月夜裏 野々香 小説の部屋

       

仮想戦記 『白亜の遺産』

 

 第27話 1958年 『火病という名の呪い』

 宇宙艦バイエルンは、月軌道から地球軌道に戻ると地球降下船が分離させ乗員が地上へと降りていく、

 大西洋赤道で交替要員と補給品を載せたロケットが打ち上げられ、

 宇宙カプセルはバイエルンとドッキングする。

 ドイツ帝国の宇宙艦バイエルン建造、月面着陸、地球帰還は、列強の宇宙開発を刺激した。

 アメリカはアポロ計画を加速させ、

 ソビエトはミール計画を進め、

 日本も天昭計画を推し進めていた。

 天昭(クサイ)島 (108ku)

 宇宙ロケット基地

 「ドイツの単縦型宇宙艦は単純だけど合理的ではあるね」

 「だけどハニカム(蜂の巣)構造型だからその気になれば無限に外枠を増やしていけるんじゃないの」

 「確かに全長12m×直径4mの船殻を重ねて行けばいいわけだから」

 「外周に水タンクでも置けば、対放射線は強くなりそうだな」

 「何にせよ。宇宙船の基本構造の一つにはなると思う」

 「じゃ こっちもハニカム構造で開発するか」

 「問題は、ロケットを載せた台座ごとリニアカタパルトで射出できるかだろう」

 「ロケット噴射で台座が壊れそう」

 「それに補助ロケットがないとバランスがな」

 「それは、第一段と第二段の間に制御ロケットを挟んで噴射すればいいんじゃないかな」

 「問題はマイクロ波の熱膨張で加速させられるかだと思うけど」

 「液体水素と液体酸素だからな。下手なところに当たると爆発するから怖い」

 「焦点は十数メートル下のはず。上手く制御できればだけど」

 「静止軌道まで上げられたら、太陽電池とイオンロケットで飛行制御するから」

 「必要最小限の液体水素と液体酸素で打ち上げられるなら、残りは積載重量になるから得になる」

 「リニアの磁力でロケットに圧力をかけすぎるのは問題だろうけど」

 「打ち上げ後、リニア機材が邪魔になるけどな」

 「打ち上げて、すぐ切り離せばいいんじゃないか」

 「問題山積みな気がする」

 「まぁ 天昭島は赤道近くで有利だし、通常打ち上げでも標高500mと高い」

 「しかし、政府が宇宙艦を建造する気になれるかどうか・・・」

 「作りたい」

 「だけど、ドイツは大型宇宙ロケット連続10基打ち上げてドッキングさせて、宇宙艦にしてしまうから凄い」 

 「もう宇宙開発戦争してる気分なんだろうな」

 「問題は、どう追随するかじゃないかな」

 「バイエルンは核武装していないだろうな」

 「公には核武装してないらしいけど」

 「まぁ 余計な重量を載せたくないのが宇宙船だろうけど」

 「余裕がない場合だろう」

 「あれだけ繋げれば余裕はあるだろうが」

 「ドイツは人員交替で宇宙船を打ち上げるほどバイエルンが大きくなっていくわけか」

 「そういや、ドイツは2番艦のハンブルグを打ち上げるかを検討してるみたいだけど」

 「よく金があるな」

 「宇宙開発は掛け捨てだろう」

 「宇宙艦建造で国際的な地位は大きく上がる」

 「それに月に旗さえ掲げればドイツのモノになってしまうかもしれないし」

 「だけど、宇宙空間だろう。衣食住で不安だからな」

 「それができるというのが国威になるんだろうが」

 「やっぱり、予算を出してもらわないとな」

 

 

 日本圏の精神的中心は東アジアの列島の日本にあった。

 しかし、政治的中心は国境防衛の半島の扶桑に傾注し、

 そして、経済的な中心は資源と人口流動の激しいアフリカ大陸の高千穂へと移行し、

 大西洋にあったことから対米対独戦略の中心になっていた。

 対中対カ対米対ソの影響を受けやすい日本、扶桑と、

 対米対独対英対仏の影響を受けやすい高千穂は、国情がまるで違い、

 島礁防衛、半島防衛、大陸防衛で求められる陸海軍戦力の比重が違い、兵器体系も違ってくる。

 限られた予算内で最大公約数な兵器体系を求めようとするなら、

 攻勢兵器より守勢兵器に偏らざるを得なくなり、質と数も制限されていく、

 次期主力戦闘機は、双発だった。

 新型ターボファンエンジンは、推力8000kgを目標とし、

 陽炎と同じ径で開発され、新型機のエンジンを陽炎に換装させることもできた。

 国防省技術研究本部

 新型戦闘機のラフスケッチが描かれ、

 陽炎のプラモデルを幾つも加工しながらテストモデルが作られていく、

 戦闘機の外見は、仕様と並んで大きな説得力があった。

 「ターボファンが若干、小さくなるのが問題かな」

 「低バイパス比をもっと小さくするか、エンジンそのものを小さくするかだからな」

 「まぁ エンジン自体を大きくする方法もあるけどね」

 「エンジンを大きくすると陽炎は切り捨てになる。それは面白くない」

 「単純に吸気口を大きくする方法もあるが」

 「あまり大きくすると空気抵抗が増えるからね」

 「機体を平べったくすれば、機体そのものが揚力を持つから空力学的に有利になると思うが」

 「でも搭乗員は縦型だからね。機体は縦長になりそうだけど?」

 「イギリスの新型ジェット戦闘機はその発想で、エンジンを縦に並べようとしてるらしい」

 「いや、コクピットだけ縦型で、機体そのものは平べったくしていいと思う」

 「厚みがないと機外搭載になって空気抵抗が増すけどな」

 「しかし、機体が大き過ぎると空母に載せるときに困るし、空中戦で負ける」

 「まぁ 空対空専用機ならミサイルは細身で済むから格納でもいいと思うけど」

 「アメリカの開発はどうなってるって?」

 「F100シリーズと。双発機を開発してたな。F4とか言ったっけ」

 「カザーク空軍は?」

 「ドイツか、アメリカ製をライセンス生産するんじゃないか」

 「MiG19、MiG21で数に任せてこられるよりいい」

 「ソビエトは迎撃機だから侵攻作戦向きじゃないが、戦線突破されそうだな」

 「島国なら耐えられやすくても、半島と大陸は辛い」

 「しかし、カザークも意外に独自性がないな」

 「漢民族追い出しで内政的に無理してるから、外交で味方を作らないとね」

 「まぁ 日本も高千穂でやってるけどな」

 「高千穂は先住民の間で反乱めいたことは起きてないだろう」

 「高千穂は地域で分けてるし、衣食住はほかの植民地より待遇がいいし」

 「アフリカ独立国の同胞同士の搾取率より小さい」

 「何にせよ。高千穂は質より数を求めるからな」

 「まぁ 性能で1対多を戦えるならその限りじゃないだろう」

 

 厚木基地

 陽炎2機が飛び立っていく、

 リーダー機がウィングマン機に標的を指示するとウィングマンが標的機を追いかけ、

 機銃掃射で標的機を撃墜してしまう。

 「すげぇ」

 “ベテランパイロットの操作は天候と合わせて記録してるからね”

 「それにしてもすげぇ」

 “リーダーの調子は?”

 「んん・・・煩わしい」

 “なるべく、パイロットに面倒を掛けないようにプログラムしてるんだがな”

 「ウィングマンが頼りになるのは確かだけどね」

 リーダー機は有人で、ウィングマン機は無人機だった。

 リーダー機が無人機に信号を送ると、

 先行するリーダー機の後方に無人機のウィングマンが回り込んで追随する。

 “機械は、人が乗ったウィングマンより従順だぞ”

 「従順さと自己判断力の両方が欲しい」

 “我が侭言うな”

 「本心だよ」

 “とりあえず。今度は、ウィングマンから逃れてみろ”

 「へいへい、本気で逃げれば、簡単に逃げることができるよ」

 「ていうか、リーダー機を見失った無人機はどうするの?」

 “自律モードで帰還する”

 「よーし・・・」

 無人のウィングマン機はレーダー追尾装置、熱線追尾装置を有し、

 機体自体が超大型高性能レーダー・赤外線追尾ミサイルといってもよかった。

 無人機は人間の加速限界8G、9Gを超えた10G以上の旋回で、リーダー機を追いかけていく、

 

 

 上海

 漢民族たち

 「また外資がウィグルとチベット向けに物資を送ってるある」

 「中国の税金で送るのは嫌ある」

 「外資が肩入れしてるある。ウィグルとチベットに投資してるある」

 「鉄道と道路を建設したら数に任せてウィグルとチベット占領すればいいある」

 「でも武器を送ってるある」

 「空輸じゃ大したものは送れないある」

 「だといいある」

 「こので凸凹の鋼板はなにあるか?」

 「建設機材ですよ」

 「そうあるか・・・」

 

 民間銀行集団が紙幣発行権を得ると

 元華銀行を中心に列強の租界がまとめられ、チベット警察とウィグル警察が守った。

 本来、租界は外患勢力として排斥されるが、国民党の利権母体として内患利権が成立してしまう。

 そして、民族主義、国粋主義が台頭しそうになると、

 ダミーの右翼団体の潜入した工作員が民族主義と国粋主義の芽を潰していく、

 そして、政府の主要行政機関をチベット族とウィグル族が押さえ、

 拝金主義の波が強まるにつれ、外資の投資が増え、インフレ政策と雇用が大きくなり

 鉄道網、道路網、上下水道、発電と送電網、行政サービスが拡充され、

 コネと共に利権が巨大化していく、

 日本人と欧米諸国が人海戦術で建設されていく道路を見ていた。

 「「「「「「・・・・・・」」」」」」 茫然

 「地平線の向こう側までやってるぞ。どんだけ人がいるんだろう」

 「土地収用ってどうなの?」

 「村ごと殺戮したらしいよ」

 「無茶苦茶だな」

 「外資投資が増えてるからね」

 「元札は本当に信用できるのかね」

 「紙幣の総量はきちんと管理してるし、中国の印刷会社じゃ偽札はできないよ」

 「それならいいけど、中国が強くなり過ぎるのは困る」

 「ウィグル族とチベット族を官僚に潜り込ませてるから何とかなるでしょう」

 「まぁ 紙幣をウィグル族とチベット族から経由させれば自動的にね」

 「ウィグルもチベット族もまだ食い込めてないだろう」

 「漢民族に殺されちゃうからね」

 「悪徳じゃ漢民族の方が上だからな。外資がいくら後押ししたって」

 「とりあえず、鉄道と道路をウィグルとチベットまで通せばこっちのものだ」

 「チベット軍とウィグル軍は?」

 「新型兵装を最優先で送ってるよ。中国人から集めた税金でね」

 「ふっ 売国だな」

 「紙幣の発行権で、国民党の首根っこは押さえたからね」

 「利息分をウィグルとチベットに送り続ければ自動的に強い地域になる」

 上空をC130ハーキュリーズ輸送機の編隊がウィグルに向かって飛んでいく、

 「日本はまた儲かりそうだな」

 「ふっ」

 

 

 標高3700m〜4700m級のチベットには多くの湖が点々とあった。

 湖に近い地盤の固い場所にC130が着陸すると物資を降ろしていく、

 元華銀行から発注された資材が列強各国で作られ、

 外資の足場になり、チベット族の雇用になった。

 外国人たち

 「・・・空気が薄い」

 「風力発電と太陽光熱発電で建物内の気圧を上げることができますよ」

 「どうせ、建物の資材も日本製なんだろう」

 「近いですし、得意ですから」

 「しかし、チベット族やウィグル族を教育するのは大変かな」

 「それも得意ですよ」

 「おいおい、日本は、どこまで人材が余ってるんだ」

 「例の国民基金で国民徴用できるようになったので、人材は融通きくのですよ」

 「日本株式会社」

 「エコノミックアニマル」

 「もっと遊べ」

 「どうとでも」

 

 

 チベット軍総司令部

 組み立て工場は与圧されて、平地と変わらない、

 日本人たちは、凹凸のある鉄板を器用に合わせながら戦車を組み立てていた。

 継手(つぎて)、仕口(しぐち)構造はこれといった機材を必要とせず、

 高度な加工技術によって成し遂げられる。

 チベットはまともな工業力がなかったことから元々全て購入するよりなく、都合がよかった。

 ハイブリット戦車は強力な過給機を持ったディーゼルエンジンで発電し、

 車底に敷き詰めた蓄電池に充電し、

 インホイールモーターを仕込んだ16輪を回転させて、戦車を走らせた。

  20t級機動戦車 ラマ

     全長9.30m×全幅2.71×全高2.55m

     電気推進16基(480kw=652馬力) 速度80km/h 行動距離600km

     55口径76.2mm 6.5mm×2丁     

 

 20t級装甲兵員輸送車 ラサ

     全長7.80m×全幅3.00m×全高3.20

     電気推進16基(480kw=652馬力) 速度80km/h 行動距離600km

     40mm機関砲  2人+8人

 チベット軍将校と日本人

 「素晴らしい。低気圧でこれほど走れる戦車があろうとは・・・」

 「車体はセンチュリオンを参考に、装甲を削って小さくしてます」

 「車内は与圧できますが、やり過ぎると、車外に出たとき高山病になるかもしれません」

 「民間企業と思えない出来だ」

 「大砲と機銃は国際市場に流れてるものですが」

 「ハイブリット技術はありますし、継手加工は得意ですからね」

 「ほぼオリジナルと言えるでしょう」

 「あと、空輸を考えると重くできないので、装甲は期待できないのですが」

 「構わない。このラマとラサさえあればチベット法国は独立できる」

 「時に・・・日本は資源開発コロニーを7つ作ってもいいのですよね」

 「もちろんだとも」

 輸送機からハイブリットエンジンを装備した土木機械と建設機械が降ろされてくる。

 チベット開発は、電動力を利用した土木建設機械の多い日本企業の独占になっていた。

 

  

 イスラエル

 キュラソー島海軍工廠

 設計された通りの資材が世界各地から送り届けられ、工廠で組み立てられていく、

 ユダヤ人は人口が少なく、設計、製造、ノウハウなどの多くを国外に依存していた。

 既に日本艦艇は中国経済侵食、ドイツ・ソビエト圏からのユダヤ人脱出、

 イスラエル建国、ユダヤ資本船のシーレーンの役割を終えて、あらかた処分されていた。

 建国後のイスラエル艦隊もシーレーンを守る必要性が高く、

 経済性を重視した軽装備巡洋艦へとなっていく、

 10000t級巡洋艦マナセは平甲板でフレットナーFl484ヘリ12機が搭載されていた。

 

 艦橋

 「ようやくまともな海軍艦艇を建造できるようになったか」

 「イスラエル内戦で海軍は後回しでしたからね」

 「なんにせよ。軽装でも遠洋能力の高い大型船は有用になる」

 「それでは勝てませんが」

 「勝つ必要はない、海軍として存在すれば、後は、戦略だよ」

 「使える経済力と外交力は十分すぎるほどあるからな」

 「しかし、ヘリ空母とは思い切りましたね」

 「ヘリの性能は悪くないし、イスラエル内戦に投入することができる」

 「それにヘリの性能は今後、向上するだろう」

 「しかし、ドイツ製は少しばかり、面白くないですな」

 「先にヘリの有用性に気付いた国はドイツなのだからしょうがない」

 「各国軍ともヘリの有用性に気付いてないわけじゃないと思いますね」

 「予算上の振り分けで後回しにされてるだけでしょう」

 「インドシナとインドネシアでヘリが使われてるようですが損害も多いようだ」

 「ヘリは開発が始まったばかりだからね」

 「ソビエトもヘリの開発が早いようだが」

 「ドイツの次にでしょうか」

 「アメリカは?」

 「アメリカか。アメリカは収入にならないと生産が軌道に乗らないと思う」

 「戦争でもしないと難しいか」

 「アメリカを戦争させられないのか」

 「このまま、クーデターや共産革命が起きたら事だ」

 「普通の国はよっぽどの馬鹿じゃない限りアメリカと事を構えるようなことはせんよ」

 「日本は、利権に縛られて視野が狭いだろう。大局観がないから挑発に乗らないかな」

 「日本も首相公選で国民の人気を中心に考えればいいし」

 「貴族院と違って、利権団体との絆が薄いから挑発には乗らないだろうよ」

 「正直言って、アメリカ国民も軍産複合体のために血を流す気なんかさらさらない」

 「ましてや、ユダヤ資本のためにジャングルで命懸けなんて嫌だろうよ」

 「国家意識の強い日本やドイツが羨ましい」

 「国家意識が強すぎるとアメリカからユダヤ人が追い出されてしまうだろうが」

 「まぁ そうだが」

 「何とか、アメリカ、イギリス、イスラエル以外にユダヤ資本の避難所を増やしたいものだが」

 「中国があるだろう」

 「人種が違い過ぎる」

 「じゃ スイスか」

 「金融だけじゃなぁ 肥やしになる国が欲しい」

 「寄生虫みたいなもんだからな」

 「「「「あはははは」」」」

 「日本はあと少しだったんだけどな」

 「日本は建国の際、役に立ったし、中国で我慢しょうや」

 「だけどユダヤ資本を排斥してるからな」

 「まぁ 日本の生存戦略と言えなくもないが、何らかの制裁はしないとな」

 

 

 

 日銀から増刷分の公定歩合分の国民基金が人口で割られ直接振り込まれる制度が安定すると

 厚生年金と社会保険を直接、国民基金に振り込む制度が検討される。

 紙幣総量と需要と供給の関係で経済が成り立つものの、

 それとは別に年金・保険関連の官僚縮小と、

 労働意欲を失わせない金額が最大の問題になった。

 高千穂衆議員たち

 「思ったより官僚の反発が強いな」

 「しかし、国家予算から社会保障関連を引き離せれば、国防、建設補修、教育、公共事業でスリム化できる」

 「国民基金以前の金の流れが日銀から銀行で、政府、行政機関、財界、企業、個人の順だからね」

 「日銀から直接、個人口座だから組織票の反発が大きいのだろう」

 「国民基金の増額は、年金と保険の廃止と絡んでくるし、行政職員は死活問題だろうな」

 「年金行政は予算総額に対し、諸経費が15分の1で、人件費が400分の1が搾取分」

 「国民健康保険料の負担は国民年金の倍」

 「予算総額に対し、諸経費5分の1と人件費100分の1で搾取分が悪すぎる」

 「といっても、医師会、薬剤、医療器具と絡んでるし、ほかの国の給付率と比べ、悪くないが良くもない」

 「しかし、現状の保険制度は医師会と薬剤師だけが得をして、健康な人間だけが損をする」

 「不健康な人間は医師への心付けを含めると、なんの国民健康保険かって気もする」

 「ぶっちゃけ、きめ細やかなサービスができなくても国民に一律払い込めるなら」

 「厚生年金と健康保険がない方が合理的だと思うね」

 「とりあえず、保険は、死ぬまで何回、風邪ひいて、歯医者に行って、骨折ってを足して人口で割ればいいんじゃないの」

 「あと、年齢ごとにこれぐらいって額を一律振り込んでいけば無茶な使い方はしないだろう」

 「これなら健康な人間は得をするし、不健康な人間は損をする」

 「しかし、保険をなくすと医師会と薬剤師がごねるぞ。医療費が高くなりそうだ」

 「それは医師法の問題だろう」

 「受付に、疾病ごとに値札書いとけ」

 「あははは・・・個別事情が違うからな・・・」

 「むしろ健康保険に金を使うより。適度に医師を配置して競争させるべきだと思うね」

 「問題は製薬開発じゃないか。アメリカやドイツを追随するなら保険の泡銭がないと」

 「それは別の投資でやるべきでしょうが」

 「そういえなくもない」

 「でも国民が健康だと医師が貧乏になることが問題かな」

 「ふっ アメリカみたいに栄養過剰で国民を家畜化させるか」

 「慢性的に病人が増えて医師会はウハウハ」

 「あはははは・・・医師会のために国民がいるわけじゃないだろうし、それは、まずいだろう」

 「じゃ 国が軍隊形式で医師会を抱え込んでは」

 「それだと金じゃなくなるからな」

 「経歴が傷つきそうな病床だと若輩に押し付けたり、脱走したり、敵前逃亡したりしそう」

 「あはははは」

 「国民健康保険制度はどの道、システム的に限界を迎えると思うよ」

 「年金は、55歳くらいから一律振り込んでいけばいいし」

 「保険も前年の平均値で一律で振り込めばいいだろう」

 「それより、保険分を使い込んで、病気になって、後から大変とか」

 「それは自己責任だろう。国は馬鹿の面倒をみれない」

 「とはいってもタバコ吸う死にたがりはいるし」

 「タバコは戦争中だけにしてもらいたいもんだ」

 「癌とかは?」

 「癌の発生率は3000分の1以下だっけ。多過ぎず少な過ぎずなのが、最大の問題かな」

 「高額医療や癌は、流石に民間保険にしようよ」

 「だなぁ」

 「やっぱり、税金分から振り込むのが筋かな」

 「それだと、厚生省は必要になるし、不正腐敗が大きくなりそうだ」

 「倍以上の保険関連ほどじゃないと思うけど」

 「しかし、増刷分で年金と保険をやるのは、流石にインフレにならないか」

 「それは強制的に金を徴収できる官僚が陥る発想」

 「インフレの原因は原価高と賃金上昇が第一次的で、個人の蓄財は二次的なものだし」

 「カルテルでも結ばない限り、合理化で経費を削って回収率を増やして利益を上げる」

 「普通は客離れを恐れて仕方なく値段を上げるのであって」

 「国民に蓄財がありそうだからって、物価を上げても売れないよ」

 「まぁ 結局、個人が法律や組織利権を利用しながら社会資本の奪い合いをしてるだけだし」

 「年金と保険は結局、再分配だから最初っから国民基金で配っても構わないだろう」

 「いや、問題は増刷分ってことだろう」

 「幾ら蓄財が起こすインフレが二次的でも紙幣の総量が増えるのは困る」

 「インフレで困るのって庶民じゃなかったっけ」

 「増刷分が国民基金じゃ 銀行、高利貸し、行政以外困らないぞ」

 「だっけ・・・」

 「いや、円安は為替で困るだろう」

 「とりあえず、老齢からで影響が小さく、計算しやすい厚生年金を先にやるべきだろうね」

 「年金は保険と比べて利権が小さいし」

 「でもなぁ 借り手がいなくなると、ますます、銀行と高利貸しの反発が大きくなる」

 「内地は利権主義が酷すぎるんだよな」

 「正直、言って聖域に入り込んだお金は落ちてこないし、貧富の格差は広がる一方」

 「放漫財政で破綻して、国債や税金で肩代わりじゃ 財政投資の代わりに人事刷新するしかない」

 「それがいやなら、国民基金を増やして、真っ当な企業がサービスで稼げるようにした方がましだ」

 「というより日本も高千穂も人口増加策が最優先だろうが」

 「この際、四の五の言わず、国民基金で個人口座に振り込まないと、外国人就労に頼ることになるだろうが」

 「日本人が稼いだ財産を外国人にくれてやるなんてキチガイ沙汰だし、それこそ利敵行為だ」

 「だけど、日本が紙幣を印刷してるからな」

 「やり過ぎると拝金主義者と利権主義者に高千穂が兵糧攻めされる」

 「売国奴と国賊か」

 「そんときは、高千穂で紙幣を発行して、経済的に日本から分離する」

 「「「「あはははは」」」」

 

 

 千島列島

 U2ドラゴンレディが日本領空に接近すると日本側から警告を受けていた。

 しかし、高度25000mを飛んでることから日本空軍の迎撃できないと判断し日本領空に侵入する。

 U2コクピット

 「げっ 領空に入った途端、ロックオンされた」

 「朱雀とか言うのがレーダーで捕捉しただけだろう」

 “こちらは日本国空軍管制機。国籍不明機に告ぐ、貴機は、日本領空に侵入している”

 “立ち去らない場合、撃墜する”

 「日本の早期警戒システムは、領空に侵入する前に警告を発するのか。大したものだ」

 「しかし、撃墜するといってるぞ」

 「高度25000mを飛んでるのに?」

 「中国空軍に売りつけた中古のB29じゃあるまいし、撃墜できるわけ・・・」

 警報が鳴り響くと、パイロットは、機体を旋回させ、領空の外へ加速するが手遅れだった。

 細長い電柱のようなものが炎と白煙を曳きながらU2に近づき、

 妨害電波とフレアを掻い潜り、左翼を吹き飛ばした。

 U2は、択捉島の海岸に墜落し、日本政府はアメリカ政府に遺憾の意を述べ、

 日本空軍のU2撃墜は、アメリカ空軍を驚かせた。

 

 

 アメリカ合衆国は、フードスタンプを大量に発行することで、辛うじて暴動を鎮静化させていた。

 白い家

 数十枚の写真がテーブルの上に置かれていた。

 「まさか、U2が撃墜されるとは・・・」

 「本当に25000m以上だったのか?」

 「正確には26500mでした」

 「「「「・・・・」」」」

 「ドイツのラムジェット戦闘機からは逃げ切ったよな」

 「ラムジェットといっても低中速度でジェットエンジン1基で、高速域に入ってラムジェット2基です」

 「タイムラグがあれば逃げられますよ」

 「日本の場合、ミサイルロケットですからいきなりマッハ3.5から4.5だったと考えられます」

 「打ち上げて最短で22秒から18秒ほどですか。場所によっては3分くらい」

 「せっかく、60000t級空母フォレスタル級4隻を建造して数的優位に立った思ったのに冷や水をかけられた気分だ」

 「報復しますか?」

 「報復っていっても落ちた場所が日本の領土じゃ言い訳にもならん」

 「日本はいつの間に先進国になったんだ」

 「さぁ 1910年頃は20000t級戦艦を国産で建造してましたからね」

 「それだって機関部は外国製だろう」

 「物真似ですが国産も作ってましたよ」

 「開国した当時は中古の木造船を外国から買ってたのですが」

 「「「「・・・・・」」」」

 「日本は科学技術の進歩が早過ぎるだろう」

 「日本は有色人種と考えず別格にするべきでは」

 「そう思いたくない」

 「それで、U2の件は、どうされます?」

 「とりあえず、遺憾の意を・・・」

 「「「「・・・・・」」」」

 「この写真は?」

 「日本のプランテーション高層ビルです」

 「都心のど真ん中に・・・・」

 「採算は?」

 「都市の食糧安全保障という口実で採算は度外視ですよ」

 「農家の反発は?」

 「寒冷地の農民で交替制で、米より季節外れの穀物、野菜が多いようです」

 「なるほど、寒冷地の冬は農作業がなく、作物は、被らせないようにしてるわけか」

 「・・・果樹園もあるのか」

 「ええ、リンゴ、みかん、カキ、マンゴ、パイナップル・・・」

 「基本的に密閉されてるので、糸状菌、細菌、ウイルス、マイコプラズマ様微生物の伝染性病害は少なく」

 「管理しやすいので肥料は自動投与。農薬は少なくてもいいようです」

 「いずれ、オートメーション化されるでしょう」

 「日本の計画では30万人都市、人口密度5000人/kuに1棟で計算してるようで、都市圏だけで100棟は建つかと」

 「東京なら単純計算で27棟は建つでしょう」

 「それとは別に寒冷地も建設が計画されてるようです」

 「こちらは農業だけでなく居住を含めた複合型ビルになるようですが」

 「日本は農業輸出国になるつもりか」

 「採算はともかく、丈の低い作物なら敷地面積の最大400倍から500倍は可能でしょうね」

 「こちらがバイオ作物を開発する前に日本は先手を取ってるわけか」

 「日本は生物研究で後進国ですが、土木建設は進んでますから」

 「天候と伝染性病害の損失がなかったら、農産物の競争力は高いわけか」

 「あと、土地収用が容易で、工場が大きくできるので国際競争力も伸びるかと」

 「じゃ 着々と弱点を消してるわけだ」

 「そのうち、海魚養殖も高層ビルでやるかもしれませんね」

 「「「「あはははは・・・・」」」」

 扉が開くと補佐官が現れ、大統領に報告書を手渡した。

 「この写真は?」

 「扶桑の国際工業見本市で日本が出展しました」

 「数値制御工作機械と思われます」

 「はぁ?」

 「日本は、歯車で5軸と3軸の機械式の数値制御工作機械を開発していたようです」

 「本当に?」

 「目の前でV8エンジンとV6エンジンを交互に削りだして実演して見せましたよ」

 「「「「「・・・・・・」」」」」

 「よくよく考えるなら、戦艦の主砲塔制御盤の応用ですからね」

 「精度がいい理由の裏付けが取れたようなものです」

 「日本は、この工作機械を何台持ってるって?」

 「正確にはわかりませんが、」

 「上位十数社は隠し持っていたとして、一社10台で計算しても100台は保有していたかと」

 「アメリカも真空管で作ってたよな」

 「ええ、ですが日本も真空管で同じ機能の工作機械を作ってるはずですし」

 「真空管の精度が上がり、トランジスターの開発が近いせいか、公開してもいいと思ったのでしょう」

 「競争に勝つため中小企業にも売るので隠せないと思ったのでは?」

 「かもしれん」

 「ひょっとしたらアメリカが開発中のトランジスターも日本が」

 「かもしれんな」

 「「「「「・・・・・・」」」」」

 

 

 

 総理官邸

 「とりあえず、共同管理区は、先延ばしする口実になるな」

 「ここは、海凰3番艦の建造を・・・」

 「はっきり共同管理は嫌だってアメリカに言わないからです」

 「経団連がアメリカとの商取引はうまみが大きいから失いたくないんだと」

 「経団連は拝金主義者で国民の事なんてこれっぽちも考えていませんよ」

 「といっても、アメリカの経済制裁は怖いですな」

 「日本は国内需要の数倍の供給力で貿易黒字を上げてる、海外の市場と資源を失うと産業が壊滅する」

 「産業の海外依存は問題ですよ」

 「しかし、国内需要だけだと工業力が小さくなりますし、欧米列強と張り合えません」

 「だけど、列強と張り合うために産業の生殺与奪権を外国に依存しちゃな」

 「だから、海凰3番艦を建造すれば・・・」

 「それにドイツのせいで、宇宙からの圧力が増えたし」

 「宇宙戦艦を建造するの?」

 「ドイツの宇宙艦が静止軌道上にいるのって、怖いよね」

 「んん・・・・増税か・・・」

 「やっぱり、厚生年金を紙幣増刷分で振り込ませて。増税分で宇宙戦艦を作る方がいいのかな」

 「国民が金持ってるなら、国民向けのサービスが増えるだろうし」

 「それはそれで民間活力が大きくなっていいと思うな」

 「海凰3番艦の建造を・・・」

 「だいたい、国権派は、何でもかんでも上意下達で押し付けようとするから頭が固すぎる」

 「軍隊じゃないっつうの」

 「・・・・」 ため息

 「民間活力は庶民が金を持っていない限り土台無理な話しですからね」

 「民間活力はいいが、高千穂が日本政府に対して離反気味なのだが、どうする気だ」

 「離反的というより、州議会の問題でしょう。特に衆議院」

 「右も左もわからない素人のはずだったがな」

 「衆議員が省庁を一回りして、多数決で不良官僚のクビを切ろうとしてたら詳しくなるでしょう」

 「腐ったみかん理論で首を切られる方はたまったものじゃないが・・・」

 「日本から派遣したキャリア官僚は特に厳しく見られがちですしね」

 「そういう、地元贔屓はやめて欲しいね」

 「高千穂を押さえるためにも、ここは、海凰3番艦の建造を・・・」

 「というより、抽選制衆議院制は、日本も取り入れたがってるくらいだし」

 「今度、不正を起こしたら、世論は、一気に抽選制衆議院に傾くな」

 「「「「・・・・・」」」」 ため息

 「時に中国政策はどうするの? ヤバくない」

 「んん・・・確かにチベットとウィグル投資は、漢民族を敵に回す可能性が高いですよ」

 「漢民族投資は金が勿体無いし、利敵行為」

 「だから、海凰3番艦の建造して中国に圧力を・・・」

 「チベット・ウィグル投資といっても元華株の5パーセント分だろう。中国の金じゃないか」

 「自動的に入ってくる配当金を対中国工作に使うのは悪くないと思うよ。ほかの列強もやってるし」

 「しかし、贈収賄じゃなくて、建設投資となると、金額的に不足するだろう」

 「ユダヤ資本はなんだかんだで元華銀行の51パーセント以上だからな」

 「中国の金融を支配してるといってもいいんだよな」

 「ドイツが手伝ってくれるらしいけど」

 「それだって、合わせて10パーセントだから負ける」

 「工作力で負けるからチベットとウィグルに資源コロニーか・・・」

 「資源が出たら儲けものでしょ」

 「日本まで運ぶのが大変なんだよな」

 「別に現物を日本まで運ぶ必要はないと思う」

 「上海までの鉄道と道路がチベットとウィグルまで繋がるなら」

 「チベットで資源を売って、上海で代替物を得ることもできるだろう」

 「カザークと中国の国交化が結ばれたら直接扶桑まで行けるのですが」

 「カザークは北京まで押さえてるからな。もうカザークと中国の国交回復なないと思うな」

 「そういえば、フランス領インドシナは酷いことになってるんじゃないか」

 「先住民とフランス人の殺し合いになってますね」

 「フランス軍兵士がインドシナ人の赤子を壁に叩きつけて殺してる映像が撮られてますし」

 「インドシナ人もソビエトから武器弾薬を供給されて過激になってますし」

 「状況的にはフランス領アルジェリアと似てるとか」

 「武器はタイ王国から?」

 「タイ王国は曲がりなりにも独立国ですからね」

 「もっとも広州から流れ込んでる武器弾薬も多いようですが」

 「華僑・・・」

 「正確には国民軍の横流しでしょう。ユダヤ資本も介在してる噂もありますがね」

 「アメリカは?」

 「アメリカは人種戦争に消極的なので今のところ手を出せない状況ですか」

 「というよりアメリカ経済が貧富の格差が広がり過ぎて、下手をすれば革命かもしれませんね」

 「だから例の国民基金に反発してるのか」

 「国民基金をやめて、フードスタンプにしろと」

 「アホか」

 「だいたい、国民基金はベーシックインカムじゃなく、増刷分の公定歩合の利息保障だろうが」

 「それに国民年金や保険だって、個別でやるより、均等割りの方が行政をスリム化できる」

 「それは、衆議院の強い高千穂の発想だ」

 「あいつら、怠け者まで助けて民族全体を劣化させかねんところがあるからな」

 「ていうか、日本国民のほとんどがそう思い始めてるんだが」

 「行政は産業と絡んでるし、抵抗が大きいのだが・・・」

 「しかしねぇ 行政職員の昇給が大きくなるほど、サービスの分配率が減るし」

 「額が大きくなるほど横領に対する誘惑も大きくなる」

 「年金も保険も国債でテコ入れしなければならないのなら」

 「それなら病気怪我になるかわからんから、一律でって気にもなるさ」

 「まぁ 年金と保険を一律で国民に振り込めば国債を発行しなくてもいいし」

 「問題は、増刷分と税金分の比率か」

 「その辺は、官僚の仕事かな」

 「支障がなかったらそれでいいと思うけど」

 「次は・・・核実験か」

 「ニジェールとチャドは、地下実験なら金次第だそうです」

 「あと、スーダンとマリが実験場を提供してもいいと」

 「金次第化」

 「しかし、核実験は、もうやらなくてもいいんじゃないの?」

 「起爆のタイミングとかあるから。小型化しないといけないし」

 「核兵器の小型化ねぇ」

 「それより、ニジェールとリビアの地下鉄建設は?」

 「ドイツやイタリアとの連帯を考えると欲しいけどな」

 「アメリカ、イギリス、ユダヤ資本の反発があるし」

 「そんなに外資株比率を上げてもらいたがってるのかね」

 「企業は、外資を借りてもいいって言ってるよ。きちんと返してるし」

 「デフォルト起こす企業なら、それこそ、貸して借金を肩に企業を乗っ取る」

 「借金をきちんと返せるだけの有力企業だから、外資株比率を上げて欲しいんだろうが」

 「まぁ 外資による株投資は、デメリットもあるが。国権の抑圧を軽減させる部分もあるし」

 「そういう意味で外資株保有率を5パーセントくらいにしてるのだが、あまり多いとな」

 「だいたい、国民基金で個人が強くなって抑圧が軽減されてる」

 「外資株保有率は経済的なカンフル剤というより。なんか、白蟻っぽいから保有率引き上げは嫌」

 

 

 ヒルトン東京ホテル

 白人たちが東京の様子を眺めていた。

 「ほかのアメリカ人たちの様子は?」

 「日本人に襲撃されないかとビクビクしていたようだが、いまは落ち着いてる」

 「ふっ 東京オリンピック前に何やってんだか」

 「い、いやぁ コンパスが・・・って・・・」

 「はあ、30年前じゃあるまいし、いまどきコンパスが狂ったなんて言い訳が通じるか」

 「・・・・・」

 「アメリカは、ドイツ、ソビエト、カザーク、中国で試したから日本でも試したかったんだろう」

 「・・・・・」

 「ドイツ空軍も撃墜すればよかったのに、U2」

 「「「「あははは」」」」

 「・・・・・」

 「しかし、日本は歴史が古いだけあって、江戸城を中心に神社仏閣があるし見所が多い」

 「いや、本当に見所が多いのは京都だよ」

 「俺なら東京じゃなくて、京都か奈良でオリンピックをするね」

 「新幹線で3時間だからそれほど遠くないだろう」

 「たいしたもんだ」

 「日本の建設企業は、国内どころか、海外の建設を発注してるくらいだから余裕だろう」

 「というより外貨を稼いで資源を買わないと開発できない国だろう」

 「日本の外貨は大きいよ。ドイツもホテルくらい建てて、少しくらい回収しないと」

 「「「「あははははは」」」」」

 「ドイツ人のホテル経営って・・・面白い冗談だ」

 「・・・・・」 ぶっすぅ〜

 「しかし、観光客も冷たい、日本の旅館がそんなに好きか」

 「観光に来てるのに同胞のホテルに泊まってもな」

 「むしろ、日本の老舗旅館を買い取って洋風サービスがいいのでは?」

 「どちらかというと書院造、寝殿造り、数寄屋造り、藁ぶき屋根のリゾートハウスが人気あるよ」

 「一軒家は高いだろうが」

 「居住用ビルは面白かったぞ」

 「天井から射光させて。人工的に庭に雨を降らせて排水してる」

 「日本は予算的に宇宙開発に向かわないのか」

 「上澄みはするようだが、今のところ我が道を行くようだ」

 「じゃ 宇宙開発はドイツの独走だな」

 「背伸びし過ぎて、息切れしてんじゃないのか」

 「ま、まさか。余裕、余裕・・・」

 「よくもまぁ 真空管で宇宙船を飛ばせたもんだ」

 「あれだけ大きな宇宙船なら大丈夫なんだろうけど」

 「実は試作したトランジスターを全部使った」

 「「「「・・・・」」」」

 この時期、トランジスターは戦略資源で、

 設計思想、構造、品質、数量が電子戦を左右し、軍事力の指標になっていた。

 

 

 某図書館

 日本昔話 呪い族

 むかーし むかーし 呪い族がおったそうな

 呪い族は自尊心が強く尊大で、事大を利用して私腹を肥やし、

 働く者は畜生と馬鹿にされ、下々は、どんなに努力しても全て収奪され、

 協力して生きていくより、裏切らなければならなくなり、互いに憎み合うようになったそうじゃ

 人を騙さなければ生きて行けず、物を盗み奪わない限り食べられず、

 人を殺さなければ人並みの生活が送れなかったそうじゃ

 次第に己が自尊心を守るため他者を傷つけ踏み躙り、

 何十万人、何百万の恨みを買い、

 それが何千年もの間、続いたそうじゃ

 死人も生人も王朝と貴族と隣人を呪い続け、

 民族の血統は、いつしか穢れ、火病という名の呪いを帯び、

 ちょっとしたことで癇癪を起こし、暴れ、のたうちまわって、ひきつけを起こしたそうじゃ

 火病は病気や怪我ではない、永遠に伝わる呪い、民族の呪い。

 関わってはいけない、関わってはいけない、関わってはいけない、

 日本の民は、呪い族に自制を求めたが病身舞も試し腹もなくなることはなく、

 呪い族は自らの呪われた血を薄めようと異民族を騙し、奪い、殺して成り済まそうとし、

 日本の民は、穢れた血が混ざることを恐れ、

 呪い族を遠い海の向こうへ追いやったそうじゃ

 しかし、呪い族は自らの闇を認めることなく、

 常に人を呪い貶めようと様子を伺ってるそうじゃ

 

  

 日本の外国航路は、対馬海峡、津軽海峡、関門海峡、宗谷海峡などがあって、外国船が行き来していた。

 深夜、とある海岸

 男たちは海辺から現れると浜辺に岩陰に隠れ、防水ビニールから出した服に着替えた。

 「海水が冷たかったニダ」

 「暖かいところは人が多いから見つかりやすいニダ」

 「誰にも見つかってないニカ?」

 「・・・大丈夫そうニダ」

 「よし、日本文化の象徴、金閣寺を燃やしに行くニダ」

 「金閣寺はどこにあるニカ?」

 「南に500km。西に370kmニダ」

 「そのあと、日本の愛国者を殺しまくりながら、三種の神器、草薙剣も盗むニダ」

 「そして、ブラジルとアフリカ大陸に高句麗大西洋帝国を建国するニダ」

 ウェーハハハハ!!!! ウェーハハハハ!!!! ウェーハハハハ!!!!

 ウェーハハハハ!!!! ウェーハハハハ!!!! ウェーハハハハ!!!!

 「だけど、上手くいくニカ?」

 「大丈夫ニダ。アボジが言ってたニダ」

 「日本人は消極的で犬みたいに忠実ニダ」

 「小心で自信がないから多数派工作と少数派工作に簡単に引っかかるニダ」

 「日本の政治家は世襲が進んで甘ちゃん馬鹿になってるニダ」

 「キャリア官僚は長いモノに巻かれて、事勿れてムラ社会になってるニダ」

 「ボコボコにぶん殴って泣かして、犬のように躾けたら言いなりニダ」

 「それか、妻と娘を強姦して写真を突きつけて脅すか、息子の不祥事に付け込んで脅すニダ」

 「マスコミに情報をリークしながら地位を得るニダ」

 「政治家は世襲命で、キャリア官僚は経歴命だから一発陥落ニダ」

 「後は外患誘致と、保険金や年金の公金横領させて弱みを握ってしまえばウハウハニダ」

 「日本の政治家と官僚をボコボコにして、妻と娘をヒイヒイ言わせてやるニダ」

 ウェーハハハハ!!!! ウェーハハハハ!!!! ウェーハハハハ!!!!

 ウェーハハハハ!!!! ウェーハハハハ!!!! ウェーハハハハ!!!!

 「そして、軍隊と国民を煽てて大国と戦争させて疲弊させればこっちのものニダ」

 「今度こそ成功させて、日本を滅ぼしてやるニダ」

 ウェーハハハハ!!!! ウェーハハハハ!!!! ウェーハハハハ!!!!

 ウェーハハハハ!!!! ウェーハハハハ!!!! ウェーハハハハ!!!!

 「誰かそこにいるのか?」

 「駐在ニダ。逃げるニダ!」

 だーーーーーーーーー!

 「こ、こら待て!」

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です。

 この戦記の日本は、公定歩合、厚生年金、国民健康保険は国民基金に一律振込みになるかも、

 どのみち厚生年金と国民健康保険は制度的に破綻ですし、

 国債で不足分を埋めてるのですから資本主義的な手法で解決できません。

 民主主義的な権利で、一律で個人口座に振り込めば、国債を発行せずに済みます。

 厚生年金と国民健康保険の行政はごっそり削れそう

 

 この戦記の戦後日本も内患の抑圧か。外患誘致の国家解体かを目指す勢力が暗躍するでしょうか (笑

 

 

 あと、チベットとウィグルはジオンごっこができるでしょうか (笑

 

 

 誤字脱字・感想があれば掲示板へ 

第26話 1957年 『戦艦長門の憂鬱』
第27話 1958年 『火病という名の呪い』
第28話 1959年 『エデンの園の利権選民』