月夜裏 野々香 小説の部屋

    

神がかり系 仮想戦記 『神籬の木仙』

 

 第09話 1929年 『朝日友好条約を結んでやってもいいニダ』

 1月

  スターリン独裁。レフ・トロツキー亡命。

 

 大連州(3462ku)

 朝鮮が独立すると遼東半島は、朝鮮共和国と中国に封鎖され、孤立しやすくなった。

 しかし、大陸の足場であることに変わりなく、

 鳥取県より僅かに狭い面積だったものの莫大な投資がされていた。

 それだけの投資をする価値があるか疑わしかったが、

 投資に引き摺られる形で日本人移民も増え、

 軍隊を用いた漢民族の排斥は、国際問題とされ兼ねなかったが強行され、

 漢民族のほとんどは、満州へと追いやられてしまう。

 そして、アメリカ、ソビエト、イギリスは、朝鮮半島での虐殺が起きてるため見逃すことになった。

 

 

 神籬研究所

 炭素(カーボン)、珪素(シリコン)、カルシウムの研究が進められていた。

 いずれも国内資源でなんとかなりそうなもので、なんとかしようとすると、膨大なエネルギーが必要になった。

 また、海藻と甲殻類などの研究も行われ、土壌を作る肥料としての研究も進められていた。

 もちろん、綿花の改良も行われていた。

 しかし、国土面積が小さいことから綿花の大量生産で太刀打ちできず、

 アメリカから綿花を買って、紡績しなければならず、買うことはできても売れる保証はなかった。

 また、人工糸の開発が各国でも進められており、高級超長綿花への移行が進められていた。

 しかし、同じ面積で生産するなら綿花より、蚕から採る生糸が高額収入になりやすく、

 不況に備えるなら戦略的な価値を含む、天蚕糸が有利に思われた。

 神籬研究所は、仙堂と角浦が現地で作った成分表を元に肥料を作っていく、

 最初は疑われた神籬の成分配合も、成果が出ると全国で呼ばれ、売上も伸びていた。

 木仙たちは、樹木が必要とする土壌を知り、的確に補充することで、成功していた。

 それだけでなく、貿易黒字になるような生産調整まで関わりつつあった。

 社員たち

 「相変わらず、成分が個性的というか一つ一つの山で違うんだな」

 「だけど、超長綿花の研究と移行は急過ぎたと思ったのに。生糸が一気に伸びたからな」

 「生産面積が小さいんだから高級品思考は悪くないと思うよ」

 「噂じゃアメリカが不況になるらしいけど」

 「それなら高級品思考もわかるが、本当かな」

 「さぁ この前、中東の人も来ていたし、神籬は、無駄に外交力が高いからな」

 「中東は砂漠だろう」

 「砂漠に強い作物を作れば外交力になるだろう」

 「まぁ そうだろうけど、人口が増えて自給自足自体大変なんだけどな」

 「だから国外の食料を増産させて、食料を安くしようって戦略じゃないの」

 

 

 

 

 2月

  イタリアとローマカトリックでラテラノ条約が調印

 

  アメリカでギャング抗争。聖バレンタインデーの虐殺

 

 東京

 扇動家たち

 “戦うニダ。今がチャンスニダ”

 “中国に攻め込むニダ”

 “中国人に日本人がたくさん殺されたニダ”

 “英霊が命懸けで手に入れ、奪われた失地を取り戻すニダ”

 “半島をアメリカ、ソビエト、イギリスから奪い返すニダ”

 “戦争するニダ。絶対に勝てるニダ”

 

 

 

 1歳にも満たない仙堂一樹(♂)と角浦青葉(♀)が

 落雷で根元まで裂かれたブナの御神木の前で遊んでいた。

 気に入ったのか、母親たちが動かそうとすると泣き出す。

 仙堂と角浦は、今年23歳になる。

 二人を追い掛け回していた住職も、いまは、良き話し相手、将棋相手になった。

 故郷に錦の旗を飾る形になったが、特殊な力を得て以来、突き動かされたかのように生きて来た。

 激動の昭和と言われたが、生活のほとんどは日常の繰り返しに過ぎない、

 仙堂と角浦の恩返しと口利きで、村人のほとんどは、それらしい地域で、

 それらしい地位に就き、木工12ギルドと神籬を支えていた。

 村は豊かになり、家々は、一回り大きく増築されるか、新築されていた。

 住職は、イチゴを持ってくると、来客に気付いて玄関に向かう。

 「まだ光ってるんだな」

 「ほかの人間は気付かないのか」

 「埋めた切れっ端は、集めて養林業で使えたけど。残ってる御神木は、このままを望んでるようだ」

 「だけど、この力どう使ったものか」

 「国益になるような木を育て。加工して。売り買いしていく、でいいと思うけど」

 「問題は、アメリカとイギリスとソビエトと中国かな」

 「日本は圧力を受けてるような気がする」

 「というより、木材に触ると持ち主が何を思ってるか教えてくれる」

 「日本はいろいろとヤバいのに、体制的にどうしようもないところがある」

 「なんとか、しないと」

 「軍部を押さえるくらいの力がいる。気が進まないけど」

 「だね」

 「しかし、アメリカの例の動き。どこまで本気なんだろう」

 「権力が欲しければ、国民を犠牲にしてもやるんじゃない」

 「じゃ 大恐慌に便乗するのがいいね」

 「ああ・・・」

 和服姿の女性が近づいてくる。

 「あなた。子供たちがあの枯れた木から離れないのよ」

 仙堂(山城)美奈(19歳)が抗議した。

 結婚してから綺麗になる女性もいるんだなと、不思議に思う。

 「わかるんだろうな」

 「何がです」

 「まぁ 放って置いていい」

 「いつまで、ここにいるの?」

 「あの子達が居たいままでいいよ」

 「仕事はいいの?」

 「んん・・・」

 「困るんでしょ」

 「まぁ 御神木と子供たちの縁結びみたいなものだからね」

 「なによそれ?」

 「取り敢えず、子供たちが気が済むまで、実家にでも泊まってくれ」

 「「・・・・・」」 ため息

 夫二人が本気だと知ると肩を落とした。

 「「わかりました」」

 この時代、理屈でなく、夫の権威が強かった。

 

 

 

 

 3月

 日本共産党 山本宣治刺殺未遂事件。

 

 鉄鋼・建設業界の人たち

 「このままだとまずい。木工産業に日本近代化が殺される」

 「しかし、木工12ギルドは、資金力が、あるぞ」

 「日銀に金を刷らせよう。国債を発行して、水力発電所を作ろう」

 「ゼネコンが得・・・」

 「いや、鉄鋼もあれだ。火力発電所を作ればいいだろう」

 「しかし、燃やすものがな・・・」

 「アメリカ、イギリス、ロシアがもっと、半島の租界建設しないかって」

 「はぁ?」

 「費用対効果で日本に発注するのが一番になったそうだ」

 「それで、石油を買える」

 「敵に塩を送る様で微妙だな」

 「しかし、確実に鉄鉱石、石炭、石油が手に入る」

 「なんだかな・・・」

 「「「「・・・・・」」」」 ため息

 

 

 

 4月

 フィンランド

 フィンランド湾とラドガ湖の間、長さ135km、幅90kmのカレリア地峡にマンネルハイム線が建設されていた。

 フィンランド人の代表は、神籬の社員にフィランランド白樺の上質さを喧伝しているが、

 日本人が呼ばれたのは、フィンランドが親日だけというわけでもなさそうだった。

 「この防衛線で守れそうなんですか」

 「もっと人口と武器弾薬が欲しいですね。それか、外交戦略的な解決とか」

 「ソビエト軍は怖いですからね」

 「日本はロシアに勝ったのに?」

 「勝ったというより、撃退しただけですからね」

 「ソビエト領内を攻撃できませんでしたし」

 「そういえば日本は満州と半島から引き上げたとか」

 「逆に言うなら、朝鮮半島は四竦みで動けず」

 「日本は、東北シベリアに圧力をかけられそうですからね」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 

 日本は、アメリカが中国に軍艦や爆撃機を輸出するかもしれないと知ると、

 魚釣島(3.82ku)で、

 全長1600mm×幅20m/全長1600m×幅20mのくの字型に曲がったトンネルの建設が始まり、

 台湾海峡の澎湖要塞でも地下網の増強が進められていた。

 赤レンガの住人たち

 「アメリカが中国に軍艦や爆撃機を輸出する噂は、どこまで本気なんだろう」

 「まぁ 日本は中国に陸軍装備と迎撃機を売ってるが」

 「アメリカは軍艦と、爆撃機を売る可能性が高い」

 「あと、ドイツも中国のニッケルを狙って軍事協定を結ぶ可能性もある」

 「日本に中国のニッケル以上に価値のあるものがない限り、負けるかもしれない」

 「日本が朝鮮半島と、南満州の利権を捨てて、遼東半島に閉じ篭ってる」

 「中国がドイツと連携しようと構わないのでは?」

 「中国が軍事大国になったら困るだろう」

 「なるかもしれないが、近代化した中国軍の矢面に立つのは、米英ソ共同管理の朝鮮半島か。フランス領インドシナだと思うね」

 「だといいが、白人諸国にしたら日中戦争で共倒れが一番美味しいからね」

 「それは最悪ルートだな」

 

 

 

 5月

 尊大な男が巨済島に来ていた。

 非公式会談が始まる。

 「朝鮮は、アメリカ、ソビエト、イギリスを同盟国にしている世界最強の外交戦略大国ニダ」

 「朝鮮大統領の云う事を聞いたほうが日本の身のためニダ」

 「それで、今日は、なんの御用で?」

 「閣下と付けるニダ!」

 「全朝鮮人が殺したい男ナンバーワンの閣下ですな」

 「違うニダ! 朝鮮全人民から尊敬を勝ち得てるニダ! 日本の天皇以上に尊敬されてるニダ!!」

 「それで、なんの御用で」

 「アメリカ、ソビエト、イギリスは、日本を攻撃して、支配しがってるニダ」

 「朝鮮共和国は、日本と長い付き合いがあるので、待ってもらってるニダ」

 「しかし、長くは押さえられないニダ」

 「だから、日朝友好条約を結んでやってもいいニダ」

 「いや、別に結びたくない」

 「日本は大変な間違いをしてるニダ! 大変な間違いニダ!!」

 「このままだと、日本は、アメリカ軍、ソビエト軍、イギリス軍に支配されてしまうニダ!!!」

 「いや、それ、いまの朝鮮共和国のことだから」

 「日朝国交回復しないと日本は、後悔するニダ!」

 「断る」

 kbhふぃvじぇhんbtくぃえ青:h・ポ。ウイbhんj知恵dんb冷えdph地場hjにprsjvんぴ!!!!!

 

 

 

 6月

 北海道駒ヶ岳が噴火

 

 

 どこかの豪農家

 仙堂と角浦が “ブツ” を口に入れていく、

 異世界に投げ落とされそうな感覚で、カイコを噛み噛みしていくと、

 自我崩壊そうな食感と甘味と苦味が口の中に広がり、喉を下っていく、

 そして、気が遠くなりそうな感覚から踏み止まって、抜け出し・・・

 「「ふぅ〜・・・・・」」

 出張した豪農の山の面倒をみた後の食事だった。

 お土産の蚕の炒め物をどうしたものか、

 農家の人たちは、桑が元気になって、カイコの味までよくなったというが全然わからない、

 どうせならカイコも健康になるよう刺激を与えてあどうかというと、なにか考えるという。

 届けられた新聞がいつも話題になる。

 “アメリカ好景気。株価は天井知らず”

 「新聞っていうのは、表面的にしか、見ないみたいだ」

 「いや、一部 “警戒を要す” ともある」

 「しかし、見極めどころがむつかしいからな」

 「フリーメイソンとイルミナティに潜り込ませたイェニシェの情報だと、陰りが見えてる」

 「はっきりしないが、年内から来年にかけての不況は確実だとよ」

 「木から聞いた情報が工作員に裏付けされたわけだ」

 「の割には景気のいいことを書いてる」

 「好景気は、ババを掴ませる時の合言葉で。本当に儲けてる奴は、好景気と言う前に儲けてる」

 「そして、引き際を見極めようとしている。というよりいま買ってるのは、鴨かもしれないな」

 「なるほど」

 「信用創造は、借金で金を作る」

 「公定歩合は弱者に皺寄せが行くし、銀行が回収できなくなれば必ず国が税金で守る」

 「金持ちが一人生まれると貧乏人が百人以上生まれる」

 「日本もやばいの?」

 「日本は借金創造したとしても、幸幣と交換すると倍に水増しされる」

 「幸幣は幸幣の需要と木工細工師の人口に比例するから大量生産は効かない」

 「それでも、公定歩合分を補填する程度には作られてる」

 「だいたい、信用創造は借金創造のことで、借金創造は奴隷創造のことだ」

 「お金持ちが格差を維持する手法で前時代的な金融政策だよ」

 「しかし、アメリカ経済が不況になると、生糸輸出が落ちる・・・」

 「例のスーパー蚕糸、スーパー天蚕糸は?」

 「こっちも少しは儲けたいからね」

 「生糸産業が少し弱ったあたりで、条件を出して介入してもいいだろう」

 「じゃ 木工産業で生糸産業を囲い込み?」

 「鉄鋼業とゼネコンも介入してくるだろうから、その手前がいいな」

 「早過ぎても遅過ぎても面白くない値段で買わされる」

 「木工産業、鉄鋼業、ゼネコンで労働者の取り合いになるかもしれないね」

 「それはそうと、アメリカで不況になるとしたら、アメリカに足場を作れないだろうか」

 「排日法があるからむつかしいと思うよ」

 「しかし、代理人のイェニシェを増やして、こちらの都合のいいように誘導してみよう」

 「無駄だね。いざとなったら利権を全部奪われて、裸で追い出されるだけだ」

 「工作は成功率が低いのが問題だけどな」

 「じゃ 情報収集だけでいい」

 

 

 

 7月

  田中義一内閣総辞職。濱口内閣成立。

 

 帝国議会

 “我々は半島と南満洲鉄道を失った”

 “兵器・武器弾薬を製造し、敵国の敵に輸出することで仮想敵を減退すべきである”

 “そうは言われるが、負担の皺寄せを負うのは全国民から預かる血税である”

 “鉄鋼業界は面白いかもしれないが”

 “日本の国家防衛である。私心はない!”

 ““““・・・・・・・”””” しら〜

 “貧しい国もあるだろうが、ただで武器弾薬を渡すのはまずかろう”

 “些少なりとも対価。あるいは領土割譲を持って武器弾薬を引き渡すべきである”

 “しかし、それだけの余力があるのか”

 ““““・・・・””””

 

 

 8月

  エルサレムで、ユダヤ人とアラブ人が対決する、嘆きの壁事件勃発。

 

 

 タイ王国東北部、

 コーラート台地は、平均海抜200m。面積155000ku。

 雨量が少なく農作物が育ちにくく、貧困地域だった。

 神籬がこの地の開発を手掛けたのは、利権の分が良かったからと言えた。

 技術的な実力が低ければいくら投資しても無駄になるが、

 神籬の技術なら安定した穀倉地帯になると思われていた。

 そして、日本のタイ王国支援は、白人諸国の矢面に立ってる状況を分散軽減するためで、

 タイ王国にイギリス領マレー・ビルマと、フランス領インドシナを牽制してもらうためでもあった。

 神籬の関係者たち

 「絶対君主制か。いつまでもつやら」

 「立憲君主制への移行は、年月の問題だと思うけどね」

 「プラチャーティポック王は東北部の開発で、少しでも立憲君主制移行を遅らせたいと思ってるらしい」

 「なんでもいいから生産性を高めて欲しいらしい」

 「水捌けは悪いが水路と灌漑施設でなんとかなる」

 「問題は、雨が少なくても育つ作物だね」

 「まぁ トマト、トウモロコシ、落花生、ナツメヤシ、オリーブ、ぶどう、豆類」

 「ナツメヤシ、オリーブ、サボテンは、なんとかなるよ。むしろ、得意だ」

 「しかし、乾燥して意外に涼しいし、水さえあれば人間が生活しやすいって気もするな」

 「確かにそれも言える」

 「むしろ、北部か、フランス領インドシナ辺りから大河を一本通したい」

 「北部はともかく、フランス領からだと、戦争覚悟になるかもね」

 「むしろ鉄道を通して、無理やり水を上げる方法もある」

 「強引だな」

 「なんにしてもタイ王国から予算が出るなら予算に見合う仕事はするよ」

 

 

 呉

 15000t級新型大型船は、戦車運搬船と航空機運搬船だった。

 戦車運搬船は強靭な橋梁で30tほどの戦車なら輸送が可能だった。

 一方、航空機運搬船は航空機の部品を船内に入れ、港に着くまでに組み立てていく、

 現地到着する頃には、航空機の組立を終了させ、

 クレーンを使って航空機を桟橋に降ろしていく、

 この船が完成すれば、上陸作戦と同時に航空部隊を進出させ、展開させることができた。

 しかし、特殊な重量積載貨物船なためあまり大きくは作れず、15000tとまりとなっていた。

 そして、知る者には期待され、知らない者には疎まれる旧前ド級型巡洋戦艦改装艦が完成していた。

 

 筑波型1隻  生駒、

  排水量 16750t / 18400t

  全長210m×全幅22m×吃水7.8m

  ディーゼル機関電気推進100000馬力  速力30kt  航続距離10kt/21500海里

   45口径305mm連装砲2基  65口径105mm対空砲連装4基  83口径37mm対空機銃10門

  水上機 8機

 

 鞍馬型2隻  鞍馬、伊吹、

  排水量 17636t / 18595t

  全長220m×全幅22m×吃水7.8m

  ディーゼル機関電気推進100000馬力  速力30kt  航続距離10kt/21500海里

   45口径305mm連装砲2基  65口径105mm対空砲連装4基  83口径37mm対空機銃10門

  水上機 8機

 

 鞍馬、伊吹、生駒は、前弩級戦艦の名残りを残していたものの、

 艦首は、より鋭利なクッパー型で球状艦首が取り入れられ、

 45口径305mm砲塔2基は艦首に集められ、仰角を45度に上げられていた。

 備砲は全て対空兵装を兼ねた105mm砲と37mm砲に変更され、

 鐘楼は日本特有のパゴタ型にまとめられ、3本あった煙突は1本にまとめられ、

 艦尾は格納庫と飛行甲板に改装されていた。

 艦内は機関部がディーゼル機関電気推進に一新され、

 橋梁は装甲と一体となって100mm厚相当に張り替えられていた。

 この鞍馬、伊吹、生駒の改装に際し、妙高型の建造が隠れ蓑になった。

 鞍馬、伊吹、生駒の竜骨でさえ、妙高型巡洋艦の名目で製造されており、

 欧米の諜報員も戦艦や空母に気を取られ、真相にたどり着けなかった。

 関係者たち

 「装甲が半分になったのは、ちょっと不安だが?」

 「それだって、ドイツで建造するっていうポケット戦艦より装甲は強い」

 「むしろ、主砲が4門しかないのは散布界で致命的だと思う」

 「条約が破棄されたら52口径282mm砲3連装2基に換装できるよう準備してるよ」

 「主砲は背負式だし、撃ったら傾かないだろうな」

 「砲塔装甲を減らせば大丈夫だし。全幅はギリギリ足りてる」

 「俺は203mm3連装砲台4基12門になると思ってたんだがな」

 「通商破壊優先って、なっただろう」

 「まぁ いいか」

 「水上機で着弾観測できるし。通商破壊用だから気にすることもないだろう」

 

 

 

  10000t級妙高型巡洋艦

   全長192m×全幅19m×吃水5.9m

   100000馬力  32kt  航続距離20kt/10000海里  10kt/21500海里

   60口径150mm3連装砲4基  78口径88mm対空砲連装4基  83口径37mm対空機銃10門

   61cm魚雷発射管4基16門

   水上偵察機3機

      妙高、那智、足柄、羽黒。 高雄、愛宕、摩耶、鳥海。 黒姫、蔵王、吾妻、穂高、

 新型巡洋艦が完成していた。

 関係者たち

 「なんとも心細い兵装だな」

 「ディーゼル機関だから燃料消費が少なくて済むんだ」

 「兵装の話しをしてるんだが」

 「ディーゼル機関は、機関室容積が大きくなるから、兵装が減る」

 「おいおい・・・」

 「まぁ 数を建造すれば戦えるさ」

 「数を作れないから問題にしてるんだろうが」

 「あはははは」

 

 この頃、神籬で木材の資質調査で発展しつつあった八木レーダーが海軍で採用される。

 

 

 

 9月

 朝鮮共和国

 主要25都市全ての中心区画は、アメリカ、ソビエト、イギリスの共同租界になっていた。

 そして、選ばれた朝鮮人だけが租界外周区画に住み、

 その外側には、貧困に喘ぐ朝鮮人たちが住んでいた。

 そして、日本の管理者同労者と、中国の安い大量の労働者の土木建設で城塞都市が建設されていた。

 ソウル

 国交断絶しているはずの日本企業が首都のど真ん中で建設工事していた。

 「この区画からロシア人区画になるから」

 「わかりました」

 「日本人は仕事が早くていいな」

 「ソビエトの建設会社は来ないので?」

 「アメリカとイギリスとの協定でな。勢力比がソビエト2。アメリカ4。イギリス4に決まってるんだ」

 「だからアメリカ人とイギリス人が増えない限り、ロシア人も増えない」

 「それは酷い」

 「そうだろう。そう思うだろう」

 「平等でなくちゃ」

 「だよな。だよな」

 「思う思う」

 「やっぱりそうなんだ」

 「あいつら結託しやがって!」

 「俺たちアメリカとイギリスに騙されてたんだ。ちくしょう!

 『あはははは・・・』

 

 

 米ソ英朝4国同盟会議

 「どうして、中国人労働者が押し寄せてきてるニダ」

 「「「・・・・」」」

 「日本は許せないニダ。絶対に滅ぼすニダ」

 「今すぐ、対日参戦するニダ」

 「「「・・・・」」」 ため息

 「何をしてるニダ。同盟国の宰相が日本猿に侮辱されたニダ」

 「こんなことを許してはいけないニダ」

 「今すぐ、日本を侵略するニダ!!!」

 「「「・・・・」」」 ため息

 そう、アメリカ、イギリス、ソビエトが朝鮮半島から吸い上げた富は、米英ソ共同租界に流れ、

 租界建設を引き受けている日本に富が流れていく構造が作られていた。

 

 

 

 

 10月

 ニューヨーク証券取引所で株価が大暴落。世界恐慌ブラック・サーズデーの引き金となった。

 ウィール街のカフェテラス

  “株価暴落は経済のしっぽであり”

  “ファンダメンタルズが健全で生産活動がしっかり行われているので大丈夫”

  “という発言は末永く戒めとして記憶されることになった”

 日本人たちが空を見上げ、視線が下に向かって落ち、鈍い音が響いた。

 「・・・なんか酷いことになったな」

 「フーヴァー大統領は “永遠の繁栄” と言ってたはずだがな」

 「大衆に株を買わせるためだろう」

 「ババ抜きのババを引かされたわけか」

 「多分ね。というより計画大不況と連鎖倒産で、紙幣を持ち逃げされたわけだ」

 「借金を押し付けられたアメリカ人は借金地獄の労働者」

 「ユダヤ資本は利権を買い漁って。アメリカの支配を強めるわけだ」

 「しかし、国家基盤を目減りさせてまで、金融支配を強めようとか。異常だな」

 「ニカラグア制圧で軍隊を強化したいんじゃないのか」

 「かもしれないが、神籬の推測がここまで的中とは・・・」

 「今年か来年だったからな」

 「どういう情報収集力を持ってるのやら」

 「仙堂と角浦だと思うな」

 「しかし、アメリカの資本家がユダヤ資本に糾合されると、全体主義が強まる」

 「あとは、利権を全て分捕ってのことだろうな」

 「しかし、そんなに国民に金をやりたくないかね」

 「奴隷に金を渡す所有者はいないだろう」

 「「「「あはははは・・・」」」」

 「アメリカ人とは、理解し合うのは不可能だな」

 「「「「・・・・・」」」」 ため息

 

 

 ドイツは、第一次世界大戦の敗北により、

  ベルサイユ条約

   陸軍兵力を10万人に制限(戦前の平時には78個師団を擁していた)

   戦争画策の本拠として陸軍参謀本部を廃止

   戦車の保有禁止

   義務兵役制度の廃止

   海軍 沿岸警備以外は禁止、潜水艦・航空母艦の保有禁止、艦艇の備砲と排水量の制限

   軍用機の開発・保有禁止

  に縛られていた。

 そのためドイツは国内で戦車開発できなくなり、国外で開発試作し、

 条約破棄後は、速やかに兵器・武器弾薬生産に取り掛かるようにしていた。

 ドイツは遠交近攻の理により、日本と利害関係が小さかったことから結び付きを強め、

 日本は、ドイツと連携しつつ技術と工業力を高め、

 ドイツの再軍備の際、ドイツに輸出すると確約することで関係を強めていた。

 日本でのドイツ兵器開発と試作生産は、増え、

 陸海空軍を含めた日独兵器共同開発協定は強化され、

 日本にクルップ社、MAN社、ダイムラー・ベンツ社、ヘンシェル社、ラインメタル社の工場が建設されていた。

 これらの企業が日本企業と連携しつつ

 ルノーFT17軽戦車。LKII戦車の洗練強化型の10t級戦車を開発し、比較が始まる。

 

  11.8t級89式戦車                     10t級1号戦車

   全長5.75m×全幅2.18m×全高2.56m          全長4.8m×全幅2.3m×全高2.1m

   105馬力  速度25km/h  行動距離140km      120馬力  速度35km/h  行動距離140km

   18.4口径57mm砲                      45口径37mm砲

   6.5mm機関銃×2                      7.92mm MG13 機関銃×2

   装甲17mm    乗員4人                 装甲15mm    乗員3人

                

 ドイツ軍将校たち

 「いきなり10t級戦車から製造は嬉しくなるが」

 「日本人っていうのは、戦車に対するセンスってやつがない」

 「大きくすれば表面積が大きくなって装甲が薄くなる」

 「全長が長過ぎると足回りに無理がかかりやすくなる」

 「車高が高いと発見されやすくなる」

 「しかし、ソビエトと共同で開発するより、日本と共同開発する方が利害が一致しそうだな」

 「まぁ そこそこの発電所と工場はあるし、条件も悪くない」

 

 

 日本軍将校たち

 「やはり、ドイツ製戦車がいいな。1号戦車を89式戦車ということで開発しよう」

 「57mm砲の方が破壊力あったんじゃないのか」

 「18.4口径は対人で使えても対戦車で弱いそうだ」

 「陸軍国の発想ってやつね」

 「それに1号戦車ならドイツが再軍備したら500両は買ってくれるというし」

 「でも、本当に中国に売るのか?」

 「売れば資源が入ってくるそうだ」

 「南満州鉄道を捨てて資源を中国頼りにするからこんなことになるんだ」

 「そのうち、租界も全部取り返されてしまうぞ」

 「中国が戦車を配備するとしてもだ」

 「ソビエト、朝鮮の米英ソ、遼東半島の日本囲まれた満州になる」

 「上海に回せるだけの余裕はないと思うね」

 「次は15t級戦車だっけ? 次も分けて開発するのか」

 「フランスは、69t級シャール2C戦車を開発してると聞くが」

 「なんか。負けそうだな」

 「いや、あれは失敗すると思うけどな。というより失敗して欲しい」

 「1両69tとか、鉄鋼資源がないというのに。最早、悪夢としか思えんからな」

 「取り敢えず、ドイツ戦車の方が優れてるのはわかったよ」

 「それに、どうせ、ドイツが買うというなら、売るという契約で技術提携してるんだから」

 「じゃ 戦車輸送用の貨物船を建造しないとな」

 

 

 11月

 朝鮮学生虐殺事件

 租界建設のため朝鮮人の労働環境は悪化していた。

 富裕層でも朝鮮人は学生でいられることが困難になり、炭鉱へと送られていく、

 結果、朝鮮半島の各地で暴動が起こり、

 朝鮮軍と朝鮮警察が暴動を起こした光州学生を銃殺し、

 朝鮮全土へ波及してしまう。

 この事件以降、朝鮮人の反乱は行われず、

 朝鮮共和国は米英ソ軍の隷属国へと落ちていく、

 

 

 公務員免許制度

 公務員が5年更新の免許制度となった。

 10万人を超える住民運動で裁判沙汰にならない限り、自動更新が原則だったものの、

 公務員の終身雇用が崩れることになった。

 これを採用させたのは、大きな集票を集めつつある木工12ギルドだった。

 

 12月

 第57議会召集。

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です。

 木仙一族

  仙堂春和(23歳) × 山城美奈(19歳)   一樹♂

  角浦秋和(23歳) × 日向奈美(18歳)   青葉♀

 仙堂・角浦の木仙一族は、今後、どうなっていくのでしょうか (笑

 

 

 1926年 巨済島(400ku) 済州島(1845ku) 鬱陵島(72.82ku)

 1926年 大連州(3462ku)

 

 

  16750t / 18400t級  生駒、

  17636t / 18595t級  鞍馬、伊吹、

 兵装が違いますが、排水量は、ほぼ17000t級デモイン型重巡洋艦に近いようです。

 

 

 

 

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第08話 1928年 『府と市の統合と、スーパー天蚕糸』
第09話 1929年 『朝日友好条約を結んでやってもいいニダ』
第10話 1930年 『隔進論、ニカラグアの任那』