月夜裏 野々香 小説の部屋

    

神がかり系 仮想戦記 『神籬の木仙』

 

 第07話 1927年 『米英ソ朝4カ国同盟成立と、死(四)環の計』

 1月 

 アメリカ、ソビエト、イギリス軍は共同歩調を取りながら朝鮮半島に上陸、

 朝鮮半島に足場を作ろうと4カ国同盟を結んだ。

 しかし、同盟とは名ばかりで米英ソ3カ国による朝鮮共和国の保護国化でしかなかった。

 朝鮮共和国 ソウル

 米ソ英朝4国同盟会議

 「日本を占領するニダ」

 「「「・・・・」」」 呆然

 「日本を占領するニダ。アメリカとソビエトとイギリスが手を結べば世界最強ニダ」 

 「朝米ソ英4カ国同盟軍で日本をやっつけるニダ」

 「絶対に勝てるニダ」

 「日本は世界一野蛮で酷い国ニダ」

 「朝鮮のすべての財産を奪っていったニダ」

 「併合中、朝鮮乙女は日本人に陵辱されたニダ」

 「日本を滅ぼさないと、朝鮮人は、狂死するニダ」 涙々涙々涙々涙々

 「「「・・・・」」」 呆然

 

 

 この頃、日本は、日幣と幸幣の攻防戦が行われていた。

 手先が器用で根気があれば誰でも作れる幸幣が一般にまで流通し始めていたからだ。

 国会

 “幸幣などと手作りの通貨を流通させてしまうなど近代国家の恥である”

 “日銀が日銀の役割を果たせないから幸幣が流通してしまったのだ”

 “日銀の紙切れに工芸品としての価値はない”

 “紙切れなどと、日銀紙幣は換金紙幣だ”

 “流通させてる紙幣は、金の保有量を超えてるのではありませんか”

 “な、なんということを!”

 “幸幣は、通貨量を制御し得ない”

 “幸幣は手作りなのですぞ。12の地域で宮大工が作っている”

 “幸幣が割に合わなくなれば、別の工芸品を作るだけ”

 “日銀はどういう了見で通貨発行してるのです”

 “金の総量という制約があり、地域で過不足が生じても調整力がない”

 “調整は政治が行うものだ”

 “とにかく、利権中心に紙幣を発行されるくらいなら、生活で必要な量を調整できる幸幣がましですな”

 “幸幣は国家統一を妨げる地域通貨だ”

 “幸幣は、個人が作ってるのですが、一体どうやって、個人が金融支配するというのです”

 “断じて許さん、断じて許さん! 断じて許さんぞ!!”

 ““・・・・・・”” 憮然

 

 

  健康保険法施行。給付開始。

 

  英国放送協会 (BBC) 設立(英国放送会社から改編)

 

  法制局が法令に濁点を施す訓令を通達

 

  武漢の民衆が漢口英租界を占領

 

 

 満州奉天

 蒋介石国民党支配下の南満州鉄道

 中国人だけでは南満州鉄道を運用できず、

 日本人技術者を雇い、日本から機械部品を購入しなければならなかった。

 そして、南満州鉄道はようやく運用でき、

 日本は、南満州鉄道を運営しなくても人材派遣費と部品売却費で黒字になっていた。

 とはいえ、中国は、米英ソ連合に支配された朝鮮共和国によって日本と分断され、

 辛うじて、日本領の遼東半島と租界でつながっていた。

 遼東半島の工業力は、蒋介石国民軍にとって、独立の命綱に等しい存在であり、

 日本にとっても大陸は、資源地であると同時に消費地だった。

 大陸から完全に分断されると、企業の生産は落ち込み、

 投資が困難になると企業活動そのものが縮小させられる。

 「日本が朝鮮半島を独立させ。捨てたせいで、中国は、米英ソに包囲されて風前の灯ある」

 「すぐに中国がどうにかなるということはないでしょう」

 「既にどうにかなってる中国で、そう言われても困るある」

 「日本に資源を供給してくれれば、武器弾薬を輸出してやれる」

 「あとは、自分で独立を勝ち取るしかないな」

 「中国の統治者は漢民族にとって、アメリカ、イギリス、ソビエト、日本以上の敵ある。中国はバラバラある」

 「税金の取り過ぎでは?」

 「税金で国権を維持してるある」

 「民衆にお金を渡すと下克上ある。困るある」

 「しかし、力付くで国民を押さえ込んでも反発されるだけだ」

 「反発する民衆は共産軍へ行くある」

 「資源以上は、支援できないよ」

 「こちらこそ、武器弾薬以上の資源は渡せないある」

 「そちらこそ、南満洲鉄道を手に入れても中国人だけで運用できないと知ったはず」

 「仮に遼東半島を奪い返したところで、運用できないだろう」

 「「・・・・・・」」 ため息

 

 

  米海軍がグァム島駐在の陸戦隊3百名を支那に急派

 

  日本ゼネラル・モータース設立

 

  英政府が支那派兵を決定

 

 

 巨済島

 「に、日本人になりたいニダ!」

 見乃梁海峡800mを泳いできた男は防波堤をはい登って、捕まると、そう言った。

 「泳いで戻れ、今回は見逃してやるから」

 「いやニダ! 日本人になりたいニダ! 日本人になるニダ!」

 「いいから戻れって、見なかったことにするから」

 「絶対に嫌ニダ!!!!」

 「わかった。これをやろう。だから戻れ」

 警備隊長は、昼食の愛妻弁当を渡した。

 朝鮮人は、泣きながら弁当を食べると、

 「また、来るニダ!」

 そう言って、朝鮮人は、防波堤から飛び込み、

 「もう来るな!」

 海峡を泳いで帰っていった。

 

 

 

  前年12月に没した日本の大行天皇の追号が大正天皇と決まる

 

  宮崎県小林町で大火(1200棟焼失)

 

 

 2月

  大正天皇大喪。大赦137669名、減刑46138名。

 

  英支那派遣軍が上海に上陸

 

  日本放送協会が初めてオペラを放送(カヴァレリア・ルスティカーナ)

 

 朝鮮共和国 ソウル

 米ソ英朝4国同盟会議

 「電気と水道が止まってるニダ」

 「電話が通じないニダ。何とかするニダ」

 「「「・・・・」」」 呆然

 「学校の運営費も足りないニダ。援助するニダ」

 「「「・・・・」」」 呆然

 「軍隊も必要ニダ」

 「支援するニダ」

 「「「・・・・」」」 呆然

 「犯罪が増えてるニダ」

 「警察に給料を払うニダ。支援するニダ」

 「「「・・・・」」」 呆然

 「日本を占領するのに金が入るニダ」

 「アメリカ、イギリス、ソビエトは朝鮮を支援するニダ!

 「「「・・・・」」」 呆然

 

 

 3月

  北丹後地震

  

  三菱信託株式会社(後の三菱信託銀行)設立

 

 

  蒋介石の国民革命軍が南京入城の際、諸外国領事館を襲撃(南京事件)

 

 

 南京事件の善後策につき日英米の司令官が緊急会議

 「日本は、軍を南京に派遣すべきだ」

 「金を出してくれたら南京に軍隊を派遣してあげてもいい」

 「ふざけるな。日本も被害を受けてるはずだ」

 「被害は受けてるけど、日本だけが負担するのは嫌だ」

 

 

  福島県磐城炭鉱で坑内火災(136名死亡)

 

  ハイゼンベルクが不確定性原理に関する論文を提出(量子力学)

 

  矢田上海総領事が南京事件につき蒋介石に抗議

 

  南京総領事館の荒木海軍大尉が自決

 

  村山貯水池(多摩湖)完成

 

 

 木工12干支ギルド会議

 「今回の議題は、米英ソ朝4カ国同盟に対しての木工ギルドの統一見解で、どうしたらいいか、です」

 「朝鮮半島に駐留していても駐留費用を賄えられないなら軍隊の規模は小さいはず」

 「今のところ、戦争の心配はない」

 「航空部隊と艦隊が配置されたら日本はいきなり本土決戦になるのだが」

 「4ヵ国同盟は有利に見えて、不協和音が多い。足並みは揃わないはず」

 「逆に身動きが取れない、死環の計になると思うね」

 「あとは、外貨を可能な限り稼ごう。それで、米英ソを資金難に陥らせて動きを封じよう」

 「軍への拠出金は?」

 「軍より、日本海側の防波堤を増やすべきだろう。注意すべきはスパイの潜入だ」

 「しかし、軍事侵攻が」

 「軍事侵攻より、情報戦に負けないことだと思うよ」

 「火事が多いのをおかしいと思えよ」

 「「「「・・・・・」」」」

 

 

 4月

  兵役法公布(徴兵令廃止)

 

  小田急小田原線が営業開始

 

  漢口の日本租界で日本陸戦隊と支那人が衝突(漢口事件)

 

  海軍航空本部令公布

 

  花柳病予防法公布

 

 

  日英米仏伊が武漢軍閥に南京事件に関する謝罪・責任者処罰を要求

 

  チリ。クーデターでイバニェスが大統領に就任

 

  蒋介石が上海で反共クーデターを敢行(4・12事件)

 

 

 横須賀

 ワイントン軍縮条約後、制限のない1万トン級以下の新型巡洋艦の建造が進んでいた。

 日本はドイツと技術提携を結んでおり、これまでの兵装と違って見えた。

  11300t級妙高重巡洋艦

   全長192m×全幅19m×吃水5.9m

   100000馬力  32kt  航続距離20kt/10000海里  10kt/21500海里

   69口径150mm3連装砲4基  78口径88mm対空砲連装4基  83口径37mm対空機銃10門

   61cm魚雷発射管4基16門

   水上偵察機3機

      妙高、那智、足柄、羽黒。高雄、愛宕、摩耶、鳥海。黒姫、蔵王、吾妻、穂高、

 日本は日独秘密協定で、ドイツ海軍再建で相互協力をする協定を結んでいた。

 ドイツ製MAN式2サイクルディーゼル機関20基4軸推進は、機関室を拡大させ、

 火力を150mm3連装砲4基に減らしたものの、長大な航続距離を得た。

 このディーゼル機関と火砲の採用の影に神籬社の外貨会得力があった。

 「どうよ」

 「どうと言われても古鷹型や青葉型の50口径203mm連装砲3基に劣るだろう」

 「60口径150mm砲12門は、パンチ力に欠けるとしか言えないな」

 「でもドイツの25年式新型砲で、対空砲と両用でなかなか頼もしいよ」

 「重巡洋艦というより軽巡洋艦だな」

 「だが、61cm魚雷の射程は最大40000mを超える」

 「その気になれば、戦艦を撃沈可能だ」

 「運がよければね」

 「しかし、なかなか、いい艦じゃないか」

 「遠洋航海向きの巡洋艦を建造したところで、敵は近場の半島に集まってるからな」

 「石油絶ちされる可能性がある」

 「選択肢は、ディーゼル機関か。石炭燃焼機関しかなかったんだよ」

 「あと、敵といっても朝鮮人のゲリラも始まってるから、長続きはしないと思うがな」

 「朝鮮人の反乱を期待してると思ったら大間違いだと思うよ」

 「妙高型12隻は、皆これか?」

 「そうなるね」

 「やれやれ、普通に重油燃焼機関にすべきだったと思うね」

 「日本は石油が少ないから」

 

 

 

  蒋介石が武漢軍閥に対抗して南京に国民政府を樹立し中共排撃を宣言(国共分裂)

 

  台湾銀行が在台湾店舗を除き全支店休業、近江銀行休業 - 全国に銀行取付け発生

 

  田中義一内閣成立

 

  東京女子高等師範教授安井コノに理学博士号(初の女博士)

  

 

 

 アメリカ、イギリス、ソビエトは協議し、朝鮮半島へと進出していた。

 米英ソ朝4カ国同盟と言われてはいたが、実質的には、米英ソによる日中分断で、

 米英ソの東アジアにおける橋頭堡だった。

 朝鮮共和国 ソウル

 米ソ英朝4国同盟会議

 「なぜ、同盟軍は、朝鮮乙女を陵辱するニダ」

 「なぜ、同盟軍は朝鮮人の土地を奪うニダ」

 「なぜ、同盟軍は、朝鮮人を公職と公共設備から追い出して、朝鮮人を殺すニダ」

 「「「・・・・」」」 ニヤニヤ

 「酷いニダ。もう、同盟じゃないニダ!」

 「「「・・・・」」」 ニヤニヤ

 

  金銭債務支払延期緊急勅令により3週間のモラトリアム実施・銀行は一斉休業

 

 5月

  ジュネーブ国際経済会議開催(52カ国)

 

  第53臨時議会召集

 

 

 朝鮮共和国により山陰、九州、沖縄、台湾、遼東の防空は急務となっていた。

 陸軍は迎撃機を欲し、

 この時期500馬力級エンジンの開発が可能になっていたことから、

 陸海軍で次期主力戦闘機の開発が始まろうとしていた。

 金属製機体と木製機体の競合も行われるため、

 木工技能集団依存が面白くない大手の中島、川崎、三菱、石川と神籬の間で確執が増えていた。

 仙堂と角浦

 「いよいよ。新型戦闘機開発か」

 「まぁ エンジンは大手任せでも、機体だけはとりたいものだ」

 「軍は、大量の宮大工に人材を取られたら、徴兵できなくなるとぶすくれているようだ」

 「木製の機体は、基地に宮大工がいれば、そのへんの木材で修復できる」

 「しかし、金属製機体は、メーカーに発注しなければ機体を修復できない」

 「軍と大手がどう抗うと、知ったことじゃないね」

 「できれば、基地周辺でもバルサ材を育てるべきだろうね」

 「そういう提案はしてるよ」

 

 

  アメリカ合衆国のニカラグア軍事占領に対し、サンディーノがゲリラ戦を開始

 

  長野県木曽福島町で大火(600戸焼失)

 

  チャールズ・リンドバーグが大西洋の単独無着陸飛行に成功

 

  ヒジャーズ王国(後のサウジアラビア)が英国より独立

 

  フォード・モデルTの生産が終了

 

 

 

 

 6月

  東京電信局に自動電信交換機を設置

 

 

 外務省・陸軍省・関東軍首脳が対支政策決定のため東方会議を開催

 そこに外資獲得力のある仙堂と角浦が会議に呼ばれていた。

 「日本は朝鮮半島を失っているし、日本人の移民は上手くいってない」

 「このままだと、人口問題は深刻になるだろう」

 「東北と北海道は、まだ、人口が気薄ですよ」

 「しかし・・・」

 「あなたがたは、同胞を飢えるままに任せて、飢民を棄民したいだけではないのですか」

 「国内で金をばら撒くと我々の権力が脅かされかねない」

 「しかしねぇ そんな器が小さいことをやっていたら日本国民に離反されてしまいますよ」

 「だから戦争とか」

 「バカを言いなさい」

 「東北・北海道を開発して、近代化させればいいでしょう」

 「そうすれば、東北は東北、北海道は北海道で勝手にやっていける」

 「カネの問題だけでは済まないぞ」

 「開発は結構だが、消費する燃料が増えてることを忘れないでいただきたい」

 「「「「・・・・」」」」

 「まぁまぁ 今回は対支政策の協議ですし、対朝鮮、対人口問題はあとにしましょう」

 「中国租界は、防衛上、苦境に立たされている」

 「利益率が防衛費を下回るようなら撤収しかないのでは?」

 「それでは、我が国にとって必要な資源が得られなくなる」

 「今のところ、買えますよ」

 「今のところでしょ いずれ、中国が朝鮮のように欧米に支配されたら日本は日干しにされる」

 「次の戦艦代艦もディーゼルエンジン機関にすることですな」

 「少しぐらい燃料を浮かしてもジリ貧が伸びるだけだ」

 「ディーゼルエンジンのライセンス生産も進んでますし。そうでもないでしょう」

 「足りんよ」

 「空母建造は、本決まりで?」

 「アメリカが27000t級空母レキシントンを建造した」

 「日本海軍は、一刻の猶予もならない」

 「空母枠81000tがある。12000t級空母龍驤を引いた69000tで、33000t級空母を2隻建造できる」

 「そして、龍驤が退役したあとは、18000t級空母を建造する」

 「むしろ、中国沿岸の航空基地を強化して、空海封鎖できるようにすべきでは?」

 「それもやってる」

 「しかし、今のところ中国租界で日本と欧米は利害が一致している」

 「できれば中国租界を維持したい」

 

 

 

 7月

  インドネシアでスカルノらがインドネシア国民同盟を結成

 

 

 4人は、浜辺で海水浴を楽しんでいた。

 仙堂春和(21歳) × 山城美奈(17歳)

 角浦秋和(21歳) × 日向奈美(16歳)

 仙堂と角浦は美人の方に目が行くのか、ニヤニヤ、

 山城と日向は、脹れっ面になりやすかった。

 ビーチパラソルの下、

 仙堂と角浦

 「東南アジアの独立勢力は、財源を欲しがってるらしい」

 「黒檀はいいよ」

 「紫檀とタガヤサンもね」

 「堅くて加工しにくいは、僕らにとっては有利なことだからね」

 「だけど、人脈を作れてもさ。独立を助けるのはむつかしくないか」

 「むつかしいと思う」

 「それにオランダも木材が金になると知って、供給してくれるよ」

 「だけど、インドネシアを独立させたほうが安く売ってくれると思うな」

 「どうだろう。オランダ人がインドネシア人を奴隷のように扱うから安いのかもしれない」

 「しかし、いくら半島開発が米英ソのウィークポイントでも、東南アジアに手を出すと袋叩きだよね」

 「そんな気もする」

 「だけど、東南アジアとの人脈だけは繋げておきたい」

 「それより、角浦」

 「なに?」

 「最近、内々に、お見合いの話しが来てるんだよな」

 「俺もだけど・・・お前も閨閥グループの御眼鏡にかなったって?」

 「相手は、序列で言うと中堅だけど。ぼくらも、まぁ お年頃ってことでしょう」

 「あはははは・・・」

 「「・・・・・」」 しーん

 「一応、まだ結婚は考えてないと言ってるが、仲人の顔を潰すと大変な気がする」

 「嫌だねぇ 閨閥に入るとしがらみが増えそうだ」

 「入らないと嫌がらせされるとか」

 「財閥と閨閥の絡みもあるらしいよ」

 「俺たち、一応、神社仏閣。林業。木工細工学校。幸幣の利権を束ねてる」

 「閨閥も木工12ギルドを取り込みたいっていうのはあるだろうな」

 「まぁ 確かに権力や利権を手にするには、最善で早道なんだが・・・」

 「だよなぁ」

 「しかし、閨閥政治とか、気に入らん」

 「というより、俺たちの場合、閨閥よりも木仙の相続というか遺伝なんだよね」

 「そうそう」

 「「・・・・」」 ため息

 二人は、木々を介し、人の意図に気づき、敵と味方を見分ける術に長けており、

 社会の事柄も木々に教えてもらうことが多かった。

 そのおかげで、木工ギルドが大きくなり維持されている。

 おかげで世界中の樹木が日本に移植され、研究され、

 利益になりそうな樹木は、積極的に植林されていた。

 その才能と選択の根源が木仙の能力で、木仙の相続こそ、最優先。

 仮にそれを捨てて巨大利権をとったとしても、

 次の子孫に木仙の能力を受け継げられなければ、インチキな力はなくなる。

 とはいえ、日本は昔の藩閥の如く、

 政府と省庁機関を中心に、

 三井財閥、三菱財閥、住友財閥、安田財閥

 鴻池財閥、渋沢財閥、浅野財閥、大倉財閥、古河財閥

 川崎財閥、藤田財閥、野村財閥、久原財閥

 鈴木財閥、根津財閥、福沢財閥、川崎財閥

 理研コンツェルン、日産コンツェルン

 森コンツェルン、日窒コンツェルン、

 日曹コンツェルンなどの広域財閥群と地域豪族が華族と結びついて群雄割拠しており、

 神籬もその財閥の一つだった。

 もっとも、木工職人の組合の集合体に過ぎず、

 仙堂と角浦の基盤の多くは、木工細工を売った金で、幸幣の手数料だった。

 

 

 

 8月

  中共軍が南昌で蜂起(南昌起義)

 

  シベリア鉄道経由による欧州への国際連絡運輸再開(東京〜パリ15日間)

 

 

 この頃、日本はワシントン軍縮条約、日英同盟破棄、関東大震災、

 朝鮮半島独立と米英ソ朝4ヵ国同盟など、政府だけでなく、行政にまで不信感が強まっていた。

 外患内患で不正腐敗と格差や差別が大きくなるとき、

 人心が政府から離れ、大多数人民が立ち上がって、最大公約数的な法を作り、

 省庁と行政機関を作り、紙幣を発行し国内国家を形成する動きを見せる。

 むろん、国家と国民が不分立なほど信頼があって磐石であれば、

 そういった国家内国家など自然に雲散霧消する。

 しかし、国家が国家の体をなしていない状況になると民衆も変わり始める、

 天災、人災、外患内患など幾つの要素がからみ、幸幣の価値は高まり、

 木工ギルドを中心にした国内国家のような雰囲気が形成されていた。

 むろん、木工ギルドの幸幣が日本経済を支えられるほど、作られるわけではないが、

 国内外で通用する代用通貨などそう生まれるものではなかった。

 しかし、好むと好まざるとにかかわらず、木で戦争する時代は、青銅器以前のことで、

 木工業界は戦争を望まない勢力として認識されてるのか信頼されており、

 木工ギルドは、野党的な立場を構築し、

 日本を利権専横や外患誘致を牽制するセーフティー機構ともなっていた。

 木工・金工・歩み寄り会議

 「国家は鉄の量で決まるんであって、木の木の量じゃないんだよ」

 「しかし、木は生えてくるし、それを最大限に利用して、国益のために働くべきじゃないか」

 「木工ギルドは、必要以上に人材を奪ってる」

 「食べていける産業ということでしょう」

 「家の中でシコシコやられたんじゃ鉄鋼業がなりたたんだろうだ」

 「いや、技工職だから一定以上の技量がないと木工産業なんて無理」

 「お前らな、山を崩さないと、セメントや石灰を取れんのだが」

 「そのへんは、妥協してるでしょうが」

 「石灰がいるんだよ」

 「いや、石灰は、木工でも使うから」

 「しかし、お前らがいると、山を崩したがらない地主が増えるんだ」

 「わかってますって、そのへんは、妥協しますから」

 「本当だろうな」

 「それより、地方にもっと投資してくださいよ」

 「鉄は、基幹産業で使いたい」

 「ガラスでもいいですから」

 「また、何かを企んでるだろう」

 「資源不足で、鉄が使えないなら、ガラスと木しかないじゃないですか」

 「ガラスで人材を取るつもりだろう」

 「いやいや、合理化するから」

 「木工職人が合理化とか・・・」

 「機械化に協力してくださいよ」

 「木工具を機械化したらもっと木工職人が増えるだろうが」

 「あはははは」

 「「「・・・・」」」 むっすぅ〜

 

 

 

 9月

 満州 撫順

  蒋介石は日本から南満州鉄道を引き継ぐと中国合衆国を宣言した。

 

 

 アメリカ合衆国

 某資本系の薬剤研究所

 マッドサイエンスたちがいた。

 常用性の高い薬を使って、人を操る研究が進めば、一国の統治者を薬付にし、

 思いのままに操ることができた。

 今のところ麻薬や覚醒剤を使えば、症状が現れるため、権力層に使えない、

 しかし、研究が完成すれば、薬剤が検出されない麻薬も完成する。

 刑務所のような場所に朝鮮人たちが押し込められていた。

 「ほ、欲しいニダ。もっと欲しいニダ! なんでもするニダ!!」

 「こいつは、何を使ってたっけ?」

 「N2・O5・D2・A8です」

 「表情が気持ち悪くて、すぐ疑われそうだな」

 

 「ほ、欲しいニダ。もっと欲しいニダ! なんでもするニダ!!」

 「こいつは?」

 「T4・A2・K9・E4・N9・A3・K1・A2です」

 「まぁ 少しはいいようだが、弱いような気もする」

 

 「ほ、欲しいニダ。もっと欲しいニダ! なんでもするニダ!!」

 「こいつは?」

 「S4・H2・I5・R9・A2・K1・A4・W9・A7です」

 「いくら忠実でも、バカになったら役に立たないけどな」

 「ですよね・・・」

 「まぁ 50年から100年くらいまでに完成しても支障はないが、なるべく早いほうがいいな」

 「ですよね」

 

 白い家

 大統領がテーブルに着くと、カラーコード戦争計画の報告書が乗せられている。

   ホワイト(対内乱戦)、グレイ(対西インド諸島諸国戦)、オレンジ(対日本戦)

   パープル計画(対中央アメリカ諸国およびロシア戦)、レッド(対イギリス・カナダ戦)

   グリーン(対メキシコ戦)、ゴールド(対フランスおよびカリブ海のフランス領戦)、

   ブラック(対ドイツ戦)、インディゴ(対アイスランド戦)、ブラウン(対フィリピン戦)、

   イエロー(対中国戦)、バイオレット(対中国内乱戦)、

   オリーブ(対スペイン戦)、シルバー(対イタリア戦)、エメラルド(対アイルランド戦)、

   タン(対キューバ戦)、シトロン(対ブラジル戦)、レモン(対ポルトガル戦)、

   ルビー(対インド戦)、スカーレット(対オーストラリア戦)、ガーネット(対ニュージーランド戦)

 

 「変更が大きいのはオレンジ(対日本戦)か」

 「はい、朝鮮半島が不戦地帯の場合。朝鮮半島が戦場になる場合に別れますので」

 「・・・結果は、あまり芳しいと言えないな」

 「最終的に勝てますが長門とコロラドの海戦に左右されますし」

 「距離が離れてるので、不確定要素も増えます」

 「まぁ こちらから手を出すわけにはいかないが」

 「日本側から噛み付いてくるといいな」

 「ええ、まったく。最悪の場合、自作自演で・・・」

 「自作自演は、バレた時のリスクが大きすぎるが」

 「気をつけます」

 「なにより対日戦は、関東大震災以上の打撃を10回以上与えるだけの爆弾がいる」

 「それだけの爆弾は、まだありませんな」

 「予算もだが、利権を得ないことには民衆を動かせない、準備が必要だな」

 「はい」

 

 

 10月

  南京軍閥が北京政府討伐を発令

 

  中国共産党の毛沢東が井崗山にソビエト政権を樹立

  

 

 ベネズエラ

 日本から購入した甲式四型戦闘機100機が配備されつつあった。

 航空機の優位性があれば、アメリカ合衆国の脅威は減る。

 代わりに石油の輸出と、

 オリノコ川中流の一角 水城(100ku) が日本人自治区として与えられていた。

 ニカラグアと違うのは、それだけ石油の価値が大きかったことによる。

 ベネズエラ人と日本人

 「アメリカ合衆国の脅威に対抗するにはまだ不足だ」

 「アメリカの国力に対抗できる国の方が少ないですよ」

 「日本はワシントン条約国。米英に対抗しうる国の一国では?」

 「石油さえあれば、対抗し得るかもしれませんが、本気で戦争したいとは思っていませんよ」

 「しかし、日本ならアメリカ軍に反撃できるのでは?」

 「まぁ 出来るかもしれませんが遠方を守ることはむつかしいでしょう」

 「もし、遠方の領土だったら?」

 「その時は、全力で守りますよ」

 「なるほど・・・」

 

 

 11月

  初の明治節(明治神宮参拝者80万人)

 

 来日中の蒋介石が田中首相と会談(国民政府による中国統一に協力要請)

 関係者たち

 「蒋介石も大変だな」

 「中国は広いからね。一番重工業を発展させやすい満洲が火薬庫だし」

 「北京は面従腹背で。上海はすぐ離反する。武漢軍閥は我関せず」

 「そして、毛沢東共産軍は疫病のように広がっている」

 「だけど一番力があることには違いないよ」

 「それに武器を渡せば、資源をとってくれる」

 

 

  蒋介石が離日(神戸発)

 

  ソビエト共産党がトロツキーらを除名

 

  アメリカで最初の自動車用水底トンネルが開通(ホランド・トンネル)

 

 

 日本領 大連州(3462ku)と、中国との間に長城と掘りが建設され

 海岸線も潜入防止の防波堤が建設されると安全性が増し、

 漢民族のほとんどは中国租界を経由して、中国へと追いやられていた。

 幸幣が流通しているせいか、日本人の移民は徐々に増え、20万人に達していた。

 朝鮮半島で剥がせるインフラは全て、遼東半島へと持ち込まれ、

 総生産は、朝鮮半島の総生産を超えてしまう。

 満州鉄道は、利権として残されており

 遼東半島の日本人が増えると、安全性も増していた。

 大連州(3462ku)

 「朝鮮軍は、アメリカ系師団15000。イギリス系師団15000。ソビエト系師団7500が編成されるそうだ」

 「取り敢えず、朝鮮軍は2.5個師団か」

 「狂暴そうだな。日本と戦争したがってる」

 「今のところ、小銃しか配備されてないそうだ」

 「それは救いだね」

 「問題は、海上封鎖された時が怖い」

 「それは言えるが、中国と交易できるし、海上封鎖なんて簡単にできるものでもないだろう」

 「だといいがね」

 

 

 

 12月

  第54議会召集

 

  上野・浅草間に日本最初の地下鉄が開通

 

 神籬が八木・宇田アンテナを購入。レーダーの開発が始まる。

 

 

 朝鮮共和国 (21万6823ku)

 米英ソ同盟保障領は国土の15パーセント。

 比率は、アメリカ6パーセント、イギリス6パーセント、ソビエト3パーセント。2対2対1だった。

 専有面積に換算すると

 アメリカ12800ku。イギリス12800ku。ソビエト6400kuの合計32000kuとなり、

 25都市の中心。租界区画1000kuと幹線鉄道と道路が振り分けられ、

 年を追うごとに城塞都市の堡塁は厚く高くなり。堀は広く深くなった。

 そして、数百万の中国人が工夫として働かされ、

 国交を断絶しているはずの日本企業が朝鮮半島の租界で土木建設していた。

 日本建設業者たち

 「日本はニカラグアに400kuで。アメリカ、イギリス、ソビエトは朝鮮半島に32000kuか」

 「ずるい」

 「天秤にかけるなら、32000kuを失わないために、400kuくらい妥協するさ」

 「だといいけど・・・」

 朝鮮人の工夫が近づいてくる。

 「誰か、朝鮮貴族の娘と結婚しないニカ?」

 「朝鮮貴族って・・・」

 「日朝婚姻ニダ。日本の情報源になるニダ」

 「逆に日本の情報が朝鮮に筒抜けになりそうだな」

 「そ、そんなことないニダ。日朝友好ニダ」

 「「「「あはははは・・・」」」」

 「本当ニダ。朝鮮貴族の娘を野蛮な白人から救って欲しいニダ」

 「なんか。白人と結婚したほうが幸せになるんじゃないの?」

 「そ、そんことないニダ。ボロ布のように捨てられるニダ」

 「お願いニダ」

 「妻帯者ばっかりだからな」

 「それでも構わないニダ」

 「おいおい、貴族の娘なんだろう」

 「由緒正しい朝鮮貴族の娘ニダ!」

 「日朝権力者結婚で、東アジアの安定をするニダ」

 「まぁ 適当な相手を探してみるよ」

 「本当ニカ?」

 「まぁ いるかどうか、怪しいが」

 「本当に頼むニダ」

 工夫は去っていく

 「いろいろ考えるもんなんだな」

 「婚姻戦略か」

 「日本の本家の人間を全部殺せば、朝鮮の分家が血統の権利で日本の本家を乗っ取れるな」

 「怖い怖い」

 「まぁ 朝鮮人も米英ソの共同植民地じゃ泣きたくなりますよね」

 「そうだなぁ・・・」

 

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 仙堂春和(21歳) × 山城美奈(17歳)

 角浦秋和(21歳) × 日向奈美(16歳)

 

 1926年 巨済島(400ku) 済州島(1845ku) 鬱陵島(72.82ku)

 1926年 大連州(3462ku)

 

 

 

 

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第06話 1926年 『朝鮮共和国独立と日朝国交断絶』
第07話 1927年 『米英ソ朝4カ国同盟成立と、死(四)環の計』
第08話 1928年 『府と市の統合と、スーパー天蚕糸』