月夜裏 野々香 小説の部屋

       

仮想戦記 『白亜の遺産』

 

 第21話 1952年 『新しい天と地は』

 ドイツ帝国

 国家権力と国家資本は、二人三脚の関係にあった。

 国家の方針と国内雇用産業と結びつき、祖国に繁栄と闇をもたらした。

 国家権力の自浄能力は民主主義が調整し、

 国家資本の自助能力は需要と供給が決めた。

 執権が失墜すれば与野党が入れ替わり

 企業は投資家、労働者、消費者の利害で盛者必衰を繰り返した。

 必要以上に保護すれば権力構造は癒着して不正腐敗に繋がり、

 必要以上に放任すれば政財界が衰退を避けようと無法化する。

 ベルリンの一角

 非ユダヤ系資本が集結していた。

 彼らの多くは、国家資本主義者で、他国内なら他国内の法に従うことが多かった。

 「中国、東南アジア、アフリカ、ユダヤのごり押しが始まってる」

 「ユダヤ資本は手強いからな」

 「アングロサクソン資本にとっても彼らユダヤ資本は脅威だよ」

 「ユダヤ資本とアングロサクソン資本は同じと思ってましたよ」

 「アングロサクソン資本は国家基盤に依存するが、ユダヤ人は金権を追求する」

 「ユダヤ人は、国家基盤や民族資本に頼ってないのだよ」

 「国際貿易には有利ですな」

 「ユダヤ資本の行動原理は国益に反することが多々にしてあるのだよ」

 「国家は無慈悲なところがありますからな」

 「自らの王国を国家支配から解き放ちたちたいという衝動はあるでしょう」

 「そういう視野ではユダヤ資本に飲み込まれるだろう」

 「アメリカとイギリスの非ユダヤ系民族資本は、劣勢だが結束しつつある」

 「黙示録でいうところの龍は、地に基盤を持つ国家権力で」

 「黙示録のいうところの獣は、海に基盤を持つ国家資本だ」

 「黙示録でいうところの偽預言者は、マスメディアだろう」

 「3者が理性と良識を保つなら調整は機能し、国内軋轢が小さくなるし」

 「理性と良識が低いなら調整は機能できず、国内の軋轢が大きくなり火種となる」

 「しかし、ユダヤ資本の生存基盤は資本そのもので、国家に対する畏敬すらない」

 「むしろ、国家支配のくびきを脱し、獣の本能のまま生きようとするだろう」

 「連中の行動原理は、明らかに我々民族資本と異なり、国益や民益を損なわせるだろう」

 「対ユダヤ資本で防波堤が必要ですな」

 「そのため、リビアと高千穂の間。チャドか、ニジュールに鉄道を必要としている」

 「フランスは?」

 「ごねてるよ。というより、フランス植民地はユダヤ資本の意向が強い」

 「金の力か・・・」

 「格差作って金持ってるのはユダヤ資本だからね」

 「彼らは一社で、我々を合わせたよりたくさんのお金を使えるよ」

 「しかし、ソビエト共産主義の方が感染力が強いのでは?」

 「ユダヤ資本の最終目標は、彼らにとっての黙示録の帰結、新しい天と地だよ」

 「新し天と地?」

 「資本家にとって国家の障壁と規制は邪魔になる」

 「そして、貧しい労働者にとっても国境は邪魔だ」

 「ユダヤ資本は国家制度と国境を破壊し」

 「保護のない、資本家と労働者の単一世界を望んでる」

 「文字通り、新しい天と地になるだろう」

 「国家解体で、企業王国の世界市場と世界労働者ですか」

 「良識とモラルのない、弱肉強食の社会は面白くないですな」

 「特に国権の強いドイツと日本は邪魔だろうな」

 「拝金主義者は国家さえ売るが。国粋主義者は国民を奴隷にしますからね」

 「社会保障と社会福祉は、ある程度認めるべきだろうな」

 「連中は、自分たちの目標の為なら国家を解体するはずだ」

 「アメリカが試金石であり、中国も実験場になってる」

 

 

 工学上、構造物の橋梁計算は、人種、宗教、思想で差別しない、

 橋梁が不足なら壊れやすく、橋梁が過剰なら費用対効果が悪い、

 ドイツ人の技術者は日本の洋上風力発電の絵図と数値を見て首を傾ける。

 絵図と数値で判断すると橋梁不足で脆弱なモノになり、

 津波と台風に堪え得る構造体で計算するならとんでもない金額になった。

 ドイツ工業構造学界の関係者たち

 「日本は、高千穂の油田を持っている」

 「にも拘らず、水力発電、風力発電、地熱発電を重視しているし」

 「対米石油戦略は、日本が進んでいる」

 「高千穂と中東利権はあるが、オイルロードを東南アジアで塞がれている」

 「その捻じれが生んだ電化戦略だろう」

 「内燃機関の縮小は国防を考えると致命的だな」

 「しかし、日本の内燃機関は海外で強いようだが?」

 「国内で底支えできない産業は競争力が低いはず、恐れることはない」

 「電気自動車が伸びるなら、内燃機関は資本力の差で外国製に埋められるだろう」

 「問題は、日本が正面戦力より、経済防衛を重視していることだろう」

 「1930年以前の日本は、こういった発想をしてなかった」

 「日本の原爆と原子力関連技術の存在をどう思うね」

 「隠しているが保有していると考えるべきだろう」

 「海凰と43年以降に建造した潜水艦は原子力が使われてる可能性もある」

 「物真似しかできなかった猿に、そういう頭脳があったというのは甚だ疑問だがね」

 「日本の為替は低めで、賃金も低く設定されている」

 「その上、戦争・建設需要で大儲け、外貨と獲得資源は腐るほどある」

 「輸出を続ければ大変な利益になるはず」

 「しかし、工業力の上昇は納得できないがな」

 「民族的な気質を加算すべきだろう。日本人は従順で組織力が強い」

 「民族的な気質は減算する部分もあるよ。日本人は盲目で即物的だ」

 「だとしたら不可解過ぎる」

 「なにか、欧米以外にモデルにしてるモノがあるのだろうか」

 

 

 アメリカ合衆国

 西海岸のとある牧場

 日本向けの肉は検査が厳しく、牛の育て方も細かった。

 日本がアメリカから肉を買うことに決めたのは、日本人御肉食が増え、

 扶桑北部や北海道だけでは生産量で足りなくなり、

 国外もカザークだけに頼るのもリスクが大きい、と考えられただけだった。

 アメリカは大規模牧場で買ってくれと騒いだが相手にされず、

 日本の業者が天候、水質、土壌、牧草などで決めて、牧場を指定してしまう、

 白人牧場主と日本人

 「なんで、クラシック音楽を流すんだ」

 「牛にいいようなので」

 「まぁ 普通の牛より高く売れるのなら構わんけどね」

 「ところで、牧場を広げてるようですが?」

 「ああ、食べたがるアメリカ人が増えるようなので」

 「それに高千穂の先住民の所得が増えれば、欲しがるのでは?」

 「そうですね・・・まぁ 寒冷地で育てた牛の方がいいですし・・・」

 「しかし、先住民は肉が硬くても味が濃い肉牛の方が好きなようです」

 「日本は、そういう調査もされてるので」

 「高千穂はしてるようですよ」

 「先住民に売れるということは、アフリカ大陸全域でも売れるということですから」

 「ああ、是非、その時は、我が牧場で・・・」

 白人は手もみする。

 人類共通の仕草なのだろうか。

 「まぁ 我が社を経由するということであれば・・・」

 「もちろんですよ」

 「ところで日本は保険制度があって、国民全部。ただで医療が受けられると聞いたけど」

 「ああ、ただってわけじゃないな」

 「保険料は払わないといけないけど、だいたい医療費は10分の1かな」

 「いいなぁ」

 「でも1割負担じゃ軽病軽傷と重病重傷は外さないと保険制度が破綻するからな」

 「中病中傷に集中するか、2割負担にするかだろうな」

 「いや、十分幸福だろう」

 同様の牧場がオーストラリアとニュージーランドにも作られ、

 和牛生産は少しずつ増えていた。

 そして、日本人の牧童が雇われ、

 オレンジ畑と並んで日本の足場になっていた。

 

 

 この時期、日本の自動車と電化製品は品質が良く、

 海外輸出が急増していた。

 日本の輸出攻勢で欧米の国内企業が困窮していた。

 欧米政府は日本の輸出攻勢を制限しようとする国内企業業者と

 良いモノを仕入れたいとする輸入業者の狭間で調整しなければならなくなっていた。

 アメリカが日本からの自動車、電化製品を規制しはじめると、

 日本はカナダとメキシコを経由させてアメリカに輸出する方式を取り始めた。

 カナダ

 高千穂産の南国作物がカナダの店頭に並べられ、

 カナダ人とアメリカ人が物珍しげに買っていく、

 オタワ自動車販売所

 日本人とカナダ人

 「ぅぅ・・寒いな」

 「まだ、10月だからこれからだよ」

 「じゃ もっと保温性の強い車体にした方がいいか」

 「ふっ 日本人は仕事熱心だな」

 「日本はな。高千穂はの日本人は少しのんびりしている」

 「へぇ 同じ日本人でも違うのか」

 「高千穂は資源の上にいるし食糧自給率も高いから、アメリカに近いんじゃないかな」

 「日本のような恐怖心は少ないかな」

 「そういうもんか、しかし、日本もガソリン自動車作れるんだな」

 「日本は電気自動車が主流になってきたけど、ガソリン自動車くらいできるよ」

 「じゃ 日本に行ったGMとフォードは?」

 「日本での売り上げは落ちてるけど中国に売れてる」

 「日本は風力発電も輸出してるだろう」

 「カナダ政府はハドソン湾に風力発電を作ろうかって計画してたぞ」

 「ほぉ・・・」

 「また儲かるな」

 「洋上風力発電は、電気が売れなくなったら他の場所に持って行けばいいから」

 「しかし、日本車はアメリカ車より燃費がいいし、いい車だ」

 「アメリカ人の客は?」

 「ああ、こっちに来て買って帰るよ」

 「規制されてる割には人気があるな」

 「国民が外国製を望んでるなら輸入するのが民主主義だろうが」

 「カナダ人はアメリカ車を買うくらいなら日本車を買うよ」

 「・・・・」 にやぁ

 「ところで日本が公表した核兵器の実験で肺癌と甲状腺障害が増えるというのは本当なのかい?」

 「ウランやプルトニウムに近づくと被爆して死ぬそうですよ」

 「肺に入るともっと危ない」

 「なぜ、核実験していない日本で、そういう臨床ができるのかね」

 「動物実験の結果じゃないのかな」

 「ふ〜ん」

 

 

 日本

 地主制時代の田畑が残っていた。

 扶桑移民、高千穂移民が増加するにつれ、

 日本の土地無し農民は消え失せ、

 一戸当たり耕作地は区画整理がなされ、統廃合と機械化が進んでいく、

 この時代、扶桑の一戸当たりの耕作地は日本の倍、

 そして、高千穂の耕作地は20倍にまで広がっていた。

 むろん、政府機関の土地収用と企業収用を除いてだった。

 農地を持つ日本人が増えると日本の工業・商業化の阻害になると、

 老後保障という形で与えられるように画策するがなかなか上手くいかない、

 結果、海外からの安い米を輸入させようとした。

 しかし、日本人の多くは自作自農で米余り作物余りとなっており、

 バイオ発電に回せるほどだったのが、

 品質のいい日本の米が海外に売れ始める、

 

 総理官邸

 公務員は1人当たりのGDPを基礎に計算されていた。

 国会議員の給与は1人当たりのGDPの10倍、

 平均的な公務員の賃金は平均賃金と同じになっていた。

 もっとも前年分が支払われることになっていた。

 政府行政の経済政策もGDP拡大の影響を受け、

 国内総生産増加で給与上げろ策と、

 物価引き下げ、モノを安くしろ策で揺れていた。

 開発、文化、教育を重視する勢力は、給与体系とGDPの関連が小さいせいか、

 “金が欲しい者は、国家さえ売りかねない給与体系である” と批判し、

 拝金主義者は “国粋主義者は国民を奴隷にする” と言い返した。

 安全保障会議

 「ヤバい。機械化しないと、日本の工業と商業化が進まない」

 「農政は何とかならんのかね」

 「別に保護してるわけじゃないですよ」

 「農協は土地収用を邪魔してるだろう」

 「金もないくせに政府が無理やり土地を収用して何もしないのでは、無駄でしょう」

 「土地が多くて人が少ないのですから」

 「減反は?」

 「減反はって、バイオ発電で価格調整してるでしょうが」

 「まぁ 農業経営者が何を作るかで利潤が違ってくるので」

 「その時々で価格は上下しますがね」

 「国防を考えるとだな。一定の工業水準と商業水準がないと駄目なんだよ」

 「どうでしょう。食糧は、重要な糧ですし」

 「工業徴工、商業徴員という形で徴用されては?」

 「徴兵も・・・」

 「自作農が多いので自然と休閑地になるでしょうし」

 「徴兵・・・」

 「い、いや、水田で休閑地は・・・」

 「それで行きましょう」

 「「「「・・・・・」」」」 うんうん

 「「・・・・・」」 ため息

 

 

 国防省技術研究本部実験場

 地対空ミサイル、地対艦ミサイル、地対地ミサイルの実験が続けられていた。

 新開発は、白亜の技術を参考にしたが、規格は魚雷を利用していた。

  直径610mm×全長9000mm  射程5000km

  直径533mm×全長7200mm  射程3000km

  直径450mm×全長6700mm  射程1000km

 射程がいくら伸びても標的に命中させられないのでは脅威ではない、

 固定された軍事拠点にミサイルを命中させるのは計算と機械の問題になった。

 しかし、移動目標に命中させるには、精密な誘導を必要とし、

 相対速度など高速で計算しなければならず、

 精確な観測と探知能力を必要としていた。

 そのため、だいたいの目標域までミサイルを飛ばし、

 途上の精密誘導を朱雀や艦艇が行う事になっていた。

 将校と技術者たちは打ち上げ準備中のミサイルを見上げる。

 成功すれば2600km離れた標的に命中する。

 「当たるか、ドキドキものだな」

 「計算上、当たるはずですよ」

 「計算通りいかないのが戦場なのだが・・・」

 「少将。朱雀の準備が完了しました」

 「そうか。発射してくれ」

 全長9mのミサイルが打ち上げられ

 白煙の弧を描いて蒼空の彼方に飛んでいく、

 「「「「・・・・・」」」」

 洋上のミサイルが標的船に命中すると爆発する。

 

 

 アラビア海

 達磨島(50ku)

 外の日光が集光され、地下菜園を照らしていた。

 砂漠の太陽は強く、集めるだけで簡単に水を沸かし、タービンを回し発電した。

 小さな島であるにもかかわらず発電量は300万kwを超え、 

 余剰電力は送電線を作ってアラブに売らなければならなくなっていた。

 達磨島は、電気代の対価で石油を得ると日本に輸出し、

 さらに近代化を推し進めていく事ができた。

 達磨島は日本にとってドル箱となり・・・

 達磨飛行場

 レプシロの瑞風が並ぶ中、新型戦闘機の陽炎が新たに配備される。

 日本空軍将校たち

 「ようやく、ジェット戦闘機か」

 「狭い空域にジェット機を配備されても困るがな」

 「中東で戦争する予定は?」

 「日本と高千穂は戦争しなくてもやっていけるし」

 「達磨は莫大な利益を上げてるから戦争する気すら起きないよ」

 「電気を売って金儲けどころか」

 「水とか、地下作物を使った日本料理でも大黒字だからな」

 「長崎軍艦島の石炭が萎んでこっちに回ってくる」

 「盛者必衰だな」

 「外貨を得る方が優位でしょう」

 「ひょっとしたら地下菜園を増築するかもって」

 「生産量を増やしたくても達磨島の人口はすぐ増えないだろう」

 「その辺は問題だけど、作物は棚で作れるから面積比だと100倍以上いけるよ」

 「こんな小さな島が穀物輸出か・・・」

 「達磨島だけじゃない、離島も崩壊熱発電が増えてるからな」

 「まぁ 外需の加工だけどな。離島生産は集約率が良くて意外と悪くない」

 「生活水準が上がって利益を上げているよ」

 「しかし、離島の内需なんて観光でも呼びこまない限りないだろうし」

 「外需が消えると怖いだろう」

 「政府は、第一次産業を基準に、第二次、第三次産業要員を徴用する計画に変えるらしい」

 「それなら外需が減ったら、第二次、第三次を減らしても第一次に吸収されるだけで困らない」

 「それじゃ 第一次の収入が減って困るんじゃないの」

 「皺寄せは第一次に行くだろうけど」

 「少なくとも雇用がなくなっても食べ物は作れるし、自殺しなくても済むだろう」

 「それに自分の土地と家を持つことが愛国に繋がる」

 「逆にハングリー性が低下して、利権の集約ができず工業基盤や商業基盤で遅れる」

 「まぁ 外需があと何年くらい続くかだね」

 「政府は、どう見てるの?」

 「さぁ あと10年くらいでイギリスとドイツの再建需要はなくなって、日本と競合する」

 「中国、カザーク、インドシナ、インドネシアは、あと20年から30年で追い上げてくるだろうし」

 「そうなったら競争力の差になるんじゃないかな」

 「じゃ その時まで崩壊熱発電をたくさん作っとかないと駄目ってことか」

 「ふっ・・・」

 達磨島の地下から崩壊熱発電で使う燃料棒が抜かれ、

 特殊船に載せられ高千穂まで運ばれていく、

 

 

 宇宙開発局

 マイクロ波推進の反射鏡(リフレクター)は、徐々に小型分散化していく、

 そして、マイクロ波の集束点は、広がって集束面になっていた。

 一点集束による一点爆圧は反射鏡への衝撃が大きく、

 多点集束による面爆圧は、機体全体を弱い爆圧で支えやすくなっていた。

 そして、宇宙開発といいながら、縦割りの枠を超えて、空中要塞開発技術者も集まっていた。

 空中要塞開発のマイクロ波推進は、

 ターボプロップエンジン&マイクロ波発電機モーターのハイブリットエンジンと競合関係で、

 どちらを選択するにしても失敗すれば大変な損失になった。

 

  空中要塞

 

 巨大な空中要塞を建造する理由は、日本上空を滞空し、

 地平線の向こう側までレーダー哨戒網に入れることで、

 戦闘機やミサイルの誘導にあった。

 しかし、もう一つ経済上の伏線があって、

 膨大な発電量をマイクロ波で消費し、電力会社に利益を還元するためだった。

 「全長120mで全幅120mか。なんか、2乗3乗法則からして駄目でしょうって大きさだな」

 「仕様が大きくなっていくのはなぜだろう」

 「大きくないと地上から見つけにくい」

 「マイクロ波爆圧に至らなくても、熱膨張で機体を押し上げる揚力になる」

 「計算上、機体下面が大きいほどマイクロ波の効率がいい」

 「最大はマイクロ波を海上側に照射して、侵入船を燃やせるかもしれない」

 「空中と洋上のマイクロ反射体を使えば空中要塞を太平洋上まで前進させられるかもしれない」

 「それは、確かなの?」

 「さぁ 原子力船なら自発電と合わせて、マイクロ波を照射できるだろうし」

 「空中要塞を浮かべさせるられるだろう」

 「しかし、まあぁ まだ研究段階だから何とも言えない」

 「おいおい」

 「高千穂の滑走路は10kmくらいあるから離着陸ぐらいできるよ」

 「どちらにしろ、複合素材で軽量化して、マイクロ波の熱膨張を使うと飛んでしまう」

 「マイクロ波は物凄い電力を使うんじゃないの」

 「発電量が増えてるのに市場は省エネだろう」

 「家屋は地中熱をエアコン代わりに使ってるし」

 「太陽光熱を集光させて電灯使用量を減らしてるじゃないか」

 「自分は省エネで電気使用量を減らして、他人に使わせれば金になるからだろう」

 「なに? 国家産業で資本を還流させるためなの?」

 「いったいどういう考え方なんだ」

 「経済学者だろう」

 「国民に国債を買わせるぐらいなら、個人発電者に利益を還元する方がましなんだろうな」

 「それに基礎消費電力は低めにして、増減分を公共消費にしたいのだろう」

 「経済学者は労働者の供給力と消費者の需要力の総量しか見てないからね」

 「経済学者が糞たれなのはわかった」

 「ほら、例の人権基金構想も資本の還流させるあれだから」

 「人権基金構想は進んでないの?」

 「1人当たりのGDPで100分の1にするか。50分の1にするか」

 「米の物価指数を基準に算定するか」

 「国債発行の一部を配分するかで騒いでるらしい」

 「貧富の格差を是正するための一律底上げか」

 「それもあるけど、ある程度の人権基金が保障されてないと消費を加速させられないだろう」

 「労働とか関係なくて?」

 「労働と関係なく支払われるならバブル破綻後の財政投資がそうだし」

 「自己資本投資で儲けるなら格差奨励だけど」

 「国債投資なら均等分配が公平って気がするからね」

 

 

 

 アメリカで加圧水型原子炉(PWR)と沸騰水型原子炉(BWR)の開発が進んでいた。

 これらの原子力発電所は軍用で原子力空母や原子力潜水艦のために開発されたものだった。

 加圧水型原子炉(PWR)の耐圧設計は175気圧以上で、

 100万kw級加圧水型原子炉の圧力容器は、高さ約13m、内径約4.4mで計算されていた。

 

 日本原子力発電研究所

 現在動いてる原子力発電所は核兵器で使うプルトニウムを生産するためであり、

 地下埋設で、圧力容器は縦長でアメリカの100倍に達していた。

 圧力容器の熱は水を沸騰させ、

 蒸発した水は立て坑を上りながらタービンを回し、

 冷却しながら水を別の立て坑から降ってタービンを回し、

 圧力容器を冷やした。

 この方式の原子力発電所は扶桑半島と高千穂に一基ずつ作られていた。

 使用済み核燃料は、崩壊熱発電用で扶桑と高千穂の地下に埋設されていた。

 それとは別にプルトニウムは作れなくても、

 小型トリウム原子力発電は安全性が高いことから開発されて達磨島地下に建設され、

 開発研究が行われていた。

 研究者たち

 「安全性の高い原子炉を研究するのはいいとしても利益あるのかね」

 「国と州と大手企業は余った電気を外国に売りたがってる」

 「じゃ 高千穂は・・・」

 「扶桑もカザークと中国に送電すれば金になるらしい」

 「日本は置いてけぼりじゃないか」

 「日本も地震がなかったら、崩壊熱発電やトリウム発電を置いていいけど」

 「日本は地熱、風力、水力、火力に集中するしかないな」

 「風力は風任せなのが不安だけど」

 「列島で縦長だからね。どこかが風が吹いてるし」

 「洋上風力発電は、たくさん作れば防波堤の代わりにもなるよ」

 「固定式ならね」

 「最近は浮遊式が多いらしい」

 「輸出で?」

 「うん、特に中国、インド、ブラジル、アルゼンチン、南アフリカ、オーストラリア・・・」

 「資源持ってそうな国だな」

 「足場になるらしい」

 「足場ねぇ」

 

 

 この時期、機械式5軸・3軸のNC加工工作機械が主力だったものの、

 トランジスター式のNC加工工作機械が開発されると、徐々に増えていた。

 日本の加工は、精度が増し、素材も強靭になっていた。

 白亜系技術は海外流出の監視が厳しく管理され、

 非輸出産業と輸出産業は開発の段階から切り離されていた。

 国防軍の兵装はランク分けされ、

 非輸出兵器に限るなら列強の兵装を圧倒し、

 民間も基幹産業を中心に白亜技術が採用され、

 軍関連、公共設備、設備投資を中心に拡大していた。

 輸出産業は、中国輸出に限るなら租界を経由すれば関税がなく、

 白亜技術から切り離される代わりに広範囲な自由が認めていた。

 とはいえ、マイクロ波充電道路網が広がるにつれ、

 自動車産業は電気自動車が主流になり、

 内燃機関は船舶へ比重を移行すか、

 輸出産業へ切り替えなければ生き残れなくなっていた。

 高千穂は、油田があることから内燃機関産業に有利なことがわかると

 日本空軍は、天然の飛行場ともいえる乾湖に巨大実験機飛行場を建設した。

 これはアメリカのエドワーズ空軍基地と同様の理由で、広大なことが正義だった。

 航空機の実証試験で巨大飛行場は大きなアドバンテージになり、

 朱雀や空中要塞の実証試験の中心になっていた。

 

  綾風

   全長18.7m×全幅22.5m×全高5.6m  主翼面積65m

   ユンカース ユモ 008推力2600×2基

   自重6649kg/全備重量13765kg 

   航続距離4370km  巡航速度600km/h / 最大速度800km/h

   10〜12人

 機体は流線型で

 信頼性の高いドイツ製エンジンが採用された。

 値段が安く、利便性がいいことから軍で使われ、

 中国富裕層に売れ

 国際的に評価されるとアメリカと欧州でも売れていた。

 

 高千穂とイタリア間の空路が確立されると航空機の行き来が増加していた。

 日本の権力層

 「音は少し大きくないか」

 「元々軍用エンジンだからね」

 「しかし、防音材は多めにしてるから旅客機よりは静かなはずだ」

 「白亜技術や複合素材を使ってなくても意外に性能がいいようだ」

 「内燃機関を作っていた人材が油田のある高千穂に集まってきたからな」

 「アメリカと欧州に売りやすいし。輸出しやすい」

 「それにエンジンはMe323のターボファンエンジンだからね」

 「一世代前のエンジンでも、よく売ったものだ」

 「陽炎がターボファンエンジンなのは知られてるからね」

 「しかし、日本とドイツの関係はどうしたものかな」

 「実入りを考えるとアメリカ、イギリスと組んだ方がいいし」

 「外交パイプは必要だろう」

 「白亜関連技術は突出していても潜水艦と航空機に集中してるし」

 「それ以外は予算が足りない」

 「それを埋めようとするなら外国から買うしかない」

 「国債は?」

 「白亜技術で使い過ぎたから頭痛いよ」

 「ドイツは本気でラムジェットを採用するんだろうか」

 「それを確認するために行くようなものだけどな」

 「白亜技術は、ラムジェット技術がなかった」

 「それを言うならアフターバーナーもなかったけどね」

 「電気は白亜類が進んでいたようだが」

 「しかし、核技術はアメリカとドイツも進んでいるから共通してる」

 「まぁ 物理法則は人類も白亜類も差別しないから」

 「それはそうと、オーストラリアで太陽熱発電を作って欲しいらしい」

 「オーストラリアか。白豪主義が強いから、なんか嫌だな」

 「資源あるよ」

 「資源か・・・資源は欲しいよな」

 「洋上風力発電は?」

 「洋上風力発電なら需要が変われば引っ越せるし、オーストラリアの足場になる」

 「オーストラリアはその気になれば発電できるんじゃないのか」

 「発電ができても水は欲しいだろうからね。淡水化プラントに変えるだけでも収入になるし」

 「日本の足場を作らせたくないから太陽光熱発電じゃないの」

 「太陽光熱は鏡で熱を集めて水を沸騰させてタービンを回すだけだし」

 「複合素材を使わなくても支障ないからいけるけど」

 「オーストラリアの太陽熱は強かったっけ」

 「達磨島より緯度が低い場所もあるし行けるでしょう」

 「しかし、砂漠まで入り込んで太陽光熱発電なんていうのは建設機材で大変だろう」

 「だから日本に発注したがってるのでは?」

 「アメリカは?」

 「あの国は利益率の低い仕事はしないよ」

 「あははは・・・」

 「高千穂はチャドと二ジュールが意識が行くから、後回しにしたい仕事だけど」

 「日本と扶桑は資源がカツカツだから資源会得で必死なんだよ」

 「やれやれ」

 「まあ、高千穂の方は毒蛇、毒草、毒虫が多くてやれやれだけどな」

 「達磨島は砂漠の小島で何もないが儲かってる」

 「初期投資さえ成功すれば達磨島は楽だろうな」

 「ところで朝鮮族が高千穂周辺で力を手に入れてるようだが」

 「なるべく関わりたくないが敵意丸出しだからな」

 「しかし、資源地を押さえられると取引しなければならない」

 「まぁ 環状線外の先住民で対朝鮮人部隊を創設してる」

 「何かあったら反撃するとは伝えてるが」

 

 

 高千穂 ギニー湾沖

  65000t級海凰型空母 海凰

  排水量65000t/満載85000t 全長336m×全幅76m×吃水10m

  4サイクルディーゼル機関30000馬力×8基 240000馬力電気推進

  ナトリウム小型原子炉10000kw(7500馬力)×4基 30000馬力電気推進

  27万0000馬力 速度34kt 航続距離 30000海里+α

  艦上機 100機〜200機   71口径40mm砲×40基

 

 10000t級蔵王型巡洋艦

  排水量10000/満載15000t 全長200m×全幅20m×吃水6.2m

  4サイクルディーゼル機関30000馬力×4基 120000馬力電気推進

  ナトリウム小型原子炉10000kw(7500馬力)×2基 15000馬力電気推進

  13万5000馬力 速度30kt 航続距離 10000海里+α

  60口径155mm連装砲4基 60口径40mm砲×10基

  魚雷4連装2基 爆雷40発

 

 陽炎が海凰の飛行甲板を使って離着艦を繰り返していた。

 蔵王型巡洋艦4隻が空母の周囲を守り、

 白亜型潜水艦4隻がさらに外周を警戒していた。

 

 海凰 艦橋

 「大西洋に送られるとはね」

 「2番艦が進水しましたからね」

 「就役までは時間がかかりますが高千穂の方が重要なのでしょう」

 「アメリカの方が空母が多いがね」

 「27000t級エセックス型空母8隻。45000t級タイコンデロガ型空母4隻ですか」

 「ジェット機の離着艦は可能ですが、元々レプシロ機用ですし」

 「F3Dスカイナイトは敵じゃありません。海凰が有利ですよ」

 「アメリカは60000t級フォレスタル型空母の建造を開始したよ」

 「空母の優位性は長く持たないだろう」

 「アメリカの開発力の高さが気になりますね」

 「日本はカンニングしているだけだが、アメリカの資本力は膨大だ」

 「研究分野の予算も多いのだろう」

 「格差が開発力に繋がっていると思うと複雑ですね」

 「まぁ 資本力の差もあるだろうが、日本人は小手先の既存技術を改良するのが得意だからな」

 

 

 上海港

 ユダヤ海軍艦艇は旧式化していた。

 その艦隊を維持させていたのは、中国とユダヤ海上輸送の利権だった。

 日本がユダヤ資本に売却した艦隊は、ドイツ・ソビエト圏からのユダヤ人脱出を助け、

 中国支配と、イスラエル建国を成し遂げていた。

 しかし、人件費などの費用はかさみ続け、

 ユダヤ資本は、中国少数民族のチワン族を雇って船員にしていた。

 アシェル(山城) 艦橋

 「日本の電気自動車が自動車の半分を超えました」

 「電気自動車か。開発資金もないのに手強いな」

 「日本は石油依存を減らすため電化を推し進めてるようです」

 「こちらの言うことをだんだん聞かなくなるでしょう」

 「日本の火力発電所は?」

 「火力は総電力の半分を占めています」

 「しかし、地熱と風力発電が増えてるので、割合は、もっと少なくなるはず」

 「それで、風力発電船と太陽熱発電の輸出か」

 「アメリカの自動車会社にとっては痛手ですね」

 「まぁ 中国への電気自動車輸出を制限するのなら、日本への圧力は後回しでもよかろう」

 「よろしいので」

 「中国大陸は巨大なペットだからな。飼いならせれば利益は大きいし」

 「日本と紛争を起こして、ペットに逃げられても困る」

 「確かに」

 「ところで、報告にある。日本の継手(つぎて)、仕口(しぐち)建造構造はどのようなものかね」

 「古い僕雑建築の技法で情報では、艦船、建築で使われてるようです」

 「優れた手法なのかね」

 「基本は凹凸の組み合わせですが、溶接とナットが減ってるようです」

 「利益になるのなら会得したいが」

 「白人も黒人も不器用なので、接着技術を向上させる方が有利でしょう」

 「接着技術か、期待できそうなのかね」

 「予算さえあれば・・・」

 「まぁ いいだろう」

 「チベット族兵は、どうだね」

 「内陸民族ですが訓練すれば悪くないようです」

 「そうか、いずれ新型艦隊に移行するとしても経費を減らせるのなら文句はない」

 「しかし、なぜチベット族を?」

 「彼らは、チベットに送金してチベットを強化するだろうし」

 「海岸に足場を持たない少数民族の方がいい」

 「それにチベットは中国にとって我々の足場になるだろう」

 「じゃ・・・」

 「チベット族とウィグル族は、我々の元華銀行を守る傭兵だよ」

 「朝鮮人も?」

 「朝鮮人は傭兵というより、我々を善人にしてくれる悪役だな」

 「「「「「あははははは」」」」」

 

 

 武漢租界

 国民党政府は、暴力的な圧政で国民を支配するのではなく、

 利権とコネ政治で味方を作る利権構造を選択した。

 元華銀行は紙幣の発行権を握り、

 高品質の紙幣は、法幣から元札に切り替わると、中国の印刷技術で模倣できなくなり、

 元紙幣は中国の金融を支配し、

 租界は華僑資本と各国の外資資本の牙城になっていた。

 巨大利権であり、同時に国際的な会談の会場にもなっていた。

 日本人銀行家たち

 「中国を国債発行でインフレにして繁栄させるんだと」

 「なんか中国を強くするのはヤバいような気がするな」

 「その後、紙幣発行を減らして中国をデフレにする」

 「漢民族が怒るだろう」

 「そして、公共事業のために増税して漢民族を貧乏にするだろう」

 「増税分の公共事業で俺たち外資が稼いで、漢民族を貧乏にできる」

 「外資投資家と漢民族の格差が広がって、一気に外資の中国支配が進むそうだ」

 「なんか、牧童にでもなった気分で、気が退けるな」

 「銀行家が牧場主で、牧草が紙幣で、牛が労働者・消費者か」

 「最初から潰す気で企業を育てるんだから、発想がもう、ヤバすぎる」

 「ユダヤは企業王国が好きだからな」

 「というより、華僑資本も前向きだから結構えげつない」

 「華僑資本にとっては、漢民族が同じ土俵に乗ってるライバルだからね」

 「少数で土俵の外にいる外資と組んだ方が実入りがいいそうだ」

 「・・・・」

 「ユダヤ資本が、日本でもやらないかってよ」

 「財閥は、日本を支配できて、王様のように生活できるそうだ」

 「冗談」

 「まぁ 貧富の格差が大きくないと新規事業が起こせないのも事実だし」

 「馬鹿ほど金が必要だし」

 「だけどねぇ 産業構造自体がインフレ公共利権に頼り過ぎて無能になってく構造だし」

 「そういうの容認するわけにもいかないし」

 「その辺が問題なんだよな」

 

 

 

 アルゼンチン

 未開地が多いアルゼンチンは日本、ドイツ、イタリア、スペインの開発業者が集まりやすく、

 政府筋も混ざって会談しやすい立地にあった。

 この日、5か国共同出資でアルゼンチンの鉱物資源開発協定が調印された。

 タンゴハウスでは数組の男女が曲に合わせて踊っていた。

 テーブルには山盛りの焼き肉、パン、ピザ、ワイン、マテ茶が並んでいた。

 日本人たち

 「食料輸出国を助けると後々困るような予感がしますね」

 「しかし、アルゼンチンの石油、鉄、石炭の利権は押さえないとメジャーにとられるから厄介だ」

 「それに希少金属が出るかもしれないし」

 「希少金属か。希少金属はストックしたいですからね」

 「だいたい、ユダヤ人に資源と穀物を押さえられるのは気に入らない」

 「それは言える」

 「水力発電建設と一緒に鉱山開発するのは当然だし」

 「まぁ 資源が当たれば大きいし、当たらなくてもリスクは分散してる」

 「水力発電は?」

 「ああ、南の方は丁度いい風が吹くところが多いようだ人口は少ない」

 「しかし、仕事があるなら人は来ると思う」

 「アルゼンチンは税金おさめてくれるならって、誘致は喜んでくれるがね」

 「まぁ 資源の購入に繋がるし、外貨にはなるし、足場になるし、何とかなるだろう」

 「といっても、予算が少ないと何にもできないですね」

 「国債発行のインフレ策は、貧富の格差を大きくするからな」

 「法人税もあるが個人が貧乏だし」

 「まぁ それで人権基金でしょうけど」

 「あれはまだ検討中だろう」

 「国債と連動させるか、物価指数と連動させるか、1人当たりのGDPと連動させるのか」

 「わからない状況だからな、やるなら、今の内なんだがな」

 「人権基金ありきってどこから来たんです?」

 「インフレすると利権が強くなって格差が広がる」

 「格差分を埋める最低限保障を人権基金の底上げで賄う」

 「カザークが所得上限制の資本主義をやってるからな」

 「それはそれでいいけど、影響力があり過ぎるから」

 「底上げ方式でやろうかって話しだろう」

 「最低賃金制は?」

 「企業負担が大き過ぎて嫌がられてる」

 「ふっ」

 

 

 独亜共同管理マルビナス諸島

 戦後、マルビナスはドイツ領として残ったものの

 アルゼンチンは対イギリスで参戦せず、

 アルゼンチンの手に渡るとイギリスと戦争になる可能性は高いことから、

 ドイツとアルゼンチンの共同管理になっていた。

 互いの軍事拠点を除くなら、対等な法律が定められ、

 ドイツ語とスペイン語が併記された看板が増えていた。

 投資に従って、近代的な建造物が増えて行く、

 ドイツは、本土の延長戦ともいうべき島で、大規模投資が行われ、

 資本、資材、人口で優位だった。

 ドイツ人と日本人

 「ここに洋上風力発電を?」

 「ええ、お願いしますよ」

 「しかし、ドイツは、自国で風力発電を建設できるのでは?」

 「まぁ そうでしょうが、なにぶん、アルゼンチンに対して有利になり過ぎるのもあれなので」

 「おや、ドイツ人の性格とは思えない発想ですな」

 「正直、アルゼンチンには頭に来ることが多くてね」

 「バランスを取ってくれる人種がいると助かるのですよ」

 「ドイツの味方をしろと」

 「まぁ ドイツ人になりたがるアルゼンチン人も多いのですがね」

 「ドイツ人に反発するアルゼンチン人も少なくないのですよ」

 「アルゼンチン人はラテン系ですからね」

 「需要があれば日本人も来るでしょう」

 「日本人に大局的な戦略はないのですか?」

 「日本人は、アメリカやソビエトのように思想を広げる気はないので」

 「どっちの政党の総理も資源の安定供給が最大の懸念事項でしょうね」

 「ユダヤに媚を売るだけでいいとは楽な仕事だな」

 「それが一番楽でしょうね」

 「しかしまぁ 高千穂があるので、割高でも必要最小限の資源は得られますし」

 「日本外交は10年前よりはるかにタフなはずですよ」

 「だといいのですが」

 

 

 

 欧州戦争と中カ戦争が停戦で終結すると大規模な戦争が地球上から消えてしまう。

 しかし、小さな地域紛争は行われており、

 イスラエル戦争、インドネシア戦争、インドシナ戦争、

 そして、アフリカ大陸の独立運動は注目されていた。

 植民地は、正統な王家がない事が多く、

 歴史を共有できる文化もよわかった。

 そして、宗教も地域ごとに分散され、国家レベルに届かない、

 民主主義、資本主義、自由主義は、

 三権分立、法律、国権、民権、地方分権など矛盾を内包しており、

 複雑な構造を作らなければならなず、

 教育を受けていない人々を糾合させる事ができなかった。

 知的水準の低い先住民を糾合させる理念は単純でなければならず、

 部族単位の封建制か、共産主義しかなく、毒性の強い共産主義はわかりやすかった。

 共産主義は、人権侵害と特権の強い社会にとって恐怖すべき思想だったものの、

 人権が公平に認められた知的水準の高い国民が大半を占め、

 特権が必要以上に強くなければ気にとめることのない思想といえた。

 アフリカ大陸では、黒人が武器弾薬を持ち始め、

 列強は武器弾薬と交換に資源を得ていた。

 その中で最強は、列強から支援された朝鮮民族軍だった。

 

 

 イスラエルはアラブ人を差別し排斥していた。

 アラブ人の反撃は、生存本能から始まったがむかしの銃や刃物が中心だった

 しかし、米英独仏が武器弾薬を余計に売るためアラブに輸出すると状況は一変、

 アラブ圏は石油利権で得た資本で武器弾薬を購入するとイスラエルのアラブ人に供給し、

 ソビエトも武器輸出に加わり、列強はコントロール不能になっていた。

 人口で勝るアラブ人は、武器が供給されれば自らの意志で対戦車携行兵器を肩に担ぎ、

 イスラエル人に反撃する気概を持ち合わせていた。

 イスラエル軍はアラブ人に四方八方から銃撃され、

 神出鬼没のゲリラに戦車を破壊される事態に至り、

 戦力で勝るイスラエルは、人口で勝るアラブ人に苦戦していた。

 イスラエル司令部

 イスラエルと各国代理人

 「もっと武器が欲しい」

 「「「「「・・・・・」」」」」

 「アラブにごねられると石油を輸出してもらえなくなるので困る」

 「占領すればいいだろうが、イギリスと日本はアラビア海に基地を持ってるじゃないか」

 「戦争には口実がいるだろう。侵略国じゃあるまいし」

 「そうやって、高みの見物か」

 「そうは言っても、中東利権を押さえてるのはユダヤ系石油メジャーだしな」

 「とても本気とは思えん、意見だ」

 「イスラエルとユダヤ資本は別物だ」

 「「「「「・・・・・」」」」」 ため息

 「日本は?」

 「え、い、いや、いま、公共投資と設備投資中でして」

 「原油価格が跳ね上がると計画途上の下半分が次期繰り越しになってしまうので」

 

 

  

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 月夜裏 野々香です。

 崩壊熱発電が増えて行くと、大手電力会社の収益が目減りしていきます。

 まぁ なんていうか、電力会社はいずれ中小企業ばかりに (笑

 

 

 ユダヤ海軍

 戦艦8隻、小型空母1隻、強襲揚陸艦6隻、軽巡17隻、駆逐艦36隻、

 ルベン(金剛)、シメオン(比叡)、イッサカル(榛名)、ゼブルン(霧島)、

 ダン(伊勢)、ナフタリ(日向)、ガド(扶桑)、アシェル(山城)、

 ガリラヤ(鳳翔)

 メギド(神州丸)、アララト、シナイ、オリーブ、モリヤ、ゲリジム、

 アフェク(天龍) カナ(龍田)

 ツロ(球磨) アコ(多摩) ハモン(北上) ハロシェテ(大井) ケデシュ(木曾)

 シロ(長良) キネレテ(五十鈴) ハマテ(名取) ラマ(由良) ラマ(鬼怒) リモン(阿武隈)

 ヨクネアム(川内) ガテ・ヘフェル(神通) シムロン(那珂)

 サリテ(夕張)

 峯風、澤風、沖風、島風、灘風、矢風、羽風、汐風、

 秋風、夕風、太刀風、帆風、野風、波風、沼風

 神風、朝風、春風、松風、旗風、追風、疾風、朝凪、夕凪

 睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、

 文月、長月、菊月、三日月、望月、夕月

 

 

 

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第20話 1951年 『地上照射マイクロ波で空中要塞』
第21話 1952年 『新しい天と地は』
第22話 1953年 『馬鹿を作る機械テレビと、侍魂』