第20話 1940年 『国際連盟本部東京と東京オリンピック』
1月
ソビエト空軍のI15、I153、I16、SB爆撃機3800機がフィンランド各都市を空襲していた。
フィンランド空軍は92式戦闘機100機を森林に潜ませ、
必要に応じて出撃させ、ソビエトの空襲部隊を迎撃させていた。
地上では、11t級BT2、11.5級BT5、13.8t級BT7、9.4t級T26戦車6541両と、
10t級88式(1号)戦車500両が撃ち合い、
白色の軍服を着たソビエト軍100万とフィンランド軍25万が白銀に潜んで銃口を向け合った。
北欧道(6000ku)
日本軍将校がカレリア地域の地図を囲む、
フィンランド軍将校もオブザーバーでいたが、通信能力の高さで、
迎撃戦の戦略的な指揮系統は、崩れることなく残っていた。
「ソビエト軍は、ラドガ湖を迂回して北欧道を包囲したがってるようだ」
「北欧道が孤立したら維持は困難になるからな」
「スールサーリ島の要塞化も進めておいたほうがいいですね」
「北欧道はフィンランド人がノービザで出入国できることになってるし、難民も増えてる」
「いくら要塞化しても潜入に弱いから、防衛も限界があるがな・・・」
「少将。不時着したツポレフSB爆撃機を搬入しました」
「そうか。掘り出し物になるかな」
ツポレフSB爆撃機
全長12.57m×全幅20.33m×全高3.60m 翼面積56.7u
自重4768kg / 運用時重量6308kg / 最大離陸重量7880kg
クリーモフ液冷V12型エンジン 960馬力2基
速度450km/h 航続距離2300km
7.62mmShKAS機関銃×4
100kg×6 / 50kg×6 + 250kg×2
戦闘で損傷した航空機や戦車などが集められ、北欧道の工場で修復され、
塔と獅子の紋章が描かれ、フィンランド軍へと引き渡された。
修復された中には、旧ソビエト軍の兵器と武器が含まれていた。
「なかなか、かっこいい双発爆撃機だな」
「それより寒冷地対策だけは、日本に報告して取り入れて貰わないと」
阿部内閣総辞職
静岡市で大火(焼失5121戸、死亡4名)
米内内閣成立
欧州戦争開戦で陸軍の要求が強まる。
1師団戦車50両体制(総数1050両)から1師団100両体制(総数2100両)への移行が進む。
浅間丸事件 。房総沖で英国軍艦が浅間丸を臨検し、ドイツ船客21名を引致
西成線列車脱線火災事故。
イラク、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クェート、カタールで武装蜂起が起こり、
イギリス軍と交戦が始まる。
武器弾薬はルベルM1886ライフル、リー・エンフィールド、Gew98、モシン・ナガンM1891/30、
一線を退こうとしていた銃器を日本が安値で買い漁ったもので、
日本に輸出されたモノだと気づいた。
イギリス ダウニング街10番地
「やはり、鋳造番号は、日本に密輸された武器です」
「日本が中東の反英勢力に武器弾薬を引き渡したのか」
「どうする」
「日本と開戦しますか?」
「ドイツと戦争中に、そんな余裕はない」
「そもそも半島の戦力は水雷戦隊と潜水艦隊が1個。陸軍も2個師団もないだろう」
「むしろ、東南アジアの軍を本土に戻したいほどですが」
「日本が朝鮮半島を攻撃すれば、米英ソと日独伊の戦争になって好都合では?」
「こちらが先に攻撃を仕掛けた場合、同盟条約は発動しない」
「それに日本がそんな手に乗るものか」
「・・・・」
「日本に経済制裁をかけ、日本から攻撃させるべきでは?」
「日本が中国に侵攻すればいいが、日本は満州と朝鮮から引いてる」
「そして、城塞都市が完成するまで、朝鮮半島権益を守らねばならん」
「朝鮮半島権益さえ守れれば、日本の生殺与奪権は、こちらのものだ」
「城塞都市はいつ完成しそうですかな」
「相対的なものですからね」
「城塞都市の完成だけなら、あと20年・・・」
「「「「「・・・・・」」」」」 ため息
イギリスで対日批判が高まるがドイツと交戦中であり、日本と戦争するわけにも行かず、
しかも中国朝鮮権益を失うわけにいかないことから遺憾の意を述べるにとどまっていく、
2月
斎藤隆夫の反軍演説。
日本、皇紀2600年(紀元2600年)祝典。阿部定を含む多数の囚人が恩赦を受ける。
ノルウェー領海でイギリスとドイツが軍事衝突(アルトマルク号事件)
Martin KamenとSam Rubenが炭素14を発見。
バクダットでイラク人が歓声を上げる。
イギリス軍は撤退し、生き残りも降伏していく、
イギリスの利権は奪われ、日本と交渉が始まる。
アラビア海
20636t級重巡洋艦 伊吹
11300t級巡洋艦 黒姫、蔵王、吾妻、穂高 5195t級軽巡洋艦 木曾。
輸送船50隻
19750t級巡洋艦 伊吹がイギリスの4850t級巡洋艦ダナエ、ドラゴンと睨み合う。
イギリス軍基地は既に中東になく、
伊吹の254mm3連装2基は、戦艦に劣るもののイギリス巡洋艦2隻を圧倒していた。
伊吹 艦橋
「外務大臣。イラクに続き、イランも独立を果たしました」
「まるで、火事場泥棒だな」
「本当に400kuを貰えるのだろうか」
「そういう約束で武器弾薬を先に引き渡した。残りの戦車も引き渡さないとな」
「これで、日本に石油が入ってくるんですね」
「だが途上の東南アジアはイギリス、オランダ、アメリカに押さえられている」
「東南アジアに武器弾薬を引き渡さないので?」
「そんな金は、もうない」
4850t級巡洋艦ダナエ
艦橋
「伊吹の主砲が、3連装2基になってるぞ」
「口径を小さくしたようです」
「たぶん、230mmから260mm砲くらいだろうか」
「ドイツと同じ、52口径282mm砲なのでは?」
「それよりも小さく見えるのだが。イギリスが条約を破棄した途端に日本は主砲塔を換装か・・・」
「たぶん、準備していたのでしょう」
「305mm砲は、対戦艦で過小だし。対巡洋艦で過剰」
「250mm砲クラスなら対巡洋艦クラスに丁度いいと考えたのでしょう」
「たしかに脅威だな」
「イギリス本土に伊吹の主砲3連装2基に変更と」
「しかし、変ですね」
「普通なら1910年前後の前弩級のオンボロ艦の主砲を換装するなんてことはしないはず」
「地球の裏側まで、派遣するぐらいだ。それだけ、大規模な改装をしたのだろう」
中国 上海港
20380t級デラウェア型(1910年 305mm砲連装5基 21kt)戦艦デラウェア
21825t級フロリダ型(1911年 305mm砲連装5基 21kt)戦艦フロリダ、ユタ
27243t級ワイオミング型戦艦(1912年 305mm砲連装6基 21kt)戦艦ワイオミング、アーカンソー
米中海軍将校が戦艦に乗り合わせて引渡し後の運用を調整していた。
中国軍閥の多くは、海の男から程遠く、漁民から徴兵されてしまう。
その上、アメリカ海軍将兵から訓練されたためか、
軍閥師弟から切り離されやすく、国軍としての意識に目覚めやすかった。
蒋介石の中国統一でハルピン、北京、上海、香港を結ぶ大動脈の支配は必須だった。
そして、米英ソにとっても中国大陸の大動脈は、朝鮮半島利権の拡大で必要不可欠だった。
蒋介石は、米英ソをそれほど信用はしていなかったものの、
日本に遼東半島を譲渡し、資源を輸出することで、40個師団相当の近代的な陸軍を保有していた。
10t級89式戦車は、それほど強力な戦車とは言えなかったものの、
戦車2000両は、欧米列強に対する警戒心を薄れさせ、
欧米列強を利用した開発を押し進めさせる動機にもなった。
「これだけの戦車があれば欧米列強の租界はいつでも奪い返せるある」
「しかし、極東ソビエト軍は危険ある」
「半島の米英軍は、ソビエトの満州侵攻の際、半島のソビエト軍を降し、満州でソビエトと戦うつもりの軍隊ある」
「イギリスは、力を失ってるある」
「だから好都合ある」
「アメリカとイギリスに近代化の発注するある」
「どうせ、過労死するのは、中国民衆ある」
「反発で共産党が大きく強くなると困るある」
「とにかく、利権の蜜を用意して、欧米列強をたからせるある」
「力さえつけたら、白人どもは叩き出せるある」
「アメリカ、イギリスは強いある」
「日本とソビエトとアメリカとイギリスを戦争させて、疲弊させればいいある」
「漁夫の利ある。ざまぁみろある」
3月
大日本航空
横浜〜サイパン〜パラオ〜トラック〜ポナペ〜マジェロ
定期航空路を開始
仏ダラディエ内閣辞職 レノー内閣成立
日本・中東協定
亜羅(あら)州 中東アラビア海 4039ku
武山(むさん)半島 ムサンダル半島 800ku 旧アラブ首長国連邦・オマーン
和蔵(わくら)湾 アル・ワクラ湾 800ku 旧サウジアラビア・カタール
武矢(ぶや)島 ブビヤン島 863ku 旧統合イラク・クェート
佳(けしま)島諸島 1576ku 旧イラン
佳(けしま)島 ゲシュム島 1491ku
良久(らく)島 ラーク島 49ku
辺賀(へんが)島 ヘンガム島 36.6ku
この協定により中東は武器弾薬を得て独立し、
日本は領土と、石油供給源を得てしまう。
イランはソビエト軍の侵攻から国を守るため40個師団相当の武器弾薬が必要になり、
相応する領土が引き渡され、
イラクはクェートを吸収しつつ軍事的な独立を果たした。
日本にとっては、92式戦闘機1000機。89式(1号)戦車500両。100個師団相当の取引だったものの
中東諸国は独立を果たした。
第15師団が分散配備され、後備工作師団4個が分散上陸する。
日本陸軍将校たちが荒涼とした大地にたった。
「何もないな」
「だがやりやすいだろう」
「そうかもしれんが・・・・」
日本の中東進出は、アメリカとイギリスを過激に反応させた。
中東独立を中東騒乱とマスコミを通じて騒ぎ、
イギリスとアメリカはスエズ運河封鎖、パナマ運河の対日封鎖を行ったが、
日本もアラビア海峡封鎖、対馬海峡封鎖を行った。
どちらも対岸含めた海峡を支配していることから可能になったことで、
一時は、日本とイギリス、アメリカの戦争かと思われたが幾つかの勢力が働きかけていく、
戦艦に戦艦をぶつけるなど、愚策に過ぎず、
日本の戦艦・巡洋艦群は外洋に出撃し、いつでも通商破壊をする動きを見せていた。
対馬海峡
戦艦 ネバダ、オクラホマ。軽巡4隻。
駆逐艦 吹雪、白雪、初雪、深雪、叢雲、東雲、薄雲、白雲、磯波
アメリカの戦艦と日本の駆逐艦隊が睨み合っていた。
ネバダ 艦橋
「駆逐艦部隊か」
「表面的には大砲が大きい方がいいが・・・」
「艦を近づけての鍔迫り合いで、駆逐艦と相手に戦って損害を出せば割損だな」
「日本は戦争する気で、艦隊を展開させてるようです」
「じゃ 勝ち目はないな」
「半島の開発は遅れ気味ですし、戦力は、日本の50分の1ですからね」
「シミュレーションでは、半島は半年も持ちません」
「フィリピンも1年、持ち堪えられないと・・・」
「太平洋艦隊を全部集めて、日本を艦砲射撃するしかないか」
「艦砲射撃で砲弾を半分も使えば帰還できないかもしれませんね」
「シミュレーションでは、壊滅したこともあります・・・」
艦隊上空を零戦と97式艦攻が編隊を組んで通過していく、
制空権を奪われていると、アメリカ軍将兵も生きた心地がせず、
ソナーも潜水艦の探知をしており、
この場から引き上げたいという気持ちが強くなっていく、
「司令。大統領からです」
電文が司令官に渡され、士官たちの視線も集まる。
「・・・撤退する」
「「「「「・・・・・・」」」」」
イギリスはスエズ運河。アメリカはパナマ運河の封鎖を解き、
日本も対馬海峡とアラビア海の封鎖を解いた。
わずか3日間の双方封鎖だったが、日米英の政治的判断で矛が収められた。
「ホッとしました」
「中東諸国の軍事独立と日本の領地会得」
「対日開戦の理由としてはあまりにも弱すぎる」
「この状態で開戦しても、1万人も死ねば反戦運動が起きて、戦争は終わる」
「確かにアメリカ国民は盛り上がらないでしょうね」
「それに元々 米英粗連合軍が朝鮮半島をとった時点で日本の生殺与奪権は得たようなものだ」
「つまり、じっくり年月をかけて半島の軍事基地を強化し」
「日本と中国を分断し、各個撃破するはずだったからな」
「欧州戦争が始まってる段階で日本と戦争することはないよ」
「もし、日本と戦うなら日本を完全に焼け野原にするくらいの状況に追い詰めないとな」
「それに中国で莫大な利権が入るそうだ」
「それをいま失うのは、惜しい」
4月
ドイツ軍がデンマーク王国・ノルウェー王国に侵攻(北欧侵攻)。デンマークが降伏。
イギリス ダウニング街10番地
どんっ!!!
「やっぱりだ」
「やっぱり日本に中東をやられたじゃないか」
「日本に領土を譲渡しないよう中東諸国に圧力をかけ、締め付けたら、逆に反発されて反英戦争」
「結果、イギリス駐留軍は中東諸国から叩き出され」
「日本がアラビア海に入り込み、残りの武器弾薬を渡した後、約束の領土を譲渡してもらうか・・・」
「まるで詰めチェスに引っかかった気分だな」
「日本に制裁すべきだ」
「しかし、中東は、遠い上に、あまり役に立つものが少ない」
「油田があるだろう」
「そりゃ 少しは発見されてるが、そんなに期待できるものなのか」
「我々の支配圏の中では、かなり有望だ」
「しかしだね。熊襲は難攻不落だし」
「タイ王国軍20万は、10個師団の装備を抱えて、周辺植民地の開放に関心を持ち始めている」
「対しビルマとマレーの戦力は合わせて20万だが、イギリス兵は4万人もいないし」
「大半の兵士であるビルマ人とマレー人は独立したがってるのだよ」
「どうせ、武器弾薬なんて続かない」
「熊襲は武器弾薬を製造する工場があるのだがな」
「「「「・・・・」」」」
アメリカ合衆国
白い家
大統領がテーブルに着くと、カラーコード戦争計画の報告書が乗せられている。
ホワイト(対内乱戦)、グレイ(対西インド諸島諸国戦)、オレンジ(対日本戦)
パープル計画(対中央アメリカ諸国およびロシア戦)、レッド(対イギリス・カナダ戦)
グリーン(対メキシコ戦)、ゴールド(対フランスおよびカリブ海のフランス領戦)、
ブラック(対ドイツ戦)、インディゴ(対アイスランド戦)、ブラウン(対フィリピン戦)、
イエロー(対中国戦)、バイオレット(対中国内乱戦)、
オリーブ(対スペイン戦)、シルバー(対イタリア戦)、エメラルド(対アイルランド戦)、
タン(対キューバ戦)、シトロン(対ブラジル戦)、レモン(対ポルトガル戦)、
ルビー(対インド戦)、スカーレット(対オーストラリア戦)、ガーネット(対ニュージーランド戦)
「日本に経済制裁しろ」
「そんなことすればせっかく進んでる朝鮮半島開発がストップしてしまいます」
「ユダヤ人の朝鮮半島への避難も始まってますし」
「あと東京オリンピックがありますし、この時期にアメリカが介入するのは・・・」
「我が国の建設業者を朝鮮半島に送ればいいだろう」
「利益は落ちますし。国内景気が良くなって、戦争がむつかしくなるかもしれません」
「それに我が国の建設業者を半島に送るということは、ソビエトも建設部隊を送れるということでして・・・」
「あとフィンランド戦で、日本の支援がなくなるとフィンランド降伏ということにもなりかねませんし」
「そうなったら、エストニアの日本租借地も・・・・」
「うぬぬぬぬ・・・」
「東南アジアの要塞化を急がせろ」
「いま、要塞化できる資本があるのはアメリカのみですが、不況下で予算が通るかどうか・・・」
「「「「・・・・・」」」」
フィンランド軍は善戦していた。
その多くは、日本から供給された10個師団相当の武器弾薬のおかげではあるが、
それも尽きかけていく、
それでも戦えていたのは、カレリア地峡が北欧道に封鎖され、戦線が限定されていたこと、
そして、北欧道が兵器を修復する工業力があったことだった。
フィンランド・ソビエト戦線
フィンランド軍将校と日本外交武官
「夏になれば持ちこたえられなくなるかもしれません」
「湿地帯はソビエト軍に調べられているのですか?」
「幾つかのルートは知られているはずです」
「厳しいですな」
「できれば、日本からソビエトに警告していただきたい」
「警告はしているよ」
「しかし、シベリア鉄道で運ばれた物資が北欧道を支えてるせいか、無視されている」
「「「「・・・・・」」」」
「アメリカとイギリスはなんと?」
「アメリカとイギリスも警告だけにとどまってるとか」
「中国・朝鮮半島利権の利権の方が大きいのか。ソビエトと戦争する力がないのか・・・」
「どちらにせよ。日本もソビエトに攻撃されない限りむつかしいですな」
「「「「・・・・・」」」」
ノルウェー 日本大使館
国印の押された証書が渡された。
「これは?」
「日本でフィンマルク県を50年間租借して頂きたい」
「しかし、いまノルウェーは、ドイツと交戦中のはず。こういった国際条約は認められないのでは?」
「ノルウェー民族の尊厳と権利を守りたいのです」
「アメリカとソビエトには承認させます」
「わかりました。ドイツ側と交渉してみましょう」
5月
ドイツ軍がオランダ王国・ベルギー王国・ルクセンブルク大公国・フランスに侵攻開始
英チェンバレン内閣総辞職 チャーチル挙国一致内閣成立
イギリスがアイスランドに侵攻
オランダがドイツに降伏
ベルギーがドイツに降伏
イギリス ダウニング街10番地
閣僚たちが国際情勢を囲み、様子を見ていた。
「中東諸国は、石油の輸出には応じるようだ」
「それだけは救いですな」
「逆に言うと、日本への石油輸送に手を出すなということでしょう」
「マズイな。日本が強国になってしまう」
「それどころか、我が国の存亡です」
扉が開いた。
「首相。アイスランドが、日本軍を駐留させるからイギリス軍は出て行けと言ってます」
「・・・・・」
巨大な飛行船2隻がアラビア海上空に現れ、物資を降ろしていく、
梛風(なぎかぜ) (LZ127グラーフ・ツェッペリン)
全長236.53m×直径30.48m
550馬力5基 128km/h
60000kg
梛雲(なぎくも) (LZ130グラーフ・ツェッペリンU世)
全長245m×41.2m
1200馬力4基 135km/h
105000kg
それ専用の輸送船も建造され、可能な限り貨物と目的地までの距離を近づけていた。
飛行船は、ある種の賭けで、壊れるまで、物資を空輸するのが仕事だった。
護衛の96式戦闘機が時折現れ、翼を振って、周囲を回っていく、
「いい調子じゃないか」
「壊れるまでは、大丈夫ですね」
「たぶん、最低1年は中東で運び屋をすることになりそうだ」
「今回は長いですな」
「4ヵ所あるし。初期に投資の大きさで、後の開発がスムーズに行くかがかかっている」
「しかし、思いっきりのいい海外投資ですな」
「いくら金をばら撒いても国内の下克上を押さえられるからだろう」
「この期に及んで、利権抗争ですか」
「外地で金を分けあってるから、南満州鉄道に近いな」
「もっとも、紙幣を分けあっても、神社仏閣で幸幣と交換すれば日本に紙幣が流れ込むし」
「日本国内の下克上は続く」
「もっとも中東の石油は、国民的な要件でもあるし、今のところ制約はなさそうだ」
日本がノルウェーからフィンマルク県を50年間租借したことを宣言。
アメリカとイギリスが日本のフィンマルク県の50年間の租借を承認。
ドイツが日本のフィンマルク県の50年間の租借を承認する。
6月
ルーズベルト大統領が国防力強化のため科学者動員令を発令
400の大学や研究機関から3万人の科学者がカーネギー研究所(ワシントン)に集められ、
レーダーやVT信管などの軍事技術の開発が始まる。
木戸幸一が内大臣として宮城に復帰
ドイツ空軍がパリを空襲
ドイツ軍がダンケルクを占領したが、抱囲されていた英仏軍の大半は脱出に成功(ダンケルクの戦い、ダイナモ作戦)
ドイツ軍が対フランス総攻撃を開始
ノルウェー
国王ホーコン7世が英国に亡命
国王がイギリスより対ドイツ抗戦中止を命令
イタリアが対イギリス・フランス宣戦布告
漠砂州
太陽高熱集光塔と反射鏡張りの東西に長い建築物が転々と建設され、
200kmの海岸線から内陸40kmは、土の色がリビアとエジプトと明らかに違う、緑化された大地が広がっていた。
東西に長い街並みが列を作り、日陰は、心地良いそよ風すら流れていた。
日本人たちがレバノン杉を植樹していた。
「土にこだわってるけど。本当に根付くのかね」
「神籬が生育法を工夫したらしい」
「それより、50年以内に100万本を植えるとか、正気とは思えん」
「日本人は木が好きだからな。それくらいやらないと増えないってことじゃないの」
「地球の裏側で砂漠なんだけどな」
「だから8万3000kuなんだろうけど」
「ムッソリーニは、土地を武器と交換したのを後悔するかもね」
「しかし、こうして住んでみると山が欲しくなるな」
「ピラミッド作った理由がわかるよ」
「1500m級の山を造ろうかって、いう計画もある」
「本当に?」
「ハニカム構造のガラス枠を作って砂が外に出ないようにして、溜まった砂を固めていくと山が出来上がり」
「砂嵐が山を作ってくれる」
「そりゃ 砂嵐は2000m〜5000mくらいには上がるけどさ」
「本当に粒の大きな砂は、数百メートルで、それを超えると埃みたいなものなんだが」
「まぁ 塵も積もれば山となる」
「サハラ砂漠は1000万kuで漠砂州の125倍で砂の厚みは200mから300mくらいある」
「砂嵐で10m分ずつの砂を掻き集めるだけで標高を1250mくらい上げられる」
「凄い机上の空論」
「あと、国境沿いにも凝固剤入りの水を撒くし」
「ハニカム構造のガラス繊維の枠を作って砂を集めて堡塁にして、掘りも作れる」
「上層部は、戦争中に出来るところまで、やりたがってたな」
「井戸を掘ってるのにか」
「岩盤まで届く縦穴を作っていたほうが後々便利だから漠砂州全体で500ヶ所作っておくみたいだ」
「銅管で水道と電話線を通してるだけだろう」
「標高に合わせて井戸を積み上げてるから、人員を取られるんじゃないのか」
「直径は20mくらいか」
「時々 枠を増築して蓋をするだけだが人員は割かれるだろうな」
「何するの?」
「あとから必要になっても困るからって、時々 作業用の部屋を作るって聞いたぞ」
「埋まっちゃうのに?」
「縦穴が頂上まで届くなら、埋まってもいいんだろう」
「しかし、砂上の楼閣だし、大型の建物は地滑りが怖くて作れない」
「だから粘土層を作って、500ヶ所に縦穴を作ってんじゃないの」
元は砂漠の一本道路をイタリア車が疾走し、イギリス車と行き交う。
イタリア車は、50mほど行き過ぎて止まり、バックした。
「よう、イギリス人。どうした?」
「エンストしたよ」
「イギリス車は、ボロだな」
「なんだと!」
「俺、整備工だから、直してやろうか」
「「「・・・・」」」
両軍の士官たちが手持ちのスコッチとワインを交換する。
「しかし、砂漠だったのに、こうも緑化が進むと驚きだな」
「ああ、我々も砂漠の緑化は考えなければならないが、ここまで本気でやられるとはな」
「ところで、イギリス人は中立国で何やってんだ」
「さぁな。少尉は中立国で何してる」
「スパゲッティを煮るのに水を貰いにな」
「「「「・・・・・」」」」 ため息
トブルク港を中心に城塞都市が建設され、
日本人の入植も増えていたが、社会基盤などはこれからだった。
輸送船から降ろされた追加の95式(2号)戦車が並べられていく、
第10師団
「イタリアがイギリスとフランスに宣戦布告って」
「おいおい、いったい全体、どういうつもりだ」
「今のところ北アフリカで交戦は、行われてませんが、国境はイタリア軍とイギリス軍が配置されてます」
「戦争に巻き込まれたくはないが・・・」
「師団長」
「イギリスが進撃したいから、軍を通過させろと」
「断る。と伝えとけ」
ルーズベルト大統領がイタリアの対応を「背中から刺すようだ (Stab in the Back)」と非難
ノルウェーがドイツに降伏
フランス政府がトゥールに移転
黒部ダム完成
インド洋
ドイツ艦隊がイギリスの護衛艦を撃沈すると、タンカーを拿捕していく、
11700t装甲艦アドミラル・シェーア。
5170t軽巡洋艦アウクスブルク (由良)、マクデブルク (鬼怒)、ブレスラウ (阿武隈)、
拿捕したタンカーから必要な物資を積み込むと、士官を乗せて本国へと帰還させる。
無事帰還できるかは運任せに近かった。
ブレスラウ (阿武隈) 艦橋
「索敵機より、通信」
「ディオネジャイロの南150kmで。巡洋戦艦ライオンを発見。15ktで南下中です」
「こっちを見つけたな」
「このままだと、15時間で会的します」
「骨董品の出る幕はないと思いたいが」
「ライオンは、2度ほど、機関を補修しているが本格的な改装でないと聞く」
「おんぼろでも、ライオンは26000t級で343mm砲8門。28ktが相手では勝てない」
アドミラル・シェーアの艦隊は、南へと撤収していく、
フランス軍がパリより撤退
ドイツ軍がパリ無血入城
フランス政府がボルドーに移転
イタリア軍がフランス領に侵入
朝鮮共和国 (21万6823ku)
同盟保障領 アメリカ12800ku。イギリス12800ku。ソビエト6400ku 合計32000ku
東京オリンピックを利用した船舶移動で世界中のユダヤ人が朝鮮半島へと移動する。
大戦の最中、東京オリンピックが成功したのも、
アメリカ、イギリス、ソビエトは、自国のユダヤ人を利用し、朝鮮共和国を間接統治することに決めたからで、
このパックス・オリンピックタイムと呼ばれた休戦状態は、ある種、作為的に起こされた期間と言えた。
ソウル
膨大な数のユダヤ人が降りると割り当てられた宿舎へと入っていく、
平均的な朝鮮人が住む家の5倍から10倍の広さがあり、
朝鮮の紙幣が一時金として渡され、特別待遇と言えた。
日本領 巨済島
日朝非公式会議
朝鮮王族の民族衣装を着た朝鮮人がふんぞり返っていた。
「朝鮮共和国は、世界最強のアメリカ。世界最大のソビエト。世界最高のイギリスと同盟を結んだ世界史上最強の外交戦略国家ニダ」
「日本は、平伏しながら、恭しく、朝鮮共和国と国交回復を嘆願し、国土の安堵を図るがいいニダ」
「いや、国内に反対が多いので」
「そんな馬鹿どもは力ずくで捩じ伏せるニダ。弾圧するニダ」
「あはははは、まさか」
「では、朝鮮共和国に戦争を仕掛けるといいニダ。日本は思い知らされるニダ」
「いやいや、日本は、朝鮮共和国に野心はありませんから」
「朝鮮半島を攻撃してくるなら、今ニダ。チャンスニダ。もう一度、日韓併合してみるニダ」
「あははは、まさか」
日本の工場で25t級4号戦車のライセンス生産が進められていた。
25t級1式(4号)戦車
全長7.02m (車体長5.89m) ×全幅2.88m×全高2.68m
速度 整地38km/h / 不整地16km/h 航続距離210km
24口径75mm砲 7.92 mm MG34機関銃×2
マイバッハ 300馬力
乗員5 名 (車長、射手、装填手、操縦手、通信手)
日本人たち
「随分と大型戦車だな。それに大きな大砲を積んだものだ」
「欧州では、それほど大型じゃないそうだ」
「日本は、公共事業が先で、戦車は後回しにされていたからな」
「それと、口径は伸ばすかもしれないらしい」
「そうなの?」
「32t級のT34戦車がそれだけ強いってことだろう」
「1式戦車を各師団に配備するのだって、難儀なんだが、欧州は化物か」
ソビエト軍がリトアニアに進駐開始
フランス、レノー内閣辞任、ペタン元帥が首相に就任
ペタン首相がドイツ軍に休戦提議
ソビエト軍がラトビア、エストニア(イダ-ヴィル県を除く)に進駐開始
フランス ド・ゴール将軍が自由フランスとしてロンドン放送で対ドイツ徹底抗戦を呼びかける
ドイツ・フランス休戦協定締結
フランス、オランダ、ベルギーを蹂躙したのは、突破口を切り拓いた3号戦車と、主力の2号戦車だった。
そして、フィンランド、エストニア、ノルウェーで起きたことが、フランス、オランダ、ベルギーで成し得なかったことがあり、
政治的な不決断として非難されたが、
別の意見においては、地政学的に、ありえない政治的決断であるという意見も現れた。
パリ
日本人たちがハーケンクロイツが翻るエッフェル塔を見上げていた。
「本当に占領してしまったんだな」
「占領される直前、ドイツ軍を全力で撃退して。ブルターニュ半島を日本の租借地にって意見も出たらしいよ」
「流石に直前じゃ無理だろう。開戦前じゃないと」
「あの戦車は?」
「フランス戦車だろう」
「11t級戦車550両。19t級戦車300両。30t級戦車80両を捕獲してるらしい」
「じゃ イギリスを落とせば、戦争は終わりか」
「日本政府はどうするって?」
「何もしないらしいよ」
「まぁ 海外地やオリンピックを考えたら戦争する気にもならないか」
「オリンピックはできるの?」
「各国とも特別船が出てるよ」
「戦争中だというのに・・・」
「とにかく、期間内だけでも安全に船を出したいらしい」
イタリア・フランス休戦協定締結
蒋介石の中華国民政府は、北京を首都に
満州軍閥、北京軍閥、上海軍閥、武漢軍閥、広州軍閥を内包する巨大中華国家を形成しつつあった。
権力基盤は、それぞれの軍閥から200人ずつ代議士を集めて議会を作り、
内閣もそれぞれの軍閥から均等に割り振っていった。
権力基盤は、磐石と言えないまでも、中華をひとつの国家としてまとめることには成功しつつあった。
もっとも最大の障害、毛沢東の共産軍は、内陸を中心に勢力を拡大していた。
蒋介石は、隣国の外交使節団と会っていた。
「国民軍は、朝鮮共和国に戦争しかけるといいニダ」
「いまなら国民軍は勝てるニダ。朝鮮半島を占領することができるニダ・・・・」
蒋介石は、黙したまま、部下に合図を送る。
バァーン バァーン バァーン バァーン
朝鮮共和国外交使節団全滅
ソビエト軍がルーマニア領に進駐
モンゴル人民共和国で新憲法公布
日本 租借地 フィンマルク県
日章旗がドイツ軍将兵の前に翻っていた。
租借地内は、ノルウェー軍が健在で、尊厳と権利を求めるノルウェー人が入国していた。
日本から数十人の日本人と、1個大隊が送られ、国境警備が始まる
日本人たち
「やれやれ、寒い場所をあてがわれたものだ」
「帰還したら出世できるんだろうな」
「たぶん、一律二階級上がるって聞いてる」
「それは嬉しい」
「まぁ 早々に辞めさせられそうだがな」
「「「「あはははは・・・」」」」
7月
フランス政府がヴィシーに移動
イギリス艦隊がアルジェリアのオラン港のフランス艦隊を撃滅
ヴィシーフランス政府がイギリスと国交断絶
フランスが占領されるとスイスが孤立してしまう。
仕方がなく、唯一交戦国でない大国に本部が移動してしまう。
本部は、木造建築世界最大の平安宮だった。
国際連盟 東京本部
日本人代表がため息をついた。
主要国家群が次々に抜け、機能が低下していた。
一応、加盟国は代表を送ってきていたが、寂しさは変わらない。
東京オリンピックは、主要国が交戦中であるにもかかわらず代表団を送り、
中立国の日本船が各国の代表チームを運んだ。
一つ一つの競技でカメラが監視する審判の下で、競技が続けられた。
アメリカ、イギリス、ソビエト、ドイツ、イタリアのカメラが回り、記者が記事を書き続けた。
特に交戦国どうしの競技は、緊張感が漂い、
日本軍将兵が国連の紋章を付け、何かあれば、乱闘を引き剥がせるよう準備していた。
観客たち
「もう、意地で、やってるって気がするな」
「スポーツの祭典は、大戦中でも継続するってことだろう」
「オリンピックの価値は、世界大戦を超えるって?」
「意地だな。意地・・・」
「いまは、意地でもフィルムや写真は残るし、記事も残る。後年、本物になるさ」
オリンピック開催中は、これといった戦闘が行われず、
オリンピックが終了すると、ドイツ空軍のイギリス本土空襲(バトル・オブ・ブリテン)が始まる。
後年、オリンピック休戦効果と言われたが、フランスが占領されたことから、偶然の空白とも言われた。
フランス
ルブラン大統領辞職 ヴィシー政権でペタン元帥が国家主席に選出(第三共和政終了)
ヒトラーが英国に和平を求める国会演説を行う
リトアニア、ラトビア、エストニアが独立した「社会主義共和国」であると宣言
第2次近衛内閣成立
閣議で基本国策要綱を決定(国家基盤の強靭化と、海外地の自給自足化)
木工12ギルド90万人体制。
旧1幸幣(1段)の10幸幣、旧5幸幣(2段)の50幸幣、旧10幸幣(3段)の100幸幣、
旧50幸幣(4段)の500幸幣、旧100幸幣(5段)の1000幸幣引き上げと、
新10幸幣(1段)、新50幸幣(2段)、新100幸幣(3段)と、500幸幣(4段)と1000幸幣(5段)を発表する。
インフレの進む富裕層は余剰紙幣と500幸幣(4段)と1000幸幣(5段)を交換し、
社会資本が一気に増大し、資本層が厚みを増し、下克上が増大していた。
日銀会議
「まずい、我々も500円札と1000円札を作らなければ」
「たくさん、円札を刷り過ぎたのでは?」
「たしかにそうだが、ほとんどは外地で使う。国内に回ってくる量は少なかぅったはず」
「しかし、木工12ギルドは、新幸幣と交換で紙幣を本国に戻そうとしてますな」
「しかも、旧幸幣を10倍の新幸幣と同額で合わせて、購入者を安心させてる」
「というより、名目上でも、幸幣の価値を引き上げている」
「実質は?」
「10倍どころか、100以上で取引されてますよ」
「どちらにしろ、我々は利権堅持で。木工12ギルドは下克上狙いか・・・」
「「「「んん・・・・」」」」
「なんとか、供給量を減らそうとしてるのにあいつらのせいで・・・」
「「「「んん・・・・」」」」
「我々は、世襲と利権が好きだが」
「木工細工師は、個人個人の技能で収入を得てるからな。実力主義と能力主義が好きなんだ」
「こうなったら戦争して、あいつらを徴兵して造幣から遠ざけるか」
「逆に彼ら子飼いの師団に攻撃されるかもしれませんよ」
「我々の予算誘導が日本の国益民益を害してると疑ってるようですし・・・」
「「「「んん・・・・」」」」
8月
八路軍、南京軍閥に対し大攻勢(百団大戦、5日)。
第二次ウィーン裁定
ルーマニア王国、北トランシルヴァニアをハンガリー王国に割譲。
ヴィルヘルムスハーフェン港に巨大戦艦が浮かんでいた。
45950t級ビスマルク型戦艦
全長241.55m×全幅36m×吃水9.3m
ワーグナー式高圧重油専焼缶12基 + ブラウン・ボベリ式ギヤード・タービン3基3軸
138000馬力/150170馬力 32kt
航続距離9280海里/16kt 8525海里/19ノット 6640海里/24kt 4500海里/28kt
47口径381mm3連装3基 65口径105mm連装高角砲8基 83口径37mm連装機関砲12基
アラドAr196A3水上偵察機6機
乗員2092名
日本の新造戦艦設計図を流用して建造したせいか、3連装3基で、
見た目は、シャルンホルスト型に似せていた。
球状艦首と艦首から艦橋にかけてのシャーは、日本戦艦の影響を受けていると思われた。
日本人たち
「よく設計図を売ったね」
「だって、人工石油があれば、戦争しなくても済むだろう」
「民間の電力需要が増えて、とてもじゃないけど、足りないんだけど」
「なんで増えるかな」
「それは、民間投資が大きすぎるからだろう」
「幾ら海軍艦艇でディーゼル機関を採用しても全然足りん」
ベルリン
「どうですかな。日本で、フランス領インドシナに進駐してみては?」
「いや、しかし、まだ、交戦中なのでは?」
「日本が進駐しなければ、アメリカがインドシナに進駐するかもしれませんぞ」
「なるほど、それはそれで面白い」
「ほぉ なんでまた?」
「不況下で海外に進駐などしたら、ルーズベルトは御終いでしょうな」
「「「「・・・・・」」」」
「実は、海外地投資が多すぎて、インドシナまで回らないのですよ」
「「「「・・・・・」」」」
9月
クラヨーヴァ条約 ルーマニア、南ドブロジャをブルガリアに割譲。
中南米 任那州(2400u)
香港・シンガポールを合わせたかのような勢いで城塞都市が作られていた。
鉄道は、中南米6カ国へと広がって資源が供給され、
日本人入植は仕事と共に急増し、
アメリカで生産するより安い加工品が中米から南米大陸へと加工品が輸出されていく、
そして、中南米から南米大陸にかけての資源が任那へ送られ、近代化の礎になっていた。
任那 市庁
「そろそろ、アメリカがやばくない? 戦争したがってるよ」
「アメリカは参戦待ちだよ」
「開戦まで待たなくても、紙幣を発行すればいいだけじゃんか」
「そろそろ、自作自演の何かを仕掛けてくるかもね」
「どんな」
「爆破とか。テロとか。いろいろ」
「日本のせいにされそうだな」
「その前に経済制裁があると思うが」
「朝鮮半島は米英ソ共同統治みたいになってるし」
「ソビエトは単独でも欲しがってる」
「朝鮮半島の開発と保護を考えると、日本との戦争は苦しいかもな」
「それは任那とどっちが美味しいかじゃないの」
「日本を打倒できたら、海外地を全部取れるでしょう」
「まぁ そうなんだが・・・」
「そろそろ、朝鮮半島を失っても・・・気になってるかもね」
「「「「・・・・・」」」」
ギリシャ アテネ
イギリス人とギリシャ人
「このままだと、まずいかもしれない」
「なぜ?」
「戦力が足りない。今のうちにエヴィア島を日本に租借した方がいいかもしれない」
「絶対に嫌だ。欧州文明最古の大地を東洋人なんかに渡せるか」
「いや、租借といっても、日章旗を揚げるだけで、基本的にギリシャ人の自治だし」
「断る。断固として戦う」
「「「「・・・・」」」」 ため息
ワシントン
神籬社員たち
「なんか、このままだと、ルーズベルトが再選しそうだ」
「何でそんなにルーズベルトが信頼されてるんだ」
「ニューディール政策が評価されたんだろう」
「ふざけんな。ワザと不況を起こさせて、利益誘導で財政投資してるだけじゃないか」
「そして、ユダヤ資本は儲けた資本で、非ユダヤ資本を買い占めてる」
「まるで、詐欺強盗のようなインチキしやがって」
「だけど、俺たちがそう言っても、完全には信用されないしな」
「アメリカは、対日戦を考えてるのか」
「太平洋艦隊をハワイに進出させようと画策してるから、多分ね」
「やる気だな」
「まぁ 朝鮮半島の利権が大きくなってるし、反対も減ってる」
10月
第5回国勢調査(内地人口7311万4308人、外地人口611万1793人)
フランスのヴィシー政権がユダヤ人並びに外来者に対する法を可決。
ドイツ軍がルーマニアに進軍開始
イタリア軍がギリシアに進軍開始(ギリシャ・イタリア戦争)
ヒトラーとムッソリーニが会見
バトル・オブ・ブリテン終了
大連州
日中非公式会議
この頃、日本は世界中に拠点を持ち、中国に関わっていられなかったことから、
日本と中国の関係は、業者と顧客でしかなくなっていた。
「戦車と戦闘機を売って欲しいある」
「何両、何機ほど?」
「5000両、5000機ある」
「・・はい?」
「5000両、5000機ある。すぐ欲しいある」
「いや、すぐと言われましても」
「鉄鉱石、石炭、石油、希少金属は引き渡すある」
「何としても共産軍を根絶やしにしないといけないある」
「もう、国共合作で一緒に選挙して、統一政府を作った方が・・・」
「ダメだある。絶対に共産主義者どもを根絶やしにするある」
「じゃ 39式戦車5000両と92式戦闘機5000機・・・」
「97式戦車にして欲しいある。97式戦闘機にして欲しいある」
「97式は、22.7t級戦車ですよ。過剰装備になるのでは?」
「必要ある」
「しかし、お高くなりますが」
「幾らでも資源で支払うある。軍事的独立が最優先ある」
戦車の場合、鋼材10000円/tの計算が成り立った。
戦艦クラスになると作りが単純なことから2200円/tとり、
潜水艦になると6000円/tになり、
航空機になると30000円/tという値段に跳ね上がる。
何が問題かというと、中国産の鉄鉱石と石炭の質の低さで、
当然、高炉を燃やす石炭も莫大になってしまう。
5000両、5000機の大台になると11億3500万円と2億5500万円となり、
当然、鉄鋼業皆無の中国なので、
付随する陸軍装備で2倍加算し、空軍装備を4倍加算することになり、
製造機械の減価償却も影響するどころか、
鉄鋼業界を3倍にするくらいの設備投資しなければならなくなった。
「・・・・」 ため息
「欧州でドイツとイギリスが戦争中ある」
「今のうちに極東ソビエト軍、半島のの米英ソ軍、香港のイギリス軍に対抗できる戦力が欲しいある」
東京
扇動家たち
“戦うニダ。今がチャンスニダ”
“中国に攻め込むニダ”
“中国人に日本人がたくさん殺されたニダ”
“英霊が命懸けで手に入れ、奪われた失地を取り戻すニダ”
“アメリカ、ソビエト、イギリスから朝鮮半島を奪い返すニダ”
“白人とユダヤ資本を朝鮮から叩き出すニダ”
“戦争するニダ。絶対に勝てるニダ”
喫茶店
「随分、景気がいいな」
「国際条約でアメリカの半島投資が増えたらしい」
「朝鮮4カ国協定は、米英ソが2対2対1のはず」
「アメリカがイギリスの分まで払ってるのさ」
「気前がいいな」
「イギリス分に回ったものが、イギリス本土の支援がいってる」
「なるほど。朝鮮共和国に一旦送ってしまえば、あとは・・・」
「まぁ 隠れ蓑だな」
11月
米大統領選挙でルーズベルトが三選
イギリス機動部隊がタラント軍港を攻撃
ドイツ軍がイギリス中部の都市コヴェントリーを空爆
ハンガリーが枢軸国に加入
熊襲市 (旧タイ王国ナラーティワート県タークバイ郡:400ku)
巨大な要塞砲が並ぶと投資が増え、トーチカが増えると、企業の進出が増え、
浚渫によって港湾が整備され岸壁に大型船が停泊するようになると
ガントリークレーンが配置され、荷揚げ荷降ろしの物資が増えていく、
日本人たち
「しょうもない、海岸と思ったが物資の揚げ降ろしが増えていくと嬉しくなるな」
「だけど、本当にシンガポール並みになるんだろうか」
「ガントリークレーンの数ではシンガポールより多いよ」
「ドックも建造しているし」
「それに戦争でイギリスのブロック経済は破綻しつつある」
「日本と貿易しないと勝てなくなるだろう」
「だといいが」
トルコ全土で戒厳令
ルーマニアが枢軸国に加入
タイ・フランス領インドシナ紛争が勃発。
元老西園寺公望公死去(国葬12月5日)
スロバキアが独伊同盟条約に加入
タイ王国・フランス領インドシナ国境紛争
10個師団相当の戦力をタイ王国軍は、訓練を重ねたあと
紛争地ルアンプラバン地方とバッタンバン地方へ進軍した。
フランス領インドシナ植民地軍との戦闘は激しさを増したがフランス植民地軍を撃退し
カンボジアの半分を手に入れてしまう。
日本に続き、タイ王国が対白人国家に勝利したことが東南アジア、インド、アフリカに影響を与え、
独立運動が苛烈さを増していく、
ルーマニアでイオン・アントネスクによるクーデター。
ニコラエ・ヨルグを含む、亡命中の旧国王カロル2世の支持者60人以上が逮捕・処刑される。
北欧道で、ソビエト・フィンランドの停戦協定が調印される。
開戦前の国境線に引き戻され、フィンランドに静けさが戻った。
ソビエトとフィンランドの1年戦争は、フィンランドの人的資源を枯渇させたが祖国と民族の独立を勝ち取った。
そして、日本・北欧道は孤立したフィンランドの戦闘を支え続けたことで、国際的に評価され賞賛されてしまう。
北欧道
戦場に遺棄されていたソビエト軍の航空機や車両が工場に運び込まれ、
修復されると、3分の1がフィンランドへ渡され、残りの3分の2も結局はフィンランドへ売られていく、
まだ推定に過ぎないものの4000両のBT2、BT5、BT7、T26、装甲車BA6、BA10、BA27と火砲2000門が破損し遺棄され、
航空機2000機が不時着していると推測され
戦後のフィンランドは、ちょっとした軍事国家の様相を見せた。
もちろん、フィンランドも20万人以上の死傷者を出した戦争からの回復は、年月を要した。
日本人たちはシベリア鉄道から乗り換え、北欧道の駅に入ると降りていく、
立憲君主制の日本と、共産国のソビエトの交易量は増大していた。
例え、北欧道が利敵行為していたとしても、スターリン独裁に協力する日本との取引を捨てられず、
北欧道は、日本からの土木建設機械を輸送し、基幹産業を内包する強靭な地下要塞網を建設していた。
日本人とフィンランド人
「よくも1年も持ち堪えたものです」
「これ以上続けると、ソビエト軍の反乱もありえましたからね」
「なるほど、国土侵略されたわけでもないのに戦い続けるのは苦痛ですからね」
「今後はどうするかですよ」
「フィンランドのカレリア防衛線の構築は急がせたほうがいい」
「しかし、我が国は、大規模な工事ができるような国力はない」
「土木建設機械は、余裕があるので協力しますよ」
「本当に?」
「ええ、多少、予算は嵩みますが対戦車塹壕を掘れば、ソビエト軍の侵攻は押さえられるでしょう」
「ソビエト軍にラドガ湖から迂回されて、北欧道の背後が突かれると厳しいですからね」
12月
内閣情報局
特高
「スターリン支援は、利敵行為ではないのか?」
「ソビエト支援は利敵行為でも、スターリンの独裁支援は利敵行為でないだろう」
「それで、北欧道の防衛力を強化できるのなら得だ」
「得と言っても6000ku。茨城県程の大きさしかない」
「本気で攻められたら守れまい」
「得るものより失うものが大きければ十分だろう」
「しかし、スターリンは反日だと思うが」
「スターリンが用心してるのはヒットラーであって、日本じゃないだろう」
独ヒトラーが独ソ戦(バルバロッサ作戦)の準備を命令
第76議会召集
“タイ王国がフランス領インドシナ軍を敗退させた”
“今こそ、有色人種の国が手を取り、アジアを植民地から開放すべきだ”
“いや、敢えて日本が火中の栗を拾う必要はない”
“このまま、白人を悪者にし続けさせることのほうが、国際情勢において有利である”
“しかし、我が国は欧米植民地を開放するだけの軍事力があるではないか”
“隔進論でいうなら、いま欧米と戦えば、海外地を全て失うことになるのではないか”
““““・・・・・・””””
アメリカ合衆国
白い家
「フィンランドが独立を保ったか」
「日本に上手くしてやられたのでしょう」
「スターリン擁護で。北欧道強化と堅持とは、日本人らしくない外交戦略だ」
「神籬の工作でしょう」
「連中は、共産主義アレルギーじゃなさそうで」
「アナフィラキシーショックで民主主義者殺しにかかりそうにないですな」
「中庸は困るよ。資本主義と共産主義の対立を利用して介入ができない」
「なんにしても日本は株をあげてるし」
「イギリスは国際連盟で主導権を喪失している」
米ルーズベルトが「米国は民主主義国の兵器廠となる」と発言
日本・瑞森市 (旧ブラジル・オランジェ:400ku)
コロンビア、ベネズエラ、エクアドル、ペルーの代表団が来ていた。
日本は、わずかな期間で未開地に砲台を配置し、社会基盤を整備・開発していた。
南アメリカ諸国はアメリカ資本による経済支配を恐れ、アメリカ軍を恐れていた。
「発電所だけでなく、製鉄所まであるのか」
「必要なものは、製造できますよ」
「今の人口は?」
「10万人で開発しています」
「10万人・・・・」
「いつまで開発は続くのでしょう」
「たぶん、人口は20万から30万人くらいまで増えるでしょう」
「そんなに」
「瑞森を南米全体の工場にするつもりですよ」
「「「「おぉおおおお」」」」
東京 国際連盟本部
「朝鮮共和国は、国際連盟に加盟するニダ」
「・・・・・」
「なぜ、目を背けるニダ」
「・・・・・」
「なぜ、明後日の方向を向くニダ」
「・・・・・」 ため息
「まっすぐ前を見て、現実を直視するニダ!」
「・・・・・」 ため息
「朝鮮共和国は、独立国ニダ!」
「国際連盟に加盟する資格があるニダ」
「・・・・・」 ため息
「なぜ、大きなため息をつくニダ!!!!」
朝鮮共和国が国際連盟に加盟
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
月夜裏 野々香です。
木仙一族
仙堂春和(34歳) × 山城美奈(30歳) 一樹(12) 智樹(8) 加賀美(5)
角浦秋和(34歳) × 日向奈美(29歳) 青葉(12) 芳樹(8) 冬樹(5)
近衛師団
第01師団(東京) 第02師団(仙台) 第03師団(名古屋) 第04師団(大阪)
第05師団(広島) 第06師団(熊本) 第07師団(北海道) 第08師団(弘前)
第09師団(金沢) 第10師団(漠砂州) 第11師団(瑞森市) 第12師団(北欧道)
第13師団(姫路) 第14師団(蝦夷市) 第15師団(亜羅州) 第16師団(熊襲市)
第17師団(久留米) 第18師団(宇都宮) 第19師団(大連州) 第20師団(任那州)
1926年 巨済島(400ku) 済州島(1845ku) 鬱陵島(72.82ku)
1926年 大連州(3462ku)
1930年 任那州 フォンセカ湾 ニカラグア領地コシグイナ(400ku)
1932年 任那州 フォンセカ湾(1200ku) 4カ国不戦条約により拡大
ニカラグア(400ku)+ホンジュラス(400ku)+エルサルバドル(400ku)
1932年 北欧道 カレリア地峡+フィンランド湾諸島 (6000ku)
スールサーリ島(21ku)、ラヴァンサーリ、大・小チュテルサーリ島他
1934年 任那州 中米7カ国不戦協定調印 (2400ku)
フォンセカ湾(1200ku) 旧ニカラグア・ホンジュラス・エルサルバドル領
旧コスタリカ領 ココ(瓜生)島 (46.6ku)
ブリカ(中ノ鳥)半島 (753.6ku) 旧コスタリカ領(353.4ku)+旧パナマ領(400ku)
旧グアテマラ(沖ノ浜)領(400ku)
任那。ニカラグア、ホンジュラス、エルサルバドル。コスタリカ、グアテマラ、パナマ、
1935年 熊襲市 (400ku) 旧タイ王国領対マレー国境
1936年 蝦夷市 (400ku) 旧チリ領
1938年 漠砂州 (8万3860ku) 旧イタリア領リビア・ブトナン県
1939年 租界地 エストニア・イダ=ヴィル県(3364ku)
1939年 瑞森市 (400ku) 旧ブラジル・オランジュ域
1940年 亜羅州 (4039ku) 中東アラビア海
武山(むさん)半島 ムサンダル半島 800ku 旧アラブ首長国連邦・オマーン
和蔵(わくら)湾 アル・ワクラ湾 800ku 旧サウジアラビア・カタール
武矢(ぶや)島 ブビヤン島 863ku 旧統合イラク・クェート
佳(けしま)島諸島 1576ku 旧イラン
佳(けしま)島 ゲシュム島 1491ku
良久(らく)島 ラーク島 49ku
辺賀(へんが)島 ヘンガム島 36.6ku
1940年 租界地 ノルウェー・フィンマルク県(48618ku)
ドイツ通商破壊艦隊
アドミラル・グラーフ・シュペー。 コルベルク(長良)、マインツ (五十鈴)、ロストック (名取)、
アドミラル・シェーア。 アウクスブルク (由良)、マクデブルク (鬼怒)、ブレスラウ (阿武隈)、
ドイッチュラント。 シュトラースブルク (川内)、シュトラールズント (神通)、グラウデンツ(那珂)、
第19話 1939年 『第二次世界大戦』 |
第20話 1940年 『国際連盟本部東京と東京オリンピック』 |
第21話 1941年 『心のハンを燃やすニダ!』 |