第10話 1930年 『隔進論、ニカラグアの任那』
1月
鉄道省が全線でメートル法実施
大恐慌を利用して、日本の基礎工業力を伸ばす方法があった。
誰もが金に裏付けされた紙幣を欲し、
日本国は、それ以上に欧米先進国の技術を欲した。
むろん、皺寄せは国民に行くのではあるが、航空機、艦艇、戦車など、
欧米に追いつくため、必要な技術があった。
濱口内閣は、金解禁、緊縮政策、産業合理化を断行、
「殺されちゃうかも」
「・・・・」
ロンドン海軍軍縮会議開催
軍縮会議は、ワシントン軍縮条約で縛り付けた10年間の新造戦艦建造凍結と絡んでいた。
むろん、英米50万tと日本30万tの比重は変わらないものの1932年には新造戦艦の建造が始まる。
もう一つ、無制限に建造される1万t以下の巡洋艦、駆逐艦の制限も必要になっていた。
さらに軍縮を進めようという各国の意図はあったものの、
我田引国なのか、比率や各艦艇の制約内容で異議が噴出した。
日本海軍将校たち
「単純に35000t級戦艦を建造していくなら、日本8隻と20000t。米英14隻と10000tになる」
「この比率では勝てない」
「まして、巡洋艦以下で同じ比率で制限されたら、日本に勝ち目はない」
「補助艦艇の7割は?」
「アメリカとイギリスは、日本を6割に押さえ込もうとしてるから、むつかしいと思うよ」
「アメリカとイギリスは軍拡が可能なのだろうか」
「余裕で建造できる財力はあるだろう」
「日本もそうだが。軍事費は、財力の問題じゃない」
「国民の軍縮欲求はアメリカとイギリスの方が強い」
「しかし、アメリカとイギリスとは、基礎財力が違いすぎるからな。張り合ったら日本が破産する」
「どうしたものか・・・」
「ある情報によると、戦艦は適当に焦らせば10年凍結で時間稼ぎできると」
「だれ?」
「仙堂です」
「また、神籬か。ホテルを代えさせて盗聴を防いだし。どういう情報収集をしてるんだ」
「わかりませんが的中率だけはいいですよ」
「ふっ」
ワシントン軍縮条約で1932年までの10年間の新造戦艦建造の凍結と、戦艦の艦齢20年で追加3000tの増加改装が認められ、
ロンドン軍縮条約で1942年まで10年間追加凍結と、戦艦の艦齢30年で追々加3000tの増加改装が認められることになった。
そして、補助艦艇は6割9分の比率を獲得し、艦齢20年で10パーセントの追加改装が認められた。
「次の改装は?」
「1908年建造の生駒で、1938年の改装」
「改装しても4年後に新造艦建造では面白くないな」
「基本は軍縮だから改装するよりも解体しろってことだろう」
「生駒、伊吹、鞍馬は、改装できるよ」
「船体を建造して、古い装備を載せ替えたようなものだ」
「船体上部の古い装備を新型に変えるだけでいい」
「だが、怪しまれるのは、まずい、練習巡洋艦にしておくか」
「だな」
「しかし、建造がないと流石に造艦関係者は、干上がってしまいそうだな」
「民間船の建造は、してるよ」
「民間船は、面白くない」
巨済島 (400ku)
朝鮮の代表が現れていた。
「独立したばっかりの時は、調子に乗って国交断絶したニダ」
「しかし、それでは、日本が世界から孤立してしまうので不憫ニダ」
「外交戦略世界一の朝鮮共和国が日本と国交を結んであげるニダ」
「・・・・」 ため息
「いや、国交断絶のままでいいから」
「それでは、日本が世界から孤立してしまうニダ」
「かわいそうニダ」
「それより、半島の方から毎日のように銃声が聞こえるのは、どうしてなのかな」
「日韓併合中は銃声の音なんて、ほとんどなかったのに・・・」
「そ、それは、国民が爆竹を鳴らして遊んでるニダ!」
「朝鮮人は爆竹が大好きニダ」
「朝鮮人が時々、海峡を泳いで渡ってきて “日本人になりたい” って泣くんだが」
「そ、それは、何かの間違いニダ。き、き、き、気の迷いニダ」
「独立が嬉し過ぎて、嬉しさを日本人に分けてあげようとしただけニダ」
「「「「あははははは・・・・」」」」」
「「「「ウェハハハッハハハ!!!」」」」
「白人が移民してきてるって本当?」
「ユダヤ人が多いニダ。朝鮮人は親切だから難民を入国させてあげてるニダ」
「都市の中心区画に」
「ち、朝鮮人は、とっても人が出来てるニダ」
「とっても、ぶjgfvじゅくぇがう;ふgvhくぁ;:お9hヴぃ8れあ;・vん!!!!!!」
衆議院解散
インド国民会議が独立を宣言
ソビエト パブロフスクにラジオゾンデ設置
米3M社がスコッチテープ(セロハンテープ)発売開始
2月
日本の防空戦略は、朝鮮共和国の独立により、前線が日本本土に近づいていた。
そして、近付いた前線での航空機は優先順位が変わる。
上昇力 > 速度 > 火力 > 格闘性 > 航続距離
そして、欧州ほどではないとしても戦闘機は迎撃機であるという欧州型の発想に近づく。
ドイツ国内開発できないドイツ企業がエンジンと機関銃を日本で開発し、
機体は日本製だった。
日本の機体は一部、幸幣の構造が使われた。
製造に時間が掛かり、量産化は不可能なのだが、木工産業の結実という形で1機製造される。
神籬製の92式戦闘機は、旋回すると機体後方が弓状にしなった。
神籬製造 複葉92式戦闘機
全長7.2m×全幅9.50m×全高3.16m 翼面積24u
自重1180kg / 全備重量1700kg
BMW液冷V型12気筒エンジン 750馬力
速度380km/h 航続距離800km
7.92 mm機関銃×2
ドイツ設計 複葉92式戦闘機
全長7.2m×全幅9.50m×全高3.16m 翼面積24u
自重1280kg / 全備重量1700kg
BMW液冷V型12気筒エンジン 750馬力
速度355km/h 航続距離700km
7.92 mm機関銃×2
ドイツ人将校と日本人
「いくら性能が良くても、これは駄目だろう」
「ボルトとナットは、どこにある。あー!」
「神籬に任せたから」
「なんだよ。HIMOROGIって、魔法の呪文か」
「木製のそれもハンドメイド機体なんて、冗談じゃないぞ」
「しかも噛み合わせだけで貼り合わせやがって、嫌がらせか。嫌がらせだよな」
「んん下手に性能がいいから・・・こっちも困ってるんだが、どうしたものか・・・」
「どうやって、エンジン回転と対空速度で、主翼とプロペラを捻ることができるんだ」
「さぁ・・」
「宮大工ごと、ドイツによこせ」
「い、いやぁ さすがにそれは・・・」
「日本は近代化してないんじゃないのか」
「「「「あははははは・・・」」」」 ため息
そう日本の産業構造は、農業、木工産業、建設産業、鉄鋼産業の順で人材が配分されていた。
香港でベトナム共産党(後のベトナム労働党)結成
若槻軍縮会議全権が英放送局から日本へ向けて演説放送(初の国際中継放送)
クライド・トンボーが冥王星を発見
第17回衆議院議員総選挙
総選挙結果発表(政友会174議席に対し民政党273議席獲得で圧勝)
神籬ガラス工場
溶けたガラスが糸状に押し出されてくる。
髪の毛より細いガラス繊維を作ることはむつかしくなかった。
固めれば断熱性と吸音性に優れた建材になった。
仙堂と角浦
「使える?」
「防弾や装甲にはならないが、建材で使えると思うな」
「国は鉄が好きだからな」
「鉄鉱石の代用にはならないかもしれんが、いろんな場所で使える」
「特に断熱性能が高いから、暑いところでも寒いところでも」
3月
金剛・扶桑型戦艦の改装が始まる。
32000t級金剛型駆逐艦
全長222m×全幅31m×吃水9.6m
ディーゼル機関6500馬力20基 130000馬力 速度31kt
45口径356mm連装砲4基 65口径105mm砲×12門 83口径37mm対空機銃20門
水上機4機
海軍将校たち
「せっかく、3000t加増で26330tから29330tになると思ったら、再追加増3000tで32330tか」
「ディーゼル機関中心の改装で良かったというべきか」
「しかし、扶桑・山城型は主砲塔2基廃止だし。ずいぶん、スッキリさせたものだ」
「弾薬庫ばかりで逃げ道がないから、将兵が怖がってたからね」
「105mm砲は対駆逐艦で弱いと思うが」
「対空砲も兼ねてるらしい」
「それに何も水雷戦隊に突撃する必要もなかろう」
「まぁ たしかにそうだが、戦艦と打ち合ってる時、駆逐艦に攻められると辛い」
「そういう時は、さっさと逃げるしかないな」
「神籬がぶつくさ言ってた気がするが」
「戦艦は木が安いから戦艦より、航空機にしろって騒いでるだけだろう」
「航空機も機体がアルミ製になりそうだけどな」
「ところで、艦橋の上にある簪はなんだ?」
「ああ、神籬が材質選定で買った八木・宇田アンテナを応用したものらしい」
「木を?」
「木は、レーダーを吸収するけど充填物質で差が出るらしい」
「その誤差を利用して、木材が弱ってないかを調べようとしたそうだ」
「それで、航空機や艦船の探知に利用できるかもしれないって、軍事転用」
「また、神籬の我田引水かよ」
「まぁ レーダーは意外と使えるよ」
「だといいが、かっこわる」
「「「・・・」」」 ため息
インド
マハトマ・ガンディーが、宗主国イギリスが任命したインド総督に対し不服従抗議運動開始。
米国マサチューセッツ州で世界初の冷凍食品が販売
インド
マハトマ・ガンディーと支持者は、イギリスの塩専売に抗議し塩の行進を開始。
横須賀線が電車に切換え
ユンカース G.38
全長23.20m×全幅44.00m×全高7.2m 翼面積290u
自重14912kg / 全備重25488kg
ユンカースL88 液冷V型12気筒エンジン800馬力×4
最大速度225km/h 航続距離3460km
乗員7名+30人
関係者たち
「すげぇ!」
「神籬ならもっと軽くできる?」
「まぁ できるだろうけど、主翼を薄くして、空気抵抗を減らしたほうがいいな」
「この大きさで木製はないだろう」
「幸幣を応用するとね。エイみたいに優雅に飛ばすことができるかも・・・」
「マジで?」
「仙堂と角浦はさ。もう、神だよ。まぁ 50倍くらい、高くつくだろうけどね」
「「「「・・・・」」」」
4月
上野駅に地下商店街が誕生
銀座三越開店
北海道紋別で大火(300戸焼失)
秋田市で大火(97戸焼失)
木工12干支ギルド会議
「最近、大火が続いてるが、どういうことだ」
「放火かな」
「アメリカが大恐慌だから日本にも金を使わせてやれって、工作員を動かしてるんじゃないだろうな」
「「「「あはははは・・・」」」」
「取り敢えず、不燃性木材を開発しているから、今後はこれで家を建築していけばいいだろう」
「ところで、不況は戦争するためかもしれないというのは、信憑性があるの?」
「意図的に投機経済を加熱させて紙幣発行量を減らして、バブルを破裂させれば、外国の利権を得ようという人間も増えるからね」
「それは怖い話しだ」
「日本国も軍事費が増えてるので心配だよ」
「だが所得も増えてるだろう」
「まぁ幸幣が増えてるから主導権を奪われたくない日銀が競り合って発行してるんだろう」
第58特別議会召集
関係者たち
「日本の近代化は、鉄鋼業とゼネコンを中心に行うべきだ」
「外貨会得の役に立ってるからといって、農林産業が国家外交戦略の一翼を担うなど、増長してるとしか思えない」
「そうは言うが、トウモロコシの原種は実を10個しか持っていなかったそうだ」
「いまでは300粒から1000粒まで増えている」
「農林業が鉄鋼業に劣るなど、了見不足も甚だしい」
「タ、タイ王国への肩入れは、日本の国力の消耗なのでは?」
「現地の協力を得てますので、長い目で見れば日本の国益になりますよ」
「そんな、国際情勢なんてコロコロ変わるのに、長期的な戦略を建てられても」
「長期的な展望というのは、鉄鉱石を溶かして、はい、出来上がりじゃない」
「タイ王国を近代化させて、イギリスとフランスの東南アジア支配を弱体化させるという意味がある」
「タイ王国がイギリスとフランスの番犬になったらどうするね」
「長期的には、日本もタイ王国も欧米の番犬になることを望まないから、日泰は、最終的に共闘する」
「それは幻想だよ」
「それは幻想で片付けて、日本軍の力で東南アジア開放ですか? それこそ、馬鹿馬鹿しい」
「タイ王国がそう簡単に近代化できるとは思えないのだが」
「国家100年の計で考えられないのなら、公職に就くべきではありませんな」
「「「・・・・・」」」 ぶっすぅ〜〜〜
ロンドン海軍軍縮会議終結。米英日の3国で軍備制限条約締結
金輸出禁止
ロンドン軍縮条約が締結されると、日本は金輸出禁止とし、
円紙幣は、不換金紙幣へと戻った。
そして、日本資本は、強い換金紙幣の外貨を利用し、
欧米諸国の石油ごとタンカー、工作機械、機材ごと商船を買い漁った。
そして、換金される前に不換金紙幣に戻したのだ。
この詐欺的な経済政策は国際世論で非難が上ったが、
欧米先進諸国に恨みを持つ国々は、拍手喝采を上げたのだった。
鉄道省が国際観光局を開設
統帥権干犯問題が発生
ローマで日本美術展開催
東京
扇動家たち
“戦うニダ。今がチャンスニダ”
“中国に攻め込むニダ”
“中国人に日本人がたくさん殺されたニダ”
“英霊が命懸けで手に入れ、奪われた失地を取り戻すニダ”
“朝鮮半島をアメリカ、ソビエト、イギリスから奪い返すニダ”
“ユダヤ資本を朝鮮半島から叩き出すニダ”
“日本は戦争するニダ。絶対に勝てるニダ”
5月
日華関税協定調印
重巡高雄進水式(皇后臨席)
フランス軍がラインラントから撤退開始 (撤退完了6月30日)
台湾 烏山頭貯水池(八田ダム)竣工
日本は、人口増大の解消など生存圏の拡大で、北進論と南進論に分かれ、
外国の工作員を巻き込んで荒れていた。
北進論が強かったのは反共を動機にしたシベリア出兵の時代で、
その後も反共に対する恐れから蠢いていた。
一方、欧米列強との外交で、帝国主義な搾取と人種差別に直面しやすいことから、
植民地開放と人種差別撤廃で、南進論の意見も少なくなかった。
反共と反帝国主義は、新興国の日本が陥りやすいジレンマだったものの、
朝鮮半島を独立させた後は、北進、南進とも急速に尻窄みになっていった。
そして、木工12ギルドは、別の選択肢へと歩を進めさせようとしていた。
列強から自国を防衛するのが困難な国は多く、
武器弾薬を提供する代わり、領土の一部を譲渡させようという計画だった。
第3の選択は、飛び地になることから隔進論と呼ばれ、注目を集めた。
6月
加藤寛治軍令部長が天皇に辞表を提出
軍令部長後任に谷口尚真を任命
浅間山爆発
フーバー米大統領がスムート・ホーリー法に署名
ニカラグア戦争は、アメリカ軍の戦意低下と資金難により撤退していく、
代わりニカラグア沖に現れたのは、日本が欧米諸国から大人買いした商船隊30隻と建築資材。
そして、日本国から長駆太平洋を超えて渡ってきた艦隊と商船隊30隻だった。
日本は、戦闘機100機、10個師団分の軍需物資と交換に、
フォンセカ湾に面した領地コシグイナ(400ku)を手に入れていた。
17636t級巡洋艦 鞍馬 艦橋
排水量 17636t / 18595t
全長220m×全幅22m×吃水7.8m
ディーゼル機関電気推進100000馬力 速力30kt 航続距離10kt/21500海里
45口径305mm連装砲2基 65口径105mm対空砲連装4基 83口径37mm対空機銃10門
水上機 8機
「やれやれ、こんな火山半島と租借地にしてしまうなんて、命知らずというか、なんというか」
「桜島の倍以上の直径がありますね。噴火もしてないですし・・・」
「アメリカの動きの方が怖いよ・・・」
水平線上にアメリカ太平洋艦隊が点在していた。
「怒ってる怒ってる」
「怒らせて大丈夫なんですかね」
「大丈夫じゃないがね」
「相手は戦艦。こっちは巡洋艦。撃ってきたら怖いですよ」
「潜水艦が張り付いてることくらいアメリカ海軍だって知ってるだろう」
軍艦は予備将校室が存在する。
日本海軍は、イギリス型の造艦技術を取り入れていたことから、
ある種、貴族的と言えるような趣もあった。
仙堂と角浦は、ニカラグア林業の見解を求められていた。
林業で成功できるのなら移民枠を増やせ、駐留軍維持費も安く上がるのだ。
むろん、開発の中心になるのはゼネコンと工業関係者だったものの、
列強に劣る工業力で輸出大国になれない以上、列強に勝る木工業の輸出で黒字を目指すよりなかった。
「鞍馬って古い軍艦だと思っていたが、下に行くほど、新品なんだな。どんな改装したんだ」
「船体を新しく建造して、鞍馬の機材を上に載せたんだろう」
「そんなことまでしなきゃならんのかね」
「機関を交換するより、砲台を載せ替える方が楽だからね」
「たぶん、巡洋艦キラーで3隻建造したんじゃないかな」
「表向き “3隻残した” だけどね」
「そういや、イギリス領ベリーズの総督がこっちに来たいと打診があったらしい」
「なんで、イギリス」
「日本の任那とイギリスのベリーズで、中南米を分断できるかもしれないって思ったんじゃないか」
「おいおい、日英同盟は破棄されただろう」
「だからって、関係が断たれたわけじゃないだろう」
「まぁ そうだろうが」
「それに中南米は資源らしい資源が少ないからな」
「林業が金になるのなら、日本との付き合いを検討したいのかもしれない」
7月
誰かが国家予算に計上されそうなお金を集めたとする。
新しいお金が作られると、総紙幣量に占める持ち紙幣量の配分が減少し、国家の支配力が低下する。
また競争力の高い成金が次々と出現すると、自分より富裕層が生まれ、利権構造も破壊される
それを防ごうとするなら自動的に紙幣が入金されるような利権を作って、他者を排斥するか。
紙幣の発行量を減らし、現状の権力を維持しようとする。
利権の拡大と利権の強化をコントロールする機関が中央銀行で、
インフレとデフレを我田引水に操作することも可能だった。
器が小さく腹黒者たちの策謀により、
アメリカが利権の拡大から利権強化に移行した1929年に大恐慌が起こり、
世界中の国家が巻き込まれた。
アメリカ合衆国 白い家
男たちがイライラと歩き回っていた。
ニカラグアを手に入れようとしたらアウグスト・セサル・サンディーノ将軍に反撃され、
士気と国民の理解を得ぬまま、泥沼に陥って撤収、
アメリカは仕方なく、金融支配で全体主義を強めようと大恐慌を引き起こし、
軍を再動員して、ニカラグアを占領しようとしていたのだ。
しかし、日本は、換金紙幣で目に付く船舶と工作機械、建設機械を買い叩き、
その後、換金紙幣を不換金紙幣に戻すと、
ニカラグアで手に入れた領地(400ku)に日本軍を上陸させ、
ニカラグア軍に戦闘機100機と10個師団相当の武器弾薬をサンディーノ将軍に引き渡したのだ。
もはや、アメリカには、軍を動かすだけの力がなく、
この状況で紙幣を印刷してばら蒔いたとしても、
アメリカ国民の憎しみは、日本やニカラグアではなく、アメリカの権力者に向く公算が強かった。
「コシグイナ(400ku)は、租借地でなく。日本の領地なのか」
「はい。元朝鮮半島の第20師団が配備されています」
「日本に、してやられたぞ」
「日米共同南満州鉄道詐欺。換金・不換金詐欺」
「そして、日本軍のニカラグア上陸の3回に渡って騙されるなど、なんという屈辱だ
「サンディーノ将軍の暗殺は?」
「準備中です」
「急がせろ、サンディーノ将軍の後ろ盾がなければ租借地コシグイナは維持できまい」
「それが・・・」
「なんだ」
「ホンジュラスとエルサルバドルは、コシグイナの日本軍進駐を喜んでまして・・・」
「なんだと!」
「「「「・・・・・」」」」
「日本と戦争だ」
「朝鮮半島にユダヤ人の避難地を作ってますし」
「そんなことをすれば日本の高速戦艦4隻に海上封鎖されて半島をソビエトに奪われますし」
「ニカラグアも制圧できるかどうか・・・」
「それに、コロラドで長門に勝てるかどうか・・・」
「だいたい、せっかく朝鮮に足場を作って、中国に浸透しようとしてたのに・・・」
「「「「・・・・・」」」」
「日本と中国を戦争させよ!」
「日本国内に工作員が少なすぎます」
「「「「・・・・・」」」」 ため息
領地コシグイナ (任那 “みまな”) (400ku)
第20師団と後備5個師団が上陸すると港湾の浚渫が始まり、港湾が整備され、
測量と区画整理を進めつつ、陣地構築と、城塞都市建設が進められていく、
飛行場が作られると、龍驤から10式艦上戦闘機40機が仮設滑走路に降りていく、
日本陸海軍将校たち
「ブルドーザーか、面白い建設機械だな」
「アメリカは、こいつがあるので、フーバーダムを建設しようと思ったのでしょう」
「なるほど。日本でも同じものを作りたいな」
「しかし、太平洋の反対側で孤立している状況は面白くないな」
「アメリカは資本主義より民主主義が強いので、今のところ、戦闘力がないそうですよ」
「だといいが、大恐慌で変わるだろう」
「確かに、変わりそうですね」
「逆に言うなら日本人7000万対ユダヤ資本2000万と考えるべきかもしれませんが」
「世界の富の半分を握ってる連中だろう」
「少々 分が悪いですね」
「まぁ 鉄道を建設して、土木工事が済めば356mm連装砲8基を高台に配置できる」
「そうなればアメリカ艦隊といえども、戦えまい」
「しかし、任那に住みたがる日本人は、いますかね」
「近代的な設備を作れば、南米移民者たちは集まるかもな」
米国でフーバーダム建設開始
第1回FIFAワールドカップ開催(7月30日)
中国共産党軍が長沙を占領
喫茶店
“長沙の日本領事館が中国共産党軍に焼かれる”
仙堂と角浦
「結局、東アジアはスケープゴートを決めないと安定しないのかね」
「勢力が拮抗してるからだろう。しかし、日本は、中国に深入りすべきじゃないね」
「まぁ 租界は、捨てる覚悟だろうな」
「租界というより自由都市に近いし、漢民族側の要求の方が強いからね」
「とはいえ、大陸は、野蛮だな」
「まぁ わかってたけどね」
「もう、代理店だけにして、中国人に任せるのがいいのかね」
「といってもタングステンとニッケルは捨てがたい」
「どうせならアメリカかイギリスの領事館を燃やせばいいのに」
「民衆は軋轢の捌け口を求めてるから、お金あげれば燃やしてくれるんじゃないの」
「まぁ やってくれるだろうけど、バレた時がなぁ」
「ていうか、日中戦争させたがってる連中が騒ぎを起こしてると思う」
「たぶん、先頭にいるやつ、麻薬やって買収されてるよ」
「こういう国に戦車を売っても大丈夫なんだろうか」
「潜水艦を売るわけじゃないから、大丈夫だろう」
「そういえば、アメリカが中国に潜水艦を売るとか売らないとか」
「朝鮮半島の開発が進むまで後回しなんじゃないかな」
長沙ソビエト政府樹立
列国の砲艦が中国共産党軍を砲撃
8月
日本資本のニカラグア輸送は、牛車船団と呼ばれた。
アメリカ海軍は、日本艦隊を挑発しようと戦艦や巡洋艦を派遣するが、
日本艦隊は、アメリカの挑発を無視し、輸送を繰り返した。
鞍馬 艦橋
「アメリカ艦隊は撃ってくるだろうか」
「圧力をかけてるだけのような気がしますね」
「なんにしても港湾設備やドックを建設しなければ常駐は不可能ですし」
「浪費を続けるよりないですね」
「浪費か・・・」
「20万人で開発すれば、常駐は早いかもしれませんね」
「イギリス領ベリーズに航空部隊が配備されてるようですよ」
「ふっ 中南米イニシアチブの取り合いか」
「イギリスだけではアメリカには勝てないが、日本の橋頭堡が太平洋側あったら話しは変わる」
「イギリスと交渉してみる必要があるかもしれないな」
「それはそうと、飛行船購入の噂を聞きましたけど」
「噂はあるが、価格と折り合いがつかなかったらしい」
「というか、自主開発させろと工業側が騒いだらしい」
「ふっ」
27500t級ネバダ型戦艦ネバダ
ネバダ艦橋
「鞍馬、伊吹、生駒か」
「余裕で撃沈できそうだが、随分と古臭い軍艦を出してきたな」
「練習巡洋艦という位置づけですし。沈められても惜しくない軍艦なのでしょうか」
「しかし、随分と全長を伸ばしたものだ」
「その上、艦尾にあった主砲塔を背負式に艦首に持ってくるなど・・・」
「聞いた話しでは真ん中でぶった切って、中央で40mを足し、艦首艦尾の延長で20mを足したと聞いてます」
「総トン数オーバーじゃないのか」
「装甲を削って軽量化したようで、進水時のドックを調べた限り、条約は守られていたそうです」
「装甲を削った・・・」
「戦艦との交戦は考えず、航空巡洋艦で、対巡洋艦で残したと思われます」
「じゃ 吃水が上がってるのか」
「ええ、そうなるでしょうね」
「量の改装は簡単だが、質の改装は困難なはず。労力に見合う見返りはないと思うが」
「日本人は、賃金は安いでしょうし、合理的に考えない人種なのでしょう・・・」
爆装した90式2号水上偵察機が上空を旋回していく、
輸出補償法施行
国民政府軍が長沙を奪回し長沙ソビエト政府崩壊
逓信省が東京・大阪間で写真電送開始
9月
浅間山爆発 (東京まで降灰)
独総選挙でナチ党が躍進
千葉陸軍戦車学校
ドイツ軍将校と日本軍将校が戦車開発を進めていた。
日本はディーセルエンジンの戦車を望み、ドイツはガソリンエンジンの戦車を望んだ。
日独間の利害関係は一致することが多く、
ドイツは再軍備ですぐ戦車を量産するため、日本で製造試験運用を続けた。
10t級89式(1号)戦車
全長4.8m×全幅2.3m×全高2.1m
120馬力 速度35km/h 行動距離140km
45口径37mm砲
7.92mm MG13 機関銃×2
装甲15mm 乗員3人
「はやり、ドイツ製が優れてるか?」
「日本製は?」
「120馬力エンジンの試作で手間取ってる」
「もう、決めちゃえよ」
「まぁ そうするしかないかな・・・」
「しかし、半島と南満州鉄道を返還してから戦車開発でトーンダウンしてしまったからな」
10月
東京・神戸間に特急燕運転開始(8時間55分)
イギリスが威海を中華民国に返還
英飛行船R101号が仏ボーヴェ郊外で墜落(死者46名)
間島暴動 漢民族VS朝鮮人紛争
日本
日独企業が集まって、次戦争に備えた研究・開発・試作・生産が行われていた。
ドイツ技術者たち
「日本の山を見てきたか?」
「ああ、成長が早いようだ」
「木工細工が優れているから売れる。売れるから間引きの計画がしやすい」
「当然、一本当たりの直径は大きくなる」
「どのくらい早いんだ?」
「1.5倍に近くなってる」
「神籬が関わってるのか」
「神籬が関わると明らかに違う」
「おかげで大手企業の囲い込みが上手くいかず、近代化の抑制になってる」
「しかし、神籬の思惑で買収が進んでるらしい」
「木工主導で近代かねぇ」
「大恐慌下で、外貨稼ぎの原動力になってるんだろう」
11月
日比谷交差点に国内初の自動交通信号登場(米国製)
名古屋市で市営電気バス登場
ハイレ・セラシエがエチオピア国王に即位
伊豆地方大地震(死者行方不明者331名、全壊4317戸)
日本のニカラグア開発が始まると、タイ王国開発は紙面の片隅へ移動していた。
それでもタイ王国の空の下にいると、
タイ王国は、一部、日本の行政と軍政を取り入れつつ、近代化を推し進めていた。
タイ王国の近代化は、日本の明治維新をモデルの一つにしており、
学制、税制、軍制の整備と、
廃藩置県など規制破壊や武士階級の俸禄廃止など、既得権益の破壊があった。
これは資源との交換であるが、タイ王国で学校が建設され、近代化の土台が形成されていく、
コーラート台地の開発は、現地民と協力関係においてなされ、
メコン川から運河を通し、水路と灌漑設備が網の目のようにコーラート台地を覆っていく、
そういった日泰経済協力の陰に隠れ、日泰戦略研究が行われていた。
タイ戦略軍司令室
タイ王国の正面、第1戦線は、イギリス領ビルマのタニンダーリで、
ここを落とせばインド洋ルートを確実なものにできた。
第2戦線は、イギリス領マレー方面でマラッカ海峡を押さえればタイ王国の戦略的価値を高めることができた。
第3戦線は、フランス領インドシナで、戦略的価値は低いものの、可能性だけは高かった。
何度も何度も図上演習がなされるが、成功に至らない、
しかし、タイ王国が近代化に成功し、近代的な軍隊を国産できるようになると事情は変わる。
そして、タイ王国の近代化で最も神経を尖らさせているのは、イギリスとフランスといえた。
タイ王国将校
「最低50万の陸軍は、欲しいですな」
「問題は、艦砲射撃でしょうか」
「艦砲射撃なら海岸から30kmも奥に避難すればどうということはない」
「こちらは戦い続けることができるし」
「イギリスとフランスの戦艦は大砲を撃ち尽くせば帰還するよりない」
「しかし、海岸に近い部分は取られてしまうのでは?」
「いくらイギリス軍将兵とフランス軍将兵が強くても東南アジアで死ぬなんて馬鹿らしいと思うはずですし」
「タイ王国軍50万といつまでも睨み合えるわけないですよ」
「なるほど」
「まぁ 必要なのは、近代的な兵器と武器弾薬ですな」
12月
省営自動車開業(岡崎駅-多治見駅間・瀬戸記念橋駅-高蔵寺駅間)
第59議会召集
“ニカラグアと秘密協定を結びコシグイナを得てしまうなど”
“国際信義においてあるまじき行為としか言えない”
“我が国はニカラグアのサンディーノ将軍から正式に招待を受けたのです”
“そして、同盟に準じた協約を結んでる”
“しかし、アメリカは・・”
“黙らっしゃい! アメリカ、アメリカ、アメリカ、あんたはアメリカの犬か”
“ば、馬鹿な。兵站を無視した進出などありえないと言ってるのですよ”
“我が国の艦隊は、航続距離の長いディーゼル機関を使ってるのですよ”
“なんにせよ。我が国は中南米に巨済島ほどの領地を得た。文句はないでしょう”
“それに日米戦争緒戦において、アメリカ本土とニカラグアの間に拠点があることはプラスになる”
“しかし、アメリカから石油を買ってることをお忘れか”
“それに金解禁は、1年は続けるはずだったのでは?”
“まぁ 耐えられなかったということで”
“国際詐欺だ。国際問題になってるぞ”
“とはいっても、アメリカは、朝鮮半島と中国を長駆して利益を上げなければならないのです”
“日本との交易を無くすと、財政負担に耐えられないのです”
“だからといって約束を違えていいという法はない”
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月夜裏 野々香です。
木仙一族
仙堂春和(24歳) × 山城美奈(20歳) 一樹(2)
角浦秋和(24歳) × 日向奈美(19歳) 青葉(2)
ガラス繊維です。
普通のガラスを繊維にしたもので、ハードルは比較的低いです。
これくらいないと、少々辛い、
ドイツは日本で10t級89式(1号)戦車を開発。日本でも生産 (笑
あと、ニカラグア(任那)に手を出してしまいました (笑
1926年 巨済島(400ku) 済州島(1845ku) 鬱陵島(72.82ku)
1926年 大連州(3462ku)
1930年 任那州 フォンセカ湾 ニカラグア領地コシグイナ(400ku)
近衛師団
第01師団(東京) 第02師団(仙台) 第03師団(名古屋) 第04師団(大阪)
第05師団(広島) 第06師団(熊本) 第07師団(北海道) 第08師団(弘前)
第09師団(金沢) 第10師団(姫路) 第11師団(善通寺) 第12師団(久留米)
第14師団(宇都宮) 第16師団(京都) 第19師団(大連) 第20師団(任那)
第10話 1930年 『隔進論、ニカラグアの任那』 |
第11話 1931年 『少しは中南米も面白くしないと』 |