月夜裏 野々香 小説の部屋

       

仮想戦記 『白亜の遺産』

 

 第29話 1960年 『インフレは利権拡大。デフレは利権強化』

 台湾沖

 空母雷凰の飛行甲板を使って、陽炎が離着艦を繰り返していた。

 空母艦上機は陽炎60機を除くと

 輸送機2機、対空哨戒機6機、対潜哨戒機6機、ヘリ6機で攻撃機は搭載されてい。

 陽炎は量産が進むにつれ、複合素材が増えて自重が軽減され、

 代わりに電子機器が増えていた。

   空虚重量6620kg/最大離陸重量13000kg

   全長14.1m×全幅8.4m×全高4.5m 翼面積40u

   推力5400kg  速度2450km/h  航続距離 800km〜3000km

   25mm機銃 ハードポイント8基

 陽炎は、陸上型の翼面積30u。空母型の翼面積40uで大きく分かれ、

 海軍型は800kgほど重く、その分だけ、スペックが低下している。

 しかし、性能向上型は、新型エンジン(推力7600kg)に換装し、性能を向上させていた。

 CICルーム

 個々の艦艇のレーダー範囲が統合されてディスプレーに映され、

 艦隊全域のレーダー範囲を蔵王型巡洋艦の無人哨戒機が広げていた。

 陽炎が飛び立つと艦隊レーダーの範囲を超えて哨戒レーダー枠が伸びていく、

 「新型はレーダーの質も良くなってるな」

 「ええ、レーダーも射程も速度も伸びてますし」

 「艦艇同士の距離をもっと空けて艦隊制海域を広げてもいいかもしれませんね」

 「かもしれないが、相互支援があるからエアーカバー次第か」

 「陽炎は単発だから、もう少し大きいエンジンが良かった気がするが」

 「双発と単発は同じエンジンを使えとか、大蔵省の横やりが大きかったのでは?」

 「ふっ 財布の金を握ってるやつが強いから中途半端になるのはしょうがない」

 「数は増やしやすいですが戦術的に苦しいですね」

 「数で補うしかなかろう」

 「台湾防空管区より、中国漁船4隻が経済水域に接近中のようです」

 「巡視船は?」

 「30分で視界に収めるそうです」

 「中国船か、最近は、朝鮮人を日本に密入させようと画策してるらしいが」

 「あと、10分で経済水域に入ります」

 「軍が経済水域で手を出すと、なんか言われそうだな・・・」 

 中国漁船4隻の前を陽炎が急降下しながら水飛沫を上げて飛び去ると、

 中国漁船が引き揚げていく、

 

 

 

 洋上風力発電所は、低周波が聞こえないよう海岸から1000mほど離れ

 設置しやすい水深35mまでの遠浅の海が選ばれる、

 風車塔は1基2000kwで、風車塔の前後左右は100mほど離して建てられていた。

 大規模なものは、歯舞、色丹、国後、択捉が囲む浅い海域の3000基、

 南樺太域の海域の3000基で、

 2か所だけで総発電量1200万kwで、

 平均稼働率20〜30パーセントは、240万kw〜360万kwとなっていた。

 しかし、日本・扶桑で最大の洋上風力発電海域は、黄海に面した扶桑半島の西域で、

 領海・接続海域に50000基の建設が進められており、

 総発電力は1億kwで、稼働率は2000万kw〜3000万kwに達していた。

 さらに小規模発電ながら50000基の洋上風力発電機が建設され、

 総風力発電は2億kwとなり、平均稼働率は、4000万kwから6000万kwに達していた。

 石油安が続くならさらに倍の建設が可能で、

 経済水域での設置や浮遊型風力発電の建設が行われるなら、10倍の規模になると考えられていた。

 風力発電は、設置場所が離れるほど補完し合い、総電力を安定させることができ、

 火力発電所をアイドリング状態に保てることから負担を減らすことができた。

 

 陸奥湾の面積は1660ku 平均水深38m

 2000kw級風力発電機は800基に及び、総発電量は160万kwに達し

 場所柄、平均稼働率20〜30パーセントであることから32万kw〜48万kwが得られ、

 その気になれば倍の設置も可能だった。

 青森

 漁船が出航していく、

 風力発電のせいで底網が難しくなったことから、

 風力発電建設の際、政府と州は漁礁の設置が義務付けられていた。

 漁礁設置に伴い、陸奥湾は定数漁獲型養殖漁業へと移行し、底網が使われなくなり、

 漁獲は一時低減したが漁獲量と価格は安定していた。

 むろん、大型漁船は遠洋に出航して漁獲を上げ、日本の食卓を飾った。

 関係者たちが浜辺から湾内を見つめる。

 「なんとも面白みのない風景になったな」

 「電気が欲しけりゃ建てさせろだから半分脅しみたいなもんだ」

 「まぁ 確かに電気は欲しいし、代金の一部が持ち株で配当されるなら反対はしにくいわな」

 「もっと増やすかもしれんていうぞ」

 「地熱もやってるし、もう足りるやろう」

 「いや、石油が惜しいからって火力発電所をなるべく動かしたくないそうだ」

 「そういや、六ヶ所に地下石油備蓄基地を建設してたな」

 「そういや希少資源格納庫も増えてるし、上は戦争でもする気かな」

 「いや、いくら資源があっても足らんちゅうてたぞ・・・」

 不意に辺りが暗くなると上空をエイの化け物のような巨人機が飛び去っていく、

 「・・・でかいの」

 「わからんが朱雀か白鳳だろう」

 

 

 上海 元華租界

 狭い租界を有効に活用し、中国から搾取するため巨大な高層ビルが建設され、

 日本の土建会社が進出していた。

 テナントに外資系企業が軒を連ね、中国人が店頭に買いに来る。

 元華租界デパートで買える商品は外国製で中国国内製より人気があった。

 元華租界で浄水した水は飲料に耐えることから水道管が租界の外に伸び続け、

 発電所を建設するため租界地が拡大していく始末だった。

 これは中国国内産業が信用できなかったからで、

 国民政府の有力者は租界内に住みたがった。

 そして、当然、日本の高層ビルは有力者の好まれるところで、

 高層ビルがさらに建設されていく、

 サッスーンハウス

 各国の金融代表者が集っていた。

 アメリカとイギリスのユダヤ系資本は、租界外の工場利権を買い求め

 インフレと低賃金の泡銭で荒稼ぎし、

 日本とドイツの利権投資は用心深く租界内に留まり、

 商品やサービスを提供する代わりに資源を購入していた。

 「最近の日本軍の対応は酷すぎるある」 

 「中国は領海侵犯をやめていただきたい」

 「このままでは日本の洋上風力発電を接収せざるを得ない」

 「接収の際は、南京に地対地ミサイルを撃ち込むことになるが、よろしいか?」

 「なにも、奪うとは言ってないある。金は払うある」

 「中国で主導部が失われたら楽しい権力抗争が始まるでしょうな」

 「・・・・・」 ぶっすぅう〜

 「「「「・・・・・」」」」

 「まぁまぁ ここは領海を侵犯したことが悪いわけだし」

 「日本の発電所は船舶扱いなので、文句があるのなら退避勧告すればいいでしょう」

 「・・・・・」

 「洋上発電所は、国内外で需要がありますし」

 「資源購入に惹かれて置いてるだけなので、別に引っ越しはかまいませんよ」

 「火力発電所の二酸化炭素、二酸化硫黄、炭塵で、国土が覆われますな。きっと」

 「公害対策して欲しいある」

 「石炭を売ってくれたら、洋上風力発電所を建設してあげますよ」

 「日本はずるいある。中国のお金で風力発電所を作ってるある!」

 「なんなら租界デパートの商品も引き上げましょうか。質流れ品とか・・・」

 「い、いや、そこまで怒ってるわけではないある・・・」

 「どうでしょう。安全保障上、日本の洋上発電所を元華銀行の名義にされては?」

 「さ、賛成ある」

 「いえ、アメリカとイギリスに高い保険を払ってますので、いざとなったら回収できるでしょう」

 「「・・・・・・」」

 「時に国民基金は紙幣価値を失わせる恐れがある」

 「まぁ 確かに何千億円の紙幣を持ってても、なんでそんなに持ってるのって気にはなりますね」

 「こういう紙幣は財源があって発行すべきだ。財源もなく発行すべきではない」

 「だから公定歩合分の保障ですよ」

 「民主主義の権利なので財源は要りませんし」

 「それが危険な発想なのだ」

 「日本のベーシックインカムもどきといい、カザークの紙幣取得制限制といい、反資本主義的だ」

 「反資本主義だからと言って、反民主主義とは言えませんな」

 「むしろ、民主主義的に解決すべき手法を資本主義的な手法で搾取する方が非合理的でしょう」

 「社会保障とか」

 「「・・・・」」 憮然

 「だいた、貧富の格差が広がり過ぎても、お金持ちが道を歩けなくなると困るでしょう」

 「我々は防弾自動車を作って、送り迎えしている」

 「子供の誘拐を怯えなくてもいいですし」

 「「「・・・・」」」

 「まぁ 警察は犯罪が減って出世できなくなるから困るとか、言ってましたが」

 「・・・日本は天皇を中心とした同胞家族意識がありまして」

 「兄弟から巻き上げて、飢えさせたりは、陛下の前に出にくいものがありましてね」

 「銀行は利息が欲しいだけで、土地や家屋を巻き上げるまでしたくないので・・・」

 「そんなのは銀行経営者の言うことではない!」

 「銀行システムはあくまでも、手数料で世俗資産と利権を巻き上げることにある」

 「その通りある、日本の国民基金の拡大は反対ある」

 「漢民族は、暴動起こす寸前ある」

 「それに国民の紙幣保有量を底上げされたら中国の低級品が日本に売れないある」

 「日本人だけ所得補償はずるいある」

 「だから言ってるじゃないですか。ベーシックインカムじゃないと」

 「公定歩合を基準にしてるので、インフレが小さくなれば国民基金も小さくなると」

 「日本は高層ビルを建ててるある、発電所を作ってるある。ずっとインフレある」

 「中国が日本企業にビルや発電所を発注してるからでは?」

 「・・・・・・」

 「「「「「・・・・・」」」」」 ため息

 「あのビルは困るよ。農業は平地でやるものだ」

 「いや、日本は山がちで平地が少ないですから」

 「まぁ 伝統的な農家と被らないように珍しい作物を生産してますよ」

 「日本の農業保護は異常だ!」

 「酷いある。あんまりある。せめて中国労働者に日本の労働市場を開放するある」

 「中国は反日教育してるので、高千穂で親日教育された先住民を使いますよ」

 「反日教育なんて誤解ある」

 ばさっ! ばさっ! ばさっ!

 中国の教科書がテーブルの上に出された。

 「中国人労働者に日本で犯罪を起こされたくありませんな」

 「こ、これは、古い教科書ある。い、今はもっと違う教科書ある」

 「今年の発行ですが」

 「「「「「・・・・・」」」」」 ため息

 「ち、違うある。まだ、通達が行き届いてなかったある」 

 「南京の出版社なのに?」

 「ち、中国は、政治決定から生産まで時間がかかるある!」

 「・・・・・」 じーーーー

 「「「「「・・・・・」」」」」 ため息

 「まぁまぁ ここは中国国内市場の話しをしようじゃありませんか」

 「最近、外資はウィグル族とチベット族に肩入れしすぎある」

 「あなた方、華僑や国民党だって、ウィグル族とチベット族に警護してもらってるじゃないですか」

 「そ、それは、ちょっとだけ、同族から搾取し過ぎたからある」

 「「「「「・・・・・」」」」」 ため息

 「と、とにかく困るある」

 「しかし、漢民族よりチベット人やウィグル人の方が信用できるし」

 「金を預けやすいからな」

 「そうそう。中国は、嘘つきと泥棒と人殺しをもっと減らすべきだ」

 「そんなの中国じゃないある」

 「「「「「・・・・・」」」」」 ため息

 「どうだろう。日本はお金を海外に貸し出しては?」

 「日本の金利が1パーセントでは、アメリカに投資しても莫大な利益が上がるはずだ」

 「そうニダ。お金を貸すある。商品と資源の交換だけじゃ駄目ある。中国の会社に投資するある」

 「そうですね。ペーパーカンパニーを買わされると辛いですし」

 「為替操作されると大損ですから、もっとレートのいい時にお金を貸さないと」

 「それに金利は低くてもインフレで国民基金が上澄みされますからね」

 「だいたい、増刷のたびに、個人口座に金が振り込まれてくるのに、あくせくしませんし」

 「投資するなら日本にとって都合のいい国にしたいですね」

 「「「「・・・・」」」」 むっすぅ〜

 

 

 インドから飛び立った輸送機がチベットの飛行場に着陸する

 中国国内の外資系企業が元華銀行の影響下に入っていく中、

 チベットとウィグルは、各国の資本が独自に進出していた。

 日本はチベットで

 睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、

 葉月、長月、神無月、霜月、師走の資源コロニー12か所を会得すると

 リチウム、クロム、銅、ダイヤモンド採掘と採掘都市の建設を開始していた。

 第3資源コロニー 弥生(やよい)

 太陽光熱発電所と風力発電所が建設されていく、

 発電に成功すると土木建設機械が増えて、建設と採掘が容易になっていく、

 関係者たち

 「リチウム鉱山か」

 「採算が取れたらいいのですが」

 「まぁ チベットは日本のハイブリット型自動車がいいだろうし、何とかなるだろう」

 「じゃ 発電所を作れば、自動車も・・・」

 「それで少しずつ利権を強くしていけばいい」

 「それにリチウムなら蓄電池の性能を向上できる」

 「電気自動車は有利になるだろうな」

 「潜水艦もですよ」

 「潜水艦ねぇ」

 「アメリカのジョージ・ワシントン型原子力潜水艦は脅威だそうですよ」

 「日本の潜水艦は、原子力電池で淡水化と電子部品の補助で使われて」

 「動力はディーゼルと蓄電池がメインなのでどうしても不利だとか」 

 「あと、電子部品もか」

 「投資は大きいが利益にはなるだろう」

 「ハイブリットエンジンの増産にはなりますね」

 「日本は電気自動車ばかりで工業力が育ちにくくて困る」

 「完全なガソリン車やディーゼル車じゃなくても、せめてハイブリットじゃないと」 

 「大量生産で機械力を付けなければ電気自動車ばかりじゃ話しにならない」

 「しかし、場所柄、労働力がもう一つ足りないですね」

 「酸素ボンベ担いで仕事だしな」

 「だが、いったん、足場を作ると守りやすいと思うな」

 「チベット軍の戦力は?」

 「現在、10個連隊ほどでしょうか」

 「約30000人規模か、少ないような気がするな」

 「こういう国は、統制がしっかりしていませんし、部族外に武器を渡すと反乱が怖いですからね」

 「外敵より、内輪の反乱か」

 「鉄道が敷かれたら中国人が押し寄せてくるかもしれないというのに暢気なものだ」

 「ウィグルはどうしますかね」

 「資源はあったっけ?」

 「たぶん、石油、金、稀少金属が期待できそうです」

 「推測じゃ動きにくいな。確認しないと」

 「日本人は資本で余裕がないので、山師が嫌いですからね」

 「そこは何とか捻り出すべきだろうな」

 「日本は資源で余裕が出てきてるのでは?」

 「備蓄の希少資源は相当なものですよ」

 「国際情勢がどう転ぶかわからないし、高騰したら売ればいいだろう」

 「とにかく、本国は資源がない、資源は得られるとき、得るべきだな」

 

 

 イタリア領リビア

 ドイツ・イタリア合同で油田が開発されるとリビア開発は徐々に拡大していく、

 そして、石油に引き摺られるように日本資本も進出し、

 太陽熱発電所が沿岸域に建設され、発電した電力で海水を引き揚げて淡水化し、

 リビア各地に水を供給した。

 関係者たち

 「リビア油田のおかげで、一気にリビア開発が進みますね」

 「まぁ しかし、石油の戦略的価値はともかく、いま安いからな」

 「でも売るわけではないでしょう」

 「日本は、石油がいくらあっても足りませんが」

 「日本は建設が大きいからな」

 「それに比べ、イタリアときたら・・・・」

 「シエスタが本国より長いようで」

 「正直、戦争中より怠惰だ」

 「地下鉄トンネルの建設は、進めてもいいので?」

 「是非、頼むよ。高千穂まで2800kmだが成功すれば、日独伊の結束は強まるし」

 「非ユダヤ資本の要になる」

 「いまのところ、ドイツと日本資本だけがユダヤ資本の侵食を食い止めてる」

 「しかし、華僑資本は苦戦中、アラブ資本は石油しだい、インド資本は分裂気味だ」

 「問題は、老練さで太刀打ちできないことですかね」

 「まぁ 国家産業が民族資本と価値のある製造業を握っている限りは、持ち応えられるそうだが」

 「アメリカは戦争できると思ったら遠慮なく経済的に追い詰めて挑発して来るからな」

 「そうですね」

 「ところで日本は、宇宙船を打ち上げないのかね」

 「いまのところ、無人ロケットがせいぜいですね」

 「何しろ予算がないので。日本の有人宇宙船は70年くらいしょうか」

 「アメリカは61年からアポロ計画で宇宙艦を打ち上げるそうだが」

 「ドイツが火をつけたからでは? ソビエトも無人宇宙船を打ち上げてますからね」

 「日本は宇宙開発で遅れてもいいのかね」

 「準備が整えば打ち上げますよ」

 「まぁ 次期早々で背伸びし過ぎという意見もあるが」

 「ドイツは、1970年までにバイエルンをハニカム構造7列の20連結させて宇宙戦艦と呼ぶよ」

 「一ユニットが全長12mと直径4mでしたら、全長240mで直径12mですか」

 「確かに宇宙戦艦と言ってもいい規模ですね」

 「最低でも、そのくらいの規模がないとヴァン・アレン帯を抜けたとたん丸焼けにされるからね」

 「大変な投資です」

 「80年代くらいまでに同型艦4隻を建造して、月基地を大きくしていくだろう」

 「実に壮大ですね」

 「何としても月に聖域を作りたいものだ」

 「今度、宇宙ロケットを打ち上げるが日本人もどうかね」

 「それは助かります。日本で乗員を募集してみましょう」

 

 

 

 アメリカ合衆国

 ヒューストン宇宙センター

 ドイツが宇宙艦バイエルンを打ち上げるとアメリカも追随しようと宇宙ロケットを開発していた。

 中央指揮所では、モニターやコンピューター類が設置されていく、

 アメリカ製だけでなく、日本製、ドイツ製まで配置され、

 今のアメリカ産業が万全でないことが目に見えて知られる。

 関係者たちがカドゥナコーヒーを片手に最終調整を確認していく、

 「まったく、労働運動を何とか押さえ込まないと、このままでは内戦か革命だぞ」

 「暴動に関わる人数は、2パーセントほど減少しています」

 「犯罪は?」

 「3パーセント増加」

 「やれやれ・・・」

 「調子はどうかね?」

 「現在、サターン型宇宙ロケット20基の建造を準備中です」

 「そうか。ドイツの宇宙艦に勝てるのだろうな?」

 「いまのところ、非武装ですよ」

 「そんなのはわかっておる」

 「しかし、無理をしてでも宇宙戦艦を打ち上げなくてはアメリカは、ドイツに頭を押さえられる」

 「ソビエトにも・・・」

 「ふっ あんな遅れた農業資源国に負けるものか」

 「日本は出遅れてるようで」

 「日本は土建電化国だ。予算、人材、資材を宇宙ロケットに回せないのだろう」

 「ですが少しは宇宙に予算を分散してくれないと、日本の経済力が異常に伸びてますよ」

 「日本は、核兵器を持ってるからな」

 「中国の軍事力を支援して、中国と日本を戦わせるとか」

 「中国沿岸部の電力は日本に頼っているところが大ですから」

 「三峡ダムは?」

 「これからです。それに三峡ダムが完成しても中国の経済力は伸びてますので」

 「中国沿岸の洋上風力発電と太陽光熱発電は外せないでしょう」

 「そういえば、日本のチベット開発は?」

 「チベット軍は規模はともかく、近代化しつつあるようです」

 「鉄道が上海からチベットまで届いても持ち応えられるでしょう」

 「中国軍は数で圧倒してるだろう?」

 「チベットは高山病域ですから数の問題ではないようです」

 「んん・・・日本もドイツも気に入らんところばかり、支援する・・・」

 「まぁ ドイツがバイエルンを上げてくれたおかげで、暴動は少しばかり減ってるし」

 「宇宙開発予算も増やすことができた」

 「しかし、フードチケットでは、誤魔化せそうにないですし、暴動も終わらないのでは?」

 「暴動は、日本の国民基金に刺激されてるからな」

 「可能性は大ですね」

 「日本を滅ぼしたい」

 「1940年頃は、チャンスがあったのですが、上手くかわされてしまいましたからね」

 「いまは核戦争になりますよ」

 「アメリカの労働者を押さえるために、中国に産業を移してるから戦争はまずい」

 「そういえば日本はビルで石油を生成してるので、オイルロード遮断に強くなる予定です」

 「あと、カザークの油田も」

 「くそぉ 日本は経済で護送船団しやがって。何とか日本人を騙さないと・・・・」 

 「朝鮮人を日本に潜り込ませて、内部から経済護送船団を破壊させようとしてます」

 「上手くいきそうなのか?」

 「日本は個人証明を遺伝子で行ってますし」

 「密入国の上に日陰者ですからね」

 「まともに就職できないので持ち金使い潰したら、お終いです」

 「だが、護送船団方式は、抜け駆けが許されず、自由競争がない」

 「努力している中小企業にとって、独立隆盛を阻害する邪魔な制度だし」

 「怠け大企業は、安楽な制度でいずれ全体を劣化させ足を引っ張る」

 「まぁ 昔の幕府みたいな規制して抱え込みだからな」 

 「小魚が群れを飛び出して来れば、パクリと喰えるのだが」

 「日本自動車産業は、アメリカでの現地生産をなんと?」

 「北アメリカでの現地生産は賃金の安いカナダか、メキシコで行いたいと」

 「ちっ 日本人め」

 「用心深いですね」  

 「ロスチャイルドの影響下なのが面白くない上に。非ユダヤ資本の強い地域を選択する気です」

 「やっぱり、アメリカは戦争しないとユダヤ資本の影響が弱いようで」

 「世界中で紛争を起こして、武器弾薬の調達を増やしてるが戦争でなければ中央集権が難しい」

 「ですが中央集権が強すぎると、大統領権限が強まって我々の生殺与奪権が奪われます」

 「それはまずい。ユダヤは金融と民需で頼られていても軍需で警戒されてる」

 「どこか適当な国と戦争してくれたら・・・」

 「アメリカ人は軍産複合体のために死にたいと考えていませんよ」 

 「まぁ そうだろうが黒人はどうかな」 

 「黒人とフィリピン人は中国支配で有用なのでそっちに・・・」

 「やれやれ」

 

 

 ワシントン 白い家

 バイオ作物の報告書が揃えられていた。

 「この作物で少子化は、可能なのかね」

 「モルモットで検証されてます」

 「副作用は?」

 「もうしばらく研究が必要ですな」

 「人体実験は?」

 「いえ、副作用が推測できるまでやめた方がいいでしょう」

 「少子化以外の症状が大量に発生する可能性もありますから」

 「生育にいい種子を開発できれば世界中にバイオ作物を売り込むことができるな」

 「問題は、日本とドイツでしょう」

 「両国とも相応のバイオ技術を有してるのでバレるのでは?」

 「「「「・・・・」」」」

 「あと、日本とドイツも食糧の自給自足を推し進めてますし」

 「いくらアメリカの農産物が安くてもシャットアウトでしょうな」

 「それに諸外国が農産物を買うとしても高千穂だよ。質がいいし」

 「なんとか、ドイツと日本を潰したい、あの二か国は邪魔だ」

 「最近はカザークもですよ。旧ロシア貴族が回帰してますからね」

 「あと、インドも伸び上がりです」

 「我々の手下を送り込んでる。何とかなるだろう」 

 「ドイツと日本をどこかの国と戦争させるべきだ」

 「そして、核を撃ち合わせて共倒れさせろ」

 「ヴィシーフランスと中国で工作してますが国民の反発は大きいようで」

 「例え動機があっても、我々だけが得をするような事はしたくないだろう」

 「核ミサイルを発射した後、アメリカに逃げてくればいいじゃないか」

 「しかし、フランス人や中国人の反ユダヤ勢力は少なくないし」 

 「そこまで上層部を押さえるのは簡単ではない」

 

 

 東京オリンピック

 急成長を遂げる日本に興味を持った世界各国の人々が訪れていた。

 白人たち

 「今回もジーンリッチ選手の一人勝ちだろうな」

 「「「「・・・・」」」」 むっすぅ〜

 「一回りしたが日本は凄まじい勢いで成長してるようだ」

 「国民は勤勉勤労ですが、上層部は倦怠期な気はしますがね」

 「だが日本でも衆議院が抽選制に移行する動きが強まってる」

 「国民基金で買収が利かなくなってる」

 「その上、日本と扶桑が世襲どころか。抽選1期になると我々の工作は、排斥されてしまう」

 「日本から朝鮮人が追い出されてるし、足場を作れないのが問題だな」

 「時に軍事力は弱いと思ったが」

 「原子力機関を補助機関として使ってる節はあるぞ」

 「調べた限りでは原子力電池だと」

 「おれはマイクロ波網の拡大が気になる」

 「マイクロ波は難しい技術なのか」

 「いや、電子レンジの応用だ」

 「しかし、電気自動車は総合的な燃料消費で4分の1以下なら効果は絶大だよ」

 「ガソリン・ディーゼルエンジンを開発した国としては、真似したくても抵抗がある」

 「抵抗が大きいのは石油メジャーが強いアメリカの方だ・・・」

 国立霞ヶ丘陸上競技場の上空が影に覆われると、

 「「「「「・・・・・・」」」」」

 人々の視線は上空の白鳳に注がれ、絶句する。

 それまで、夜間に離着陸し、

 昼間は、沖の洋上を飛ぶことで用心深く人々の目に触れないようしていた。

 列強の軍事は気付いていたものの、証拠となるのは、暗い中での写真撮影でしかなかった。

 その全長120m×全幅120mの巨大機が初めて映像に撮られ周知に姿を現した。

 

 

 

 高千穂

 環状線外の自治区は円札ほか。自治紙幣が発行され流通していた。

 自治紙幣は高千穂自治州で印刷し、発行の5パーセントを高千穂政府の取り分にしていた。

 紙幣の精度と品質は高度になり、 

 複製が困難になれば信用が高まって、紙幣の価値が安定していた。

 先住民の多くは環状線内で円札を稼ぐと円建で銀行に入れ、

 日常生活は自治紙幣を使い流通させていた。

 これは自治州が国民基金の恩恵を受けられない代償で、

 自治州政府と先住民は、ほぼ満足していた。

 そして、日本人が自治区で働くと円建てで貰い、

 自治紙幣に換金すると上澄みで生活ができることから楽な生活ができた。

 もっとも、国民基金があるためか、多くの日本人がボランティア気分で働いている。

 環状線外周ハウサ人・フラニ人自治区

 白人たちが銀行でハウサ紙幣に換金する。

 そして、外周自治州の教育と投資が進むにつれ、近代化し、

 アフリカ大陸からの労働者を呼び寄せた。

 白人たちが高千穂外周自治区の視察をしていた。

 「黒人も遺伝子口座のカードを使ってるのか」

 「手っ取り早い身分証明だからね」

 「国民基金から降ろせるわけじゃないが、普通銀行口座とも連動している」

 「まぁ 俺が作った口座と同じだよ」

 「採血されたのか?」

 「ああ、指紋もデーター化されてたし」

 「まぁ カード無くしても降ろそうと思えばおろせるから悪くない」

 「マネーローダリングは?」

 「無理だろう。まぁ法人口座も結局、代表は血を取られることになる」

 「やれやれ・・・」

 「しかし、日本語が多いな。看板も現地語と日本語になってる」

 「先住民も日本語を話す子供が多数派だからね」

 「大した強制力だ」

 「金を払って日本語教育を受けてるから自発的らしい」

 「「「「・・・・・・」」」」

 「高千穂は円を印刷しない代わり、外周域の自治紙幣を印刷してるわけか」

 「いつでも自前の紙幣を印刷できる体制になってるとは考えたな」

 「しかし、外周域の黒人も生き生きしてるが、経済状態がいいのか」

 「アパートを見せてもらったが、贅沢ではないが大した生活だったよ」

 「アメリカの貧困層より豊かで差別のない生活か」

 「地域で分けられ差別されてるだろう」

 「だが自治があって自由だ」

 「アメリカで黒人は、二等民族扱いなことに変わりない」

 「しかし、日本人も気前がいいな。我々だったらもっと奴隷らしくさせるが」

 「だが、アメリカの黒人を潜入させやすい」

 「外周自治区も国民総背番号制に入ってるよ」

 「アメリカ黒人を潜入させるとアフリカ回帰しそうだな」

 「それは言える」

 「自治州の軍隊は?」

 「国境警備隊を組織してる。軽装備だが周辺の植民地軍じゃ勝てそうにないな」

 「高千穂の主力日本軍は、自治軍を防波堤にしてるわけか」

 「工業力は」

 「ほとんど農業だな。日本人が助けてるおかげで輸出するほどある」

 「農産物を輸出して資源を買ってるわけか」

 「もう、なんでもありだな」

 「国民基金で労働意欲が低下すると思ったがそうでもないのか」

 「だから紙幣増刷と公定歩合で国民基金が増減するから、働くほど国民基金が増える」

 「当然、働かないと生きていけない強迫観念が軽減されても失われることはない」

 「外周自治州を除く、日本国民全員が公定歩合分の配当を受けられるわけか」

 「じゃ 嫌な仕事、危険な仕事は先住民が増えるわけか」

 「いや、日本人も結構いるな」 

 「働き者だな」

 「贅沢をしようと思ったら金は要るし」

 「国民基金の代償で、3年間の雇用徴用制も敷かれてる」

 「仕事は抽選になるがそのまま正社員も少なくない」

 「外周域の先住民を反日化させられないだろうか」

 「むしろ、親日ですからね」

 「土地を奪われたのに覇気のない」

 「生活は以前よりいいですからね」

 「国民基金を寄越せと暴動を起こさせないだろうか」

 「自治紙幣をなくすことになるので、それは躊躇するのでは?」

 「まぁ 自治紙幣は大きいわな」

 「あとインフラが整備されて利便性が増して衣食住が安定してる」

 「羨ましい限りだ」

 「工業力も強いってことか、エネルギーはどこから?」

 「高千穂は、日本と違って、太陽光熱発電が主流だ」

 「赤道域だからな」

 「夜は?」

 「水力と火力が主流になってる」

 「崩壊熱発電は?」

 「地下に埋められているようだが数は不明だが、60万kwで逆算すると300基くらいだろう」

 「主に大企業、区町単位で使われているらしい」

 

 

 高千穂の牧畜は牛1230万頭、めん羊1285万頭、ヤギ2630万頭、

 高千穂の気温は平均25℃〜28℃だったことから暑さに強い牛を飼育していた。

 しかし、日本で好まれるような黒毛和牛、ホルスタイン牛の飼育は、10℃〜18℃が適温だった。

 高層ビルの一つは黒毛和牛用で建設されていた。

 温度は制御されて、牛にとって快適な環境が作られていた。

 子牛は上階層で育てられ、育つにつれ中層階に移動し、下層で解体される。

 そして、解体された黒毛和牛の生肉の一つが寿司ネタとして載せられ目の前に出された。 

 白人と日本人

 「生肉の寿司なのか・・・」

 「なかなか美味しいですよ」

 「大丈夫なのか」

 「検査してますし、屠殺したばかりですよ」

 「高層ビルで牧畜はやめてくれよ」

 「確かに・・・」

 「ぅ・・美味い・・・」

 「高千穂は、暑い国だし、毒蛇や毒虫も怖いし、適温での牧畜が難しいからね」

 「どうせなら羊にしろよ。小さいし育てやすいだろう」

 「羊の棟も建てるんじゃないかな」

 「なんでそんなに金がある」

 「海外で10棟建てると国内で1棟は建てられるし」

 「なんで広い国なのに平屋で飼育しないんだ?」

 「実験ですよ。ビルだと射光を取り込みやすいですし」

 「アメリカの牛を買えばいいだろう」

 「アメリカの牛は、質が合わないから」

 「ハンバーグにしてタレを付けろ」

 「まぁ 平地の野牛は味が濃いけど癖が強いからな」

 「アメリカから牛を買うのが嫌だったら、高千穂企業の株を売ってくれよ」

 「外資株枠5パーセント制限がありますから」

 「それは、日本の法律だろう」

 「いやぁ ユダヤ資本の提案に安易に乗るのは危険だと高校教育当たりから教わりますからね」

 「おいおい、善良な提案だぞ」

 「企業は実力相応に海外に出ていくべきだ。国家の飼い犬になってはいけない」

 「まぁ 確かに足枷手枷で辛いときがありますからねぇ」

 「ここは、一つ、経済ビックバーンで暴利を得るべきじゃないか?」

 「そ、そういわれてもねぇ〜 右翼系が頭硬くて・・・」

 「それならアメリカの会社の株を買えばいい、配当がいいぞ」

 「配当か・・・日本はモノとサービスの方が情報と紙幣より価値が高いからね」

 「それはいけない、間違ってる。情報と紙幣はモノやサービスより勝る」

 「まぁ 紙幣はともかく。情報が一番上っていうのは確かだな」

 「・・・・・」

 

 

 

 カザーク連合は沿海州、満州、黄河以北の華北を支配していた。

 ソビエトから分離独立しただけあって共産主義体制は取れず、

 かといって、自由資本主義には移行できず、

 紙幣保有量が制限された資本主義と

 白人1票、中国人10分の1票の民主主義が採用された白人世界が広がっていた。

 白人は反共ロシア人、ドイツから淘汰された西欧人、

 東欧、バルカン半島の諸民族の一部が上位層を制し、漢民族を隷属していた。

 カザークと中国の国境線は停戦後も閉じていたが、

 列強のカザーク・中国投資が増えるにつれ、中国人は中国へ逃れ、

 中国少数民族は労働人口としてカザークへと流入していく、

 日本人たちが外見はカザーク・テント風の高層ビルを建築してた。

 社会整備が整うにつれ居心地がよくなり、欧米列強の白人が集まっていく、

 北京

 日本人たちは紫禁城を見学した後、

 三角帆を張り合わせていたようなカザーク風テント型ビルで、ロシア料理を食べていた。

 「悠久の北京もついに白人の住む世界になったか」

 「なんか、おれらの企業も利敵行為に近いことしてるよな」

 「カザーク人は約束を守るよ。今のところ・・・」

 「だけどアメリカ製とドイツ製の武器が増えてる」

 「中国と戦争するのならいいけど、扶桑半島に攻めてこられるとまずい」

 「そこそこ中国を助けてるし、ソビエトとも外交パイプを作ってるから何とかなるだろう」

 「問題は、アメリカやイギリスに比べて情報工作費が少ないことだろう」

 「黄色人に対する人種差別もあるしな」

 「しかし、雰囲気的にアメリカ合衆国に近い」

 「アメリカもそのつもりだろう。カザーク連合をアジアのアメリカ合衆国にしようとしている」

 「カザークの国粋主義者は面白くないだろうがね」

 「じゃ 国粋主義者と組む方がいいのか」

 「国粋主義が強くなると中央集権が強くなり過ぎて、扶桑への圧力が強まる」

 「とりあえず、金はないが親日を増やさないとな」

 「ところで、大連の洋館で発見されたアレは本物なの?」

 「ああ・・・ユダヤの血族史?」

 「凄いよね。欧米の王族も含んでハザール時代まで辿れるし」

 「欧米諸国からソビエト、カザークにまで及んでる」

 「というより、血族史なんて良く作ってるよな」 

 「だけど、血縁を辿って行けば、伝手がある」

 「血縁で助けてくれるんだ。日本じゃ血縁辿っても難しいけどな」

 「日本の場合、血縁を辿るより自分で働く方が楽だからね」

 「血族史は、多数民族の中で、少数民族が生き残る知恵だろう」

 「逆にいうと多数民族より、少数民族が結束しやすい」

 「日本も朝鮮人を追い出さなかったらヤバかったよね」

 「だけど最近は同和が足を引っ張ってる気がするが」

 「ユダヤ資本から金が流れてるんだろうな」

 「外資枠を5パーセントも認めてるからだ」

 「5パーセントくらいなら活力にはなるさ」

 「気が進まないが同族の圧政を望まない日本人も少なくない、ガス抜きだよ」

 「ガス抜きは高千穂があるだろう」

 「活力ならユダヤ資本以外を引き入れたいね」

 「それはいえる」

 「日本も一時は河豚計画でユダヤの国家を満州に作らせようとしていたが、いよいよって気がするね」

 「きっとカザークにもユダヤの毒に当たると思うよ」

 「しかし、ユダヤ人が、お金持ちなのは確かだね」

 「ふっ 蛇どもが数字を書いて印刷した紙切れだろう」

 「信じた振りをしようや、少なくとも緑色の紙幣はいまのところ使える」

 「しかし、アメリカ製品で欲しいモノがない」

 「「「「あはははは」」」」

 

 

 石油輸出国機構OPEC

 イラン、イラク、クウェート、サウジアラビア、ベネズエラが石油カルテルを結成。

 達磨島の日本人たち

 「カルテル結成か。作るだろうって思ってたから “いつ” やるかって話しだったからねぇ」

 「できてしまうと空気がガラッと変わるな」

 「いまのところ石油は、ミネラルウォーターより安い」

 「しかし、高騰すると日本の建設計画が軒並み潰される」

 「石油は欧米と利害が一致してるから何とか価格を押さえられると思ってるけどさ」

 「ドキドキものだね」

 「高千穂がOPECに入るって話しはどうなったの?」

 「いまのところ保留。まぁ OPECの内部に入って、切り崩したい気もするがね」

 「だいたい、アメリカは空母でベネズエラや中東を威圧したり強引すぎる。産油国が結束してもおかしくないよ」

 「おかげで達磨島の航空隊も増えたじゃないか」

 「アラブ諸国に必要以上の軍事的威圧を与えてしまうと兵器を買おうとするだろうし」

 「石油価格の高騰に跳ね返るから面白くない」

 「どの道、空母派遣すると燃料的に厳しくなるだろう」

 「いや、建造中のエンタープライズは原子力空母だから、インド洋に張り付けることができるだろう」

 「日本空母は補助動力でしかないのに、アメリカはよくやるよ」

 「通常航行だけなら補助動力でも十分だろう」

 「しかし、戦闘になると一気に燃料が減るから戦争なんてしたくない」

 「アメリカは戦争やりたがってるようだけど」

 「正確にいうと戦争したがってるのは銀行じゃないかな」

 「戦争になると紙幣を一杯印刷できるし。利息でホクホクだからね」

 「むしろお札は刷らない方が希少価値があると思うけどな」

 「いや、自分たちが9割以上の紙幣を持っていれば大丈夫だろう」

 「それは、流石に・・・・」

 

 

 フランス領シュドガリア (インドシナ)

 バオ・ダイ大帝は、日本の洋上太陽光熱発電に横付した配電船に避難していた。

 堤防の海岸側はフランス軍の大帝監視部隊が配備され、

 発電所からは日本軍外交武官たちが海岸線を監視していた。

 日本人武官たち

 「大帝は?」

 「眠られたよ」

 「日本に行けばゆっくりと眠られるだろうに」

 「大帝がインドシナ(シュドガリア)から離れるとインドシナ人の信任を失う」

 「しかし、大帝が戦場で命を失えばインドシナ人の気持ちが落ち込む」

 「領海内でラジオ放送でインドシナ人を力付けているだけなら落としどころだろう」

 「フランス軍が襲撃してこなければいいが」

 「大帝は戦力外で象徴でしかない」

 「ラジオで力付けてるといってもあの声だし、高揚させてるのか怪しいものだ」

 「暗殺すれば送電が止まるし」

 「インドシナ人の復讐心を煽るだけでフランス人にメリットがない」

 「それにフランスも密林で戦争してるのに日本と事を構えたくないだろう」

 「アメリカは?」

 「核兵器を保有する日本にアメリカが参戦する勇気があるかどうか」

 「まぁ 代償でインドシナ(シュドガリア)にもインドネシアにも支援できないのが辛いが」

 「その辺は、先住民に伝えて理解してもらってる」

 「先住民が何百万って殺されてるのに? 日本人が拝金主義者になったと理解されたな」

 「インドシナの留学生を日本に入れてるし」

 「インドシナ人がカメラで撮った戦場の映像を世界に公開している」

 「日本は、どうしても欲しい資源があるのだろう」

 「まぁ 風力発電や太陽光熱発電で資源と金が転がり込んでくるし」

 「戦後は、溜めこんだギルダーを使って活動資金になるはず」

 「それに、戦場の映像を見た各国の国民は反発してるし」

 「いくらフランス人でもインドシナ人を全滅させることはできないだろう」

 「その状況はオランダ領インドネシアでも同じだ」

 「ユダヤ人は自分たちの避難地をカザーク、インドシナ、インドネシアに作ろうとしてるんじゃないか」

 「いや、本命は中国だろう」

 「というより、中国、カザーク、インドシナ(シュドガリア)、インドネシアでインフレを起こせば小さな投資が膨れ上がる」

 「その後、暗殺と脅迫で利権を増やして、国境紛争を起こし、さらに利権を増やす」

 「あるいは、デフレで利権を強化するつもりなんじゃないか」

 

 

 

 国防省 技術研究本部

 関係者たち

 陽炎での推力7600kg級新型エンジンの試験運用が進むにつれ、

 陽炎を双発機にしたような新型双発ジェット戦闘機 霧風 の開発も進んでいく、

  自重10000kg/28000kg

  全長16m×全幅12m×全高4.8m 翼面積56u

  推力7600kg×2基  最大速度2.3M  航続距離3000km

  25mm×1  ハードポイント10基 搭載量5000kg

 「試作機の機体はアルミだが調整しながら、チタンと複合素材に換装していく」

 「完成すれば世界でも有数の戦闘機になるだろう」

 「陽炎より幅が広がったが、こじんまりとした機体になりそうだな」

 「空母で運用したがってるからだろう」

 「空母か。建造するから制約が増えるんだ」

 「しかしまぁ メリットもあることだし」

 「翼面積。主脚重量や橋梁重量を考えると、どうだかねぇ」

 「まぁ そういう弱点は我慢するよりないな」 

 「弱点というより足を引っ張ってるんだが・・・」

 「まぁ 陸上機型は多少軽量化できるだろう」

 「ところでドイツのラムジェット戦闘機はどの程度なの」

 「結局、吸気口が大きければ速度が小さくても空気の密度が上がり、爆発させやすくなる」

 「というと?」

 「主翼の一部。機体の一部が吸気口と二重構造になっていて通常は閉じてる」

 「高々度で高速域になったら吸気口を開く」

 「すると空気抵抗の少ない高々度で空気が数十倍の密度に圧縮されて一気に、どかーん!」

 「何ともトンデモ構造だな」 

 「しかし、欧州行きだから高速で飛ぶことの意味がなぁ」

 「そ、そういや、そうだ」

 「むしろ、ラムジェットはミサイルがいい」

 「それより、最近、宇宙開発側が巻き返してるようだが」

 「くそぉ 俺たちの予算は絶対にやらんからな」

 「医療関連費もな」

 「医療だぁ なんで医療が重粒子線とか、加速器とか言ってんだよ。ふざけんな!」

 「いや、高度医療ができないと有力者が大病を患った途端、売国状況に陥るから」

 「んん・・・しかし・・・霧風は何としても開発しなければ・・・」

 

 

 電子戦フロア

 スイッチを入れると光が発し、電子機器の機能が破壊される。

 「とりあえず、1000μジュールまでか・・・」

 「もう少し厚みが欲しいかな」

 「しかし、電磁パルスの遮蔽は銀が一番いいのか」

 「よりによって貴金属を・・・」

 「仕方がないだろう。銀メッシュで機体や電子機器を覆うしかない」

 「艦艇や戦車もな」

 「当然、厚みが大きいほど遮蔽力が強いよな」

 「そうなるね」 

 「とりあえず、重要と思える機器のシャーシに銀メッシュをサンドイッチ状に挟み込むしかないだろう」

 「基幹産業もそういった対策をしとくか」

 「だよね。土建建築会社ばかり儲けさせるのは面白くないし。軍事力は工業力だから」

 「むかしは軍需が癌で。いまはゼネコンが癌か。日本の利権主義は変わらんな」

 「インフレで利権を拡大して、デフレで利権を強化すれば国民は貧困のあまり利権の奴隷になるしかない」

 「どうかな。国民基金は公定歩合と連動してるから早々格差は広がらないし」

 「学費と年金は国民基金と同じように口座に振り込まれたら弱みはなくなる」

 「それに、いまのところインフレが続いてるし、軍関連の民需で割り込む余地はあるだろう」

 「民需は妥協してもいいけど、軍需も苦しいからな」

 「だいたい、核ミサイルがあれば国が守れるという安直な思い込みがいかん」

 

 

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 史実では、日本は、信頼されない人種がテコ入れされ。信頼しやすい自国民が危機

 戦記では、中国は、信頼されやすい人種がテコ入れされ、信頼されにくい国民が不貞腐れ、  

 

 1960年からドイツ、アメリカ、ソビエトが宇宙艦を打ち上げる予定

 

 

 

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第28話 1959年 『エデンの園の利権選民』
第29話 1960年 『インフレは利権拡大。デフレは利権強化』
第30話 1961年 『People's eyes と、蛇の巣食う帝国』