艦が停止していれば、20隻は撃沈できます」

 「護衛戦闘機がついて、動いていたらどうなるのかね」

 「こちらも護衛機が必要になります」

 「しかし、いろんな不確定要素で命中率は半分以下になるかと思います」

 海上を高雄、愛宕、摩耶、鳥海が回頭しつつあった。

 「D520戦闘機は10機対10機で別れ、10機は1式陸攻の雷撃を妨害します」

 「航空攻撃の威力を理解すればいいわけか」

 「はい」

 「魚雷の速度があるので、1式陸攻は、巡洋艦の手前を過ぎて行くはずです」

 D520戦闘機の半分が離れ、模擬空中戦が始まる。

 敵機役は、尾翼が赤く塗られ、

 同じ機体同士が入り乱れ、

 時折、1式陸攻の脇を抜けていく、

 角度と速度で判定が計算され、

 生き残った1式陸攻が海面近くへと降下しつつ、巡洋艦の未来予測へ回り込み、

 次から次へと艦首側を抜けていく、

 そのたびに相対距離と速度と魚雷投下の計算が行われ、被害判定が出されていく、

 初めての海上航空戦に議員たちは目を見張り、何人かは予算配分を検討し始める。

 司令部で行われている図上演習と違って、

 直に模擬戦場の空気を感じると議員たちの意識も変わる。

 むろん、各省庁とも守秘義務の念書と交換で、議員の感心と予算増加を画策するのか、

 資料と実演に余念がなかった。

 

 

 バイエルン州ベルヒテスガーデン町

 ケールシュタイン山(海抜1881m)の山荘に日本大使が呼ばれていた。

 「戦後、日本の対独戦略を聞きたい」

 「イスラエルは、あと10年ほどで政治経済軍事を自立させるでしょう」

 「戦後、米英の社会資本は、ユダヤ資本に集中し」

 「アングロサクソン・プロテスタントの反ユダヤ勢力はドイツに集中すると考えています」

 「イスラエルの自立が強まるほど、米英諸国の対日戦略は厳しくなるでしょう」

 「ドイツ帝国とは、友好関係を維持していきたいと考えています」

 「無論、どういった形で終戦を迎えるのかにもよりますが」

 「正直だな」

 「日本はイギリスの利権に食い込んでますし、現状は利害が一致しています」

 「戦争するほどではありませんが」

 「日本の航空戦力は悪くないようだ」

 「機体を調べれば日本の工作機械が我々のレベルに近づいていることが理解できた」

 「北アフリカ戦線で、D520戦闘機と99式襲撃機の手強さは報告されている」

 「しかし、米英軍から自衛するには足りないだろう」

 「戦後、ドイツは日本との協力関係を強化していきたい」

 「日本は高千穂防衛の手段が不足しています」

 「ドイツとの協力関係は望むところです」

 「しかし、赤城と加賀のイギリス売却の噂も聞く」

 「日本海軍の縮小は、安全保障上、組むに値しないこともありうる」

 「日本は、65000t級海凰型空母4隻。10000t級巡洋艦32隻を中心にした海軍を編成中です」

 「旧式艦艇は、不要なものと考えていますので」

 「大型空母だな」

 「しかし、日本海軍が潜水艦中心の艦隊に移行していることは知ってるし」

 「空母機動部隊は4個どころか、1個を創設するほどしか、予算配分がなされていない」

 「に、日本経済は、上昇傾向にあります」

 「設備投資が軌道に乗れば、機動部隊4個編成は可能と考えています」

 「戦後、日本がドイツ帝国に望むものは何かね」

 「米英ソを牽制し、市場が得られることでしょう」

 「米英ソ牽制は望むところだが、市場は日本の市場開放と等価であるべきだ」

 「同感です」

 「イスラエルの国力が強化されたら中東を占領する可能性があるのではないのか」

 「イスラエル軍は寄せ集めですよ」

 「だがイスラエルは旧イギリス領パレスチナ11万kuを全て引き継いでいる」

 「ブルガリア程度の国土だが、10個師団くらいは創設できるだろう」

 「ユダヤ資本とキリスト教アングロサクソンの対立があるのでは?」

 「ドイツは反ユダヤ勢力を結集できるだろう」

 「日本はユダヤ資本に対し、どういう対応をするのか」

 「イスラエルは10年以内に軍事と民事で独立するでしょう」

 「そうなれば、日本とイスラエルの関係は冷却していくと思われます」

 「イスラエルは、人口次第だがアメリカ、ドイツ、ソビエト、日本、イギリスに次ぐ軍事国家になるだろう」

 「フランスはインドシナ。オランダはインドネシアで有力な国家になっていくと思われます」

 「そうなると日本のシーレーンは脅かされるだろう」

 「日本は電化を進めています。石油消費を節約できるでしょう」

 「アングロサクソンとユダヤは食糧、資源、エネルギーを押さえて、我々の生殺与奪権を握ろうとするだろう」

 「戦後、日独は、共謀して対処すべきだろう」

 「本国に伝えます」

 

 

 ソビエト連邦クレムリン

 雪がカザコフ館に積もり始めていた。

 ロシア人は肩をすくめ、憂鬱そうな目で空を見上げる。

 バァーン! バァーン! バァーン!

 バァーン! バァーン! バァーン!

 6発の銃弾が男の体を貫き、歴史を変えてしまう。

 

 

 マルビナス(フォークランド)諸島

 霧の中で銃撃戦が行われ、あちらこちらで爆発が起きていた。

 イギリス海軍は濃霧を利用し、潜水艦でコマンド部隊を潜入させ、爆破工作を繰り返していた。

 ドイツ軍が潜水艦やコマンド部隊を発見すれば戦いが始まり、

 発見できなければ施設が爆発され損害を出した。

 シュッ!

 霧の中、ドイツ兵が日本刀で切り殺された。

 「発見されたな。急いで潜水艦に戻るぞ」

 「霧だけが味方ですからね」

 部下が持ってる自動小銃は消音装備が施されていたが、

 まったく音が発生しないわけではなく、

 イギリスコマンドは、ボーガンと日本刀を多用していた。

 

 マルビナスには、Uボート60隻が配備され、20隻が通商破壊作戦中で、

 20隻が往復の途上で、20隻が港湾で補修整備していた。

 通商破壊の基本は、このローテーションで成り立つ、

 むろん、港湾設備は満足できるものではなく、配備できる艦船は限られている。

 沈没すると本国からUボートが補充され、

 現状は、対英戦を戦い抜いていた。

 濃霧を利用してアドミラル・グラーフ・シュペーが出航する。

 シュペー 艦橋

 「4か所で爆発が起きてるようです」

 「つまり4隻以上の潜水艦がいるということか」

 「この濃霧なら出撃しても発見されないでしょう」

 「だといいが」

 「日本の中東行きタンカーが増えてるようだが」

 「いや、駐屯地を建設してイギリス権益を守っているようだ」

 「武装してるのか」

 「日本商船は140mm砲2基、40mm機関砲4基を配置してると公表している」

 「まぁ Uボートは近づくなということだろう」

 「日本を敵に回すと南方資源が入らなくなるから日本と戦うようなことはないと思うが・・・」

 「日本は旧式商船をイギリスやユダヤに売却し、性能のいい新型ディーゼル機関船を使ってるようだ」

 「日本商船の行動半径はカリブ海、メキシコ湾、バミューダー、南大西洋まで達している」

 「これらの船の6割が対英なのが問題だがな」

 「日本のアルゼンチン投資が増えてるのなら、間接的には我々の利益になっている」

 「それにイギリスが日本海運に依存し、イギリス海運が低迷しているのも悪くない」

 「しかし、日本船籍にしてるだけで、戦後、イギリス船籍に変える契約が結ばれてる船も多いとか」

 「ドイツも同じ契約で建造してる船があるらしい」

 「ふっ 停戦が近いのかもしれないな・・・・」

 振動が起こった。

 「どうした!」

 「被雷しました。左舷に2本命中。浸水しています」

 「右舷に注水」

 「急いで帰還する。浅瀬に向かえ」

 「この濃霧で命中させたのか」

 「ソナーでスクリュー音を計測して発射したのでしょう」

 「たぶん、ベテランの艦長かと」

 「やってくれる」

 

 

 台湾

 1式陸攻とD520戦闘機が滑走路を飛び立ちと

 台湾とフィリピンとの間にあるバシー海峡上空でポツポツとした黒点群と接触する。

 そして、見る見るうちに航空機の形になり、

 両編隊は衝突を避けるように機首を翻し、並行飛行に移っていく、

 B17爆撃機コクピット

 「補佐官。あれが日本空軍です。必ず、こちらのほぼ1.5倍の機数が上がってきます」

 「なるほど、こちらの来襲に気付いて、日本空軍も航空部隊を出撃させている」

 「日本空軍は、レーダを持ち」

 「我々と同じレベルの技術工業力に立脚した航空戦力を有してます」

 「情報部で新型戦闘機の噂を聞いているが」

 「こちらでは、まだ確認してません」

 「日本潜水艦の探知は?」

 「B24で対潜哨戒を行ってますが浮上は夜間が多く、それも短時間で潜航してるようです」

 「艦内生活は苦しかろう」

 「日本潜水艦は、ガトー級の倍近い大きさなので生活が楽と聞いてます」

 「潜水艦は大きい方が発見しやすいと聞いてるが」

 「残念ながらアメリカ潜水艦の方が浮上してることが多く、見つけやすいですよ」

 「もし、アメリカ太平洋艦隊が台湾を占領しようとしたらどうなると思うかね」

 「補佐官。あの編隊を見てどう思いますか」

 「無論全力はつくしますが、わたしも補佐官と同じ感想ですよ」

 「「「・・・・」」」

 B17爆撃機、P38ライトニング編隊と1式陸攻とD520戦闘機は互いに高度を上げ、

 優位な位置に付こうとするが、ほぼ互角に対峙していた。

 「大した上昇力だ」

 「1式陸攻は雷撃機と聞いてますが、B17より軽量なようです」

 「どこの馬鹿が、日本にライセンス生産を認めたんだ」

 「ユダヤ資本と聞いてます」

 「ふっ あの金の亡者どもが・・・」

 「開戦は彼らの利益誘導なので?」

 「そういう誘導があることは否定しない」

 「「「・・・・」」」

 

 

 シベリア(満州)共和国

 強制的に移民させられたロシア人3000万人が闊歩していた。

 一時、4000万人に迫った漢民族は1200万人まで縮小し、

 満州全てがロシア人のモノになりつつあった。

 そして、ロシア人の南下は、満州にとどまらずレーニン(華北)共和国へも伸びようとしていた。

 ハルビンスク

 将軍と外国人

 「将軍は、支持率を上げつつあるようですが、さらに支持率を上げる予定があるので?」

 「わたしは、与えられた任務をこなしているに過ぎない」

 「それ以上のモノを求めているわけではない」

 「将軍は、黄河から南下する予定があるのですか?」

 「いや、黄河以北を守るよう命令されているだけだ」

 「欧州ソビエトとのパイプは強いようですな」

 「欧州も極東もソビエトは一体だよ」

 「しかし、反スターリン勢力は強まっているのでは?」

 「そういった噂があるのは否定しない」

 「将軍は極東ソビエト軍の権力をどの程度、掌握されているので?」

 「極東ソビエト軍の最高指揮官であるが、行政には関与していない」

 「シベリア共和国の漢民族は、さらに減るのでしょうか?」

 「鉄道建設は重要な国家産業である・・・」

 扉が開かれ、士官が将軍に耳打ちする。

 将軍は心なしほくそえみ、

 「同志スターリンが暗殺されたらしい」

 「同士スターリンの遺体を確認後、貴国の代表と交渉したい」

 「喜んで、ジューコフ将軍」

 

 

 スターリン暗殺後、ソビエト連邦は権力抗争で動乱期を迎え、

 最初の年だけで、数百もの人命が失われ

 動乱を恐れるロシア人は極東へと移動していく、

 極東シベリアは、ゲオルギー・ジューコフ(49)がカザーク連合として分離独立を宣言し、

 欧州ソビエトは、アレクサンドル・ヴァシレフスキー(50)が書記長となった。

 中央域は、欧州ソビエトに付くか、極東ソビエトに付くかで揉め、

 東西の共産主義国家は、国際情勢と内政の不安から分離独立を黙認するよりなかった。

 そして、ドイツは、ソビエトの東西分割で東部の軍備を省くことができ、

 対英戦で優位になっていた。

 イギリスは、アメリカの参戦がなければ遠からず力尽きると思われていた。

 

 

 日本 東京

 総理官邸

 二次産業の定年退職後、高千穂(ナイジェリア)の家と農地を与える法案が可決されようとしていた。

 若者を賃金先送りで製造分野に転出させる思惑であり、

 次男以降は、喜んで製造職へ行くと考えられていた。

 もっとも医療、軍部から反発の声が上がり、枠が広がる趨勢を見せていた。

 「まぁ どいつもこいつも家と農地は夢かな」

 「あまり派閥に拘るのはよろしいとは言えませんし」

 「党利党略は自己矛盾が大きくなりますからね」

 「医療や軍部も含める方がいいでしょう」

 「定年後、年老いた人間に高千穂の土地と家を与えるくらい」

 「若者だけで産業を維持すればいいですし」

 「年金より負担が小さいか」

 「高千穂の土地がある間はな」

 「半島も欲しがってる人も多いようですが」

 「あそこは、市場経済でやるべきだろう」

 「確かに」

 「次は・・・・炭鉱、鉱山、金鉱を掘り尽くした跡地を刳り貫き」

 「ステンレス壁を作って、原子力発電所か、石油タンクの建設か・・・」

 「費用が掛かるものばかりだな」

 「ですが、国防上は有利です」

 「しかし、石油タンクは構わんだろうが、日本国内は地震が多く、原子力発電所はまずい」

 「原子力発電所は、半島と高千穂の廃坑を使うことにしよう」

 「しかし、予算はフランス領インドシナ、オランダ領インドネシアの開発状況次第だな」

 「もう少し後回しでもいいような気がするが」

 「フィリピンのアメリカ軍の挑発があるのですが」

 「アメリカの財界が戦争したがっても、アメリカ国民が戦争したがってるわけではない」

 外務省からの報告に目を通した。

 「またイギリスが赤城と加賀の購入を打診してきた」

 「そもそもなんで日本なのだ。アメリカから買えばよかろう」

 「必要以上にアメリカを強化させたくないのだろう」

 「むしろ、日本を強化させたくない意図を感じる」

 「東南アジアを守りたい気持ちは強かろう」

 「ソビエトが東西に分かれたというのに、イギリスは、まだ戦争する気なのか」

 「島を二つ取り返すまでやめられないのでは?」

 「講和の条件で返してもらえよ」

 「条件を別件に加味したいのだろう」

 「アホか」

 「とても割のいい計算じゃないと思うがな」

 「イギリスは戦争してくれてた方が儲かるよ」

 「追加先物で相殺できるとしても50年完済の5000億ポンドの借金を少しでも返したい」

 「為替は、有利になってるし、国力比でさらに有利になっていくと思うのだが」

 「はぁ 円札刷りまくって何が為替で有利だ。インフレ起こしてるだろうが」

 「平均年齢は若いし、働き盛りは多い、余裕だろう」

 「余裕があるとは思えん」

 「列強の戦後の復興財源だって大きいさ、受注をアメリカにとられなけば」

 「それにカザーク連合は対中戦と、将来的な対ソビエトで日本の投資を望んでる」

 「イギリスが大国の地位を早急に回復したいのなら日本の建設投資を当てにするだろう」

 「しかし、赤城と加賀は日本海軍の要だ」

 「いくら金を積まれても虎の子の空母二隻を売るわけにはいかない」

 「ああ、赤城、加賀の対価は金じゃなくて、アラビア海の小島だそうだ」

 アラビア海の地図を見せられると、

 カタールとアラブ首長群の中間に赤字で囲んたダルマ島があった。

 三宅島(50ku)よりやや小さい島だったもののアラビア海の要衝に違いない、

 「「「「・・・・」」」」

 「今度は、別個に借金が付かないだろうな」

 「艦上機込みの空母二隻と小島が等価だよ」

 「「「「・・・・・」」」」

 「どうする?」

 「海凰の完成は2年後だからな」

 「売るならいまだと」

 「またそういう訪問販売のようなことを・・・」

 「しかし、何かあって、空母を派遣するより割安だと思うが」

 「「「「・・・・」」」」

 「2番艦の雷凰(らいおう)の建艦が決まり次第だと思うが」

 「「「「・・・・」」」」

 「国防は現状でも大丈夫だよな?」

 「潜水艦は最強だし、航空戦力も最強だろう。原子爆弾はあるよ」

 「原子爆弾は使いたくない」

 「しかし、開戦となったら使うよりなかろう」

 「それはそうだが空母がなかったらアメリカが仕掛けてきても対応できない」

 「1式陸攻の編隊を飛ばせば怖気付くと思うが」

 「「「「・・・・・・」」」」

 

 

 

 イスラエル(113070ku)

 エルサレム

 総人口は600万に達し、

 主流派は、ドイツから追い立てられたユダヤ人が占めていた。

 上空を三式指揮連絡機が飛び、

 数百両のソミュアS35騎兵戦車が点々と配置され、

 残ってるパレスチナ人とヨルダン人を威圧し、追い出していく、

 日本人のビジネスマンたちは、ユダヤ資本から仕事を受注していく、

 軍需の発注は多く、陸軍、空軍、海軍の設備のほとんどは日本から持ってきたものが占めていた。

 商船から資材と機材を降ろしていた。

 船員たち

 「意外に緑が多いな」

 「ドイツ系ユダヤ人は、森林国家だからね。植樹してるのだろう」

 「しかし、まじめだな。もう港湾を建設してるよ」

 「国力が大きくなったらフランス領レバノンかイギリス領イラクに攻め入るかもしれないな」

 「戦争でユダヤ人の金融支配は大きくなって、イギリス人とユダヤ人は反目が強まってる」

 「ユダヤ資本は、イスラエルを強化したくても人材が足りないし」

 「人材を強化しようとすれば人材、資材、資本を持って来なければならないだろうし」

 「アメリカとイギリスの手綱を緩めることになるかもしれない」

 「だけど、国を失って1800年以上」

    ※西暦73年 マサダ砦陥落

 「世界に散らばっていた民族が言葉も違うのに集まって建国だからな。異様な光景だ」

 

 

 紙幣が呪符とするなら、

 世界はドル、ポンド、円、マルク、元、フランなど幾つもの呪符が作られ使われていた。

 呪符を使って物を生産し、呪符を使って人を労働させ、

 利権を構築して金のなる木を構築し、社会を支配していく、

 国家同士も国産の呪符を用いて戦い。

 そして、排他的、法的な規制があったとしても他国の呪符を使えば効果があった。

 要は使い方と呪符の量だった。

 上海 ユダヤ人街 サッスーン・ハウス

 「揚子江沿いの市場は、ほぼ押さえました」

 「中国人は思ったよりドルとポンドが好きなようだ」

 「法幣が信用できないのでしょう。35年にできたばかりの不換紙幣ですから」

 「法幣を紙屑にして、法幣を買占め、法幣の価値を上げれば大金持ちになれるな」

 「「「「「あははははは」」」」」

 「問題は、中ソ戦争の趨勢だと思うが」

 「カザーク連合は、新札を作るのか」

 「日本から印刷機を購入していたから、新札を作る動きはある」

 「日本の印刷機か」

 「日本の印刷機は、精度が上がってると聞いている」

 「ドイツの印刷機より上なのかは、確認していないが」

 「カザーク連合は、現状戦力でも戦えるだろう」

 「しかし、生産部門は、日本に頼るだろうな」

 「我々が参入したいが」

 「忌々しいことに地理的に有利なのは日本だよ」

 「欧州戦争は?」

 「現状、ドイツは絶望的だが、戦後再建でユダヤ資本に対し門戸を開く可能性がある」

 「しかし、対日貿易が開かれると我々の資本が食い込む前にドイツ経済が持ち直すかもしれない」

 「日本は、我々の資本に依存してる部分が強い、それほど強行する力があるだろうか」

 「日本が国内市場以上の国力を得ようとするなら海外市場を狙うよりなかろう」

 「我々の鼻先を通らなければならないし」

 「独自に中東、カザーク連合、アルゼンチンで利権を作ってるようだが大したことはあるまい」

 「だが、日本の排他的規制が強い、いくら札束を切っても日本の中枢に食い込めないでいる」

 「むかしは、朝鮮民族で少しばかり政策誘導できましたが強制移民され、ほぼいない」

 「だがイギリスは日本の空母二隻とアラビア海の小島を交換しようとしているが」

 「日本軍をイラク、イランにけしかけさせて、日本を疲労させようって腹だろう」

 「ふっ 日清、日露戦争でやった手か、あの単細胞猿どもがこちらの手に乗るかどうか・・・」

 「油田があるから乗るだろう。手を出したら武器弾薬をアラブに供給し」

 「日本軍をイラクとイランで疲弊させて、アメリカが日本のとどめを刺せばいい」

 「日本を降せば、アジアで我々に逆らえる国は存在しなくなる」

 「しかし、日本はまだ利用価値があるのでは?」

 「利用価値があることと支配力は関係ないだろう」

 「日本を利用し続けるには、日本の足場が必要だ」

 「何としても日本の規制を緩和させなければ」

 「権力構造を守るため規制を緩和させようとしないのでは?」

 「日本は利権主義だからな」

 「財閥、閨閥、学閥、新興閥がコネと談合で利権を作り、皺寄せが弱者に向かう」

 「当然、日本社会に反発する勢力が生まれるし、我々の味方になるだろう」

 「なかなか、我々の代理人が見つからないですがね」

 「こういうのは継続だよ」

 「いったん、食い込めれば、そこから切り開くことができるだろう」

 

 

 ドーバー海峡

 世界最強のグリフォン・スピットファイア8機とフォッケウルフTa152戦闘機8機が入り乱れて戦う。

 どちらも侵攻を目的をしておらず、制空権を固持するためだけの空中戦だった。

 やや、スピットファイアが苦戦していたが双方とも高度な戦術を駆使し、

 5分後、スピットファイア4機とフォッケウルフ6機が帰還していく、

 こういった戦訓を基に様々な要素を加え、大作戦を検討していく、

 

 イギリス リヴァプール港

 戦艦長門、ロドニー

 戦艦キングジョージ5世

 空母イラストリアス

 そして、廃艦となったアメリカ戦艦ニューヨークとテキサスがイギリスに売られ並べられていた。

 長門 艦橋

 「作戦は延期されそうだ」

 「原因は?」

 「ドイツ輸送船団が封鎖線を突破してタイガー戦車20両を陸揚げしたらしい」

 「なぜ、突破された」

 「霧を利用されて、囮に引っかかったらしい」

 「タイガー戦車は、そんなにまずいのか」

 「北アフリカ戦線の戦訓でタイガーとM4戦車の交換比は1対20だ」

 「タイガーが遮蔽壁から出て突撃してくるのなら1対15くらいにはなるが」

 「モントゴメリー将軍はタイガー戦車を見つけたら99式襲撃機で爆撃するか」

 「重砲を雨のように撃ち込むか。シャーマン ファイアフライを10両くらいぶつけてると聞いてる」

 「例の新型戦車は、まだ試作生産中で北アフリカ戦線に送ってる」

 「日本でも試作してるそうだが」

 「国内で使いたくない重量でごねてたらしいが、何とか、作らせることができたらしい」

 「どちらにせよ。足場がない状況では絶望的だな」

 「それと主力のTa152もシェトランドに配備されつつあるようだ」

 「Me262は?」

 「配備されていてもおかしくはないが確認されてない」

 「しかし、延期したら状況は良くなるのか」

 「それに航空戦力は、質と量の総合力で決定的でないと思うが」

 「より強いMe262の出現率が低い理由は?」

 「やはり、エンジンの寿命が短いのが最大の問題でしょう」

 「必要な時以外、飛ばしたくないのでは?」

 「圧倒的な航空戦力がないとシェトランドとフォークランドの回復は難しいか・・・」

 「日本に空母購入を打診したはずだが」

 「流石に、ごねてるよ」

 「金の問題じゃないそうだ」

 「アメリカから買えないのか」

 「戦艦と空母のレンドリースは議会が納得しないそうだ」

 「アメリカは対日参戦の夢でも見てるのか?」

 「それもあるがね」

 「高速戦艦4隻がカリブ海に配備されて、アメリカの反ユダヤ勢力が警戒している」

 「いくらユダヤ人が戦艦を持っていても採算の合わない戦争をするわけがないだろう」

 「むしろ、ユダヤから戦艦を買いたいよ」

 「1800年ぶりに再建した海軍が世界最強の高速戦艦部隊だからな」

 「手放したくないってか」

 「しかし、一番痛いのは、ソビエト連邦とカザーク連合の分離独立だな」

 「あれで東側の戦力が西と南に配分されている」

 「アメリカの義勇空軍がいなければ、戦力的に負けていたな」

 「アメリカがいつまで味方でいてくれるやら」

 「アメリカ軍将兵に妙な動きは?」

 「いえ、今のところは・・・」

 「あの国は、財界が戦争したがっているだけだが、金の切れ目が縁の切れ目だろう」

 「ソビエト連邦とカザーク連合は国境線が定まっていないようだが戦争にならないのか?」

 「モスクワの報告では、スターリンが死んで全国民が喜んでてな」

 「平和を謳歌してるのに戦争で死にたくないらしい」

 「反共勢力はカザーク連合に向かってるそうだ」

 「なぜ?」

 「ロシア人の郷愁だろう」

 「実態はともかくカザーク、コサックの意味は自由の人、冒険家、放浪者だからな」

 「じゃ カザーク連合は民主主義国家になるのか?」

 「外務省は、ジューコフと接触してるが、いまのところ政体がどう動くか、わからん」

 「しかし、中央域がどちらに転ぶかで戦争になるのでは?」

 「ロシア人が自ら進んで戦争するのは戦力比が10対1以上の時だし」

 「いまのところ、ソビエトもカザークも独裁から民主化に進む趨勢が強いそうだ」

 「どちらにしろ、ドイツ人が気を利かせて東征でもしない限りソビエトは当てにできなくなったわけだ」

 「「「「・・・・・・」」」」

 「問題は、どうやってシェトランドとフォークランドを再占領するかだ」

 「通商破壊艦とUボートによる損失が大きすぎる」

 「水上艦艇はともかく、それ以外の戦力比が不利だ」

 「ネバダとオクラホマはまだ廃艦にならんのか」

 「いまロビー活動中と聞いてる」

 「とにかく上陸作戦では、戦艦がいる」

 「ロケット弾は?」

 「もっと、生産してからの方がいい」

 

 

 イギリス領ペナン

 コトヌ

 イギリス貴族を中心にした封建的な世界だった。

 黒い雷雲が低く垂れこめ、雷が轟いていた。

 城のような邸宅の一段高い王座に老紳士が座り、

 ガラの悪い男たちが立っていた。

 「高千穂の侵入は」

 「まだ難しいニダ」

 「金は渡したはずだ」

 「日本人は異常なほど朝鮮人を嫌ってるニダ。入国禁止ニダ」

 「日本人に成り済まして潜入しろ。高千穂に足場を作って内情を調べるんだ」

 「わかってるニダ。次は必ず成功するニダ」

 「そして、日本人を騙して分裂させて対立を煽って狂わせて支配してやるニダ」

 「ふっ 期待してるぞ」

 「任せるニダ」

 「マ・ジヨ、グ・ロキ、ワ・ルサ。行くニダ」

 「「「行くニダ」」」

 「その前に失敗したお仕置きだ」

 床が開くと、

 「「「「あいごーーーーーーー!」」」」

 4人は地下の豚小屋に落ちてしまう。

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です。

 この戦記の日本原子力行政は、採算性を考えてません、

 国軍、教育と同じ掛け捨て投資で、建設費は発電比で十倍以上でしょうか。

 少数のトリウム原子炉で発電し、

 使用済み核燃料を使った崩壊熱発電に移行していきます。

 発電量は1パーセントほどですが、自然対流型で外界と切り離されます。

 

 間伐材(バイオマス)は年間、日本900万t、半島500万t、高千穂2800万tで4200万t

 使い道のない葉材は、半分の2100万tくらい、

 さらに石油とのエネルギー換算は15分の1くらいなので140万t分でしょうか、

 間伐材発電と都市から出るゴミ発電を合わせれば足しになりそうな量です。

 この戦記の日本はエントロピーの法則に逆らわず、

 燃やせるものは燃やしてエネルギーに変えることにします。

 

 

 ラストはタイムボカン風にオチです

 面白いのですがパロディなので続けるかは不明です。 

 

 

 ユダヤ海軍

 戦艦8隻、小型空母1隻、強襲揚陸艦6隻、軽巡17隻、駆逐艦36隻、

 ルベン(金剛)、シメオン(比叡)、イッサカル(榛名)、ゼブルン(霧島)、

 ダン(伊勢)、ナフタリ(日向)、ガド(扶桑)、アシェル(山城)、

 ガリラヤ(鳳翔)

 メギド(神州丸)、アララト、シナイ、オリーブ、モリヤ、ゲリジム、

 アフェク(天龍) カナ(龍田)

 ツロ(球磨) アコ(多摩) ハモン(北上) ハロシェテ(大井) ケデシュ(木曾)

 シロ(長良) キネレテ(五十鈴) ハマテ(名取) ラマ(由良) ラマ(鬼怒) リモン(阿武隈)

 ヨクネアム(川内) ガテ・ヘフェル(神通) シムロン(那珂)

 サリテ(夕張)

 峯風、澤風、沖風、島風、灘風、矢風、羽風、汐風、

 秋風、夕風、太刀風、帆風、野風、波風、沼風

 神風、朝風、春風、松風、旗風、追風、疾風、朝凪、夕凪

 睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、

 文月、長月、菊月、三日月、望月、夕月

 

 

 

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第13話 1944年 『紙幣は呪符だから』
第14話 1945年 『銃声とカザーク再燃』
第15話 1946年 『高千穂と扶桑は、市営崩壊熱発電で』