第05話 1925年 『木工12干支ギルド 神籬』
1月
イタリアのベニート・ムッソリーニが独裁宣言
仙堂と角浦は、今年19歳になる。
寒村農家の出自で、容姿はいたって人並み、
木仙の才覚で手に入れた資産と地位は大きく、木工産業の成り上がり者、
浮いた話しもないこともないのだが、天才らしく、そちらの方面は疎い、
華族と、学閥と、閨閥連合特権は強く、成り上がりものとはいえ、肩身が狭い立場にあった。
むろん、それらしい家柄から見合いの機会もあった。
しかし、木を介して相手の人柄が分かるため、
有力者の御令嬢であったとしても簡単に引っ掛かるわけに行かない、
また、御令嬢とは違う系統の女性もいる。
特異な能力は、特異な能力を見いだせそうだった。
仙堂と角浦は、うどん屋で賄いをしている少女を目で追いかける。
「あの娘は、変わってる」
「血筋の妙ってやつかも」
「農村か、漁村の出・・・たぶん、漁村かな」
「でも家柄は僕らと同じくらいだから、どうなんだろう」
「閨閥で利権を強くするのもいいけど、血統を考えるとねぇ・・・」
「家柄より血筋か・・・」
「血筋より、人柄と容姿で選びたい気もする・・・」
美人の賄いが通過していく
「それは言える。でも10年の天国ってきもする」
「やれやれ・・・」
有力者たちの会合
仙堂と角浦は、木工細工で黒字貿易を増やす原動力になっており、
各神社仏閣の補修で顔役の一人にまでなっていた。
財力だけでなく、集票にも影響を与えられることから政治中枢にもコネを作り、発言権さえ持ち始めていた。
ソビエトを承認するかでも、考えを聞かれることもある、
「他の列強がソビエトを承認してるなら認めるよりないのでは?」
「しかし、日本国内で共産化が蔓延してしまうのではないか」
「幸幣を補助貨幣にすれば、神社仏閣で紙幣と幸幣を交換していくだけで、通貨は倍以上に増える」
「それではインフレになるじゃないか」
「インフレで困るのは庶民ですがね。生憎困っていないのですよ」
「インフレで困るのは、新興企業に追い抜かれることを危惧する大手企業」
「そして、余剰資金が、どう選挙で使われるかわからない政治家と官僚でね」
「「「「・・・・・」」」」 むっすぅ〜
「神社仏閣で、お金をどう使うかというと、保守的な事柄ですよ」
「紙幣を水増しできるなら航空機だって作りやすいでしょう」
「むしろ、軍艦を建造したい」
「木工業界は、輸出用の輸送船を増やしたいですがね」
「今後も木工製品は売れ続けると自信があるので?」
「ありますよ」
「仮に木工細工の売れ行きが冷え込んだとしても、幸幣を作ってお茶を濁すことができますからね」
「では、ソビエトの承認と、条約締結に反対の者は?」
「「「「・・・・・」」」」
「治安維持法は?」
「反対」
「しかし、治安維持法を制定しないと共産化してしまう」
「だから紙幣や幸幣を増やせば、国民は、共産化しようなんて思いませんよ」
「それでは、どこに金が流れていくかわからん、政敵に金が流れたら我々はおしまいだ」
「下克上が怖いからといって、国民を貧乏にさせるのは危険ですよ」
「んん・・・」
日ソ基本条約締結(日本はソビエトを承認)
レフ・トロツキー失脚
2月
全日本スキー連盟創立
ハワード・カーターがエジプトの王家の谷でツタンカーメンの王墓を発見
国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)再建
千代田区霞が関
旧福岡黒田藩邸 外務省官庁
ある程度、力をつけけると、猟官されることがある。
仙堂春和と角浦秋和は、19歳ながら木工産業の中核になりつつあった。
「属託職役ですか」
「あまり、気構えなくてもいい」
「省庁は言葉の善悪とか成否じゃなく。所轄と階級で判断するから。箔付けみたいなものと考えていい」
「なにか、外務省から命令されるわけですよね」
「命令といっても、そちらの予定を変えることはない」
「ただ、外交パーティなどで外国人と交流がある前に招待状が家に届くだけだ」
「5日から1週間くらいの余裕がある」
「そこで、人物評価をしてもらえると助かる」
「日本にとって、益になるか。害になるか。ですね」
「まぁ そうだが、外務省にとって、益になるか。害になるか。でも構わないよ」
「二つは違うのですね」
「いや、いや、言い得て、違うといわけじゃないんだが・・・」
「「・・・・・」」 ため息
「というわけで、御二方。よろしく頼むよ」
3月
東京日暮里で大火(焼失2100戸)
東京放送局(後の日本放送協会)がラジオ放送開始
京王電気軌道(後の京王帝都電鉄)新宿−八王子間開通
トラック諸島
飛行場と港湾設備が建設されていた。
港湾設備には、全長240m×全幅34mのドックが含まれ、
連合艦隊の艦艇が補修できるようになっていた。
将校たち
「戦艦・空母から鉄筋コンクリートだから取り敢えず、ドックと飛行場は作れるか・・・」
「ポナペとパラオにも同規模のモノを作りたがってるらしい」
「巡洋艦を建造すればいいんだ」
「建造してるよ」
「しかし、外貨稼ぎ頭が巡洋艦より、航空機がいいんだと」
「木工細工か・・・」
「紡績の女工より手強いな」
「木工細工は才能と名前で値段が変わる」
「海外に輸出できて名前の知られた木工細工師は、20人に達している」
「中でも仙堂と角浦は、格別で人間離れしている」
「あの二人が作ったサイン付き12干支幸幣セット額は額面の1992円を超えて、海外じゃ5万円以上で取引されてる」
「そんなに凄いのか」
「木工の世界じゃ神らしいよ」
4月
国際アマチュア無線連合結成総会開催(パリ大学)
ドイツ大統領選挙にパウル・フォン・ヒンデンブルクが当選
イギリスが金本位制に復帰
2890t級軽巡洋艦 夕張
全長139.99m×全幅12.04m×吃水3.58m
57900馬力 速力35.5kt 航続距離14kt/3310海里
50口径14cm連装砲2基4門 50口径14cm単装砲2基2門
40口径7.6cm高角砲1基1門
61cm連装魚雷発射管2基4門8本 1号機雷48個
関係者たち
「これが新型の巡洋艦か」
「5500t級より華奢だが合理的な作りだ」
「夕張型が、今後、主力になるのか」
「いや、ワシントン条約の上限の1万トン級重巡洋艦になるだろう」
「神籬から魚雷を運ぶなら巡洋艦じゃなくて、雷撃機にしてくれと言われた」
「「「「あはははは」」」」
「くっそぉ 木工業め、稼いでるからって、我田引水しやがって」
「むしろ、第一次大戦の戦訓もあることだし、海大I型に期待したいね」
水上1390t/水中2430t級海大I型潜水艦
全長91.44m×全幅8.81m×吃水4.60m
水上 5200馬力 / 速度18.4kt / 10kt/20000海里
水中 2000馬力 / 速度8.4kt / 4kt/100海里
45口径120mm単装砲1門
53cm魚雷発射管 艦首6門、艦尾2門 魚雷24本
安全潜航深度45.7m
「安全潜航深度と水中速度は倍欲しい」
「水上機も載せたい」
「なんか、神籬は、軍艦を中東か、ベネズエラに売って石油を買おうか、とか言ってる」
「そんなことできるの?」
「さぁね。しかし、既存の軍艦や武器を売って、石油を得る方がいいのは確かだ」
「しかし、神籬もよくやる」
「木工細工で世界中にパイプを作ってるからな」
神籬を中心にした木工細工産業と、生糸産業による外貨会得力が高まり、
戦艦改装の予算は捻出しやすくなっていた。
海軍は、ワシントン軍縮会議により新造戦艦を建造できなくなり、
旧式戦艦の改装強化でお茶を濁しはじめた。
更にドイツ軍将兵の訓練の対価で、ドイツ国内で開発できない技術開発を行い、
日本もドイツの軍事技術をライセンス生産で取り入れが可能になっていく、
日本海軍では、航続力の長いディーゼル機関と
砲身命数の長い55口径150mm砲 78口径88mm砲 83口径37mm砲のライセンス生産を推し進めていた。
赤レンガの住人たち
「結局、ドイツから砲身を買って、日本でライフルを削るのが一番いいのか」
「製鉄所の冶金技術はドイツが優秀だよ」
「口径が小さくなるのが面白くないが砲身命数で考えるとドイツ製の砲身がいい」
「356mm砲身と410mm砲身はやってくれるって?」
「356mm砲身か、380mm砲身はやれるけど、410mm砲身は規格外だから金くれなきゃ嫌らしい」
「砲身命数が長いからって、日本海軍に金を出させる気だな」
「まぁ 向こうも日本の木工細工を真似しようとして出来なかったらしいから・・・」
「ふんっ!」
「問題は、どう改装するかだろう」
「ディーゼル機関を入れて、電気推進にして」
「あとは、中小砲塔をドイツ製に入れ替える」
「高くつきそうだ」
「全部入れ替える頃には、製鉄所をドイツ並みになるから長い目で見れば、騙し騙しやるより割安だよ」
「だといいがね」
「しかし、機関室の面積が足りない、扶桑型と伊勢型は、中央の主砲塔2基を剥がさないと」
「要塞砲も欲しいから、しょうがないか」
5月
キプロスが英国の直轄植民地となる。
普通選挙法公布(25歳以上の男子に選挙権)
イギリス租界警察がデモ隊に発砲し、参加していた学生・労働者ら射殺13人、負傷40人余りを出した。
これをきっかけに、上海全市規模のゼネストに発展した。
上海で5・30事件
厚木飛行場
仙堂と角浦はドイツ空軍将校に混ざって、10式艦上戦闘機を操縦していた。
軍事協定を結んでるドイツ空軍将校はともかく、
軍人でもない民間人が軍用機を操縦できたのは、軍用機の製造に関わっており、
次の製造に活かせるようにするためだった。
2機の10式艦上戦闘機が着陸する。
「いい機体だ。もう少し改良の余地はあるかもしれないが」
「御二方が邪魔をしなけれ、赤城と加賀が空母になっていたのですよ」
「それは知りませんでした」
「全く大変なことをしてくれたものです」
「しかし、木工細工の学校を作るとかいう話しで、そんなに大きな予算ではないはずでは?」
「まぁ 便乗した連中も多かったですからね」
「なるほど、しかし、私たちの影響はそれほど大きくなかったと思いますよ」
「木工細工は、生糸産業に次ぐ、輸出産品として期待されてましたから・・・」
宇垣軍縮
将兵34000人、軍馬6000頭が整理された。
山梨軍縮、第二次山梨軍縮と宇垣軍縮により将兵10万人が整理され社会問題となった。
しかし、木工産業が力つけたことで、手先の器用な将兵の一部を吸収し、
幸幣で水増しされた貨幣流通が副次的な産業を増やし、雇用を支えた。
そして、雇用増大は、ますます、軍事費削減の要求を増やした。
6月
5・30事件対応のため日米伊の陸戦隊が上陸
米国でクライスラー社設立
ジュネーヴ議定書署名(化学兵器・細菌兵器使用禁止)
ベトナムでホー・チ・ミンがベトナム青年同志会を結成
関東州(3462ku)
関東州大連から新京まで700kmの南満州鉄道が伸び、
他にも260kmの奉天〜安東線があり、
旅順線、撫順線、営口線、煙台線を合わせると路線は1130kmに達した。
線路と線路に付属する利権371kuがあった。
仙堂と角浦は、神籬拡大のため、満鉄と提携すべく動いていた。
大連
「なんか、物騒な地域だな」
「ここで物騒なら北に行くともっと物騒になりそうだ」
「満鉄は赤字が大きすぎて、守る価値があるのか疑問なんだけどね」
「そうそう」
「俺たちが稼いだ外貨を満鉄が浪費してると思うとムカつくよ」
「だから、うまみ分けで呼ばれたんじゃないか」
「それでも地図見て悦に入ってる国賊官僚どもにはムカつくよ。死ねばいいのに」
「馬鹿には、何を言っても無駄だよ。国民の声を聞く耳なんてないんだから」
「どうせ、朝鮮人にヨイショされて喜んでんだろう。馬鹿が」
「なんとか、大赤字の南満州鉄道だけでも返還したいものだが」
「利得者に殺されるぜ。日本人にとっては負担でしかないが、連中にとっては金のなる木だからな」
「ムカつく」
7月
広東に国民政府が成立
アドルフ・ヒトラー『我が闘争第1巻』公表
ハイゼンベルクが量子力学の行列表示を行う行列力学に到達
赤レンガの住人たち
サイコロが転がされると被害認定が出され、
被災家屋と死傷者が弾き出されていく、
航空機が定期的に米英戦艦部隊の上空を飛び、
艦隊の動きを街々に通報し、
避難民の割合を出すため、サイコロを振っていく、
将校たちの目は半分死んでいるが、演習は続けられる。
そう、米英戦艦30隻が主砲弾30000発を本土に撃ち込んでも
1発の被害半径は150m。150m×150m×3.14=70650u=0.07065ku
30000発の被害半径は、706.5ku
関東大震災の被害面積の200分の1にも届かない、
死傷者に至っては、海岸から30kmも内陸に避難すれば被害に遭う可能性は格段に減る。
八丈島や南洋の島の幾つかが占領され、補給地になり、
そこに米英の輸送船が移動してくる。
そして、日本艦隊が後続の米英上陸作戦艦隊に襲いかかる。
アメリカ戦艦部隊は、日本艦隊を追いかけるが追いつけず、
アメリカとイギリスの輸送船団だけが沈むか、拿捕されていく、
米英艦隊は補給が続かず、上陸作戦もできなくなって引き上げていく、
「燃料消費は低いが、被害を考えると、身の安全が・・・」
「まぁ 陸奥がない場合の戦略を国民に考えさせたほうが、次の軍事費が増えるかも」
「しかし、海洋国家で焦土作戦は、さすが、精神的に辛い」
「辛くても、艦隊決戦より負けないし、費用対効果を考えると、悪くはない」
「つまり、あれだ。焦土作戦は、こちらが負けたと言わない限り負けないわけか」
「軍港と補給港だけは、強力な要塞砲が必要になりますがね」
「艦隊決戦で艦艇を磨り減らすより、日本と日本人を犠牲にする方が負けにくいが、日本海軍の伝統ではない」
「艦隊温存の法則はあるかもしれないが」
「戦後、八つ裂きにされるのは指揮官なんだが・・・」
「米英相手に、ロシア海軍の時のような戦いを想定する方が頭が固いというか。何も考えていないのと等しいですよ」
8月
クー・クラックス・クラン第1回全国大を開催(ワシントンD.C.)
日本は、資源の有無と、
石油、石炭、石油を大量に消費する鉄鋼業で明らかに不利だった。
近代国家において、常時、兵糧攻めにあっている状態にあった。
しかし、土壌、気候、水資源で豊かで産出に困ることはなく、
質の高い木工細工産業が盛んで、列強に並ぶか、勝る条件があった。
日本は “鉄は国家なり” に逆行するかのような産業構造に移行しつつも、
木工細工の貿易量だけは、増大し、
生糸に並ぶか、超える外貨獲得産業として育ち始める。
もちろん、低量単価で高価な楽器、
特にヴァイオリンなど、目を付けないわけがなく、
トウヒ、カエデ、コクタンなどの木材が集められ、見様見真似で作っていく、
最初は、設計図通りに製造し、次第に音色主義に重心が移り、
積極的に木の奏でる調和音を創造していくようになると、
自分の音彩を引き出そうとして躍起になってるヴァオリニストの目にとまり、
認められるようになると、日本ブランドとして独り立ちしていた。
9月
帝国議会議事堂全焼
アメリカ合衆国 ワシントン
仙堂と角浦は、有名木工細工師として歓迎を受けていた。
「もっと反日が強いと思ってたけど、そうでもなさそうだな」
「でも、世界一のアメリカ人にならないかって言われたよ」
「高慢ちき過ぎる」
「世界一の国で人種差別されるのは好まないな」
「でも、売れ行きが良いから営業スマイルな」
「あはははは」
仙堂と角浦は、グレート・ホワイト・フリート艦隊の縮尺木製モデル艦隊をアメリカに進呈すると博物館に飾られ、
呼び水となり、アメリカからの木工細工の発注が増えた。
ベネズエラ共和国は、フアン・ビセンテ・ゴメス大統領が支配する軍事独裁政権だった。
仙堂と角浦がベネズエラに立ち寄ったのは、ゴメス大統領が軍事力を欲していたことで、
日本にその軍事力を提供できる力があるからだった。
「本当に武器を供給できるので?」
「ええ、できますとも」
「しかし、二方とも木工産業の方では?」
「実は、航空機の機体と、小銃の木枠が木製なのですよ」
「なるほど」
神籬社の仲介で、10式艦上戦闘機と甲式四型戦闘機。
小銃、機関銃などの輸出と、石油の交換が始まる。
10月
北京で故宮博物院開設
震災後の東京で震災鎮を祈願して、平安宮の建造が始まる。
建造を進めたのは木工ギルドで、国際会議が可能な議場建築だった。
有力者たちがミニチュアモデルを囲む。
「震災復興が先決なので、建設は、10年後の33年からになります」
「オリンピック前には完成できるでしょう」
「まぁ オリンピックには見せびらかしたいが・・・」
「しかし、これほどのものを木造で建設できるのか」
「東大寺の5倍もあるが大丈夫なんだろうな」
「燃えにくいチーク材を使いますし、地震にも強い作りになりますよ」
「しかし・・・」
「日本が本当に世界に冠たる国家なら国際会議できる建造物を一つくらい建設しなくてはダメでしょ」
「しかし・・・」
「東京は、関西に比べて文化的なものが弱いんですよ」
「まぁ そうだが」
「今は、材質のいい木材が多いですし。東大寺よりましなものを建設できますよ」
「そうかな」
11月
山手線で環状運転開始(御徒町駅開業・秋葉原駅旅客営業開始)
アドルフ・ヒトラーを保護する組織としてナチス親衛隊設立
東京帝国大学に地震研究所開設
木工12干支ギルド会議
日本12地区の各神社仏閣を中心とした宮大工の代表団が集まっていた。
「我々の作る幸幣を通貨として流通させるよう政治的な圧力をかけるべきだ」
「戦争でもない限りむつかしいかもしれない」
「戦争か・・・」
「戦わされるのは我々の身内かもしれないし、戦争は嫌だな」
「外国の戦争でも我々の幸幣は役に立つかも」
「本当に?」
「ドイツに幸幣を持っていったら売れた」
「流通しなくても工芸品としての価値が高いからね」
「ドイツはインフレだろう」
「パピエルマルクからレンテンマルクに変わって落ち着き始めた」
「次のライヒスマルクで安定するらしい」
「しかし、ドイツに売って得るものなんてあるのか?」
「ドイツの工作機械を買って、日本企業に売ると利益になった」
「木工屋なのに。工作機械か。もう、なんでも屋だな」
「資金力に任せて、鉄鋼業界にもパイプを作らないと」
「というより木工業界は、機関銃と大砲をたくさん作らせて将兵を減らす方が有利だよ」
「作り過ぎても困るんじゃないか」
「貧乏後進国に売って利権でも貰えばいいだろう」
「武器を売って小遣い稼ぎするようなのは外交とは言えない」
「アメリカとイギリスが泣きだすようなことしないと」
「それに幸幣の価値が海外でも認められたら、日本でも発言権になるだろう」
「まぁ なるだろうね」
「それはそうと、もっと自由になる樹林が欲しい」
「それは言える」
「一番、利益になるのは、バルサ材とチーク材だが、火事が増えてるからヒノキ、スギでもいい」
「住宅用は、鉄筋コンクリートが増えてるからな」
「それでも室内は木材が多い」
「もっと山林が欲しいが、朝鮮半島が禿山だからな」
「植林すればいいのに」
「半島は、なんで禿山になってるんだろう」
「オンドルだよ。日本は七輪を囲むが。朝鮮は室内全体を温める」
「伐採と植林は計画的にやらないとな」
「何はともあれ、朝鮮半島はうまみがないな」
「満洲は?」
「朝鮮も満州も国内の金を持ち出して私腹を肥やしてる連中が多い」
「放棄させたほうが国内の社会資本は増えるし」
「外患誘致されずに済む」
「あと、大陸は紙幣は紙くずになりやすいが、幸幣は工芸品としての価値がある」
「余剰資金があって、金を変えない層が幸幣を買ってる」
「一定以上の技能があれば食いっぱぐれないのがいいが」
「幸幣を流通させられるようでないと・・・」
「全財閥が幸幣を銅本位制にしていいという意見が出てる」
「なぜに銅?」
「銅と金の交換比は6000対1になるが、生産量は、100000対1を超えてる」
「いくら幸幣作っても銅と交換できるそうだ」
「まぁ 銅なんてもらっても嵩張るだけで困るがな」
12月
ロカルノ条約調印(ライン国境の現状維持と不可侵など)
農民労働党結成、即日結社禁止
東京 喫茶店
仙堂と角浦が新聞を見ていた。
“京都学連事件、京都府警察部特高課が京大・同志社大などの社研部員33名を拘束”
「やれやれ、ずいぶん過激なことをする」
「治安維持法って言ってもせいぜい、拘束と罰金程度だけどね」
「特高が内向きなんだよな。どうせなら外国を貶めるくらいのことすりゃいいのに」
「どうせなら、日本を外国と戦争させようと画策してる連中をしょっ引けばいいんだ」
「特高もそういう連中を利用して内定してるからね」
「逆に利用されて地位を得てるとも知らずに」
「組織権益のためなら、同胞がどうなろうと知ったことないのだろう」
「だんだんムカついてきたよ。庶民上がりとしてはね」
「それは、そうと飛行機作るのは本気か?」
「いい飛行機を作れば軍艦じゃなくて、木製飛行機が増える」
「木製飛行機が増えたら、飛行場が増えるし、建設資材が増えたら木造家屋も増える」
レザー・ハーンがペルシア皇帝(シャー)に即位(パフラヴィー朝の成立)
東海道本線が国府津駅まで電化
ソ連で第14回共産党大会開催(スターリンの一国社会主議論が採択、トロツキーの永続革命論は排除)
第51議会召集
朝鮮総督府庁舎完成
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
月夜裏 野々香です。
仙堂 春和 (19)
角浦 秋和 (19)
林業・木工所・神社仏閣・宮大工学校で木工産業ギルドが形成されます。
売り上げは、生糸産業を追い抜いて世界最大最強の木工産業大国 (笑
久しぶりの図上演習です。
この時期は、複葉機が主流で航空攻撃を考えてない時期で、
日本海軍が米英海軍を日本と日本人を盾に戦います。
善悪というより、焦土作戦。
ロシア帝国が対ナポレオン作戦で採用した戦略で、
スターリンも大祖国戦争で採用した戦略なので、
幸幣で将来の日本は、手塚治が名木工細工師になってしまったりで、
アニメ産業は危機的な状況になるかも、
この木工細工カードだけは切りたくなかった orz
第04話 1924年 『そうだ。御籤で幸幣をばら撒こう』 |
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第06話 1926年 『朝鮮共和国独立と日朝国交断絶』 |