月夜裏 野々香 小説の部屋

       

仮想戦記 『白亜の遺産』

 

 第17話 1948年 『利権を守って国と民を滅ぼす』

 アラビア海 達磨島(50ku)

 地下が掘られ原子力発電所が埋設工事が行われ、

 地上には鏡の屋根と太陽光熱を集める巨大な集光熱塔が建設されていた。

 5mほどの高さの鏡の屋根は太陽を追いかけて動いていくようになっていた。

 膨大な電力で水を作り、

 送電線と水道を首長連合とカタールに伸ばす計画で、

 代償として油田掘削権を得る計画だった。

 政府関係者たちが屋根の下で、海に向かって釣り糸を垂れていた。

 熱砂が混じったような熱気が汗をあっという間に乾かしていく、

 大きめのバケツにはキンメダイ、アジ、イサキ、ハタが入っていた。

 極彩色の魚が釣れた。

 「なんじゃこりゃ」

 「熱帯魚だろう」

 「色からして食えねぇ」

 「水族館を作ってるから、そこに入れちゃえよ」

 「その手も・・・あるか・・・」

 「しかし、意外に食べられそうな魚がいるな」

 「本当に食べられる魚かは、現地の人に聞かないと」

 「まぁ 焼けば何とかなるだろうが、毒を持ってる魚は怖いな」

 「ところで、地表は樹木を植えるの」

 「先に整地しないといけないが」

 「鏡屋根が5mくらいだからサボテン林を作れるかもしれない」

 「サボテン林ねぇ」

 「食用を植えたい」

 「淡水化で水を作ったとしても、この暑さだからな・・・」

 「太陽がこれほど恨めしく思ったことはない」

 「それで、月や星を国旗にするんじゃないの」

 「地下に植えろよ。涼しいから水田の蒸発も防げる」

 「・・・まぁ 地下に隠れたいような暑さではある」

 「しかし、地下は涼しいかもしれんが大変だな」

 「太陽光を集めて地下に引き込むと明るいけど」

 「そんなに明るいのかね」

 「鏡の反射回数もよるけど原子炉の最下層まで光が届いたし」

 「太陽光は電灯の10倍くらい明るい」

 「さすが赤道近く、しかし、モンスーンとか砂嵐は?」

 「その辺は問題かな。鏡の橋梁も強くしないと」

 「しかし、そこまで投資する価値が達磨島にあるのか」

 「中東は油田があるし、油を買って流れた資本を電力と水で回収できるかもしれないだろう」

 「まぁ それはそうだが・・・」

 「何より、イギリスは弱体化して、中東の独立運動は強まってるからな」

 「高みの見物?」

 「アラブが独立したいのなら独立してもいいよ」

 「普通に取引すればいいだけだし」

 「イギリスが日本をアラブにけしかけようとしてるけどな」

 「アングロサクソンは、日本を滅ぼしたくてうずうずしてるのだから」

 「アメリカ人やイギリス人の口車に乗らない方がいいと思うね」

 「というより、こんな僻地で消耗したくない」

 「だけど、オランダ領インドネシアとフランス領インドシナは軍事的に強化されつつある」

 「ていうか、日本がD520とソミュアS35を売ったからだろう」

 「自分で自分の首絞めてどうするんだよ」

 「モノが売れたら雇用と生産で助かるし」

 「外貨があれば資源を買えて、国内産業を維持できて大きくできるじゃん」

 「中カ戦争と欧州復興事業は好調だし」

 「そのお金が日本、扶桑、高千穂、達磨の公共投資金になってる」

 「勢いがつくとやめられないか」

 

 

 ワシントン

 白い家 悪い人たちの巣窟

 「はぁ やはり日本の経済封鎖は無理か」

 「日本を経済封鎖する口実がありませんからね」

 「高千穂を放棄しろというのは?」

 「残念ながら高千穂は自立経済に移行してますし」

 「中東権益のおかげで、日本の石油自給率はそこそこ高いのです」

 「仮に圧力をかけたところで、反米諸国勢力は日本に資源を輸出しますよ」

 「しかし、貿易が増えると日本経済は強くなるばかりだ」

 「自動車産業など石油消費が増えれば、それがウィークポイントになるのでは」

 「だが日本の近代化は早過ぎる」

 「我々 工業力は、アメリカ合衆国に次ぎ、白人世界と変わらないではないか」

 「それより、日本の原子爆弾の開発は本当なのかね」

 「輸出入資源で判断すると、日本の鉛の輸入が増えてますね」

 「ふっ 鉛で戦艦でも作るつもりか」

 「鉛で放射線を防ぐのですよ」

 「じゃ 日本は本当に原子爆弾を?」

 「可能性は大です」

 「なぜ、もっと早く気付かなかった」

 「これまで渡した資料にも鉛の輸入増加傾向は書かれてますよ」

 「「「「・・・・」」」」

 「しかし、この量は多過ぎますね」

 「ひょっとすると、研究中の原子力発電所もしてるのかもしれません」

 「まさか・・・」

 「敢えて言いますが、日本の原子爆弾開発は、これまで何度か言及されていました」

 「じゃ あれは、口先だけの脅しじゃなかったのか」

 「口先も何も、まだ検証していない放射性物質の特性を言い切りましたからね」

 「原子爆弾開発で日本に負けてる可能性は大ですよ」

 「日本潜水艦の探知は?」

 「水上艦艇が日本潜水艦の探知に成功したことは、この5年間ありません」

 「5年・・・」

 「40年以降の新造潜水艦から探知が困難になってましたが、静粛性が増してます」

 「いったい、どういう経緯でこうなった。猿のくせに、あり得んだろう」

 「欧州戦線の流れを変えた長門は日本が1920年に建造した戦艦ですし」

 「日本が国産で戦艦を初めて建造したのが1910年の薩摩です」

 「「「「・・・・」」」」

 「猿どもは、相当に優秀ですよ」

 「それと停戦協定で見せた日本の新型戦闘機」

 「エンジンはダブルワスプを使用してますが、機体性能は最高峰と言えるでしょう」

 「エンジンのライセンス数と機体数が不自然だったのは、あの機体のせいか」

 「しかし、心臓部のエンジンはライセンス生産もの」

 「自力でプロペラエンジンを開発できるだけの知能はないだろう」

 「それに開発中のジェット戦闘機ほどではない」

 「日本はジェットエンジンを開発していないだろうな」

 「アルミ、ニッケル、チタンなどの希少資源購入は増えてますよ」

 男たちはいっせいに希少資源の項目を調べる。

 「「「「・・・・・」」」」

 「それと、日本がナイロン製品の輸出を打診してきましたよ」

 「日本の化学工場は軌道に乗ったようですな」

 「なんで日本産業が、こんなに強くなったんだ」

 「低賃金と交易でしょう」

 「戦争特需で日本経済は著しく強大になってますし」

 「フランス領インドシナ、オランダ領インドネシアの建設需要も大きく」

 「今後はイギリスとドイツの復興需要も大きいでしょう」

 「我々の経済力を維持するためには欧州に資金を貸出し」

 「欧州に我々の商品をかわせることで維持しなければならないが」

 「欧州はアメリカから買うより日本から買う方を優先する趨勢にある」

 「日本は目障りだ」

 「しかし、日本が原爆を保有してるとなると対日戦の演習も変わる」

 「日本は本当に原爆を持っているのか」

 「核爆発の実験をしたという話しは聞いたことがない」

 「仮に核爆発させられなくてもです」

 「放射性物質を詰め込んだ爆弾を敵陣地に落とすだけで十分脅威なのですよ」

 「化学兵器と違って、数万年は放射線を出し続けますから」

 「「「「・・・・・」」」」

 「日本の情報を集めよう。日本への外資参入は?」

 「規制があるようですが、それさえ突破できれば、参入はできるはずです」

 「しかし、中国と違って利益率が低いので・・・」

 「事業が軌道になるまで国が一時金を出そう」

 「何としても日本の情報を集めたい」

 

 

 日本

 国家を守る巨大利権は利権内を保護し、利権外を敵とする傾向があり、

 貧富の格差と不公平感を増すため、国民の幸福感と比例しない、

 しかし、一定の利権構造を保持できなければ巨大テクノロジーを作ることができず、

 欧米諸国と対峙しえないのも事実だった。

 中東利権によって得られた石油は日本のエネルギー需要を支え、

 電力量に比例して生産力が増し、社会基盤が大きくなり、消費も増えていく、

 経済の足を引っ張っているのは、気薄になった人口であり、

 労働・消費・市場集約が困難になった国情にあった。

 そして、外需の利益が莫大な公共投資の財源と設備維持費を支えていた。

 総理官邸

 「貿易増大に伴って、国際間銀行設立協定を結びたいという動きがあるようです」

 「100万都市に1行ほどの割合ですが」

 「銀行・・・」

 「確かに観光旅行で入出金できたら便利そうだが、日本の銀行だけ強盗に遭いそうだな」

 「問題は外国で不正に金を得ても外資銀行に入金してしまえば守れることに・・・」

 「そ、それは中国の租界でやってることを・・・」

 「租界の日本銀行は日本に有利になってます」

 「しかし、列強間の銀行設置は、お互い様になるでしょうが・・・」

 「んん・・・本当に観光の行き来が増えるの」

 「アメリカ、イギリス、ドイツは日本観光を増やしたがってるようです」

 「なんで?」

 「核関連技術の情報収集では?」

 「それは困る」

 「メインの原子力発電所は扶桑と高千穂で1基ずつ地下にあります」

 「しかし、人や物の出入りがあるので発見されやすいでしょう」

 「残りは埋設してる崩壊熱発電ですから発見されにくいものです」

 「建設現場を見られるとか。製造工場を見られない限り問題ないかと」

 「見られる可能性は?」

 「個人証明でDNAを利用してるので発覚は限りなく低いと思われますが」

 「アメリカでは日本の核保有を以前から疑ってる節があります」

 「疑われるのは、誰かが漏らしたと?」

 「「「「・・・・」」」」

 「か、可能性の範囲ではありますが、資源の輸出入で推測したかもしれません」

 「そんなもので本当に推測できるものなのか」

 「流通事情もありますし、白人が発電元まで確認しに来たことも・・・」

 「核保有を公表した方がいいのだろうか」

 「情報公開を要求されると思います」

 「下手をすると白亜まで行きつくかもしれません」

 「それはまずい」

 「扶桑や高千穂は、崩壊熱発電で安定したバックアップがある」

 「しかし、内地は、水力発電でありないし、火力発電の依存が強くなる、どうしたものか」

 「地熱発電を地道に開発していくか」

 「沖合の浅瀬に洋上風力発電を作るくらいでしょう。安定とは言い難いですが」

 「扶桑からの送電があてになるのでは」

 「しかし、扶桑も高千穂も列島に対してライバル心を燃やしてますからね」

 「弱みはいかがなものか」

 「同じ日本人が地域ごとで権力争いすることもなかろう」

 「権力争いは人の数だけ起こるよ」

 「日本の場合、最大公約数的に日本と扶桑と高千穂の軋轢が強まってるだけだ」

 「どちらにせよ」

 「議会における扶桑席、高千穂席が増えていく趨勢は食い止められんよ」

 

 潜水艦の性能と戦力が増強するにつれ、

 水上艦艇は、上陸作戦や対地攻撃などを除き、

 威力、国威以上の存在価値を見い出しにくくなっていた。

 それは、潜水艦の性能で突出した日本海軍将兵の意識でしかなく、

 海軍の主力は戦艦と空母といった世界の一般常識とかけ離れ、

 戦略的選択肢となっているドイツ海軍とでさえ、認識を異にしていた。

 国防上の価値は小さくても、

 一定の水上艦艇を保有しなければ潜在意識下と、

 一般常識的なパワーバランスが狂ってしまい、

 上陸作戦能力の可否も国際外交戦略上の後ろ盾となっていることから、

 必要な水上艦艇を整備しなければならなかった。

 呉

 巨大空母が海上に浮かぼうとしていた。

 アングルド・デッキと4基のカタパルトが備えられたそれは、間違いなく世界最大最強の空母だった。

 

  65000t級海凰型空母

  排水量65000t/満載85000t 全長336m×全幅76m×吃水10m

  4サイクルディーゼル機関30000馬力×8基 240000馬力電気推進

  ナトリウム小型原子炉10000kw(7500馬力)×4基 30000馬力電気推進

  27万0000馬力 速度34kt 航続距離 30000海里+α

  艦上機 100機〜200機   71口径40mm砲×40基

 

 日本史上最大の巨大構造物が建造されつつあった。

 それは人の手で加工された鋼を結合させたものであり、 

 巨大なブロックを合わせ、隔壁のボルトを固定し溶接し、

 艦内の数万に及ぶ配管と配線をつなげていたのは小さな人間だった。

 乗組員たちと最終作業員たちが混在し、

 最後の就役まで一つ一つを調整しなければならなかった。

 艦橋

 「久しぶりの軍艦か」

 「ずっと民間船に乗ってましたからね」

 「おれは艦隊・地上交代勤務制に慣れ過ぎた」

 「この艦ならずっと乗っていたいですね。通路は広いし、部屋も広い」

 「たぶん、日本と高千穂を行ったり来たりすることになるだろうな」

 「低速なら燃料を消費しなくていいのがいいですね」

 「しかし、ようやく完成か。長がったが、戦闘機は?」

 「ジェット戦闘機は、ほぼ開発してるので、就役まで定数が揃うかですね」

 「練度があるから、もっと早くから訓練させるべきだろう」

 「機体も船体も高過ぎですよ」

 「新規規格と複合素材を使い過ぎたのかもしれん」

 「モジュール機構と床下配線は民間ビルでも使いますし、損はしないかと」

 「例の光ファイバーはちゃんと使えるのか」

 「ええ、悪くないようです」

 「まぁ 何かあっても伝声管があればいいか」

 

 10000t級蔵王型巡洋艦

  排水量10000/満載15000t 全長200m×全幅20m×吃水6.2m

  4サイクルディーゼル機関30000馬力×4基 120000馬力電気推進

  ナトリウム小型原子炉10000kw(7500馬力)×2基 15000馬力電気推進

  13万5000馬力 速度30kt 航続距離 10000海里+α

  60口径155mm連装砲4基 60口径40mm砲×10基

  魚雷4連装2基 爆雷40発

 

 大型艦艇建造は膨大な工業基盤と、莫大な予算と、年月を必要とし、

 国民の税負担は深刻なものになっていく

 当初、日本と高千穂は別個に独立した中小艦艇艦隊にしようとしたところ

 アラビア海の達磨島の会得で計画が練り直され

 大型艦艇艦隊構想が主流になっていた。

 

 

 オランダ領インドネシア

 オランダ人と東欧人の入植が急増し

 インドネシア人は徐々に数を減らしていた。

 ジャカルタ港

 日本商船から物資が降ろされていく、

 港の一角に日本区画が作られていた。

 インドネシアの映像が幕に映されていた。

 「酷いな。現地人は奴隷じゃないか」

 「このままだと、インドネシア人は遠からず、絶滅させられてしまうぞ」

 「白人に支配された植民地は、どこも同じだよ」

 「残念ながら有色人種で白人諸国と対抗してるのは日本だけのようだ」

 「「「「・・・・」」」」

 「何とか東南アジアを助けることはできないのだろうか」

 「というか、日本そのものが白人世界に目をつけられて、危機的状況になるのだが」

 「次は日本なの?」

 「というより、有色人種で残ってる脅威は日本だけ」

 「地球を白人帝国にするのは面白くない」

 「とはいっても日本が有色人種の独立のため犠牲になるのは面白くないだろう」

 「だが、このまま、唯一の有色人国家で日本が孤立してしまうのは面白くない」

 「「「「・・・・・」」」」

 「現地民も近代化していくうえで産業進出している」

 「戦争でオランダ人と東欧人も弱っているし」

 「東欧人の一部は、現地民と組む動きがある」

 「じゃ そいつらと組んで?」

 「んん・・・白人はあまり信用できない」

 「しかし、白人同士の不和を利用するパイプは必要だろうな」

 

 

 ドイツ海軍 戦艦ハルク(クレマンソー)

  排水量35000t/47548t

  全長247.90m×全幅33m×吃水9.70m

  馬力150000hp  最大速力30.0kt(56 km/h) 航続距離14kt/8500海里(15740km)

  45口径380mm4連装砲2基 45口径100mm連装高角砲6基

  60口径37mm連装機関砲8基

  水上機 3機

  V3誘導弾ロケット 垂直発射サイロ15基

 艦橋

 「艦尾砲塔剥がして、V3は寂しい気もするが」

 「射程は320kmで赤外線誘導弾ですから上手くいけば当たりますよ」

 「着弾点付近に艦艇がいたらな」

 「V3は、むしろ対地攻撃用だ・・・」

 「艦長。戦艦デューク・オブ・ヨークです」

 「ふっ 外洋に出たとたんに追跡か」

 「停戦したというのにイギリスも暇なことだ」

 「結局、シェトランドはイギリスに取られ」

 「マルビナス諸島はドイツ占領のままですか」

 「アルゼンチンに渡すと、イギリスに核攻撃されて奪われる」

 「それならドイツ領のままがいいという結論だろう」

 「とりあえず、アルゼンチンを経由して日本と交易になるのですか」

 「お互い核で睨み合ってるといっても、外洋はイギリスが強い」

 「日本と交易するならアルゼンチン経由が上策だろうな」

 「しかし、主砲のない艦尾側に付かれるのは面白くないですね」

 「フランスの建造思想はどこかおかしい」

 「ヴィシーフランスはインドシナにリシュリューとジャン・バールを配備する気らしい」

 「確かに戦艦を使いやすいのは地中海より、南シナ海でしょうけど」

 「インドシナ配備なら、欧米から優遇処置が取られるのだろう」

 「そうなのですか?」

 「対日封鎖で有色人世界を封殺する計画なのかもしれない」

 「しかし、インドは・・・」

 「ふっ インドは独立するだろうな」

 「そうなったらイギリスは、国力を喪失する」

 「植民地は維持できなくなるだろう」

 「そうなると日本の植民地も怪しいのでは」

 「高千穂の日本人人口は2500万人を越えてるそうだ」

 「2500万人・・・」

 「高千穂で生産して消費して余ったモノを国外に売る」

 「高千穂の自衛力が程度かわからんが、近代化が進んでるらしい」

 「では、アルゼンチンを介せば高千穂とも交易ができると」

 「たぶんそうなるだろうな」

 

 

 台湾州

 台湾人は日本教育が進み、国際的にも日本人として扱われていた。

 水力発電所と火力発電所が建設され、

 鉄道が敷かれ、港湾が整備され、

 道路、上下水道、送電線が伸びていく、

 公共設備は国家基盤であり、

 それ以外の需要は社会資本、民間投資が中心だった。

 不換紙幣は外需取引で弱くても、内需中心で発行できる金融であり、

 インフレ傾向でも紙幣を必要なだけ発行し、

 公共設備を広げていくことができた。

 そして、公共性が高くても技術的な分野で国外に後れていた場合、

 外資企業からライセンスを求めるよりなかった。

 それまで、プラット・アンド・ホイットニーR1830、R2800をライセンス生産していた日本も

 プラット・アンド・ホイットニーR4360に移行する段階でライセンス生産が拒否され、

 台湾にプラット・アンド・ホイットニーの支工場が作られることになった。

 日本が工業上、欲しているのは心臓部の航空エンジンくらいで、

 アメリカが日本に定着させられる企業は航空エンジンメーカーくらいだった。

 複雑な入管規制のほとんどが省かれ、

 工場が完成すれば社員の半分は日本人で、残りはアメリカ人になるはずだった。

 アメリカ人たち

 「日本の工員は?」

 「いいよ。マニュアル通りやってくれるし、堅実で安定している」

 「日本は、R4360エンジンを例の新型戦闘機に装備するらしい」

 「日本の国産エンジンは?」

 「イスパノ・スイザJのライセンス生産を継続してるくらいだが」

 「じゃ 日本の航空戦力は大したことないというわけか」

 「だが旅客機と輸送機の数は多く、飛行場は拡張している」

 「ジェット旅客機に移行していることを見据えてるらしい」

 「未来志向や採算重視の経営は日本人らしくない」

 「何か隠してる節はあるがね」

 

 

 台湾 高雄飛行場

 瑞風3型

 プラット・アンド・ホイットニーR4360空冷4300馬力 自重4000kg/全備重6600kg

 全長11m×全幅12.4m×全高3.55m 主翼面積26u

 速度900km/h 航続距離2000km

 イスパノ・スイザHS.404 20mm機銃3丁 or ブローニングM2重機関銃12.7mm機銃6丁

 エンテカナードの基本設計は変わらず機体が大型化しただけだった。

 「過給式空冷4連星型28気筒か、すげぇ〜」

 「凄くても外資企業がエンジンを製造してるんだし、気分が悪い」

 「まぁ 機体は日本側で生産してるから問題ないだろう」

 「大問題だ」

 「結局、ライセンス生産は嫌だ。購入は嫌だ言ってたら、外資生産しかないだろう」

 「まぁ 航空機でしか使い道ないし」

 「三菱、中島、川崎は、共同でジェットエンジンを開発してるし」

 「将来的に支障ないと思うけどな」

 「別個に開発させて競争させればいいだろうに」

 「航空産業は利益率が低いし、採算を重視したらしょうがないんじゃないかな」

 「しかし、よりによって台湾で生産とはねぇ」

 「アメリカは外資資本を足場にして、台湾人を味方につけようとしてるんだろう」

 「ライセンス生産の個数もきちんと把握できるし」

 「瑞風を見せたのは初めてだったがエンジンの生産個数で嘘ついてなかったぞ」

 「それよりジェットエンジンは?」

 「半島で試作量産中だよ。予算、後回しにされてただろう」

 「予算は開発建設部門に回されてただけで、生産部門に回されていないだけだろう」

 「あと、高千穂に御所作ったとかで、予算削られたしな」

 「地下で作ろうとするからだ」

 「地下で作れるなら防空で手抜きできる」

 「原子爆弾やトールボーイを落とされるかもしれないじゃないか」

 「迎撃を大型機に集中できるのは有利だと思うね」

 「アメリカがB17とムスタングを中国に売ってるのが面白くない」

 「ドイツはカザークと接近してるし」

 「まぁ 経済的な理由だろう」

 「兵器輸出で財政再建なら産業構造をすぐに変えなくても済むからな」

 

 

 高千穂 (ナイジェリア)

 高千穂州議会

 国権派、民権派、国粋主義、民族主義、自由主義、資本主義・・・

 幾つもの党派が作られていた。

 しかし、本国の高千穂への政策に苦々しく思っている議員は多く、

 主義主張が違っても会話が成立しやすかった。

 「高千穂投資をケチるとは、東京は何を考えてるんだか」

 「東京は、本国に対し高千穂が強くなり過ぎるのが怖いんだろうな」

 「馬鹿が、近代化、資本主義化、民主化した国家社会で幕藩以前の封建式帝王学が役に立つか」

 「東京は、江戸時代以前の権力構造に被れ過ぎてる」

 「その点、アメリカ、イギリスは、契約型社会で近代化しやすかった」

 「物質的なヘレニズムと精神的なヘブライズムが混在した思想が世界に拡大していると思うね」

 「日本民族がその思想に被れていい物かどうか」

 「しかし、中身の日本文化と外側の欧米文化が合わなければ、隙が生まれ付け込まれる」

 「本来の日本は天皇を主軸に、民が支える構造のはず」

 「それを変えず、競争社会を取り入れ、貧富の格差を作ろうなどと」

 「だが、高千穂は公共投資が必要な時期であるし」

 「対外的にもニジュールかチャドを越えて線路をイタリア領リビアまで敷かなければ海上封鎖されると怖い」

 「現状、利権は大きくしなければならないし、止むえないだろう・・・」

 “起立”

 議場議員が起立すると天皇陛下が現れ、

 議長の誓読が始まる。

 “一つ、広く会議を興し、万機公論に決すべし”

 “一つ、上下心を一にして、さかんに経綸を行うべし”

 “一つ、官武一途庶民にいたるまで、おのおのその志を遂げ、人心をして倦まざらしめんことを要す”

 “一つ、旧来の陋習を破り、天地の公道に基づくべし”

 “一つ、智識を世界に求め、大いに皇基を振起すべし”

 “我が国未曾有の変革を為んとし、朕、躬を以て衆に先んじ天地神明に誓い”

 “大にこの国是を定め、万民保全の道を立んとす。衆またこの趣旨に基き協心努力せよ”

 議長が五箇条の御誓文と勅語の誓読を終えると、

 議会会衆の奉答書の奉読が始まり

 “勅意宏遠、誠に以て感銘に堪えず。今日の急務、永世の基礎、この他に出べからず”

 “臣等謹んで叡旨を奉戴し死を誓い、黽勉従事、冀くは以て宸襟を安じ奉らん”

 議会が始まる。

 

 

 食糧増産が進むにつれ、余剰作物を利用したバイオ燃料の開発が進んでいた。

 水力発電所が建設され、油田が潤沢にあって火力発電が可能、

 そして、原子力発電所が建設され、崩壊熱発電が自動的に増えていく、

 そういった社会でバイオ燃料が開発されるのは、利権の集約が嫌われたこと、

 そして、アフリカ大陸の発電所として利益を上げ、

 資源を集めるといった野心にあった。

 研究室

 果物、コメ、サトウキビ、キャッサバ、ソルガム、パーム油、イモ、豆類など、

 主要作物のバイオエタノールが研究されていた。

 研究者たち

 「日本の松根油は参考になるがバイオは一つ一つ製造工程が違うのが難点か」

 「あとカビと錆びがあるから防腐剤入れないと」

 「熱量がガソリンの66パーセントしかないからバイオエタノールエンジンは馬力が出ないのもな」

 「ブラジルはバイオ燃料で走る車を開発してるから買ってくれるかも」

 「火力発電で使えばいいんじゃないかな」

 「公衆浴場で使うとか」

 「高千穂は暑いから水浴びとシャワーが多いよ」

 「じゃ スケート場?」

 「まぁ この暑さだから、ないものねだりしたくなるな」

 

 テレビ塔が建設されていた。

 テレビ局は州営で一括運営され、

 細切れされた電波帯と時間帯を入札で一定期間買う方式が取られた。

 ゴールデンタイムの競売は新聞、基幹産業、大手企業が参入して価格が高騰し、

 それ以外の時間帯は競売価格が安いことから、

 省庁公共事業体、中規模同業組合、中規模異業連合が取り合い、

 思想色、企業色の強い宣伝番組を作っていた。

 “のらくろ艦長。空母も売られることに”

 “なんだと、馬鹿政府が、国軍の要まで売り渡すつもりか”

 “もう我慢ならん・・・”

 関係者たち

 「・・・軍艦の売却は、国民が分かれるんだよな」

 「高千穂って軍艦売って手に入れた植民地だろう」

 「確かに軍艦は大事だけど、強く言えない部分があるよな」

 「新型空母の海凰を主役にしたアニメで頼むよ」

 「ただし・・・売るなよ」

 「わかってますって」

 「できれば、2番艦、3番艦、4番艦もな」

 「それは、ストーリー上、面白みがないと裏番組に負けますんで・・・」

 次の時間帯を買った事業者たちがちらほら現れていた。

 「次は、元議員たちの夕べか」

 「ええ、スポンサーからして、鉄道色が強くなると思いますね」

 「また、碌なこと言わないのが揃ってるな」

 「国民は税額だけでなく、税の運用まで難癖つけるときがありますから」

 「内地は、もっと国政に依存してるんだけどな」

 「民間で省庁内部に詳しい者が増えてますので」

 「省庁は各論で強いが、省庁全部を監査していた元議員は総論で強くなる」

 「視聴者は財閥同士のケンカ番組が面白いみたいですよ」

 「あのライバル車をわざとヨロヨロ走らせるドラマか」

 「視聴者は利害を強く意識するようになってるようです」

 

 

 瑞州(ニジェールデルタ)

 河川工事が行われていた。

 石壁、石畳、レンガが組み上げられ、公園が整備されていく、

 エンジン付きのゴンドラが増え、作物や商品を載せて行き来していた。

 数百もの中洲の一つが丸ごと軍の駐屯地になることもあった。

 鶴の恩返し区 駐屯地地下

 48式小銃(6.5mm×50)

 銃身長419mm/全長955mm (起剣時1309mm)

 重量3965g  銃口初速 708m/s 発射速度500発/分

 各企業社員、各大学生が順番に軍練講習を受け、試射を終えると、

 次の体験入隊と入れ替わるように、ゴンドラと橋を使って帰っていく、

 「なかなか当たらんな」

 「講習も、まず、兵卒に従うこと」

 「味方だけは撃つな、近づいて撃てが、ほとんどだし」

 「信用ないってことだろう」

 「でもまぁ 戦争は数ってことじゃないの」

 「敵の上陸や侵攻が始まったら500万丁単位で小銃を配布していくっていうし」

 「そんな、イカれた国を侵略しようなんて国は出てこないと思うよ」

 「でも、実のところ、何丁くらい作ってるの?」

 「まだ100万丁って噂けどな」

 「政府にしたら民間人に小銃渡すなんて怖くてできないだろうし」

 「軍隊にしたらもっと、高価な玩具を欲しいに決まってる」

 「でも軍隊を負かしたら即占領できる国と」

 「全国民と銃撃戦しないと制圧できない国とどっちが攻めやすいかってことじゃないの」

 「日本に波及するのかな」

 「日本は国権が強いし、利権持ってる連中が好き勝手やってるからな」

 「庶民を信じれないだろうし」

 「恨みを買ってるってわかってたら、戦争が始まっても銃を配るなんて怖くてできないだろう」

 「もっとも上下より、身内や横同士のドサクサとか、ヤクザが怖いけどな」

 「ヤクザへの配布は最後だろう」

 「最後は現地ナイジェリア人」

 「でもアメリカとか銃社会らしいけど安定してるんじゃないの」

 「いや、参戦しなかったからアメリカ国民層の所得は低いまま」

 「で、企業収益だけが伸びて、貧富の格差が広がったから犯罪率が多いよ」

 「せっかく犯罪が減ったというのに銃社会で犯罪増加は嫌だよ」

 「戦争にならないことを祈るしかないね」

 「だけど、周辺のフランス領は軍事力を強化してるらしいよ」

 「黒人を当て馬にして、高千穂に突撃させるかも」

 「怖い怖い」

 

 

 競艇場

 こういう場は、射幸心の強いアウトローが集まりやすかった。

 「日本はニジェールとチャドのどちらに地下鉄を掘るかで対立しているニダ」

 「日本人は組織の強いモノに巻かれて事勿れニダ」

 「組織同士は足を引っ張ってばかりニダ」

 「権力豚は権力の座に就きたいと思ってるだけニダ」

 「役人も安定した生活を送りたいと思ってるだけニダ」

 「命懸けのやつなんかいないニダ」

 「だから利権を守ってやって、保身を守ってやればいいニダ」

 「利権と保身が強い権力者と富裕層が狙いめニダ」

 「保守も革新も馬鹿ニダ」

 「役職を守ってやるって言えば妥協するニダ」

 「殺してやりたい奴の一人や二人いるニダ」

 「いなくても保守革新に成り済まして攻撃すれば勘違いして憎み合うニダ」

 「インチキしても応援してやるって言えばコロリニダ」

 「次の選挙でも勝たせてやるって言えば保護して貰えるニダ」

 「足場さえ作ってしまえば一点突破ニダ。後は、全面展開ニダ」

 男たちは、ニジュールとチャドで基盤を築き、

 狙いを定めた保守系と革新系に近づいていく、

 「」

 「」

 そして、男たちは警官に追われて逃げ出した。

 「なんで、衆議員に声を掛けたニダ」

 「野心が強そうだったニダ」

 「高千穂の衆議員は1期だけニダ!」

 

 

 

 アルゼンチン ブエノスアイレス

 日本料理店 “イザナギ”

 日本、ドイツ、イタリア、ソビエト、カザーク、アルゼンチン・・・

 非ユダヤ資本系国家の代表が集まっていた。

 「・・・民間機の相互定期航路・空路は良しとして」

 「アルゼンチンと高千穂の空路が期待できるだろう」

 「ヴィシーフランスはドイツの属国なのでは?」

 「ヴィシーフランスは属国でも、植民地はユダ資本の浸透を防ぎきれない」

 「植民地とはいえ、我々の思惑通りに動かしにくい、現地民と戦いになるだろう」

 「イギリスは弱ってるのでは?」

 「アメリカの軍需品は余ってる」

 「国家はそうでもアメリカとイギリスのユダヤ資本の力は増し、反発も強まってる」

 「あと何回か戦争すれば、ユダヤの利権は、さらに大きくなるだろう」

 「アメリカが停滞すればいいのだが」

 「ん・・資本主義と民主主義は、高い知的水準と積極的な労力を得られる」

 「弱肉強食の経済構造は高度な産業を作りやすい」

 「民権の強い社会では、巨大戦艦建造や航空機開発が困難だ」

 「しかし、国権が強過ぎて世襲とコネが強くなっても勤労は得られにくいし」

 「量的な拡大ばかりで、創造性は阻害され新機軸が失われる」

 「積極的な民間活力と競争効果を得ようと思うならアメリカ型社会になると思うが」

 「いや、アメリカは貧富の格差で、暴動が増えてる」

 「紙幣を増刷して公共投資すればよかろう」

 「ユダヤ資本は支配を望んでいるのであって」

 「無造作に社会資本を増やせば、アングロサクソン資本を増やす事になる」

 「アメリカとイギリスの非ユダヤ資本と組むことは?」

 「非ユダヤ系資本とパイプを構築している」

 「しかし、本当に非ユダヤ系なのか、わからないからな」

 「イスラエル海軍の練度が高まってるようだが」

 「あんな小さな人口で維持できる海軍ではないな」

 「イスラエルを建国するまで維持するつもりなのだろう」

 「だが海軍の脅威でアメリカとイギリスの反ユダヤ勢力の潜在的な理由になっている」

 「資金力でユダヤに勝てないのは問題だと思うが」

 「外資を規制するよりない」

 「ユダヤ資本は少数の肉食獣と多数の草食獣に分けるだろうし」

 「ユダヤ資本に有能な人間を高級で引き抜かれたら国家損失が大き過ぎる」

 「特にユダヤ資本にマスメディアを奪われたら悪化良貨で愚衆化させられる」

 「しかし、世襲が進んだ利権社会でも似たような構造になるが」

 「貴族社会の特権維持を利用されて共闘された結果が」

 「第一次世界大戦とワイマールドイツだったよ」

 「ユダヤ資本から奪取するための欧州戦争だったし」

 「次の抗争が起きるとしたらどこが」

 「イギリスはインド独立で経済的に立ち直れず落伍するだろう」

 「アメリカは参戦できず経済は失速気味だ」

 「だから、何かを仕掛けてくると思う」

 「いまは中カ戦争だが、ユダヤ資本が中国に食い込んでる」

 「次の抗争は、アルゼンチンか、高千穂だろう。それかベネズエラ」

 「ブラジルとアフリカ大陸のフランス領は軍事力が大きくなってるし」

 「キュラソー島からベネズエラは近いしな」

 「本命は石油増産の続いている中東なのでは」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 イギリス

 国際社会は力関係だった。

 インド独立後、イギリスは植民地を維持する力を喪失しつつあり、

 国家再建はアメリカに頼るか、日本に頼るかといった状況になっていた。

 ロンドン ダウニング街10番地 首相官邸

 「インドが独立した。今後、税収は半減する」

 「残りの植民地を保持して帝国を維持するか」

 「アメリカに頼って国家再建を行うか」

 「日本に頼って国家再建を行うかだ」

 「イギリス連邦の連携を強化するというのは?」

 「国家経済を立て直すには弱い」

 「日本の返済金は頼りになるが、もっと利権を拡大しなければ」

 「利権と言えば中東ですが、日本は中東に対し、野心を抱いてないようです」

 「現状の石油利権で満足ということか」

 「問題は、日本が核兵器技術を保有してることでは?」

 「我が国も早急に核技術を持たなければ列強の地位から滑り落ちることになる」

 「では、核開発予算を振り分けるしかないか」

 

 

 東シナ海 魚釣島(3.82ku)

 垂直発射格納庫から電柱のようなものが打ち上げられると、

 白煙を吐きながら標的機に命中して爆発する。

 新兵器は発見されにくく、

 費用対効果で効率的な国境に近い離島から配備されることが多かった。

 「ほぉ 命中するもんだな」

 「蒋介石国民軍はB17爆撃機とムスタングの配備で自信をつけてるようですから」

 「これぐらいの防空力がなければ・・・」

  レーダーサイト

  滑走路2000m×3本 三式指揮連絡機3機、三式零式輸送機3機

  50口径94mm対空砲10基 (イギリス対空砲ライセンス)

  垂直発射格納庫90基×3 中隊(140人程度)

 「中国が自分で作れない戦力で日本に戦争しかけてくるとは思えないが」

 「背後がヤドリギのユダヤ人資本だったら、宿主を絞め殺すかもしれないし、何をするかわからんね」

 「むしろ、フランス領インドシナと戦争になるのでは」

 「そうかもしれないが現状は、中カ戦争に集中するはず」

 「日本経済はそれで助かってるが、いくら戦争中でも中国の軍事力が増強しているのがな・・・」

 「司令。崩壊熱発電機の埋設が終わりました」

 「そうか、とりあえず、電気と水は心配なくなったわけか」

 「軍属がやってる菜園と漁業は足しになりますよ」

 「軍属か・・・ずいぶん少なくなったな」

 「若いのは民間に取られちゃいましたからね。もう、軍は衰弱していくばかりですよ」

 「もう、そんなに生産が大切かね」

 「通産省は、戦争中。倍の生産力があったら3倍は儲けられたと・・・」

 「ふざけんな。自分の馬鹿な身内ばかり地位を振り分けて聖域作りやがって、クソ寄生虫どもが」

 「我々もむかしは、やってましたけどね」

 「いい時代だったなぁ」

 「ええ、今じゃ島流しですからねぇ」

 「「「「・・・・」」」」 ため息

 

 

 イスラエル

 ソミュアS35に迫る黒いモノが着弾すると

 液体金属の超高速噴流(メタルジェット)が装甲を貫いて車内を破壊し兵士を殺傷する、

 イスラエルを支配していた最強の軍用車両が携行兵器によって爆破され、炎上していく、

 イギリス保護国エジプトから流れたバズーカと、

 イタリア領リビアから流れたパンツァーファウストだった。

 

 そして、イギリスは、需要があれば代価と交換に供給が起こるのが世の常であり、

 対戦車携行兵器をアラブに輸出すれば

 面倒な謀略や交渉抜きで石油利権が手に入ることがわかる。

 既に植民地防衛の戦力と意欲を失い、

 咬ませ犬と思って期待していた日本が動かなかったことから、

 石油利権と交換にアラブを独立させ、

 石油利権と交換に、有り余った大量の武器弾薬をアラブ諸国に売却したのだった。

 イギリスが中東の戦争需要で戦後再建を図ると、

 ドイツ、アメリカ、フランス、イタリアも右に倣えで武器弾薬を輸出し始めた。

 

 ユダヤ資本は、対立を利用し金儲けし、イスラエルを建国し、

 今度は、列強の金儲けのためイスラエルが踏み台にされたのだった。

 アラブは独立と同時に、イスラエル全土で、アラブ人の反撃が始まり、

 ユダヤ資本は、守るべき祖国を得ると同時に、

 ハイエナのような列強国家群から祖国防衛する苦悩を味わう事になった。

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です。

 中カ戦争は、ぼちぼち、

 フランス領インドシナは、徐々に力をつけ、中国と対立しそう。

 

 

 ユダヤ海軍

 戦艦8隻、小型空母1隻、強襲揚陸艦6隻、軽巡17隻、駆逐艦36隻、

 ルベン(金剛)、シメオン(比叡)、イッサカル(榛名)、ゼブルン(霧島)、

 ダン(伊勢)、ナフタリ(日向)、ガド(扶桑)、アシェル(山城)、

 ガリラヤ(鳳翔)

 メギド(神州丸)、アララト、シナイ、オリーブ、モリヤ、ゲリジム、

 アフェク(天龍) カナ(龍田)

 ツロ(球磨) アコ(多摩) ハモン(北上) ハロシェテ(大井) ケデシュ(木曾)

 シロ(長良) キネレテ(五十鈴) ハマテ(名取) ラマ(由良) ラマ(鬼怒) リモン(阿武隈)

 ヨクネアム(川内) ガテ・ヘフェル(神通) シムロン(那珂)

 サリテ(夕張)

 峯風、澤風、沖風、島風、灘風、矢風、羽風、汐風、

 秋風、夕風、太刀風、帆風、野風、波風、沼風

 神風、朝風、春風、松風、旗風、追風、疾風、朝凪、夕凪

 睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、

 文月、長月、菊月、三日月、望月、夕月

 

 

 

 誤字脱字・感想があれば掲示板へ 

第16話 1947年 『権力者にしてやるニダ♪』
第17話 1948年 『利権を守って国と民を滅ぼす』
第18話 1949年 『ケインズは脂肪肝、ハイエクは動脈硬化』