第06話 1926年 『朝鮮共和国独立と日朝国交断絶』
1月
ルフトハンザ航空設立
東洋レーヨン設立
ベネズエラ共和国
マホガニー木は樹高20〜45m、直径2mまで生長し、
緑の黄金と呼ばれるほど価値があった。
しかし、伐採に次ぐ伐採で、植樹が追いつかなかったことが災いする。
というより移民国家で、現地民が淘汰されていたことから、植樹に対する意識が低かった。
神籬がベネズエラの有力者で信頼できる人脈を作り、
マホガニー木とセドロ木の林業に関わるようになると貿易が増え、
日本政府もアメリカの動きを気にしながらも、
アメリカの朝鮮半島支配と投資とのバランスを気にしつつ、
日本とベネズエラの政治的な交流を深めていった。
カラカス湾
1030t級海風型駆逐艦 海風、山風、
810t級浦風型駆逐艦 浦風
1105t級磯風型駆逐艦 磯風、浜風、天津風、時津風、
日本製の軍艦がベネズエラに売却され、兵器・武器弾薬が降ろされ、
代わりに石油が積み込まれ、日本人街がオリノコ川中流に建設される。
日本から離れた過ぎており、石油のうまみは少なかったものの、
本当の目的は、ベネズエラ共和国を強国にすることで、
アメリカの目を東アジアから中南米に向けさせることにあった。
日本人たち
「アメリカ人が怒って、石油を値上げするとか。売らないとかならないだろうな」
「アメリカの半島支配のためには、日本の工業力が必要になってる」
「今のところ許容範囲内らしい」
「まぁ アメリカの神籬人脈のおかげでもあるがな」
「相変わらず手広くやってるんな」
「アメリカの木工業界も日本で木工細工を作れば数倍の利益になると分かってから反応が変わってきてる」
「フリーメイソンに対抗して、国際フリーウッドを形成して産業保護と発展を計画するそうだ」
「木材加工で日本が最強なら日本が一人勝ちしそうだな」
加藤高明首相死去により内閣総辞職
第1次若槻内閣成立
神籬資本が東北・北海道域へと流れ込もうとしていた。
東北域は、冬に外出がしにくく、紙幣量が少なかった。
そして、作物の生産量が少ないのに林業が盛んだった。
そのため、幸幣の生産が多く、流通させてしまいやすい土壌があった。
そして、そのことで産業が拡大したのだった。
また、関東大震災の復興で資本を必要としていた市民も幸幣を流通させる動きを見せていた。
大蔵省日銀は、幸幣の一般流通化、常用化を恐れ、
震災再建や東北域への大規模投資を行わざるをえなくなっていた。
そして、耐震・耐寒住宅を開発していた神籬社がその需要に乗った。
膨大な紙幣発行は、既得権と権力構造を脅かすが、好景気を生んだ。
仙堂と角浦
「東京、大阪、仙台を結ぶ新幹線計画を進めるらしい」
「幸幣の一般流通を恐れて、大規模財政投資になったか」
「なんにしても東北は、少しマシになるだろう」
「内患の国賊は、利権支配で権力を強化しようとするし」
「外患の売国は、格差を利用して国家転覆を図るし、どっちも碌なことをしないからな」
「どこの馬の骨かわからない人間に金をやりたくないのはわかるが、それを言ってたら日本経済が萎むばかりだからね」
「それどころか、身内にさえ、金を渡したくない連中もいるからね」
「人の器以上に国は大きくなれないってことか」
「なんにしても朝鮮半島にやるお金を東北に回していればこんな貧しい地域にはならんよ」
2月
松島遊郭疑獄発覚
東北帝国大学の八木秀次と宇田新太郎によって、八木・宇田アンテナが考案
海軍関係者たち
鉄鋼の模型を作ってプールに浮かべていく、
鉄鋼の厚みが大きいものは吃水が深くなり、
鉄鋼の厚みが薄いと吃水が浅くなる。
全長が長いと速度が増し、全幅が長いと船体が安定する。
船体の多様さは、幾つもあるがだいたいの形が決まっていく、
あとは船が水平になるように機関、燃料庫、武器庫、兵器を配置していくだけ、
通常、改装艦艇では使われにくいが、
ワシントン軍縮条約で陸奥の代わりに生き残った生駒、鞍馬、伊吹3隻の改装は少し違った。
ワシントン条約では主力艦の改装に関する規定があり、
主砲の口径と数を増やすことと、垂直防御(舷側)の強化が認められなかった。
しかし、技術革新に応じ、主砲仰角の引き上げ、高角砲の増備、
甲板防御と水中防御の強化、機関強化など、
排水量3000t以内の増加を認めていた。
生駒、鞍馬、伊吹3隻は、少なくとも重巡洋艦より強力な軍艦に改装できた。
筑波型(1908年)1隻 生駒
排水量 13750t / 15400t
全長137.1m(水線長134.1m)×全幅22.8m×吃水7.95m
宮原式石炭・重油混焼水管缶20基 + 直立型三段膨張式四気筒レシプロ機関2基2軸
20500馬力 速力20.5kt 航続距離
45口径305mm連装砲2基 45口径152mm砲12基
45口径120mm砲12基 40口径76mm砲4基 25口径76mm砲4基
457mm水中魚雷発射管3門
鞍馬型2隻 鞍馬(1911年)、伊吹(1909年)
排水量 14636t / 15595t
全長137.16m×全幅22.98m×吃水7.97m
鞍馬:宮原式石炭・重油混焼大型水管缶28基 + 直立型3段膨張式4気筒レシプロ機関2基2軸推進
伊吹:宮原式石炭・重油混焼小型水管缶18基 + カーチス式直結タービン2基2軸推進
鞍馬 22500馬力 21.25kt
伊吹 24000馬力 21.16kt
45口径305mm連装砲2基 4門 45口径203mm連装砲4基
40口径120mm砲14基 40口径76cm砲4基 25口径76cm砲4基
457mm水中魚雷発射管単装3基
「となりのドックで、船体を最初から、それらしく作り直せってことね」
「妙高型巡洋艦の全長192mに合わせて、幅が太いだけだ」
「妙高B、那智B、足柄Bで部品を製造して誤魔化すよ」
「まぁ 船体の寸法が似てたら構わんが・・・」
「上部構造をそれらしく載せ替えればわからんし」
「胡散臭い船体の改装になりそうだが」
「見掛けは、少々古臭い気もするが、トン数の大きさは魅力的だからね」
「摂津の方が良かった気もするが」
「摂津1隻じゃ面白みがないし、ポストもな・・・」
「大砲やディーゼル機関は手に入るんだろうか」
「ドイツの52口径282mm砲と2500馬力ディーゼル機関を買い取れる」
「それは悪くないは口径は増やせなかったんじゃなかったっけ」
「そうだっけ」
「あのなぁ」
「まぁ 砲身の換装は前提だよ」
「その代わり、ドイツが軽巡洋艦を売ってくれと言われたら売ることになりそうだけどな」
「おいおい」
「ドイツの工作機械はいいぞ」
「まぁいいけど。新型砲だよな。吃水は大丈夫か?」
「むしろ、高速化のため、吃水を50cmくらい減らしたいくらいだ」
「高速化はいいとしても、全長が短すぎないか」
「実は60m伸ばしたい」
「60mなら軽く、6000tオーバーだ」
「増加は3000t以内なのにトン数オーバーするだろう」
「だから装甲を減らして吃水を減らしたいんだろうが」
「重巡洋艦に毛が生えたような戦艦になってしまうな」
「16000tから17000tなら重巡洋艦に毛が生えたような軍艦にしかならないよ」
「装甲も妙高と同じ100mmから120程度に収まりそう」
「役に立つのか、それ」
「戦艦と戦わないと決めたら無用な装甲は剥がすのが上策」
「戦艦より速く。巡洋艦より強ければいい」
「あと、水上機をたくさん載せて、索敵力が高ければ君子危うきに近付かずで安全性が増す」
「「「「・・・・・」」」」 ため息
3月
労働農民党結成
蒋介石が反共クーデターを起こす(中山艦事件)
仙堂邸
「仙堂先生。よろしく。お願いしたい」
3倍ほど、長く生きてる人に頭を下げられると流石に恐縮する。
「・・確かに、木は念を溜め込みやすい性質があります」
「しかし、その種の人形を作ったとしても本人が人形を分身のように大切にしないと効果がないのですよ」
「大切にしますよ。仙堂先生」
「しかし、自分自身の分身を大切にできる人間は、そういった人形を必要としない人柄になりますし」
「仮に第三者で自分の分身に対することになったら、自分で自分の人形を壊すということもありえますから・・・」
「わ、私は、そんなに酷い人間ですか」
「い、いや、自分の分身のような人形に直面したとき、どう行動するか、人それぞれですし」
「是非、お願いしたい・・・」
分厚そうな封筒が差し出され、
「わかりました。通り魔のような災厄もありますし、作らせていただきます」
古来、地脈や天候を乱し、豊作を凶作にし、
貧困と対立と抗争から起こる不幸への転落を恐れた。
祭りごとの多くは、凶を払い除けることに費やされ、幾つもの形式の儀式や呪術が生まれていく、
厄払い人形や藁人形は陰陽道の式神を簡略化したもので。
自分自身が持っているか。寄り代の人形を敵が持っているかの違いでしかなかった。
そして、木仙となった仙堂と角浦は、寄り代にたる人形を作ることができると信じられており、
富裕層やアウトローなど妬まれたり憎まれやすい人たちから依頼されることが少なくなく、
実入りのいい仕事だった。
何より目に見えない敵から身を守るような木工細工のため
権力や暴力とは別の圧力を与えてしまう。
4月
朴烈・金子文子夫妻が大逆罪によって死刑判決(朴烈事件)
9000t級巡洋艦 古鷹、加古、青葉、衣笠の建造が進められていた。
全長186m×全幅17m×吃水5.6m
2500馬力×40基 100000馬力 32kt 航続距離12000海里/16kt
60口径150mm3連装3基 76口径88mm砲4基 610mm連装魚雷発射管6基
水上機2機
関係者たち
「ドイツに肩入れし過ぎてるんじゃないのか」
「ドイツが強くなったほうがアメリカとイギリスの海軍を削いでくれるし、都合がいい」
「しかし、ドイツが再軍備の際、5500t級軽巡の売却を含めるというのは・・・」
「重巡以下が制限されてるわけじゃないし。ドイツに売っても建造すればいいだろう」
「まぁ そうだろうけどさ」
「とにかく、日英同盟を廃棄させられたし。ドイツの技術は捨てがたい」
5月
ポーランドでピウスツキらが五月革命をおこし政権を掌握
十勝岳が大噴火(死者144名)
東京は人口密集地で、適当な異性を見つけやすい、
出会う可能性なら日本最大といえる。
とはいえ、野心があるなら誰でもいいというわけでない、
華族か有力家の閨閥のグループに入る必要はあった。
それが日本で、もっとも成功の早道であり、
コネもなく、才覚だけで成り上がろうとする二人にとって最善の選択と言えた。
しかし、隣を歩く、どこかの御令嬢でもなく、とても美人というわけでもなく、
どこかの神社仏閣の娘というわけでもない、
人柄がいい器量良しというわけでもない、
寒村出の16歳の娘、山城美奈で、
呉服屋の奉公で上京していたの見つけ引き抜いたのだ。
今は、家の清掃だけでなく、秘書のようなこともさせていた。
好都合なことに美人でないことが、連れ歩いても疑いを晴らしてくれる、
台湾 某華族所領の山
台湾は、北回帰線が中央域を分断し、北部が亜熱帯、南部が熱帯になっていた。
日本の企業、華族、有力者などが土地を買うなどして、投資していた。
千堂は、山の手入れを引き受けるなどで、出張が少なくない、
華族の別荘に住み込み、間引きを決め、幾つかの植樹を試み、
そして、何をどう植えたらいいかなど、選定を行う。
朝、彼女は朝食の準備をし、郵便受けの新聞と案内状を持ってくる、
鋼鉄枠で作られ別館は、周囲を別名「絞め殺しの木」と呼ばれるガジュマルが覆い始めていた。
驚くべき成長の早さだが、ガジュマルの木が鋼鉄枠を覆い切ると
鋼鉄枠を内側に引き抜いて取り外し、
完成すれば、生きたガジュマルの木の中に部屋を作ることができた。
これができるのは、今のところ、仙堂と角裏しかおらず、
富裕層は、こぞって二人に依頼するが、
熱帯樹を日本で植えるのは不可能ではないが手入れに金がかかる。
多くの場合、台湾南部に集中し、北上しても、せいぜい台湾北部から九州どまりだった。
ガジュマル木の他、ボダイジュ、イチジクでも可能でイチジクの北限はもう少し上になった。
「おはようございます。旦那様」
「おはよう」
“未だ、震災再建ままならず”
“軍縮条約は日本の弱体化計画”
「やれやれ、内憂外患だな・・・」
「ええと・・・出張先まで案内状とはな・・・加藤子爵家に御呼ばれか」
「20日に予定はあったっけ?」
「17日に東京に戻り、20日12時に角浦様と会食。ほかは、ありません」
「たぶん、一緒に呼ばれてるな。あそこ、若い娘がいたっけ」
「三女の巫子様が15歳と聞いております」
「な〜る、お見合いの前の顔合わせってことかな」
「子爵様の御眼鏡に叶えばお見合いですね」
「かもしれない」
「この家の次女はどうされるのです?」
「なにか。彼女と約束をしたかな」
「もう一度来てくださいねと」
「そうだっけ、しかし、次に来るのは、半年後だ」
「なぜ、私を引き抜いたのです」
彼女の賃金は1.5倍に増え、喜んでいたが、時々そう聞く、
呉服屋の奉公に来ていたの者で、美人や器量良しはいたが、
木仙アンテナに引っ掛からない、
引っ掛かれば良かったのだが、世の中、思うようにはいかない、
角浦もうどん屋で働いていた15歳の娘、日向奈美を小間使いで雇っていた。
正直、東京中を巡り歩き、もっと適当な女性を探しているが、
彼女を超えそうな相手はいなかった。
「なんというか。下積みに働いていた人間の方が使いやすい」
「そうですか・・・」
彼女自身、植樹の才能がありそうだが、
それよりは、彼女の血にあった。
まぁ 子供が健康だとか。病気になりにくいとか。
最大は、木仙の才能を後孫に受け継ぐことができるといった類のアンテナで、
木仙の才能を後孫に受け継がせることのできなさそうな女性は99パーセント以上なのだから、
年齢の範囲も含め、早い話し嫁候補第一位だった。
閨閥が複雑に絡み日本社会を裏から動かしていく、
仙堂や角浦が財閥や華族家に呼ばれる、
これは、閨閥の婿候補になっていたからと言える。
むろん、口実は婿候補で呼ばれたのでなく、表向き、林業の取引だった。
加藤子爵家
三女の巫子(15歳)は、最大級におめかししていた。
事実上の主役と言えなくもない、
彼女は、仙堂(20歳)と角浦(20歳)の背後に控えた秘書の山城(16歳)と日向(15歳)を一瞥。
相手より財産、家柄、容姿で勝っていることに気づくと微笑む、
「仙道様。角浦様。この方たちは?」
「秘書ですよ。仕事が増えましたので、研究や林業で手伝ってもらってます」
「まぁ お若いですのに、優秀なんですの?」
「いえ、不平不満が少なく働いてくれるので、使っています」
「「・・・・・・」」
「おほほほほ・・・そうですの、そうするよりないのですわね・・・」
「「・・・・・・」」 むっすぅ〜
「加藤家の山はどうでした?」
「良い山をお持ちで、手入れさせていただきます」
「助かりますわ。家人に木のことがわかる人が少なくて・・・」
そう、山を持つ華族、財閥にとって仙堂と角浦は、私財を数百倍に増やす婿候補だったのだ。
当然、婿に取り込むことができれば、山を持つ閨閥他家に対し、圧倒的に有利になった。
6月
6・10万歳運動が起こる。
朝鮮の万歳運動を受けて
日本は、設備と交換に巨済島、済州島を領有後、
李垠皇帝の朝鮮独立を承認し、日本軍の撤収が始まる。
日本にいた在日朝鮮は李垠皇帝に取り入りながら朝鮮半島へと凱旋帰還していくのだった。
「本当に軍を撤収させて、よかったので?」
「朝鮮人が独立したいのなら独立させればいい」
「どうなるか、見ものだな」
「アメリカが来るか。ソビエトが来るかだろう」
「どっちが来ても面白くないがね」
「それでは、どうして、日本軍を撤収させるのです?」
「イギリスがアイルランドを独立させたのと同じ理由さ」
「朝鮮人に日本に併合されていたほうが良かった。そう分からせるためだろう」
「なるほど」
「それに米ソのどちらかが来れば、国防費が増える」
「だといいがな」
「しかし、せっかく建造したのに・・・」
黄昏ができたばかりの朝鮮総督府庁舎を紅く染めていた。
日本の朝鮮人工作員たちと外国人たち
「やったニダ。朝鮮独立ニダ。帰るニダ。凱旋ニダ」
「馬鹿。早まるな。日本人の罠だ」
「もう、朝鮮は独立国ニダ。もう関係ないニダ。帰るニダ」
「こら、話しを聞け、この馬鹿!」
「「「「ウェハハハハッハハ」」」」
「「「「・・・・・」」」」
朝鮮が独立すると、日本に居た朝鮮人は、大挙して出国し、
アメリカ、ソビエト、中国、イギリス、ドイツが朝鮮共和国の独立を承認する。
朝鮮は日本との国交を断絶する。
巨済島(400ku)
陸軍基地が建設され要塞化が進められることになった。
島民は全て、半島側へ送られ、
海岸線は土嚢が積み上げられ、潜入不可能になろうとしていた。
日本人の移民は少しずつ進んでいた。
巨済島守備隊
「独立して、列強が独立を承認したと、思ったら国交断絶とは片腹痛い国だ」
「おかげで、国防予算が増えましたね」
「アメリカとソビエトのどっちが取り付くか、見ものだな」
「ソビエトに不凍港を渡してしまうのは、危険では?」
「日本国内に朝鮮人を取り込んでる方が100倍も危険だ」
ダイムラー・ベンツ社設立(ダイムラー社とベンツ社が合併)
朝鮮半島の独立が決まると、関東州(3462ku)は、飛び地となって窮地に陥る。
そして、それまでの政策を改めることになった。
日本は、遼東半島の領有の代わりに南満州鉄道の返還を決め、
関東州を大連州と改め、漢民族と朝鮮人の排斥を開始し、日本人の移民を募集する。
蒋介石は、北伐を進めていたことから南満州鉄道を手に入れられるならと、
日本の大連州(3462ku)領有を承認してしまう。
その後、武器弾薬を乗せた貨車が中国へ向かい。
中国で産出した鉄鉱石、石炭、希少金属が貨車や貨物船で日本へ供給されることになった。
関係者
「武器を輸出すると大連州や租界を失うのではないか」
「租界は失ってもいいよ。大連州は、死守する」
「死守できればいいがね」
7月
蒋介石が国民革命軍を率いて北伐を開始(第一次北伐)
蒋介石が満州南部を支配する。
治安警察法第17条の廃止、
小作調停法・労働争議調停法の施行により労働者・農民の団結権と争議権が制限付きながら認められる。
ポアンカレ国民連合内閣が成立する。
ワシントン 白い家
非公式協議 アメリカ人とイギリス人とロシア人
「日本は、本当に半島から撤退したのか」
「イギリスだって、アイルランドから撤収した」
「日本が半島から撤収したとしても珍しくはないさ」
「北アイルランドは、内戦中じゃん」
「・・・・・」
ごほん! ごほん!
「半島は、どうしようか」
「我々が朝鮮半島を占領できるということでしょう」
「取り敢えず、朝鮮共和国は独立国じゃないのか?」
「そうそう、ソビエトだけで半島占領はずるい」
「そうそう」
「では、どうせよと?」
「アメリカ、イギリス、ソビエトで朝鮮を守る同盟を結べばいい」
「それなら、日本と中国は、何もできまい」
「そして、朝鮮半島が攻撃されたときは、日本にせよ。中国にせよ。おしまいだ」
「米英ソで朝鮮半島を押さえ。日本と中国を分断し、東アジアを軍事的に押さえ込むわけか」
「共産国と組むのは面白くないが、落としどころとしては悪くない」
「というより、日本が急に半島から退くから、それしか思いつかんよ」
「ただし、米英ソ3カ国が共同で戦うのは、朝鮮半島が侵略された時のみだ」
「そして、3カ国参戦以外では、朝鮮半島を戦場にしない」
「よかろう」
「まぁ いいだろう」
「では、配分だが・・・」
「」
「」
木工12干支ギルド会議
林業、城郭神社仏閣、木工所、宮大工学校、幸幣、貿易黒字・・・
木工12干支ギルドは、幾つもの要素が複合的に絡み、日本最強の産業ギルドになっていた。
四国(ね)、九州(うし)、中京(とら)、山陰(う)、関東(たつ)、東北(み)、
北海道(うま)、南樺太(ひつじ)、台湾(さる)、遼東(とり)、関東2(いぬ)、中京2(い)
一時、朝鮮半島に2個作られていたが、独立によって廃止され、
いまは、人口の多い関東と中京が兼ねていた。
もっとも幸幣の絵柄で分けてるだけなので、ギルド間の結びつきは強かった。
「最近、幸幣と日銀紙幣の交換が減っている気がする」
「北方は、需要があるよ」
「また北方か」
「遼東も2000個欲しい」
「「「「はぁ」」」」
ここで、個という単位は、額に入った12干支×1幸、5幸、10幸、50幸、100幸のことで、1992幸。
交換率は1992円相当で2000個は、398万4000円相当になった。
「富裕層になった中国人が欲しがってる」
「大陸じゃ 使えないだろう」
「むしろ、元より好まれてる」
「金が買えない富裕層ね」
「いや、中国人も幸幣を作ろうとしている」
「やれやれ」
「作れそう?」
「手先の器用さは、そう変わらないし」
「何年かかければ分解した状態だけなら、そっくり模倣して作れるでしょう」
「合わせられるかはわかりませんが」
「作り過ぎると、インフレになって困るのだが」
「むしろ、貧乏人で手の器用な人間は、金を作れるのだから取り入れたいだろうね」
「幸幣は、紙幣みたいに簡単には印刷できないから、偽札の輪転機を回す方が楽だと知るようになるよ」
「なんにしても、中国と資源を交換できるのなら悪くないさ」
「ところで、植林の関係で中米諸国に行ったけど、反米が滅茶苦茶強くて笑った」
「そんなに反米が強いのか?」
「アメリカは、利権支配とか、テロとか、侵略とかばっかりしてるからな」
「アメリカ人が一人でも死んだら、みんな一斉に万歳すると思うよ」
「「「「あははははは・・・」」」」
「ベネズエラは、どんな風?」
「石油取引で、南米の日系人が集まり始めてる」
「アメリカは、朝鮮半島投資の資金繰りをしてるからね」
「やり過ぎたら石油輸出禁止されると困るよ」
「たぶん、半島の要塞化が進まない限り日本と戦争なんてできないだろうし」
「米英ソが足並み揃えて戦争なんて無理だと思うよ」
「だといいけど、半島に大量の中国人が流れ込んで城塞都市を建設しようとしているよ」
8月
日本放送協会設立
ボルボ社設立
鬼熊事件
朝鮮共和国の独立と日朝国交断絶は、南満州鉄道に深刻な影響を与えた。
むろん、満鉄利権防衛のことだが、半島の負担が減った分が満鉄利権のために使われることになった。
遼東半島は、現地民の追い出しが進められ、要塞化が始まり、大陸の窓口が作られていた。
大連州(3462ku)
「遼東半島防衛がむつかしくなったな」
「だが、幸幣の量産が増えてるし、幸幣を流通させるだけなら、内地は何も言わない」
「遼東半島に長城を作るのか?」
「中国人の侵入は防ぎたいし、朝鮮人の不法侵入も防ぎたい」
「やっぱり不法侵入してくるか」
「昔から来てたからな。向こうから国交断絶してくれたのは助かった」
「しかし、アメリカ、ソビエト、イギリス、ドイツが足場を築こうとしてるようだが」
「すぐ、朝鮮人に失望するさ」
「「「「あははははは」」」」
9月
量子力学の基礎方程式としてシュレーディンガーの波動方程式が確立
万県事件、イギリス軍による中国への砲撃事件。
ドイツが国際連盟に加入し、常任理事国となる。
山陽本線特急列車脱線事故がおこる。
財政上の負担になっていた対半島投資が減ると、国内投資が増え、
更に幸幣の流通も増えるようになり、
日本国内は緩やかに好景気になっていく、
実のところ、幸幣はたくさん作りすぎると幸幣の価値が下がるため、
宮大工たちは、幸幣を作るのが割に合わなくなると、別の木工細工に切り替え、
自動的に幸幣量を調整してしまう傾向があった。
むしろ、利権ありき、思想、上から目線で通貨発行量を決める日銀方式が通貨調整力で劣っていた。
10月
郵便年金開始
新交響楽団(後のNHK交響楽団)結成
イギリス帝国会議がロンドンで開催され、イギリス本国と自治領の地位は平等とされる。
某重工業
ディーゼル機関のライセンス生産が進んでいた。
ドイツ製は軍用に使われていたが、
ライセンス生産品は民間用で使われるようになっていた。
2500馬力級ディーゼル機関
「いい感じじゃないか」
「いい加減、まともなディーゼル機関を製造しないと。稼ぎ頭の神籬にいい顔されてばかりですからね」
「なんだ。次の機体も神籬に負けそうなのか」
「宮大工が本気で作ったら接着剤をほとんど使いませんからね」
「航空力学や航空機設計なんか誰が教えたのやら」
「仙堂と角浦ですよ」
川内型軽巡洋艦
排水量5195t/常備5595t
全長162.15m×全幅14.17m×吃水4.80m
オールギアードタービン4基4軸 90000馬力
→ ディーゼル機関2500馬力20基 50000馬力
速力 35.25kt → 30kt
航続距離14kt/5000海里 → 15kt/15000海里
乗員440名 → 乗員380名
50口径14cm単装砲7門 → 60口径150mm砲4門
40口径8cm単装高角砲2門 → 83口径88mm砲4門
6.5mm単装機銃2挺 → 37mm砲2門
610mm連装魚雷発射管4基 → 610mm4連装魚雷発射管4基
93式機雷56個 → 93式機雷56個
航空機1機 → 航空機3機
ディーゼル機関を試験的に利用することが決まっていた。
成功すれば、軽巡洋艦は、ほぼ、同じ改装を受けることになっていた。
関係者たち
「ドイツ海軍規格を使うのはまずくないか」
「新型の1925年型60口径150mm砲はいいぞ」
「・・・・」
「陸軍と航空機でも、うまみがあるそうだ」
「うまみねぇ シーメンス事件なのは嫌なんだが」
「あれは日独連携を妨害したがってた国の陰謀だと思いたいね」
「ふっ」
「速度を捨てるのはまずい気がする」
「だけど、ディーゼル機関の出来を確認しないといけないし」
「軍上層部は、石油依存を少しでも減らしたいらしい」
「しかし、大規模な建造になりそうだ」
「同じような船体を建造して、使える装備を載せ替えていけばいいんじゃないか」
「見た目が似てたらわからんだろう」
「だけど艦首艦尾で背負式に2門ずつか、でっかい駆逐艦みたいになるな」
「航続力が長く、通商破壊向きだと」
「「「「・・・・」」」」 ため息
11月
NBCがラジオ・ネットワーク放送開始
豊田佐吉が現在のトヨタ自動車の母体、豊田自動織機製作所を設立
アメリカ合衆国
白い家
「1幸は作れませんでした」
「なぜだ」
「組み合わせる段階で入りませんし折れます」
「日本人は作ってるじゃないか」
「秘密の細かな決まりごとがあるようです」
「いつ伐採しろ、いつ加工しろ、何日寝かせろ・・・いろいろ」
「聞いてこい、機械で大量生産して値崩れ起こさせてやる」
「例え、聞いてもこういったものを彫るのは、アメリカ人には・・・」
「アジア系の人間を雇ってでも模造してやるわ」
「それに機械にできないことはない」
「諜報員を送り込んでますが、なかなか・・・」
「買収資金は幾ら使っても構わん」
「幸幣で紙幣を水増しされ、公定歩合を消されたら金融支配が不可能になるのだぞ」
「全力で・・・」
「極東ソビエト軍の動きは?」
「今のところ、南下の兆しはないようです」
「米英ソの協定では、アメリカとイギリスの駐留は各々2個師団相当」
「ソビエトは1個師団相当だが、極東ソビエト軍が本気で南下したら半島は奪われる」
「この状態で対日戦争は不可能だ」
「半島利権を人質に取られたようなものですか」
「あと朝鮮人の反米反英反ソ機運が高まってます」
「日本の半島統治と比べられたら怒るだろうな」
「いずれ人口を減らせるでしょう。あとは・・・」
「「「「・・・・」」」」 にやにや
12月
リトアニアでクーデターが起き、アンタナス・スメトナが権力を掌握。
阪急今津線が全通。西宮北口駅に平面交差が生じる(1984年廃止)。
第52議会召集
“米英ソ独4カ国は、朝鮮半島に取り付きつつある”
“朝鮮は、日本に突き刺さった刺である”
“我が日本国は、外交戦略上大変な失敗をしたと言える”
“そうは思わん”
“朝鮮半島の開発は損であり。朝鮮投資は浪費で、利権者が私腹を肥やしているだけだ”
““““・・・・・・””””
大正天皇崩御。摂政裕仁親王が践祚する。昭和と改元(この日から年末まで昭和元年)。
浜松高等工業学校の高柳健次郎、電子式テレビ受像機(ブラウン管式)を開発。
アメリカ合衆国がニカラグアに干渉
アメリカ海兵隊とニカラグア自由党軍のアウグスト・セサル・サンディーノ将軍との交戦。
ロッキード航空機会社設立
角浦秋和(20歳)は、日向奈美(15歳)に鉢に植えた樹木の世話をさせ、植林のやり方を教えていた。
植林、木工の流れは重要で、全体を把握してから得意な分野に集中させる必要があった。
角浦は、日向に強く握るようにいうと、日向は力いっぱい強く握る。
「んん・・・」 真っ赤
小さな指が白く赤くなっていく、
15歳の少女が20歳の青年の手を力いっぱい握ったところで、たかが知れている。
力持ちになる必要はないが、一定以上の圧力をかけ続けなければ木工細工は完成させられない、
「木工細工は、握力とか、指圧を結構使うから、もう少し鍛えたほうがいいかもしれない」
「そ、そうですか」
「クルミをあげるから、暇なとき、こうやって、動かしてみるといい」
「はい」
こき こき こき こき
「角浦様」
「ん?」
「街で買い物の時、朝鮮独立が日本の致命傷になると聞きました。大丈夫なのでしょうか?」
「そう書けば、新聞が売れる。なるべく人の目を引くような単語や文面を使う」
「逆に言うと、危機感を煽れば軍事費が増える」
「危機感を煽って、軍事費が増えると、新聞社は、軍部から少しお金をもらえる」
「そ、そうなのですか」
「愛国心を高揚させて、日本民族を選民のように宣伝してもさ、貧富の格差は広がるし」
「予算を余計に取られた方は、むくれる」
「じゃ 日本は、心配ないのですね」
「まぁ 日本が不利になったのは事実だけど。遼東半島と西日本の軍事費を少し増やすだけで足りるよ」
「利権は、日本のため、日本人のためとか言いながら、特定の分野に限定されて日本と日本国民を体現していない」
「むしろ、排他的になりやすいし、聖域を守るためなら日本国と日本国民から収奪する敵になりやすい」
「まぁ・・・・」
「まぁ 軍需もゼネコンもないと困るがね」
「行き過ぎると、格差が広がりすぎて悲惨なことになりかねない」
「それに朝鮮人を国内に入れても国家観と民族観を破壊されるし」
「国益の統合と民族の結束で足を引っ張るだけだ」
「・・・・・」
角浦は窓から空を見上げる。
「雪か・・・」
「寒くなりましたね」
「大晦日だし。蕎麦でも食べに行くか」
「はい」
日向が余所行きの着物を着てくると、なんとなく、初々しい空気が漂う。
力尽くでとか。誑し込んでとか。雇用者の立場を利用してとか。いろいろ考えるのだが、
嫁第一候補で長い付き合いになるかもしれないと思うと臆病になるのか、攻め倦ねていた。
もう一つの問題は、閨閥に組み込まれた方が様々な贔屓を受けられやすく、
日本社会で有利なことに変わりなく、慎重にならざるを得なかった。
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月夜裏 野々香です。
仙堂春和(20歳) × 山城美奈(16歳)
角浦秋和(20歳) × 日向奈美(15歳)
1926年 巨済島(400ku) 済州島(1845ku) 鬱陵島(72.82ku)
1926年 大連州(3462ku)
この時期の陸軍師団です。
近衛師団
第01師団(東京) 第02師団(仙台) 第03師団(名古屋) 第04師団(大阪)
第05師団(広島) 第06師団(熊本) 第07師団(北海道) 第08師団(弘前)
第09師団(金沢) 第10師団(姫路) 第11師団(善通寺) 第12師団(久留米)
第14師団(宇都宮) 第16師団(京都) 第19師団(羅南・朝鮮) 第20師団(龍山・朝鮮)
全部で17個師団ですが、朝鮮独立で、
第19師団(遼東半島) 第20師団(名古屋)に移動します。
師団数としては少ないような多いようなですが、
核になる師団さえ機能していたら日露戦争みたいに後備師団や後備旅団で足し算していけるわけです。
第05話 1925年 『木工12干支ギルド 神籬』 |
第06話 1926年 『朝鮮共和国独立と日朝国交断絶』 |
第07話 1927年 『米英ソ朝4カ国同盟成立と、死(四)環の計』 |