月夜裏 野々香 小説の部屋

       

仮想戦記 『白亜の遺産』

 

 第31話 1962年 『錬金術の国 日本と、紙神の国 アメリカ合衆国』

 チベットと中国の省境紛争は中国人の入植停止と、

 チベットによる鉄道敷設が義務付けられることで紛争が収束していく、

 元華租界会議

 「なんで中国はチベットと戦争しない?」

 「兵站が維持できないある」

 「だから兵站を作りながら進撃すればいいだろう」

 「高山病で自動小銃を持ったチベット兵一人に小隊が全滅させられたある」

 「酸素ボンベを売ってやる」

 「中国人は、もっと欲しいものが一杯ある」

 「だから不満分子を狩り立てて送り込めばいいだろう」

 「それやって、150万人が敗走したある」

 「戦車はどうした?」

 「動かなかったある。もっと動く戦車を送って欲しいある」

 「精鋭を出せ」

 「精鋭は、カザークと、フランス領シュドガリア (インドシナ)に向けられてるある」

 「だったら、もっと武器を買え」

 「武器を買うと、社会福祉が目減りして不満分子が増えるある」

 「武器で権力を守ればいいだろう」

 「「「「・・・・・」」」」

 「外資は、中国製品をもっと買うある。そうすれば武器を買うある」

 「に、日本人に買ってもらえ」

 「日本は国民基金で所得を一律底上げしてるある」

 「低級の綿産業品さえ、中国市場に流れ込んでるある」

 「先進国のくせに、ずるいある」

 「品質ですから」

 「ずるいある!!」

 「・・・中国が武器を買い過ぎて軍事独裁になるのはまずいのでは?」

 「日本人のいう通りある」

 「チベットが独立しても知らないぞ」

 「チベットは自治を認められるだけでいいと、独立する気はないと」

 「日本人のいう通りある」

 「「「「・・・・・」」」」

 「中国は戦争して大国としての強い意志を世界に証明すべきだ」

 「「「「・・・・・」」」」 ため息

 中国沿岸の洋上風力発電と太陽光発電は増加が続いてる。

 また日本と扶桑の総発電力は膨大で、送電線はカザークだけでなく、中国へも伸び、

 中国産業だけでなく、外資産業も心臓を鷲掴みされていた。

 

 

 

 メキシコは1950年以降、クーデターが相次いでいた。

 クーデターの原因の多くは、メキシコの政権が対米従属から脱しようとする、

 あるいは、日本やドイツに接近しようとしたときクーデターが発生する。

 多くのメキシコ人が暗殺されたが、メキシコの反米勢力は消えず燻ぶっていた。

 東京オリンピックは、世界中の有力者に日本の繁栄を見せつけ、

 メキシコの反米勢力は一気に増大していた。

 日本はメキシコの石油、金、銀、鉛、亜鉛、鉄、蛍石など資源を欲し、

 太平洋側のバンデラス港に拠点を作り、

 ドイツも反米工作を目的にメキシコシティに侵食していた。

 バンデラス守備駐屯地

 日本人とメキシコ軍

 「投資はしますが、日本人や日本資本の安全性は保てるのでしょうな?」

 「無論です」

 「しかし、北のナヤリット州。南のハリスコ州は仲が悪いのでは?」

 「いえ、両州の議会は、日本と組むと」

 「それならいいのですが」

 「是非、我が国にも太陽光熱発電と風力発電を設置していただきたい」

 「もし中央軍が買収されて攻撃してきたら?」

 「バンデラス湾に入るにはアメカ川に沿った山道しかありませんから」

 「アメリカ海軍が湾から上陸してくる可能性はありますが、メキシコ人は戦うでしょう」

 「日本人に成り済ました黄色人の暗殺事件が続発してるとか」

 「彼らの正体は気付いていますので、見つけ次第処分しています」

 「日本人が巻き込まれなければいいのですが」

 「大丈夫です。守ります」

 「そういわれると助かります」

 「時に、日本の高層ビルは、農薬を使わず農作物を育ててるとか」

 「たしか・・・害虫が入りにくいからと聞いてますよ」

 「最近は作物を育てるより、土壌を育てる研究が主流になってるようで」

 「是非、メキシコでも試していただきたい」

 メキシコで日系新聞 “Ojos de la gente” の創刊が始まる、

 そして、日系資本でラジオ放送の入札制も始まり、

 軍部、カトリック、地主勢が時間帯を入札するとプロパガンダとして利用した。

 もっとも人気があったのは、日系資本の時間帯で、メキシコ人の歌合戦だった。

 そして、ケーブルテレビ創業もメキシコで検討される。

 

 日系新聞 “Ojos de la gente”

 ゴシック記事欄

 “日本の日清戦争、日露戦争は侵略戦争、日本は本当に悪い国ニダ”

 “日本の靖国は戦争犯罪者を祭る悪い神社。本当に悪い神社ニダ  投稿記者 ミスターK”

 “ブラジル銀行3億ドル強盗事件はブラジル銀行と朝鮮人の自作自演”

 “背後はCIA。使用目的は、在ブラジル朝鮮人への対南米工作資金”

 “南米諸国の反政府運動、及び朝鮮人の反日教育に運用されている。  投稿記者 シークレット012氏”

 日本人編集者たち 

 「ふっ 強盗も額が大きいと、なんとも、噂は尽きないねぇ」

 「ブラジル警察は総動員らしいけど、どこまで本気やら・・・」

 「爆弾に騙されてっていうのは、ちょっと間抜けだし。いろんな裏がありそうな事件だからねぇ」

 「強盗・盗難もマネー・ローンダリングの内でしょ」

 「まぁ 銀行が保険に入ってたら損をするのは保険会社だよね」

 「たしか・・・日系の保険会社だよ。それも反朝的な」

 「あの詐欺強盗連合が・・・・マジ結託してやがる・・・」

 「しかし、紙面が埋まってくれるのは嬉しいねぇ」

 「新聞は黒字が一番だよ」

 「とっても入札の取り分は “Ojos de la gente” が6で、メキシコ政権が4か」

 「創業費用が日本資本でも、メキシコ政権も気前がいいな」

 「日本資本やメキシコ政権は、プロパガンダで、お金を使う必要はないよ」

 「ユダヤ資本が入札に介入してお金を支払うから、紙面やチャンネルを増やすだけで懐に流れ込む」

 「連中が、どんなに親米プロパガンダしても、メキシコ人がどんな記事を書くかわからないし」

 「マイクの前に立てば何を言うかわからない」

 「ユダヤ資本は全紙面、全番組を入札してプロパガンダしても、メキシコに金が転がり込むだけだ」

 「しかし、反日反独プロパガンダされると居心地悪くなりそうだけどな」

 「いまの政権とは話しがついてるよ」

 「だといいけど」

 「ユダヤ資本がプロパガンダに金を使うなら、可能な限り紙面とチャンネルを増やすだけだ」

 「そういや、ユダヤ資本は日本でも散々番組や紙面を入札してたな」

 「一度、ユダヤをアンチすると10倍の予算と時間をかけてカウンターアンチするから、結構、実入りがいい」

 「日本じゃアメリカの恫喝が難しいが、メキシコだと命懸けじゃないのか?」

 「国内に貧乏人が多いと、殺人事件も増えて命の価値も小さくなるからな」

 「アメリカは、世界恐慌以降と、その後の軍需景気で拝金主義が進んでいる」

 「その上、労働運動を抑え込むため、日本産業や中国産業に依存して、貧富の格差を広げている」

 「奴隷は着実に増えるだろうし、暴動を抑え込むため、警察と軍隊を増員するだろう」

 「金庫室に閉じ籠ったユダヤ人が世界中から財産を巻き上げて餓死させてる光景が目に浮かぶ」

 「日本とドイツは製造物を売り物にして。アメリカとイギリスは紙切れを売り物にすればいい」

 「アメリカ産業が生み出すモノに価値が亡くなれば、幾ら宣伝しても消費者は見向きもしなくなる」

 「そして、紙切れはいずれ国際的な価値を失う」

 「ユダヤの金融システムに従う必要はないと思うね」

 「日本の国民基金は悪くないよ」

 「しかし、教育費や年金を国民年金に入れるのはともかく」

 「保険の国民基金化は病気や事故を恐れて消費が鈍るかもしれないから、さすがに抵抗がある」

 「まぁ それは言えるが個人がお金を持っていなければ消費や需要は生まれない」

 「需要があれば企業は人を雇って賃金を払える」

 「需要がなければ供給は削減するよりなく、企業はリストラするか潰れる」

 「いくら企業をテコ入れしたところで、消費者が金を持っていなければモノは売れない」

 「所詮、好景気なんて言うのは、個人がお金を持ってる時に起きるものだからね」

 

 

 イスラエル

 エルサレムから南63kmのマサダ砦はユダヤ教の巡礼地のひとつになっていた。

 この地はイスラエル軍が強く、アラブ軍は近づけない、

 それでも時折、爆発音が伝わり、内戦中であることを知らせる。

 日本のゼネコン関係者たちがマサダ砦の頂上から砂漠のような大地を見ていた。

 「内戦中にもかかわらず、ずいぶん、高層ビルが建ったな」

 「イスラエルがお金持ちなのはわかったよ」

 「アメリカやイギリスから持ち出した金だろう」

 「紙幣流出の監査はしてるはず」

 「治外法権のイスラエルで偽札を作っていたとしても不思議じゃないね」

 「確かに、これだけたくさんの建設工事ができるのならやりかねないか」

 「日本の紙幣は困るぞ」

 「カーボンナノチューブで紙幣を作ろうって、話しもあるよ」

 「高価な紙幣になりそうだな」

 「だが後進国では偽札を作れない」

 「先進国もヤバすぎて作れないだろうな」

 「いまのところカーボンナノチューブは日本独占だよ」

 「いまのところはね」

 「しかし、こんななにもない世界で育つと人間性が変わりそうだな」

 「太陽光熱発電で緑化が進むよ。鏡板の下は、公共施設、住宅、農地だ」

 「高千穂がイスラエルの公共施設で協力してる間は、日本産業の足を引っ張らないだろうと思うが・・・」

 「なに? 何かしでかしそう?」

 「戦争したがってる節があるよ」

 「やっぱり・・・」

 「そういや、セファルディム系ユダヤ人が高千穂外周域に避難したがってたが?」

 「まぁ 高千穂は余裕があるけど・・・」

 「それはそうと、ユダヤ人の中で地底世界アルザスを建設してるとかしてないとか聞いたけど」

 「ああ・・・なんか・・・そういう、噂は聞いたなぁ」

 「しかし、あれは地球空洞説じゃなかったか」

 「たぶん、ガセネタで、どこかに作ってるというのが本当だと思うね」

 「核戦争に備えて?」

 「さぁ どこまで本当かわからんが、アメリカじゃフードチケット人口が増えてるのに」

 「莫大な予算が浪費してるって話しだ」

 「なにやってるんだか」

 

 

 マサダ砦の地下

 内壁の土台は、さまざまな宝石で飾られていた。

 第一の土台は壁玉、第二はサファイヤ、第三はめのう、第四は緑玉、

 第五は縞めのう、第六は赤めのう、第七はかんらん石、第八は緑柱石、

 第九は黄玉石、第十はひすい、第十一は青玉、第十には紫水晶であった。 

 十二の門は十二の真珠であり、門はそれぞれ真珠で造られ、

 通路は透き通ったガラスのような純金であった。

 十二の門は、十二の御使の像が立ち、

 イスラエルの子らの十二の部族の名が書いてあった。

 神殿の東に三つの門、北に三つの門、南に三つの門、西に三つの門があった。

 ユダヤ最高法院サンヘドリンは、議長1人、副議長1人、議員69人の計71人の長老で構成され、

 ユダヤ人の血統は全てサンヘドリン報告され管理され、

 上位の十四万四千人は、世界各国中枢に迫っていた。

 下位秘密結社組織は幾つもあってユダヤ人が要所を占め、

 政治局、銀行局、商人局、医局、法律局に振り分けられ実務を構成していた。

 長老たち

 「日本の大阪の仁徳天皇陵と四国の剣山の調査は?」

 「まだ、進んでいません」

 「日本民族がガド族の末裔というのは、本当なのかね?」

 「ヘブライ語とカタカナ文字は似ています」

 「また古都に伝承されてる伝統は、ユダヤと旧約聖書に当たるものも多いようです」

 「アブラハム第7子。失われたセファルディム10支ガド族の血脈か・・・」

 「アシュケナジムのハザール第13支族は血脈で下位になるでしょう。障害になるかもしれませんね」

 「「「「・・・・・」」」」

 「血脈はそうでもユダヤ教でなければパレスチナ人と変わらない」

 「とはいえ、日本の国力はアメリカに準じつつある。難敵ですよ」

 「日本における我々の血脈は?」

 「いまは、ユダヤに改宗した女性から生まれたハーフが1000人ほど」

 「しかし、日本の政治は貴族院でなく、衆議院がキャスティングボードを握っています」

 「そして、衆議院は抽選で1任期制」

 「あと少しで、政治中枢に手が届いたものを・・・」

 「貴族院への浸透は?」

 「5人ほどですが。国民基金のせいで金の力が通用しませんし」

 「功績の高い衆議院は、貴族院へ昇格してるようです」

 「やれやれ、どこまでも先回りしやがる」

 「例の白亜紀の遺産がモノを言ったようですな」

 「気付いた時には既に遅しか。情報収集で日本民族に後れを取るとはな」

 「初動で反ユダヤ系の手の内に入ったからでしょう」

 「それに大変な財産ですし、日本民族としての誇りを取り戻したものもいるようです」

 「やれやれ」

 「もっと情報収集すべきだ」

 「日本はアメリカやイギリスから欲する情報や産業が減ってるので難しいかと」

 「台湾にプラット・アンド・ホイットニーの支工場を置いてあるはず」

 「最新のJT3CとJT3Dを生産しているはず」

 「民間機で使っていますな。軍用では使われていません」

 「では開発中のJ58を・・・」

 「反対」

 「確かに・・・」

 「しかし、確実にユダヤの血脈が日本に流れつつあるのでは?」

 「少しずつですな」

 「日本のチベット支援をどう思うね」

 「退役間近の飛行機を買ってチベットに空輸させ」

 「そのまま、居住空間に利用している」

 「そして、翼材は再利用して産業にしている」

 「宇宙開発や南極大陸に行くより、チベット支援の方が割がいいようですな」

 「チベットは日本領になりそうなのかね」

 「日本語は広まってますよ。所得も増えてますし」

 「妨害できないのか?」

 「中国は工業力が弱く、まだ近代戦争に堪えられないようです」

 「どいつもこいつも・・・」

 「アメリカを参戦に追い込めなかったからだ」

 「戦艦があればイスラエル建国が10年早まり、通商支配も思いのままと賛成したじゃないですか」

 「戦艦は魅力的だったよ」

 「維持費が日本に流れて、日本の社会基盤を強化させたのは面白くなかったがな」

 「それはそうと医療は?」

 「ユダヤ・英米医療がトップで、ドイツ、日本と続いている様です」

 「インフルエンザワクチンは?」

 「ドイツと日本は見送りました」

 「「「「・・・・・」」」」

 「なかなか、仕込が上手くいかないものだな」

 「ドイツのジーンリッチは?」

 「ドイツ人はスペックを伸ばす方に力を注いでるようです」

 「我々が長寿研究に向かってるのとは違うな」

 「ドイツ人は、安楽死による新陳代謝と、人工調整をしてますからね」

 「日本は?」

 「日本は自然崇拝ですよ」

 「とはいえ、仁徳天皇陵や剣山から羊皮紙の旧約聖書が出てきたら大変だぞ」

 「羊皮紙の寿命は1000年ですよ。存在してもボロボロのはず」

 「祇園祭が始まったのが西暦863年」

 「公式的にセファルディムのサンヘドリン会議が確認されたのは200年頃だが」

 「ハザールがユダヤ教に改宗したのが730年」

 「その辺の変遷はいいとしてだ」

 「京都と奈良は、セファルディムの影響が強い」

 「その辺の時代まではセファルディムとの交流と旧約聖書があったはず」

 「それか、伝承だな。仁徳天皇陵は閉鎖されてるが、そうなると剣山が怪しい」

 「扶桑や西日本は?」

 「痕跡が小さいよ」

 「ユダヤの自覚がないのなら放っておいてもいいのでは?」

 「日本が話題になるのは放置できないからでは?」

 「「「「・・・・・」」」」

 「問題は、日本の利権が洋上風力発電や太陽光熱発電を利用し、海外に広がってることだ」

 「そして、我々石油メジャーの利益を損なわせている」

 「いっそロックフェラービルでも日本に売ってやるか。反日が強まるだろう」

 「日本人は高層ビルを買うより、建設する方を選ぶと思うよ」

 

 

 ソビエト連邦 モスクワ

 カザコフ館

 日本大使館が呼ばれていた。

 「我が国にも農作物用高層ビルを建設してもらえないだろうか」

 「なぜ? 領土の広いソビエトに、そんなものいらないのでは?」

 「ソビエトは寒冷地にある。一度の冷害で大量の餓死者を出してしまう」

 「・・・・・」

 「鉱物資源が欲しいのであろう」

 「もちろん」

 「売ってやろう」

 「しかし、カザークと関係がありますからね」

 「カザークとは戦争するつもりはない」

 「だといいのですが・・・」

 「何なら、ビル管理は日本がするがよい」

 「我々が欲しいのは安定供給される農産物だけだ」

 「よろしいので?」

 「同胞ロシア人が餓死するよりはるかにましだ」

 「ますます、日本のゼネコンが強くなってしまいますな」

 「いいことではないか」

 「ほかの産業がしわ寄せを受けるので面白いとは言えませんね」

 「日本人の人口は増えてるのでは?」

 「増えてますよ」

 「70年頃には1億1000万人を超え、先住民を含めれば1億5000万人に達する勢いですな」

 「ソビエトは2億1000万。もっと増やしたいものです」

 

 

 

 白鳳の実証試験が進み安全性が確認をすると不具合を改修しながら同型機が建造されていく、

 既に二回りほど小さい朱雀型で障害がほぼ解決されており、

 2番機の蒼龍以降の建造はスムーズになっていた。

 早期完成警戒機は、自動操縦で日本領空を巡回し、

 地表からのマイクロ波を自動でリレー照射させることができた。

 そのレドームの航空探知距離は450km。

 高度10000mなら350m先の地平線、水平線までを全周囲に渡って監視できた。

 探知目標は200個を友軍に伝え、

 陸軍の地対空、地対艦、地対地。

 海軍の艦対空、艦対艦、艦対地。

 空軍の空対空、空対艦、空対地ミサイル全てを誘導する事が出来た。

 空中要塞 海鳳 CIC室

 カーボン製椅子にヘリウムの入ったクッションが使われていた。

 それでも食事は軽量化が難しく、温められたパックが配られ、作業の合間に食べる。

 空中要塞のミッションは長期に渡り、人員交替をカプセルで行うこともあって、

 数週間飛びっぱなしも珍しくなかった。

 「仁科少将。ドイツの40000t級戦略原潜 ザイドリッツ が浮上しました」

 レーダー上は、巡洋艦阿蘇、恵那の間に光点が映し出された。

 「戦略原潜で砲艦外交か。相変わらず怖い国だな」

 「港湾で発射すれば、日本の主要都市はほぼ壊滅ですからね」

 「無人潜水艦渦潮がザイドリッツの後方1000m。深度10mについてるようです」

 「超長波(VLF)で繋げられます」

 「潜水艦隊は、どうすると?」

 「ザイドリッツが東京湾に入ったら、うずしおは、巡回ルートB22に就かせるとのことです」

 ディスプレーにB22巡回ルートが映し出される。

 「いいよな。ザイドリッツ型潜水艦を太平洋、インド洋、大西洋に配置すれば、どこの国も黙り込む」

 「日本も同じでは、潜水艦は小さいですが」

 「まぁ 日本は大西洋、インド洋、太平洋に拠点があるから大型潜水艦でなくてもいいだけだが」

 「40000t級なら核戦争後でも生き残りやすい気がする」

 「核戦争は起きるんですかね」

 「国防費が安定成長で嬉しいだけで、核戦争を起こそうと思わない限り起こせないだろうな」

 「ドイツのバイエルン級宇宙艦が静止軌道東経135度で停止しました」

 「日本は丸見えだな」

 「単純に考えるならバイエルンは、空中要塞より大きくできるんですよね」

 「2重3重に重ねて行けばそうなるな」

 「弱点があるとすれば357000kmの彼方ってことだけだが、丸見えは面白くないか」

 「日本も宇宙艦を打ち上げるんですかね」

 「上げたいねぇ 空気がないのは辛いが」

 「潜水艦に近いのでは?」

 「まぁ 感覚的にはそうかもしれないな・・・・」

 「仁科少将。代替の直衛隊と合流します」

 「確か、予定だと・・・ウィングマンは無人機だったな」

 「はい。最近は、無人機を平気で使うようになりましたね」

 「こっちで標的をロックすれば勝手に戦ってくれるし」

 「Gだけは有人機の限界を超える」

 「いざとなったら体当たりさせられるし、潰しが利くのがいい」

 「直感。機転。微調整で劣りますけどね」

 「改良の余地があるが、誤認、錯誤、恐怖がないから、いずれ良くなるだろう」

 「IC技術次第ですかね」

 「それもあるがコンピューターに関わってる人間の分母が大きくないと負けるそうだ」

 「そういえばアメリカとドイツもICを開発してましたね」

 「着実に追いついてきてるからあまりゼネコンばかり人を取られたくないが」

 「ゼネコンはソビエトも進出するって言ってましたよ」

 「もう、見境なくしてるな」

 「アマテラス中洲の共同管理区のせいで、ロシア語が堪能な日本人が増えましたからね」

 「人脈的につながってるのかもしれません」

 「人脈が繋がって発電所や高層ビルを売るのは構わんが、国だけは売らんで欲しいな」

 「買うのが資源だけならいいですが」

 「ロシア女性は美人ですからね。余計なモノまで売りかねない」

 「「「「あははは・・・」」」」

 

 

 オランダ領エズナルホラント (インドネシア)

 戦いを覚えたインドネシア人は白人軍に屈しなかった。

 インドネシア人に武器を渡したのは、米英の武器商人で

 当初は、近隣諸国に武器を高く売りつける誘い水に過ぎなかった。

 しかし、オランダ系白人と東欧系白人の主導権争いから思惑が変化し、

 インドネシア人へ武器が流れ続けた。

 オランダ警察は、太陽光熱発電所を一巡すると肩を落として去っていく、

 単に資源と交換する意図しかない日本資本は、どちらの味方もしていなかった。

 日本人たち

 「やれやれ、武器密輸を断わって正解だったな」

 「むしろ、断わったから来たともいえるね」

 「そういや、ほとんど手抜きで帰っていったな」

 「武器の密輸を?」

 「密輸を誘ったのは、白人世界の中枢だったぞ」

 「そうだった。さすがに罠だと思ったが・・・」

 「エズナルホラント(インドネシア)は多民族国家であって欲しい」

 「そう思ってる勢力を内包してることにオランダ人が気付いていないのかも」

 「多民族国家は、貧富の格差を誤魔化しやすいし」

 「人々は利権で結ばれやすく、拝金主義者を増やせる。富裕層にとって居心地のいい隠れ蓑だからね」

 「単一民族が強い日本やドイツは、必要以上の格差を制限させる傾向があるし」

 「多国籍企業に対し排他的だから厄介な国かもしれないね」

 「俺たちだって、多国籍企業みたいなもんだろうが」

 「だがユダヤ資本と一線を隔してる」

 「まぁ ユダヤ民族より人口が多いからってことだが、独自の金融ネットワークも構築している」

 「その上、希少資源の保有も多いから、金属インゴットを日本に預けてる富裕層も少なくない」

 「最初は先物の変種かと思ったがな」

 「資源国の権力者は、換金すると足がつくから金属インゴットを直接、日本に預ける」

 「普通は貯蓄の代わりに預けるが、高くなったら換金すればいい」

 「日本にしたら金属インゴットは常に作られるし、返却する可能性も著しく低い」

 「だから換金用紙幣と、一定量の金属インゴット残して使い切ることもできる」

 「ちょっとした資源銀行か、良くやる・・・」

 「実のところ、利殖は1パーセントと低いのに欧米所有のインゴットの預かりも増えてる」

 「単に紙幣の数字が増えるより、100tが1年で101tになるインゴットが安心なのでは?」

 「いや、なんか黒い取引があって、日本にインゴットを預けてる連中が多いのかもしれないな」

 「でもまぁ 日本は、かなり助かってんじゃないの?」

 「そりゃ GDPは、さらに拍車がかかって、国民基金は冗談みたいに増えてるが」

 「もう働かなくてもいいくらいだな」

 「いったいどんだけ、札束を印刷してるのやら・・・」

 UH1イロコイの編隊が水平線上から現れると、太陽光熱発電所の上空を通過し、

 エズナルホラント(インドネシア)の海岸線へと向かっていく、

 「ヘリコプターか」 

 「アメリカはヘリコプターを戦力化したのか」

 「何で戦車部隊で突撃して蹂躙しないんだ」

 「参戦してないからだろう」

 「じゃ ヘリコプター部隊は義勇軍?」

 「マーキングはオランダ空軍だったぞ」

 「もう、勝つ気ないのでは?」

 「まさか」

 「だからヘリコプター会社の株を買った富裕層の戦争なんじゃないかな」

 「裏の話しだと、大量のAK47をジャングルのゲリラ軍に投下するだとか聞いたこともあるし」

 「流石、アメリカ資本帝国。やることがエグイ」

 「俺もヘリコプター会社の株買いたい」

 「「「「「あははははは」」」」」

 「でもインサイダーって、安値の時に買わないとな」

 「じゃ 戦車株を買った投資家は損したのか」

 「そういうことになるかもな」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 イラク バクダット

 都心で巨大な高層ビルの建築が始まる。

 日照が強いことから太陽光を偏光させるだけで巨大なフロアを全て照らすことができた。

 外壁は三重で、フロアがあまりにも広いことから断熱効果が高く、

 ひんやりとした空気が自然に作られていた。

 幾つかの階層は、スキー場やスケート場を目的に設計され、

 世界最大級の室内スキー、スケート場も作られていた。

 日本人たち

 「まさに石油を売って作った高層ビルだな。周囲の屋上も鏡板を置き始めてるし」

 「中東は、太陽光熱発電所そのものが高層ビルみたいなものだから」

 「王族にとっては発電所が足場を固める利権でもあるよ」

 「首都バクダットならなおさらだろうけど」

 「まぁ “コーランか、剣か” なんて言われなければなんだっていいが」

 「ふっ 今のところ、大丈夫だろう」

 「それはそうとサウジアラビアは、なんでアメリカとイギリスにべったりなんだ?」

 「そういや、なぜか、広い国土を持ったままだし、イギリスは分断してないな」

 「いち早く、F5戦闘機を買ってたっけ」

 「むしろサウード王家が、ユダヤ人と仲がいいような気もするが」

 「政治的判断ということか」

 「アメリカ、イギリスと組むと利益が大きいからいい判断だと思うけど。」

 「それは昔しの話しだろう」

 「いまは、日本製とドイツ製が競争力あるし」

 「石油をアメリカに売ったドルで、日本製品とドイツ商品を買うより」

 「直接、日本やドイツに石油を売って、日本やドイツの商品を買う方がいい」

 「ていうか、日本は、かなり、石油備蓄できてるんじゃないの」

 「佐渡、生野、半田、筑豊、三池、夕張の備蓄基地だけで、3年分の備蓄くらいか」

 「ほかの中小を入れると倍くらいじゃないかな」

 「その上、風力、太陽高熱、地熱が増えて、電気自動車は7割を超えてる」

 「しかし、発電による総生産が急増してるから、石油燃料消費は横ばいかな」

 「大陸の発電所と電気を融通し合えるなら、風力発電と太陽光熱発電だけで間に合うのでは?」

 「中国人が電力をたくさん使うようになったら、逆に電気不足になるし」

 「それに中国の工業力が大きくなると、本当にベーシックインカムしないと低級品産業で負ける」

 「そういえば元紙幣は安定してるし強いな」

 「元華銀行で総量管理してたらそりゃ強いだろうよ」

 「しかし、ユダヤ資本は、製造業を弱体化させて利権を手に入れるけどさ」

 「紙幣価値を下げてしまうだけなのだが、何で止められない」

 「ようわからんが生産者に回ったことがないのでは?」

 「出来ればモノを作ってるイスラエルのユダヤ人が主流になって欲しいね」

 「高千穂の商社の話しだと、イスラエルの中心街は楽園で、周辺は殺伐してるっていうからな」

 「そういや、内戦中だったか」

 「イスラエルでもアラブでもいまのところ物作ってるのは日本かな」

 

 

 アメリカ、ドイツ、ソビエトの航空機が退役すると第三国へ売られ

 高千穂の民間系航空機メーカーによって改造される事があった。

 そういうルートとノウハウが日本企業で形成されると積極的に利益を上げていく、

 イラク空軍基地

 MiG15、MiG17に採用されていたソビエトのクリーモフVK1は、遠心圧縮式ターボジェットエンジンで、

 イギリスのジェットエンジンを元に採用され大量生産されていた。

 しかし、ジェットエンジンの主流は、細身の軸流圧縮式ターボジェットエンジンへ移行しつつあり、

 MiG19では、開発に成功した軸流圧縮式ターボジェットエンジンに切り替わっていた。

 そして、時代遅れのMiG15、MiG17は大量に第三国へ輸出されていた。

 

 日本の非白亜系民間企業は、MiG15、MiG17を解体すると、

 クリーモフVK1エンジン2基を橋梁で覆い双発迎撃機を組み立てていく、

 大型の吸気口を必要とする遠心圧縮式ターボジェットエンジンの双発機は一見、不恰好にも見えた。

 しかし、機首にレドームを装備したことで全天候型戦闘機となり、

 全長を伸ばして、ハードポイントが8基増加し、対空ミサイル装備も可能にした。

 そして、出来上がった機体は、MiG15、MiG17よりスリムになっていた。

 戦闘機 シャムシール

  全長15m×全幅10m×全高4m 翼面積36u

  自重5000kg/運用重量7000kg/最大重量12600kg

  VK1F推力2800kg×2基

  速度1340km/h 航続距離1300km

  NR23KM 23mm機関砲 2挺(弾薬各160発)。ハードポイント8基

 シンドバットは加速しながら飛び立つと飛行場の周りを何度も旋回し、

 エルロンロール、宙返り、シャンデル、

 インメルマンターン、ハイ・ヨー・ヨーなど基本空中戦闘機動を行う。

 イラク空軍将校と日本人

 「レーダーはいいが旋回力が落ちるな」

 「それは仕方がないかと」

 「シャムシールは教導機として運用すべきだろうな」

 「先制発見先制攻撃が空中戦の最大勝因ですから」

 「しかし、日本の陽炎とずいぶん違うな」

 「系列企業が違うので」

 「日本は軍御用達企業でなくても戦闘機を作れるわけか。大したものだ」

 「むかし、戦闘機を作ってた技術者を何人か雇えましたので」

 「エンジンと違って、器は比較的簡単ですし、材質は違いますがスポーツカーの要領ですよ」

 「イラクは自動車も作れん」

 「・・・MiGは機数が多いのでちょっとした利益になりそうです」

 「MiG19、MiG21も可能かね?」

 「MiG19は推力3250kg2基で、MiG21は推力5740kg1基なので。MiG21は双発迎撃機に改造できそうです」

 「しかし、MiG19とMiG21は新鋭機。まだ購入されてないのでは?」

 「もうすぐ購入できるだろう」

 「本当に?」

 「MiG15とMiG17の双発機型を配備し始めたと聞いて、外貨会得で不安になったらしい」

 「なるほど」

 「日本は金の為にイラクに援助してるのか」

 「正確には石油ですが、民族や国家が自衛する戦力を持つのは自然なことですよ」

 「日本も開国してからそうでしたから」

 「理解が得られて助かるよ」

 「ところで日本は、イスラエル製戦車を製造すると聞いたが」

 「イスラエルは戦訓が多いのでイスラエル製を採用することになりそうです」

 「戦訓ねぇ・・・」

 「正直、ユダヤと取引しないと減給、リストラどころか、潰れる企業があるらしいので・・・」

 「ふっ あの蛇どもは猛毒を持ってるから気を付けた方がいい」

 「変な約束をすると日本の国柄を殺されて利己主義と拝金主義の国にさせられるぞ」

 「確かに・・・」 苦笑

 

 

 高千穂

 環状線外周は黒人の世界が広がっていた。

 狭いながらも生産、市場、消費が人口集約され、

 社会基盤もシステマチックに構築され、

 日本語さえ覚えれば抽選制自治衆議院に参議でき、

 社会基盤も全体が複雑でも個人の作業は単純で、マニュアル通り行動することで運用できた。

 先住民は学力水準が向上していくにつれて、自治区行政の中枢へ進出し、

 利権構造に組み込まれていくにつれて産業は肥大化し、

 外周域だけでブラジルのGDPを超えていた。

 高千穂は、資源国家であるばかりでなく、

 低級品産業を外周の先住民に低賃金で押し付けることができ、

 自治紙幣に利潤で利益を上げ、高価な高千穂製をローンを組ませて売ることもできた。

 その利潤は莫大で、日本・扶桑にとっての中国や東南アジア諸国より遙かに有利だった。

 イジョ自治区

 黄色人たち一行

 「なぜ、黒人の分際で近代的な建物で生活してるニダ」

 「電気水道電話線が通ってるなんてずるいニダ。許せないニダ」

 「黒人は、土民みたいに野原で野宿していたらいいニダ」

 「馬鹿な黒人を宗教で騙して、日本人に反乱を起こさせてやるニダ」

 「高千穂は、内戦で殺し合って自滅するニダ」

 

 国境警備隊のMi4ヘリがイジョ将兵を運んでパトロールしていた。

 日本人将校が一人ついて、監視しているだけで、小隊指揮はイジョ人の士官が行っていた。

 「進入した黄色人3人が発見されたのは、二時間前、イカング区域です」

 「なので、10km四方を探索すれば発見できると思われます」

 「上手く狩り出してみろ」

 「はっ」

 「いい訓練になるだろう」

 自治区の国境警備隊は時々、不法侵入する朝鮮民を狩ることで、実力を向上させ。

 日本人と朝鮮人の違いを明確に理解し、

 自治州で朝鮮人の人間性を自ら体験して伝えていく、

 「少佐殿」

 「ん?」

 「なぜ朝鮮人は何度も高千穂への侵入を図るのでしょうか」

 「んん・・・つまり、朝鮮人は特撮やロボットアニメに出てくる悪役なのだ」

 「だから、彼らは、高千穂を滅ぼすために侵入する」

 「だから、正義の味方の諸君らは負けないよう。彼らを追い返すのだ」

 「はっ わかりました少佐殿」

 『やれやれ、いい加減諦めればいいモノを・・・・』 ため息

 

 

 オーストラリア大陸

 北のカーペンタリア湾は太陽光熱発電が多く、

 南オーストラリア湾は風力発電が多かった。

 建造船で日本や高千穂で製造した発電機材を運び入れ

 継手(つぎて)、仕口(しぐち)部品を組み合わせながら発電所を完成させていく、

 洋上発電所の発電は、淡水化で使われることが多く、

 洋上風力発電から汲み上げられた水道が岸壁の上に伸ばされ、蛇口から水が流れた。

 水があれば人が生きることができる世界が広がり、

 緑化できれば、国力を増大させることも可能だった。

 そして、限られた水を効率的に使うためには既存の平地生産では困難で、

 農業用高層ビルが建設されていた。

 白人と日本人がビル建設を見上げていた。

 「まさか、オーストラリアで農業ビルを建てることになるとは思わなかったよ」

 「水を最大限有効に使うのなら農業ビルにしないと」

 「アメリカが種子管理はオーストラリア自身がすべきだと煩いよ」

 「アメリカはバイオ作物を開発中ですので、そういうでしょうね」

 「そんなものか」

 「農業ビルでは土壌を育てますが、肥料も農薬もほとんど必要ありません」

 「種子は自然のままを使います」

 「まぁ 一定量以上を生産してくれる間は、任せるよ」

 「しかし、一番いい方法を考えるなら大鑽井盆地に海水を流し込んで塩湖を作ることでしょう」

 「だが大鑽井盆地は貴重な水を自噴させてくれる盆地だ」

 「水はいずれなくなりますよ」

 「しかし、大鑽井盆地の約176万kuを海水で満たせば太陽熱で蒸発し、雨を降らせるでしょう」

 「緑化にもなりますし、魚を養殖をすれば利益も大きいはず」

 「カスピ海が37万kuなので、オーストラリアは世界最大の内海湖を持つ国家になりますよ」

 「んん・・・・本当にその方が得なんだろうか」

 「まぁ 大鑽井盆地まで海水を送る洋上上風力発電と洋上太陽光発電を何個も作ることになりますがね」

 「数が少なくとも蒸発するより早く、海水を送り込むだけでいいので」

 「蒸発すれば雨になって緑化に一役買いますし、内陸で海水浴ができるなら楽しいでしょう」

 「世界最大の内海湖か・・・」

 「世界最大です」

 「どうせ、砂漠みたいな国土だし。やってみよう」

 「毎度あり」

 

 

 

 艦対艦戦闘は、有視界、測距儀で測れる半径〜30km範囲内で砲雷撃戦が行われる。

 この時代、敵艦の計測は、測距儀から対艦レーダーへ移行し、

 全天候で索敵が可能になっていた。

 主流だった大砲はミサイルへ移行し、飛翔速度は音速を超え、

 命中率は100パーセントに近づき、破壊力の上限は核弾頭に達し、

 費用対効果を考えなければ射程は大陸間に及ぶ、

 しかし、射程がレーダー探知範囲を超えたとしても範囲内戦闘であることに変わりない。

 水上艦艇同士の攻防は、ミサイルが中心になり、

 勝敗は、電子戦能力の差でしかなく、

 電子技術は過去の巨艦巨砲や防弾装甲に匹敵する競争になっていた。

 しかし、ミサイルの飛翔速度が速く、命中率が高くなるにつれ、

 迎撃はますます困難になって行くのは目に見えていた。

 有視界を超えた水平線外の索敵と攻防は至上命題となり、

 艦隊は索敵範囲を広げて敵艦艇をアウトレンジする必要に迫られていた。

 対空哨戒ヘリの存在は、水上艦艇の守備範囲と攻撃範囲の拡大となって現れ・・・・

 北大西洋

 10000t級蔵王型巡洋艦の探知距離は半径30km。

 愛鷹、雲仙の上空4000mを二重反転プロペラのヘリが浮かび、

 半径277km先の水平線まで探知距離を広げていた。

 回転軸は白鳳型空中要塞で採用しているものと同様、

 ディーゼルエンジンとマイクロ波照射を充電するハイブリットエンジンで、

 二段インホイールモーターの円盤部は80cmを超え、4本のプロペラが回る、

 回転軸上部にレドームが載せられ、他国のヘリコプターとは一線を隔していた。

 無人哨戒ヘリと有人哨戒ヘリの比較検証が続いていた。

 どちらの機体も艦からのマイクロ波照射を充電して飛んでいる。

 艦橋

 「試作機とはいえ、悪くないな」

 「問題は小型哨戒機だと性能不足ですし」

 「中型哨戒機になると、燃料消費は激しい上に発電機を大きくしないと」

 「結局、高度で計算して、その範囲を探知圏に入れる性能ならいいのでは?」

 「そうなると中型哨戒ヘリになりますかね」

 「蔵王型の原子力電池を大きくしないと難しいかも知れないな」

 「そうなると艦を大きくするか。何かを減らさないと」

 「んん、どちらにしても予算だけは勝てないからな」

 「日本は、GDPと予算が増えてるのに国防費の伸び率が低すぎる」

 「ゼネコンの工作じゃないか」

 「俺たちが日本を大きくしてやってるんだ。って自意識過剰な連中だから、やり兼ねんな」

 「その通りなんですけどね」

 「「「「・・・・・」」」」 ため息 

 

 

  

 国防省高千穂技術研究本部

 無人戦闘機、無人戦車、無人潜水艦、無人艦艇のフローチャートが作られていく、

 多くは、パイロット、車長、艦長、乗員らが通常行ってる内容をトレースし、

 コンピューターに反映させていた。

 戦闘シミュレーションを繰り返して、不具合が修正され、

 戦闘に勝てるように再プログラムされていく、

 SE(システムエンジニアリング)室

 「どうかね。調子は?」

 「潜水艦くらいの大きさがあればスーパーコンピューターで自律思考プログラムしやすいですがね」

 「スーパーコンピューターを作るのは大変なのだが」

 「スーパーコンピューターをバックボーンにすれば、戦闘機くらい動かせますよ」

 「と言ってもハードより、以下にソフトをシステマチックに構築するかなんですけどね」

 「電波妨害されると困るから、基本、リモコンでいいよ」

 「電波妨害さえなければ、思考プログラムは修正できますし」

 「ルーチンの数も増やしていけますので、有人相手に勝てますよ」

 「そ、そんなものなのかね」

 「新参士官には勝ってるじゃないですか」

 「い、いやぁ まぁ 確かにそうだが・・・」

 「あとはコンピューターの処理速度を速くして欲しいのと、容量を増やして欲しいことですかね」

 「それだと、工場を大きくしないといけないじゃないか」

 「そうなりますね」

 「もう低級品産業をやめて、中級品以上に人材を振り分けないと駄目だろうな」

 「むしろ、低級品も自動化した方がいいのでは?」 

 「自動か・・・中国がそれだけはやめてくれと煩いらしい」

 「それに高い利潤で少数精鋭というのもある。君のように10人分のプログラムをできる人間なら・・・」

 「少数精鋭なんて偏った戦略じゃ負けますよ」

 「清濁混在でも分母を大きくすれば、分子の精鋭なんて腐るほど作れますし」

 「分母の人口が大きければ、ちょっとしたアイデアでも大きく儲けられますよ」

 「そ、そんなものか」

 「日本、扶桑、高千穂なら軽く人口3億は行けますよ」

 「高層ビルの比率を増やすなら、4億くらい余裕です」

 「それに、コンピューター戦術は単機の技巧じゃなく、常に多対1で戦うよう設定してますよ」

 「不良産業があるなら国内需要分だけでも低級品を自動化してしまえばいいじゃないですか」

 「な、なるほど・・・しかし、特別扱いすると反発もあるだろう」

 「繊維業界は化学繊維に押されて低迷してますし」

 「いま、国民基金がお化けみたいな金額ですし」

 「繊維業界を共倒れさせて、中国低級品に割り込まれるのは癪ですし」

 「現状の生産で、産業再編で自動化して人員整理しても反対しないんじゃないですかね」

 「んん・・・そっちで攻めて、軍に人員を回してもらおう」 

 

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 潜水艦と空中要塞の名前が紛らわしいので、

 空中要塞を飛龍型から白鳳型に変えました。

 白鳳、海鳳、翔鳳、龍鳳。瑞鳳、雷鳳、天鳳、朱鳳に変更です。

 

 

 日本の非白亜系企業は、政府の統制を離れ好き勝手やってるようです。

 そのくらいの特権がないとやってられないでしょう。

 

 あと日本の電力会社、電気代の為なら大鑽井盆地を内海湖にする〜♪

 そんな、会社になってしまいそうです。

 

 湾岸戦争時のイラク空軍は、

 殲撃6型(MiG19)40機、殲撃7型(中国のMiG21)30機、

 MiG21バラライカ150機、MiG23フロッガー90機、MiG25フォックスバット30機、

 ミラージュF1を90機、MiG29ラーストチュカを30機保有していた。

 ちょっと、底上げしてみます (笑

 

 

 最近、話題の大阪副都心構想

 戦記戦後の日本をよく道州制にしてますが (笑

 なんのことかというと、利権の委譲と予算配分の話しです。

 国家は、外交、国防、裁判、通信、交通、郵便、大規模財政投資に集中、

 道州は、医療、年金、保険、教育、中規模財政投資に集中、

 市町は、社会福祉、小規模財政投資に集中、

 一部、連携することもあるかもしれませんが、こんな感じで分担しょうか。

 よく見えてる。よくわかってる身の丈で運営するわけです。

 人間でも中枢神経系、末梢神経系、体性神経系、

 自律神経系、交感神経系、副交感神経系があって、

 意識する神経系と無意識な神経系があって体を機能させてるわけですから、

 幾ら中央集権が好きでも全部が全部、国家が決めていいわけじゃないでしょう。

 この戦記日本では、国が国民総背番号で一元管理、

 同時に国民基金で公定歩合分を国民に配分して、利息保障。

 ついでに国民年金と養育支援金も振り込んでますので、役所を大幅に削減できるでしょう。

 赤字国債のほとんどが年金と保険関連が大きいので、国家予算自体は史実より小さいかも

 しかし、振り分ける省庁は少なく、史実より予算額が多いでしょう。

 

 

 

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第30話 1961年 『People's eyes と、蛇が巣食う帝国』
第31話 1962年 『錬金術の国 日本と、紙神の国 アメリカ合衆国』
第32話 1963年 『パクって日本人の意欲を削ぐ作戦ニダ』