月夜裏 野々香 小説の部屋

    

神がかり系 仮想戦記 『神籬の木仙』

 

 第23話 1943年 『米英ソ連合 VS 独伊中同盟』

 1月

 カサブランカ港

 戦艦ワシントン、ノースカロライナ、ニューメキシコ、ミシシッピ、アイダホ

 空母エンタープライズ、ヨークタウン、ホーネット、ワスプ

 戦艦キングジョージ5世、プリンス・オブ・ウェールズ

 空母イラストリアス、フォーミダブル、ヴィクトリアス、インドミタブル

 米英機動艦隊が本気で艦隊を揃え、カサブランカ港に入港すると、

 ドイツ機動部隊は、手も足も出せず静観するよりなかった。

 アメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領と

 イギリスのウィンストン・チャーチル首相の会談が始まる。

 「ドイツ海軍は、なかなか勇戦しているようだ」

 「イギリス海軍は、日本がドイツに輸出した軽巡洋艦と大型潜水艦に通商破壊され、艦隊を集中できない」

 「またイタリア海軍も、それなりに手強い」

 「Uボートに通商破壊されるだろうが、試算では北アフリカ戦線を維持できそうだ」

 「しかし、チュニスを落とすまでの損害は、かなりのものになりそうだ」

 「じゃ ソビエト頼みか」

 「そうなるが、支援物資は太平洋・シベリア鉄道経由になりそうではある」

 「問題は大西洋戦線だが」

 「アメリカ艦隊を大西洋で戦わせるのはむつかしくない」

 「しかし、対日圧力は掛けられなくなり、日本はこれまで以上に自由に動くだろう」

 「対日圧力なら後回しでもよかろう」

 「朝鮮半島の米英ソ朝4ヵ国連合の空爆で日本を焼け野原にできるだろう。対独戦を優先すべきだ」

 「まぁ そうだろうが朝鮮利権を守るため莫大な石油とくず鉄を日本に輸出している」

 「それが日本の海外地強化に繋がってるし。日本の公共設備の拡大にもなってる」

 「しかし、ユダヤ人の朝鮮移民は始まってる」

 「今更、朝鮮開発をやめられないし」

 「かといって戦争中とはいえ、国家予算を見当違いの場所に振り分けられるわけでもない」

 「それで、代わり日本に石油と鉄くずか・・・」

 「仕方がないだろう、戦後、米英ソ連合の余勢をかって日本に圧力をかけるしかないな」

 「それはそうと、ベトナム帝国、カンボジア王国、ラオスが独立し、国際連盟に加盟したよ」

 「あとブラジルが加盟して、理事国入りした」

 「まだやってたんだな。国際連盟」

 「東京に国際連盟の本部を移して、南米諸国が再加盟」

 「インドも独立したら理事国入りが打診されてるらしく、独立運動が増大している」

 「国際連盟が日本中心なのが面白くない」

 「新しく国際連合を作るのに国際連盟は邪魔だ」

 「国際連盟の言いだしっぺは、アメリカだからな・・・」

 「なんにしても将来的には、国際連合を成立させ。国際連盟を消滅させるべきだろう」

 「しかし、日本国内での工作が上手くいってないのが問題だよ」

 「幸幣は厄介でな。手先の器用な人間は自分で造幣できる」

 「木工12ギルドの結束は高く。鉄鋼軍需を警戒している」

 「それに政府の命令を無視しても生きていこうと思えば生きていける」

 「まぁ 不器用な人間は軍部に行くが日本民族は、器用な人間が多いのだよ」

 「それにもうしばらく日本商船に戦略物資運んでもらわないと困る」

 

 アメリカ国防総省のオフィス、ペンタゴンが供用開始。

 

 

 日本の日本の海外地は、朝鮮・満州利権。中国租界がそうであったように

 人間の負の部分というべきか。闇の需要に対し供給も請け負っていた。

 歴史的に貧困層の文盲少女が買われ、赤線地帯に入っていった。

 近代化に伴う格差増大で、人身売買は容易になっていった。

 そして、日韓併合後は、日本人の貧困少女の代わりに、少しずつ朝鮮人の文盲少女が増えていく、

 しかし、朝鮮独立と南満州利権からの撤退と、日朝国交断絶により人身売買ルートが失われ、

 残った人身売買ルートは、中国租界と海外地ルートに縮小していた。

 そして、それまで貧困層だった者たちに幸幣造幣の機会が与えられ、

 神社仏閣で通貨が水増しされ、日本人の貧困層は減少していく、

 とはいえ、購買人口を増やしたのに供給人口が減ると赤線街も高騰していく

 海外地が赤線供給源となったことも、ある意味仕方のないことであり、

 そこが戦場の近くであれば、戦災孤児の引き受け手があるだけでも御の字と言えた。

 日本の政官財で

 10代前半を相手にするような趣向性の強い遍歴の持ち主たち、

 数にすると、1割に満たなかったものの

 悪党同士は、政治生命を危うくする秘密を守るため結束が堅かった。

 特権層は、国防を口実に掘った地下網の一角に区画を作って、そこに通い、

 中堅層は、紡績工場などを好んで詣でた。

 少なくとも一般向けの赤線が存在する限りにおいて、

 特権層の国防地下施設の一角の秘密クラブは小さい状態のままで

 中堅層以上が好む紡績工場詣も一定数が守られていた。

 特高、警察、子飼いの人買い私兵ヤクザが特権層や中堅層の秘密を守っていたが

 金の流れが増え、貧困層が減少すると、

 特高と警察は、その種の任務を嫌遠するようになり、

 私兵ヤクザの質も低下し、秘密も暴露されやすくなっていった。

 我欲と保身の狭間で、不正腐敗が蔓延る清濁癒着は、どこの国でもあるが、

 相手が10代前半とかのスキャンダルは、政敵が攻撃する格好のネタになった。

 それは、それとして、紆余曲折があって、日本で戦災難民法が作られ、

 中堅層が好んで足を運ぶ紡績工場も外国の少女が急増していた。

 

 国防地下施設の悪党たち

 不道徳な世界と、その住人たちのことが発覚すれば日本史上空前の大スキャンダル事件となり、

 政官財の上層部の5人に1人は失脚する。

 子供に踏襲できるならまだいいが、下手をすれば、親子同時失脚もありえた。

 そういった危険を冒してまで通いたくなる場所があり、

 エッチな世界に不似合いな英字新聞が置かれている。

 「アメリカとイギリスが日本の赤線地帯を非人道的と非難しているようだ」

 「一部の人権主義者も赤線廃止で騒いでる」

 「どうせ、金の流れは、欧米の意図だよな」

 「特権層は地下。中堅層は紡績工場。低級層は、赤線で棲み分けしている」

 「人間、一定の比率でこういう性癖を持つ者が生まれるし、捌け口は必要だし。必要悪だよな」

 「しかし、朝鮮人がいなくなって。中国人ばかりになったな」

 「まぁ 文字も書けないし、言葉も弱いなら好都合じゃないか」

 「フィンランド人やロシア人の白人系が増えたのは少し嬉しい」

 「次の便で、ロシア人が増えると思うな」

 「えへへ〜」

 「でも、ロシア人やフィンランド人の10代の少女がなんで日本にいるのってなると、あれだよね」

 「だから戦災孤児を人道的に日本の紡績工場付属の児童施設に保護したってことにするんじゃないの」

 「女の子ばっかり?」

 「戦争になると少年兵も犠牲者になりやすいんだよ」

 「そうだけどね・・・」

 「まぁ いいじゃないか。公共事業は増えてるし、そこそこ生産に寄与できるだろうし」

 「戦争で邪魔な同胞を殺して対価を踏み倒して戦災少女を抱え込むのもいいけどね」

 「あははは・・・」

 なぜか、日本で紡績工場に併設した戦災孤児施設が建設され、

 なぜか、孤児施設は少女が多く、

 なぜか、青い目をした子供が増えていた。

 彼女たちにとって救いは、余計に金が欲しければ地下に来いの選択で、

 嫌なら10倍働いて生きていくこともむつかしくなかった。

 

 

 

 日本は海外地に、必要最低限の工業基盤を整備していく、

 小型の石油精製所、発電所、製鉄所など、必要最小限の産業基盤を建設していた。

 この時代、列強以外にまともな産業基盤を持つ国がなく、

 日本の海外地は、小型とはいえ、その地域で唯一、近代的な産業基盤を持っていた。

 周辺国と連携できれば大きなポテンシャルとなり、

 周辺国と連携できなければ孤立した軍事基地でしかなかった。

 亜羅州

 武矢(ブヤ)島(863ku)は、海抜1〜2mの湿地ばかりの島だった。

 イラクの海路と、ティグリス川とユーフラテス川を塞ぎ、

 領土的な価値より戦略的な価値が強かった。

 武矢(ブヤ)島(863ku)の海岸線は3mの堤防で囲まれ、

 島内港湾が建設され、埋め立てが進むにつれて状況も変わる。

 内陸部は碁盤の目のように上下水道が敷かれ、緑地が広がっていた。

 日本人たち

 「やっと地盤を安定させて、太陽光熱発電がやりやすくなった」

 「亜羅州も漠砂州みたいにガラス繊維を積み上げるのか」

 「その方が標高が高くなるらしい」

 「せっかく、ティグリス川とユーフラテス川の浚渫で河川土を敷き詰めてるのに」

 「涼しい方がいいだろう」

 「まぁ そうだろうが、オランダみたいになっていきそうだな」

 「水をイラクやイランに依存することになるけどね」

 「イランやイラクに水力発電所を建設する代わりに水がもらえるなら悪くないよ」

 「水力発電所を建設するということは水量が減るということで、そんなにうまみはない」

 「しかし、これだけ太陽熱が強ければ、淡水化プラントでも水は足りるだろう」

 「かくして、砂地の島は太陽と石油のおかげで森林になりましたって?」

 「最初から上下水道を作って、都市計画を作った都市なんてないから」

 「亜羅州でも武矢島が一番伸びるんじゃないかな」

 「でも一番面積があるのは、佳(けしま)島だから、日本からの自立も早いかも」

 「だけど、海抜1500mまで盛り上げるって、本気かな」

 「できるかできないかっていったら砂嵐次第だし」

 「まぁ 石油利権で、できないわけじゃない」

 「海峡封鎖出来るだけで、油田利権そのものは少ないけど」

 「それでも石油の近くに基地が置けるのは大きい」

 

 

 

 

 ニューファンドランド島からスコットランドの空港まで3400kmだった。

 爆撃機なら問題なく移動できる距離でも単発機は支障があった。

 アメリカ機動部隊2群を等距離で配置するとドイツ通商破壊艦隊の出入りを塞ぐと同時に、

 北アメリカからイギリスまでの距離の3分の1の1200km弱に洋上航空基地を置くことになり、

 F4Fワイルドキャットの移動を助けることになった。

 それは、昼の間で3時間置き、10機単位だったが、24時間後には、十分、イギリス本土に到達し得た。

 機体を空輸させるパイロットは、輸送機でアメリカ本土に帰還するが、この繰り返しで、

 イギリス本土の航空戦力は、急速に持ち直していく、

 

 深夜の大西洋 

 空母ホーネットがスクリューを破壊されて漂っていた。

 本来、空母と潜水艦は、雷撃など及ばない速度差なのだが、

 機動部隊がウォルスデルタクチキ(群狼作戦)中のUボート群の真上を通過したときは別で、

 それが偶発的な遭遇でもアメリカ機動部隊は、大混乱となった。

  3061t級UJ01ボート

   全長98.50m×全幅9.06m×吃水5.31m

    水上 排水量1900t  6400馬力 速度17kt  航続距離20000海里/10kt

    水中 排水量3061t  4200馬力 速度10kt  航続距離165海里/4kt

     65口径105mm砲1門  83口径37mm連装高射機関砲1門

     53cm魚雷発射管 艦首4門、艦尾2門  魚雷17本/機雷74個

     安全潜航深度230m  乗員68名

 日本製潜水艦は、潜行能力を生かして、米英軍のソナーを掻い潜り、何度も雷撃を繰り返した。

 爆雷が投下され、ヘッジホッグらしき、水音も艦内に伝わる。

 潜水艦戦は、音だけで敵の方向と距離を測って戦う、

 これが困難かは、目隠で、ステレオの音源をハンマーで壊せるかといった芸当なので人による。

 Uボート 司令塔

 赤灯が艦内を照らしていた。

 「艦長。3本命中です」

 「どうやら、アメリカ機動部隊は、対潜戦闘に慣れていないようだ」

 「速度差があるので、安全だと思い込んでたのでしょう」

 「艦長。命中後、破砕音が認められず・・・戦艦です」

 「巡洋艦じゃなかったのか」

 「艦長。推進音3つ、12時。6時。10時方向から、こちら向かっています」

 「速度そのまま。深度120。面舵30」

 「暴れ過ぎたみたいですね」

 「なぁあに。僚艦が10隻以上、周辺海域にいるはず・・・」

 駆逐艦の推進音が死神のように迫ってくる。

 そして、海面を叩くような音が幾つも連続していく

 「速度深度最大、取舵50」

 衝撃が艦を上下左右に揺り動かし、

 急激な圧力上昇に耐えられなくなったパイプから水が吹き出し、

 乗員は、訓練通り、元栓を占めていく、

 恐怖の表情と、神に祈るような仕草、

 潜水艦乗りが誰しも経験する瞬間と言えた。

 敵のソナーの死角に入ったのか、爆雷の投下が減り、

 敵艦3隻の推進音と推測する進行方向から潜水艦を遠ざけていく、

 その間、幾つもの炸裂音が海中に届き、

 洋上も地獄絵に近い状況であることが知れた。

 「・・・潜望鏡深度に浮上。魚雷室に次発装填」

 悲鳴とも怒声とも付かないような呻き声が聞こえるが、命令は実行され、

 さらに魚雷6本を発射し、2隻を撃破したのだった。

 この海戦でUボートは4隻が撃沈されたものの、

 アメリカ機動部隊は空母2隻、戦艦2隻、重巡1隻、駆逐艦3隻が大破し、

 本国へと帰還していった。

 

 

 東部戦線

 ソビエト軍は、スターリングラードを回復したもののドイツ軍を包囲できず、戦力を消耗させていた。

 第6軍も一時、半包囲され危地に追い込まれたものの、陣地の再構築と補給線の確保に成功すると、

 ソビエト軍を消耗戦へと引きずり込み、損失比を逆転させてしまう。

 実のところ、ソビエト軍の反撃で壊滅したのは、

 スターリングラード両翼に展開していたルーマニア15万とイタリア軍30万とハンガリー軍15万だけで、

 ドイツ第6軍の中核は無傷だった。

 高々度から中高度にかけて航空戦が展開され、

 時折、急降下してくる爆撃機編隊が機銃掃射し、爆弾を投下していく、

 独ソ砲兵隊の中口径砲が支援砲撃を繰り返し、

 32t級T34戦車の群れが進撃し、

 22.7級3号戦車と、25t級4号戦車が後退していく、

 戦車性能と数両でソビエト軍が勝っており、

 ドイツ軍は、損害を押さえながら後退するよりなかった。

 ドイツ陣地に並ぶ88mm砲が追撃するT34戦車群の群れを撃破し、

 味方師団の後退を支援していた。

 ソビエト軍陣営の噴煙が収まると、それらしい敵戦力は地平線の向こう側へと消えていた。

 「偵察によると敵は、後退し、再編成するようです」

 「あのT34戦車を回収できるか」

 「はい、ソビエト軍は後退しているので可能です」

 ドイツ第6軍は、ソビエト軍のスターリングラード包囲戦を辛くも切り抜けたものの、

 ドイツ軍の手持ち戦車は、T34戦車に対し劣勢であることに変わりなく、

 電撃戦の効果は薄れていた。

 スーツカー爆撃機の群れがソビエト軍の頭上に爆弾を投下し、

 150mm砲がソビエト軍陣地に砲弾の雨を降らせ、

 ソビエト軍が進撃を躊躇している間に戦線を後退させるよりなかった。

 

 

 

 

 北アフリカ戦線

 砂漠の空をP38ライトニング、スピットファイアと、

 Fw190フォッケウルフ、Bf109メッサーシュミットが空中戦を繰り広げ、

 地上はM4戦車と4号戦車が戦車戦を展開していた。

 自由フランス領アルジェリア イタリア領チュニス国境

 太陽の直射を避けるように砂色シートをかぶって狙撃銃を睨む、

 30t級M4戦車が砂塵を巻き上げて前進し、3号戦車と4号戦車が後退していく、

 数少ない57t級5号戦車が地の利を利用して待ち伏せしつつ反撃するが、

 狙撃兵の仕事は、反撃時、連合軍の指揮中枢を破壊し、対応を遅らせることだった。

 タイミングを合わせ、

 渓谷を通過するM4戦車から乗り出してる士官やジープの将兵を監視する。

 連合軍は、投目から指揮官の服装がわかりにくく、

 素振りや小さな階級章で標的を選んでいく、

 大まかな時間だったが、ジープの男に狙いを定め、引き金を静かに引く、

 衝撃と銃声と硝煙が混ざり、

 銃弾が標的に向かって回転しながら吸い込まれ、胸に命中して倒れた。

 生死不明だが手応えはあって、目的は達した。

 運がよければ有能な指揮官を殺し、無能な副官を残すが、

 運が悪ければ無能な指揮官を殺し、有能な副官を残して、敵を助けてしまう。

 ブラックジョークのような話しだが、戦場では珍しくなく、

 指揮官と副官の両方を狙えるよう、狙撃兵もペアで行動することが増えていた。

 今回、相棒が外したらしいが、

 それでも一時的にではあるが敵を混乱させることができるだろう。

 アメリカ軍は狙撃兵に気づくと砲塔を回し、それらしい方向に向けて砲撃し、機銃掃射を向けてくる。

 そして、時間が来たのか、

 隠れていた場所からタイガー戦車が砲撃を開始し、M4戦車を撃破していく、

 戦場は、数で勝るアメリカ・イギリス・フランス軍の攻勢と、数で劣るドイツ・イタリア軍の守勢という形で終始していたが、

 米英軍が囮のイタリア軍に気を取られたところを、練度の高いドイツ軍が反撃して巻き返し、損失比は有利だった。

 日本外交武官たち

 「アメリカ軍が勝ちそうだな」

 「アメリカの主力M4戦車は30t級で、ドイツの主力4号戦車より強力だよ」

 「米英ソ連合軍だし、ドイツ・イタリアが負けたら、次は、日本だよな」

 「日本は、朝鮮半島に米英ソの戦力を持ってこられたら内地の生殺与奪権を握られる」

 「海外地は孤立する」

 「蒋介石は、やっぱり、アメリカ側につくのかな」

 「さぁ 武器を売ってくれるのは日本だからね」

 「だけど、日本を対米英ソの盾にするくらいやるでしょう」

 「日本も中国を対米英ソ連合の盾にしたい」

 「しかし、目の敵にされてるのは、日本だからな」

 「だよなぁ」

 

 

 

 ある人々は、欧州戦争で、どちらが勝とうと利権は保たれる。

 ここでいうところの利権は、大恐慌中に安値で買い占めた利権で、

 戦災で国家、産業、国民が被る実害のことではなく、

 戦争需要で形成される資本投資と、

 そこから得られる生産、流通、販売、資本などの利益で、利権配当の占有率のことだった。

 彼らは、国家と国民すら生贄に捧げるような連中で、

 戦災で誰が死のうと、実入りは投資の数千倍に膨らんでいた。

 もう一つ、日本とタイ王国が、この戦争で手足が塞がっている間に利権を奪いにかかって台頭していた。

 日本は、米英ソの朝鮮半島・中国大陸利権と天秤に掛けるように、

 中南米、カレリア地峡、チリ、中東と小さな拠点を押さえ、

 遂には、タイ王国をそそのかし、フランス領インドシナを独立させる。

 最初は小さくひ弱だった拠点は、次第に牙城と化し、列強の攻勢を挫く防衛力に達しつつあった。

 問題は、日本が戦火が及ばないよう立ち回りつつ、ドイツとほぼ同等の工業水準に達していたこと。

 そして、日本が独立したばかりのベトナム帝国、カンボジア王国、ラオスに武器弾薬を提供し得る国力があり、

 対価領地1200kuを得つつあることだった。

 アメリカ合衆国 白い家

 「ドイツは力押しすればいいとして、問題は、日本だ」

 「日本なら朝鮮半島の飛行場から日本を絨毯爆撃すれば勝てる」

 「しかし、開戦するには口実がいる」

 「そして、今のところ、その口実がない」

 「朝鮮人なら武器さえ渡せば日本人に向けて撃ちそうだけどな」

 「朝鮮人主導で戦争したくない」

 「せめて、日本がドイツと同盟を結んでいたらな」

 「どちらにせよ。いま、日本と戦うのは好ましくないな」

 「たしかに、瑞森市の潜水艦基地がUボート基地で使われると困る」

 「それに中東油田も塞き止められる」

 「しかし、ここで日本と開戦しなければ戦争が終わる頃、日本はもっと強力になっているぞ」

 「なぁあに、半島の基地から日本を絨毯爆撃すればいいだけだ」

 「そう、上手くいけばいいがな」

 「朝鮮開発にあと30年以上かけて、その間、日本に鉄くずと石油を輸出しなければならない気はするが」

 「おいおい・・・」

 「パレスチナと朝鮮半島に分けてユダヤ人を入植させることになるのだが」

 「まぁ そうだがタルムードは、聖書や神よりラビの発言力が強くなる。反対するユダヤ人も多い」

 「パレスチナや朝鮮半島に入植させたとしても、我々の思い通りにはならんよ」

 「だが朝鮮半島は強国に囲まれているし、そこそこ緊張感がある」

 「こちらの意に反するようなことは少なくなるだろう」

 「それよりタイ王国が力をつけて、イギリス領を脅かしている」

 「もちろん、背後にいるのは日本だが、日本は直接、先端を開かず」

 「タイ王国を第二の日本にして、矢面から外されたがっているようだ」

 「それと、イギリスは、いま、タイ王国と戦争したくない状況らしい」

 「ふっ そこまでの戦力はあるまい」

 「戦後の様相は、こちらの思惑と、かなり変わりそうだな」

 

 

 

 2月

 大西洋艦隊は北大西洋へ派遣され、

 太平洋艦隊の半分が地中海・北アフリカ戦線へと派遣されていた。

 残った太平洋艦隊は、インド洋から太平洋にかけて配置し

 日本のオイルロードや海外地を脅かしていた。

 日本は、海外地の基地建設と艦隊配備でオイルロード防衛と海外地の防衛を兼ね、

 米英の予想を超える海外地投資で拠点を充足させ対抗していた。

 アメリカ合衆国

 白い家

 「日本の状況は?」

 「黒部ダムや東海道新幹線の開通後、著しく、工業と経済が伸びてます」

 「44年の名古屋オリンピックを引き受けてからは、さらに公共投資が増えるでしょう」

 「国防よりも国家基盤か・・・」

 「国防でも西日本と日本海側は軍の基地が建設され」

 「東日本と東北から北海道にかけての太平洋側に基幹産業が伸びているようです」

 「戦後、日本を押し返すことができるだろうか」

 「多少、梃子摺るかもしれませんが、朝鮮半島の基地を使えば、日本を焼け野原にすることはむつかしくないでしょう」

 「ですが、それには朝鮮半島開発を進めなければなりません」

 「朝鮮半島を開発するには、日本に石油を売って日本に開発させることが早いこと」

 「そして、日本に石油を売ると、日本と日本の海外地は急速に力をつけることが問題になるでしょう」

 「また、日本で製造した兵器と武器弾薬が我々が望まない国に輸出されていることです」

 「日本を転覆させられるような弱点はないだろうか」

 「手先な器用な日本人は、幸幣で造幣できますからね」

 「格差は小さいですし、逆に言うなら磐石な社会と言えるでしょう」

 「しかし、権力構造は支持基盤が縦割りで総合的な視野に疎く」

 「既得権益者は、組織益と保身しか頭になく、視点も低く、視野も狭いと言えるでしょう」

 「そして、一番、大きな弱点は石油です」

 「中東の石油は輸入できるでしょうが、12000kmのオイルロードの防衛は不可能でしょう」

 「日本を今のうちに叩き潰したほうがいいと思うが」

 「対独戦でそれどころじゃない、というのが戦略情報部の見解です」

 「戦争が終われば厭戦機運がアメリカを支配するだろう。支配から脱するのに10年は必要だ」

 「そうなったら、日本は、どこまで伸びる?」

 「海外地の開発ぶりからして、海外地の自立は早いと思われます」

 「小さな拠点ですので個々に弱点はあるでしょうが」

 「格差が小さく一枚岩ですから国民国家として強靭です」

 「制圧するには、耐えられない損害を受けるかもしれません」

 「戦略情報部の報告だと、日本人は器用で目先の処世術に優れているが、大局観がないと報告を受けている」

 「木工12ギルドが主導権を握って状況が変わったかもしれません」

 「林業は100年計画で成長戦略で考えます。鉄鋼業の資源と加工といった思考でないようです」

 「鉄鋼業の反発は?」

 「戦争になって巻き返してるようですが、林業が衰退する兆候は見られませんでした」

 「日本に失われたアークがあるという報告も受けている」

 「44年の名古屋オリンピックを機に情報部員を増やそう・・・」

 「大統領。彼が来たようです」

 秘書官が正門から入ってくる自動車に気づいた。

 連合軍の司令官にドワイト・D・アイゼンハワー将軍が任命された。

 

 

 ナチスによって「白いバラ」運動のメンバーが逮捕される。

 

 

 ゲッベルス独宣伝相がベルリンの演説で総力戦を宣言(総力戦演説)。

 

 

 東南アジア

 府穀市(800ku) 旧ベトナム帝国・カンボジア王国 タイ湾フコク島(561ku)+(対岸231ku)

 武器弾薬が引き渡されると、正式に日本に土地が譲渡されてしまう。

 初期投資はマイナスで、さらに未開地に投資して開発しなければならなかったことから大損に思われた。

 しかし、マレー半島の熊襲市(400ku)と、

 今回手に入れた府穀市(800ku)はタイ王国の海路を塞ぐ拠点でもあった。

 タイ王国 バンコク

 タイ人と日本人

 「日本のベトナム、カンボジア、ラオス援助は面白くありませんな」

 「新興国で軍事的独立は必要ですよ」

 「しかし、タイ王国軍は、対ビルマ、対マレーの戦力が削がれることになる」

 「タイ王国、ベトナム、カンボジア、ラオスで共闘すればいいじゃないですか」

 「共闘すれば、40個師団相当は動かせることになるので、たぶん、楽勝ですよ」

 「タイ王国、ベトナム、カンボジア、ラオスを循環できるような鉄道網を敷くべきでしょうな」

 「言語が違うし指揮系統も違う、連携を執るのがむつかしいですな」

 「タイ王国が主導権を握るべきでしょう」

 「それでイギリスに勝てますかな」

 「勝てるまで支援しますよ」

 「この戦車で・・・・」

   44.8t級2式(5号)戦車

     全長8.66 m(車体長6.87m)×全幅3.27m×全高2.85 m

     整地250km 46〜55 km/h(整地)   /  不整地170km 27〜33 km/h(不整地)

     70口径75 mm Kw.K.42 L/70(79発)

     7.92 mm MG34機関銃×2(4200発)

     砲塔前面110 mm 傾斜11°側・後面45mm 傾斜25°車体前面80mm 傾斜55°

     側面40mm 傾斜40°後面40mm 傾斜30°

     マイバッハ HL230 P45 水冷4ストロークV型12気筒ガソリン 700馬力 (520 kW)

     乗員5名

 日本陸軍の主力戦車は、22.7t級97式(3号)戦車で、

 25級1式(4号)戦車が配備されてる場所も限られていた。

 44.8t級2式(5号)戦車、57t級3式(6号)戦車は、海軍造船所で製造される輸出用戦車で、

 日本陸軍は、国民の反発を恐れ、いまだ配備していない、

 その44.8t級1式(5号)戦車10両がタイ王国陸軍に売却され、

 未舗装の道路を巨大な轍を作りながら走っていた。

 日本人は、苦笑し、

 タイ人は、巨大な戦車を誇りに感じていたようだったが、

 タイ人たちは、轍をどうしようかと顔を曇らせ、子供たちは、はしゃいでいた。

 

 

 呉

 33000t級改瑞鶴型空母  3番艦 “蒼鶴”  4番艦 “紅鶴”

   全長280m×全幅32m×吃水9.7m

   ディーゼル機関8000馬力24基 192000馬力  

   航続距離16kt/25000海里  速度34kt

   78口径88mm対空砲10門  83口径37mm対空機銃20門

   艦上機100機以上

 蒼鶴型は、瑞鶴の改良型でアメリカ空母を模倣したサイドエレベーターが装備されていた。

 日本海軍将校たち

 「いいじゃないか」

 「空母より潜水艦を建造しろと言われたがね」

 「4700t級潜水艦を30隻建造するはずだよ」

   4700t級黒龍型潜水艦

   全長113.7m×全幅11.7m×吃水5.89m

   水上 2620t  6000馬力  16kt  21000海里/16kt

   水中 4762t  6000馬力  10kt   400海里/6kt

   533mm魚雷発射管 艦首6基×艦尾2基  40本

   83口径37mm機銃2基

 「隻数が足りない気がする」

 「まぁ 日本は、まだ、戦争してないからね」

 「量産するより、何を量産するか、開発試作する方が得」

 「それに戦争が始まったら、UボートIX型を改良して大量生産するかも」

 「870t級VII型も1200t級IX型も護衛空母が参戦してから苦戦してるって聞くけど」

 「むしろ、日本がドイツに売った2000t級と3000t級潜水艦が戦果を上げてる」

 「そうなのか」

 「中型潜水艦を機雷のように大西洋にばら撒いての飽和攻撃は、総合で戦果が多いらしいが」

 「大型潜水艦は行動日数が長いのと、魚雷数が多くて、チャンスを逃さず済むらしい」

 「何より生存性が圧倒的に高い」

 

 

 

 

 

 老害化し無能化した既得権は、しがらみに縛られ、利権支配に依存し、開発力と競争力を失い、

 成金が生まれるインフレを恐れ、経済統制しやすいデフレ傾向を臨む、

 既成勢力は、例え、社会資本が不足し、犯罪と自殺者が増えたとしても、

 利権構造と自己資本で身を守れる限りデフレを継続することができた。

 日本では、新興勢力の筆頭の仙堂と角浦が神籬社を企業創設、

 幸幣という代用貨幣が木工12ギルドが生じさせ、一大政治経済勢力へと成り上がっていた。

 幸幣は公定歩合分を飲み込み流通通貨を水増しさせ、

 国際的にも通用する蓄財貨幣になると、インフレが収まらなくなっていた。

 既成勢力は、経済統制で権力基盤を維持していたため、

 資本を国外へ逃がしてでも格差を維持する必要性が出てきた。

 早い話し、仙堂と角浦は、既得権に反抗的で、

 しがらみの強い閨閥にそっぽを向いてることから危険視され、

 彼らが作った神籬社のような成長企業と、

 取り巻きの木工12ギルドが国家権力基盤を揺るがす動きを見せてるため警戒されていた。

 そして、既成勢力はそういった不逞不穏な成り上がりが続々現れると困るのだった。

 日本社会では、そういった起業家たちが出現しており、

 10000人に1人は事業を軌道に乗せ、

 100000人に1人は、大企業に成り上がり、既得権益を破壊しそうな勢いを見せていた。

 そういった成り上がりを海外地へ追い立てるのも既得権防衛の一つで、

 朝鮮併合や満州帝国の裏事情でもあった。

 そして、隔進論が持て囃されたのも跳梁跋扈する新興勢力を海外地に追い立てたかったからでもある。

 漠砂州 (8万3860ku)

 国境沿いの内陸に沿ってハニカム構造の金網に覆われたトンネルが続いていた。

 凝固剤で砂丘が堅められ、

 ガラス繊維の枠いが砂嵐の度に砂を掻き込んで通常ありえないような砂丘の山と化していた。

 海岸線に近い方は段々で山が作られ、河川土で緑化が進められていた。

 日本人たち

 「北アフリカ中の砂塵が漠砂州に集まってるんじゃないのか」

 「そりゃ 砂嵐で集まっても、砂嵐で逃げないようにしてたら集まるでしょう」

 「リビアとエジプトより標高が高くなってないか」

 「今年だけで10mくらい上がったところもある」

 「さすが砂嵐」

 「だけど、標高1500mまで上げようとしたら、150年かかるだろう」

 「ガラス繊維の生産量を増やしているから。もっと早くなるかもしれない」

 「まぁ 大地が高くなるほど砂嵐を防ぐ効果になるだろうし。砂嵐もそこまで届くかどうかわからんが」

 「岩盤じゃないから地盤が弱い気がする」

 「凝固剤と防風を兼ねたガラス繊維枠次第じゃないかな」

 「砂嵐のもとになるような砂塵を漠砂州の大地で固めてしまうことだよ」

 「あとは、堡塁と堀を強化すれば難攻不落。侵攻作戦ができないようにすればいい」

 「砂上の楼閣にならなきゃいいけど」

 「いや、十分に砂上の楼閣だから」

 

 

 漠砂州の防備は、装甲に覆われた356mm連装砲台が外洋を睨み、

 内陸は150mm連装砲台、88mm連装砲台で、

 現存する戦車が至近距離で砲撃しても撃ち抜けない装甲だった。

 ツーロンから逃れてきたフランス艦隊は、フランス人が運営していたが、国連旗が翻っていた。

 ドイツ軍将校と自由フランス軍将校がぶすくれながらストラスブールを見上げる。

 「補修用ドックを建設してて、よかったですよ」

 「「我々に引き渡していただきたい」」

 「5年契約ですので48年まで無理ですよ」

 「「契約金なら支払うぞ」」

 「いや、国際信義の問題ですし、貸艦庫業務は信用第一ですから」

 「「日本人がスイス人みたいなこというな」」

 「契約では、フランス国民の総意が反映された政府に引き渡すことになってますので」

 「「それは我々だ」」

 「いや、違うでしょう」

 「「・・・・・」」 憮然

 

 

 漠砂州の中央域

 井戸を降りていくと岩盤に達し、ピラミッド型の空間が作られていた。

 ピラミッド型になったのは、砂の重量を分散するためだった。

 日本人たち

 「ピラミッドは、完全に埋まっちまったな」

 「砂嵐で、ほかのピラミッドも完全に埋まっていくんじゃないかな」

 「しかし、最下層の岩盤は堅くてよかった」

 「ほかのピラミッドとの通信は?」

 「銅管を通してるので、問題ないようです」

 「漠砂州全域500ヶ所を繋ぐ通信網と水管網は、爆撃されても破壊されないくらい深いですし」

 「大きな戦力になりますよ」

 銅管のひとつから水が流れていた。

 「まぁ 中隊くらいなら生きていけそうだな」

 「500ヶ所で200人なら10万人の戦力。十分だな」

 「中隊単位で戦争なんて困りますけどね」

 「砂漠じゃ 海軍みたいな発想をしなければならないそうだ」

 「200人じゃ駆逐艦ですよ。そのくらいの容積ではありますが」

 「動かないから要塞みたいなものだけどな」

 「というより、緑化の拠点なんですけど」

 「そうだったな」

 砂丘の上に凝固剤の混ざった水が撒かれていく、

 粘土質の河川土が砂漠の上に敷き詰められ、さらに水がかけられていく、

 そして、薄く広がった土の層の上を砂塵が覆い始める。

 一見、無駄な労力に見られるが最初から標高を上げるための作業で、

 一定の標高に達すると砂嵐も届きにくくなるはずだった。

 そして、粘土層は、水を溜め込む作用があり、

 将来は、本格的な緑化も可能になっていくはずだった。

 

  

 3月

 建物疎開実施

 合板を組み合わせた建物が建てられていく、

 合板は、薄い鋼板が挟まれ、燃えないように作られていた。

 観衆を集めた大火テストが行われ、表面の木板が燃えても鋼板までは燃えなかった。

 「鉄はいかんよ。鉄は、日本は鉄がないんだから」

 「鉄鋼板は0.1mm厚もありませんよ」

 「木は呼吸すると聞くが大丈夫なのか」

 「試験済みで、ハニカム構造ですので」

 「しかしなぁ」

 「鉄筋コンクリートでも気にしない人はいますが、日本人は表面だけでも木が好きですから」

 「んん・・・」

 「木板も充填物質を減らした木材ですし、軽くて丈夫です。3階建てくらい余裕ですよ」

 「なんで神籬印の木材だけが丈夫なんだ?」

 「そりゃ 林業に対する愛ですよ。愛」

 「愛ねぇ・・・」

 

 

 

 4月

 アルバート・ホフマン、LSDの幻覚作用を発見

 

 ワルシャワ・ゲットー蜂起勃発。

 

 イギリス・スコットランドのアバディーン、最大の空襲を受ける。

 

 

 朝鮮共和国 (21万6823ku)

 米英ソ同盟保障領は、国土の15パーセントの合計32000kuとなり、

 比率は、

 アメリカ12800ku (6パーセント)、

 イギリス12800ku (6パーセント)、

 ソビエト6400ku (3パーセント)となっていた。

 主要25都市の中心に白人専用租界区画1000kuが作られ、

 残りは幹線鉄道と道路に振り分けられていた。

 城塞都市の堡塁は周囲より100mも高く、堀は幅100mで深さ50mほどの水路になっていた。

 城塞都市を作ったのは、日本の土木建設会社と、中国人の人海戦術だった。

 この巨大朝鮮利権が日本の無法とも思える海外展開を見逃した理由で、

 城塞25都市の土台がほぼ出来上がる頃、

 米英ソは戦争難民を利用し、代理人の白人人口を500万人にまで増やしていた。

 朝鮮人人口は、1910年の日韓併合時1313万人で、16年後の26年には1862万人に増えていたが、

 米英ソ軍の上陸後、朝鮮人人口は、緩やかに減少し、

 26年から43年の17年で半分の900万人にまで減少していく、

 そして、白人と朝鮮人は、城塞都市そのものが不要に思える程の格差に広がっていた。

 日の丸のバッチを付けたゼネコンの日本人たちがソウルの街を歩いていた。

 周りは白人ばかりで、ユダヤ人が軍隊を編成していた。

 “疲れたニダ〜”

 ガタッ!

 “何やってるかるか。そこに砂利を流してはいけないある”

 “もうダメニダ”

 “さっさと戻して、働くある”

 “ケンチャナ”

 “ばかやろうある”

 バッシッ! バッシッ!  バッシッ! バッシッ! 

 “あっ そこ、体罰は3回までって”

 “そうニダ。3回超えたニダ。この中国人は朝鮮人に賠償するニダ”

 “わかった、わかった。じゃ 15分余計に休憩とっていいから”

 “日本人はバカある! こんなやつ殺したほうがいいある”

 “ち、ちょっと “ウツ” なだけニダ”

 “嘘ある。休憩中は元気一杯で遊んでたある”

 “新型ウツニダ! 新型ウツニダ!! 新型ウツニダ!!!”

 “なんで、3回も言うある”

 “とっても大事なことなので3回言ったニダ”

 “やっぱり、お前らは人間のクズある。殴り殺すある”

 “まぁまぁ 取り敢えず。今回はこれで良しとして。次から体罰を4回に増やそう”

 “日本人は酷いニダ”

 “日本人は甘すぎるある!”

 “・・・・・” ため息

 

 「遂に高層ビルの建設か」

 「欧州じゃ戦争してるというのに半島は景気のいいことだ」

 「大恐慌で踏み倒した泡銭が流れてきてると思うね」

 「城塞都市の外の朝鮮人は、併合前に戻ってる気がするな」

 「そういや、白服ばかりで、野良犬のような・・・って、崇礼門は?」

 「壊してくれって日本企業に来てたけど、本当にやるとは思わなかったな」

 「日本企業がやったの?」

 「いや、断ったけど」

 「中国人の人海戦術で、壊されたらしいよ」

 「おいおい・・・」

 「それで、何を建設してるんだ?」

 「イスラエルの神殿らしい」

 「「「「あはははは・・・」」」」

 「ていうか。ユダヤ人は白人じゃなく黄色人だろう」

 

 

  

 タイ王国

 日本がタイ王国の近代化に協力するようになったのは、

 資源や利権を欲したからと同時に、白人世界の圧力を軽減させるためだった。

 そして、鉄道、水力発電、電話線、上下水道などの近代化利権は、

 ベトナム帝国、カンボジア王国、ラオスまで及ぼうとしていた。

 日本にすればタイ王国、ベトナム帝国、カンボジア王国、ラオス連合がインドシナ半島連合を結び、

 対イギリス、対アメリカで結束してくれれば助かったのである。

 タイ王国東北域コーラート台地

 10年かけた開発により運河が建設され、水路と灌漑設備により、豊かな土地へと変貌していく、

 産物が増えるにつれ人口が増え、

 タイ王国の地域勢力図を塗り替えるだけでなく、

 インドシナ連合の中心に位置していたことにも気づかされていた。

 そして、当初から投資していた神籬は、

 発電、鉄道、道路、学校、印刷、土地、通信、運河などの利権を神籬4、王族6で分け、

 革命後は、神籬4、王族3、政府3の配分になっていた。

 日本人たちが下町を歩いていくと雑貨店に気づく、

 幸幣そっくりの木工細工が売られていた。

 残念ながら組み立てられておらず、

 役に立たないモノだったが精度の高さに驚嘆させられる。

 「ほう、ここまで真似されるとびっくりするね」

 「ただ真似しただけでは幸幣にならないらしい」

 「地域ごとや時間ごとに育て方や斬るまでの工程が変わってくる」

 「そこからの加工になるから適材適所の結晶ってやつでね」

 「そっくりに模倣して、組み立てようとしても折れるし、割れる」

 「だけどここまで上手く作れるなら、タイでも幸幣の生産ができるんじゃないか」

 「造幣は、造兵と同じで、国家が国民を統治する根源的なものになる」

 「庶民が力の根源の造幣を手にして、国家から独立するというのに近い」

 「日本は、芸術品と御籤という形で幸幣が浸透し、権力層が気がついたときは代用紙幣になっていた」

 「木工12ギルドは、金融で第2幕府のように自立してるし、地域経済を支えている」

 「代償は、中央集権的な経済統制と権力基盤はガタガタ」

 「それでも見逃されてるのは、民主主義が強くなって中央に媚びずむから好まれているため」

 「そして、新興企業が興って戦国乱世だが、カンフル剤を打つくらいの高度成長で、今更、止められない」

 「ほかの国は、最初から代用紙幣だし、その結果は見えてるから導入は慎重になるだろう」

 「こういった出来損ないが市場に出てしまうのも、幸幣が見様見真似で完成できないとわかったからだ」

 「要は、タイ王国が、国民に自分を守る武器を渡せるかだと思うね」

 「単純に1個くれるなら、1個は承認するでいいんじゃないのか」

 「その方が国民を統制しやすいし。御籤のない社会ならそういう方式もありだろうな」

 

 

 首都バンコク

 区画整理が行われ、高層貸ビルが建ち並び、

 資本家と呼ばれる人々がビジネスを開始していた。

 そして、ビルの借主の中には、白人たちもいた。

 彼らは、タイ王国が手がつけられない国力に到達するかもしれないことに気づかされていく、

 「どうやら、タイ王国の近代化は、日本の遠謀のようだな」

 「あと20年もすれば、タイ王国軍は、単独で、ビルマとマレーの英印軍を圧倒できるはず」

 「20年どころか、5年以内に独立運動を押さえられなくなるだろう」

 「そうなったら、我々は東南アジアから叩き出されるな」

 

 

 

 北海

 アメリカ戦艦

     ネバダ、オクラホマ。重巡2隻、駆逐艦6隻、

     ニューメキシコ、ミシシッピ、アイダホ。重巡2隻、駆逐艦7隻、

     テネシー、カリフォルニア。軽巡4隻、駆逐艦8隻、

 イギリス戦艦

     クイーン・エリザベス、ウォースパイト、ヴァリアント、軽巡4隻、駆逐艦6隻

     リヴェンジ、ラミリーズ、ロイヤル・サブリン、軽巡3隻、駆逐艦5隻

 上陸作戦艦隊 重巡7隻、軽巡4隻、駆逐艦24隻、輸送船124隻、

 戦艦ニューメキシコ 艦橋

 4月下旬の天候は肌寒く、少しくらい濡れても風邪はひかない、

 波高は1mほどだったが、風速が速くなれば波高は更に高くなるだろう。

 ニューメキシコ、ミシシッピ、アイダホは、ニューファンドランド島開戦事件で損傷し、

 幾つかの装備を新しくしつつ修理していた。

 イギリス戦艦も修理こそされてはいたが、万全とは言えない状況にあって、

 イギリス戦艦部隊との連携には不安があった。

 上陸作戦を予定しているノルウェーローガラン県はスコットランドとほぼ同緯度で、

 この地に橋頭堡を築き、航空隊を配備すれば、北海を北上するドイツ艦隊の航路を断つことができた。

 また、スタバンゲル街を占領すれば、居心地のよい越冬もむつかしくなかった。

 米英軍のノルウェー上陸は、通商破壊の被害を少しでも減らしたいのと、

 北部ノルウェーのドイツ軍を孤立させ、鉄鉱石ルートも封鎖できた。

 多少、遠回りな気がしたもののアメリカの動員は進んでおらず、

 フランスに上陸するより失敗が少なかった。

 そして、反撃してくるであろうドイツ戦艦部隊にトドメを刺すことができるなら適当な作戦で、

 米英の旧式戦艦ばかり13隻だが数に任せて、ドイツ戦艦部隊を圧倒できると考えられた。

 作戦が始まると米英軍機数百機と、ドイツ機百数十機が艦隊上空で空中戦を繰り広げ、

 低空を飛ぶソードフィッシュがUボートを見つけたのか、爆弾を投下していく、

 ノルウェーのドイツ軍陣地に艦砲射撃が始まると、

 旧式輸送船と小型船が海岸線へと乗り上げた。

 無茶な上陸作戦だったものの、上陸用舟艇の数が揃っておらず、

 将兵をノルウェー沖の海水で濡らすよりいいと考えられていた。

 米英軍10万が上陸を開始すると、ドイツ軍は体制を立て直しつつ後退し、

 艦砲射撃がドイツ軍守備隊を追いかけるように砲撃していく、

 「上陸作戦は成功しそうだな」

 「ドイツ戦艦部隊とUボートの攻撃を防ぎきれば大丈夫でしょう」

 「それが最大の問題だよ・・・」

 「来ました」

 「な、なんだ。まっすぐ、こっちに・・・命知らずか」

 戦いは薄い雲が垂れ込め、星の見えない夜間に起きた。

 ドイツの戦艦部隊とUボートとSボートが橋頭堡を守る米英艦隊に迫り、

 灯火管制で、レーダーを睨んでいた将兵たちは、

 洋上と空中から幾つもの光点が近づいていることに気づいた。

 吊光弾と星弾が橋頭堡上空や艦隊上空を照らし、海上に艦影を浮かび上がらさせた。

 戦力で勝る米英艦隊は乱戦をのぞまなかったが、

 戦力で劣るドイツ艦隊は、乱戦をのぞんでいた。

 ドイツの無線誘導の無人Sボード魚雷艇12隻が上陸作戦艦隊に突入し

 吊光弾と星弾を打ち上げたのだった。

 そして、砲撃と機銃掃射を受けて次々と爆発していく、

 そして、幾つもの水柱が立ち上り、対潜警報が鳴り響き、

 上陸作戦船団の船が火災を起こすと、火災で浮かぶ艦影を目標に砲撃戦が始まる。

  戦艦ビスマルク、ティルピッツ、シャルンホルスト、グナイゼナウ、

      重巡3隻、駆逐艦25隻、Sボート30隻、潜水艦36隻

 戦艦ビスマルク 艦橋

 「敵戦艦は13隻らしい」

 「ランチェスターの法則で、4対13は泣きたくなる差ですよ」

 「では、差を縮めよう」

 提督はレーダーの光点で敵艦隊の位置を測ると、経験で敵の全容を見当付け、

 脆弱な方向に艦隊を移動させていく、

 外線を移動するドイツ艦隊と内線を移動する米英艦隊ならば、低速でも米英艦隊が有利だった。

 しかし、輸送船団を守ろうとするアメリカ戦艦部隊と、

 ドイツ戦艦部隊を殲滅しようというイギリス戦艦部隊の連携は取れておらず、

 4対13だったランチェスターの法則は、4対6となり、更に4対3となっていく、

 むろん、潜在的な敵戦艦は依然として4対13だったものの、

 ドイツ戦艦部隊はイギリス戦艦部隊に対し、T字戦を仕掛けられる位置に達した。

 そして、砲弾を撃ち出す速度でビスマルク型戦艦は米英戦艦よりやや早く、

 シャルンホルスト型は、完全に速かった。

 20000m以下の距離で始まった夜間砲撃戦は、暗闇の4割を照らす様な激しさで

 戦艦と戦艦が互いに標的を定めて撃ち合い、

 巡洋艦と駆逐艦が敵艦を求めて闇雲に突撃していく、

 数百発の吊光弾と星弾が闇を照らし、

 数十隻の艦船が紅蓮の炎の混ざった黒煙を吹き上げていた。

 砲弾が飛び交い、海中を魚雷が交差していく、

 爆発と爆音が轟くたびに鋼材が四散し、大気が震え、艦隊無線で阿鼻叫喚が流れる。

 ドイツ戦艦部隊は上陸船団の中に飛び込み、

 周りはすべて敵艦隊となっていた。

 リヴェンジ、ラミリーズ、ロイヤル・サブリンが沈み、

 テネシー、カリフォルニアが沈みつつあった。

 

 戦艦ニューメキシコ 艦橋

 艦首右舷側に8度ほど傾いていた。

 砲弾がグナイゼナウに向かって撃ち出されていく、

 距離が近過ぎて356mm砲弾も282mm砲弾も致命的な損害を受けていた。

 砲弾が命中するたびに装甲が撃ち破られ、衝撃で艦の傾きが酷くなっていく、

 これ以上、傾くと、砲撃の命中率がもっと下がるだろう。

 「艦長。正面。味方の輸送船です」

 「面舵!」

 「そ、それでは、商船を盾にすることに」

 「今更、航法を変えられん」

 「輸送船団を沖に引き上げさせろ」

 「まだ物資の揚陸が終わってない船も多いようです」

 「もういい。敵艦と味方艦が混ざっていて、わけがわからない」

 「艦長。ドイツ艦隊が橋頭堡側に舵を切ってます」

 「食い止めろ! グナイゼナウを逃すな」

 輸送船は、アメリカ戦艦部隊と、ドイツ戦艦部隊との間に割り込んでジリジリと擦れ違うが、

 砲弾が輸送船に命中したのか燃え上がる。

 

 

 ビスマルクが輸送船を避けきれず、船腹を突き破って押し割っていく、

 輸送船は浮力を失って、ズブズブ沈んでいくが、ビスマルクの速度を落とすことに成功していた。

 砲弾がビスマルクに集中し始めるが、

 後続のティルピッツが先頭艦となり、ドイツ艦隊の指揮を取っていく、

 戦艦ティルピッツ 艦橋

 「艦長。前方11時。距離17000m。正面にオクラホマ型が回り込みます」

 「オクラホマに集中しろ。中央突破する」

 ティルピッツも米英戦艦の主砲弾を20発以上が命中してボロボロになっていた。

 7つの閃光が輝くと、黒い砲弾が迫ってくる。

 寿命が縮まるような刹那、衝撃がティルピッツを揺るがした。

 2番砲塔に当たった砲弾が空に弾かれ、別の砲弾が左舷の対空砲を薙ぎ払って爆発した。

 「右舷。命中しました」

 「撃ち返せ!」

 47口径381mm3連装2基6門から砲弾6発が撃ち出され、

 4発がオクラホマの中央に命中し、艦橋と煙突と連なる設備を突き破って爆発した。

 次の2斉射がオクラホマの艦尾第3砲塔と第4砲塔に命中し破壊してしまう。

 「艦長。ビスマルクが動き出しました」

 「そうか。取舵」

 ビスマルクは、輸送船を突き破って、押し沈め、ボロボロになりながらも追いかけてくる。

 ドイツ戦艦は、ボロボロになりながらも浮かび続け、

 航空攻撃を恐れたのか、夜明け前に後退していく、

 

  アメリカ戦艦

     ネバダ、オクラホマ

     ニューメキシコ、ミシシッピ、アイダホ。

     テネシーカリフォルニア

  イギリス戦艦

     クイーン・エリザベス、ウォースパイト、ヴァリアント

     リヴェンジラミリーズロイヤル・サブリン

 

 

  米英空母機動部隊

   エンタープライズ、ヨークタウン、軽巡1隻、駆逐艦7隻

   イラストリアス、ヴィクトリアス、駆逐艦1隻、駆逐艦6隻

 翌日、ノルウェー沖に進出した米英機動部隊がドイツ戦艦部隊に止めを刺そうと、

 攻撃部隊(F4F100機、ドントーレス122機、アベンジャー23機)245機を出撃させる、

 対し、ドイツ空軍はクリスティアンサンからフォッケウルフ50機を出撃させ、

 ドイツ海軍は、グラーフ・ツェッペリン、駆逐艦3隻を前進させて、零戦80機を発艦させた。

 そして、ビスマルク、ティルピッツ、シャルンホルスト、グナイゼナウを巡って375機が乱舞する激戦となった。

 

  アメリカ戦艦 ネバダ。  ニューメキシコ、アイダホ。

  イギリス戦艦 クイーン・エリザベス、ウォースパイト、

 一方、帰還中の米英戦艦部隊は、Uボートに雷撃されてネバダとクイーン・エリザベスを撃沈される。

 

 5月 

 ウィルヘルムスハーフェン港

 ビスマルク、ティルピッツ。シャルンホルスト、グナイゼナウがドック入りしていた。

 日本外交武官たち

 「ビスマルクは魚雷3本。主砲弾43発」

 「ティルピッツは魚雷2本。主砲弾32発」

 「シャルンホルストは魚雷3発。主砲弾21発」

 「グナイゼナウは魚雷2本。主砲弾17発」

 「よく生き残ったな」

 「なんか、目立つからって集中的に砲撃されたんじゃないかな」

 「ドイツ艦の頑丈さと、日本の造艦技術のコラボだからね」

 「だけど、これだけやられたら撃沈されたのと同じでは?」

 「というより、ノルウェーが回復できないなら、戦艦いらないだろう」

 「解体して戦車にすればいい」

 「というか。ドイツは鉄鉱石が手に入らないと負けるのでは?」

 「米英旧式戦艦部隊の生き残りもほぼ大破してると聞いてるし」

 「それは、連合軍がスタバンゲル街を維持できるかによると思うよ」

 「いや、もう、無理だろう」

 「だけど米英海軍も旧式戦艦はほとんど沈んでいる」

 「新型戦艦の艦砲射撃だけでは、大陸反攻はできないんじゃないか」

 「それはある」

 「しかし、ロケット弾で代用できそうな気もするがな」

 「なんにしても、Uボートは、ビスケー湾から出撃させればいいし、ドイツは、まだ戦えそうな気がするね」

 

 

 ヨシフ・スターリンの指示によりコミンテルン(第3インターナショナル)が解散。

 

 ヨーゼフ・メンゲレがアウシュヴィッツ収容所の主任医療士官に就任。中学生以上の学徒勤労動員決定。

 

 

 独ソの戦力比がドイツ軍優勢からソビエト軍優勢に変わったとき、

 ソビエト軍は、守勢から攻勢へと変化していく、

 ドイツ占領地レーニングラード

 88mm砲がT34戦車を吹き飛ばした。

 「ロンメル将軍。敵左翼の厚みが大きくなってるようです」

 「レーニングラードを孤立させる気のようだな」

 「どうされますか」

 「孤立させればいい。ソビエト軍に最大限の被害を与えろ」

 「はっ」

 レーリングラード郊外はラドガ湖から、

 日本租借地イダ=ヴィル県まで対戦車塹壕と堡塁によって囲まれ、

 配置されているドイツ空軍戦闘機部隊も優秀だった。

 北方軍集団司令官ゲオルク・フォン・キュヒラー元帥は、

 レーリングラードを孤立させてもソビエト軍に最大の損害を与えるべきと判断し、

 ソビエト軍の大攻勢は、ドイツ軍の機動戦術により惨憺たる損害を負うことになった。

 そして、ソビエトの攻勢もエストニアで止まる。

 エストニアは、日本の補給で5個師団ほどの再軍備に成功しており、

 仮にエストニアを制圧しても

 エストニア・イダ=ヴィル県(3364ku)だけは、1990年まで日本の租借地になっていた。

 例え、それが日本の旗だけであったとしても、明確な日本侵略で、

 極東で日ソ戦争になることを意味した。

 そして、日本と戦争になれば朝鮮利権は消え、

 カムチャッカ半島とハバロフスクの防衛が困難である現実も直面させられる。

 獅子身中の虫を抱え込みながらエストニアを再占領するより、

 そのまま独立させて圧力をかけた方がマシだった。

 そして、レーニングラードは、キュヒラー元帥の思惑通り、

 海路からの補給と北欧道との交易で戦力を維持することができた。

 レーニングラードの工場

 1500両めのT34戦車と300両めのM4戦車が修理と塗装が施され、

 ハーケンクロイツのマークが描かれ、前線に向かって移動していく、

 レーニングラードには、4号戦車200両と、5号タイガー戦車50両が配備されていたが、

 主力戦車は捕獲したT34戦車だった。

 「将軍。ついに孤立させられましたね」

 「ちょび髭の本国と陸路で切り離されただけだ」

 「港湾があって。フィンランドと日本の後ろ盾があるなら燃料、銃弾、食料も尽きない」

 「少数の兵力で長大な戦線を守るより、港湾のある要衝に孤立させられたほうがましだ」

 「ですが、北方集団が分断されてしまったのは問題にされましたよ」

 「まぁ 北方軍はブッシュ元帥に任せてるし」

 「彼には、レーニングラードはいいから、軍を再編して防備を整えろと伝えている・・・」

 「って、おい、そこの空軍大尉。待て、どこに行く、何してる!」

 「・・・・・」

 「い、いや、その・・・今日は、大戦果の予感がして、耳元で天使が囁くんですよ」

 「T34を撃破できるとお告げがあったんです」

 「傷口が開いてんじゃないのか。頭の包帯が血で滲んでるぞ」

 「い、いや、これは、さっき、リンゴをかじって歯ぐきから血がでて、それを手で拭いて、頭に触ったんですよ」

 「よくあるでしょう」

 「包帯巻いたパイロットを戦場に出すわけには行かん」

 「い、いま、包帯を取ります」

 「こ、この馬鹿を病室に連れていけ、歩哨をつけて、外に出すな」

 「はっ」

 “こら、放せ、敵前逃亡幇助する気か”

 “命令ですから”

 “俺は上官だぞ”

 “面倒をかけさせないでください”

 “いや、待て、お前たち、モテたいだろう。モテたいよな。彼女を紹介してやるぞ”

 “結構です”

 “”

 “”

 空軍大尉が兵士に連行されていく、

 「ったくぅ あいつに死なれでもしたら、俺の経歴がどうなるか、気が気でならんよ」

 「英雄を殺した司令官として名を残すでしょうね」

 「・・・・・」 ため息

 

 

 

 神籬でガラス繊維の生産が進むにつれ、

 鉄鋼の代わりに使われ、軍用でも採用されつつあった。

 呉

   8000t級大淀型巡洋艦

    全長192m×全幅16m×吃水6m

    ディーゼル機関電気推進80000馬力   速力32kt  航続距離 16000海里/18kt

    65口径150mm3連装砲2基   71口径88mm連装砲4基   83口径37mm連装機関砲6基

    魚雷4連装2基     投射基2基・投下基4基 爆雷48個

    水上機6機

 

   2000t級陽炎型駆逐艦

    全長114m×全幅11.8m×吃水3.9m

    ディーゼル機関電気推進40000馬力   速力31kt   8000海里/18kt

    65口径105mm砲4門  83口径37mm機関砲4門

    魚雷4連装2基      投射基2基・投下基4基 爆雷36個

 関係者たち

 「随分、凡庸な軍艦だな」

 「凡庸でないのは素材だよ」

 「高い素材だ」

 「ガラス繊維は、錆びないのがいいよ」

 「大砲撃ったら衝撃で台座が歪んだりしないだろうな」

 「全部、ガラス繊維というわけでもないし。そのへんの計算くらいしてるだろう」

 「空母と潜水艦を除けば、8000t級大淀型と2000t級陽炎型が海軍の主力になるのかね」

 「むしろ、一艦種6000t級で統一した方がよくないか」

 「それより、空母が海軍主力でいいのか疑わしい気もするが」

 「ドイツはUボートで戦果を上げてるから、潜水艦に力を入れるのも悪くない」

 

 

 日本

 朝鮮共和国独立と米英ソ朝4ヵ国同盟は、日本の国家安全保障を著しく脅かしていた。 

 西日本から日本海にかけて軍事基地が建設されるようになり、

 太平洋から東日本にかけて産業基盤が移動していく、

 バトルオブブリテン、バトルオブドイッツランドの本土爆撃は、日本の国防にも大きな影響を与え、

 国防基本法制が敷かれていく、

 戦争でもないのに莫大な国債が発行され、

 山を刳り貫いてトンネルを掘り、基幹産業を移していく、

 仙堂と角浦が工事の様子を見ていた。

 二人とも結婚相手と御神木との関係にある程度気づき始めていた。

 当然、御神木のある山を掘られると、子供たちの結婚候補に支障が出るかもしれず、

 様子を見に来ていた。

 「えらい、探しまわったよ」

 「神社仏閣の御神木と一致してないことがあるんだな」

 「一応、御神木から離れた場所を掘るけど、御神木と子供の法則性はわかりにくい気がする」

 「地脈じゃないの」

 「陰陽道は、少し疑わしい気がするね。ズレがある」

 「呪術だが嘘を書いてるんだよ。嘘に気づいた者だけが使える」

 「地下工場は、どのくらい掘るって?」

 「トンネルを連ねて、床面積で100万uになるらしい」

 「大工場じゃないか」

 「なんにしても西側は、ここで止めるように釘を刺したよ」

 「まぁ 地脈なんたらは別にして、用心が必要だな」

 「だけど、同じ規模の地下工場を九州に4つ、四国に2つ、中国に2つ、中部に4つ」

 「関東に8つ、東北に8つ、北海道に4つ、南樺太に2つ、大連州に3つ、台湾に5つ建設するらしい」

 「海外地でも2、3個は作るそうだから、相当な出費になるな」

 「一応、御神木との位置関係を確認した方がいい」

 「地下だからそれほど影響はないとは思うがね」

 「用心だよ。用心」

 「あと、地下の石油備蓄も1億2000万バレルを目標にしている」

 「これも御神木との位置関係を確認しておかないと。真下に作られると面倒だ」

 「しかし、御神木が人に付くって聞いたことないな」

 「人につくというより、人と移動していろんな感覚を感じたいだけなのかも」

 「取り敢えず、木工12ギルドで、全員押さえるべきだろうね」

 「というより、ほとんどが木工関係で才能を見出してる気がするね」

 「全員を確認してないけど、木以外にって人間も多いと思うよ」

 「まぁ 御神木の立場にすれば木は、もういいやなんだろうけど」

 「しかし、図面を見れば見るほど規模が大きいな」

 「軍部は、爆撃されても工場を平常稼働できるって自慢しているがね」

 「それはいいとして、工場建設するのに、どんだけ、石油と鉄鋼を使う気なんだろうな」

 「昭和元寇に備えろってことじゃないの」

 「昭和米寇というべきか、昭和共寇というべきか、昭和朝寇というべきか・・・」

 「まぁ ガラス繊維も売れるから助かるけど、逆に引き籠もっていいものかどうか」

 「ドイツの絨毯爆撃の映像を見れば、引き籠もりたくなる状況だと思うよ」

 「ゼネコンが伸びてる割に、木工12ギルドが健在なのは助かるけどね」

 「幸幣をたくさん作って欲しいらしいよ」

 「円札を刷ると利息がかかるから、幸幣で水増ししないと破綻する」

 「国民全員に破綻分を無利息無担保であげて、税金で回収すればいい。それでチャラ」

 「ふっ 資本主義で、そういうのはできない貸し借りの縛りがあるようだ」

 「貸し借りで生じて膨れ上がる利息をどうする気なんだろうな」

 「自縄自縛の金融詐欺か。馬鹿馬鹿しい」

 「とういうよりまともにやると民主主義が殺される」

 

 

 

 

 

 6月 

 潜入した朝鮮人による戦艦長門爆破未遂事件

 特高たち

 「隠れ朝鮮人で。吊るし上げても朝鮮共和国政府に届きませんでした」

 「やれやれ、教育の成せる業とは言え、大したものだな」

 「教育というより国情と民族感情でしょう」

 「朝鮮共和国は既に米英ソの属国状態で失うものがなく、列強同士が戦争すれば成り上がりの機会もある」

 「日本は大国の合間で辛うじて独立していて、戦争になれば国家存亡の危機ですからね」

 「朝鮮民族は、その国情の差を骨身に染みて生霊化してるし」

 「日本人は、国体存続のため慎重にならざるを得ませんね」

 「朝鮮共和国政府に辿り着けないとなったらどうしたものか」

 「日本海海岸線を高くして朝鮮人の侵入を防ぎ。国交断絶を続けるよりない」

 「しかし、朝鮮共和国も連盟加盟国で、日本は国産連盟の本部国」

 「完全に国境を閉ざすことは不可能だし」

 「なにより、米英ソ資本の朝鮮開発が日本経済を底支えしている」

 「じゃ 長いモノに巻かれて事莫れに済ませるしかないのか」

 

 

 

 第82臨時議会召集。

 「大戦で世界中が軍拡中である」

 「我が国も軍事力を増強すべきだ」

 「海外地は、まだ開発を必要としている。予算の関係で師団の増設は好ましくない」

 「コンクリートの高速道路建設は伸びているし。橋も重量貨車を移動させられる」

 「主力戦車を22.7t級97式戦車から25t級1式戦車に切り替えるべきではないか」

 「1式戦車では、M4戦車にもT34戦車にも勝てないだろう」

 「44.8t級2式戦車パンターと57t級3式戦車タイガーなら勝てるのでは?」

 「それこそ、破産する」

 「南米諸国に武器を売る話しは、どうなってるのかね」

 「これ以上、南米と取引すると、石油やくず鉄を売らない。経済制裁すると警告されている」

 「石油なら中東から輸入すればいいでしょう」

 「ここは、南米諸国と連携すべきだ」

 「朝鮮のアメリカ空軍は1000機を超えている」

 「我が国の戦闘機だって負けていないだろう」

 「負けていないからといって戦争したいわけじゃない」

 「南米諸国との取引は継続すべきだ」

 「まぁ 瑞森経由という方法は使えなくもない」

 「だが南米諸国が味方になるという保証はないだろう」

 

 

 

 

 

 7月

 モスクワ

 半壊した建物が多かったがドイツ軍を押し返したロシア人は誇りに満ちていた。

 モスクワ大学横の体育館には、板張りの部屋が作られ、

 面を被り黒装束の男が竹刀をもって立ち会う、

 40年の東京オリンピックで柔道をオリンピック種目にできたことで、

 日本の国威は強まり、

 44年の名古屋オリンピックで剣道のエキシビションを行うことが決まっていた。

 米英ソと独伊は、オリンピックでも争っており

 全力て相手国を叩きのめす気でいた。

 ソビエトが剣道のエキシビション参加を決めたのも外交戦略上の延長であり、

 正式種目化までにメダル候補を揃える気でいて、

 日本の外交武官で剣道の有段者がロシア人に剣道を教えていた。

 『首都を解放したばかりだというのにオリンピック参加を考えられるロシア人というのは・・・』

 たぶん、権力中枢に近い男か、本当に期待されてる男たちが選ばれており、

 目の前の男は、元軍人で大柄の男だった。

 一通り、剣術を教えたが、サーベルの使い方の方が慣れているように思われた。

 我流で突撃して、まっすぐ竹刀を振り降ろしてくる

 その竹刀を払い、面を食らわせる。

 あっというまの交差で、勝負がつき、

 道着を着て見ているロシア人たちも顔色を変え、

 勝ったはずの外交武官を慌てさせる。

 重い竹刀を払いのけるのに力が必要で、面を打つ機会を危なく逃すところだったのだ。

 『ロシア人は、力強いな。熟練してきたら危ないかも・・・』

 

 

 イギリス ロンドン

 ブルドーザーが瓦礫を片付け、徐々に再建が進んでいた。

 F4Fワイルドキャットが滑走路に並び、

 ハンガーで組み立てられたP38ライトニングが並べられていく、

 アメリカ軍将校たち

 「もうすぐで、護衛戦闘機が揃う、ドイツ本土を爆撃できるはずだ」

 「なんとも反撃が遅い気がするが」

 「アメリカの参戦が遅れたのが原因でしょう」

 「ズタボロになってからの参戦じゃなぁ」

 「本当は、日本の参戦に期待してたのだが」

 「日本を不況に追い込もうとしたが失敗したらしい」

 「日本に石油を売らなければ不況だろうが」

 「朝鮮三竦みで、日本に石油を売らずにいられない状況に追い込まれたらしい」

 「朝鮮なんか取るからだ」

 「3カ国で共同統治しないと、ソビエトに取られたし」

 「・・・・・」 ため息

 

 

 

 ベネズエラ

 日本製VIIC型潜水艦12隻が入港してくる。

 日本は日独技術協定により、ドイツ潜水艦を建造できたことから、

 ドイツ型潜水艦を海外に輸出してしまう。

 Uボートは建造するたびにライセンス料が日本からドイツのスイス口座に振込まれる。

 連合国は、怒り心頭で日本を非難するのだが、

 実績のある軍艦を輸出して少しでも資源を手に入れる必要があった。

 そして、乗員は日本で訓練したベネズエラ人で、

 世界中の中小国が人材を日本に派遣し、日本で海軍教育を受けていた。

 つまり、潜水艦や軍艦が本国に回航された時点で実戦可能で、

 気付けばいきなり軍事的に独立している状況に直面する。

 カフカス港

 日本人たち

 「Uボート型潜水艦の輸出か。また、凄い嫌がらせだな」

 「凄いのは中型潜水艦を何百隻って、建造してるドイツだと思うね」

 「日本は、中南米と中米に合わせて100隻も輸出できれば御の字だ」

 「中南米や南米諸国が、ドイツにUボートを輸出してくれたら面白いがね」

 「むしろ、戦後の独立のために売らないかもしれないが軍事的に自立させればいい」

 「そうなったら、ドイツは敗戦と同時にUボートを手土産に中小国家に逃亡する」

 「そして、中小国は、一気に倍の戦力になるかもしれない・・・」

 日本のタンカーが出港していく、

 日本は中東とベネズエラと東南アジアの石油依存度を増やし、

 アメリカの石油依存度を40パーセントにまで減らしていた。

 「問題は、武器を輸出し、軍事的に独立させたあと、工業的に独立していく」

 「国家として独立しあと、どう、選択するか。なんだよな」

 「どう、選択するかって?」

 「アメリカ側についちゃうかもしれないだろう」

 「まぁ それもあるがね」

 「遠交近攻なら日本と組むよ」

 「だといいけど」

 

 

 日本領 大連州

 日中交易振興協会

 中国代表がどっさりと契約書を持ってくる。

 どう見ても日本が有利な交換比で、驚く、

 「これは・・・これまでの3割増し。よろしいので?」

 「もちろんある。資源ならいくらでも渡すある」

 「だから兵器と武器弾薬が欲しいある」

 「そ、そりゃもう、この条件なら安いものですよ」

 「その代わり、契約期間は必ず守って欲しいある。罰則付きある」

 「ええ、大丈夫ですよ。そちらの持ってくる資源を加工するだけですから」

 「では、契約成立ある」

 「了承しました」

 握手

 

 

 8月

 米英・自由フランス占領下のアルジェリア

 アルジェ飛行場にB17爆撃機とP38ライトニングが配備され、

 フランスからイタリア。地中海を渡って北アフリカのイタリア領リビアを脅かしていた。

 チュジニアは米英と独伊が航空戦と海上戦と地上戦の焦点となり、

 米英軍と独伊軍が激しい戦闘を繰り返していた。

 日本外交武官たちが渓谷を巡る戦闘を映していた。

 映像は、ドイツ軍や日本軍で活用され戦訓として利用される。

 低空で侵入してくるP40ウォーホークが機銃掃射しながら去っていく、

 風を切るような音が降ってくると身が縮む、

 爆弾が塹壕近くに落ち、爆発と爆音とともに弾片や小石が音速を超えて四散し辺りをかすめ、

 火薬の混ざった土埃を降らせた。

 「あ、危ねぇ」

 「戦線から結構、離れてるのに、立体的な戦場だな」

 「戦車で突進すれば30分の距離だよ」

 「なんか、練度の高さで生き残れる可能性が日露戦争の時より減ってる気がする」

 「そりゃ 戦場から数キロ後方でも機銃掃射されたり、爆弾が落ちて来るってなかったからな」

 「日本軍は、第一次世界大戦で大きな戦闘を経験していない」

 「日露戦争から39年だから、いざ戦争になったら涙目になるぞ」

 「当事者でなくても泣きたくなるね・・・」

 ドイツ士官が駆け寄ってくる。

 「おい、ヤパーネス。後退するぞ」

 「へっ なんで?」

 「アメリカの戦艦ノースカロライナ、ワシントン、サウスダコタが海岸線を東進している」

 「この位置だと、艦砲射撃の射程内に入る」

 「あの装甲車に乗れ」

 「わかった」

 数分後、大口径砲弾が降り注ぎ、

 血路を開いたアメリカ師団が前進を開始する。

 

 

 米英と独伊の航空部隊が航空戦を展開する中、

 海岸線を東進するワシントン、ノースカロライナ、サウスダコタ、重巡2隻、軽巡2隻、駆逐艦6隻と

 海岸線を西進するヴィットリオ・ヴェネト、リットリオ、ローマ、重巡2隻、軽巡2隻、駆逐艦8隻がかち合う。

 陽は西に傾き、アメリカ戦艦部隊は、逆光になり、

 イタリア艦隊は、闇に隠れつつあった。

 南はアフリカ大陸の海岸線が横たわっていたため北上するよりなく、

 ほぼ、拮抗する戦力同士がぶつかったため、退くことができなくなったのか、

 互いに3隻の戦艦が北上しつつ、27000mの距離を保ちつつ主砲弾を撃ち合った。 

 敵戦艦に魚雷を放つため水雷戦隊が戦艦の手前に割り込み、

 砲撃しつつ、敵艦隊との間を詰めつつ雷撃のチャンスを伺う。

 百数十もの水柱が立ち昇る中、時折、爆炎と爆発が大気を揺るがし、

 鋼鉄が破壊される嫌な響きが海洋に広がる。

 互の艦隊から紅蓮の混ざった黒煙が狼煙のように立ち上り、風に吹かれていく、

 チュジニアの海岸から40kmほど北上するとガルテ島(5.4km)ほどの島があり、

 アメリカ戦艦部隊とイタリア戦艦部隊は、島を挟む形で、さらに距離を詰めていく、

 そして、イタリア艦隊が珍しく積極的な海戦を担保していた艦隊が

 アメリカ戦艦を挟み撃ちする形で南下してくる。

  26434t級戦艦カイオ・ドゥイリオ

  23088t級戦艦コンテ・ディ・カブール、ジュリオ・チェザーレ

 43.8口径320mm砲10基×3隻は、戦艦として弱兵だったものの、

 勢力が拮抗し、互いにボロボロになっていたとき出現し

 護衛艦隊のいない方向に進路を執ったのだから決定的な役割を果たした。

 カイオ・ドゥイリオ 艦橋

 「撃て! ヤンキーを地中海に踏み入ったこと後悔させてやれ!」

 アメリカ戦艦部隊で先頭を走っていた戦艦ワシントンは、

 3時方向を走るヴィットリオ・ヴェネトと撃ち合っていたが、

 10時方向から降り注ぐ320mm砲弾15発に撃ちのめされる。

 初弾から2発が命中し、ワシントンからさらに黒煙が吹き上がる。

 生き残ったアメリカの護衛艦隊は煙幕を貼るが北北西に流れるが、既に勝敗は決しつつあった。

 2斉射、3斉射、4斉射が撃たれると、装甲の厚いワシントンであっても満身創痍となり、

 速度を落としつつ誘爆を繰り返し、黒煙に包まれていく、

 カイオ・ドゥイリオ、コンテ・ディ・カブール、ジュリオ・チェザーレは、ノースカロライナに照準を定めた。

 ノースカロライナもリットリオとの砲撃戦で中破しており、

 新たに現れた戦艦部隊に対応するすべがなかった。

 陽は沈んではいたが、戦艦6隻は松明のように洋上を照らし、

 それでも互いの敵に向けて主砲を撃ちだしていた。

 大音響が海上を支配すると、ほとんどの将兵がそれを注視する。

 沈黙していたアメリカのワシントンが弾薬庫が誘爆したのか二つに折れて沈没していく、

 カイオ・ドゥイリオ、コンテ・ディ・カブール、ジュリオ・チェザーレの砲撃がサウスダコタに集中する頃、

 ノースカロライナはズブズブと沈み、

 サウスダコタは、至近距離から320mm砲弾80発が撃ち込まれ、艦橋が折られ、

 ヴィットリオ・ヴェネトとリットリオの381mm砲弾2発が命中すると横倒しになると艦底を見せながら沈んでいく、

 このガルテ島沖海戦はアメリカ戦艦部隊全滅で、イタリア艦隊の勝利となったが、

 アメリカ人を怒らせたことに変わりなく、

 3日後の深夜、アルジェ飛行場を飛び立ったP38ライトニングと、B17爆撃機は、

 洋上を低空で飛行しつつシチリア島を迂回し、

 それまで、気乗りしなかったローマとナポリの戦略爆撃を強行した。

 絨毯爆撃は、歴史的建造物を次々と破壊し、ローマ市民とナポリ市民を恐慌に陥れた。

 

 ナポリ港

 ヴィットリオ・ヴェネト、リットリオ、ローマ、

 カイオ・ドゥイリオ、コンテ・ディ・カブール、ジュリオ・チェザーレ、

 イタリア戦艦部隊は、アメリカ戦艦部隊を全滅させ、米英爆撃部隊に攻撃されながらも凱旋を果たした。

 旧型戦艦3隻は、ほぼ小破だったものの、

 新型主力戦艦3隻は大破で、ようやく浮かんでいる状態でドック入りしていた。

 日本の外交武官たちがイタリア艦隊の情報を集めていた。

 「3隻とも酷い損害だが、大丈夫なのか?」

 「いや、イタリア人は、ローマとナポリが絨毯爆撃されたことのほうがショックが大きいようだ」

 「どうするんだろうね」

 「チュニジア戦で負けたら、たぶん、リビアまで取られそうだし」

 「それだけでイタリアは白旗をあげそうだな」

 「意気地がないというか。なんか、第一次世界大戦と変わらんな」

 「ドイツが第2航空艦隊を増強するって聞いたけど」

 「ドイツも本土が爆撃されてるのにイタリア本土防空までやらされるなんて、大変だな」

 

 

 東京

 平安宮 は、関東大震災後、焼け野原となった一角が買われ、

 世界最大の耐震木造建築 (東西250m×南北60m×全高60m) として、建設された。

 議場は、東西50m×南北35m×高さ23mの空間があって、1500人以上を収容でき、

 本来、国会議事堂として使えそうな建物だった。

 しかし、落成する頃、戦争が始まり、スイスで国際連盟の仕事が遂行できなくなり、

 イギリスも戦争当事国となって、日本に国連本部が移り、国際連盟本部議事堂となった。

 その重厚な木造りは、各国代表を驚嘆させる。

 “絨毯爆撃は、女子供を殺傷する国際法違反である”

 “ド、ドイツは、侵略国である。これは、決して許されるものではない”

 “国家の戦争権を破棄する国際協定を結ぶというのなら即時停戦を検案してもいいが”

 “ド、ドイツもロンドンを爆撃して女子供殺したのだ”

 “イギリスが有利になったからと言って、今更、国際法を持ち出されても困る”

 “バトルオブブリテンにおいて、ドイツが爆撃していたのは軍事基地”

 “イギリスは、先に都市爆撃を行い、ドイツはその報復で都市爆撃を行ったのは周知の事実”

 “非があるとするならイギリスではないか”

 “ドイツが侵略したのだ”

 “侵略がよろしくないというのなら、イギリスは植民地を全て解放すべきである”

 “し しょ 植民地は、未開地だから支配したのであって、国家ではなかった”

 “したがって、侵略などではない”

 “インドは国家だったのではないのですかな”

 “い、いや、インド藩王諸国とは、合意の上での英印連合である”

 “それに、今回は、ドイツの侵略を問題にしてるのであって、過去の話しなど蒸し返すべきではない”

 “問題にしてるのは、国際法違反についてであって”

 “国際法で放棄されていない戦争権や侵略ではない”

 “話をすり替えてるのはイギリスである”

 “い、今は、戦争中であり、国際協定は守りにくい状況にある。仕方がないのだ”

 “否! 爆撃するなら互いの軍事基地に限定すべきだ”

 “し、しかし・・・”

 “”

 “”

 そして、木造建築は、人々の意識に憩いや癒しな気運を作る効果があり、

 各国代表に少なからず影響を与え、

 国際的な非難が国際法違反を行おうとしているイギリスとアメリカに集まろうとしていた・・・・・

 「中国軍が朝鮮半島に侵攻したぞ!」

 木造建築で声は、反響することなく、吸収されるような響きだったが、

 議場に駆け込んだ連絡官の声が議場内に響いた。

 「「「「「・・・・・・・」」」」」」 呆然

 「「「・・・・・」」」 独伊中代表 にや〜

 それは、8月の15日のことだった。

 

 

 蒋介石総統の意識を変えてしまったのは、中国共産軍の殲滅と、

 資源と交換に日本から購入していた戦車で、

 10t級89式(1号)戦車1200両、15t級95式(2号)戦車1500両、

 22.7t級97式(3号)戦車2200両、25t級1式(4号)戦車500両、

 44.8t級2式戦車パンター200両の計5600両。総重量トン60900t程が配備されていた。

 砲弾を含むと100000t近くになり、

 師団当たり150両なら軽く35個師団を編成できた。

 ドイツの軍事顧問師団が中国軍を鍛えており、

 実質的に陸軍だけなら日本陸軍を超える戦力になっていた。

 そして、中国空軍は、アメリカとソビエトが支援したのか、

 I15、I16戦闘機2000機、92式戦闘機500機、

 カーチスP36戦闘機1800機、P40戦闘機200機、

 B18爆撃機250機、

 中国空海軍の強化は、資源の高騰で日本を苦しめるだけでなく、

 対日圧力と対ソ牽制は、アメリカとイギリスにとってもの望ましいことだった。

 中国陸軍の強化は、日本とドイツにとって好都合だったためか、

 中国軍は、双方からの購入と支援で強力な軍事国家へと変貌していた。

 むろん、ただというわけではなかった。

 日本は、中国への戦車・武器弾薬などの売却で、1億tほどの鉄鉱石や石炭を手に入れており、

 これらを加工した鋼材は日本の社会基盤を下支えしていた。

 そして、中国にすれば朝鮮半島は、開発されていながらも5個師団しか配備されておらず、

 米英航空部隊は二線級の数合わせで教育訓練部隊でしかなく、

 アメリカ艦隊も8割が大西洋シフト、2割の太平洋艦隊でさえ対日シフトしており、中国は眼中になく、

 それはそれは、無防備な宝の山に見えたのだった。

 そして、米英ソ軍の主力は地球の反対側で疲弊しきっており、

 ヒットラーから参戦すればユーラシア大陸を共同統治しようなどと、誘いを受けていたのだった。

 幾つかの情報戦と工作が行われ、

 朝鮮半島の各地で “扶華滅洋” のスローガンが掲げられると、

 朝鮮人と中国人による独立運動が大規模に行われた。

 アメリカ軍2個師団、イギリス軍2個師団、ソビエト軍1個師団は、

 武装蜂起した朝鮮人と漢民族の掃討に集中している間に、

 中国軍30個師団が鴨緑江と豆満江の国境線を突破すると、朝鮮半島を南下したのだった。

 米英ソ軍は、押し寄せる30個の中国機甲師団と、人海戦術によって蹂躙され、

 中国大陸の米英租界も中国軍によって制圧され、

 香港も陥落しつつあった。

 そして、ウラジオストックも人海戦術の波に押し流されつつあったのだ。 

 

 

 

 東京

 街宣中の扇動者たち

 「今がチャンスニダ!!!」

 「日本は戦争すれば勝てるニダ!」

 「英霊が戦死した魂の祖国。朝鮮半島と満洲を奪い返すニダ!!!」

 「日本軍は、絶対に勝てるニダ」

 「朝鮮人は、日本軍の上陸を待ってるニダ」

 「日本軍と中国軍でアメリカ、イギリス、ソビエトを挟み撃ちニダ」

 「絶対に勝てるニダ」

 「今が千載一遇のチャンスニダ」

 「日本人は、英霊のために戦うニダ!!!!!!」

 大都会の喧騒の中、

 日本人たちは、不安を抱えつつも忙しなく行き交っていた。

 

 

 総理官邸

 「朝鮮人と漢民族の扶華滅洋武装蜂起は、ドイツと中国人と朝鮮人の利害が一致したため起きたことのようです」

 「誰か知っていた者は?」

 「「「「・・・・」」」」

 「いったい、特高は、何をしていたのかね」

 「こちらに都合のいい、商談が幾つかありましたが戦争に繋がるとは思いませんでした」

 「そんなに好都合な商談だったのかね」

 「今後、10年は、日本の支援を一切、必要ないくらいでしょうか」

 「工場の増築と、日本人の工員10万人を募集しに来てたくらいですから」

 「戦争中も資源と交換に中国に武器弾薬を輸出しろということか」

 「はい」

 「やれやれ、戦争準備の常套手段だろうが、間抜けすぎる」

 「この情勢で朝鮮半島で武装蜂起と、中国軍が朝鮮半島に侵攻するとは思いませんでした」

 「中国軍は戦えるのか」

 「小銃や大砲。武器弾薬の生産だけは出来ると思いますが」

 「航空機や戦車となると、むつかしいかもしれません」

 「なんにしても、肩の荷が降りたきがするのだが」

 「そういえば、気分的に悪くないような」

 「確かに」

 「中国は引き続き日本に戦車を輸出するよう要請しています」

 「まぁ 資源をくれるのなら輸出してもいいが・・・」

 「アメリカとイギリスは、日本に参戦を要求してますが」

 「あははは、まさか・・・」

 「それはそうと、中国の朝鮮半島侵攻で、当面、米英ソ朝連合の脅威は薄れてます」

 「中禅寺湖近辺への遷都計画は、どうしますか」

 「んん・・・中国だろうと、アメリカだろう、ソビエトだろうと、航空機の時代だし」

 「朝鮮半島から日本本土爆撃は、距離的に難しくない」

 「政治中枢の安寧は、戦争継続でも必要だし」

 「武家筆頭征夷大将軍の建てた本城に朝廷が間借りしているのも面白くない」

 「何より、皇居を見下ろすのは不敬過ぎて、関東の高層建築建設の弊害になっている」

 「遷都計画は継続すべきだろうな・・・」

 扉が開いた。

 「総理。アメリカが戦艦の購入を打診してきました」

 「戦艦を・・・」

 「長門。扶桑、山城、伊勢、日向。金剛、比叡、榛名、霧島を売ってくれと」

 「また、無茶な」

 「石炭4000万トン。重油2000万トン。鉄鉱石1000万トンと交換に」

 「「「「・・・・・」」」」

 「い、いい加減、戦艦は古くなったし」

 「く、くず鉄ということでアメリカに売ったらいいんじゃないかな」

 「ど、ドイツとの関係が悪化したらどうする。北欧道がやばくなる」

 「んん・・・」

 

 

 

 中国の参戦は、アメリカの参戦で苦戦しつつあった枢軸国軍に勢いを与え、

 極東ソビエト軍は、南進を開始するが、本格的なものでなく、

 中国軍は人海戦術でソビエト軍を食い止めといった非人道的な戦闘で疲弊させ、

 機甲師団で追い返すといった戦略で、極東ソビエト軍と互角以上に戦っていた。

 大連州国境には、鉄鉱石や希少金属、石炭、石油が山積みとなり、

 大連州で生産された武器弾薬が次々と中国軍へ引き渡されていく、

 某工場

 3交替制が敷かれ、24時間フル稼働で、生産が進む、

 工場の拡張が進められ、日本で募集に応じた若者たちが入社してくる。

 海外地は、家族単位で企業を支えてもらうほうが労働生産と地域が安定するため、

 労働条件や生活水準は本土よりいいことが多かった。

 再生産で副産業や娯楽も急速に伸び、

 タコ部屋は一人一室となり、家族が住めるような社宅さえ作られていた。

 これはガラス繊維工場が建設され、建築資材が水増しされたためで、

 

 

 

 

 

 9月

 朝鮮半島 米英ソ租界地

 朝鮮半島は9割を中国軍に制圧されていたが、

 城塞都市と呼ばれる区画は、包囲されるだけで、占領できずにいた。

 アメリカ軍は、B17爆撃機を使って、慰留民をフィリピンに退避させようとしたが失敗、

 逆上陸を待つことになっていた。

 ソウル租界

 米英ソ連合司令部

 「艦隊と援軍はいつ来るんだ」

 「3週間後には・・・」

 「遅い」

 「いまは、英印軍とアメリカ軍をフィリピンに輸送させてますので」

 「それが終われば、釜山と江華島に師団を上陸させられます」

 「極東ソビエト軍は、何している」

 「人海戦術に阻まれ、疲弊した頃、中国に戦車部隊に反撃され」

 「なぜ、中国が戦車なんか持ってる」

 「日本が鉄鉱石や石炭と交換に輸出したようで・・・」

 「おい、日本人。どういうつもりだ・・・」

 建設関係の日本人代表が呼ばれていた。

 「ど、どういうつもりと言われましても・・・」

 「日本人が中国人を唆したんじゃないだろうな」

 「アメリカが航空機や戦艦を中国に輸出なんかするから付け上がるんですよ」

 「あ、あれはな・・・」

 「そういえば魚雷艇も輸出してましたね。中国沿岸は怖くて近づけませんよ」

 「「「・・・・・」」」 ぶっすぅう〜

 「日本人が朝鮮人を唆したんじゃないのか」

 「国交断絶してるのに、なに言ってるんですか」

 「だいたい、あんたたちが朝鮮人を唆して、日本に潜入させてたんじゃないんですか?」

 「と、と、とにかく、日本は軍艦を出して、民間人を救出させてくれ」

 「それは、そうしますが、中国軍は降伏すれば、生かしたまま、脱出船に乗せてやると」

 「信用できるものか!」

 「ですよね」

 

 

 アメリカ軍の緊急派遣部隊が編成されると、

 釜山や江華島に陸軍が上陸し、アメリカ軍による対中作戦が始まる。

 アメリカ機動部隊

   レキシントン、サラトガが艦隊防空を担当し、

   コロラド、ペンシルベニア、アリゾナが中国沿岸都市をの艦砲射撃し、

 夜明け前には、航空部隊の反撃を避け、洋上へ退避した。

 中国空軍は、陸軍航空部隊で航法を知らず、

 B18爆撃機でさえ、沿岸線の見えなくなるような沖に出ないようになっていた。

 戦艦 コロラド 艦橋

 「中国戦艦5隻は、出てこないな」

 「揚子江の上流に隠れてるのでしょう」

 「練度は推して知るべし、でしたから」

 「せっかく輸出した戦艦を撃沈しなければならないのは残念です」

 「米英ソ三竦みで軍事力が制限されていたとはいえ。土人のような中国軍に侵攻されるとは」

 「朝鮮半島が宝の山なのに無防備過ぎたのだ」

 

 

 10月

 北海道

 トドマツ、カラマツ、エゾマツ

 シナノキ、ミズナラ、ウダイカンバ、ハリギリ、カツラ、クルミ、

 多様な木々が成長していた。

 その多くは神籬が世話したことで、反りの少なさ、丈夫さで、世界的な評価を受けていた。

 木材なら2割増し、加工すると3割増し、

 木工細工の段階になると、木工12ギルドの作る木工細工は、外国製の同じ細工と比べて3倍の値段になることもあった。

 そして、外国産の木材でも2倍近くに跳ね上がるため、外国産の木材が日本へ輸出され、

 木工細工として、海外へと輸出される。

 この交易が日本と東南アジアと南米諸国を結ばせ、結束を強めた要因にもなっていた。

 「次はあの木・・・」

 ロバに乗った仙堂一樹は15歳、その手前にちょこんと座ってる加賀美は、8歳だった。

 一樹は、間引きの木を選ぶと、日付と時間を書き、

 職員が地図に書き込むと、伐採の札を木に貼っていく、

 大人だったら木々の成長具合、太陽、起伏、木々の間隔などで経験で選んでいくが、

 木仙たちは、観念的であり、別のものを見ていた。

 そのため、やや偏ることがあったものの、

 総合するなら大人たちの間引きより上手かった。

 「一樹にいぃ あれなに? お祭り?」

 「あれは、ダムじゃないかな」

 「水がいっぱい」

 「あれは、朱鞠内湖ダムが完成したそうです」

 

 

 東京都議会第1回臨時会開催。

 

 第83臨時議会召集。

 

 

 11月 

 アメリカ合衆国

 白い家

 情報局員が収集した情報を山ほど集めてくる。

 今更、手遅れだったものの中国参戦の手掛かりを知れば、覆せる策もあった。

 「蒋介石と、朝鮮人、漢民族、ドイツ人を追い詰め過ぎたこともありますが」

 「やはり、純軍事的に朝鮮半島占領が可能だったことが大きな要因でしょう」

 「中国参戦は、日本の策謀ではないと?」

 「日本代表は、知らなかった節もあります、中国参戦を聞いた表情は思考停止状態でしたから」

 「反撃は上手くいくだろうな」

 「朝鮮半島の中国軍は150万を超えています」

 「こちらの増援は、30万を準備しています」

 「城塞都市の租界地は今のところ守られていますが包囲され、孤立しています」

 「問題は、足場が弱いことでしょう」

 「日本の基地を貸してもらえ」

 「日本は、名古屋オリンピックがあるので中立したいと」

 「戦争よりオリンピックが大事か。そんなもの潰してしまえ」

 「アメリカ国民も、オリンピックだけは成功させたがってるようで」

 「厭戦機運に繋がらなければいいがな」

 「戦場でサッカーをされるよりマシなはずですよ」

 「航空機や戦車の時代にそんなことができるものか」

 「まぁ そうですけどね。良心がオリンピックを成功させろと囁くようで・・・」

 「「「「・・・・・」」」」 ため息

 名古屋オリンピックの成功は、そのまま、日本の国威を上げることを意味していた。

 「なんにしても日本は、フリーハンドで国際貿易ができるわけだ」

 「朝鮮半島は9割が占領され、インフラの半分が破壊されてますし」

 「逆に日本は戦争特需で、国力を付けることになりますね」

 「どうにも日本贔屓の神風が吹いてるとしか思えないのだが」

 「とにかく、中国大陸を封鎖して、一切の武器弾薬の輸出を禁止させろ」

 「それが中国は、日本の大連州を経由すれば、いくらでも日本と取引できるという・・・」

 「なんとか、日中交易を停止させろ!」

 「「「「・・・・・」」」」 ため息

 

 

 レバノン、自由フランス政府の独立承認により完全独立を達成。

 

 東京

 平安宮を挟む形で40階建て170mの金剛ビルと比叡ビルの兄弟ビルが建っていた。

 金剛ビルで、米英ソ三国首脳の東京会談(12月1日まで)が開催され、

 比叡ビルで、独伊中三国外相の東京会談(12月2日まで)が開催されていた。

 どちらも高々と大きな国旗を揚げて相手側を牽制する。

 むろん、首脳クラスが集まるルーズベルト、チャーチル、スターリンが政治外交で上位だったものの、

 東京の住人たちは興味深そうに二つのビルを見比べていた。

 喫茶店

 仙堂と角浦

 「警察が多いな」

 「何かあったら、首が飛ぶどころじゃないからね」

 「街が静かな割に緊張するね」

 「戦争当事国同士が国際連盟本部を挟んで牽制し合ってるからだろう」

 「しかし、この日を選んでやらなくてもいいだろうに」

 「国際政治ショーなんだろう。派手にやったほうが、勝ってる錯覚を覚える」

 「中小国を味方陣営に引き込めば有利になるしね」

 「どっちが勝つやら」

 「総合じゃアメリカ、ソビエト、イギリスだけどね」

 「ドイツ、イタリア、中国も善戦しているし」

 「南米諸国は、ドイツに同情的だ」

 「メキシコは、ドイツに宣戦布告したぜ」

 「面従腹背だよ。メキシコは味方の振りして、アメリカの内腹を狙うように戦車部隊を配置してるし」

 「アメリカも気付いていて、テキサス州に戦車師団を置いてる」

 「たぶん、メキシコが対米に踏み切ったら南米諸国は、一斉に義勇軍をメキシコに派遣するだろう」

 「ふっ そうなると楽しいな」

 「あと、中国は、朝鮮半島を手に入れたら、アメリカに並ぶ工業大国になるかも」

 「全人口の9割9分が小学生並みの教育しか受けてないのに?」

 「だけど、損得の計算だけは、日本人の十倍は早いぞ」

 「日本人は、損得で考えないことが多いからね」

 「逆に主従や損得だけが動機の日本人は、素性を疑う」

 

 

 ユーゴスラビア人民解放反ファシスト会議の第2回会合が開催され、

 戦後の政体について討議。

 

 

 

 成形炸薬弾の原型のノイマン効果は1910年に発見され、

 各国は、モンローの改良を経つつ実用化への道を推し進めていた。

 日本は、軍艦、戦車、航空機に大量の鉄鋼量を使うことができず、

 装甲の価値を低下させてしまうような武器は、意味があった。

 ドイツがパンツァーファウストを開発すると、日本陸軍でも成形炸薬弾を試作し、

 実験を繰り返した。

 噴射音と共にロケット弾が撃ち出され、標的を爆砕する。

 装甲板に小さな穴が空いてるのは、成形炸薬弾の特徴だった。

 関係者たち

 「いい感じじゃないか」

 「そうだなぁ 日本は山がちだし、海外地もジャングルが多い。もう、戦車いらないかも」

 「大連州が不安だったからな」

 「中国が朝鮮半島に侵攻して米英ソ相手に戦争しているから。逆に今は大丈夫だろう」

 「取り敢えず米中100年戦争やってもらえたら助かる」

 「「「「あははははは」」」」

 

 

 

 

 12月

 ドイツ軍機がノルウェーの橋頭堡スタバンゲル港湾を爆撃、

 アメリカ貨物船が爆撃され、積荷のマスタードガスが流出する大惨事となった。

 

 

 アメリカで1929年以来の世界恐慌の終結が正式に宣言。

 第二次世界大戦のための軍需生産によって失業者が急速に減少し、

 連邦議会の決定で公共事業促進局が廃止された。

 

 

 インターナショナルに代わる新しいソ連国歌が制定。

 

 第84議会召集。

 「戦艦を売るとは、何事か!」

 「石炭4000万トン。重油2000万トン。鉄鉱石1000万トンと交換ですし」

 「これだけの石炭、石油、鉄鉱石が得られるなら軽く、5倍の艦艇を建造できるので」

 「ば、バカを言うな。戦艦だぞ」

 「いや、国防のための戦艦であって、戦艦のための国防ではない」

 「世界中が戦争してるのにそんなことができるわけがないだろう」

 「オリンピックはどうなる」

 「ええ・・・ドイツ側は、遺憾であるが。オリンピックと関係ないと」

 「営々と築いてきた連合艦隊を壊滅させる気か」

 「戦艦の喪失は一時的なものであるし」

 「これから建造すれば、5年後には、艦隊を再建できますし」

 「戦艦をか」

 「いや、戦艦はいらないでしょう」

 「戦艦は、国防の要であろう」

 「い、いや、そうとばかりも・・・」

 「」

 「」

 喧々諤々 喧々諤々

 

 

  乗員1名

  自重3800kg/最大離陸重量6400kg

  全長10.58m×全幅12.5m×全高3.83m×翼面積21.7u

  ユンカースJumo004B1ターボジェットエンジン×2  推進力1800kg

  最高速度870km/h  航続距離1050km

    MK108 30mm機関砲×4 装弾数360発

    R4M55mmロケット弾×24

 北海道の空をMe262戦闘機4機編隊が飛行する。

 なぜ北海道かというと、人目にふれさせたくない新型機だったからで、

 工業設備の増大に伴い、軍用地の移転も増えていた。

 陸海軍将校たちは、あまりの高性能に声を失い、ドイツの勝利を確信するほどだった。

 とはいえ、スペックがどれほど優れていたとしても、肝心なのは日本で製造できるかで、

 製造畑の技術者と話し合いになると、表情が曇ることばかりだった。

 「しかし、よく最新鋭機を日本まで運ぶことができたものだ」

 「まぁ 内緒でね」

 「ドイツ人高級官僚の家族亡命希望者が予想より多くて笑ったが」

 「亡命はむつかしくない」

 「潜水艦で南米瑞森市に渡って」

 「商船で南米東海岸沿いにマゼラン海峡を越えて、太平洋のチリの蝦夷市に行く」

 「その後、太平洋を横断して日本本土だ」

 「ほかにもドイツからイタリアに抜けて漠砂州に避難する道もある」

 「今は、こっちが安全だと思う」

 「あと、オリンピックを利用して日本行く手だな」

 「戦争は激しいようだが、本当にオリンピックを開催できるのか?」

 「平和の祭典オリンピックが、大戦に負けなかった伝統を作りたい勢力が両陣営にいてね」

 「アメリカ政府もノルウェーのマスタードガス流失事件で弱みがあるらしい」

 「恐慌終結と公共事業促進局の廃止で誤魔化したようだが、追い詰められたのだろう」

 「戦争当事国も、なんとか都合を付ける気らしい」

 「本当は、オリンピックで日本に余計な金を使わせたいだけなんじゃないのか」

 「あと、日本に情報工作機関を作りたいとか」

 「かもしれないが、オリンピックの連続開催は、名誉なことだと思うね」

 「それよりさぁ ジェットエンジンが製造が困難となると、どうしたものか」

 「いや、金の問題だろう」

 「まぁ 基盤とか技術的なものを除くと、航空関連に金が渡るのが悔しいが8割だけどな」

 「ふっ 造船は何かと航空の足を引っ張る」

 「軍事費の取り分が変わるのが嫌で例年通り寄越せってことだ」

 「造船は、欧米資本が発注してるじゃないか」

 「あれはどう考えても日本から生産力を奪おうとしているとしか思えない」

 「しかし、産業基盤は大きくなっているし、好景気だ」

 「好景気のおかげで徴兵反対されてるんだがな」

 「なんにしてもだ。Me262は、全力で開発製造すべきだと思う」

 「だけどな。金寄越せだの、人材寄越せだの、資材寄越せだの、絞め殺したくなるようことしか言わんぞ」

 「あはははは・・・いつ完成になるやら」

 「なんなら戦艦をすべて廃艦してでも完成させたい」

 「・・・そんなこと言ってると、殺されるよ」

 

 

 

 東京

 「日本は国際連盟の理事国ニダ」

 「・・・・・」

 「国際連盟の本部理事国が、隣国の朝鮮共和国と国交断絶なんておかしいニダ」

 「・・・・・」

 「日朝国交を回復するニダ」

 「・・・・・」

 「なぜ、目を背けるニダ」

 「・・・・・」

 「なぜ、明後日の方向を向くニダ」

 「・・・・・」 ため息

 「まっすぐ前を見て、現実を直視するニダ!」

 「・・・・・」 ため息 

 「朝鮮共和国は、独立国ニダ!」

 「連盟本部常任理事国は加盟国と国交を回復する義務があるニダ」

 「・・・・・」 ため息

 「日本人は朝鮮人を差別してるニダ!!!」

 「・・・・・」 ため息

 「なぜ、大きなため息をつくニダ!!!!」

 「・・・・・」 ため息

 

 

 

  

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です。

 木仙一族

   仙堂春和(37歳) × 山城美奈(33歳)   一樹(15)  智樹(11)  加賀美(8)

   角浦秋和(37歳) × 日向奈美(32歳)   青葉(15)  芳樹(11)  冬樹(8)

  

 今回は、下半身の話し (笑

 浮気しない真面目な人たちや、

 たまにしか浮気しない半真面目な人たちもいるんですけど、

 下半身中心性癖の人たちもいるっていうことで、

 本当は避けたいなって、思うんですが、

 避けていると、利権が不正や世襲に繋がり、

 国家権力を私物化して権力構造が腐敗し、

 それが外患誘致に繋がる過程が省かれて、違和感が大きくなるので

 ていうか、外国に生殺与奪権を握られると国が傾き、

 国民が奴隷にされ殺されるって話し、

 戦後も清濁分離のまま赤線が続きそうな気がします。

 でも幸幣で社会資本が水増しされて、日本人の貧困層が減少し、

 代わりに外国の戦災孤児が (笑

 といっても、朝鮮人は独立で勢力が縮小。

 中国系や青い目の子供たちが蔓延りそう。

 

 

 あと、新型ウツ (笑

  普通のウツは、

   “抑うつ症状”  “自責感・罪悪感が強くなる”

   “何に対しても気力がわかない”  “興味や関心が低下する”

  新型ウツは、

   “うつ病で休職中なのに、海外旅行に出かけたり、自分の趣味の活動に積極的”

   “自責感に乏しく、他罰的で、何かと会社とトラブルを起こす社員”

   “休職で上司・同僚に迷惑をかけている認識に乏しく、権利ばかり主張する”

   “他罰的で、すぐ会社や上司のせいにする”

   “うつ病だと公言することに抵抗がない”

 新型ウツの症状を読むと韓国人の性質にそっくり、

 思わず笑ってしまいました。

 マスメディアが作ろうとしている常識は、本当に怖い、

 というか、日本民族の資質を根底から破壊して日本企業を潰す気です。

 これを真に受ける企業もどうかしているっていうか。

 情報の出処と思惑を疑うべきでしょう。

 韓国人病なので、処方箋は、テレビを捨てる。

 韓国モノはショーウィンドウでも見ないこと、

 韓国人の真似をしないこと

 遺伝することも稀にあるので、韓国人を避けること (笑

 

 あと、中国が参戦 (笑

 米英ソ軍は史実より対独戦に大苦戦で、

 日本が中立を利用してあれこれ画策、

 中国は、兵器と武器弾薬を手に入れたので、朝鮮半島が欲しくなったのでしょうか

 中国頑張れ (笑

 

 

 

 近衛師団

 第01師団(東京)    第02師団(仙台)    第03師団(名古屋)    第04師団(大阪)  

 第05師団(広島)    第06師団(熊本)    第07師団(北海道)    第08師団(弘前)

 第09師団(金沢)    第10師団(漠砂州)  第11師団(瑞森市)   第12師団(北欧道)  

 第13師団(姫路)   第14師団(蝦夷市)   第15師団(亜羅州)   第16師団(熊襲市)  

 第17師団(久留米)  第18師団(宇都宮)   第19師団(大連州)   第20師団(任那州)

 第21師団(善通寺)   第22師団(小倉)    第23師団(高田/仙台)

 

 

 1926年 巨済島(400ku) 済州島(1845ku) 鬱陵島(72.82ku)

 1926年 大連州(3462ku)

 1930年 任那州 フォンセカ湾 ニカラグア領地コシグイナ(400ku)

 1932年 任那州 フォンセカ湾(1200ku) 4カ国不戦条約により拡大

             ニカラグア(400ku)+ホンジュラス(400ku)+エルサルバドル(400ku)

 1932年 北欧道 カレリア地峡+フィンランド湾諸島 (6000ku)

             スールサーリ島(21ku)、ラヴァンサーリ、大・小チュテルサーリ島他

 1934年 任那州 中米7カ国不戦協定調印 (2400ku)

                任那。ニカラグア、ホンジュラス、エルサルバドル。

                  コスタリカ、グアテマラ、パナマ、

             フォンセカ湾(1200ku)  旧ニカラグア・ホンジュラス・エルサルバドル領

             旧コスタリカ領 ココ(瓜生)島 (46.6ku)

             ブリカ(中ノ鳥)半島 (753.6ku)  旧コスタリカ領(353.4ku)+旧パナマ領(400ku)

             旧グアテマラ(沖ノ浜)領(400ku)

 1935年 熊襲市 (400ku)  旧タイ王国領対マレー国境

 1936年 蝦夷市 (400ku)  旧チリ領

 1938年 漠砂州 (8万3860ku) 旧イタリア領リビア・ブトナン県

 1939年 租界地 エストニア・イダ=ヴィル県(3364ku)50年

 1939年 瑞森市 (400ku) 旧ブラジル・オランジュ域

 1940年 亜羅州 (4039ku)   中東アラビア海

        武山(むさん)半島  ムサンダル半島  800ku    旧アラブ首長国連邦・オマーン

        和蔵(わくら)湾    アル・ワクラ湾   800ku    旧サウジアラビア・カタール

        武矢(ぶや)島     ブビヤン島    863ku    旧統合イラク・クェート

        佳(けしま)島諸島              1576ku   旧イラン

            佳(けしま)島      ゲシュム島   1491ku

            良久(らく)島      ラーク島     49ku

            辺賀(へんが)島    ヘンガム島   36.6ku

 1940年 租界地 ノルウェー・フィンマルク県(48618ku)

 1941年 北斗市 北アイスランド西部の岬(400ku)

 1942年 任那州 中米8カ国不戦協定調印 (2800ku)

                任那。ニカラグア、ホンジュラス、エルサルバドル。

                 コスタリカ、グアテマラ、パナマ、メキシコ

             フォンセカ湾(1200ku)  旧ニカラグア・ホンジュラス・エルサルバドル領

             旧コスタリカ領 ココ(瓜生)島 (46.6ku)

             ブリカ(中ノ鳥)半島 (753.6ku)  旧コスタリカ領(353.4ku)+旧パナマ領(400ku)

             旧グアテマラ・メキシコ(沖ノ浜)領(800ku)

 1943年 府穀市(800ku)  タイ湾フコク島(561ku)+(対岸231ku) 旧ベトナム帝国・カンボジア王国

 

 

 

 

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第22話 1942年 『戦争は、問答無用の公共事業だから』
第23話 1943年 『米英ソ連合 VS 独伊中同盟』
第24話 1944年 『白禍と、反逆の東亜』