月夜裏 野々香 小説の部屋

    

神がかり系 仮想戦記 『神籬の木仙』

 

 第29話 1949年 『日本銀行分割』

 中禅寺湖岸は、石畳で囲まれ、

 周囲は、木工12ギルドが宮大工の技術の粋を凝らし、政府行政施設を連ねながら建設していた。

 世界中から良木が集められ、華厳ヶ関が作られていく、

 その規模は頤和園の10倍に達し、日本の経済力と技術力を示した。

 木造建築は、日本の国柄を示すためといえた。

 緑が映える庭園に赤い野点傘が茶席を覆っていた。

 白人たち

 「牛肉とオレンジは?」

 「牛肉もオレンジも買うが、アメリカが指定するところからは、買わないそうだ」

 「嫌ならオーストラリアから買うそうだ」

 「ちっ だんだん、いうことを聞かなくなる」

 「それより、日本が朝鮮再建を渋りだした」

 「石油を余計に輸出してやるからといってもゼネコンは聞かない」

 「日本政府の圧力だろう」

 「アメリカ国内の建設会社も朝鮮半島の惨状から再建は及び腰だ」

 「やれやれ、どこから攻めたものか」

 「朝鮮の軍事圧力が大きくなると、日本は軍拡しなければならない」

 「せっかく世界中が軍縮してるのだから、このまま、民生を拡大させる気のようだ」

 「それに再建需要は、欧州を中心に増えてるし。世界中の後進国も日本に頼ってる」

 「交戦国は、男手を失ったのが痛いな」

 「あと、フィリピンだ」

 「5年以内に全員を帰還させることになるが、ノイローゼのまま返すと、いろいろまずい」

 「治安悪化か・・・」

 「日本にキューバに基地建設させようとしたが乗らなかった」

 「こうなったら、ドイツに基地を建設させて、軍事費を維持するしかないかもな」

 「取り敢えず日本は中東から石油を買えるし、ブラジルから鉄鉱石も買える」

 「欧州の再建需要もあれば、後進国の開発需要もある」

 「日本に弱点らしいところはないな」

 「遷都の負け組がいるだろう」

 「んん、政経分離な遷都だし、規制緩和でどっちも悪くないらしい」

 「やれやれだな」

 「しかし、東京、大阪、名古屋は、近代的なのに。遷都先は随分と落ち着いた場所と造りだな」

 「悪くない」

 「北の方は、北欧式建築が多いから別の国のようにも感じる」

 「単一民族な割に多様だな」

 「日本がどうしてこうなったのか、調査隊が派遣されることが決まったよ」

 「あ、そうそう・・・」 

 

 閨閥な日本人たち

 「仙堂家の長男。角浦家の長女とも、閨閥入りを見送りか」

 「次男以降はどうなんだろうな」

 「わからんが、顔合わせしてるのにその気がない素振りだそうだ」

 「やれやれ、親といい、子供といい・・・」

 「しかし、子供が6人が6人とも木工の才能があるってどういう仕組みなんだ」

 「それがわかれば苦労はしない」

 「角浦の長女と結婚した椎葉豊彦という青年は?」

 「父親は朔太郎。軍人で少尉どまり、雑貨店をやっていたが、今は神籬に入社」

 「先祖は熊野那智大社に縁があるらしいが、鳥羽藩の下級藩士だったこともあるらしい」

 「母方は農民の出だな。木工細工の才はないようだが、生糸も扱えるくらいだ」

 「特にこれという背景はないが、角浦家が支援して子供を大学まで行かせたらしい」

 「豊彦は、木工細工の才能はなくもない、中の上くらいだ」

 「高校科学教師になったが結婚を境に退職。神籬の化学部門に入社。それだけだな」

 「なんとも不思議なことをする」

 「人となりは?」

 「ああ、いい人間だよ。まぁ それだけ」

 「そんなのと結婚させるより、財閥の子供と結婚させるべきなんじゃないの?」

 「俺も本人に、そう言った」

 「仙堂家に嫁いだ日吉明美は?」

 「甲府盆地の農家の娘だよ。貧乏じゃないが豪農でもない」

 「こっちは、昔から農家らしい」

 「なんか、適当に選んでるな」

 

 

 

 日銀総裁は、何ができるか。

 流通貨幣は、経済の血液で、国民全体で循環している。

 国民全体に紙幣が行き渡るような紙幣発行と、政策が行われるなら国民生活は安定する、

 紙幣量の増大に伴い、大量の雇用が行われ、開発と生産によって利権の拡大が始まり、

 紙幣の増大に伴い、大企業は中小企業の追い上げに苦しむことになり、

 さらに雇用が増えれば、労働者の売り手市場となって賃金は大きくなり、

 国家基盤は、中央から地方へ広がっていく、

 しかし、紙幣を刷ることをやめれば、社会資本が利権に吸い上げられ、

 銀行の貸し渋りが始まり、

 自転車操業の企業、社員の多い企業と、零細企業、借金の多い家庭が殺されていく、

 国家予算に占める国債が大きければ、省庁の人事や行政を支配でき、

 基幹産業と関係ない中小企業と嗜好性の弱い企業が潰されていく、

 富が富裕層に集まるとさらに支配を強めようと、銀行の貸し剥がしが始まり、

 犯罪と自殺が急増し、大きな詐欺事件や疑獄事件が横行し、社会不信と政府不信が広がる。

 そして、紙幣を持つ者が私兵を雇い利権狩りが行われ、

 大量雇用で生産を増やすことより、合理的な生産が増え、リストラが増大していく、

 多くの企業は物を作っても売れなくなり、国民の多くが職を失い、賃貸暮らしへ追いやられ、

 軍需産業への投資が始まると、仮想敵との緊張関係を増大させ、

 軍拡に向かわせるなど、国家を政策左右することができた。

 紙幣発行を調整して人事に介入していけば、開戦に至らせる事も可能になった。

 ユダヤ資本が金融操作により為替や戦争をコントロールしながら私腹を肥やし、

 世界の富の多くを支配下に置いた手法であり、

 この手法は日本でも取り入れられていたが、ユダヤ資本の影響も少なからずあった。

 日本国と日本国民の生殺与奪を握る日銀総裁ではあるが、代用貨幣の強い日本は違った。

 日銀がインフレの締めつけ策を始めた途端、

 不換紙幣は紙切れ、といった流言が飛び交い、

 代用流通貨幣を製造していた木工12ギルドの幸幣の圧力が強まった。

 そして、日本銀行は、

  華厳0銀行    東京1銀行    大阪2銀行    名古屋3銀行   岡山4銀行

  福岡5銀行    富良野6銀行   台北7銀行    大連州8銀行   雲州9銀行

 投資番号の末尾0から9までの10銀行体制に移行させられ、

 議員たちの抽選が始まる。

 大きな権限を持つ紙幣発行銀行ではあるが、10行に分割軽減され、

 地域選出や学閥キャリア官僚でもなく、

 国会議員の貴族員と衆議員から選出されることで中央集権を保った。

 総理官邸

 「各行、貴族員5人と衆議員10人の代表で合議制になるが、成功すればFRBに圧力をかけられるだろう」

 「素人議員で大丈夫ですかね」

 「たくさん刷れば零細企業まで充分やっていけるが、新興企業も増える」

 「物価が上がるし、下克上になるし、金融統制支配がむつかしくなる」

 「ほどほど刷れば中小企業は充分だが零細企業が苦しくなるし、新興企業は減る」

 「少なく刷れば、利権で回収しやすい公務員と大企業が有利になる」

 「刷らなければ税金を強制できる公務員の一人勝ちだが、国民は奴隷にされる」

 「素人以下のバカでもわかるし」

 「自殺は10000人以下を目安にして欲しいものだ」

 「自殺は、財政の方が効果が大きいでしょう」

 「国民全体にばら撒くほうが公平だが、今は、基幹産業を育てたいから、むつかしいかもしれない」

 「むしろ、外交戦略でFRBに圧力をかけられる方が有利だ」

 「合衆国第二銀行の開業ですか」

 「FRBが分割されれば、故意に不況を起こそうとしてもむつかしくなるし、不況が困難になれば戦争は起こしにくい」

 「アメリカが戦争できなくなるなら、労働資源で勝る日本が勝つだろう」

 「まだ、石炭、鉄鉱石、石油で負けてるのが辛いですがね」

 「ふっ アメリカ国内にも反資本主義勢力がいるし」

 「原料を押さえて他国を支配しようとか、そんなセコイ国には負けてやらん」

 「そのアメリカで赤狩りの動きもあるようですが」

 「赤狩りか・・・本物の共産主義者は数人」

 「資本主義と共産主義の邪魔な民主主義者を狩り出すのが目的みたいだからな・・・」

 

 

 千島列島

 大型の北欧建築が建ち並んでいた。

 この時期の日本は、就労人口が多く、

 手先が器用なら自ら幸幣を作って生計を立てることも可能だった。

 公定歩合をはるかに超える流通通貨が流れていたことから投資の回収が用意で、

 国を強くするために金を使うことが当たり前になっていた。

 そして、中国の人海戦術がアメリカの物量作戦と引き分けた戦訓と、

 海外地開発で余剰地が増え、人口増加策で街の建設が進められていく、

 日銀分割により、いちいち中央に行かなくても財政投資が受けられやすくなり、

 海外地補助金政策や地方支援金により地方に住む人間は増えていた。

 幌筵島(2053ku)

 北欧に似た街が作られていく、

 寒冷地の移民が進んだのは対ソ、対米侵攻策で、

 辺境の都市化は、攻守のどちらであれ、国防と直結する。

 また、凍土対策が進み、ガラス繊維を使った衣類が増えたためといえる。

 ある程度大きな街が建設されると都市資本で自己増殖が行われていく、

 街路を士官候補生の集団が上半身裸で雪の中を走っていく、

 兵力数や火力といったものと別のファクターがあって、

 将兵の自信と勇敢さと作戦能力が戦場を変えてしまう事が有り、

 士官になると一定以上の戦意、気力、体力、能力が求められた。

 そして、そういった光景が焼き付けられた子供は、国防の真髄で影響を受けやすかった。

 木工12ギルドの人たち

 「随分と寒い場所に街を作ったな」

 「寒いところの方が木工細工仕事に専念しやすくなる」

 「木工工作機械も進んでるし、マニュアル化も進んでる」

 「主婦が作れる仕事にもなってるから寒冷地の方が生産力が上がる」

 「まぁ それを除くと、なにがあるというわけでもない街か」

 「街なんていうものはそういうもんだろう」

 「人がいてモノを消費してくれるから、地方で作ったものを集めてくる」

 「一旦、街を作れば、街を作ることで収入を得る者が増えて」

 「発想や能力や実力次第で、副次的な商売が成り立つ」

 「30万人規模にまでなったら、勝手に膨れ上がる」

 「食料は、温室で作るのか」

 「規模からして、そうなるだろうね」

 「問題は街を生かし続ける燃料じゃないか」

 「地熱発電と風力発電は有望らしいよ。あと海産物」

 「そういや、神籬が甲殻類で何かやってたっけ」

 「正確にはキチンって分子らしいけど」

 「ゴミの山が宝の山になるかもしれないってことか?」

 「多分ね」

 

 

 街宣中の扇動者たち

 「今がチャンスニダ!!!」

 「中国は戦争で疲弊しきってるニダ。アメリカ、イギリス、ソビエトも疲労困憊ニダ」

 「日本は戦争すれば勝てるニダ!」

 「英霊が戦死した魂の祖国。朝鮮半島と満洲を奪い返すニダ!!!」

 「日本軍は、絶対に勝てるニダ」

 「世界一の親日民族、朝鮮人は、日本軍の上陸を待ってるニダ」

 「シコシコ木工やってる場合ではないニダ」

 「朝鮮半島を取り戻して、アジアの盟主になるニダ」

 「このまま100年が過ぎたら戦争から再建した中国にアジアの盟主の座を奪われるニダ」

 「タイ王国を中心とする東南アジア条約機構も危険な組織になっているニダ」

 「日本のオイルロードが危ないニダ」

 「有色人種の盟主の座を中国とタイ王国に奪われるニダ」

 「このままでは、日本が、英霊が、日清戦争、日露戦争が築き上げた盟主の座を失うニダ」

 「日本人なら銃を取って、立ち上がるニダ」

 「米英ソ中を撃退して朝鮮半島と大連州を連結するニダ」

 「絶対に勝てるニダ」

 「今が百年の禍根を絶つ、千載一遇のチャンスニダ」

 「日本人は、英霊のために戦うニダ!!!!!!」

 大都会の喧騒の中、

 日本人たちは、不安を抱えつつも忙しなく行き交っていた。

 

 東京 喫茶店

 「ソウル亡霊怪行は、見たか?」

 「怖すぎるわ。ハリウッドもよく撮ったな、あんな映画」

 「カメラを置いて流し続けたらしい、だから、勝手に映ったんだと」

 「ハリウッドは、編集1時間で300時間分が撮れたから、ホラー映画だけで安定収入らしいよ」

 「いや、とてもじゃないけど、1つ見るだけで十分だし」

 「もう、ソウルは、怖くて住めないな」

 「散々 殺し合って。原子爆弾を二発。さらに殺し合って、だからな。もう、悲惨過ぎるわ」

 「というより半島全域で “出る” らしいよ」

 「「怖すぎる〜」」

 「まぁ 比較的人が死んでない釜山と江華島は、そうでもないらしいけど」

 「だけど、朝鮮共和国は、戦後再建が進んで、極東のパラダイスって言ってるらしいけど」

 「そりゃ 口は便利だわ」

 

 

 

 

 上海 日独共同租界地

 港に日本とドイツの船が着岸し、物資を降ろしていた。

 その物資の原産国の幾つかは、アメリカ、イギリスといった名前が表示されている。

 こういったことはよくある事で、

 いろんなルートが作られ、必要な物が必要な場所に送られる。

 街は、ドイツ語と日本語の看板が増えていた。

 中国は、満州外縁のソビエトと一触即発の情勢で、

 半島では、利権分けしていたものの、いつ戦争が起きてもおかしくなかった。

 軍事的に独立していたものの、工業力で劣り、

 日本やドイツの支援がなければ戦力を差を埋められない。

 その中国に進出してきたのがドイツのゲルマン騎士団、薔薇十字団、イルミナティなどで、

 中国人を巻き込んで何やら暗躍めいた動きを見せていた。

 特高事務所 第4係

 「なんか、変なのが動いてるようだが」

 「ドイツ人と中国人の混血を加盟させてるんじゃないかな」

 「秘密結社に?」

 「秘密結社は、元々同業組合から発展してる」

 「少数部族を使った工作術が確立すると、応用で、多数民族の少数部族化で利用するようになった」

 「ある種、謎めいたものが秘密を守りやすいし、組織を固めやすい」

 「19世紀になると、より大きな組織を集めるため共産主義になった」

 「しかし、組織が大きすぎると大義名分や制約が大きくなってしたいことができなくなる」

 「だから、連帯規模から師団規模の秘密結社は、今も維持されている」

 「誰が?」

 「まぁ 表の顔はともかく。国とか。貴族とか。王族とか。資本家とか。そういう集団が背後にいるのは確かだね」

 「目的は?」

 「たぶん、混血児を中心に中国に足場を作りたいだけだ」

 「日本もやるべきでは?」

 「んん、民族性で考えて、客家、紅幇、青幇、三合会に勝てそうにないな」

 「中国人の入国は、保証金と年間1万人以下の人数制限が必要だな」

 「中国人との交流は、租界で済ませたいね」

 「まぁ そのための租界ではある」

 「しかし、租界だけっていうのも芸がない」

 「取り敢えず、少数民族とは結びつきを強めてるよ」

 「日本の場合、どうも弱いのが気になる」

 

 

 タイ王国 東北部

 日本資本が開発を手がけ、

 東南アジア条約機構の発祥地で、近代化の下地が作られていく、

 鉄道や道路が整備されると数百台のトラックが行き交う。

 海外資産は、カントリーリスクがあるものの、

 大企業の隠し資産で、政府筋と結託し、

 税務署に知られない形で私腹を肥やし易いメリットがあった。

 また、企業収益と別に政府配分があって、

 議会の承認と関係のない外交資金を動かすとき使われる。

 清濁混在なのだが、タイ王国の近代化と

 フランス領インドシナ侵攻、イギリス領マレー・ビルマ侵攻。

 東南アジア条約機構の成立は関連があり、

 アメリカ、イギリス、ソビエト連合を窮地に追いやる遠因の一つになっていた。

 村人たちは、日本人を見ると手を振り、挨拶したりする。

 「随分と、明るい村だな」

 「そりゃ 運河、水路、灌漑を作って、村を作ったの日本人だから」

 「あと、学校、道路、鉄道、公共施設、上下水道、電話線、送電線・・・」

 「しかし、日本人以上に喜ばれてるのは不思議」

 「同胞なんて、そんなもんかな」

 「同じことを朝鮮半島にやると凄く恨まれたけど」

 「あの人たちは、そういう人たちだから」 苦笑い

 「日本人との混血が増えてるような・・・」

 「増えてるね」

 「企業が学校に入れて育ててるらしいよ」

 「なんで企業が?」

 「将来、日本企業で働いてもらいたいからじゃないの」

 「凄い遠謀だな」

 「まぁ 一種の企業私兵みたいなものだけど。カントリーリスクを減らしたいだけだろう」

 「それ、朝鮮人でやろうとして酷い目にあったんじゃないか」

 「あははは・・・あれは失敗。滅茶苦茶後悔したわ」

 「東南アジアの人たちは朝鮮人より誠実だよ」

 「それにオイルロード防衛とも関連がある」

 「そういや、通り道か」

 「まぁ こっちは物価が安いから、それほど懐が痛まないそうだ」

 「少し、ドイツ車が増えてるようだ」

 「戦後復興から立ち直ってないのに頑張るもんだ」

 「第二次世界大戦じゃ 対イギリス戦、対フランス戦で共闘してたし」

 「日本と便乗なら相乗効果もあるしね」

 「東南アジアにもUボートを売るのかね」

 「たぶん、売るだろう」

 「既に日本から買ったUボートと足したら、ちょっとした海軍国だ」

 「怖い怖い」

 「ウィンウィンの関係なら悪くならないだろう」

 「本当にウィンウィンか」

 「森林資源は大きいからね」

 「そういや、東北部の植林は、神籬が手がけていたっけ」

 「今は、中南米とブラジルが大きいらしいけど」

 「林業に頼る経済を何とかしてもらいたいものだ」

 「アメリカ資本がインフレ対策で幸幣を買って紙幣を回収している」

 「だから林業中心は変わらないよ」

 

 

 

 甲府盆地の農村の出で日吉明美を見つけたのは偶然だった。

 仙堂家では、樹霊を帯びた何人かの女性を嫁候補に挙げて付き合っていたが、

 数年前に見つけた娘は、ぶっちぎりの樹霊を帯びており、山で御神木も確認する。

 一樹は、山を買取ると明美に結婚を申し込み、無事に結婚に漕ぎ着けたのだった。

 仙堂家の長男も角浦家の長女の結婚相手は、庶民出だったことから様々な波紋を読んだが、

 仙堂家と角浦家の社会基盤は強まるばかりで陰りを見せなかった。

 特に子供は6人とも木工の才に優れるだけでなく、

 親同様、人事で敵を遠ざける能力も優れ、

 閨閥結婚でも親の七光りで問題を抱える子供を持つ閨閥と対比されることが多かった。

 

 日本国内 某神社

 日本の権力層が集まっていた。

 仙堂一樹(21歳) × 仙堂(日吉)明美(17歳)

 「海外地用の祭事を国内でもやることになるとはね」

 「安心したいのかもしれませんね」

 「逆に地縁を結んで日本から出たくないとか」

 「そうでしょうね」

 「本格的に海外地の入植をはじめようとしてるんだから、それは色々と困るかな」

 「でも、木仙一族の秘密を知りたいのかもしれませんね」

 「閨閥無視で、財産半分捨てる覚悟があるなら考えてもいいけど」

 海外地の神社で地縁結びの植林が始まる。

 なぜ、始まったのか。

 なぜ、すべての神社でほぼ同時に行われたのか、

 木工一族、神籬、木工12ギルドの締め付けなど憶測されたが、

 幾つかの神社の進行役で木工一族が確認され、一般紙の片隅に載せられていた。

 地縁結びは国家規模で最大の祭事となっていく、

 

 

 朝鮮共和国 (21万6823ku)

 北半分の租界を押さえる中国協商保障領7パーセント、

 南半分を共同租界で押さえる米英ソ同盟保障領は8パーセント、

 アメリカ3パーセント、イギリス3パーセント、ソビエト2パーセントとなった。

 専有面積に換算すると

 北朝鮮域 中国1万5177ku

 南朝鮮域 アメリカ6504ku。イギリス6504ku。ソビエト4336ku 合計16823kuとなった。

 朝鮮政府は、それぞれの地域から代表議員がソウルに送られ、

 全国区で大統領が選出される。

 朝鮮人は、統一朝鮮に住んでいる気になっていたが、

 朝鮮半島を支配してるのは、米英ソ中の代理人たちで、

 米英ソ中の利権分けの狭間で生きていくしかなく、

 代理人が密室で決めたことを大統領が読んでるだけだった。

 

 巨済島

 対岸は朝鮮共和国の国境で鉄橋がかかっていた。

 戦争でも比較的損害の少なかったのは、江華島と釜山しかなく、

 この二つの租界は少しずつ復興が進んでいたが、それ以外は、全く進んでいなかった。

 鋼材が鉄橋を超えて運ばれ、

 代わりに食料、日用品、建築資材が朝鮮共和国へ送られていく、

 戦後、日本ゼネコンの開発が行われなくなり、

 物資の取引だけしか行われなくなる。

 アメリカの建設会社が朝鮮共和国で再建を行ったものの、早々に逃げ出し、

 今では朝鮮人が自力で開発を進める。

 しかし、幾らアメリカが朝鮮の代理人に石油を送っても公共設備は建設されず、

 ドブに捨てるようなもので、廃墟がそのまま使われていた。

 ソウル

 高層ビルが横倒しになって倒れ、解体作業が始まっていた。

 腐臭が漂う死体が散乱し、

 血と鉄と火薬の臭いは取れず、大地は酸化した血で黒っぱく変色していた。

 租界に役に立ちそうなものを持っていくと食料と交換されるため、

 朝鮮人たちは、交換するために縄張りを作って争った。

 朝鮮人たち

 「こんな生活はいやニダ」

 「なんとか、日本に逃げ出したいニダ」

 「それか、宗主国に住みたいニダ」

 「日本は、朝鮮解放戦線を組織してないニカ?」

 「日本人は、見ざる言わざる聞かざるニダ」

 「もう、絶望ニダ」

 「日本人になりたいニダ」

 「巨済島の堤防は、物凄く高くて登れないニダ」

 「勇者はみんな失敗してるニダ」

 「死ぬ気で日本を目指すニダ」

 「それか。中国人になりすますニダ」

 「それがダメならソビエトか、アメリカか、イギリスに行くニダ」

 

 

 

 旧エクアドル領+旧ペルー領の国境

 グアヤキル湾 大洋市800ku

 そこは、エクアドルとペルーが講和前の駆け込みで兵器・武器弾薬と交換に日本に譲渡した領地だった。

 第27師団と後備工兵師団6個の開発が進んでいた。

 「どんな感じ?」

 「面積800kuはシンガポール並みに大きいし。国境に小さな川が流れてる」

 「小さくても河水があるだけチリより少し益しかな。全然、足りないけど」

 「取り敢えず、青写真程度に開発できれば自立できそうだ」

 「外貨は、エクアドルとペルーの林業で利益が得られそうなのか」

 「仙堂氏と角浦氏は内地の仕事を息子に任せて、海外行きが増えてるし。意外に進んでる」

 「長男坊は、上手くやってるのか?」

 「さぁ 仙堂の長男坊が地縁祭の言いだしっぺらしい」

 「考え方は違うようだが木工の才能があるし、人を見分ける節があるのは同じのようだ」

 「問題は、エクアドルやペルーと上手くやっていけるか、なんだけどね」

 「逆に言うとエクアドルやペルーと上手くやっている限りは、アメリカの攻撃を防げると思う」

 「むしろ、次は南米と北米で戦って欲しいような」

 「あははははは・・・・日本が巻き込まれなければね」

 

 

 

 戦後再建中のドイツ

 まだ、対アメリカ、対ソビエト、対イギリスで油断できない情勢で、

 ドイツ軍は縮小されつつ再編成されていた。

 ドイツ空軍は、予算の苦しい状況で少人数化が求められ、

 戦後の抑止を担う爆撃機で、フォッケウルフTa400を選択していた。

  自重25150kg/運用48540kg/最大60000kg

  全長28.7m×全幅45.8m×全高4.3m  翼面積127.8u

  1730馬力×6基

  最大速度635km/h  航続距離9000km

  武装 20mm10丁    爆弾10000kg

  乗員6名

 むろん、ジェット戦闘機の黎明期で実戦配備されてる情勢下で、

 プロペラで飛ぶ爆撃機は、高価な的に成りかねなかったものの、

 長期間使うなら耐久年数の長いプロペラエンジンは、費用対効果で優り、

 高速で移動できる大型爆撃機は、大戦後の示威力があると期待された。

 地中海を南下する機体は、戦闘目的でなく、

 ドイツ空軍が今後も強大であるという証明と、友好を維持するための飛行といえた。

 1機は、政府要人を乗せる特別な機体で、外見が軍用でも贅沢な内装が使われている。

 上質のコーヒーの香りが機内に漂うと、コーヒーが配られた。

 ドイツ人は、紅茶好きのイギリス人やロシア人に反発してるのか、コーヒーが好まれていた。

 「Ta400は、日本に売れるだろうか」

 「日本は大戦で不参戦を決め込みましたから戦訓不足のはず」

 「4発機は開発してますが、6発機の開発は遅れてます」

 「機体数は伸びないかもしれませんが、きっと買ってくれるかと思います」

 「だといいがな」

 「もうすぐ、漠砂州です」

 「到着は日本側に伝えているのだろうな」

 「はい・・・・どうやら、迎えの4式戦闘機の様です」

 窓を見ると、疾風4機編隊がTa400爆撃機2機に随行していた。

 「木製の機体か・・・」

 「プロペラなら木製でも十分なのでしょう」

 「そりゃ ボルトも使わず組み立てられるならな」

 「木工の技術は、日本の方が数段上の様です」

 「それは認めるよ」

 「機体を反らせるような構造で作るなんて、木工細工師が何万人いても足りない。非常識な」

 「噂では、木工12ギルドは、木の精と契約を結んでるとか」

 「「「「あはははは」」」」

 「まぁ 少なくとも仙堂と角浦の一族に関は、否定しきれないものもある」

 「そういえば、我が国の将官の何人かは、人形に助けられたとか」

 「ま、3人に1人は、そう聞いてる」

 「それより、漠砂州がイタリアより発展するかもしれないというのは本当なんだろうな」

 「現地情報員の噂です」

 「まぁ 行って確認するさ・・・」

 2隻の飛行船が浮かんでいた。

 「LZ127とLZ130か」

 「いえ、少し型が違うようです」

 「飛行船を空中貨物用に使うとはな・・・・」

 「ほぉ 本当に緑の草原を作ってるのか」

 「驚きですね」

 日本の誘導にしたがって、飛行場へ降りていく、

 日独の関係は戦前、戦中、戦後も変わらなかった。

  

 漠砂州 (8万3860ku)

 戦争が終わると南米や東南アジアから河川土が大量に供給され、

 内陸の奥深くまで土壌が改良され緑化が進んでいく、

 そして、全長1000kmに及ぶ人工の入江と、高層ビルの建設が始まろうとしていた。

 省庁の表玄関にレバノン杉が植えられていた。

 開発関係者たち

 「やはり、高層ビルは、自給型タウンビルの建設がいいように思う」

 「高層ビルを乱立させて、無理やり日陰を作って、緑化するって、力技だな」

 「むしろ、上下水道のために1000kmの入江を掘る方が大変な気がする」

 「完成したら漠砂州の3分の2が島になるから防衛にはいいけど」

 「そりゃそうだが」

 「20年ぐらいかけてやれば、ある程度形になるよ」

 「しかし、日本人は入植しに来るかな」

 「家庭菜園ができるくらい家が広かったら来るでしょう」

 「鉄はあまり使いたくないが」

 「神籬がもっといい材質を開発してると聞いたけど」

 「炭素とシリコンか。一度、灰にしてどうのこうの言ってたけど、強化ガラス繊維よりはるかに高くなるそうだ」

 「はるかに、ってところが、ネックだね」

 「鋼鉄より高くなるの?」

 「設備投資を回収するまではガラス繊維だって高かっただろう」

 「まぁ 原油価格次第だけど」

 「それ、本当にいいものだろうな」

 「さぁ ガラス繊維の時もそういって人間は多かったし、駄目なら廃れるだろう」

 「5階に1階を公民区画にするっていうのは、どうなの?」

 「海外地は地域の結び付きが切れるからね」

 「補助金で住人同士の結束を強めさせれば、犯罪抑止になるかもしれないってことだろう」

 「まぁ 人間関係の広がりが国家の強靭さにつながるのは確かだけどね」

 「日本国内でもやり始めてる」

 「浮気の切っ掛けになりそうで少し怖いが」

 「「「「あははははは」」」」

 

 この時期、世界の主力戦車は、次の世代に移行していた。

   アメリカ   50口径90mm砲装備      44t級M46パットン戦車

   イギリス   58.3口径76.2mm砲装備    52t級センチュリオン戦車

   ドイツ    71口径88mm砲装備      58t級キングタイガーV戦車

   ソビエト   53.5口径100mm砲装備    35.5t級T54戦車

 日本は、ドイツとの技術提携によりキングタイガーV戦車の量産ができたものの

 舗装率の関係から25t級1式(4号)戦車が主力で配備されていた。

 漠砂州 第10師団

 土地柄、砂色と草色の斑模様のガラス繊維の着脱式のほろを戦車に被せることがあった。

 戦車に日傘をさしているようなもので発見しにくい代わりに

 地上から見ると地面の小さな盛り上がりに見え、航空機から見ても、わかりにくかった。

 そして、日陰で車体の熱は、車内に届きにくくなり涼しくなった。

 将兵たちが演習で食べる戦闘食を頬張っていた。

 「1式戦車じゃ 守備隊の大砲と、パンツァーシュレックが頼りか。勝てんな」

 「キングタイガーVに更新したいですね」

 「むしろ、国産戦車にしたい」

 「漠砂州の工業力じゃ 国産はむつかしいですよ」

 「民間ばかり工業使ってるからだ。本当なら余裕で量産できる」

 「その割には、草地と砂地ばかりで何もないですからね」

 「昔は砂漠だったことを考えると、感慨無量だな」

 「でも、漠砂州を攻撃してくるような敵ってあるんですかね」

 「んん、イタリア領リビアは独立の動きが強いし。エジプトも独立しそうだし」

 「どっちも攻めてくる気配はないし、当面は、大丈夫だと思うね」

 「むしろ、ユダヤとイスラムの中東戦争が気になります」

 「まぁ 漠砂州は、アラブ・イスラム圏の異物だからな」

 「エジプトとリビアの緑化に協力すると言ってるし、そのへんは大丈夫なのでは?」

 「だといいがね」

 「入江の幅はどうするか決まったのか?」

 「さぁ 高層ビルの数が増えれば入江の幅も大きくなるって言うし」

 「幅1kmとかいう話しも聞いたことあるな」

 「そりゃ 金鉱脈やダイヤ鉱脈でもないと無理だろう」

 「「「「あははははは」」」」

 

 

 アメリカ合衆国 ニューヨーク

 国際連合本部ビル

 アメリカ合衆国、イギリス、ソビエト・・・・

 加盟国は、国際連盟より少なく、立ち上げたとたん、存在価値が失墜してしまう。

 「日本は加盟しないそうだ」

 「・・・・・」

 「当然、ドイツ、イタリア、中国も加盟しないし、東南アジア諸国、中東諸国、南米諸国も加盟しない」

 「くっそぉ〜」

 「こうなったら、戦争が終わったからって、スイスに国際連盟本部を移すか」

 「いや、ドイツとイタリアに挟まれた場所は、都合が悪い」

 「じゃ 日本が国際連盟本部で、一番いいことに」

 「だから困るんだろう」

 「このままだと、日本が世界の盟主になるじゃないか」

 「日中戦争やってくれたらいいのに」

 「日本は好景気だし。中国は女子供ばかりだ。そんな馬鹿がいるものか」

 「それなら、日本と東南アジア条約機構の戦争は?」

 「残念ながら、良好だよ」

 「例の連中で両国間に不和を起こさせよう」

 「活動させてるよ。しかし、金持ち喧嘩せずが日本国民の主流じゃな」

 「北欧の白人に反日運動を起こさせられないのか」

 「神籬がノルウェーやアイスランドの植林に成功してるので、なかなか・・・」

 「たかが植林がどうした。そんなもの。金の力でどうにでもなる」

 「ば、場所柄、なるかな・・・」

 「それより、日本の金融の方が問題では?」

 「中央銀行を分割され、議員に取られましたしね」

 「日本銀行は、末尾0から9までの10行分割だそうです」

 「1行は、貴族員5人、衆議員10人の15人の合議ですので全部で150人」

 「買収する相手は、1行8人で80人以上になります」

 「衆議員は抽選後の選挙でなので世襲も不可能」

 「紙幣量で有利になる富裕層を自由に変えられますが、足並みが揃わないので困難」

 「1行なら人事に圧力をかけられますが、別の銀行でも金は作れるので人事でバカを選ぶことも困難」

 「紙幣量の増減で、為替操作も、好況不況の操作も足並みが揃わないので困難」

 「なんとか10行制をやめさせられないのか」

 「というより、アメリカでも紙幣の末尾奇数と末尾偶数でFRBの分割案が出てます」

 「たぶん、日本が呼応したのではないかと」

 「やはり、日本と先に戦争すべきだったか」

 「だから幸幣を買って、利用するなと」

 「幸幣で、戦争でばら撒いた余剰資本を回収してインフレを押さえてるのだから悪くあるまい」

 「日本に幸幣の生産を頼ってるのですよ」

 「幸幣を複製を作って機械で大量生産して、暴落させればいい」

 「幸幣の複製は、まだですよ」

 「何やってんだ。たかが木だろう」

 「「「「・・・・・」」」」 ため息

 

 

 ハーバード拝金大学教会

 「人を支配するなら食料、情報、宗教、教育を押さえよ」

 「社会を支配するなら金融、交通、通信、行政、マフィアを押さえよ」

 「産業を支配するなら資源、工業を押さえよ」

 「国家を支配するなら軍事を押さえよ」

 「12個の権力を押さえることで世界を支配する」

 「例えば教育、情報、行政、マフィア、食料を押さえてるなら」

 「食品に毒を混ぜ、人々を病気にし、医療費を釣り上げ、金儲けができる」

 「教育と情報と行政とマフィアを押さえ結託するだけで可能になるのだ」

 「その全てを集約するのが金融で、世界支配の頂点である」

 「国粋主義の壁と、民族主義の排他性を破壊し、世界国家を作るのである」

 「先生。共産主義はどこにあるニカ」

 「共産主義は宗教組織だ」

 「凄いニダ」

 「お前たちにアメリカの国籍を与えるが、それは金融による世界支配を果たすためだ」

 「頑張るニダ」

 「朝鮮共和国の国籍では、日本に入れない」

 「しかし、アメリカ国籍なら特派員で入国できるし、ビジネスビザも取れるし、観光できる」

 「日本侵入を果たして、右翼利権、左翼利権と結びつき」

 「利己主義と拝金主義で日本人の精神を歪め、邪魔者を抹殺し、国体を破壊するのだ」

 「世界支配の邪魔になる親子、夫婦、親類、地域、企業の絆を破壊するのだ」

 「利権を強め格差を広げ、隣人を不信させ、憎み合わせ、日本文明を破壊するのだ」

 「「「「了解したニダ」」」」」

 

 

 

 

 亜羅州 武矢(ぶや)島(863ku) 旧ブビヤン島    

 戦後、東南アジア条約機構と結び付きを強め、

 戦中より安全に膨大な河川土を亜羅州や漠砂州に運び込むことができた。

 堤防で囲まれていた武矢島は、急速に標高を上げ、青々とした草花が大地を覆っていく、

 石油精製所と太陽光熱発電所と火力発電所と石油化学コンビナートが建設され、

 大型タウン型高層ビルが建設されると日陰が増え、

 居住床面積の広さと高給に惹かれた日本人の入植が進んでいく、

 公園の屋根付き、日傘付きの宴席が増えていた。

 仙堂智樹(17)は、手で顔を隠すように空を見上げる。

 「暑い国だ」

 「地縁の樹木は上手く育ちそうですか?」

 「木は喜んでるよ」

 「木仙一族の方々は、皆そう言いますね」

 「今の水量と日陰の量を維持できるなら心配ない」

 「幸幣は作れそうですか」

 「管理が大変だけど、作れるだろう」

 「それが移民の成否を分ける最大の関心事ですからね」

 「砂塵は、幸幣の苦手とするところだけどね」

 「でもアラブの王族にも人気ありますよ」

 「アラブの王族は、日本派はいるの? アメリカ派とか、ドイツ派とか」

 「いますね。次代の王になる人間とコネを作ったり、ライバルと敵対したり」

 「何か、贈り物で木工細工を作ろうか」

 「助かります」

 「何がいいだろう」

 「「「「人形」」」」

 「どんだけ恨まれてるんだよ。どんだけ不安なんだよ」

 

 蜃気楼の向こうを巨大タンカーが行き交う、

 その手前、サボテンで囲まれたプールで日本の子供が遊んでいた。

 子供たちは、巨大なイラン、イラク、サウジアラビアに囲まれた小さな島であることも、

 中東諸国の貧しさ、キナ臭さ、治安の悪さなど気にしない、

 娯楽らしい娯楽がなくても、プールがあれば遊び、はしゃぐ事ができた。

 政府の役人たち

 「ずいぶん、開発されてきたな」

 「黒字財政は、亜羅州だけなので、海外地の中で、一番、発展してますよ」

 「サウジアラビアとイラクとイランは、次の戦争でイスラエルを追い出すつもりのようだ」

 「亜羅州が巻き込まれなければいいが」

 「親アラブ反イスラエルの態度を取っていたら問題ないでしょう」

 「まぁ そうなんだろうけどね」

 「そうすると、いろいろ支障があるんだよ」

 「もういいよ。低所得層に金をばら蒔けば、ユダヤ支配が崩せる」

 「成り金は増えるが、金融支配に怯えるような社会より百倍益しだ」

 「金をばら撒くほど個人と、零細企業と、中小企業が強くなって、政府や財閥の権力が弱くなるんだけど」

 「海外地の自立のためなら、それも仕方がないさ」

 「刷り過ぎかも」

 「海外地に投資した金が内地に逆流するまでタイムラグがある」

 「たぶん、大丈夫だろう」

 「最悪、幸幣を高騰させて、紙幣を回収すればいい」

 「国債より幸幣が好まれてるところがムカつく」

 「幸幣より紙幣が増えてるからね」

 「誰だって希少価値の高い幸幣で蓄財したくなるだろう」

 

 

 

 別段、欲しくもなく、必要もなかった領地。

 しかし、外交政治上 “いらない” と言えなかった租借地2つと領地1つがあった。

  1939年 租界地 エストニア・イダ=ヴィル県(3364ku)50年

  1940年 租界地 ノルウェー・フィンマルク県(48618ku)50年

  1941年 北斗市 北アイスランド西部の岬(400ku)

 設備投資が繰り返されると、北欧風の港湾と街が作られ、日本商品の集結地となり、

 日本と北欧道の中継港となった。

 日本の徒労感とは別に、

 エストニアは、最悪の事態を避けることができ、

 ノルウェーもドイツの侵略と完全支配を防ぐことが来た。

 アイスランドもイギリスとアメリカの占領を防ぎ、国力を付ける切っ掛けになった。

 むろん、その後も続く、日本の海外地拡大の礎になった。

 北斗市

 息をすると真っ白な結晶が広がる。

 カバ、ポプラ、トネリコの温室植林と北限が試みられていた。

 沖合を見るとアイスランド海軍のXX1型潜水艦が波間で見え隠れしている。

 少ない人材で最大の効果を上げることができる潜水艦は、小国に好まれ、購入されやすかった。

 「さぶっ・・・」

 「なんで貰ったのって領地だな」

 「ノルウェーとアイスランドは返すけど。アイスランドは未来永劫日本のもの」

 「アイスランドと仲良くやっている限りはね」

 「今のところ、互いにプラスですし、補完関係にあるので問題ないでしょう」

 「反日も進行してるのでは?」

 「そういう動きは、たしかにありますね」

 「地熱発電の建設が進めば少し落ち着くのでは?」

 「地熱発電は、労働者がほとんどいないので、恩恵を感じにくいでしょうね」

 「むしろ、植林の方が喜ばれやすいですね。日本でもないのに地縁祭やるくらいですから」

 「また、木工か・・・」

 「寒冷地と熱帯雨林で強いですよね」

 「金のなる木だからな」

 

 

 ヴィシーフランス (26万ku)

 戦後、ドイツの軍事占領が解かれ、

 独立は果たしたものの、ベルサイユ条約並みの軍事制限を受けていた。

 そして、旧フランスからフランス人が流れ込み、混乱していた。

 ヴィシーフランスがドイツの影響の少ない植民地の圧力を増やしたのも、

 人口密度が増えた人口の捌け口と、ドイツのくびきから脱するためだった。

 マルセイユ

 カフェテラス 日本人たち

 「戦後は、自由フランスと統合か」

 「血は水より濃いわけだ」

 「一時は、イギリスと並ぶ、世界帝国だったのに、見る影もないな」

 「そのイギリスも衰退が激しいようだ。回復の見込みが弱い」

 「既得権は少し利口なら需要を掬い上げられるから救いがあるが」

 「馬鹿過ぎると供給しても売れない」

 「だから紙幣発行を減らして、新参の邪魔をするようになるから救いようがなくなる」

 「イェニシェとの交渉は?」

 「こっちでは、ジタンとか、ボエミアンとかいうらしい」

 「スパイ組織創設は協力してくれるそうだ」

 「信用できるだろうな」

 「まぁ 金だけだと弱いから、混血とか、犯罪の証拠を抑えてるとか」

 「日本で洗脳教育できるならいいかもしれないが、すぐはな」

 「えぐい」

 「どこの国の諜報機関も似たようなもんだ」

 「日本もやられてるけどね」

 「それは嫌」

 

 

 

 東京

 国際連盟

 「日本は国際連盟の本部理事国ニダ」

 「・・・・・」

 「国際連盟の本部理事国が、隣国の朝鮮共和国と国交断絶なんておかしいニダ」

 「・・・・・」

 「日朝国交を回復するニダ」

 「・・・・・」

 「なぜ、目を背けるニダ」

 「・・・・・」

 「なぜ、明後日の方向を向くニダ」

 「・・・・・」 ため息

 「まっすぐ前を見て、現実を直視するニダ!」

 「・・・・・」 ため息 

 「朝鮮共和国は、独立国ニダ!」

 「連盟本部常任理事国は加盟国と国交を回復する義務があるニダ」

 「・・・・・」 ため息

 「日本人は朝鮮人を差別してるニダ!!!」

 「・・・・・」 ため息

 「なぜ、大きなため息をつくニダ!!!!」

 「・・・・・」 ため息

 「もし、日本が朝日国交樹立しないなら、韓国は国際連盟を脱退して国際連合に行くニダ」

 「本当に?」

 「本当ニダ」

 「是非、脱退してください」

 「・・・・・」

 「是非、連盟を脱退して、国際連合に行ってください」

 「あ、あ、いや、そういう意味ではないニダ」

 「では、脱退ですね」

 「い、いや、今のは違うニダ」

 「朝日国交樹立して欲しいという意味でいったニダ」

 「いや、朝日国交樹立しないから、脱退してもいいですよ」

 「違うニダ。違うニダ。朝日友好は、大事といっただけニダ」

 「国際連盟は脱退しないニダ」

 「・・・・・」 ちっ

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です。

 海外地投資のイメージは、日本の中国投資でしょうか。

 ODAが、積極な財政投資で、金が海外に流れているので、

 多くの企業が海外地に進出していきます。

 

 

 

 木仙一族

   仙堂春和(43歳) × 山城美奈(39歳)  智樹(17)  加賀美(14)

      仙堂一樹(21歳) × 仙堂(日吉)明美(17歳)

   角浦秋和(43歳) × 日向奈美(38歳)  芳樹(17)  冬樹(14)

   椎葉豊彦(25歳) × 椎葉(角浦)青葉(21歳)

  

 

 

 近衛師団

 第01師団(東京)    第02師団(仙台)    第03師団(名古屋)    第04師団(大阪)  

 第05師団(広島)    第06師団(熊本)    第07師団(北海道)    第08師団(弘前)

 第09師団(金沢)    第10師団(漠砂州)  第11師団(瑞森市)   第12師団(北欧道)  

 第13師団(姫路)   第14師団(蝦夷市)   第15師団(亜羅州)   第16師団(熊襲市)  

 第17師団(久留米)  第18師団(宇都宮)   第19師団(大連州)   第20師団(任那州)

 第21師団(善通寺)   第22師団(木仁弥・赤道ギニア州)    第23師団(雲州・ビオコ島)

 第24師団(小倉)    第25師団(高田/仙台)

 第26師団(苅武市)  第27師団(大洋市)  第28師団(原亜州)

 

 

 

 1926年 巨済島(400ku) 済州島(1845ku) 鬱陵島(72.82ku)

 1926年 大連州(3462ku)

 1930年 任那州 フォンセカ湾 ニカラグア領地コシグイナ(400ku)

 1932年 任那州 フォンセカ湾(1200ku) 4カ国不戦条約により拡大

             ニカラグア(400ku)+ホンジュラス(400ku)+エルサルバドル(400ku)

 1932年 北欧道 カレリア地峡+フィンランド湾諸島 (6000ku)

             スールサーリ島(21ku)、ラヴァンサーリ、大・小チュテルサーリ島他

 1934年 任那州 中米7カ国不戦協定調印 (2400ku)

                任那。ニカラグア、ホンジュラス、エルサルバドル。

                     コスタリカ、グアテマラ、パナマ、

             フォンセカ湾(1200ku)  旧ニカラグア・ホンジュラス・エルサルバドル領

             旧コスタリカ領 ココ(瓜生)島 (46.6ku)

             ブリカ(中ノ鳥)半島 (753.6ku)  旧コスタリカ領(353.4ku)+旧パナマ領(400ku)

             旧グアテマラ(沖ノ浜)領(400ku)

 1935年 熊襲市 (400ku)  旧タイ王国領対マレー国境

 1936年 蝦夷市 (400ku)  旧チリ領

 1938年 漠砂州 (8万3860ku) 旧イタリア領リビア・ブトナン県

 1939年 租界地 エストニア・イダ=ヴィル県(3364ku)50年

 1939年 瑞森市 (400ku) 旧ブラジル・オランジュ域

 1940年 亜羅州 (4039ku)   中東アラビア海

        武山(むさん)半島  ムサンダル半島  800ku    旧アラブ首長国連邦・オマーン

        和蔵(わくら)湾    アル・ワクラ湾   800ku    旧サウジアラビア・カタール

        武矢(ぶや)島     ブビヤン島    863ku    旧統合イラク・クェート

        佳(けしま)島諸島              1576ku   旧イラン

            佳(けしま)島      ゲシュム島   1491ku

            良久(らく)島      ラーク島     49ku

            辺賀(へんが)島    ヘンガム島   36.6ku

 1940年 租界地 ノルウェー・フィンマルク県(48618ku)

 1941年 北斗市 北アイスランド西部の岬(400ku)

 1942年 任那州 中米8カ国不戦協定調印 (2800ku)

                任那。ニカラグア、ホンジュラス、エルサルバドル。

                コスタリカ、グアテマラ、パナマ、メキシコ

             フォンセカ湾(1200ku)  旧ニカラグア・ホンジュラス・エルサルバドル領

             旧コスタリカ領 ココ(瓜生)島 (46.6ku)

             ブリカ(中ノ鳥)半島 (753.6ku)  旧コスタリカ領(353.4ku)+旧パナマ領(400ku)

             旧グアテマラ・メキシコ(沖ノ浜)領(800ku)

 1943年 府穀市(800ku)  タイ湾フコク島(561ku)+(対岸231ku) 旧ベトナム帝国・カンボジア王国

 1945年 木仁弥(赤道ギニア)州(26034ku)+雲州(ビオコ)島(2017ku)  旧スペイン領

 1948年 グアヒラ半島   苅武市800ku    旧コロンビア領+旧ベネズエラ領の国境  第26師団

 1948年 グアヤキル湾  大洋市800ku     旧エクアドル領+旧ペルー領の国境  第27師団

 1948年 パラグアイ流域 原亜州3200ku    旧パラグアイ領+旧ボリビア領の国境  第28師団

 

 

 

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第28話 1948年 『ヘルシンキ・オリンピック講和』
第29話 1949年 『日本銀行分割』
第30話 1950年 『中禅寺湖遷都と、華厳ヶ関』