月夜裏 野々香 小説の部屋

    

神がかり系 仮想戦記 『神籬の木仙』

 

 第15話 1935年 『東南アジアの熊襲』

 1月

 科学技術工業を無理やり発展させる方法がある。

 前任者の原理・原則・史観に反逆しても出世と収入の道がある、

 いうなれば、学閥封建制の破壊だった。

 この時期、三菱、中島、川崎の航空3社が三つの派閥を作って張り合っていた。

 また、時代は、木製から鉄製への移行期で、神籬にとって正念場だった。

 神籬は、機体を製造しながら外国技術導入しつつ、

 ヤドリギ的な手法で、航空開発の力をつけていた。

 3社は、神籬が買ったエンジン、新技術などのパテントに発注し、

 工場でエンジン、機械、無線を製造している状態だった。

 利点は、3社間でパテントが重複しても問題が生じなかったことといえた。

 そこに、神籬のガラス繊維素材が使われだした。

 ガラス繊維は、ガラスを溶かし遠心分離させながら細い糸状の物を放出させ、

 冷却させながら極細の糸を巻き取っていく、

 糸を編みながらより大きな糸を作り、紙のように折り曲げられるシートを作り、

 シートの厚みを増していけば板になった。

 生産が増えるほど1t当たりの単価が安くなり、工業製品となっていく、

 神籬は、ガラス繊維を軍事機密とすることでガラス繊維生産を独占し、

 不逞な政商へと変貌していた。

 

 航空機開発会議

 「陸海軍で別々の規格を使用するのは馬鹿げてる」

 「しかし、陸海軍では、予算も運用も違う」

 「工作機械を数ミリ動かすと調整で時間を取られる」

 「そういうのは非合理的だ。陸海軍の作り分けなんかしてられるか」

 「木工細工をやってる人間がそれを言うか」

 「木工業は木に合わせてるの」

 「鉄鋼業やガラス繊維は材質を均一に作るんだろうが」

 「と、とにかく、陸軍と海軍の規格を分けろ」

 「断る」

 「「「「・・・・」」」」

 

 

 お金持ちは、何故お金持ちのままなのか、

 財閥に近づくと親類縁者知人を政界財界官界に送り込むようになり、

 インサイダー取引というより、政策当事者、あるいは関係者になっていた。

 有力財閥なら決定権に近い将官・事務次官クラスで、

 中堅財閥なら決定権がなくても行政執行を進める士官・課長クラスに近付く、

 財閥テコ入れのコネ入省で辞めさせにくく、逆に財閥の動きを探るパイプ役にもなった。

 とはいえ、実力や能力で得た地位の者は少数派で、

 組織の厄介者に変わりなく、無能なら爪弾きで、馬鹿な割に野心が強いと煙たがられる。

 財閥側も有能な人間がいないなら可能な限りまともで邪魔にならない人間を送り込んだ。

 仙堂家と角浦家も木工12ギルドが神籬のコネで血筋・親類・縁者・知人を政界・財界・官界に送り込み、

 あるいは、利権構造の利害関係を利用し、積極的にせよ消極的にせよ、政策に関わっていた。

 むろん、独裁と程遠い派閥均衡で得られる情報でしかなく、

 確実に信頼できる内容でもなかった。

 それでも一般とは、はるかに次元の違う情報の精確さだったのである。

 仮にどの株が上がり、どの株が落ちるかなどの情報もある程度、操作でき、

 操作できなくても事前に株価の上がり下がりを予測できうる情報が得られた。

 もっとも金に困らなくなれば、別の価値を考えるようになるのであるが・・・・

 

 角浦家の邸宅の芝生で、

 仙堂一樹(7)と角浦青葉(7)は父親たちからナイフの扱い方を教わると、

 今では、原木が望むような形にまで彫ることができた。

 二人は木屑を削って竹とんぼを作り、智樹(3)と芳樹(3)が飛ばして遊ぶ、

 その脇で、日本海軍士官の中年が子供たちに混ざって一緒に遊んでいた。

 仙堂の叔父は、甥が作った竹とんぼを回して、中芯にブレがないことを確認する。

 竹とんぼは、ロケットのような速度で空に向かって昇っていく

 「・・・こりゃ 凄い」

 「春和君。血筋とはいえ、ここまで才能の片鱗を見せ付けられるとは・・・羨ましいものだ・・・」

 「叔父さん。今日は、なんです?」

 「ああ、軍がきな臭い動きをしているんでな」

 「本当に?」

 「窓際の私を遠ざけようとしてる気もするし、なんか、腑に落ちない・・・」

 有力家が親族縁者を軍に送り込ませることは珍しくなく、

 仙堂と角浦も軍属に友人知人を増やし、

 コネを使って、親族や縁者をそれなりの地位と部署に送り込んでいた。

 「また、クーデターとかじゃないですよね」

 「軍組織内での出世とか、給与とか、派閥しか見てない連中は、大義があると突っ走る傾向が強いからな」

 「近視眼はやめるようにと、注意しといてくださいよ」

 「そうは言っても、組織を肥大化すると、軍内利権になるからな」

 「程々に、お願いしますよ。叔父さん」

 「まぁ 私は、それほど、出世したいわけでもないからブレーキはかけてみるが」

 「空気を読まないと総スカン食うのでね」

 「そりゃそうかもしれませんが、国民が困ることになったら大変ですよ」

 「そんなに困らないだろう。いざとなったら幸幣を作ればいい」

 「やめてくださいよ。器用な日本人ばかりじゃないんですから」

 「だいたい、不換紙幣に移行したというのに、中央銀行の統制と利益誘導で紙幣発行してるのが腹が立つのに」

 「中央銀行の独善も幸幣で崩れてるだろう」

 「まぁ そうでしょうけどね」

 「軍は、政治がもっと安定して・・・というより、軍備が一定の比率で増えてもらわないとな」

 「公共設備を大きくしないと、爆撃されたら焼け野原にされますから。少しは我慢してくださいよ」

 「軍は、迎撃戦闘機を欲しがってるよ」

 「わかりますが、そればっかりじゃ 基幹産業を守れ・・・」

 「できた」

 青葉が4つ翼の竹とんぼを作った。

 「あ、俺も4つの作る」

 一樹が負けずに言い返す。

 同じ年でも女の子の方が成長が早く、少しばかり青葉の背が高かった。

 叔父は、呆れたように完成度の高い竹とんぼを見つめた。

 

  

 2月

  デュポン社のウォーレス・カロザースがポリマー66(ナイロン)を開発

  

 アメリカ合衆国

 白い家

 大統領がテーブルに着くと、カラーコード戦争計画の報告書が乗せられている。

   ホワイト(対内乱戦)、グレイ(対西インド諸島諸国戦)、オレンジ(対日本戦)

   パープル計画(対中央アメリカ諸国およびロシア戦)、レッド(対イギリス・カナダ戦)

   グリーン(対メキシコ戦)、ゴールド(対フランスおよびカリブ海のフランス領戦)、

   ブラック(対ドイツ戦)、インディゴ(対アイスランド戦)、ブラウン(対フィリピン戦)、

   イエロー(対中国戦)、バイオレット(対中国内乱戦)、

   オリーブ(対スペイン戦)、シルバー(対イタリア戦)、エメラルド(対アイルランド戦)、

   タン(対キューバ戦)、シトロン(対ブラジル戦)、レモン(対ポルトガル戦)、

   ルビー(対インド戦)、スカーレット(対オーストラリア戦)、ガーネット(対ニュージーランド戦)

 「大統領。オレンジプランを回収します」

 「またか」

 「熊襲は、大きすぎますので・・・」

 「やれやれ・・・・」

 

 

 3月

  アドルフ・ヒトラーがヴェルサイユ条約を破棄し、ナチス・ドイツの再軍備を宣言

 

  ペルシアが国号をイランに改称

  

 

  複葉95式戦闘機 

   自重1160kg / 全備重量1740kg

   全長7.55m×全幅10.02 m×全高3.3m  翼面積23u

   850馬力  最大速度420km/h  航続距離1100km

   7.92mm機関銃2丁

 

 財閥系の工学技術者たちが接合面の匠に興味を持っているのか、

 機体を何度も調べる。

 大まかな設計図はあって無きな機体で、最終的な仕上げで外枠だけの寸法を合わせている。

 多くがハンドメイド感覚で作られていた。

 某重工の技術者たち

 「すげぇ 継ぎ目に接着剤とか使わなくても接合できるんだな」

 「こういう高度技能者に頼る産業は、ダメだと思うんだ」

 「誰でも同じ寸法で作って、同じ部品を組み合わせて機体を作るべきなんだよ」

 「職人さんに頭が上がらないようでは、日本は近代化が望めない」

 「だけど、こういう作りをされたら、金属加工じゃ勝てんぞ」

 「そういや、神籬に駆潜艇を取られた。800t級以下はガラス繊維に取られてしまいそうだ」

 「じゃ 次はガラス繊維で機体を作るのかね」

 「ガラス繊維ってそんなに強かったか」

 「いや、鉄は戦艦、空母、巡洋艦、潜水艦に使いたいらしい」

 「マジむかつく」

 「しかし、禿山を作りたくないなら、木工細工の生産は制限される」

 「海外から木材を買ってるけど」

 「だけど、ガラス繊維の方が増えるだろうな。どちらにしても神籬だけど」

 「「「「・・・・・」」」」 むっすぅ〜

 「何機作るって?」

 「取り敢えず600機」

 「輸出用か」

 「各国の代理人が興味を示している」

 「今一番欲しいのは輸出用だからね」

 「単葉は?」

 「次ので開発している。次は単葉で成功するだろう」

 

 

 

 4月

 イギリス、フランス、イタリアのドイツ包囲協議ストレーザ会議(〜14日)

 

 

 ブリュッセル万国博覧会開幕(〜11月6日)

  

 

 MG34機関銃(7.92mm×57)

  重量1210g

  銃身長627mm / 全長1219mm

  ドラム給弾(50発、75発) メタルリンクベルト給弾式

  銃口初速755m/秒   発射速度800〜900発/分

 ドイツの再軍備宣言に合わせ

 日本で生産されたドイツ規格の武器弾薬もドイツへと輸出されていく、

 特に機関銃は、戦場において攻守の要として、重要視されており、

 日本もMG34機関銃(7.92mm×57)を主力機関銃として採用していた。

 関係者たち

 「ストレーザ会議のおかげでドイツへの売れ行きがいいようだ」

 「出る杭は打たれるわけね」

 「というより、会議がパフォーマンス臭い」

 「会議は本気じゃないのか」

 「イギリス、フランス、イタリアは仲が悪いからな」

 「というより、切羽詰らないと手を握れない欧州諸国なんじゃないか」

 「だよねぇ」

 「しかし、MG34機関砲は傑作機関銃だが、小銃は、どうしたものか」

 「満州から退いたし、小銃は6.5mmのままでいいと思うな」

 「せめて自動小銃にしないとまずくないか」

 「それもあるけど、全長が長くて使いにくいらしい、短小化すべきだと思うね」

 「短小化すると、威力不足が気になるが」

 「中南米で使いにくいそうだ」

 「中南米は、密林が多くて視界が狭くなるからな」

 「38式小銃を狙撃銃にして。44式騎銃を一般兵士に配備した方がいいような気もする」

 「44式はエリート銃って感じだからな」

 「特権で国は守れないから。そんなのどうでもいいよ」

 「100式短機関銃も意外に人気がある」

 「38式実包でドイツに短機関銃を発注しただけはあった」

 「44式騎銃は自動化できないの?」

 「まぁ 研究はしてるが民間と資源の取り合いになってるからな」

 「国防が大変な時に、民間が鉄使うなよ」

 「結局、鉄鋼数十万t、コンクリート数百万tで海外地を防衛するって発想だしな」

 「ガラス繊維を増やして、鉄鋼の量を補ってるらしいけど」

 「それでも戦車が走れる橋を建設すると、鉄骨鉄筋の橋になるし」

 「大型戦車を輸送できるような鉄道を敷くと、土台から鉄筋コンクリートとか」

 「鉄がなきゃ 戦争できねぇか・・・」

 

 

 

 

 5月

  米国で公共事業促進局発足

 

  フィリピンが独立協定を批准

 

  ロシアで初めて地下鉄開通(モスクワ)

 

  初のアウトバーン路線、フランクフルト・ダルムシュタット間開通

  

 アメリカ合衆国 白い家

 男たちは世界地図を囲んでいた。

 「日本は強気だな」

 「戦争するか」

 「朝鮮半島の開発と基地建設は、途上だ」

 「日本が態度を硬化させるのはまずい」

 「それに極東ソビエト軍が朝鮮半島に侵攻しても日本の支援が受けられなくなる」

 「しかし、朝鮮半島は軍隊の維持駐留費だけでジリ貧だ。日本と違って投資し甲斐のない国だ」

 「朝鮮の反日教育は?」

 「進めている。朝鮮人の多くが反日、反中、反ソになるだろう」

 「しかし、中南米では、反日教育がうまくいってない」

 「もっと日本ダーティイメージを印象づけなければな」

 「生憎、日本人の気質は好かれる要素があっても、憎まれる要素は少ないよ」

 「とにかく、日本の外交と海外地進出を邪魔しないと大変なことになるぞ」

 「日本がどれだけ海外地に拠点を作っても所詮は苦し紛れ」

 「国力を分割させることになるし」

 「半島に航空基地と潜水艦基地を置けば日本の生殺与奪権は握ったようなもの、せいぜい、暴れるがいい」

 「それに、北欧道は日本の弱点になるのでは?」

 「ドイツが北欧道を支援してるようですが」

 「日独連携か。厄介ではあるがどちらも石油のない国だ。なんとかなるだろう」

 

 

 6月

  鉄道省が女子車掌を初採用

 

  NHKが国際放送を開始

 

 英独海軍協定調印(イギリスがドイツ海軍45パーセント枠を認める)

 

 テムズ川沿いの神籬木工細工店

 戦雲が高まっているのか、

 木工細工だけでなく、幸幣の売れ行きが増していた。

 日本人たち

 「イギリスの45パーセント枠制限か。妥協の範囲なのか?」

 「さぁね。どちらにせよ。英仏伊ストレーザ協定は崩壊」

 「しかし、ヒットラーは制限枠を守る気なさそうだし」

 「イギリスは、ドイツの再軍備に耐えられなくなれば、軍縮条約も破棄だろうね」

 「日本はどうするって?」

 「取り敢えず、兵器弾薬の武器輸出で、お茶を濁すらしいよ」

 「相変わらず、昼行灯」

 「海外領地を増やしてるし。そうでもなかろう」

 「まぁ 中南米は思い切ってるけどな」

 「実は北欧道の方が面積が広い」

 「あそこは、守れるのかね。何回かいったが夜寝るのが怖い」

 「俺もそう思った」

 

 

  

 7月

 船橋・千葉間省線の電化完成(東京・千葉間全通)

 車体の一つがガラス繊維で作られていた。

 関係者たち

 「ガラス繊維も、なかなか、いいじゃないか」

 「ガラスは、まぁ 悪くないですよ」

 「神籬は、炭素も研究してると聞いたが」

 「炭素は一度、炭化させて使うほうがいいようですが、どうにもこうにも・・・」

 「なんだ。上手くいってないのか」

 「ていうか。泣きたくなるほど燃料使いそうなんで」

 「そりゃ 却下だ」

 「ですよねぇ・・・」

 

 

 

  フランス人民戦線結成

 

 

 燃料重視政策で艦隊決戦思想が捨てさせられた結果が、ディーゼル機関への移行だった。

 55口径150mm砲は、艦首2基を背負式。艦尾2基を背負い式にしており、

 その主砲配置から駆逐艦型巡洋艦と呼ばれるようになった。

 速度は軒並み30ktに低下していく、

   川内型軽巡洋艦

     排水量5195t/常備5595t

     全長162.15m×全幅14.17m×吃水4.80m

     ディーゼル機関2500馬力20基 50000馬力

     速力30kt  15kt/15000海里

     乗員440名

      60口径150mm砲4基   83口径88mm砲4基   37mm砲2基

      61cm連装魚雷発射管2基4門  93式機雷56個

    航空機2機

       球磨、多摩、北上、大井、木曾。

       長良、五十鈴、名取、由良、鬼怒、阿武隈。

       川内、神通、那珂

 これら軽巡洋艦の改装で関わっていたのがドイツ工業界で、

 再軍備したドイツ海軍は、長良、五十鈴、名取、由良、鬼怒、阿武隈。川内、神通、那珂の購入を日本に打診し、日本側は承認してしまう。

 そして、戦車輸送可能な30000t級輸送船に10t級89式(1号)戦車と

 昨年生産が始まったばかりの15t級95式(2号)戦車を積み込み、ドイツへ向けて出港していく、

 堤防の将校たち

 「輸出するのは軍縮外の戦車と飛行機だったんじゃないのか」

 「結局、航空機はエンジンと部品だけになったし」

 「共有が多いのと、借りが多いのと戦略的なにか」

 「戦略的なにか、ねぇ」

 「それ、軍縮で縛られた軽巡を輸出できるより上の戦略?」

 「人造石油絡みだけど」

 「「「・・・・」」」 憮然

 「あと、軽巡を輸出するとイギリスが軍縮から脱退するかもしれないって、戦略もあるらしい」

 「軍縮は日本有利と聞いたがな」

 「新しい軍艦を建造したがってる勢力もいるから・・・」

 「戦車は、どのくらい輸出するの?」

 「たぶん、15t級95式戦車が増えると思うがドイツが買えるだけ」

 「あと、ドイツが開発してるっていう新型戦車も日本で生産すると思うから売ると思う」

 「ドイツも金あるな」

 「金じゃなくて人造石油だって」

 「つか、なんで人造石油のための帝国海軍が犠牲になるんだよ!」

 

 

 

 アメリカ合衆国

 大恐慌下のアメリカ人は、明日の仕事と糧をどうしようか、だった。

 しかし、日本の中南米進出を大々的に警告する紙面が刷られ、

 そのアメリカ人を警戒させてしまう。

 その警戒が形として現れたのが、B17爆撃機の原型機だった。

  自重16386kg/総重量25t〜29t

  全長22.6m×全幅31.6m

  1200馬力4基

  最大速度426km/h   最大航続距離5800km   爆弾2722kg搭載時3219km

  乗員10名

  12.7mmM2機関銃13丁、爆弾2720kg〜4900kg

 アメリカ軍将校たち

 「これが編隊を組んで、中南米諸国を爆撃するわけか」

 「可能性は高いけどね」

 「むしろ、朝鮮半島から飛び立って、日本本土を爆撃すると思うよ」

 「いきなり、日本本土爆撃か」

 「しかし、朝鮮半島は中立政策を執らせる方針もあるらしいけど」

 「まぁ 米英ソ3カ国の足並みを揃わせるなんて考えないほうがいいか」

 「フィリピンからでも日本爆撃できる」

 「問題は機体の値段が高いということだけどね」

 そう、大恐慌下のアメリカで量産可能なのは双発B18爆撃機で、4発のB17爆撃機でなかった。

 「「「・・・・・」」」 ため息

 

  

 8月

  警視庁で無線自動車が登場

 

  国体明徴声明発表

 

 

 タイ王国

 東北部コーラート台地は海抜200mで、15万5000kmで雨が少なく、水捌けが悪かった。

 貧しい地域だったが、日本の開発投資が始まると運河が建設され、水路と灌漑設備が整備されていく、

 そして、生産性の高い作物が作られていくと徐々に豊かな大地へと変貌し、居住者が増えていった。

 王族や有力者は、新天地の利権に組み込まれようと、神籬との関係を強めていた。

 端的に言うと貸ビル10棟建てれば1棟は取り分になるため、悪くない投資になっていた。

 

 イギリス領マレー国境

 タイ王国は、日本製の戦闘機100機と10個師団に相当する武器弾薬を得ることができた。

 対価は、タイ王国でマレーに面した海岸線10km。奥行40kmの細長い地域が日本領 熊襲(400ku)となることが決まり、

 イギリス領と利害対立することになった。

 そして、タイ王国は、10個師団相当の武器弾薬によって、独立が確実なものとなっていく、

 これが数年前なら、まだ、朝鮮半島投資は少なく、米英の反日感情は限界を超えたかもしれない、

 しかし、朝鮮半島は捨てがたいほどの巨大利権になっており、ユダヤ資本の避難地と目されていた。

 

 第16師団(京都→熊襲) 日本軍将校たち

 「やれやれ、アメリカに引き続き、イギリスとも事を構えることになったか」

 「まぁ どうせ日本に渡すなら、タイ王国の防波堤ってことでしょう」

 「どうせなら、インド洋に面した領地が良かった」

 「プーケット島がいいといったが、反対された」

 「なんで?」

 「タイ国民感情だよ」

 「しかし、よく金が続くもんだ」

 「続くよ。お金持ちが下克上に耐えられる限りね」

 「耐えてんだ」

 「お金持ちは、自分以上のお金持ちが現れることを嫌う」

 「それだけじゃない。新興勢力に、朝鮮半島利権と南満州鉄道利権を潰され」

 「新興勢力の中南米利権だから、かなり、ヤバいけどね」

 「その最大手が神籬だろう」

 「あそこは鉄鋼業で弱いが、伝統格式。人材と資金力で日本最強財閥だと思うよ」

 「どちらにせよ。ポッと出の田舎者2人にここまで押し切られたら旧財閥も怒るわな」

 「そして、ここも神籬主導か」

 「まぁ あるものと言ったら開発するまで土地と森くらいのものだからね」

 「だけど、神籬の本当の狙いは、ここじゃないよ」

 「そうなの?」

 「中東油田らしい。ここは、その中継基地だそうだ」

 「なに? 話しは進んでるの?」

 「人脈は繋いだらしいよ」

 「「「「・・・・・」」」」

 

  

 9月 

  ナチス・ドイツにおいてニュルンベルク法制定(ユダヤ人公民権停止・ドイツ人との通婚禁止)

 

  ハーケンクロイツ旗がドイツの国旗とされる。

 

 

 

 ベネズエラは1811年から続く、独立と内戦と、ヌエバ・グラナダとの連合と分離、

 再度のコロンビア(旧ヌエバ・グラナダ)との統合と1931年の分裂でベネズエラの国土が形成されてしまう。

 その後も政治的混乱は続き、軍事独裁とクーデターが繰り返され、

 1908年、フアン・ビセンテ・ゴメス将軍の軍事独裁政権となった。

 ベネズエラがアメリカ資本の浸透を受けたのは、1914年、マラカイボで油田が発見されてからで、

 大国アメリカと石油メジャーの侵食により、ベネズエラの独立は危ぶまれていた。

 ベネズエラが反米となったのは、新大陸国家として欧州から独立を勝ちといったにもかかわらず、

 最も成功したアメリカ合衆国が新大陸国家群を支配しようとしていたからだった。

 日米諜報戦の焦点になったのは、石油資源があるからで、

 日本から武器弾薬を購入して軍事的に自立するかで荒れていた。

 軍事自立は、軍事独立であり、軍事独立は政治独立であり。政治独立は、経済独立でもあった。

 カラカスでは、アメリ外務職員を含めアメリカの代理人数十人と、日本の代理人数人が何者かによって殺されていた。

 深夜のカラカス

 数人の男たちが1人の男を路地裏に押し込み、

 反撃もさせないうちに腹を刺され、翌日には死体となってしまう。

 アメリカ大使館

 「また、我が国の代理人が殺された」

 「どうも、我々は、敵を見つけるのが下手で、敵は敵を見つけるのが上手いようだ」

 「なぜだろうな。いくら金があっても足りない」

 「日本人は複雑な情報戦が苦手だったはずだが」

 「我々が買収した人間が、1ヶ月もしないうちに排斥されては、何もできない」

 「もっと金を使って、日本の代理人を倒していくしかない」

 「「「「・・・・・」」」」 ため息

  

 

 10月

 イタリアがエチオピアへ侵攻開始(第二次エチオピア戦争)

 国際連盟、イギリス、フランス、日本がイタリアのエチオピア侵攻に対し、

 唯一の黒人独立国家を存続させるべきと声明し経済制裁を開始。

 ジュネーブ 国際連盟

 日本人たち

 「結局、声明だけか。実力行使無しは、説得力ないだろう」

 「というより、取引少ないですから」

 「最近、増えたと聞いていたが」

 「ああ、神籬ですよ。木工と衣類で圧倒的みたいですからね」

 「少しは堪えてくれたらいいがね」

 「だけど、一国でも反対すれば反対だし」

 「国際連盟は、もっと強化しないとダメなんじゃないかな」

 「ていうか、イタリアを怒らせてまで、エチオピアを守っても、得るところが少なすぎる」

 「それは言える」

 「せめてエチオピアに港があれば、もっと、武器弾薬を供給できたのにな・・・」

 エチオピア軍は、兵力35万を集めたものの、近代兵器はほとんど持ち合わせておらず、

 旧式火砲200門、エリコン20mm機関砲やヴィッカース重機関銃など対空砲50門と、

 第一次世界大戦で使用されたFIAT3000軽戦車をごく少数を保有していた。

 そこに日本が空輸した機関砲50丁。小銃2500丁、銃弾100000発が加算される。

 しかし、イタリア軍は、将兵20万、マシンガン6000丁、火砲700門、豆戦車150両、航空機150機で、

 イタリア軍は、兵力数はともかく、火器で圧倒的で、

 エチオピア軍に勝ち目のない戦いだった。

 

 

 

  大阪市営地下鉄御堂筋線の梅田駅本駅が開業(30日には心斎橋駅―難波駅間が開業)

 

  ナチス・ドイツが国際連盟を脱退

 

  96式戦闘機  (三菱重工の堀越二郎)、

   自重1075kg / 全備重1500kg

   全長7.71m×全幅11.00m

   空冷460馬力  速度460km/h  航続距離1200km

   7.92mm機銃×2   30kg爆弾×2 / 50kg爆弾×1 

 

 厚木飛行場

 木・ガラス繊維製96式艦上戦闘機 VS 全金属性96式艦上戦闘機

 戦闘機2機が爆音を立てながら空中を舞い、

 神籬が試作した96式戦闘機が金属製96式戦闘機の背後に付いた。

 海軍将校たちは、呆然と空を見上げ、うなだれた。

 雷に打たれて15年。

 少年たちは30代の青年となり、木工12ギルド首長で、膨大な外資収入力を有していた。

 とはいえ、若輩の二人は、年齢相応に将官たちの半歩以上、後ろに控えて歩いた。

 『ガラス繊維の生産を軌道に乗せたほうがいいか』

 『それとも木工細工師の多いバルサ材がいいのか』

 『神籬独占のガラス繊維か。集票基盤の木工12ギルドか。てところだね』

 『なんにしてもバルサ材は、熱帯地域の樹木だから、日本じゃ生産が・・・』

 『エゾマツと樺なら手に入りやすくて、いいんだけどねぇ』

 『ケヤキ、ヒノキ、クルミじゃ勝てそうにないしな』

 『『んん・・・・』』

 『バルサ材を薄いアルミでサンドイッチする方法もあるけど』

 『むしろ、ガラス繊維でサンドイッチしたい』

 『だけど、ガラス繊維工場の増築費を言うと、スゲェ睨むからな』

 『これ以上は、神籬に金を取られたくないって、感じ』

 『かもね・・・』

 「あ、大佐。そろそろ。限界です」

 「えっ! あ、そうか。少尉。2機とも降ろさせろ」

 「やはり、木製は弱いのか」

 「大佐。弱いのは木材じゃなく。接着剤ですよ」

 「接着剤か・・・」

 「接着剤は重工側の要請でして、エポキシ樹脂系、フェノール系接着剤、カゼイン系接着剤を検討してますが」

 「いまのところ戦闘機に向きません」

 「宮大工の技法で、地覆、貫、腰貫、内法貫、頭貫を多用すればいいようですが」

 「駄目だ。今回は、宮大工の手法でなく、工業木製的な見地から試験したい」

 「輸送機と偵察機は、機動が少ないので工業木製的な作りでも長持ちしますよ」

 「そうか・・・」

 「少将。次は・・・」

 「わかったわかった。97式は、宮大工の手法でいいよ」

 「それと、ガラス繊維は、増やせそうか?」

 「ガラス繊維を増やすなら資本を増やしてもらわないと」

 「あと、加工技術は年月がかかりますがね」

 「「「・・・・・」」」 ぶっすぅ〜

 神籬社は、96式艦上戦闘機の開発で、競合する金属製戦闘機を退けた。

 

  96式陸上攻撃機

   全長16.45m×25m×全高3.68m  翼面積75m

   自重4800kg / 全備重7700kg

   800馬力×2基  最高速度350km/h  航続距離4000km

   7.92機銃×3  1000kg

 

 関係者たち

 「やれやれ、結局、木製か」

 「アルミと重量がほとんど変わらないなら木製が有利だからね」

 「それにアルミや鉄をエンジンや主脚に集中できる方が、たくさん製造できる」

 「それより、水冷でよかったのかね」

 「ユンカース・ユモ210。BMW VI。ダイムラー・ベンツDB600は製造できるよ」

 「ガラス繊維は増えてるようだけど」

 「輸出用でガラス繊維を使わないらしいからいろいろあるみたいよ」

 「二線級資材なのに?」

 「国外で知られていないなら、大きなアドバンテージだろうが」

  

 

 11月

  汪兆銘狙撃事件

 

  国民政府が幣制改革を実施

 

 

 中東諸国は、第一次世界大戦中の1916年、

 イギリス、フランス、ロシアの間で結ばれたオスマントルコ帝国分割協定を元に保護国化していた。

 イギリスの承認なく自国領の変更は認められず、諸外国との外交も認められていない、

 対し、イギリスは海上からの侵攻に対して保護し、陸上からの攻撃に対し支援するもので、

 中東諸国は、自由な外交を展開することもできず、政治外交軍事で保護国扱いとなっていた。

 神籬は、そういったイギリスの間接支配の強い中東に秘密裏に進出していた。

 神籬を隠れ蓑にした日本の代理人は、中東諸国と交渉し、

 この交渉が成立すれば、その国は10個師団分の装備が得られ、軍事的な独立だけでなく、

 隣国に対し、圧倒的な優位性を得られた。

 そして、中東で一カ国でも取引に応じれば連鎖的に交渉が成立していくかに思われた。

 イギリスは、中東の海岸線を監視していたが、大恐慌にあってモラルが低下し、

 まんべんなく監視するには兵力が少なすぎた。

 対し、日本外務省は、イギリス海軍と陸軍の隙を突き、中東諸国の代理人と接触していた。

 外務省

 「アメリカとイギリスの不況は、戦争を望んでのことじゃないのか」

 「大恐慌とデフレは利権掌握のつもりだろうが、利権を買うまで時間差がある」

 「上手くやれば、突け入れるはず」

 「中東の代理人は、本当に信用できるのか? イギリスのカウンタースパイじゃないだろうな」

 「こちらも白人の協力者を得て、判断している」

 「そいつ本当に信用できるの?」

 「イギリスは失業率が20パーセントを超え、人を雇いやすいし」

 「白人系ジプシーのイェニシェも金次第」

 「しかし、情報工作費がよく続くな」

 「神籬はお金持ちだし、ほかの財閥より情報の価値がわかってる」

 「問題は、中東が正統性があって反英組織を上手く作れるか、だろう」

 「とにかく、武器を渡せば、反英勢力は動き出すだろう」

 「賭けだな」

 

   

 

 12月

  第二次ロンドン海軍軍縮会議開催 

 

  ダグラスDC3初飛行

  

  中華民国で冀察政務委員会設置

 

  第68議会召集

 

 ガラス繊維の引っ張り強度は鉄鋼の10分の1。

 それでも、コンクリートだけの引っ張り強度より強く、

 繊維構造を工夫すれば引っ張り強度を数倍に強めることもできた。

 ガラス繊維と鉄筋を入り組ませた枠にセメントを流し込んでいく、

 やや薄めのコンクリートは、その数倍の厚みの鉄筋コンクリートより強靭だった。

 そして、重要なのは薄いことで得られる軽量化で、

 その分、重量を分散させ、高く積み上げることができた。

 神籬の社員たち

 「木工会社に入ったと思ったらガラス会社で、今じゃゼネコン仕事か」

 「木を使うと森が削られるからね」

 「それに朝鮮半島に爆撃部隊が配置されるだろうから、燃やせない街を建設しないと」

 「しかし、でかい貸ビルだな」

 「朝鮮半島開発で、アメリカに高層ビルの作り方を教わったようなものだからね」

 「それに、日本は狭いからどうしても上か、下に伸ばしていかないと」

 「日本は地震が多いが大丈夫なんだろうな」

 「構造的に朝鮮半島で建設してるビルより丈夫なはず」

 「総ガラス繊維なら、数倍の高さにできそうだけどな」

 「まぁ それは生産量が増えてガラス繊維が安くならないと無理だろう」

 その区画は、数十倍の床面積の貸ビルとなり、

 元の住人たちは元の家の数倍の床面積フロアに住むことができた。

 日本の土木建設が世界屈指になると、

 戦争に備え、基幹産業を爆撃から守るための建設計画も進められていく、

 

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 木仙一族

   仙堂春和(29歳) × 山城美奈(25歳)   一樹(7)  智樹(3)  加賀美(♀)

   角浦秋和(29歳) × 日向奈美(24歳)   青葉(7)  芳樹(3)  冬樹(♂)

 

 

 近衛師団

 第01師団(東京)   第02師団(仙台)   第03師団(名古屋)  第04師団(大阪)  

 第05師団(広島)   第06師団(熊本)   第07師団(北海道)  第08師団(弘前)

 第09師団(金沢)   第10師団(姫路)  第11師団(善通寺)  第12師団(北欧道)  

 第14師団(宇都宮) 第16師団(熊襲)  第19師団(大連)   第20師団(任那)

 

 1926年 巨済島(400ku) 済州島(1845ku) 鬱陵島(72.82ku)

 1926年 大連州(3462ku)

 1930年 任那州 フォンセカ湾 ニカラグア領地コシグイナ(400ku)

 1932年 任那州 フォンセカ湾(1200ku) 4カ国不戦条約により拡大

             ニカラグア(400ku)+ホンジュラス(400ku)+エルサルバドル(400ku)

 1932年 北欧道 カレリア地峡+フィンランド湾諸島 (6000ku)

             スールサーリ島(21ku)、ラヴァンサーリ、大・小チュテルサーリ島他

 1934年 任那州 中米7カ国不戦協定調印 (2400ku)

             フォンセカ湾(1200ku)  旧ニカラグア・ホンジュラス・エルサルバドル領

             旧コスタリカ領 ココ(瓜生)島 (46.6ku)

             ブリカ(中ノ鳥)半島 (753.6ku)  旧コスタリカ領(353.4ku)+旧パナマ領(400ku)

             旧グアテマラ(沖ノ浜)領(400ku)

       任那。ニカラグア、ホンジュラス、エルサルバドル。コスタリカ、グアテマラ、パナマ、

 1935年 熊襲市 (400ku)  旧タイ王国領対マレー国境

 

 

 

 日本 外地派遣艦隊

   16750t級巡洋艦 生駒

     11300t級重巡洋艦 妙高、那智、足柄、羽黒   5195t級軽巡洋艦 球磨  多摩  北上  大井  木曾。

 

   17636t級重巡洋艦 鞍馬

     11300t級巡洋艦 高雄、愛宕、摩耶、鳥海    5195t級軽巡洋艦 長良  五十鈴  名取  由良  鬼怒

 

   17636t級重巡洋艦 伊吹

     11300t級巡洋艦 黒姫、蔵王、吾妻、穂高    5195t級軽巡洋艦 川内  神通  那珂  阿武隈

  外地派遣艦隊の軽巡8隻が売却されてしまいました (笑

 

 

       

 

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第14話 1934年 『中南米7ヵ国不戦協定』
第15話 1935年 『東南アジアの熊襲』
第16話 1936年 『2・26事件と、アンデスの蝦夷』