月夜裏 野々香 小説の部屋

    

神がかり系 仮想戦記 『神籬の木仙』

 

 第27話 1947年 『奴隷商人共産組合』

 第二次世界大戦で6大市街戦として有名なのが、

 レーニングラード、スターリングラード、ミンスク。平壌、ソウル、釜山の6都市戦だった。

 前者3都市は、火力戦で有名で。

 後者3都市は、死傷者の数で圧倒的だった。

 これに準ずるキエフ、ウラジオストック、ハバロフスク、光州、大田、仁川の6都市戦も有名で戦訓にされた。

  

 ドイツ領レーニングラードの防衛線は、ネヴァ川まで後退していた。

 川幅は、平均400mから600mで、冬になると凍って戦車が渡れる、

 冬季になればソビエト軍が侵攻するが、堡塁を越えなければならず、

 航空機による支援だけでなく、砲兵、歩兵、工兵の支援が必要だった。

 街は、爆撃と砲撃で破壊されていたが戦車の墓場でもあった。

 瓦礫で街道が封鎖され戦車が進撃できない個所も多く、

 パンツァーファウスト、パンツァーシュレックが活躍しやすい戦場で、

 ドイツ軍は地の利を生かしてソビエト軍の猛攻に堪えていた。

 レーニングラード戦線は、輸送船の補給で支えられていたのが表向きで

 フィンランドと北欧道からの武器弾薬と食料の供給が大きかった。

 ドイツ軍占領下ペトロパヴロフスク要塞

 爆煙が静まると将校たちが瓦礫の中から顔を出し、咳き込みながらパタパタと埃を払う。

 凪いでいた風が吹くと雪と冷気が室内に吹き込んで氷点下にしていく、

 「無事か」

 「ああ、8人とも生きてるようだ」

 「すまん。本国から届いたビール樽を聞いたんだが」

 「「「「あはははは」」」」

 「吹雪の切れ間になると、何かしら爆弾を落としに来るな」

 「ソビエト軍の動きは?」

 通信士が無線を扱う。

 「将軍。小競り合いのあった右翼18区は、吹雪の再開で、引き上げたようです」

 「まったく、綺麗だった街をこんなにボロボロにするとはな」

 「ドイツ軍だって、これほどの爆撃や砲撃はしなかった。ソビエト軍は街への哀愁や郷愁がないのか」

 「街の住人はほとんど残ってないのかもしれません」

 「それか。また建設すればいいと思ってるのかもしれませんね」

 「しかし、捨て石だがよく持ってる。冬将軍を味方にして戦えるのは悪くない」

 「ソビエト軍は野宿。こちらは瓦礫とは言え、暖かい室内ですから引き金を引く速度で勝てますよ」

 「取り敢えず、工兵に壁を防いでもらって、下の階に会議室を移そう」

 将校たちは、下の階へと降りていく、

 「ところで、オリンピック。何人か、いけるんだよな」

 「開催、一週間前くらいに、くじ引きで決めようぜ」

 

 

 巷でヒソヒソ話しが聞こえる

 『労働者の権利を守るニダ。組合を作るニダ』

 『搾取を許してはいけないニダ。団結して戦うニダ』

 『『『『『『戦うニダ! 戦うニダ! 戦うニダ!』』』』』』

 『しかし、今の日本は、むつかしいニダ』

 『日本人は、偉い人の話しは、なんでも頷いて賢くなった気分に浸るニダ』

 『偉い人を味方につけるニダ』

 『だけど、普通の共産主義は、通報されて特高に吊るし上げられるニダ。いやニダ!』

 共産主義活動は弾圧されていたことから、公然と行われない世相にあった。

 何より手先が器用であれば、木工細工師になれるし、

 木工細工師になれなくても管理部門、輸送部門があって職に困らず、

 職業選択の道も増えていたことから共産主義自体が盛況でなかった。

 しかし、作用の資本主義と反作用の共産主義は、

 国家と民族破壊に必要な2大利権なことから、ほそぼそと命脈を保っていた。

 某大学

 “アメリカ合衆国第二銀行開業後の国際情勢の変化”

 “単一金融支配システムと違い、国民の紙幣需要に対応しやすく”

 “1929年のような故意な大恐慌は起こりにくくなり、第二次世界大戦の遠因を防ぎやすい”

 “ツープラトン基準方式は、通貨量の調整において不利ではあるが”

 “各銀行は、より公定歩合の低い銀行から借り受けるため競争原理が生まれ”

 “投資対象が差別化されやすくなる”

 “単一の中央銀行の独占より効果的で、政治行政においても安定しやすい”

 “日本においても検討すべき銀行制度ではあるが、日本は海外地が多く”

 “末尾0〜9までの10銀行制度がより効果が・・・”

 何人かの教授が政府と特高にアメリカの第二銀行開業動きに対し、報告書を要求されていた。

 扉が叩かれた。

 「どなたかな?」

 「愛国労働レッド!」

 「愛国団結ブルー!」

 「愛国平等グリーン!」

 「愛国平和イエロー!」

 「愛国社会ピンク!」

 「「「「「5人揃って愛国革命戦隊ニダ」」」」」

 「共産主義?」

 「違うニダ! 愛国革命戦隊ニダ!!」

 「違うニダ! 愛国革命戦隊ニダ!!」

 「なぜ、2回言う?」

 「大事なことなので2回言ったニダ」

 「教授。日本の新しい愛国革命のため尽力して欲しいニダ」

 「どういう人力かね」

 「労働者がいじめられてるニダ」

 「組合関係かね」

 「そうニダ」

 「だが、組合で昇給すると賃金が上がる」

 「賃金は、平社員より基礎所得の大きな社長、課長が増え方が大きく、格差が広がる」

 「つまり社外はともかく。昇給してるように見えて社内は、格差が広がる」

 「また、賃金を製造物に上乗せして利益を上げるため、物価が上がりインフレになる」

 「インフレになると、子供を産むほど生活必需品と経費が大きくなり家計が苦しくなるから少子化に繋がる」

 「そして、新興企業は小さい賃金で製造物を作れるため、既成企業は競争力で負ける」

 「だから既得権企業は必死になって、新興企業を潰す」

 「組合の強化は、社会の新陳代謝が低下させるだけでなく、競争力を喪失させ、輸出できなくなる」

 「それだけではない」

 「自分より優秀な人間が現れると、組合を利用し、人事に圧力をかけ、負けないよう潰してしまうだろう」

 「そんなことないニダ! 労働者の権利を守りたいニダ!」

 「既存の労働者の権利を守りたいだけで、排他的な組織になりそうな気もする」

 「それに労働者の権利を守るなら、雇用を増やし、労働需要を大きくし、失業率を下げることが望ましい」

 「国が基幹産業や公共投資に投資を繰り返し、失業者を減らすようにすれば雇用するため競争して待遇を良くし、賃金を上げる」

 「それでも搾取されるニダ」

 「社長と平の賃金格差を10対1以下にするよう政府が行政指導すればいいだろう」

 「同業者間の競争が加熱していれば10対1以下になるだろうし、労働組合はいらないと思うね」

 「そ、そんなのだめニダ。団結しないと、社員が個別にいじめられるニダ」

 「もっと、労働者の権利を守るニダ」

 「それなら、国家と国民の統合のため、国民に一律、金を支給する方がマシだよ」

 「シンプルイズベストだからね」

 「貧しい過疎域には、補助金を出して工場を建設させれば雇用を創出して、調整すればいいだけだ」

 「そんなの共産主義じゃないニダ」

 「労働の対価で権利を大きくするニダ!」

 「また、そういう奴隷商人みたいなことを・・・」

 「働いていない人間が金を得てはいけないニダ! 絶対にイケナイニダ!!!」

 「労働こそ唯一の価値ニダ!!!」

 『奴隷商人が奴隷資源を管理して高く売るために共産主義を考えたんじゃないだろうな』

 『組合に力をつけさせるより。国民全体に薄く広くばら撒くほうが反共になりそうだ』

 「それでは、組合を抜けると労働者が生きていけなくなってしまう」

 「そんな組織に縛られた不自由な社会は面白くないだろう」

 「そんなことないニダ!」

 「資本主義でも、共産主義でも、誰でも自分の城を欲しがるものだ」

 「しかし、相反する利権を強めても複雑に細分して特権化するだけで、個人の自由度は減るし」

 「利権が国家や国民から搾取するようになると、事業を起こしても成功しない」

 「利権に頼り、世襲や天下りが増え、歪な世襲職業カーストになり、結婚すら不自由になるだろう」

 「権利を追求するほど、国益や民益から逸脱した内患特権となり」

 「視点は低くなり、視野は狭くなり不信が増し大同小異で憎み合うだろう」

 「外患と組む勢力も増えるが、結局、外観と組んだ内患により各個撃破されやすくなるだろう」

 「利権中心の社会は、統合を破壊し、民族の軋轢を増やし、国家と国民を棄損させてしまう」

 「就労する企業や現場で利権を追求するより、国民全体で受けるべき利益を追求すべきじゃないだろうか」

 「そんなことはないニダ! 資本家は労働を搾取してるニダ!! 資本家は労働者をいじめる悪い奴ニダ!!!」

 『こいつら、奴隷商人貴族になりそうだな』

 「・・・・・」 ため息

 

 

 街宣中の扇動者たち

 「今がチャンスニダ!!!」

 「日本は戦争すれば勝てるニダ!」

 「英霊が戦死した魂の祖国。朝鮮半島と満洲を奪い返すニダ!!!」

 「日本軍は、絶対に勝てるニダ」

 「朝鮮人は、日本軍の上陸を待ってるニダ」

 「シコシコ木工やってる場合ではないニダ」

 「中国は、米英ソ朝連合相手の戦争で、アジアの盟主になろうとしてるニダ」

 「日本がアジアの盟主の座を中国に奪われるニダ」

 「日本が有色人種の盟主の座を中国に奪われるニダ」

 「このままでは、日本が、英霊が、日清戦争、日露戦争が築き上げた盟主の座を失うニダ」

 「日本人なら銃を取って、立ち上がるニダ」

 「アメリカ、イギリス、ソビエトと組んで中国軍を撃退するニダ」

 「絶対に勝てるニダ」

 「今が千載一遇のチャンスニダ」

 「日本人は、英霊のために戦うニダ!!!!!!」

 大都会の喧騒の中、

 日本人たちは、不安を抱えつつも忙しなく行き交っていた。

 

 

 朝鮮反日第5列師団

 “日本人に成り済まして悪いことして、日本人が日本と日本人を嫌いになる作戦週間”

 反日作戦会議

 「今日のイケナイこと予定を報告するニダ」

 「今日のイケナイことは、ピンポンダッシュ120軒を目標ニダ」

 「日本人の神経を擦り減らしてノイローゼにしてやるニダ」

 「「「「アイゴー」」」」

 パチ パチ パチ パチ パチ パチ パチ パチ

 「今日のイケナイことは、路上詐欺するニダ。目標10万ニダ」

 「「「「アイゴー」」」」

 パチ パチ パチ パチ パチ パチ パチ パチ

 「今日のイケナイことは、無言電話200件ニダ」

 「「「「アイゴー」」」」

 パチ パチ パチ パチ パチ パチ パチ パチ

 「今日のイケナイことは、電車痴漢20回ニダ」

 「「「「アイゴー」」」」

 パチ パチ パチ パチ パチ パチ パチ パチ

 「今日のイケナイことは、資本家と株主の悪口を社員と顧客に言いふらすニダ」

 「「「「アイゴー」」」」

 パチ パチ パチ パチ パチ パチ パチ パチ

 「今日のイケナイことは、資本家と株主に成り済まして、社員と顧客を馬鹿にしてやるニダ」

 「「「「アイゴー」」」」

 パチ パチ パチ パチ パチ パチ パチ パチ

 「これだけやったら、日本人が日本人を嫌いになるニダ」

 「反日日本人をたくさん作るニダ」

 「「「「アイゴー」」」」

 パチ パチ パチ パチ パチ パチ パチ パチ

 

 

 

 木工細工向きの木目の綺麗な樹木の育成と加工のノウハウが定まり、

 多様な材質で幸幣を作れるようになると、地方まで好景気が及ぶ、

 本州以北は、北欧道、北斗市、府穀市に人材を送出することが多く、

 台湾と沖縄は、緯度の近い任那州、漠砂州、熊襲市、瑞森市、木仁弥州に人材を送出することが多かった。

 地方は、その見返りで大きな資本が得ていた。

 アメリカで300m級高層ビルは、集約した資本主義の象徴だったが、

 日本で高層ビルが建ち並びはじめたのは、中間層の財力が成したことだった。

 そして、派遣に応じた者たちの金のなる木であり、老後の住処でもあった。

 この方式は日本全国で試みられ、海外地の住人は急速に増えていく、

 沖縄

 白人たちがフロアのひとつを貸切るとキリスト教の看板を掲げる。

 キリスト教自体は、善良な信者を作ることもあるが、

 情報機関の足場で協会とは補完関係にあった。

 「信者はあまりいないようだ」

 「日本人はキリスト教が必要ないほど善良で自由で平等で博愛ですよ」

 「つまり、日本は神に祝福されている」

 「そういうことです。まるで日本こそ、キリスト教の理想を体現している」

 「ふっ 幸運な時代に入っただけだ」

 「あなた方が来ると、日本で犯罪が増え、不自由が増え、格差が広がり、憎しみが増えるようだ」

 「教会は、その我々から資金援助されている」

 「本意ではないですよ」

 「キリスト教の本意は、第2合衆国銀行にあるような気がしましたがね」

 「神のものは神に。皇帝のものは皇帝に」

 「聖書ですか。便利なものだ」

 「ま、悪巧みは、程々にしてくださいね」

 そう言うと、牧師は会議室から出ていく、

 「キリスト教グループの一部が第2銀行開業派なのは事実かもしれないね」

 「民衆のものは民衆に。ですか」

 「まぁ 民主主義の真の敵は、反自由、反不平等、反博愛である資本主義と共産主義だからね」

 「しかし、外国資本の賃貸が3割増しなんてムカつく」

 「利益なしで足場を作るのならキリスト教だし、当分は仕方がないさ」

 「造船も自動車も日本は独立してしまったし。航空機でもほとんど国産だ」

 「コカコーラは売れてるんだろう」

 「そこそこね」

 「しかし、こんな小さな島に高層ビルを建てるなんて、日本人は何考えてるんだか」

 「人口が増えれば木工細工師が増える。木工細工師が増えれば幸幣も増える」

 「幸幣が増えれば中央に媚びなくても良くなる」

 「人口が密集して、山が増えれば木工細工に使う樹木も増える」

 「その気になればビルの中で、生糸や木綿を育てることもできるし」

 「日本は、林業地を増やしたいから高層ビルを建てるようなもので、アメリカの高層ビルとはまったく違う思考で建設している」

 「まったく、日本で木工産業が育ってからというもの録なことがない」

 「仙堂と角浦。あの二人の出現が日本を変えたのかもしれない」

 「どうだろうな。日本の木工産業は必然かもしれないし」

 「天才2人が現れなくてもほかの人間が現れたかもしれない」

 「天才を軽く見ていたのが、命取りになったと思うね」

 「日本は足を引っ張る人間が多いから天才が育たないはずなんだけどね」

 「こっちが、そう思っていただけさ」

 「天才は天才でも、人事の天才だよ」

 「こっちが情報員を送り込むと、すぐいらない人間にされる」

 「篭絡すると、篭絡した店まで摘発される」

 「いったい、どういう情報収集力なのかまったく掴めんよ」

 「だから木が教えてくれるって」

 「そんなの誰が信じるか」

 「信じてる人間が自分の人形を作ってもらってる」

 「そして、人形を身代わりにして生き残った将兵は少なくない」

 「戦場で運良く生き残る将兵はいるよ」

 「だがその時間に人形が割るなんてことはないだろう」

 「統計を取れば完全じゃない」

 「あはははは・・・」

 「1発目を防げても2発目が当たることがあるだろうし。戦場は、それで充分なのさ」

 「それより、次のターゲットは?」

 男と女は、写真とプロフィールのリストを眺める。

 「彼だな。親の七光りで世間知らずだ」

 「そして、親から認められたがってる。ヨイショすれば引っかかりそうだ」

 「ふっ」

  

 

 

 日本最大の集票組織の木工12ギルドは手工業社会で民主的な傾向が強かった。

 そして、その構成議会も民主的な傾向が強かった。

 結果、国会で国民株保有法が施行される。

 この法案により、人口分の1の強制買取りが可能になった。

 日本橋兜町 証券取引所

 「酷い法案だね。上場株がなかったら、誰の株を買うのやら」

 「人口分の1を増刷してしまうんだよ」

 「まぁ 8000万株以上は関係ないけどね」

 「株の増刷は株式会議で決めるべきだ」

 「日本はアメリカの真似をしたくないんだよ」

 「資本家の独占は嫌だってこと?」

 「日本が嫌なんじゃなくて、流通貨幣を自作できる木工細工師が嫌なんだよ」

 「ふっ まぁ いいか。よほど余剰資本がなければ株なんて買わない」

 「いや、好景気だから買うだろう」

 「ていうか、木工12ギルドに逆らったら株を買われて、株式会議の決定がひっくり返されるってこともありうるわけだ」

 「あいつら集票力に任せて、最悪」

 「まぁ 急に株を買われたら、知らない国民も便乗で買うだろうから木工12ギルドの思い通りにはならないだろうけどね」

 

 

 東京

 某300m級高層ホテルのフロア

 華族や財閥な家が集まってパーティが開かれていた。

 実は、お見合いパーティーで、親から命令されていたのか、

 子供たちはいろんな動きを見せていた。

 そして、木仙一族も御呼ばれされ、

 来なかったら経済制裁すると最後通告が出されたのか渋々参加していた。

   仙堂春和(41歳) × 山城美奈(37歳)   一樹(19)  智樹(15)  加賀美(12)

   角浦秋和(41歳) × 日向奈美(36歳)   青葉(19)  芳樹(15)  冬樹(12)

 木仙一族は主役じゃないのを知ってるのか、

 一巡して挨拶したあと壁際で一休みする。

 「角浦。まるで、七五三だな」

 「仙堂。お前のところは七五三をサボってただろう」

 「そうだっけ、忘れてたよ」

 「たっくぅ」

 「しかし、まずいな。子供たちは、意外に人気がある」

 「そりゃ 子供たちも林業や木工細工で成果を上げて、ほぼ独立している」

 「ぶっちゃけ、身代わり人形を作るだけで一財産だし」

 「能力が遺伝してるなら安心だし、注目されるだろう」

 「能力の遺伝は、秘密があるけどな」

 「残念ながら、この中に樹霊を帯びた御子息はいないようだ」

 「子供たちも飽き始めてるようだな」

 「まぁ 価値観の問題だよ」

 「いくら容姿端麗頭脳明晰で、親がお金持ちでも自分の子供が木仙になれない相手は、価値が半減してしまう」

 「自分の子供は、金のなる木でない片輪になれと、言われているのに等しい」

 「子供たちも、それぞれ、自分の相手を決めてるようだし、いまさら・・・」

 紳士が近づいてくる。

 よく知られた一族の長だ。

 「素晴らしいお子様たちですな」

 「そうですか。一番凡庸に見えますよ」

 「いえいえ、わざと安物の服を着させてるようですが、そんなものでは誤魔化されず、人気があるようです」

 「山登りも仕事なので、ああいった服が多いのですよ」

 「では、結婚すると山登りや幸幣作りを強いられそうですな」

 「どう見ても、むつかしそうな子供たちですな」

 「なんのなんの、子供たちの何人かは、名山や名峰に登ってるのですよ」

 「それに幸幣を作った子供もいる」

 「きっと、話しが合うはずだ」

 「あはははは・・・」

 「別に表の閨閥結婚だけで、浮気は構わないではないですか」

 「そりゃ 家督は継げなくても、庶子なら名家とも結ばれやすい」

 「日本は、そうやって、名前を増やしていったものです」

 「まぁ 縁は子供たちに任せるという約束でしたな」

 「まさか。変な言い含めはしてないでしょうな」

 「いくら親でも、そこまで、野暮じゃないですよ」

 「だといいのですが・・・」

 日本の支配層は、古来から続く血統と縁を結んだ閨閥一族の連帯構造だったものの

 木仙一族は、どことも閨閥を結んでおらず、独立した日本最強の成り上がり一族と見られていた。

 

 

 南アメリカ 蝦夷市

 チリの原生林で有望そうな樹木や草木を見つけると、

 蝦夷市で植樹し、植樹に成功すると

 気候の近い千島列島、南樺太、北海道、東北に植樹する。

 チリの林業は、神籬と提携すると急速に力を付け外貨を稼ぎだした。

 繁華街

 ナチスの制服を着た白人が何人も歩いていた。

 「寒村だったのに随分大きな街になったものだ」

 「大河がないのに街を作るとは何を考えてるのやら」

 「大河のない乾燥した400kuの土地だから兵器武器弾薬と交換したのだろう」

 「日本が沖に氷山を持ってきて水源にしたのは驚きだけどね」

 「洋上風力発電もだ」

 「アンデス卸は、風が強いから悪くない方法だよ」

 「蝦夷市は、海外地の中で足でまといになると思っていたがな」

 「蝦夷市は、木仁弥州と瑞森市の会得後、太平洋航路が強みになるから大きくなると思う」

 「日本人がボリビアとパラグアイに行ってるようだが」

 「たぶん、武器売買と利権の話しだと思うね」

 「日本が欲しいのは、ペルー、エクアドル、コロンビアなんじゃないのか?」

 「アメリカが必死に食い止めてるらしい」

 「ふっ」

 「戦争が終わって気づいたら南米諸国が不倶戴天の日本に取り込まれてしまったとか悪夢だろうな」

 「南米諸国も戦争が終わる前に軍事的に独立したいというのが本音なんじゃないか」

 「キューバも潜水艦母艦と潜水艦を欲しがってるし」

 「たぶん、利権と交換してでもって動きは強い」

 「しかし、アメリカが切れて、日本に宣戦布告すれば面白いが」

 「そうなったらドイツが中立国で日本を支援してやる」

 「たぶん、世界の半分が日本に味方するかも」

 

 

 

 

 

 ホルムズ海峡を日本、アメリカ、イギリス、中立国のタンカーが行き来していた。

 イラク海軍、イラン海軍、サウジアラビア海軍の国旗を付けたXIV型潜水艦が行き来していた。

 アメリカやイギリスにとっては嫌がらせ以外の何者でもないことだが、

 中東諸国が日本製のライセンス潜水艦を購入したのは、影ながらドイツを応援しているからで、

 ライセンス料だけは、スイス銀行を通じてドイツへと送られていく、

 何より、ドイツが敗北すれば、そのまま、ドイツ潜水艦を亡命させ、運用する気でいたのだった。

 亜羅州 佳(けしま)島(1491ku)

 入植が始まって7年、島全体が河川土に覆われ、砂漠の植物が咲き乱れていた。

 植物は世代を重ねていくにつれて、土壌を肥やし、より大きな樹木を育てさせていた。

 石油コンビナートで作られた太陽光熱発電機が全土を覆い、

 軽量で丈夫な屋根は、太陽光のほとんどを塞ぎ、清涼な街環境を広げていた。

 アラブ人が石油と交換に日本製品の買い付けにくると、

 日本製品を持ち帰っていく、

 人気は、自動車、電化製品、日用品、幸幣で大人買いなのか、棚ごと売れていく、

 

 亜羅州 州庁

 「調査の件は進んでますか?」

 「いま、事業者にバクダット、メッカ、テヘランの出店を増やしてもらってる」

 「年月がかかるよ」

 「まぁ 特高の看板は、つけられないでしょうからね」

 「なんにしても、イラン、イラク、サウジアラビアとも反日が増えてる」

 「石油と交換に発電所、港湾、鉄道、道路を建設してやってるのにな」

 「イギリスに比べたら百倍マシだろうに」

 「中東諸国の語学を学んだ日本人が増えて、交渉しやすくなったとは言え」

 「元々 イギリスの影響下にあったからイギリスを追い出してもイギリスの影響力が大きい」

 「次に大きいのがソビエト」

 「アメリカも国力があるから中東に足場を作りやすい」

 「というか。独立戦争のドサクサを利用して、日本がアラビア海に足場を作ってしまったからね」

 「逆に中東諸国から警戒されてしまってる」

 「特に亜羅州が自立して強くなるほどアラブ諸国の反発は大きくなる」

 「もっと取引を増やして親日を増やしたほうがいいかもしれない」

 「イラン、イラク、サウジアラビアが工業国になると将来的に困るのでは?」

 「例え、困っても、いま石油が欲しい」

 「やれやれだな」

 「しかし、せっかく、中東に足場を作って、鉄鋼業が主流になると思ったら、石油コンビナートは神籬が中心か」

 「非鉄鋼業に先行投資していたのは神籬だからどうしても神籬が強いよ」

 「木工12ギルドは流通貨幣を水増ししてるから国民に人気がある」

 「政府も非鉄鋼産業の投資を増やして、我田引水が厳しいしな」

 「鉄、石炭、石油は、アメリカ、イギリス、ソビエトが強いからね」

 「政府が、非鉄鋼産業に予算を向けるのは、悪くないよ」

 「成功するかどうか不安ではあるがね」

 「公定歩合を保障する以上の流通貨幣で不安は少ないよ」

 「既得権は、利権を奪われないか。誰かに市場を奪われないか、戦々恐々だけどね」

 「いいじゃないか。ジャパンドリームの頻度は、世界最多で成金ラッシュだ」

 「隣の貧乏人がお金持ちになっていくのを見るのは癪に触るだろうが、未開地に産業を作るのなら仕方がないだろう」

 「どちらにしろ、生糸・木綿や鉄鋼業以外にも貿易の手駒があるのは日本の強みだ」

 「そんなこと言ってるとますます、神籬と木工産業が強くなるだろうが」

 「まぁ そうだが、うちの息子も幸幣作りを面白がってな。手を動かすのが好きらしい」

 「「「「・・・・」」」」 むっすぅ〜

   

 

 東部戦線 夜間

 ドイツ軍の縦深防衛線が連なっていた。

 5号パンター戦車と6号キングタイガー戦車は重要拠点に配備され、

 4号戦車が重戦車の側面を守っていた。

 その4号戦車の側面を守っていたのが3号突撃砲で、

 ゲリラ的に出現する3号突撃砲の支援により、

 野戦でもパンツァーファウストを携帯する歩兵がソビエト戦車に接近できた。

 ソビエト軍は、満州外縁に戦力を奪われながらも、ドイツ軍に倍する戦力を集結させ攻勢の機会を伺っていた。

 広報のドイツ軍基地で、鉛入りの箱が飛行場に運ばれていく、

 そして、捕虜に仕事が押し付けられた。

 ドイツの戦闘機群は、数百機のグライダー爆弾を牽引し、前線を超えて移動し、

 撃墜されると墜落して爆発する。

 この効果の少ない、妙で不思議な作戦は、数日に渡って繰り返された。

 またドイツ軍が戦線を後退させ、そこにソビエト軍が侵攻すると、リモコン地雷が爆発する。

 この奇妙な作戦後、ソビエト軍の戦線で放射線障害が急増し、

 ソビエト軍の攻勢が一時的にやんでしまう。

 

 北大西洋

 ミズーリーの艦首が飛沫を蹴立てて回頭していく、

 その戦艦の回避を追いかけるように魚雷が命中し、何本もの水柱を上げていく、

 

 ジェット戦闘機。空対空ロケット弾。

 地対地ロケット。地対空誘導ミサイル、音響魚雷。パンツァーファウスト

 先進的な兵器がドイツの窮地を救った。

 本当にドイツを救ったのは、中国の参戦で兵力バランスを回復できたことと、

 国際連盟の都市爆撃の禁止と、核兵器使用の制限案だった。

 そして、ドイツでは核爆発はしないまでもウランが実践に使用されたのだった。

 

 国際連盟 東京本部 平安宮

 「ドイツは、ウラン地雷、ウラン弾頭魚雷、ウラン弾頭V2ロケットを使用した」

 「これは、明確な非人頭的な行為であり、国際法違反である!」

 「原子爆弾は、日本が、3日目前の事前使用通告と、人口1万人を超える街に対し核兵器を使用してはならない、という提案が出されたに過ぎない」

 「しかも、アメリカは、その提案にも反対していたではないか」

 「何を言う」

 「日本が核兵器使用の制限を言い出した後」

 「我がアメリカは、原子爆弾の使用を控えていたではないか」

 「それなのにドイツは、放射性物質を弾頭に混ぜた魚雷やV2ロケットや地雷、爆弾を使用している」

 「これは明確な国際法違反である」

 「日本代表に聞きたい。ウラン弾頭は、国際法違反なのか」

 「い、いや、不発核弾を利用した兵器は、考慮していなかったので」

 「不発核弾の使用を制限は、今議会で決めるとして」

 「取り敢えず、不発核弾の使用は、議会の決定まで控えてもらうのがいいと思う」

 「「「「「・・・・・」」」」」 ぶっすぅ〜〜

 アメリカとイギリスが怒るのも無理はなかった。

 この年に入り、放射性物質爆弾により、東部戦線のソビエト軍は停滞し、

 北アフリカ戦線も膠着状態に陥った。

 また戦艦4隻、空母3隻、重巡5隻、軽巡7隻、駆逐艦46隻、

 護衛艦65隻、輸送船243隻がダメージコントロールの甲斐もなく、

 ウラン弾頭の音響魚雷により、撃沈か自沈させられていた。 

 また、V2ロケットでウラン弾頭が飛散したロンドンの数百箇所は危険区画となり、

 数万人が甲状腺異常を発症させていた。

 当然、同様の兵器を運用できるアメリカとイギリスも同等以上の反撃が可能だったものの、

 ウランの投げ合いだけは御免被りたいのが、連合と同盟の国民と将兵の共通認識で、

 両軍とも国際連盟で国際法違反となれば使用を即制限する予定になっていた。

 結果、核兵器は、1万人以上の街に対し使用してはならないが裁決され、

 不発核弾は、軍需拠点、軍艦以外に使用してはならないが、裁決され、

 違反した場合のペナルティと罰金の支払いまで決まっていく、

 連盟日本人職員

 「やれやれ、取り敢えず、核の使用制限が出来て良かったよ」

 「逆にペナルティを支払えるのなら使えるってことか。金持ち限定の兵器だな」

 「ペネルティは相殺できるから、報復を恐れなければな」

 「まぁ どの道、核兵器やウランは長期に被害を与えるし、戦後を考えるなら、使いにくいと思うよ」

 「まぁな」

 「ドイツは原子爆弾を開発してたっけ」

 「もうすぐ、開発できるんじゃないかな」

 「日本の原子爆弾は、まだだよな」

 「来年か、再来年に開発できるらしいよ」

 「そりゃ ひと安心だね」

 

 

 

 

 キューバ政府の代理人に案内された日本人がキューバを歩き回る。

 「あれがグァンタナモ米軍基地ですか・・・」

 「租借料は毎年金貨2000枚です」

 「我が国としては、アメリカの間接支配から脱するため、日本に基地を作って欲しいのです」

 「「「「・・・・」」」」

 「アメリカと事を構えるのは得策でないのです。よほどの好条件でなければ・・・」

 「1948年のヘルシンキオリンピックが大戦終結というのは本当ですか?」

 「オリンピック講和の噂は流れてます」

 「これまでそう言った戦争終結の仕方がありましたか?」

 「期限付き講和は、歴史的にあまり聞いたことないですな」

 「戦争が終わると、アメリカの南米諸国への縛りが強くなるのです」

 「今のうちに軍事的に独立したい」

 「対価が得られるのなら兵器・武器弾薬は輸出できますよ」

 「キューバは砂糖、ニッケル、海産物以外は乏しく、ほとんどの資本がアメリカに牛耳られてまして・・・」

 「土地の譲渡は可能なのですか?」

 「国民はアメリカの間接支配を脱するためなら割譲を理解するでしょう」

 「戦争が終わってもキューバはドイツと手を結ぶ方法もありますよ」

 「ドイツは、近過ぎて危険です」

 「日本も近い距離にありますよ」

 「しかし、日本の本国は、東アジアの彼方だ」

 「できれば、グァンタナモ米軍基地に隣接した土地を譲渡したい」

 「アメリカを下手をすると戦争状態に陥る」

 「軽はずみな外交戦略は、むつかしいかもしれません」

 「では、アメリカと同じ租借地では?」

 「租借地ならアメリカの反発で外交的に追い出されるでしょう」

 「しかし、日本に譲渡された国土なら戦争でもしない限り、追い出しようがない」

 「では、兵器・武器弾薬と土地の交換が一番いいかと」

 「んん・・・・」

 

 

 

 漠砂州

 海岸から内陸に向かって雛段状に高原が作られていた。

 日本からの緑化と産業政策が漠砂州の社会基盤を作り、欧州戦争が産業を育て、

 漠砂州で製造した弾薬や軍需物資が同盟側にも連合側にも流れた。

 その資本を元に漠砂州の社会基盤が大きくなっていく、

 西隣のイタリア領リビアや東隣のイギリス保護国エジプトより、緑化が大地を覆い、

 太陽光発電を中心に街が形成されていた。

 州庁

 日本の都道府県の出向で、海外地の行政機関が構築され、

 最高機関は100人ほどの合議制になっていた。

 家族が増えれば住人の選挙で選出された議会制が強くなるが、

 今のところ内地の意向が強かった。

 

 日の丸ドームは農業用実験設備で、州庁に併設され、遮光設備が整っていて涼しく、

 柿や栗が並び実っていた。

 このドームにいると遮光の関係で日差しが日本に近く、

 日本にいる気分を味わえる。

 「木仁弥州を得てからというもの冷や飯ぐらいなのが辛いな」

 「面積だけなら漠砂州は海外地で最大だが水がない」

 「誰だって水の心配がいらない木仁弥州に行くだろう」

 「せめて亜羅州のように石油が採れるなら美味しいが」

 「漠砂州は、本国からの距離が最大の障害だよ」

 「というより、地中海の僻地なのが辛い」

 「一番の問題は、砂漠で1人を生かすのに必要な経費が大きすぎる」

 「いくら分配地面積が海外地の中で最大でも、一生住み続けられるかというと不安だな」

 「単純に屋根を作れば涼しくなるし、水の蒸発は押さえられる」

 「あとは草木を育てて何十世代か過ぎれば、土壌は肥える」

 「問題はコミュニティの中心だな」

 「一昔前なら、領主、名主、神社仏閣、庄屋、地主があって土着が中心になっていた」

 「今は、学校と企業が肩代わりして。地域性は弱く、土着化が後回しになっている」

 「かといって、神社仏閣を作ったところで、誰が行く」

 「せいぜい、祭日か、祭りくらいか、困ったときの神頼みくらいだ」

 「予備役制で、毎月小隊が集まって、軍務講習を受ける」

 「分隊は、比較的近い者たちで構成されるから、それだってコミュニティだろう」

 「最近は集まりが減ってるようですがね」

 「戦争に巻き込まれる可能性が減ってるせいだろう」

 「将兵は不満のようですが」

 「まぁ 戦争が始まれば予備役を徴兵して自動的に階級が格上げだから」

 「戦争したいって気分はあるだろう」

 「戦争するより農地を増やすほうがいいですがね」

 「農地を増やすには水を増やさないとな」

 「1000kmの入江を掘る話しは?」

 「まぁ 海水を内陸まで引き込んだ方が水上輸送が使えるし」

 「淡水化しやすくて緑化も早いと思うが労働者が少な過ぎるよ」

 「大型の掘削機か、いっそ、シールド工法で掘ったほうがいいかも」

 「どうせ上下水道は、作らなきゃならないだろう」

 「緑化が進んで人口が内陸に移るようになったらなおさらだ」

 「戦争が終わる前にもっと自立させないとまずいと思うのだが」

 「鉄鋼業と土木建設と林業と非鉄鋼業が労働力を奪い合ってる」

 「戦後10年は戦争が起きないと考えてもだ。漠砂州に残された年月は少ないと思う」

 「年月稼ぎのための諜報機関を組織すべきなんじゃないうか」

 「漠砂州が戦争に巻き込まれないような」

 「まぁ 郷土を守るって気風もないし。あと5世代くらいくらい戦争したくないか」

 

 

 アメリカ合衆国 サンフランシスコ港

 牛肉とオレンジが冷凍船に詰め込まれると日本へと輸出されていく、

 購入相手は、非ユダヤ系畜産業者が選ばれていた。

 白人と日本人

 「協力いただけて助かります」

 「まぁ 日本人も牛肉とオレンジを増やしていいだろうし」

 「西海岸州側で第二銀行開業派が強まれば、少しくらい見返りがあるのでしょう」

 「末尾奇数ドルが資本主義で企業投資に流れやすく」

 「末尾偶数ドルが民主主義で民衆にわたりやすくすると思います」

 「例えFRBが紙幣発行を操作して故意に不況を作ろうとして、第二銀行が独立して補えますから不況は是正できます」

 「アメリカが不況になると戦争したがるので。第二銀行で調整してもらえると助かります」

 「しかし、下手をすると内戦になりかねないので、戦争が終わる前に第二銀行開業に向けて働きかけるつもりですよ」

 「庶民が強いほうが戦争になりにくいので助かります」

 「日本もダブル銀行紙幣移行する気はないでしょうか」

 「そういえば海外地が増えすぎたので、末尾0から9までの10銀行制に移行させようかって話しはある」

 「本当に?」

 「既に木工12ギルドが代用通貨を発行してるから、10銀行制もいいだろうって話しだ」

 「通し番号だから、どの銀行が余計に発行してるかわかりやすいし、インチキしてないかもわかりやすい」

 

 

 

 イギリス領インド

 マレーとビルマが独立すると、インドでも独立運動が盛んになっていく、

 カルカッタのインド兵が反乱を起こしたのは、そんな時で、

 自由インド軍が密輸した武器弾薬がイギリス軍に向けられ、

 ベンガルで武装蜂起が起こると、独立戦争の波はインド全域へと広がっていく、

 自由インド軍占領地カルカッタ

 日本製の潜水艦母艦と]]T型潜水艦が入港する。

 自由インド海軍は、潜水艦母艦5隻、潜水艦40隻の艦隊で、

 名義上は、東南アジア条約機構から購入したことになっていた。

 しかし、それはタイ王国東北部に設立している日本のダミー会社で、利益は日本に流れていく、

 インド独立戦争が始まると、日本は、兵器・武器弾薬の供給と交換に、

 石炭、鉄鉱石、マンガン、雲母、ボーキサイト、チタン鉱石、

 クロム、天然ガス、ダイアモンド、石油、石灰石、トリウムなど資源の権利と、

 水力発電建設と鉄道建設利権に食い込むことができた。

 対インド事務局

 「資源や開発の権利書だけは増えていくな」

 「土地と交換せずに済む資源国の強みだね」

 「日本の開発に必要な十数年分の資源が得られそうだ」

 「空手形にならなきゃいいけど」

 「その時はその時で対処するよ」

 インド独立戦争は、イギリスの継戦意欲を著しく失わせていく、

 もはや、戦争の勝敗がどうあろうと、失われた利権は回復できないほどになっていた。

 代わりに日本のインド開発利権は、膨大で

 行政と、国民のモラルと知的水準の向上と、言語統合に成功するなら、

 列強に並ぶ社会基盤となるはずだった。

 

   

 木工12ギルド本部

 世界中の名樹木が集められ名工に振り分けられ、

 優先的に付加価値の高い木工細工が製造され、外貨収入になっていく、

 それとは別に海外の樹木も研究されていた。

 曲げや反りなどがデーター化され、

 環境の変化、植林、肥料、伐採時期などを調整すると幸幣として使用できた。

 曲げや反りなど製造がより困難な材質で作られた幸幣は同じ100幸幣でも希少価値が高く、

 材質ごとにナンバリングされ、国際幸幣価格リストが作られていた。

 関係者たち

 「また華僑とユダヤ資本が来たよ」

 「またか」

 「日本ばかりいい木を集めてずるいそうだ」

 「一番付加価値の高い木工細工を作れるのは国民性に根ざしたことだし」

 「組織で言えば、木工12ギルドだからしょうがないよ」

 「神籬の社員が山を管理すれば別だが海外林業は、杜撰すぎて、幸幣に向かない」

 「彼らは、秘密の独占を疑っている」

 「独占はともかく。曲げや反りは、加工段階でも秘密があるし手先の器用さも必要だからね」

 「材料は多い方が得だし。輸入品で幸幣を作れるならそれに越したことはない」

 「しかし、幸幣は、植林から伐採の仕方まで事細かに決められている」

 「それを外すと、曲げられないし、差し込むこともできない」

 「まぁ 幸幣より木工細工の方が高く売れることもあるから、いい樹木を育てるだけでも金になるだろう」

 「なんにしても、世界最大の民族利権に食い込まれたくないな」

 

 

 

 東京

 国際連盟

 「日本は国際連盟の本部理事国ニダ」

 「・・・・・」

 「国際連盟の本部理事国が、隣国の朝鮮共和国と国交断絶なんておかしいニダ」

 「・・・・・」

 「日朝国交を回復するニダ」

 「・・・・・」

 「なぜ、目を背けるニダ」

 「・・・・・」

 「なぜ、明後日の方向を向くニダ」

 「・・・・・」 ため息

 「まっすぐ前を見て、現実を直視するニダ!」

 「・・・・・」 ため息 

 「朝鮮共和国は、独立国ニダ!」

 「連盟本部常任理事国は加盟国と国交を回復する義務があるニダ」

 「・・・・・」 ため息

 「日本人は朝鮮人を差別してるニダ!!!」

 「・・・・・」 ため息

 「なぜ、大きなため息をつくニダ!!!!」

 「・・・・・」 ため息

 「もし、日本が朝日国交樹立しないなら、韓国は国際連盟を脱退して国際連合に行くニダ」

 「本当に?」

 「本当ニダ」

 「是非、脱退してください」

 「・・・・・」

 「是非、連盟を脱退して、国際連合に行ってください」

 「あ、あ、いや、そういう意味ではないニダ」

 「では、脱退ですね」

 「い、いや、今のは違うニダ」

 「朝日国交樹立して欲しいという意味でいったニダ」

 「いや、朝日国交樹立しないから、脱退してもいいですよ」

 「違うニダ。違うニダ。朝日友好は、大事といっただけニダ」

 「国際連盟は脱退しないニダ」

 「・・・・・」 ちっ

 

  

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です。

 今回は共産主義を少しだけ、

 戦前と繋がりの強い日本なら、共産主義は気にする必要のない勢力なのですが、

 庶民に成功する機会があまりにも少なく、労働環境が悪くなると、共産主義がもたげてくるわけです。

 しかし、組合の幹部の視点に立つとですね。

 使用者と労働者の中に立ち、俺らの奴隷に何しやがる的な。

 資本家と労働者のどっちからも金をせびってる奴隷商人のような搾取集団になってしまうわけです。

 まぁ あとから来たものに追い越され、ってやつは嫌ですが、既得権を保護してばかりでも腐っていく、

 この戦記では、軍閥、学閥以外にも、

 手先が器用なら木工12ギルドが努力すればなんとかなりそうな産業が一つ増えてますし、

 公定歩合を超える流通貨幣が増えてるので、好景気になりそうです。

 木仙一族の閨閥入りは、気になるところです。

 あとは、ウラン入りの弾頭と核兵器使用の制限。

 これで、国際連盟の価値が上がりそうです。

 

 木仙一族

   仙堂春和(41歳) × 山城美奈(37歳)   一樹(19)  智樹(15)  加賀美(12)

   角浦秋和(41歳) × 日向奈美(36歳)   青葉(19)  芳樹(15)  冬樹(12)

  

 

 

 近衛師団

 第01師団(東京)    第02師団(仙台)    第03師団(名古屋)    第04師団(大阪)  

 第05師団(広島)    第06師団(熊本)    第07師団(北海道)    第08師団(弘前)

 第09師団(金沢)    第10師団(漠砂州)  第11師団(瑞森市)   第12師団(北欧道)  

 第13師団(姫路)   第14師団(蝦夷市)   第15師団(亜羅州)   第16師団(熊襲市)  

 第17師団(久留米)  第18師団(宇都宮)   第19師団(大連州)   第20師団(任那州)

 第21師団(善通寺)   第22師団(木仁弥・赤道ギニア州)    第23師団(雲州・ビオコ島)

 第24師団(小倉)    第25師団(高田/仙台)

 

 

 

 

 1926年 巨済島(400ku) 済州島(1845ku) 鬱陵島(72.82ku)

 1926年 大連州(3462ku)

 1930年 任那州 フォンセカ湾 ニカラグア領地コシグイナ(400ku)

 1932年 任那州 フォンセカ湾(1200ku) 4カ国不戦条約により拡大

             ニカラグア(400ku)+ホンジュラス(400ku)+エルサルバドル(400ku)

 1932年 北欧道 カレリア地峡+フィンランド湾諸島 (6000ku)

             スールサーリ島(21ku)、ラヴァンサーリ、大・小チュテルサーリ島他

 1934年 任那州 中米7カ国不戦協定調印 (2400ku)

                任那。ニカラグア、ホンジュラス、エルサルバドル。

                     コスタリカ、グアテマラ、パナマ、

             フォンセカ湾(1200ku)  旧ニカラグア・ホンジュラス・エルサルバドル領

             旧コスタリカ領 ココ(瓜生)島 (46.6ku)

             ブリカ(中ノ鳥)半島 (753.6ku)  旧コスタリカ領(353.4ku)+旧パナマ領(400ku)

             旧グアテマラ(沖ノ浜)領(400ku)

 1935年 熊襲市 (400ku)  旧タイ王国領対マレー国境

 1936年 蝦夷市 (400ku)  旧チリ領

 1938年 漠砂州 (8万3860ku) 旧イタリア領リビア・ブトナン県

 1939年 租界地 エストニア・イダ=ヴィル県(3364ku)50年

 1939年 瑞森市 (400ku) 旧ブラジル・オランジュ域

 1940年 亜羅州 (4039ku)   中東アラビア海

        武山(むさん)半島  ムサンダル半島  800ku    旧アラブ首長国連邦・オマーン

        和蔵(わくら)湾    アル・ワクラ湾   800ku    旧サウジアラビア・カタール

        武矢(ぶや)島     ブビヤン島    863ku    旧統合イラク・クェート

        佳(けしま)島諸島              1576ku   旧イラン

            佳(けしま)島      ゲシュム島   1491ku

            良久(らく)島      ラーク島     49ku

            辺賀(へんが)島    ヘンガム島   36.6ku

 1940年 租界地 ノルウェー・フィンマルク県(48618ku)

 1941年 北斗市 北アイスランド西部の岬(400ku)

 1942年 任那州 中米8カ国不戦協定調印 (2800ku)

                任那。ニカラグア、ホンジュラス、エルサルバドル。

                コスタリカ、グアテマラ、パナマ、メキシコ

             フォンセカ湾(1200ku)  旧ニカラグア・ホンジュラス・エルサルバドル領

             旧コスタリカ領 ココ(瓜生)島 (46.6ku)

             ブリカ(中ノ鳥)半島 (753.6ku)  旧コスタリカ領(353.4ku)+旧パナマ領(400ku)

             旧グアテマラ・メキシコ(沖ノ浜)領(800ku)

 1943年 府穀市(800ku)  タイ湾フコク島(561ku)+(対岸231ku) 旧ベトナム帝国・カンボジア王国

 1945年 木仁弥(赤道ギニア)州(26034ku)+雲州(ビオコ)島(2017ku)  旧スペイン領

 

 

 

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第26話 1946年 『日本民族国防会議甲子園で優勝するのよ』
第27話 1947年 『奴隷商人共産組合』
第28話 1948年 『ヘルシンキ・オリンピック講和』